説明

光伝送基板とその製造方法、複合光伝送基板ならびに光モジュール

【課題】光路変換される迷光を抑制する光伝送基板を提供する。
【解決手段】光伝送基板は、基板1と、基板1上に設けられた、コア部2bおよびコア部2bを光軸方向の途中で分断する溝部を有する、樹脂材料からなる光導波路2とを備えた光伝送基板であって、光導波路2の前記溝部内に、コア部2bが露出した端面2dと、端面2dから離れた位置にあって光導波路2の光軸方向に対して傾斜している光路変換面3と、光路変換面3の下端に繋がっているとともに基板1に対して光路変換面3よりも大きく傾斜した傾斜面4cを持つ、下方向に凹んだ凹部4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を反射させる光路変換面を有する光伝送基板とその製造方法、ならびに複合光伝送基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの情報処理能力の向上化にともなって、マイクロプロセッサとして使用される半導体大規模集積回路素子(LSI,VLSI)等の集積回路(IC)では、トランジスタの集積度が高められており、ICの動作速度は、クロック周波数でGHzのレベルまで達している。それに伴い、電気素子間を電気的に接続する電気配線についても高密度化および微細化されたものが要求されていた。
【0003】
しかしながら、電気配線の高密度化および微細化は、電気信号のクロストークや伝搬損失が生じやすいことから、半導体素子に入出力される電気信号を光信号に変換し、さらに、その光信号を実装基板に形成した光導波路などの光配線によって伝送される光伝送技術が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、光路変換面を含む光導波路を具備する光伝送基板が開示されている。詳細には、先端が平坦なダイシングブレードにより光導波路を削って溝を設けたうえで、その溝の内面を金属材料等によって偏向ミラー(光反射膜)を形成して得られた光路変換面を有する光伝送基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−235126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の光伝送基板は、特許文献1の図1に示すように、水平方向と偏向ミラー上方との光路変換を行なう場合、光路変換面の下端周辺において迷光となる光が多く発生するため、余分な信号成分が伝達されることになり、高い純度を有する光信号の伝達をすることが困難であった。
【0007】
よって、本発明の目的は、より簡便な方法で作製でき、さらに、迷光の発生を抑制する光伝送基板とその製造方法、ならびに複合光伝送基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態の光伝送基板は、基板と、該基板上に設けられた、コア部および該コア部を光軸方向の途中で分断する溝部を有する、樹脂材料からなる光導波路とを備えた光伝送基板であって、前記光導波路の前記溝部内に、前記コア部が露出した端面と、該端面から離れた位置にあって前記光導波路の光軸方向に対して傾斜している光路変換面と、該光路変換面の下端に繋がっているとともに前記基板に対して前記光路変換面よりも大きく傾斜した傾斜面を持つ、下方向に凹んだ凹部とを有する。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る複合光伝送基板は、上記光伝送基板と、前記光路変換面を介して前記コア部と光学的に結合し、主面間を光が伝送する第2の光伝送基板と、前記光伝送基板に第2の光伝送基板を実装させる実装手段と、を具備する。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る光モジュールは、上記複合光伝送基板と、前記光路変換面および前記第2の光伝送基板を介して前記コア部と光学的に結合し、前記第2の光伝送基板の主面のうち、前記実装手段が設けられた主面とは反対側の主面上に実装された光半導体素子と、を具備する。
【0011】
