説明

光半導体装置用封止剤及びそれを用いた光半導体装置

【課題】保存安定性に優れており、更に腐食性ガスに対して高いガスバリア性を有する光半導体装置用封止剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る光半導体装置用封止剤は、下記式(1)で表され、かつアリール基及びアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサンと、下記式(51)で表され、かつアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応用触媒とを含む。上記第1,第2のオルガノポリシロキサンにおけるアリール基の含有比率はそれぞれ、30モル%以上、70モル%以下である。上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合の割合は20モル%以上、80モル%以下である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置において光半導体素子を封止するために用いられる光半導体装置用封止剤、並びに該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)装置などの光半導体装置の消費電力は低く、かつ寿命は長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、液晶テレビ用バックライト、自動車用ランプ、照明器具及び看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置に用いられている発光素子である光半導体素子(例えばLED)が大気と直接触れると、大気中の水分又は浮遊するごみ等により、光半導体素子の発光特性が急速に低下する。このため、上記光半導体素子は、通常、光半導体装置用封止剤により封止されている。
【0004】
上記光半導体装置用封止剤の一例として、下記の特許文献1には、少なくとも1種のポリオルガノシロキサンと、有効量の付加反応用触媒とを含む光半導体措置用封止剤が開示されている。上記ポリオルガノシロキサンの混合物は、平均組成式が(RSiO1/2・(RSiO2/2・(RSiO3/2・(SiO4/2で表される。上記ポリオルガノシロキサンの式において、R〜Rは、各々同一でも異なっていてもよい有機基、水酸基又は水素原子から選択される。R〜Rの内の少なくとも1つは多重結合を有する炭化水素基及び水素原子を含む。M、D、T、Qは0以上1未満の数であり、かつM+D+T+Q=1、Q+T>0である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−359756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような従来の光半導体装置用封止剤では、保存安定性が悪いことがある。例えば、光半導体装置用封止剤を使用前に保存していると、光半導体装置用封止剤の透明性が低下することがある。
【0007】
また、光半導体装置では、発光素子の背面側に達した光を反射させるために、発光素子の背面に、銀めっきされた電極が形成されていることがある。従来の光半導体装置用封止剤を用いて光半導体装置を作製すると、封止剤にクラックが生じたり、封止剤がハウジング材から剥離したりすることがある。この結果、銀めっきされた電極が大気に晒される。この場合には、大気中に存在する硫化水素ガス又は亜硫酸ガス等の腐食性ガスによって、銀めっきが変色することがある。電極が変色すると反射率が低下するため、発光素子が発する光の明るさが低下するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、保存安定性に優れており、更に腐食性ガスに対して高いガスバリア性を有する光半導体装置用封止剤、並びに該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、下記式(1)で表され、かつアリール基及びアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサンと、下記式(51)で表され、かつアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記第2のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X)より求められるアリール基の含有比率がそれぞれ、30モル%以上、70モル%以下であり、上記第1のオルガノポリシロキサンが、1つの珪素原子に1つ又は2つのメチル基と1つのみのフェニル基とが結合したメチルモノフェニルシロキサン構造単位を有し、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が20モル%以上、80モル%以下である、光半導体装置用封止剤が提供される。
【0010】
【化1】

【0011】
上記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.50、b/(a+b+c)=0.40〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.50を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。但し、上記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位が、R1がメチル基であり、R2がフェニル基であり、R3がアルケニル基又は炭素数1〜8の炭化水素基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含むか、又は上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含む。
【0012】
【化2】

