説明

光半導体装置

【課題】硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置を提供する。
【解決手段】銀メッキされた銅製のリードフレーム6に接続された光半導体素子3を、付加硬化型シリコーン樹脂組成物7で封止した光半導体装置1−1であって、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、(A)アリール基及びアルケニル基を含有し、エポキシ基を含有しないオルガノポリシロキサン、(B)一分子中にヒドロシリル基(SiH基)を少なくとも2個有し、かつアリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、HRSiO0.5単位を構成単位のうち30モル%以上含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記成分(A)中のアルケニル基に対する前記成分(B)中のヒドロシリル基のモル比が0.70〜1.00となる量、及び(C)ヒドロシリル化触媒:触媒量を含有するものであることを特徴とする光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に関するもので、付加硬化型シリコーン樹脂組成物により封止された光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、光の強度が強く、かつ発熱の大きな高輝度発光ダイオード(LED)が商品化され、幅広く使用されるようになってきた。
【0003】
このようなLED装置は、リードフレームと一体成形したカップ状のプレモールドパッケージが使用され、その内部にLEDを実装し、これを封止樹脂で封止することにより製造される。この際、リードフレームは、LED実装時の導電性確保とLEDの反射効率を高めるため、通常、母材に銅を使用し、これに銀メッキが施されるが、製造コストを削減するため、銀メッキの厚みを薄くする傾向がある。
【0004】
一方、封止樹脂には、その性質上、硬化物が透明性を有することが要求されており、一般にビスフェノールA型エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂及び酸無水物系硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物が用いられている(特許文献1、特許文献2)。しかし、かかるエポキシ樹脂組成物の硬化物は、短波長を有する光線の透過性が低いため、耐光耐久性が低い、或いは光劣化により着色するという問題が生じている。
【0005】
そこで、ヒドロシリル基(SiH基)と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、及びヒドロシリル化触媒からなる付加硬化型シリコーン樹脂組成物が封止樹脂として提案されている(特許文献3、特許文献4)。しかし、かかる付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物(封止樹脂)は、上述の銅に薄い銀メッキが施されたリードフレームとの組み合せにおいて、銀イオンが薄いメッキ層に拡散し、封止樹脂層に到達し茶色に変色し輝度の低下を招くため、LED装置の品質が低下するという問題が生じている。即ち、このような付加硬化型シリコーン樹脂組成物を用いても、その硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れたLED装置が得られていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3241338号公報
【特許文献2】特開平7−25987号公報
【特許文献3】特開2002−327126号公報
【特許文献4】特開2002−338833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、封止樹脂であるアリール基含有付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、銀メッキされた銅製のリードフレームに接続された光半導体素子を、付加硬化型シリコーン樹脂組成物で封止した光半導体装置であって、
前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、
(A)アリール基及びアルケニル基を含有し、エポキシ基を含有しないオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にヒドロシリル基(SiH基)を少なくとも2個有し、かつアリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、HRSiO0.5単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基である。)を構成単位のうち30モル%以上含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記成分(A)中のアルケニル基に対する前記成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.70〜1.00となる量、及び
(C)ヒドロシリル化触媒:触媒量を含有するものであることを特徴とする光半導体装置である。
【0009】
このような付加硬化型シリコーン樹脂組成物と銀メッキされた銅製のリードフレームの組み合わせであれば、封止樹脂である付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置を提供することができる。
【0010】
また、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中の(A)成分は、シリコーンレジンとシリコーンオイルの混合物であることが好ましい。シリコーンレジンとシリコーンオイルの混合物とすることにより、封止樹脂としてより適度な硬さ、強度、弾性、衝撃強さ等を有するものとなる。
【0011】
また、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中の(B)成分は、下記式(B1)及び/又は(B2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることにより銀イオンによる硬化物の変色をより一層低減することができる。
【化1】

(Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、Rは少なくとも1つのアリール基を含有する一価炭化水素基であり、mは1〜4の整数である。)
【化2】

