説明

光変調装置及び光変調集積装置

【課題】小型化可能であって、変調効率を高めた光変調装置を得る。
【解決手段】基板上に間隔を隔てて形成された第1の光導波路及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路における屈折率を変化させるため、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に沿って設けられた電極と、前記電極に接続されており、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に電圧を印加するための電源と、を有し、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路のうち、どちらか一方または双方の光導波路は、波長λの光を反射する構造の回折格子領域と、0からλ/2の範囲で位相シフトさせる位相シフト領域により形成されていることを特徴とする光変調装置により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調装置及び光変調集積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
WDM(Wavelength Division Multiplexing)システムにおいて用いられる光送信装置の構成としては、DFB(Distributed Feedback)レーザと光変調器とを組み合わせたものが一般的に用いられている。WDMシステムにおいては、数十を超える波長チャネルがあり、広帯域な波長の入力光に対応した光変調器が望まれている。
【0003】
このような広帯域な波長における動作を実現することができる光変調器の1つとして、半導体材料により形成されるマッハツェンダ(Mach-Zehnder;MZ)型光変調器が挙げられる。(例えば、特許文献1)
【0004】
図1に、マッハツェンダ型光変調器を示す。マッハツェンダ型光変調器は、半導体基板上に、光導波路となる第1のアーム311と第2のアーム312が形成されている。第1のアーム311及び第2のアームの両側には、電界を印加することにより屈折率を変化させるための電極321、322及び323が、第1のアーム311及び第2のアーム312に沿って設けられている。このマッハツェンダ型光変調器は、第1のアーム311の両側に設けられた電極321と電極322との間に電圧を印加することにより、第1のアーム311における屈折率を変化させることができる。また、第2のアーム312の両側に設けられた電極322と電極323との間に電圧を印加することにより、第2のアーム312における屈折率を変化させることができる構造となっている。
【0005】
このため、電極321と電極322との間には、第1の電気信号源331が設けられており、電極322と電極323との間には、第2の電気信号源332が設けられており、電極322は接地されている。入射部341より入射した連続光である入射光は、第1のアーム311と第2のアーム312に分岐して伝搬し、第1の電気信号源331と第2の信号源332とを制御することにより変調され、再び合波し、出射部342より変調光である出射光として出射される。
【0006】
出射部342により出射される出射光の光強度は、第1のアーム311及び第2のアームにおいて伝搬する光の位相差により変化する。具体的には、第1のアーム311及び第2のアーム312のアームの長さをL、伝搬する光の波長をλ、第1のアーム311及び第2のアーム312における屈折率をnとした場合、第1のアーム311及び第2のアーム312の光の位相は、(1)式で表される。
【0007】
2nL/λ・・・・・・・・・・(1)
【0008】
このため、第1のアーム311又は第2のアーム312の両側に設けられた電極321、322及び323に電圧を印加することにより、第1のアーム311及び第2のアーム312の光導波路の屈折率nを変化させることができる。これにより、第1のアーム311を伝搬する光と、第2のアーム312を伝搬する光との間で、位相差を生じさせ変調するものである。
【0009】
従って、出射光を十分に変調させるためには、第1のアーム311又は第2のアーム312を伝搬する光の位相を略π変化させる必要があり、これに基づきアームの長さLが定まる。
【0010】
近年、光変調器の大きさは、より小型化が望まれている。光変調器の大きさは、第1のアーム311及び第2のアーム312における各々のアームの長さLに依存することから、光導波路に反射部を設け、アーム内を伝搬する光を共振させる構造のアームの長さLを短くした光変調器が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−326548号公報
【特許文献2】米国特許第6288823号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、光を共振させる構造の光変調器では、形成される共振器の長さが長くなると、極めて高い精度で共振器を作製することが必要となり、このような光変調器を作製することは困難であった。
【0013】