【0013】
上記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0.05〜0.50及びr/(p+q+r)=0.20〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合した水素原子を表し、アリール基及び珪素原子に結合した水素原子以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0014】
アリール基の含有比率(モル%)=(上記第1のオルガノポリシロキサン又は上記第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/上記第1のオルガノポリシロキサン又は上記第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量)×100 ・・・式(X)
【0015】
本発明に係る光半導体装置用封止剤のある特定の局面では、上記第1のオルガノポリシロキサンが、1つのみのメチル基と1つのみのフェニル基とが1つの珪素原子に結合したモノメチルモノフェニルシロキサン構造単位を有し、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含む。
【0016】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の他の特定の局面では、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位であって、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が20モル%以上、80モル%以下である。
【0017】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられており、かつ本発明に従って構成された光半導体装置用封止剤とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、式(1)で表され、かつアリール基及びアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサンと、式(51)で表され、かつアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、上記第1,第2のオルガノポリシロキサンにおける式(X)より求められるアリール基の含有比率がそれぞれ30モル%以上、70モル%以下であり、更に上記第1のオルガノポリシロキサンが、1つの珪素原子に1つ又は2つのメチル基と1つのみのフェニル基とが結合したメチルモノフェニルシロキサン構造単位を有し、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が20モル%以上、80モル%以下であるので、保存安定性に優れており、かつガスバリア性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、第1のオルガノポリシロキサンと、第2のオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応用触媒とを含む。
【0022】
上記第1のオルガノポリシロキサンは、式(1)で表され、かつアリール基とアルケニル基とを有する。上記第2のオルガノポリシロキサンは、式(51)で表され、アリール基と珪素原子に結合した水素原子とを有する。
【0023】
上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記第2のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X)より求められるアリール基の含有比率はそれぞれ、30モル%以上、70モル%以下である。
【0024】
アリール基の含有比率(モル%)=(上記第1のオルガノポリシロキサン又は上記第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/上記第1のオルガノポリシロキサン又は上記第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量)×100 ・・・式(X)
【0025】
なお、上記アリール基がフェニル基である場合には、上記アリール基の含有比率は、フェニル基の含有比率を示す。
【0026】
さらに、上記第1のオルガノポリシロキサンは、1つの珪素原子に1つ又は2つのメチル基と1つのみのフェニル基とが結合したメチルモノフェニルシロキサン構造単位を有する。上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は20モル%以上、80モル%以下である。
【0027】
本発明に係る光半導体装置用封止剤における上述した組成の採用により、特に上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中の上記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が20モル%以上、80モル%以下であることにより、封止剤の保存安定性がかなり高くなる。例えば、封止剤が長期間保存されても、封止剤中で、第1のオルガノポリシロキサンの存在むらが生じるのを抑制できる。例えば、一部の組成の第1のオルガノポリシロキサンが沈降することを抑制できる。この結果、封止剤の透明性が低下するのを抑制できる。
【0028】
また、メチルモノフェニルシロキサン構造単位が多いので、アリール基の含有比率を30モル以上に高くしても、2つ又は3つのフェニル基が1つの珪素原子に結合したジ又はトリフェニルシロキサン構造単位の割合を少なくすることが可能である。上記ジ又はトリフェニルシロキサン構造単位の割合が少ないと、封止剤の保存安定性がより一層高くなる。上記ジ又はトリフェニルシロキサン構造単位の割合が多い第1のオルガノポリシロキサンは、2つ又は3つのフェニル基同士の相互作用により封止剤中で比較的沈降しやすい傾向がある。これに対して、上記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合を多くすることで、封止剤の保存安定性を効果的に高めることができる。
【0029】
また、発光素子の背面側に達した光を反射させるために、発光素子の背面に、銀めっきされた電極が形成されていることがある。封止剤にクラックが生じたり、封止剤がハウジング材から剥離したりすると、銀めっきされた電極が大気に晒される。この場合には、大気中に存在する硫化水素ガス又は亜硫酸ガス等の腐食性ガスによって、銀めっきが変色することがある。電極が変色すると反射率が低下するため、発光素子が発する光の明るさが低下するという問題がある。
【0030】
このような問題に対して、本発明に係る光半導体装置用封止剤における上述した組成の採用により、特に上記第1,第2のオルガノポリシロキサンにおけるアリール基の含有比率が30モル%以上、70モル%以下であることによって、本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化物にクラック又は剥離が生じ難くなり、封止剤の硬化物のガスバリア性がかなり高くなる。
【0031】
以下、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0032】
(第1のオルガノポリシロキサン)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1)で表され、かつアリール基とアルケニル基とを有する。上記第1のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合した水素原子を有さず、アリール基とアルケニル基とを有する第1のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。アリール基とアルケニル基とはそれぞれ、珪素原子に直接結合していることが好ましい。上記アリール基としては、無置換のフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。なお、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子が、珪素原子に結合していてもよく、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子とは異なる炭素原子が、珪素原子に結合していてもよい。上記第1のオルガノポリシロキサンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
【化3】

【0034】
上記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.50、b/(a+b+c)=0.40〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.50を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。但し、上記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位が、R1がメチル基であり、R2がフェニル基であり、R3がアルケニル基又は炭素数1〜8の炭化水素基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含むか、又は上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含む。なお、上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び(R6SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0035】
すなわち、上記第1のオルガノポリシロキサンは、全構造単位中に、下記式(1−a1)で表される構造単位を有するか、又は下記式(1−b1)で表される構造単位を有する。また、上記第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1−a1)で表される構造単位と、下記式(1−b1)で表される構造単位との双方を有していてもよい。下記式(1−a1)で表される構造単位は、メチルモノフェニルシロキサン構造単位である。下記式(1−a1)で表される構造単位は、1つのメチル基を有していてもよく、2つのメチル基を有していてもよい。下記式(1−b1)で表される構造単位は、1つのみのメチル基を有する。下記式(1−b1)で表される構造単位は、メチルモノフェニルシロキサン構造単位(モノメチルモノフェニルシロキサン構造単位)である。なお、下記式(1−a1)又は下記式(1−b1)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0036】
【化4】

【0037】
上記式(1−a1)中、R3は、アルケニル基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0038】
【化5】

【0039】
なお、上記式(1−a1)で表される構造単位がある場合に、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位は、上記式(1−a1)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、上記式(1−a1)で表される構造単位と上記式(1−a1)で表される構造単位以外の構造単位との双方を含んでいてもよい。また、上記式(1−b1)で表される構造単位がある場合に、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、上記式(1−b1)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、上記式(1−b1)で表される構造単位と上記式(1−b1)で表される構造単位以外の構造単位との双方を含んでいてもよい。
【0040】
上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は20モル%以上、80モル%以下である。メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は、上記式(1−a1)で表される構造単位と上記式(1−b1)で表される構造単位との合計の割合である。封止剤の保存安定性及びガスバリア性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上である。上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は、70モル%以下であってもよく、60モル%以下であってもよい。
【0041】
封止剤の保存安定性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンが、1つのみのメチル基と1つのみのフェニル基とが1つの珪素原子に結合したメチルモノフェニルシロキサン構造単位を有し、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含むことが好ましい。すなわち、上記第1のオルガノポリシロキサンは、上記式(1−b1)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0042】
封止剤の保存安定性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位であって、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が20モル%以上、80モル%以下であることが好ましい。すなわち、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記式(1−b1)で表される構造単位の割合は20モル%以上、80モル%以下であることが好ましい。封止剤の保存安定性及びガスバリア性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記式(1−b1)で表される構造単位の割合は好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上である。上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、上記式(1−b1)で表される構造単位の割合は70モル%以下であってもよく、60モル%以下であってもよい。
【0043】
上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位が、R1及びR2がそれぞれフェニル基であり、R3がフェニル基、アルケニル基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表すジ又はトリフェニルシロキサン構造単位を含むか、又は(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4及びR5がそれぞれフェニル基であるジフェニルシロキサン構造単位を含んでいてもてよい。
【0044】
すなわち、上記第1のオルガノポリシロキサンは、全構造単位中に、下記式(1−a2)で表される構造単位を有するか、又は下記式(1−b2)で表される構造単位を有していてもよい。また、上記第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1−a2)で表される構造単位と、下記式(1−b2)で表される構造単位との双方を有していてもよい。なお、下記式(1−a2)又は式(1−b2)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0045】
【化6】