(R、Rは上記と同様であり、nは1〜100の整数である。)
【0012】
さらに、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、(D)接着付与剤を含むものが好ましく、特に(D)成分は一分子中にアリール基、アルケニル基及びエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0013】
これにより、より接着性の高い付加硬化型シリコーン樹脂組成物となる。
【0014】
また、本発明は、前記リードフレームは、プラズマ処理を施したものを用いた場合、より効果的である。
【0015】
このようにプラズマ処理することで、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の濡れ性の高いリードフレームとすることができ、接着性が向上する。活性化した銀が表面に溶出しているにもかかわらず、SiH基とアルケニル基のモル比を調節することで、耐変色性に優れる半導体装置を提供できる。
【0016】
さらに、前記光半導体装置は、内部底面に前記リードフレームが配されるように一体成形したカップ状のプレモールドパッケージを有し、
前記プレモールドパッケージの内部で、前記光半導体素子の電極が導電性接着剤及び導電性ワイヤーを介して前記リードフレームに接続されることで、前記半導体素子が実装され、又は前記光半導体素子の電極が半田バンプを介してフェースダウンし前記リードフレームに一括接続されることで、前記半導体素子がフリップチップ実装されたものであり、
前記プレモールドパッケージの内部が前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物で封止されたものとすることができる。
【0017】
また、前記光半導体装置は、前記リードフレームが配された基板であって、該リードフレームに導電性接着剤及び導電性ワイヤーを介して接続された前記光半導体素子が実装された基板を、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物で成形、硬化して、ダイシングしたものとすることもできる。
【0018】
このような光半導体装置は付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置となる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、封止樹脂である付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の光半導体装置の第1態様の概略断面図である。
【図2】本発明の光半導体装置の第2態様の概略断面図である。
【図3】本発明の光半導体装置の第3態様の概略断面図である。
【図4】本発明の光半導体装置の第4態様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。上述のように、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置の開発が求められていた。
【0022】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物(封止樹脂)と銅に薄い銀メッキが施されたリードフレームとの組み合せにおいて、銀イオンが薄いメッキ層に拡散し、メッキ界面や封止樹脂層に到達すると考えられる。茶色に変色する原因は、銀メッキ表面の銀が熱などにより酸化され銀イオンとなり溶出し、樹脂の中のSiHと反応することにより還元されナノ銀となることで変色が起こると考え、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の中のアルケニル基に対するヒドロシリル基のモル比を0.70〜1.00とすることにより、銀の析出を抑制でき、その硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置が得られることを見出し、本発明をなすに至った。以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0023】
[光半導体装置]
本発明は、銀メッキされた銅製のリードフレームに接続された光半導体素子を、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物で封止した光半導体装置であって、
前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、
(A)アリール基及びアルケニル基を含有し、エポキシ基を含有しないオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にヒドロシリル基(SiH基)を少なくとも2個有し、かつアリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、HRSiO0.5単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基である。)を構成単位のうち30モル%以上含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記成分(A)中のアルケニル基に対する前記成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.70〜1.00となる量、及び
(C)ヒドロシリル化触媒:触媒量を含有するものであることを特徴とする光半導体装置である。
【0024】
ここで、前記光半導体装置は、内部底面に前記リードフレームが配されるように一体成形したカップ状のプレモールドパッケージを有し、
前記プレモールドパッケージの内部で、前記光半導体素子の電極が導電性接着剤及び導電性ワイヤーを介して前記リードフレームに接続されることで、前記半導体素子が実装され、又は前記光半導体素子の電極が半田バンプを介してフェースダウンし前記リードフレームに一括接続されることで、前記半導体素子がフリップチップ実装されたものであり、
前記プレモールドパッケージの内部が前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物で封止されたものとすることができる。
【0025】
また、前記光半導体装置は、前記リードフレームが配された基板であって、該リードフレームに導電性接着剤及び導電性ワイヤーを介して接続された前記光半導体素子が実装された基板を、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物で成形、硬化して、ダイシングしたものとすることもできる。
【0026】
このような光半導体装置は付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置となる。まず、上記の光半導体装置の構造について具体的に図面を参照して説明をする。
【0027】