さらに、本発明の光伝送基板の製造方法は、基板上に、コア部およびクラッド部を有する、樹脂材料からなる光導波路を形成する工程(1)と、前記基板に対して傾斜した第1の内面と、該第1の内面と対向する第2の内面と、を有する溝を、前記光導波路の前記コア部を分断するように形成する工程(2)と、前記溝内部に光反射膜を設ける工程(3)と、前記工程(3)において形成された、前記第1の内面上の光反射膜の一部、前記第2の内面上の光反射膜および前記光導波路の一部をダイシングブレードで除去して、前記第1の内面よりも前記基板に対して傾斜した傾斜面を持つ、下方向に凹んだ凹部、および前記コア部が露出した端面を有する溝部を前記光導波路に形成する工程(4)とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施態様の光伝送基板は、前記端面と前記光路変換面と間に凹部が介在していることにより、迷光を生じさせやすい光路変換面の下端部周辺を含まない構成であるため、迷光を最小限に抑えることができる。
【0013】
また、前記端面と前記光路変換面との間に凹部が介在している場合、前記光路変換面上の屑が傾斜した前記光路変換面から前記凹部に滑り落ち、前記凹部内に溜まる。そして、前記凹部内に溜まった屑は洗浄で除去されなかったとしても光路変換に対する影響が小さいため、屑による散乱などの悪影響を受けずに前記光伝送基板は高効率な光結合が得られる。
【0014】
前記凹部は、前記光路変換面の下端と連続して繋がっており、前記基板に対して、前記光路変換面よりも大きく傾斜した傾斜面を含むことが好ましい。前記凹部が前記傾斜面を含むことにより、前記凹部の容量が大きくなることから、前記屑を前記凹部内により多く溜め込むことが可能となる。
【0015】
また、前記凹部は、前記傾斜面と前記端面との間に設けられ、前記傾斜面と連続して繋がる底面を有しているため、光伝送基板の上から光路変換面付近を見て、他の部材と位置合わせする場合、前記底面が目印を形成するため、容易に位置合わせをおこなうことができる。
【0016】
本発明の一実施態様の複合光伝送基板は、前記光伝送基板と、第2の光伝送基板と、実装手段とを具備する。第2の光伝送基板は、前記光路変換面を介して前記コア部と光学的に結合し、主面間を光が伝送する。また、前記実装手段は、前記光伝送基板に第2の光伝送基板を実装させる。このような構成を有する複合光伝送基板には、実装時に、前記実装手段から流出したフラックスにより汚染されやすいが、前記凹部の側縁が前記光路変換面と連続して繋がっていることにより、前記光路変換面上のフラックスが前記光路変換面の傾斜面から前記凹部に滑り落ち、前記凹部内に溜まる。そして、前記凹部内に溜まったフラックスは光路変換への影響が小さいため、前記光伝送基板は高効率な光結合が得られる。
【0017】
本発明の一実施態様の光伝送基板の製造方法は、前記光導波路の前記コア部を分断するように形成された溝内部に光反射膜を設け、前記第2の内面上の光反射膜を除去することにより、リフトオフ、エッチングなどの煩雑な工程を経ることなく、光導波路端面を露出できる。さらに前記製造方法は、光導波路の透明性および密着性に影響が小さい。前記製造方法により、第2の内面を除去した箇所には、コア部が露出されるため、前記光伝送基
板は高効率な光結合が得られる。
【0018】
さらに、前記製造方法は、光導波路に、前記光導波路のコア部を分断するように溝を形成したことにより、溝内面に露出したコア部を直接確認しながら光反射膜を設けることができる。そのため、光導波路や光路変換面を別途形成する場合と比較して、位置ずれを抑制でき、得られた光伝送基板は高効率な光結合が得られる。
【0019】
前記製造方法は、前記第2の内面の光反射膜の除去工程において、前記第1の内面の下端以下の領域と前記第2の内面を含む領域とを除去することにより、前記凹部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】光伝送基板の実施の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】複合光伝送基板の実施の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、光伝送基板(図1)の製造方法の実施態様の一例を模式的に示す工程ごとの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面にもとづいて、本発明の実施態様の光伝送基板について説明するが、これらの図面は本発明の実施態様の一例に過ぎず、本発明はそれらに限定されない。
【0022】
図1は、光伝送基板の実施の形態の一例を模式的に示す断面図である。図1において、1は基板、2は光導波路、3は光路変換面、4は凹部、Aは光導波路2の光軸、およびBは光路変換面3に入出力する光の光軸を示す。