【0046】
上記式(1−a2)中、R3は、フェニル基、アルケニル基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0047】
【化7】

【0048】
なお、上記式(1−a2)で表される構造単位がある場合に、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位は、上記式(1−a2)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、上記式(1−a2)で表される構造単位と上記式(1−a2)で表される構造単位以外の構造単位との双方を含んでいてもよい。また、上記式(1−b2)で表される構造単位がある場合に、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、上記式(1−b2)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、上記式(1−b2)で表される構造単位と上記式(1−b2)で表される構造単位以外の構造単位との双方を含んでいてもよい。
【0049】
封止剤の保存安定性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、ジフェニルシロキサン構造単位とトリフェニルシロキサン構造単位との合計の割合は少ないほどよい。すなわち、ジ又はトリフェニルシロキサン構造単位の割合が少なく、メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が多いほど、封止剤の保存安定性がより一層高くなる。上記第1のオルガノポリシロキサンは、ジフェニルシロキサン構造単位とトリフェニルシロキサン構造単位との双方を有さないことが特に好ましい。ジフェニルシロキサン構造単位とトリフェニルシロキサン構造単位との合計の割合は、上記式(1−a2)で表される構造単位と上記式(1−b2)で表される構造単位との合計の割合である。上記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、ジフェニルシロキサン構造単位とトリフェニルシロキサン構造単位との合計の割合は好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、より一層好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更に一層好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下である。
【0050】
上記式(1)は平均組成式を示す。上記式(1)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(1)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R6SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0052】
なお、一般に、上記式(1)の各構造単位において、アルコキシ基の含有量は少なく、更にヒドロキシ基の含有量も少ない。これは、一般に、第1のオルガノポリシロキサンを得るために、アルコキシシラン化合物などの有機珪素化合物を加水分解し、重縮合させると、アルコキシ基及びヒドロキシ基の多くは、シロキサン結合の部分骨格に変換されるためである。すなわち、アルコキシ基の酸素原子及びヒドロキシ基の酸素原子の多くは、シロキサン結合を形成している酸素原子に変換される。上記式(1)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合には、シロキサン結合の部分骨格に変換されなかった未反応のアルコキシ基又はヒドロキシ基がわずかに残存していることを示す。後述の式(51)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合に関しても、同様のことがいえる。
【0053】
上記式(1)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基及び上記式(1)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0054】
上記式(1)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0055】
上記第1のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X1)より求められるアリール基の含有比率は30モル%以上、70モル%以下である。このアリール基の含有比率が30モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が70モル%以下であると、封止剤の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は35モル%以上であることが好ましい。剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、65モル%以下であることが好ましい。
【0056】
アリール基の含有比率(モル%)=(平均組成式が式(1)で表される上記第1のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/平均組成式が式(1)で表される上記第1のオルガノポリシロキサンの数平均分子量)×100 ・・・式(X1)
【0057】
上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンにおいて、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0058】
(R4R5SiXO1/2) ・・・式(1−2)
【0059】
(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R4及びR5で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。具体的には、アルコキシ基がシロキサン結合の部分骨格に変換された場合には、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。未反応のアルコキシ基が残存している場合、又はアルコキシ基がヒドロキシ基に変換された場合には、残存アルコキシ基又はヒドロキシ基を有する(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。また、下記式(1−b)で表される構造単位において、Si−O−Si結合中の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0060】
【化8】

【0061】
上記式(1−2)及び式(1−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−b)、式(1−2)及び式(1−2−b)中のR4及びR5は、上記式(1)中のR4及びR5と同様の基である。
【0062】
上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンにおいて、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は下記式(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0063】
(R6SiX1/2) ・・・式(1−3)
(R6SiXO2/2) ・・・式(1−4)
【0064】
(R6SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(1−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−3−c)又は下記式(1−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R6で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R6SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0065】
【化9】