図1及び2は、本発明の光半導体装置の第1態様、第2態様の光半導体装置の概略断面図である。図1に示される光半導体装置1−1は、内部底面にリードフレーム6が配されるよう一体成形したカップ状のプレモールドパッケージ2内部に、図示しない光半導体素子の電極を導電性接着剤4及び導電性ワイヤー5を介して前記リードフレーム6に接続し、光半導体素子3を実装すると共に、前記プレモールドパッケージ2内部を封止樹脂7で封止したものである。
【0028】
図2に示される光半導体装置1−2は、内部底面にリードフレーム6が配されるよう一体成形したカップ状のプレモールドパッケージ2内部に、図示しない光半導体素子3の電極を半田バンプ8を介してフェースダウンし前記リードフレーム6に一括接続し光半導体素子3をFC(フリップチップ)実装すると共に、前記プレモールドパッケージ2内部を封止樹脂7で封止したものである。
【0029】
ここで、上記リードフレーム6には母材の銅に0.5〜5μmの銀メッキしたものが用いられる。また、封止樹脂7に付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物を用いる。
【0030】
また、図3,4は本発明の光半導体装置の第3態様および第4態様の光半導体装置の概略断面図である。図3に示される光半導体装置1−3と、図4に示される光半導体装置1−4のどちらも保護フィルム9上にリードフレーム6が配され、光半導体素子3の電極を導電性接着剤4を介して前記リードフレーム6に接続し、光半導体素子3を実装すると共に、そのリードフレーム面を直接成形することにより封止樹脂7で封止したものである。
【0031】
[付加硬化型シリコーン樹脂組成物]
本発明の半導体装置に用いられる付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)を含有するものである。
【0032】
〔成分(A)と成分(B)の配合量〕
成分(B)は、成分(A)中のアルケニル基に対する成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.70〜1.00であり、この割合は、封止樹脂の耐久的な変色防止に重要である。好ましくは0.75〜1.00、特に好ましくは0.80〜1.00である。
【0033】
上記モル比が、0.7未満になると組成物の硬化反応が十分に進行せず、封止樹脂の特性が不十分となり、またモル比が、1.00を超えると、未反応のヒドロシリル基が硬化物中に多量に残存してしまう。そのため、リードフレームの母材の銀界面の銀イオンが銀メッキ表面や封止樹脂中に拡散し、銀イオンは未反応のヒドロシリル基との還元反応により、銀に戻ってしまい、そのときに黄褐色のナノ銀に戻ってしまうと考えられる。このようなリードフレーム母材の銅の銀メッキ表面や封止樹脂への拡散後の酸化還元反応は、結果としてリードフレーム母材からのナノ銀の溶出反応を促進させることになり、特に封止樹脂を黄〜茶色に変色させてしまい、光半導体装置の発光素子の輝度を低下させる原因となる。
【0034】
特にメチルシリコーン樹脂などはガス透過性が高いため、例え銀イオンが溶出したとしても、内在することなく大気中へと拡散され変色がないと考えられる。また、エポキシ樹脂はガス透過性が非常に低いため、銀メッキ表面や封止樹脂表面の銀イオンの溶出を防ぐことができた。しかし、透明性に優れたアリール基含有シリコーン樹脂は、ガス透過性が上記樹脂の中間の透過性を示しているので、銀イオンが樹脂内部または銀メッキ表面に内在しやすいと考えられる。
【0035】
一方、モル比を0.7〜1.00とすることにより、硬化反応が十分に進行するので封止樹脂として十分なものとなる。また、未反応のヒドロシリル基が硬化物中に残存することもないため、リードフレーム表面から産生される銀イオンが銀メッキ表面もしくは封止樹脂内部に拡散したとしても、未反応のヒドロシリル基と反応することがない。そのため、特に封止樹脂を変色させることもなく、光半導体装置の発光素子の輝度が低下することもない。以下、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の各成分について説明する。
【0036】
〔(A)アリール基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン〕
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物の成分(A)は、アリール基及びアルケニル基を含有し、エポキシ基を含有しないオルガノポリシロキサンであり、例えば下記平均組成式(1)で示すことができる。
(R(RSiO(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、aは0.3〜1.0、好ましくは0.4〜0.8、bは0.05〜1.5、好ましくは0.2〜0.8、cは0.05〜0.8、好ましくは0.05〜0.3の数であり、但しa+b+c=0.5〜2.0、より好ましくは0.5〜1.6である。)
【0037】
上記平均組成式(1)において、Rは炭素数6〜14、好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、特に好ましくはフェニル基である。Rは炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の、アリール基、アルケニル基を除く、置換又は非置換の一価炭化水素基である。このようなRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、及びシアノエチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0038】
上記平均組成式(1)において、Rは炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基である。このようなRとしては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられ、中でもビニル基またはアリル基が望ましい。
【0039】
このようなオルガノシロキサンとしては、直鎖状のシリコーンオイル及び/又は分岐構造を有するシリコーンレジンが挙げられる。
【0040】
シリコーンオイルは、主鎖がジオルガノシロキサン単位((RSiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((RSiO1/2単位)で封鎖された直鎖状構造を有するオルガノポリシロキサンであることが一般的である(前記式においてRは上述のR、RまたはRを意味する)。中でも下記平均組成式(2)で表される分子鎖両末端のケイ素原子に各1個以上のビニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・s、好ましくは1000〜50000mPa・sのものが作業性、硬化性等の観点から好ましい。粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0041】
シリコーンオイルの場合、ケイ素原子に結合した置換基(シロキサン結合を形成する酸素原子を除く)のアリール基含有量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8〜60モル%、特に好ましくは10〜50モル%である。
【0042】
【化3】