特許文献2に記載されているように、回折格子からなるミラーを用いて構成したファブリ・ペロー(Fabry-Perot;FP)型共振器をアームに装荷したマッハツェンダ変調器も検討されている。このようなFP共振器型変調器は、FP共振器において、伝搬光がミラー間を往復することで、等価的に光路長を大きくする効果が得られている。また、FP共振器の共振器長Lの間を光がゆっくり進むと考えても良い(スローライトの効果)。この場合、一定の導波路の屈折変化に対して、共振器を透過する伝搬光が受ける位相変化は、同じ長さの共振構造のない導波路に比較すると、共振を受ける分だけ大きくなる。これにより、図1に示すような共振器がない場合の変調器に比較すると、このタイプの変調器では必要なアーム長を短くすることができる。この場合、変調器に入射される入力光が共振器において反射されないようにするためには、入力光すなわち変調器の動作波長を共振器の共振波長に合わせる必要がある。この条件は、動作波長λと共振器長L、導波路の屈折率nとした場合、数1に示す関係式により表される。尚、mは負ではない整数である。
【0014】
【数1】

【0015】
一方、特許文献2に記載されているものの場合は、共振器により変調効率を高めたことで、必要なアーム長を低減できるものの、想定する変調器の動作波長λに対して、共振器の長さLを数1に示す式により決まる値に合わせる必要がある。この場合、許容される波長誤差δλに対して、共振器長をδL=(δλ/λ)Lの精度で合わせる必要がある。例えば、動作波長λを1550nm、共振器長を100μm、波長誤差δλを1nm以内とすると、共振器長の許容誤差はδL=64nmとなる。このようなδL/L<0.064%という精度で共振器長を制御することは、実際には非常に困難である。したがって、特許文献2に記載されているものにおいては、変調器の動作波長を必要な精度で設計値に合わせることができない、という問題があった。
【0016】
以上より、従来技術の変調器における課題は、変調効率が高くアーム長を小さくし、かつ、動作波長の制御性の良くすることである。
【0017】
よって、アームの長さを短くすることができ小型化可能であって、かつ、変調効率が高く、動作波長の制御性の高い光変調装置及び光変調集積装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本実施の形態の一観点によれば、基板上に間隔を隔てて形成された第1の光導波路及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路における屈折率を変化させるため、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に沿って設けられた電極と、前記電極に接続されており、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に電圧を印加するための電源と、を有し、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路のうち、どちらか一方または双方の光導波路は、波長λの光を反射する構造の回折格子領域と、0からλ/2の範囲で位相シフトさせる位相シフト領域により形成されている。
【発明の効果】
【0019】
開示の光変調装置及び光変調集積装置によれば、アームの長さを短くすることができ小型化可能であって、かつ、動作波長の変調効率を高め、制御性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の光変調装置の構造図
【図2】第1の実施の形態における光変調装置の構造図
【図3】第1の実施の形態における光変調装置のアームの要部拡大図
【図4】図2における破線4A−4Bにおいて切断した断面図
【図5】第1の実施の形態における光変調装置の高屈折率領域の断面図
【図6】第1の実施の形態における光変調装置の低屈折率領域の断面図
【図7】第1の実施の形態における光変調装置における出射光のスペクトル
【図8】第1の実施の形態における他の光変調装置の構造図(1)
【図9】第1の実施の形態における他の光変調装置の構造図(2)
【図10】第2の実施の形態における光変調装置における出射光のスペクトル
【図11】第3の実施の形態における光変調装置における出射光のスペクトル
【図12】第4の実施の形態における光変調装置における出射光のスペクトル
【図13】第5の実施の形態における光変調集積装置の構造図
【図14】第5の実施の形態における他の光変調集積装置の構造図
【図15】第6の実施の形態における光変調装置の構造図
【図16】第6の実施の形態における光変調装置のアームの要部拡大図
【図17】第6の実施の形態における光変調装置の高屈折率領域の断面図
【図18】第6の実施の形態における光変調装置の低屈折率領域の断面図
【図19】第7の実施の形態における光変調装置のアームの要部拡大図
【図20】第7の実施の形態における光変調装置の高屈折率領域の断面図
【図21】第7の実施の形態における光変調装置の低屈折率領域の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0022】
〔第1の実施の形態〕