【0066】
上記式(1−3)、式(1−3−c)、式(1−4)及び式(1−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−c)、式(1−3)、式(1−3−c)、式(1−4)及び式(1−4−c)中のR6は、上記式(1)中のR6と同様の基である。
【0067】
上記式(1−b)及び式(1−c)、式(1−2)〜(1−4)、並びに式(1−2−b)、式(1−3−c)及び式(1−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0068】
上記式(1)中、a/(a+b+c)は0以上、0.50以下である。a/(a+b+c)が上記上限以下であると、封止剤の耐熱性がより一層高くなり、かつ封止剤の剥離をより一層抑制できる。上記式(1)中、a/(a+b+c)は、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下である。なお、aが0であり、a/(a+b+c)が0である場合、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)の構造単位は存在しない。
【0069】
上記式(1)中、b/(a+b+c)は0.40以上、1.0以下である。b/(a+b+c)が上記下限以上であると、封止剤の硬化物が硬くなりすぎず、封止剤にクラックが生じ難くなる。上記式(1)中、b/(a+b+c)は、好ましくは0.50以上である。
【0070】
上記式(1)中、c/(a+b+c)は0以上、0.50以下である。c/(a+b+c)が上記上限以下であると、封止剤の適正な粘度を維持することが容易であり、密着性がより一層高くなる。上記式(1)中、c/(a+b+c)は、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.35以下である。なお、cが0であり、c/(a+b+c)が0である場合、上記式(1)中、(R6SiO3/2)の構造単位は存在しない。
【0071】
上記式(1)中のc/(a+b+c)は、0であることが好ましい。すなわち、上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1A)で表される第1のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。これにより、封止剤にクラックがより一層生じ難くなり、かつ封止剤がハウジング材等からより一層剥離し難くなる。
【0072】
【化10】

【0073】
上記式(1A)中、a及びbは、a/(a+b)=0〜0.50及びb/(a+b)=0.50〜1.0を満たし、R1〜R5は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基及びアルケニル基以外のR1〜R5は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。但し、上記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位が、R1がメチル基であり、R2がフェニル基であり、R3がアルケニル基又は炭素数1〜8の炭化水素基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含むか、又は上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含む。
【0074】
上記式(1A)中、a/(a+b)は好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下である。上記式(1A)中、b/(a+b)は好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上である。
【0075】
上記第1のオルガノポリシロキサンについて、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び上記式(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R6SiO3/2)で表される構造単位、並びに上記式(1−3)及び式(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0076】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(1)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0077】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0078】
(第2のオルガノポリシロキサン)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている第2のオルガノポリシロキサンは、下記式(51)で表され、アリール基と珪素原子に結合した水素原子とを有する。アリール基は珪素原子に直接結合していることが好ましい。水素原子は珪素原子に直接結合している。上記第2のオルガノポリシロキサンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
【化11】

【0080】
上記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0.05〜0.50及びr/(p+q+r)=0.20〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合した水素原子を表し、アリール基及び珪素原子に結合した水素原子以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び(R56SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0081】
上記式(51)は平均組成式を示す。上記式(51)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(51)中のR51〜R56は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R56SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0083】
上記式(51)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基及びアリル基が挙げられる。
【0084】
封止剤の硬化性を高め、熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記式(51)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53が水素原子、アリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことが好ましい。上記式(51)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53がアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことがより好ましい。
【0085】
すなわち、上記式(51)中、(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(51−a)で表される構造単位を含むことが好ましい。(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(51−a)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、下記式(51−a)で表される構造単位と下記式(51−a)で表される構造単位以外の構造単位との双方を含んでいてもよい。
【0086】
【化12】

【0087】
上記式(51−a)中、R52及びR53はそれぞれ、アリール基、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。R52及びR53はそれぞれ、アリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0088】
封止剤の硬化性を高め、熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記式(51)中の全構造単位100モル%中、(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位であって、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53が水素原子、アリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位(上記式(51−a)で表される構造単位)の割合は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下である。
【0089】
上記第2のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X51)より求められるアリール基の含有比率は30モル%以上、70モル%以下である。このアリール基の含有比率が30モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が70モル%以下であると、封止剤の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は35モル%以上であることが好ましい。剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、65モル%以下であることが好ましい。
【0090】
アリール基の含有比率(モル%)=(平均組成式が上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/平均組成式が上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量)×100 ・・・式(X51)
【0091】
上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンにおいて、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(51−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0092】
(R54R55SiXO1/2) ・・・式(51−2)
【0093】
(R54R55SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(51−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R54及びR55で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0094】
【化13】

【0095】
上記式(51−2)及び式(51−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−b)、式(51−2)及び式(51−2−b)中のR54及びR55は、上記式(51)中のR54及びR55と同様の基である。
【0096】
上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンにおいて、(R56SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(51−3)又は下記式(51−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0097】
(R56SiX1/2) ・・・式(51−3)
(R56SiXO2/2) ・・・式(51−4)
【0098】
(R56SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(51−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−3−c)又は下記式(51−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R56で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R56SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0099】
【化14】