(式中、Rは同一又は異なってもよいR、RまたはRから選ばれる基であり、少なくとも5モル%はアリール基ある。gは1、2又は3の整数であり、xは25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sとなる1以上の整数である。)
【0043】
このような成分(A)のオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものを挙げられる。
【化4】

(式中、x1及びx2は、1以上の整数であり、x3は0以上の整数であり、x1+x3、x2+x3は上記xと同様の整数を満たす。)
【0044】
【化5】

(式中、x1及びx3は上述したとおりである。)
【0045】
また、成分(A)のオルガノポリシロキサンとしてのシリコーンレジンは、分子内にSiO単位(Q単位)及び/又はRSiO1.5単位(T単位)で表される分岐構造を有するものである。
シリコーンレジンの場合、ケイ素原子に結合した置換基(シロキサン結合を形成する酸素原子を除く)のアリール基含有量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10〜80モル%、特に好ましくは20〜70モル%である。
具体的にはSiO単位、RSiO0.5単位(M単位)からなるシリコーンレジン、RSiO1.5単位からなるシリコーンレジン、RSiO1.5単位、RSiO単位(D単位)からなるシリコーンレジン、RSiO1.5単位、RSiO単位、RSiO0.5単位からなるシリコーンレジン等が例示される。
【0046】
また、このオルガノポリシロキサンは、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜100,000の範囲であるものが好適である。
ここで、レジン構造のオルガノポリシロキサンは、対応する加水分解性基含有シランやシロキサンを公知の方法で単独又は共加水分解させることにより得ることができる。
【0047】
ここで、Q単位を導入する原料としては、ケイ酸ソーダ、アルキルシリケート、ポリアルキルシリケート、四塩化ケイ素等が挙げられる。
【0048】
T単位を導入する原料としては、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0049】
アルケニル基を含有するM単位を導入する原料としては、下記のものが挙げられる。
【化6】

【0050】
アルケニル基を含有しないM単位を導入する原料としては、下記のものが挙げられる。
【化7】

【0051】
(A)成分は、シリコーンレジンとシリコーンオイルを併用することが好ましい。併用することにより、封止剤としての硬さ、弾性、耐クラック性等の特性がより優れたものとなると共に表面タック性も改善される。好ましい配合割合は、質量比でシリコーンレジン:シリコーンオイルが、好ましくは95〜30:5〜70、より好ましくは90〜40:10〜60、特に好ましくは90〜50:10〜50である。
【0052】
〔(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン〕
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物の成分(B)は、一分子中にヒドロシリル基(SiH基)を少なくとも2個有し、かつアリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、HRSiO0.5単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基である。)を構成単位のうち30モル%以上含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0053】
この成分(B)は、架橋剤であり、該成分(B)中のヒドロシリル基(SiH基)と成分(A)中のアルケニル基とが付加反応することにより硬化物を形成するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0054】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にヒドロシリル基(SiH基)を2個以上、好ましくは3個以上有するものであればよいが、中でも下記平均組成式(3)で表され、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)有するものが好ましい。
(R)SiO(4−e−f)/2 (3)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、e及びfは、0.001≦e<2、0.7≦f≦2、かつ0.8≦e+f≦3を満たす数である。)
【0055】
上記平均組成式(3)において、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜7の一価炭化水素基であることが好ましく、例えば、メチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基等、前述の平均組成式(1)の置換基Rで例示したものが挙げられる。
【0056】
また、e及びfは、0.001≦e<2、0.7≦f≦2、かつ0.8≦e+f≦3を満たす数であり、好ましくは0.05≦e≦1、0.8≦f≦2、かつ1≦e+f≦2.7となる数である。ケイ素原子に結合した水素原子の位置は特に制約はなく、分子の末端でも非末端でもよい。
【0057】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0058】
また、下記構造で示される単位を使用して得られるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができる。
【化8】