図2に基づき、本実施の形態における光変調装置について説明する。本実施の形態における光変調装置は、半導体基板上に、第1のアーム11と第2のアーム12を有する光導波路10が形成されている。第1のアーム11及び第2のアーム12は、光の入射側に設けられた直線光導波路領域13とともに接続されており、また、光の出射側に設けられた直線光導波路領域14とも接続されている。第1のアーム11及び第2のアーム12の両側には、第1のアーム11及び第2のアーム12に沿って、電界を印加することにより屈折率を変化させるための電極21、22及び23が設けられている。本実施の形態における光変調装置は、第1のアーム11の両側に設けられた電極21と電極22との間に電圧を印加することにより、第1のアーム11における屈折率を変化させることができる。また、第2のアーム12の両側に設けられた電極22と電極23との間に電圧を印加することにより、第2のアーム12における屈折率を変化させることができる構造となっている。
【0023】
このため、電極21と電極22との間には、第1の電気信号源31が設けられており、電極22と電極23との間には、第2の電気信号源32が設けられており、電極22は接地されている。入射部41より入射した連続光である入射光は、光導波路10における直線光導波路領域13に伝搬した後、第1のアーム11と第2のアーム12に分岐して伝搬し、第1の電気信号源31と第2の電気信号源32とを制御することにより変調される。この後、再び合波して光導波路10における直線光導波路領域14を伝搬し、出射部42より変調光である出射光として出射される。
【0024】
光の変調は、第1の電気信号源31と第2の電気信号源32により、高周波の電圧による変調を加えることにより、第1のアーム11又は第2のアーム12における電子又はホールの濃度を調節し、フリー・キャリア・プラズマ効果を利用する。この電子又はホールのキャリア濃度の変調により、第1のアーム11又は第2のアーム12における屈折率を変化させ、伝搬する光の位相を変調させることができる。尚、第1の電気信号源31と第2の電気信号源32とはプッシュプル駆動するように制御されている。
【0025】
次に、図3に基づき、第1のアーム11及び第2のアーム12について説明する。図3は、第1のアーム11の拡大図である。図に示すように、第1のアーム11における光導波路は、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが交互に設けられた回折格子領域と、λ/4位相シフト領域18を有している。λ/4位相シフト領域18を形成することにより、この領域が光の共振器となり、共振波長において、光の伝搬が遅くなり、光の位相変調効率を高めることができる。尚、第2のアーム12についても、第1アーム11と同様の構造により形成されている。
【0026】
次に、本実施の形態における光変調装置の断面構造について説明する。図4は、図2における破線4A−4Bで切断した断面図である。この部分は、光導波路10における直線光導波路領域13の断面であり、光導波路10における直線光導波路領域14も同様の構造である。図4に示されるように、シリコン基板51上に、SiO(酸化シリコン)からなる埋め込み酸化膜52が形成され、酸化膜52上にシリコン層53が形成されている。シリコン層53は、膜厚の厚い凸部54と膜厚の薄い平坦部55を有しており、光導波路10である直線光導波路領域13は、主に凸部54により形成されている。また、シリコン層53の上には、酸化膜56が形成されている。シリコン層53における平坦部55における膜厚は50nmであり、凸部54における膜厚(厚さ)は250nmであり、幅は450nmである。
【0027】
また、図5は、図3における破線5A−5Bにおいて切断した断面図である。図5に示すように、高屈折率領域15は、シリコン基板51上に、SiOからなる埋め込み酸化膜52が形成され、酸化膜52上にシリコン(Si)からなる高屈折率領域15が形成されている。また、光導波路10である高屈折率領域15の両側には、n型領域57及びp型領域58が形成されており、高屈折率領域15の上には、酸化膜56が形成されている。
【0028】
一方、図6は、図3における破線6A−6Bにおいて切断した断面図である。図6に示すように、低屈折率領域16は、シリコン基板51上に、SiOからなる埋め込み酸化膜52が形成され、酸化膜52上にシリコンからなる低屈折率領域16が形成されている。また、光導波路10である低屈折率領域16の両側には、n型領域57及びp型領域58が形成されており、低屈折率領域16の上には、酸化膜56が形成されている。
【0029】
図5及び図6に示すように、高屈折率領域15では凸部54が設けられており、導波路の厚さは、低屈折率領域16よりも厚く形成されている。
【0030】
尚、高屈折率領域15及び低屈折率領域16はともに、n型領域57上において酸化膜56には開口が設けられており、金属材料により形成された電極21がn型領域57と接続されている。同様に、p型領域58上において酸化膜56には開口が設けられており、金属材料により形成された電極22がp型領域58と接続されている。
【0031】