【0100】
上記式(51−3)、式(51−3−c)、式(51−4)及び式(51−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−c)、式(51−3)、式(51−3−c)、式(51−4)及び式(51−4−c)中のR56は、上記式(51)中のR56と同様の基である。
【0101】
上記式(51−b)及び式(51−c)、式(51−2)〜(51−4)、並びに式(51−2−b)、式(51−3−c)及び式(51−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0102】
上記式(51)中、p/(p+q+r)は0.05以上、0.50以下である。p/(p+q+r)が上記上限以下であると、封止剤の耐熱性がより一層高くなり、かつ封止剤の剥離をより一層抑制できる。上記式(51)中、p/(p+q+r)は、好ましくは0.10以上、好ましくは0.45以下である。
【0103】
上記式(51)中、q/(p+q+r)は0.05以上、0.50以下である。q/(p+q+r)が上記上限以下であると、封止剤の硬化物が硬くなりすぎず、封止剤にクラックが生じ難くなる。q/(p+q+r)が上記下限以上であると、封止剤のガスバリア性がより一層高くなる。上記式(51)中、q/(p+q+r)は、好ましくは0.10以上、好ましくは0.45以下である。
【0104】
上記式(51)中、r/(p+q+r)は0.20以上、0.80以下である。r/(p+q+r)が上記下限以上であると、封止剤の硬度が上がり、傷及びゴミの付着を防止でき、封止剤の耐熱性が高くなり、高温環境下で封止剤の硬化物の厚みが減少し難くなる。r/(p+q+r)が上記上限以下であると、封止剤の適正な粘度を維持することが容易であり、密着性がより一層高くなる。
【0105】
上記第2のオルガノポリシロキサンについて、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(51)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(51)中の(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び上記式(51−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(51)中の(R56SiO3/2)で表される構造単位、並びに上記式(51−3)及び式(51−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0106】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(51)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0107】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(51)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(51)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0108】
上記第1のオルガノポリシロキサン100重量部に対して、上記第2のオルガノポリシロキサンの含有量は好ましくは10重量部以上、好ましくは400重量部以下である。上記第1,第2のオルガノポリシロキサンの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性及びガスバリア性により一層優れた封止剤を得ることができる。硬化性及びガスバリア性にさらに一層優れた封止剤を得る観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサン100重量部に対して、上記第2のオルガノポリシロキサンの含有量は、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、特に好ましくは30重量部以上、最も好ましくは50重量部以上、より好ましくは300重量部以下、更に好ましくは200重量部以下である。
【0109】
(第1,第2のオルガノポリシロキサンの他の性質及びその合成方法)
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは1000以上、好ましくは200000以下、より好ましくは100000以下、更に好ましくは50000以下、特に好ましくは15000以下である。数平均分子量が上記下限以上であると、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、高温環境下で封止剤の硬化物の厚みが減少しにくくなる。数平均分子量が上記上限以下であると、粘度調節が容易である。
【0110】
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質として求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
【0111】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンを合成する方法としては特に限定されず、アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法、及びクロロシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が挙げられる。なかでも、反応の制御の観点からアルコキシシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が好ましい。
【0112】
アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物を、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、ジシロキサン化合物を加水分解して用いてもよい。
【0113】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンにアリール基を導入するための有機珪素化合物としては、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0114】
上記第1のオルガノポリシロキサンにアルケニル基を導入するための有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0115】
上記第2のオルガノポリシロキサンに珪素原子に結合した水素原子を導入するための有機珪素化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0116】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンを得るために用いることができる他の有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0117】
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物及びその誘導体、並びに有機酸の酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
【0118】
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸及び炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0119】
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0120】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド及びセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0121】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物及びセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒又はセシウム系触媒が好ましい。
【0122】
(ヒドロシリル化反応用触媒)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれているヒドロシリル化反応用触媒は、上記第1のオルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、上記第2のオルガノポリシロキサン中の珪素原子に結合した水素原子とをヒドロシリル化反応させる触媒である。
【0123】
上記ヒドロシリル化反応用触媒として、ヒドロシリル化反応を進行させる各種の触媒を用いることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0124】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。封止剤の透明性を高くすることができるため、白金系触媒が好ましい。
【0125】
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
【0126】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
【0127】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
【0128】
高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をより一層抑制し、かつ封止剤の変色をより一層抑制する観点からは、上記ヒドロシリル化反応用触媒は、白金のアルケニル錯体であることが好ましい。高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をさらに一層抑制し、かつ封止剤の変色をさらに一層抑制する観点からは、上記白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とを反応させることにより得られる白金のアルケニル錯体であることが好ましい。この場合に、白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物である。また、上記白金のアルケニル錯体の使用により、封止剤の透明性を高くすることもできる。上記白金のアルケニル錯体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記白金のアルケニル錯体を得るための白金原料として、上記塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO)を用いることが好ましい。
【0130】
上記白金のアルケニルを得るための上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物としては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0131】
上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物における「当量」に関しては、上記塩化白金酸6水和物1モルに対して上記2官能以上のアルケニル化合物が1モルである重量を1当量とする。上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物は、50当量以下であることが好ましい。
【0132】
上記白金のアルケニル錯体を得るために用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール及び1−ブタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。トルエン及びキシレン等の芳香族系溶媒を用いてもよい。上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0133】
上記白金のアルケニル錯体を得るために、上記成分に加えて単官能のビニル化合物を用いてもよい。上記単官能のビニル化合物としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン及びビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0134】
塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物に関して、白金元素と6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とは、共有結合していたり、配位していたり、又は共有結合しかつ配位していたりする。
【0135】
封止剤中で、上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、金属原子(白金のアルケニル錯体の場合には白金原子)の重量単位で好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは1ppm以上、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記下限以上であると、封止剤を十分に硬化させることが容易である。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記上限以下であると、硬化物の着色の問題が生じ難い。
【0136】
(酸化珪素粒子)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、酸化珪素粒子をさらに含んでいてもよい。この酸化珪素粒子の使用により、封止剤の硬化物の耐熱性及び耐光性を損なうことなく、硬化前の封止剤の粘度を適当な範囲に調整できる。従って、封止剤の取り扱い性を高めることができる。また、上記酸化珪素粒子は、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。この表面処理により、酸化珪素粒子の分散性が非常に高くなり、硬化前の封止剤の温度上昇による過度の粘度低下をより一層抑制できる。
【0137】
上記酸化珪素粒子の一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記下限以上であると、酸化珪素粒子の分散性がより一層高くなり、封止剤の硬化物の透明性がより一層高くなる。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記上限以下であると、25℃における粘度の上昇効果を充分に得ることができ、かつ温度上昇における粘度の低下を抑制できる。
【0138】
上記酸化珪素粒子の一次粒子径は、以下のようにして測定される。光半導体装置用封止剤の硬化物を透過型電子顕微鏡(商品名「JEM−2100」、日本電子社製)を用いて観察する。視野中の100個の酸化珪素粒子の一次粒子の大きさをそれぞれ測定し、測定値の平均値を一次粒子径とする。上記一次粒子径は、上記酸化珪素粒子が球形である場合には酸化珪素粒子の直径の平均値を意味し、非球形である場合には酸化珪素粒子の長径の平均値を意味する。
【0139】
上記酸化珪素粒子のBET比表面積は、好ましくは30m/g以上、好ましくは400m/g以下である。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が30m/g以上であると、封止剤の25℃における粘度を好適な範囲に制御でき、温度上昇における粘度の低下を抑制できる。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が400m/g以下であると、酸化珪素粒子の凝集が生じ難くなり、分散性を高くすることができ、更に封止剤の硬化物の透明性をより一層高くすることができる。
【0140】
上記酸化珪素粒子としては特に限定されず、例えば、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ、並びにコロイダルシリカ、ゾルゲルシリカ、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ等が挙げられる。なかでも、揮発成分が少なく、かつ透明性がより一層高い封止剤を得る観点からは、上記酸化珪素粒子として、フュームドシリカが好適に用いられる。
【0141】
上記フュームドシリカとしては、例えば、Aerosil 50(比表面積:50m/g)、Aerosil 90(比表面積:90m/g)、Aerosil 130(比表面積:130m/g)、Aerosil 200(比表面積:200m/g)、Aerosil 300(比表面積:300m/g)、及びAerosil 380(比表面積:380m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0142】
上記酸化珪素粒子は、有機ケイ素化合物により表面処理されていてもよい。この表面処理により酸化珪素粒子の分散性が非常に高くなり、封止剤の温度上昇による粘度の低下をより一層抑制できる。
【0143】
上記第1のオルガノポリシロキサンと上記第2のオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、上記酸化珪素粒子の含有量は、0重量%以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記酸化珪素粒子の含有量が上記下限以上であると、硬化時の過度の粘度低下を抑制することが可能になる。上記酸化珪素粒子の含有量が上記上限以下であると、封止剤の粘度をより一層適正な範囲に制御でき、かつ封止剤の透明性がより一層高くなる。
【0144】
(蛍光体)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、蛍光体をさらに含んでいてもよい。本発明に係る光半導体装置用封止剤は、蛍光体を含んでいなくてもよい。この場合には、封止剤は、使用時に蛍光体が添加されてもよい。
【0145】