【0023】
なお、図1において光導波路2は、上部クラッド部2aとコア部2bと下部クラッド部2cとから構成され、コア部2bが露出した光導波路2の端面2dを有する。
【0024】
図1の光伝送基板は、外部からの光Bを光路変換面3にて反射させて光導波路2のコア部2bに導入する、あるいは光導波路2のコア部2bから伝搬してきた光Aを光路変換面3にて反射させて外部へ射出する。つまり、光路変換面3は、それ自体を介して外部と前記光導波路との間で光を授受する。
【0025】
図1の光伝送基板は、基板1と光導波路2と光路変換面3とを具備し、さらに凹部4を具備する。
【0026】
凹部4は、基板1上に設けられ、光導波路2の端面2dと光路変換面3との間に介在し、基板1の方向に凹む構造を有する。たとえば、図1において凹部4は、底面4b、傾斜面4cおよび端面2dに囲まれた領域をいう。
【0027】
凹部4が端面2dと光路変換面3との間に介在することで、通常、端面2dの下端まで設けられる光路変換面3の面積を縮小することができる。そのため、光路変換時において生じる迷光を最小限に抑えることができる。
【0028】
凹部4は、その側縁4aが光路変換面3の下端と連続して繋がっている。このように凹部4と傾斜面4cとが連続して繋がっているため、例えば、その製造上において、屑(例えば、ダイシングソーによる光導波路の切削屑など)が光路変換面3上に存在する場合、または、別の基板との実装工程において、半田などの実装手段から発生したフラックスが光路変換面3上に存在する場合、傾斜した光路変換面3上の屑またはフラックスを凹部4まで落とし、凹部3内に屑またはフラックスを溜めることができる。そして、凹部3内の
屑またはフラックスは光路変換への影響が小さいため、光伝送基板は高効率な光結合が得られる。
【0029】
光路変換面3は、光導波路2の光軸方向Aに対して傾斜している。この傾斜角は、光路変換させたい角度によってそれぞれ異なり、例えば、光路を90度変換させたい場合、光導波路2の光軸方向Aに対して光路変換面3の傾斜角を45度に設定することが好ましい。
【0030】
凹部4は、基板1に対して光路変換面3よりも大きく傾斜した傾斜面4cを有することが好ましい。傾斜面4cは、光路変換面3の下端と連続して繋がっている。凹部4が傾斜面4cを有することにより、傾斜面4の傾斜角が光路変換面3の傾斜角よりも大きく、凹部4の容量が大きくなることから、屑またはフラックスを凹部4内により多く溜め込むことが可能となる。なお、図1において、基板1に対する傾斜面4cが傾斜角は略直角である。
【0031】
光路変換面3と傾斜面4cとの面が形成する角度が180度未満であることが好ましい。なお、図1における135度であることが最も好ましい。180度未満であることにより、屑等を光路変換面3から凹部4内へ落ちやすくなる。
【0032】
また、凹部4は、さらに底面4bを有することが好ましい。ここで、底面4bとは、傾斜面4cと端面2dとの間に設けられ、傾斜面4cと連続して繋がる部位をいう。底面4bを有しているため、光伝送基板の上から光路変換面付近を見て、位置合わせする場合、底面が光路変換面よりも小さな目印となるため、厳密な位置合わせをおこなうことができる。前述のように底面は光伝送基板の上から見て目印として確認できればよく、平面でも曲面でもかまわない。
【0033】
以下に、基板1、光導波路2、光路変換面3の材料等について具体的に示す。
【0034】
(基板1)
基板1としては、例えば、一般的に使用されているエポキシ樹脂やセラミックなどからなるプリント配線基板が用いられる。なかでも、機械的強度が大きく、熱による基板の反りに対して効果的な防止が可能となるため、両面に同じ厚さの樹脂絶縁層を形成した対称層構造を有するプリント配線基板が好ましく、両面の樹脂絶縁層の厚さが同じであることがより好ましい。基板1の厚みとしては、0.5〜1.6mmとすることができる。
【0035】
また、基板1として、多層配線基板を用いても良い。ここで、多層配線基板とは、電気配線層と絶縁層とが交互に複数積層されたものであればよく、例えば、コア基板と、配線基板表面側に形成されたビルドアップ層とからなる基板も含まれる。
【0036】
(光導波路2)
光導波路2は、基板1のソルダーレジストや電気配線層を除去した基板1表面に形成される。基板1の表面に直接形成する方法は、フォトリソグラフィによりソルダーレジスト開口部から確認できる電気配線層のマーカの位置を確認しながらコア2bの位置を決定することができる。