本実施の形態では、酸化膜52の膜厚は約2μmであり、n型領域57及びp型領域58における膜厚は約50nmである。また、高屈折率領域15は厚さが約250nm、幅が約450nmであり、低屈折率領域16の厚さは、n型領域57及びp型領域58と同じ約50nmである。尚、λ/4位相シフト領域18における断面は、高屈折率領域15における断面構造と同様である。
【0032】
本実施の形態における光変調装置は、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが交互に形成された回折格子領域間に、λ/4位相シフト領域18が設けられたものである。具体的には、本実施の形態における光変調装置は、波長が1.55μmの波長の光に対応するものである。即ち、図3において矢印P1に示す光の進行方向に対し、高屈折率領域15の長さAが約248nm、低屈折率領域16の長さBが約62nmであり、高屈折率領域15と低屈折率領域16は、約310nmの周期で形成されている。また、λ/4位相シフト領域18の長さCは、約400nmで形成されている。尚、λ/4位相シフト領域18の長さCは、高屈折率領域15の長さAと、波長が1.55μmの光に対応する高屈折率領域15と低屈折率領域16における屈折率を考慮した波長の長さ約620nmの1/4との和により算出される。また、長さA、B、Cは、使用される波長に依存して異なる。
【0033】
本実施の形態では、第1のアーム11及び第2のアーム12は同様の構造であり、表1に示すように、回折格子領域とλ/4位相シフト領域18とが交互に形成されており、λ/4位相シフト領域18が5ヶ所形成されている。
【0034】
【表1】

【0035】
具体的には、第1のアーム11及び第2のアーム12には、入射側41より、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが16周期形成された第1回折格子領域が形成されている。次に、λ/4位相シフト領域18と、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが32周期形成された第2回折格子領域から第5回折格子領域とが交互に形成されている。更に、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが16周期形成された第6回折格子領域が形成されている。第1回折格子領域及び第6回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が16周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約4.96μmである。また、第2回折格子領域から第5回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が32周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約9.92μmである。よって、第1から第6回折格子領域とλ/4位相シフト領域18を合わせた長さは、約49.6μmである。従って、図2に示す電極21、22及び23における長さDは、約49.6μmとなる。
【0036】
表1に示す構造の光変調器において、第1のアーム11及び第2のアーム12に、それぞれ第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により、それぞれ0Vと−2Vの電圧を印加した場合と、第1のアーム11及び第2のアーム12に、それぞれ、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により、それぞれ−2Vと0Vの電圧を印加した場合における出射光のスペクトルを計算した結果を図7に示す。尚、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により−2Vの電圧を印加することにより、高屈折率領域15及びλ/4位相シフト領域18において、0Vの電圧を印加した場合と比較して、屈折率は4×10−5変化するものとして計算している。図7に示すように、−2Vの電圧を印加することにより、1.55μmにおける出射光の光強度を約5dB低くすることができる。よって、印加される電圧が0Vと−2Vとの間で、約5dBのコントラスト(消光比)を得ることができる。
【0037】
図1に示す構造の従来の光変調装置において、光導波路10を形成する材料と同様の材料を用いた場合では、必要となる光導波路10の長さ、即ち、第1のアーム311及び第2のアーム312の長さは、約3.5mmとなる。従って、本実施の形態における光変調装置における第1のアーム11及び第2のアーム12の長さは、約49.6μmであり、従来の光変調装置に比べ、第1のアーム及び第2のアームの長さを1/70にすることができる。よって、光変調装置の全体の大きさを小型化することができる。
【0038】
また、本実施の形態における光変調装置においては、光変調装置における動作波長は、回折格子領域に形成される回折格子の平均的な周期により定まるため、動作波長の制御を高い精度で行うことができる。
【0039】