上記蛍光体は、光半導体装置用封止剤を用いて封止する発光素子が発する光を吸収し、蛍光を発生することによって、最終的に所望の色の光を得ることができるように作用する。上記蛍光体は、発光素子が発する光によって励起され、蛍光を発し、発光素子が発する光と蛍光体が発する蛍光との組み合わせによって、所望の色の光を得ることができる。
【0146】
例えば、発光素子として紫外線LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、青色蛍光体、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。発光素子として青色LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせて用いるか、又は、黄色蛍光体を用いることが好ましい。上記蛍光体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0147】
所望の色の光を得るように、上記蛍光体の含有量は適宜調整でき、特に限定されない。本発明に係る光半導体装置用封止剤100重量部に対して、上記蛍光体の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、好ましくは40重量部以下である。光半導体装置用封止剤の蛍光体を除く全成分100重量部に対して、上記蛍光体の含有量は好ましくは0.1重量部以上、好ましくは40重量部以下である。
【0148】
(他の成分)
接着性を付与するために、本発明に係る光半導体装置用封止剤は、カップリング剤をさらに含んでいてもよい。さらに、本発明に係る光半導体装置用封止剤は、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー又は難燃剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0149】
なお、上記第1のオルガノポリシロキサンと、上記第2のオルガノポリシロキサンと、上記ヒドロシリル化反応用触媒とは、これらを1種又は2種以上含む液を別々に調製しておき、使用直前に複数の液を混合して、本発明に係る光半導体装置用封止剤を調製してもよい。例えば、上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記ヒドロシリル化反応用触媒を含むA液と、上記第2のオルガノポリシロキサンを含むB液とを別々に調製しておき、使用直前にA液とB液とを混合して、本発明に係る光半導体装置用封止剤を調製してもよい。この場合に、上記酸化珪素粒子と上記蛍光体とはそれぞれ、A液に添加してもよく、B液に添加してもよく、A液とB液とに添加してもよい。このように上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記ヒドロシリル化反応用触媒と上記第2のオルガノポリシロキサンとを別々に、第1の液と第2の液との2液にすることによって保存安定性を向上させることができる。
【0150】
(光半導体装置用封止剤の詳細及び用途)
本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化温度は特に限定されない。光半導体装置用封止剤の硬化温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。硬化温度が上記下限以上であると、封止剤の硬化が充分に進行する。硬化温度が上記上限以下であると、パッケージの熱劣化が起こり難い。
【0151】
硬化方式は特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、封止剤の硬化収縮を抑えることができる。
【0152】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール又はビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上記第1のオルガノポリシロキサン、上記第2のオルガノポリシロキサン、上記ヒドロシリル化反応用触媒、及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
【0153】
上記発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、及びSiC等が挙げられる。
【0154】
上記基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、及びGaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料との間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層の材料としては、例えば、GaN及びAlN等が挙げられる。
【0155】
本発明に係る光半導体装置としては、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置及びフォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター及びコピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト並びにスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0156】
本発明に係る光半導体装置では、本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化物により、光半導体により形成された発光素子が封止されている。本発明に係る光半導体装置では、LEDなどの光半導体により形成された発光素子を封止するように、光半導体装置用封止剤の硬化物が配置されている。このため、発光素子を封止している光半導体装置用封止剤の硬化物にクラックが生じ難く、パッケージからの剥離が生じ難く、かつ光透過性、耐熱性、耐候性及びガスバリア性を高めることができる。
【0157】
(光半導体装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【0158】
本実施形態の光半導体装置1は、ハウジング2を有する。ハウジング2内にLEDである光半導体素子3が実装されている。この光半導体素子3の周囲を、ハウジング2の光反射性を有する内面2aが取り囲んでいる。本実施形態では、光半導体により形成された発光素子として、光半導体素子3が用いられている。
【0159】
内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面2aに到達した光が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。光半導体素子3を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、光半導体装置用封止剤4が充填されている。
【0160】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体装置の実装構造等には適宜変形され得る。
【0161】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0162】
(合成例1)第1のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン63g、ジメチルジメトキシシラン75g、ジフェニルジメトキシシラン110g、メチルフェニルジメトキシシラン102g、及びビニルトリメトキシシラン112gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(A)を得た。
【0163】
得られたポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は1800であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(A)は、下記の平均組成式(A1)を有していた。
【0164】
(MeSiO1/20.15(MeSiO2/20.18(PhSiO2/20.20(MePhSiO2/20.22(ViSiO3/20.25 …式(A1)
【0165】
上記式(A1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。得られたポリマー(A)のフェニル基の含有比率は36モル%であった。得られたポリマー(A)のメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は22モル%であった。
【0166】
なお、合成例1及び合成例2〜6で得られた各ポリマーの分子量は、10mgにテトラヒドロフラン1mLを加え、溶解するまで攪拌し、GPC測定により測定した。GPC測定では、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いた。
【0167】
(合成例2)第1のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン78g、ジフェニルジメトキシシラン71g、メチルフェニルジメトキシシラン268g、及びビニルメチルジメトキシシラン119gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水108gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(B)を得た。
【0168】
得られたポリマー(B)の数平均分子量(Mn)は4800であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(B)は、下記の平均組成式(B1)を有していた。
【0169】
(MeSiO2/20.16(PhSiO2/20.18(MePhSiO2/20.41(ViMeSiO2/20.25 …式(B1)
【0170】
上記式(B1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。得られたポリマー(B)のフェニル基の含有比率は49モル%であった。得られたポリマー(B)のメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は41モル%であった。
【0171】
(合成例3)第1のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン63g、ジフェニルジメトキシシラン71g、メチルフェニルジメトキシシラン311g、及びビニルメチルジメトキシシラン119gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水112gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(C)を得た。
【0172】
得られたポリマー(C)の数平均分子量(Mn)は4600であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(C)は、下記の平均組成式(C1)を有していた。
【0173】
(MeSiO2/20.08(PhSiO2/20.11(MePhSiO2/20.56(ViMeSiO2/20.25 …式(C1)
【0174】
上記式(C1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。得られたポリマー(C)のフェニル基の含有比率は41モル%であった。得られたポリマー(C)のメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は56モル%であった。
【0175】
(合成例4)第2のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン39g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン57g、ジメチルジメトキシシラン42g、ジフェニルジメトキシシラン198g、フェニルトリメトキシシラン54g、及びビニルトリメトキシシラン42gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.4gと水104gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(D)を得た。
【0176】
得られたポリマー(D)の数平均分子量(Mn)は1400であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(D)は、下記の平均組成式(D1)を有していた。
【0177】
(MeSiO1/20.10(HMeSiO1/20.24(MeSiO2/20.14(PhSiO2/20.15(PhSiO3/20.27(ViSiO3/20.10 …式(D1)
【0178】
上記式(D1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。得られたポリマー(D)のフェニル基の含有比率は32モル%であった。
【0179】
(合成例5)第1のオルガノポリシロキサンに類似したオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン51g、ジメチルジメトキシシラン67g、ジフェニルジメトキシシラン205g、メチルフェニルジメトキシシラン58g、及びビニルトリメトキシシラン112gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(E)を得た。
【0180】
得られたポリマー(E)の数平均分子量(Mn)は2700であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(E)は、下記の平均組成式(E1)を有していた。
【0181】
(MeSiO1/20.10(MeSiO2/20.14(PhSiO2/20.38(MePhSiO2/20.13(ViSiO3/20.25 …式(E1)
【0182】
上記式(E1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。得られたポリマー(E)のフェニル基の含有比率は44モル%であった。得られたポリマー(E)のメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は13モル%であった。
【0183】
(合成例6)第1のオルガノポリシロキサンに類似したオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン77g、メチルフェニルジメトキシシラン331g、及びビニルメチルジメトキシシラン119gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水110gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(F)を得た。
【0184】
得られたポリマー(F)の数平均分子量(Mn)は4900であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(F)は、下記の平均組成式(F1)を有していた。
【0185】
(MeSiO2/20.12(MePhSiO2/20.63(ViMeSiO2/20.25 …式(F1)
【0186】
上記式(F1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。得られたポリマー(F)のフェニル基の含有比率は29モル%であった。得られたポリマー(F)のメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合は63モル%であった。
【0187】
(白金アルケニル錯体Aの合成)
環流管を備えた反応フラスコに、塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO、300mg)、及び2−プロパノール(4.6ml)を入れて、窒素雰囲気下にて室温で20分間攪拌した。20分後、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、400mg)を加えて、ガスの発生がなくなるまで攪拌し、次に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(8当量、864mg)を加え、反応溶液を60℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、無水硫酸マグネシウム(300mg)を加えて5分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルを溶媒に用いてセライトろ過を行い、溶液量が5gになるまで濃縮し、白金アルケニル錯体Aの溶液を得た。
【0188】
(実施例1)
ポリマーA(10g)、ポリマーD(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0189】
(実施例2)
ポリマーB(10g)、ポリマーD(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0190】
(実施例3)
ポリマーC(10g)、ポリマーD(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0191】
(比較例1)
ポリマーE(10g)、ポリマーD(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0192】
(比較例2)
ポリマーF(10g)、ポリマーD(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0193】
(評価)
(オルガノポリシロキサンの保存安定性)
合成例1〜3及び5,6で得られた第1のオルガノポリシロキサン及び第1のオルガノポリシロキサンに類似したオルガノポリシロキサン20gをサンプル瓶に入れ、23℃及び相対湿度85RH%雰囲気下で1ヶ月放置した。1ヶ月放置した後のオルガノポリシロキサンの透過率を測定した。透過率が90%以上である「○」、透過率が90%未満を「×」とした。
【0194】
結果を下記の表1に示す。
【0195】
【表1】

