説明

光伝送モジュール

【課題】 上面2電極タイプの受光素子を使用できる構造とすることにより、低価格な光伝送モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】 本光伝送モジュールは、光ファイバ4の光軸に対向する位置に開口部を有するリードフレーム(筐体)3と、リードフレーム3の底面の一部を切り起こして光軸と所定の角度を成す斜面を形成する切り起こし部3aと、切り起こし部3aの斜面上に実装され、信号波長λ1の光のみを反射する反射型遮断用フィルタ2と、リードフレーム3の上面に設けられた開口部に、受光面を下側にして実装された上面2電極タイプの受光素子1とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波長多重光通信の光送受信器に使用する、光伝送モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光伝送モジュールにおいては、受光素子及び発光素子に高価なCANパッケージを用いて立体的に構成し、信号波長以外の波長の光を遮断する遮断用フィルタは、前記受光素子側のCANパッケージ内に設けるような構成にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−167171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光伝送モジュールは、以上のように構成されていたので、高価なCANパッケージの使用に伴うコスト高という問題があった。そこで、低価格化を目的に、リードフレーム上に各部品を実装する構造にした場合、低価格な上面2電極タイプの受光素子の前面に遮断用フィルタを貼り付ける場合に、ワイヤボンディングが遮断用フィルタと干渉してしまい、受光素子の受光面を完全に覆うように遮断用フィルタを貼り付けることができないという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、上面2電極タイプの受光素子を使用できる構造とすることにより、低価格な光伝送モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る光伝送モジュールは、開口部が、第1の信号波長の光を出射する光ファイバの光軸と対向するように設置された筐体と、前記筐体の底面の一部を切り起こして、前記光ファイバの光軸に対して所定の角度を成す斜面を形成した切り起こし部と、前記切り起こし部の斜面上に設けられ、前記第1の信号波長の光を反射する反射型遮断用フィルタと、前記筐体の上面に、前記反射型遮断用フィルタで反射された前記第1の信号波長の光が入射するように受光面を設置した上面2電極タイプの受光素子とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、筐体の一部である切り起こし部の斜面上に反射型遮断用フィルタを設け、上面2電極タイプの受光素子の受光面に所定の信号波長の光が入射するように構成しているので、低価格な光伝送モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る光伝送モジュールの構造を示す斜視図である。
図1において、本光伝送モジュールは、光ファイバ4の光軸に対向する位置に開口部を有するリードフレーム(筐体)3と、リードフレーム3の底面の一部を切り起こして光軸と所定の角度を成す斜面を形成する切り起こし部3aと、切り起こし部3aの斜面上に実装され、信号波長λ1の光のみを反射する反射型遮断用フィルタ2と、リードフレーム3の上面に設けられた開口部に、受光面を下側にして実装された上面2電極タイプの受光素子(PD:Photo Diode)1とを備えている。
【0009】
次に、動作について説明する。図2は、図1の光伝送モジュールの側断面図である。
図2において、本光伝送モジュールに対して、光ファイバ4からカプラで分けられた光が入射してくる。リードフレーム3の開口部から入射した光は、反射型遮断用フィルタ2により、信号波長λ1の光のみが選択的に1の受光素子に向けて反射される。反射された信号波長λ1の光は、リードフレーム3の上面開口部に実装された受光素子1の受光面に入射して、光通信に供される。
この構造により、従来例のように高価なCANパッケージを用いた構造から部品点数を削減でき、低価格な上面2電極タイプの受光素子を使うことができる。
【0010】
以上のように、この実施の形態1によれば、リードフレーム3の切り起こし部3aの斜面上に設けた反射型遮断用フィルタ2と、上面2電極タイプの受光素子1のみを実装する簡易構成により、低価格な光伝送モジュールを提供することができる。
【0011】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2について説明する。図3は、この発明の実施形態2に係る光伝送モジュールの側断面図である。
図3に示す光伝送モジュールは、図2のリードフレーム3の切り起こし部3aの斜面上に、反射型遮断用フィルタ2を蒸着したものである。その他の構成は、図2と同様である。
【0012】
以上のように、この実施の形態2によれば、実施の形態1の効果に加えて、反射型遮断用フィルタ2の基材が不要となり、光伝送モジュールの更なる低価格化を実現することができる。
【0013】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3について説明する。図4は、この発明の実施の形態3に係る光伝送モジュールの側断面図である。
図4において、切り起こし部3aを切り起こす際に、凹面形状に形成している。更に、切り起こし部3aの凹面上に反射型遮断用フィルタ2を蒸着している。その他の構成は図3と同様である。
【0014】
以上のように、この実施の形態3によれば、実施の形態3の効果に加えて、光ファイバ4からの光を凹面鏡の特性を有する反射型遮断用フィルタ2に入射することにより、受光素子1に対してより集光させることが可能となる。従って、集光レンズ等の追加部品を別途設けることなく、光伝送モジュールの受光感度を改善することができる。
【0015】
実施の形態4.