本実施の形態における光変調装置の説明においては、λ/4位相シフト領域18を形成したものについて説明したが、0からλ/2の範囲の任意の値の位相シフト量の位相シフト領域を形成したものであってもよい。但し、位相シフト量がλ/4の場合では、共振は長が回折格子領域におけるブラッグ波長と一致するため、更に、光スペクトルが共振波長を中心に対称となるため、位相シフト領域としては、λ/4位相シフト領域を形成することが好ましい。尚、第1のアーム11と第2のアーム12において、同一の回折格子領域とλ/4位相シフト領域18の構造のものについて説明したが、第1のアーム11と第2のアーム12において、異なる回折格子領域とλ/4位相シフト領域18の構造のものを形成してもよい。
【0040】
また、本実施の形態における光変調装置では、光導波路10の入射部41側及び出射部42側に形成される第16回折格子領域及び第6回折格子領域の回折格子の周期数は、第2回折格子領域から第5回折格子領域の回折格子の周期数の半分で形成されている。このように外側の回折格子領域における回折格子の周期数を内側の回折格子領域における回折格子の周期数の半分とすることにより、光スペクトルの共振波長帯を比較的平坦なものとすることができ、広帯域な波長において略均一な消光比を得ることができる。
【0041】
また、本実施の形態における光変調装置は、第1のアーム及び第2のアームのどちらか一方のみに、回折格子領域及びλ/4位相シフト領域18を形成したものであってもよい。具体的には、図8に示すように、第1のアーム11に回折格子領域及びλ/4位相シフト領域18を形成し、第2のアーム12aには、回折格子領域及びλ/4位相シフト領域18を形成することなく通常の導波路とした構造のものであってもよい。このような構造であっても、光変調装置を小型化することができ、変調効率を高めることができる。
【0042】
第1のアーム11及び第2のアーム12の双方に、回折格子領域及びλ/4位相シフト領域18を形成したもの場合では、第1のアーム11及び第2のアーム12を伝搬する光の遅延時間を同一にすることができる。よって、電圧を印加していない状態における位相差を動作波長によらず一定とすることができる。しかしながら、光変調装置の動作波長が常に一定であり、電圧を印加していない状態の位相差が一定である場合等においては、第1のアーム11及び第2のアーム12のどちらか一方のみ、回折格子領域及びλ/4位相シフト領域18を形成したものであってもよい。
【0043】
また、本実施の形態における光変調装置は、第1の電気信号源及び第2の電気信号源のどちらか一方を設けたものであってもよい。具体的には、図9に示すように、第1の電気信号源31のみを設け、第2の電気信号源を有しない光変調装置であってもよい。この光変調装置では、第1の電気信号源31により印加される電圧振幅は、第1及び第2の電気信号源によりプッシュプル駆動を行った場合と比較して、2倍になるものの、電気信号源は1つであるため、制御が簡単となり、低コストで製造することも可能である。尚、電気信号源を1つとした場合であっても、第1のアーム11及び第2のアーム12の双方に、回折格子領域及びλ/4位相シフト領域18を形成することが好ましい。
【0044】
また、本実施の形態における光変調装置において、第1のアーム11または第2のアーム12に形成されるλ/4位相シフト領域18は、少なくとも1以上である。形成されるλ/4位相シフト領域18の数は、光変調装置に要求される仕様に応じて、適宜、選定される。
【0045】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態における光変調装置について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構造のものであって、第1のアーム11及び第2のアーム12に形成されるλ/4位相シフト領域18の数が、10ヶ所設けられた構造のものである。
【0046】
即ち、図2に示す構造の光変変調装置において、表2に示すように、回折格子領域とλ/4位相シフト領域18とが交互に形成されており、λ/4位相シフト領域18が10ヶ所形成されている。
【0047】
【表2】

【0048】
具体的には、第1のアーム11及び第2のアーム12には、入射側41より、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが14周期形成された第1回折格子領域が形成されている。次に、λ/4位相シフト領域18と、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが28周期形成された第2回折格子領域から第10回折格子領域とが交互に形成されている。更に、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが14周期形成された第11回折格子領域が形成されている。第1回折格子領域及び第11回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が14周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約4.34μmである。また、第2回折格子領域から第10回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が28周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約8.68μmである。よって、第1から第11回折格子領域とλ/4位相シフト領域18とを合わせた長さは、約86.8μmである。従って、図2に示す電極21、22及び23における長さDは、約86.8μmとなる。