【0196】
なお、上記表1では、第1のオルガノポリシロキサン及び第1のオルガノポリシロキサンに類似したオルガノポリシロキサンの保存安定性の評価結果を示した。これらオルガノポリシロキサンを配合した光半導体装置用封止剤の保存安定性についても評価した結果、第1のオルガノポリシロキサン及び第1のオルガノポリシロキサンに類似したオルガノポリシロキサンの保存安定性(透過率)が悪くなるに従って、これらオルガノポリシロキサンを配合した光半導体装置用封止剤の保存安定性(透過率)も同様に悪くなる傾向があった。特に、比較例1の光半導体装置用封止剤では透過率がかなり低下し、封止剤の保存安定性が悪かった。
【0197】
(光半導体装置の作製)
銀めっきされたリード電極付きポリフタルアミド製ハウジング材に、ダイボンド材によって主発光ピークが460nmの発光素子が実装されており、発光素子とリード電極とが金ワイヤーで接続されている構造において、得られた蛍光体入り封止剤を注入し、150℃で2時間加熱して硬化させ、光半導体装置を作製した。この光半導体装置を用いて、ガス腐食試験を実施した。
【0198】
(ガス腐食試験)
得られた光半導体装置を、40℃及び相対湿度90%RH雰囲気下のチャンバー内に入れ、硫化水素ガスの濃度が5ppm、二酸化硫黄ガスの濃度が15ppmとなるようにチャンバー内にガスを充填した。ガスの充填から、100時間後及び500時間後に銀めっきされたリード電極を目視で観察した。
【0199】
銀めっきに変色が見られない場合を「○」、銀めっきに茶褐色に変色した箇所が少しみられる場合を「△」、銀めっきのほとんどすべてが茶色に変色した場合を「×」と判定した。
【0200】
結果を下記の表2に示す。
【0201】
【表2】