【0037】
光導波路2の作製法としては、一般的に使用されている方法でよく、直接露光法、屈折率変化法(フォトブリーチング法)、反応性イオンエッチング法等がある。光導波路2の材料としては、感光性を有するエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0038】
(光路変換面3)
光路変換面3の形成方法としては、一般的には先端が45度又は90度に加工されたダイヤモンドブレードを用いてダイシングソーで溝入れ加工することにより、光導波路2の一部を斜めに切り取って形成される。それ以外にも、光導波路2のパターニング時にグレイマスクや斜め露光等により斜面を形成する方法や、プリント基板切り分け時に使用するケガキ機などを用いる方法もある。
【0039】
光路変換面3の表面は、金(Au),銀(Ag),白金(Pt),アルミニウム(Al),銅(Cu)等のように光導波路2を伝送する光に対して反射率の高い膜を反射膜としてその表面に形成されている。光の波長が600から1500nmの場合、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の金属膜が好ましい。
【0040】
光路変換面3の形成方法としては、一般的に使用されている方法(蒸着法、スパッタリング法、めっき法など)が挙げられる。
【0041】
光路変換面3としては反射率を高めるために平坦で空隙の少ない膜が求められることから、蒸着による成膜が最も好適である。基板1上には光路変換面3をつけられない素子や基板実装部分(不図示)があることから、成膜時には不要部分を隠して必要な箇所のみを開けるマスクが必要となる。大きさや位置の精度からもメタルマスクを用いた蒸着が作製上最も簡便な方法である。
【0042】
<複合光伝送基板>
本発明の一実施態様の複合光伝送基板は、前記光伝送基板と、第2の光伝送基板5と、光伝送基板に第2の光伝送基板5を実装させる実装手段6と、を具備する。
【0043】
(第2の光伝送基板)
図2は複合光伝送基板の実施の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【0044】
図2において第2の光伝送基板内には、主面間を光が伝送する光伝送部7が設けられている。また、光伝送部7は、光路変換面3を介してコア部2bと光学的に結合している。なお、図2において光伝送部7は、第2の光伝送基板5の両主面間の貫通孔中に充填された透明樹脂を示している。
【0045】
光伝送部7は、中心部に屈折率の高いコア部7aと、コア部7aの周囲に設けられ、コア部7aよりも屈折率の低いクラッド部7bと、を有する。なお、コア7aは、透明樹脂のうち、貫通孔の中心軸に沿って設けられ、径方向における屈折率が周囲よりも高い領域をいう。また、クラッド部7bは、コア部7aの周囲に位置し、コア部7aの屈折率よりも高い屈折率を有する領域をいう。このような構造をとることにより、第2の光伝送基板5において基板間の光信号の伝送を高効率に行なうことが可能となる。
【0046】
光伝送部7としては、光を照射すると屈折率が低下するフォトブリーチング現象を生じるポリシラン、あるいは光を照射した部分が現像により除去できる感光性のアクリル系樹脂やエポキシ樹脂等を用いて形成することができる。例えば、フォトブリーチング現象を利用する場合は、第2の光伝送基板5に設けられた貫通孔にポリシランを充填し、加熱硬化させた後、フォトマスク(貫通孔より小さい径の円形パターンの遮光部を具備する)を介して紫外光を照射して紫外光照射部の屈折率を低下させ、最後にポストベークを行うことにより貫通孔内の透明樹脂に屈折率の分布を形成する。
【0047】
また、紫外線硬化型のアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂を用いる場合は、第2の光伝送基板5の貫通孔にこれらの感光性ポリマー材料を充填し、加熱硬化させた後、ドリルなど
により穿孔した部分(光伝送孔中心部)に、最初に充填した材料より屈折率の高い材料を充填し、フォトマスクを使用しないで紫外光を照射して硬化後、最後にポストベークを行うことにより、貫通孔内の光伝送部7に屈折率分布を形成する。
【0048】
なお、前述の貫通孔の形成には、通常のプリント基板の穿孔工程に使用されるドリルやレーザーが好適に使用される。そして、一方の主面から他方の主面まで第2の光伝送基板5を貫通させることにより貫通孔は形成される。貫通孔は断面を円形とすることが望ましく、直径は35〜200μmとすることが望ましい。