【0049】
表2に示す構造の第1のアーム11及び第2のアーム12を有する光変調装置において、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により、それぞれ0Vと−2Vの電圧を印加した場合における出射光のスペクトルを計算した結果を図10に示す。尚、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により−2Vの電圧を印加することにより、高屈折率領域15及びλ/4位相シフト領域18において、屈折率は4×10−5変化するものとして計算している。図10に示すように、−2Vの電圧を印加することにより、第1の実施の形態と同様に1.55μmにおける出射光の光強度を約5dB低くすることができる。よって、印加される電圧が0Vと−2Vとの間で、約5dBのコントラスト(消光比)を得ることができる。
【0050】
また、本実施の形態における光変調装置は、第1の実施の形態における光変調装置と同様に、図1に示す構造の従来の光変調装置よりも小型化させることが可能である。また、第1の実施の形態における光変調装置と比べ、より広い波長帯域において、光変調を行うことが可能である。尚、上記以外の本実施の形態における内容については、第1の実施の形態に記載されている内容と同様である。
【0051】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態における光変調装置について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構造のものであって、第1のアーム11及び第2のアーム12に形成されるλ/4位相シフト領域18の数が、2ヶ所設けられた構造のものである。
【0052】
即ち、図2に示す構造の光変変調装置において、表3に示すように、回折格子領域とλ/4位相シフト領域18とが交互に形成されており、λ/4位相シフト領域18が2ヶ所形成されている。
【0053】
【表3】

【0054】
具体的には、第1のアーム11及び第2のアーム12には、入射側41より、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが18周期形成された第1回折格子領域が形成されている。次に、λ/4位相シフト領域18と、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが38周期形成された第2回折格子領域が交互に形成されている。更に、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが18周期形成された第3回折格子領域が形成されている。第1回折格子領域及び第3回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が18周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約5.58μmである。また、第2回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が36周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約11.16μmである。よって、第1から第3回折格子領域とλ/4位相シフト領域18とを合わせた長さは、約22.32μmである。従って、図2に示す電極21、22及び23における長さDは、約22.32μmとなる。
【0055】
表3に示す構造の第1のアーム11及び第2のアーム12を有する光変調装置において、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により、それぞれ0Vと−2Vの電圧を印加した場合における出射光のスペクトルを計算した結果を図11に示す。尚、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により−2Vの電圧を印加することにより、高屈折率領域15及びλ/4位相シフト領域18において、屈折率は4×10−5変化するものとして計算している。図11に示されるように、−2Vの電圧を印加することにより、第1の実施の形態と同様に1.55μmにおける出射光の光強度を約5dB低くすることができる。よって、印加される電圧が0Vと−2Vとの間で、約5dBのコントラスト(消光比)を得ることができる。
【0056】
また、本実施の形態における光変調装置は、変調される波長帯域は狭くなるものの、第1の実施の形態における光変調装置よりもさらに小型化させることが可能である。尚、上記以外の本実施の形態における内容については、第1の実施の形態に記載されている内容と同様である。
【0057】
以上、第1の実施の形態から第3の実施の形態に示されるように、光変調装置の第1のアーム11及び第2のアーム12において形成されるλ/4の数を適宜選定することにより、所望の特性の光変調装置を得ることができる。