【0059】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記のものが挙げられる。
【化9】

【0060】
このように、成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は3〜1,000、特に3〜300のものを使用することができる。
【0061】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、通常、RSiHCl、RSiCl、RSiCl、RSiHCl(Rは、前記の通りである)のようなクロロシランを加水分解するか、加水分解して得られたシロキサンを平衡化することにより得ることができる。
【0062】
その中でも、末端にHRSiO0.5単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることで、反応性を高めるだけでなく、銀イオンや酸化銅との還元反応が起こりやすい。そのため、成分(A)中のアルケニル基に対する成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.70〜1.00の量であれば、反応性の高い末端RHSiO0.5単位が成分(A)中のアルケニル基と付加反応してなくなるため、変色が起こらない。それ故に末端RHSiO0.5単位が全(B)成分中の構成単位のうち30モル%以上含む必要がある。30モル%未満では反応性が低い分岐状ハイドロジェンポリオルガノシロキサンが多くなり、反応性が遅い樹脂となってしまう。
【0063】
このような、成文(B)は、2種以上の組み合わせで使用することができる。
これらの中で、下記式(B1)、(B2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましい。
【化10】

(Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、Rは少なくとも1つのアリール基を含有する一価炭化水素基であり、mは1〜4の整数である。)
【化11】

(R、Rは上記と同様であり、nは1〜100の整数である。)
特に、(B1)と(B2)を併用することが、好ましく、その比率は、重量比で99:1〜50:50、特には95:5〜60:40とすることが好ましい。
【0064】
なお、(B)のケイ素原子に直結する置換基(シロキサン結合を形成する酸素を除く)の5〜70モル%が、アリール基、特にはフェニル基であることが好ましい。このような付加硬化型シリコーン樹脂組成物はより透明性が高く、より光半導体装置に適したものとなる。
【0065】
〔(C)触媒〕
成分(C)は、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の付加硬化反応を生じさせる触媒である。
【0066】
このような触媒としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系等のものがあるが、コスト等の見地から白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、HPtCl・mHO,KPtCl,KHPtCl・mHO,KPtCl,KPtCl・mHO,PtO・mHO(mは正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を挙げることができ、これらは単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0067】
これらの触媒成分の配合量は、硬化有効量であり所謂触媒量でよく、通常、前記成分(A)の合計量100質量部当り、白金族金属の質量換算で0.1〜1,000ppm、特に0.5〜200ppmの範囲で使用される。
【0068】
〔(D)接着付与剤〕
また、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、(D)接着付与剤を含むものであることが好ましい。接着付与剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、分子中にエポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルコキシ基等反応性基を有するシロキサン等が挙げられ、エポキシ基を有するシランカップリング剤、エポキシ基を有するシロキサンが好ましく、特に一分子中にアリール基、アルケニル基及びエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましい。一分子中にアリール基、アルケニル基及びエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンとしては下記一般式で示されるものを例示することができる。これらの接着付与剤は、単独でも2種以上混合して使用することも可能である。
【化12】