【0049】
第2の光伝送基板5は、一方の主面から他方の主面まで電気的に接続させる電気配線層11を有する。例えば、図2では、第2の光伝送基板5は、実装手段6を介して前記光伝送基板と電気的に接続している。
【0050】
(実装手段)
実装手段6として、光伝送基板に対して格子状に配置した球状の導電性部材(例えば、ボールグリッドアレイ(登録商標)、以下BGAとする)を用いることにより、リフロー時のセルフアライメントによって、光伝送基板と第2の光伝送基板5との位置合わせが行なわれる。
【0051】
実装手段6としては、他にピングリッドアレイ(登録商標)などがあげられるが、とくに、機械的に位置合わせをおこなう必要がないことから、BGAが好ましい。
【0052】
(光半導体素子)
図2の複合光伝送基板は、第2の光伝送基板5に対して、光半導体素子8を実装して用いられる。具体的には、第2の光伝送基板5の主面のうち、実装手段6が設けられた主面とは反対側の主面上の電気配線層11上に光半導体素子8は実装される。光半導体素子8は、光路変換面3および第2の光伝送基板5の光伝送部7を介してコア部2と光学的に結合する。
【0053】
光半導体素子8としては、面発光レーザ(VCSEL)などの発光素子や、面受光型の半導体受光素子(PD:Photo Diode)等が挙げられる。
【0054】
なお、本発明の一実施態様の光伝送基板は、光半導体素子8が直接実装されてもよいが、光導波路2に貫通電極、または光導波路2上に電気配線を設ける必要がなく、光導波路へのクラックや形状不良などの悪影響および段差を有する電気配線の断線の可能性が低いことから、図2のように、本発明の一実施態様の光伝送基板と光半導体素子8との間に第2の光伝送基板5を介在させて使用されることが好ましい。
【0055】
光半導体素子8は、第2の光伝送基板5の主面のうち、実装手段が設けられた主面とは反対側の主面上に実装される。
【0056】
図2において、複合光伝送基板における光の伝送は、以下のようにおこなわれる。
【0057】
光半導体素子8が面発光レーザ(VCSEL)などの発光素子の場合、その発光点から出射した光信号は光伝送部7のコア部7a中に伝搬する。そして、光路変換面3にて略直角に光路変換して、光導波路2のコア部2bに到達する。
【実施例】
【0058】
図3(a)〜(d)は、光伝送基板(図1)の製造方法の実施態様の一例を模式的に示す工程ごとの要部断面図である。図3をもとにして実施例にて、本発明の実施態様である
光伝送基板の具体的な作製プロセスを説明する。なお、本実施態様である光伝送基板の製造方法は以下の態様に限定されない。
【0059】
(a)光導波路2の形成
基板1として、0.8mmの厚みを有する多層プリント配線板を用いた。なお、基板1の最表面には、ソルダーレジスト層、および光導波路2を形成するためにソルダーレジスト層と電気配線層とが除去された部位が設けられている(不図示)。
【0060】
基板1の最表面に対して、感光性エポキシ樹脂を塗布、露光および現像をおこなうことにより、下部クラッド部2c、コア部2b、上部クラッド2aの順に積層した光導波路2を作製した。なお、下部クラッド部2c、コア部2b、上部クラッド部2aの厚みは、それぞれ25μm、50μm、25μmであった。また、基板1の電気配線層11の厚み約15μmであった。
【0061】
(b)溝9の形成
光導波路2に、先端角が45度のダイシングブレードを有するダイシングソーを用いて、上部クラッド2aから、基板の電気配線層を削らないように下部クラッド2cの一部まで溝入れを行い、深さが85μm、基板1に対して垂直な面(第2の内面9b)と45度傾斜した面(第1の内面9a)とを有する溝9を形成した。その際、ソルダーレジスト開口のアライメントマーカと光導波路2のコア部2bとを観察してダイシングソーの位置合わせを行なった。
【0062】
作製された溝9によりコア部2bは分断されていた。また、溝9はコア部2bの光軸方向とは略垂直に設けられていた。
【0063】
(c)光反射膜10の形成
溝9上から金(Au)を蒸着することにより溝9の内部に光反射膜10(厚さ約1000Å)を形成した。なお、蒸着は、開口をもつメタルマスクを基板1と位置合わせして固定し、溝9のみが露出した状態で行った。
【0064】
(d)第2の内面9b上の光反射膜10の除去工程