以下、この発明の実施の形態4について説明する。図5は、この発明の実施の形態4に係る光伝送モジュールの側断面図である。
図5において、リードフレーム3の切り起こし部3aの中央付近には、信号波長λ2の光を透過できる空隙を設けている。
また、光ファイバ4の光軸と対向するように、切り起こし部3aの後方位置に発光素子(LD:Laser Diode)5を実装する。
更に、図2の反射型遮断用フィルタ2の変わりに、切り起こし部3aの斜面上に波長合分波フィルタ6を実装する。その他の構成は、実施の形態1(図2)と同様である。
【0016】
次に、動作について説明する。図5に示すように、光ファイバ4からの信号波長λ1の光のみが波長合分波フィルタ6で反射され、受光素子1と結合する。
一方、発光素子5から出射された信号波長λ2の光は、波長合分波フィルタ6を透過して光ファイバ4と結合する。
【0017】
以上のように、この実施の形態4によれば、実施の形態1の効果に加えて、送受一体型の光伝送モジュールを提供することができる。
【0018】
実施の形態5.
以下、この発明の実施の形態5について説明する。図6は、この発明の実施の形態5に係る光伝送モジュールの側断面図である。
図6において、図5の光伝送モジュールの前方、光ファイバ4の光軸との対向位置に、発光素子5を除いた図5と同構成の光モジュールを備えている。
【0019】
次に、動作について説明する。波長合分波フィルタ7aは、光ファイバ4からの信号波長λ1の光を反射し、λ1用受光素子1aに結合させると共に、発光素子5から出射された信号波長λ2の光と光ファイバ4からの信号波長λ3の光は透過する。
一方、波長合分波フィルタ7bは、波長合分波フィルタ7aを透過した信号波長λ3の光のみを反射してλ3用受光素子1bに結合させると共に、発光素子5から出射された信号波長λ2の光は透過する。
【0020】
以上のように、この実施の形態5によれば、実施の携帯4の効果に加えて、波長合分波フィルタ通信用波長λ1とビデオ用波長λ3を別々に取り出すことが可能になり、従来技術では実現が困難な、3ポートの光伝送モジュールを容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光伝送モジュールの構造を示す斜視図である。
【図2】図1の光伝送モジュールの側断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る光伝送モジュールの側断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る光伝送モジュールの側断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係る光伝送モジュールの側断面図である。
【図6】この発明の実施の形態5に係る光伝送モジュールの側断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 受光素子、1a λ1用受光素子、1b λ3用受光素子、2 反射型遮断用フィルタ、3 リードフレーム(筐体)、3a 切り起こし部、4 光ファイバ、5 発光素子、6 波長合分波フィルタ、7a 波長合分波フィルタ、7b 波長合分波フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が、第1の信号波長の光を出射する光ファイバの光軸と対向するように設置された筐体と、
前記筐体の底面の一部を切り起こして、前記光ファイバの光軸に対して所定の角度を成す斜面を形成した切り起こし部と、
前記切り起こし部の斜面上に設けられ、前記第1の信号波長の光を反射する反射型遮断用フィルタと、
前記筐体の上面に、前記反射型遮断用フィルタで反射された前記第1の信号波長の光が入射するように受光面を設置した上面2電極タイプの受光素子とを備えた光伝送モジュール。
【請求項2】
前記反射型遮断用フィルタが、前記切り起こし部の斜面上に蒸着形成されていることを特徴とする請求項1記載の光伝送モジュール。
【請求項3】
前記切り起こし部が、前記光ファイバの光軸に対して凹面となるように形成され、
前記反射型遮断用フィルタが、前記第1の信号波長の光を集光して前記受光素子の受光面に入射する凹面鏡であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光伝送モジュール。
【請求項4】
前記反射型遮断用フィルタを、前記第1の信号波長の光を反射すると共に第2の信号波長の光を透過する波長合分波フィルタとし、
前記波長合分波フィルタの後方に、前記光ファイバの光軸に対向するように配置され、前記第2の信号波長の光を出射する発光素子を備えたことを特徴とする請求項1記載の光伝送モジュール。
【請求項5】
両端開口部が第1、第2の信号波長の光を出射する光ファイバの光軸と対向するように設置された第1の筐体と、
前記第1の筐体の底面の一部を切り起こして、前記光ファイバの光軸に対して所定の角度を成す斜面を形成した第1の切り起こし部と、
前記第1の切り起こし部の斜面上に設けられ、前記第1の信号波長の光を反射すると共に前記第2の信号波長の光と第3の信号波長の光とを透過する第1の波長合分波フィルタと、
前記第1の筐体の上面に、前記第1の波長合分波フィルタで反射された前記第1の信号波長の光が入射するように受光面を設置した上面2電極タイプの第1の受光素子と、
開口部が前記光ファイバの光軸と対向するように、前記第1の筐体の後方に設置された第2の筐体と、
前記第2の筐体の底面の一部を切り起こして、前記光ファイバの光軸に対して所定の角度の斜面を形成した第2の切り起こし部と、
前記第2の切り起こし部の斜面上に設けられ、前記第2の信号波長の光を反射すると共に前記第3の信号波長の光を透過する第2の波長合分波フィルタと、
前記第2の筐体の上面に、前記第2の波長合分波フィルタで反射された前記第2の信号波長の光が入射するように受光面を設置した上面2電極タイプの第2の受光素子と、
前記第2の波長合分波フィルタの後方に、前記光ファイバの光軸に対向するように配置され、前記第3の信号波長の光を出射する発光素子とを備えたことを特徴とする光伝送モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−86519(P2007−86519A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276448(P2005−276448)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】