(式中、Rはそれぞれ独立して、ヒドロキシル基、又は、同一又は異種の一価炭化水素基である。j=1又は2、k=1、2又は3であり、s、t、uは、0を超える正数であり、s+t+u=1である。)
【0069】
このような接着付与剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。配合量が少なすぎると接着性向上効果が不十分となることがあり、多すぎても更なる接着性向上効果はなく、コスト的に不利になることがある。
【0070】
〔その他の成分〕
本発明に使用する付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、上述した成分(A)〜(C)を必須成分とするが、これに必要に応じて公知の各種の添加剤を配合してもよい。
【0071】
このような添加剤としては、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機充填剤、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛等の非補強性無機充填剤、BHT、ビタミンB等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光劣化防止剤、ビニルエーテル類、ビニルアミド類、エポキシ樹脂、オキセタン類、アリルフタレート類、アジピン酸ビニル等の反応性希釈剤等が挙げられる。
【0072】
〔付加硬化型シリコーン樹脂組成物の調製方法等〕
付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)、及び所望の上記その他の成分を同時に、又は別々に必要により加熱処理を加えながら攪拌、溶解、混合、及び分散させることにより得ることができる。
【0073】
但し、通常は、使用前に硬化反応が進行しないように、成分(A)及び成分(C)と、成分(B)とを2液に分けて保存し、使用時に2液を混合して硬化させる。このような2液の分け方をするのは、成分(B)と成分(C)の同一配合は、脱水素反応の危険性から避ける必要があるためである。また、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加して1液として用いることもできる。
【0074】
攪拌等の操作に用いる装置は特に限定されないが、攪拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これら装置を適宜組み合わせてもよい。
【0075】
尚、得られた付加硬化型シリコーン樹脂組成物の回転粘度計により測定した25℃における粘度は、100〜10,000,000mPa・s、特には300〜500,000mPa・sが好ましい。
【0076】
このようにして得られる付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、必要によって加熱することにより直ちに硬化して、高い透明性を有し、かつLCP等のパッケージ材料や金属基板に非常によく接着するため、光半導体素子の封止に有効であり、光半導体素子としては、例えば、LED、フォトダイオード、CCD、CMOS、フォトカプラなどが挙げられ、特にLEDの封止に有効である。
【0077】
[封止方法]
封止方法としては、光半導体素子の種類に応じた公知の方法が採用され、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化条件は、特に制限されるものではないが、通常、室温〜250℃、好ましくは60〜200℃で、通常1分〜10時間、好ましくは10分〜6時間程度で硬化させることができる。
【0078】
[リードフレーム]
尚、銀メッキしたリードフレームは、上記付加硬化型シリコーン樹脂組成物の濡れ性を高めるため、予め表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理をする場合は、作業性や設備の保全等の観点から、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理等の乾式法が好ましく、特にプラズマ処理が好ましい。このように、プラズマ処理されたリードフレームは、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の濡れ性の高いリードフレームとなる。
【0079】
なお、前記リードフレームは、プラズマ処理を施さないものとすることができ、この場合は作業性や設備コストの観点から好ましい。
【0080】
以上のようにして得られる付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物で封止された光半導体装置は、上述の通り、硬化物中に未反応のヒドロシリル基が残存することがないため、その結果、硬化物の変色が抑制され、反射効率の耐久性に優れた光半導体装置を提供することが可能となる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0082】
[物理特性評価:実施例1〜5、比較例1〜3]
下記各種材料を表1に記載した通り配合し、均一に混練して各種付加硬化型シリコーン樹脂組成物を得るとともに、これを150℃、4時間の条件で加熱、成型にすることにより、10mm(縦)×60mm(横)×1mm(厚)の各種試験片を作製した。
【0083】
このようにして得られた試験片を用いて、この厚み方向に450nm波長光を照射し光透過の外観を目視にて観察した。また、JIS K 6301に準拠して、引張強度、硬度(A型、D型スプリング試験機を用いて測定)及び伸びを測定した。結果を表1に併記する。
【0084】
[使用した材料]
1)ビニルフェニルレジン1:(C)SiO1.5単位80モル%、(CHViSiO0.5単位20モル%からなるレジン構造を有するビニルフェニルレジン(ビニル当量0.140mol/100g)
2)ビニルフェニルレジン2:(C)SiO1.5単位70モル%、(CHViSiO0.5単位30モル%からなるレジン構造を有するビニルフェニルレジン(ビニル当量0.198mol/100g)
3)ビニルフェニルオイル1:下記平均組成式(i)で表されるビニルフェニルオイル(ビニル当量0.0185mol/100g)
【化13】

(z=30、x=68)
4)ビニルフェニルオイル2:上記平均組成式(i)で表されるビニルフェニルオイル(z=9、x=19)(ビニル当量0.0590mol/100g)
5)フェニルハイドロジェンポリシロキサン1:下記平均組成式(ii)で表されるフェニルハイドロジェンポリシロキサン。水素ガス発生量94.02ml/g(0.420mol/100g)
【化14】

(n=2)
6)フェニルハイドロジェンポリシロキサン2:下記平均組成式(iii)で表されるフェニルハイドロジェンポリシロキサン。水素ガス発生量170.24ml/g(0.760mol/100g)
【化15】

(n=2)
7)フェニルハイドロジェンポリシロキサン3:下記平均組成式(iv)で表されるフェニルハイドロジェンポリシロキサン。水素ガス発生量169.8ml/g(0.758mol/100g)
【0085】
【化16】

(q=17、r=38)
8)白金触媒:白金触媒:白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジメチルジフェニルポリシロキサン(両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたもの)溶液〔白金原子含有量:1質量%〕
9)接着付与剤1:下記式(v)で表される接着付与剤
【0086】
【化17】