厚み20μmのダイシングブレードを有するダイシングソーを用いて、溝9の第2の内面9b上に蒸着した金を除去するように、第2の内面9bと、下部クラッド部2cは、コア部2bと基板1との間に介在する光導波路2の領域と、に溝入れを行い、コア部2bが露出した光導波路2の端面2dを露出させた(幅20μm)。
【0065】
具体的には、前記ダイシングソーを用いることにより、第2の内面9bおよび下部クラッド部2cを含む光導波路2の領域を除去して第2の内面9b上の光反射膜を除去し、さらに第1の内面9aの下端を含む領域を除去して、図1に示す凹部4を形成した。
【0066】
なお、工程(d)において、下部クラッド部2cおよび第2の内面9bにそれぞれ10μm切り込みを入れるよう位置合わせすることで、最終的に光導波路2の端面2dから光路変換面3までの最短距離が20μmとなるよう設定した。これにより光導波路2の端面2dから光路変換面3の間隔が広がることを極力抑えることができた。また、溝入れ深さは85μmとすることで電気配線への影響も避けることができた。
【0067】
以上により、本発明の一実施態様の光伝送基板が得られた。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 光導波路
2a 上部クラッド部
2b コア部
2c 下部クラッド部
2d 端面
3 光路変換面
4 凹部
4a 凹部の側縁
4b 底面
4c 傾斜面
5 第2の光伝送基板
6 実装手段
7 光伝送部
7a コア部
7b クラッド部
9 溝
9a 第1の内面
9b 第2の内面
10 光反射膜
11 電気配線層
A 光導波路2の光軸
B 光路変換面に入出力する光の光軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられた、コア部および該コア部を光軸方向の途中で分断する溝部を有する、樹脂材料からなる光導波路とを備えた光伝送基板であって、
前記光導波路の前記溝部内に、前記コア部が露出した端面と、該端面から離れた位置にあって前記光導波路の光軸方向に対して傾斜している光路変換面と、該光路変換面の下端に繋がっているとともに前記基板に対して前記光路変換面よりも大きく傾斜した傾斜面を持つ、下方向に凹んだ凹部とを有する光伝送基板。
【請求項2】
前記光路変換面の表面には、金属材料からなる金属膜が形成されているとともに、前記傾斜面は樹脂材料が露出している請求項1に記載の光伝送基板。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記光路変換面となす角度が180度未満である請求項1または2に記載の光伝送基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光伝送基板と、
前記光路変換面を介して前記コア部と光学的に結合し、主面間を光が伝送する第2の光伝送基板と、
前記光伝送基板に第2の光伝送基板を実装させる実装手段と、
を具備する複合光伝送基板。
【請求項5】
請求項4に記載の複合光伝送基板と、
前記光路変換面および前記第2の光伝送基板を介して前記コア部と光学的に結合し、前記第2の光伝送基板の主面のうち、前記実装手段が設けられた主面とは反対側の主面上に実装された光半導体素子と、を具備する光モジュール。
【請求項6】
基板上に、コア部およびクラッド部を有する、樹脂材料からなる光導波路を形成する工程(1)と、
前記基板に対して傾斜した第1の内面と、該第1の内面と対向する第2の内面と、を有する溝を、前記光導波路の前記コア部を分断するように形成する工程(2)と、
前記溝内部に光反射膜を設ける工程(3)と、
前記工程(3)において形成された、前記第1の内面上の光反射膜の一部、前記第2の内面上の光反射膜および前記光導波路の一部をダイシングブレードで除去して、前記第1の内面よりも前記基板に対して傾斜した傾斜面を持つ、下方向に凹んだ凹部、および前記コア部が露出した端面を有する溝部を前記光導波路に形成する工程(4)と
を含む光伝送基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−198566(P2012−198566A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135927(P2012−135927)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2008−18666(P2008−18666)の分割
【原出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】