【符号の説明】
【0202】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体素子
4…光半導体装置用封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、かつアリール基及びアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサンと、
下記式(51)で表され、かつアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンと、
ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、
前記第1のオルガノポリシロキサン及び前記第2のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X)より求められるアリール基の含有比率がそれぞれ、30モル%以上、70モル%以下であり、
前記第1のオルガノポリシロキサンが、1つの珪素原子に1つ又は2つのメチル基と1つのみのフェニル基とが結合したメチルモノフェニルシロキサン構造単位を有し、
前記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、前記メチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が20モル%以上、80モル%以下である、光半導体装置用封止剤。
【化1】

前記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.50、b/(a+b+c)=0.40〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.50を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。但し、前記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位が、R1がメチル基であり、R2がフェニル基であり、R3がアルケニル基又は炭素数1〜8の炭化水素基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含むか、又は前記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含む。
【化2】

前記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0.05〜0.50及びr/(p+q+r)=0.20〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合した水素原子を表し、アリール基及び珪素原子に結合した水素原子以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
アリール基の含有比率(モル%)=(前記第1のオルガノポリシロキサン又は前記第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/前記第1のオルガノポリシロキサン又は前記第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量)×100 ・・・式(X)
【請求項2】
前記第1のオルガノポリシロキサンが、1つのみのメチル基と1つのみのフェニル基とが1つの珪素原子に結合したモノメチルモノフェニルシロキサン構造単位を有し、
前記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位が、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位を含む、請求項1に記載の光半導体装置用封止剤。
【請求項3】
前記第1のオルガノポリシロキサンの全構造単位100モル%中、前記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位であって、R4がメチル基、R5がフェニル基であるメチルモノフェニルシロキサン構造単位の割合が20モル%以上、80モル%以下である、請求項2に記載の光半導体装置用封止剤。
【請求項4】
光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体装置用封止剤とを備える、光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−64062(P2013−64062A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203345(P2011−203345)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】