(式中、h=1、2又は3、j=1又は2、R=水素原子、メチル基又はイソプロピル基である化合物の混合物。)
10)接着付与剤2:下記式(vi)で表される接着付与剤
【0087】
【化18】

(式中、j=1又は2、k=1、2又は3、R=水素原子、メチル基又はイソプロピル基である化合物の混合物。s=0.2、t=0.5、u=0.3)
【0088】
【表1】

【0089】
表1に示すように、実施例1〜5及び比較例1,2については、十分な物理特性(硬度、引張強度、伸び)が認められた。一方、比較例3については、十分な物理特性が認められず、比較例3は引張強度及び伸びが悪かった。
【0090】
[変色度評価:実施例6〜10、比較例4〜6]
また、上記実施例1〜5及び比較例1〜3の各種付加硬化型シリコーン樹脂組成物を用い、LED装置を作製し変色度合いの評価を行った。
【0091】
即ち、底面に厚さ2μmの銀メッキを施した銅製リードフレームを配したカップ状のLED用プレモールドパッケージ(3mm×3mm×1mm、開口部の直径2.6mm)に対し、減圧下でArプラズマ(出力100W、照射時間10秒)処理を行い、該底面の該リードフレームにInGaN系青色発光素子の電極を銀ペースト(導電性接着剤)を用いて接続すると共に、該発光素子のカウンター電極を金ワイヤーにてカウンターリードフレームに接続し、各種付加硬化型シリコーン樹脂組成物をパッケージ開口部に充填し、60℃で1時間、更に150℃で4時間硬化させて封止した。
【0092】
このようにして得られたLED装置を、100℃雰囲気下で500時間放置した後、パッケージ内の銀メッキ表面近傍の変色度合いを目視で調べた。また、上記LED装置を、85℃湿度85%雰囲気下で500時間放置した後、パッケージ内の銀メッキ表面近傍の変色度合いを目視で観察した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表2に示すように、実施例6〜10については、パッケージ内の銀メッキ表面近傍の変色は認められなかった。一方、比較例4〜6については、パッケージ内の銀メッキ表面近傍が茶変しており、実施例6〜10に対して目視観察で明らかな発光強度の低下が認められた。また、比較例6については、パッケージ内の銀メッキ表面近傍がやや茶変しているものの、実施例6〜10に対して目視観察で明らかな発光強度の低下は認められなかった。
【0095】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0096】
1−1〜4 光半導体装置
2 プレモールドパッケージ
3 光半導体素子
4 導電性接着剤
5 導電性ワイヤー
6 リードフレーム
7 封止樹脂
8 半田バンプ
9 保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀メッキされた銅製のリードフレームに接続された光半導体素子を、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物で封止した光半導体装置であって、
前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、
(A)アリール基及びアルケニル基を含有し、エポキシ基を含有しないオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にヒドロシリル基(SiH基)を少なくとも2個有し、かつアリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、HRSiO0.5単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基である。)を構成単位のうち30モル%以上含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記成分(A)中のアルケニル基に対する前記成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.70〜1.00となる量、及び
(C)ヒドロシリル化触媒:触媒量を含有するものであることを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
前記(B)成分が、下記式(B1)及び/又は(B2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置。
【化1】

(Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、Rは少なくとも1つのアリール基を含有する一価炭化水素基であり、mは1〜4の整数である。)
【化2】

(R、Rは上記と同様であり、nは1〜100の整数である。)
【請求項3】
前記(A)成分が、シリコーンレジンとシリコーンオイルの混合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
更に、(D)接着付与剤を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記(D)成分が、一分子中にアリール基、アルケニル基及びエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記リードフレームは、プラズマ処理を施したものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記光半導体装置は、内部底面に前記リードフレームが配されるように一体成形したカップ状のプレモールドパッケージを有し、
前記プレモールドパッケージの内部で、前記光半導体素子の電極が導電性接着剤及び導電性ワイヤーを介して前記リードフレームに接続されることで、前記半導体素子が実装され、又は前記光半導体素子の電極が半田バンプを介してフェースダウンし前記リードフレームに一括接続されることで、前記半導体素子がフリップチップ実装されたものであり、
前記プレモールドパッケージの内部が前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物で封止されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記光半導体装置は、前記リードフレームが配された基板であって、該リードフレームに導電性接着剤及び導電性ワイヤーを介して接続された前記光半導体素子が実装された基板を、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物で成形、硬化して、ダイシングしたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の光半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55205(P2013−55205A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192013(P2011−192013)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】