【0058】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構造のものであって、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により印加される電圧の方向が順バイアスとなるものである。
【0059】
本実施の形態における光変調装置では、図2に示す構造の光変調装置において、表4に示すように、回折格子領域とλ/4位相シフト領域18とが交互に形成されており、λ/4位相シフト領域18が5ヶ所形成されている。
【0060】
【表4】

【0061】
具体的には、第1のアーム11及び第2のアーム12には、入射側41より、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが7周期形成された第1回折格子領域が形成されている。次に、λ/4位相シフト領域18と、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが14周期形成された第2回折格子領域から第5回折格子領域とが交互に形成されている。更に、高屈折率領域15と低屈折率領域16とが7周期形成された第6回折格子領域が形成されている。第1回折格子領域及び第6回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が7周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約2.17μmである。また、第2回折格子領域から第5回折格子領域は、高屈折率領域15と低屈折率領域16との周期が14周期であり、この領域における光の進行方向の長さは約4.34μmである。よって、第1から第6回折格子領域とλ/4位相シフト領域18とを合わせた長さは、約21.7μmである。従って、図2に示す電極21、22及び23における長さDは、約21.7μmとなる。
【0062】
表4に示す構造の第1のアーム11及び第2のアーム12を有する光変調装置において、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により、それぞれ0Vと1Vの電圧を印加した場合における出射光のスペクトルを計算した結果を図12に示す。尚、第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により、1Vの電圧を印加することにより、高屈折率領域15及びλ/4位相シフト領域18において、屈折率は2×10−3変化するものとして計算している。図12に示すように、1Vの電圧を印加することにより、第1の実施の形態と同様に1.55μmにおける出射光の光強度を約5dB低くすることができる。よって、印加される電圧が0Vと1Vとの間で、約5dBのコントラスト(消光比)を得ることができる。
【0063】
また、本実施の形態における光変調装置は、順バイアスに電圧が印加されるため、第1の実施の形態における光変調装置に比べ変調速度は遅くなるものの、第1の実施の形態における光変調装置よりも更に小型化させることが可能である。また、変調される光の波長の帯域幅も広くすることができ、変調のために印加される電圧も低くすることができるため、省電力で駆動することができる。従って、光スイッチ等に用いる場合に適している。
【0064】
尚、上記以外の本実施の形態における内容については、第1の実施の形態に記載されている内容と同様である。
【0065】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態から第4の実施の形態における光変調装置と同一基板上に半導体レーザが形成されている光変調集積装置である。
【0066】
図13に基づき本実施の形態における光変調集積装置について説明する。本実施の形態における光変調集積装置は、第1の実施の形態における光変調装置1の光導波路10の入射部に接続されるDBRレーザ61が設けられており、DBRレーザ61には波長選択ミラーとして回折格子ミラー62が形成されている。
【0067】
DBRレーザ61において発振した光は、光導波路10を伝搬し、光変調装置1において第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により光が変調され、出射部42より出射光として出射される。尚、本実施の形態におけるDBRレーザ61は、回折格子ミラー62と、誘電体多層膜等からなる高反射率ミラー63とを有しており、回折格子ミラー62と高反射率ミラー63との間における光導波路64において光が共振する構造のものである。ここで、高反射率ミラー63と、回折格子ミラー62との間に挟まれた光導波路64においては、光利得を有する材料を用いる必要があるため、光変調装置1における光導波路10を形成する材料とは異なった材料により形成する必要がある。
【0068】
DBRレーザ61における回折格子ミラー62は、光変調装置1における第1のアーム11及び第2のアーム12に形成される高屈折率領域15及び低屈折率領域16と同様のプロセスで形成することが可能であり、同時に作製することができる。このため、半導体レーザと光変調装置とを有する光変調集積装置を低コストで製造することが可能である。また、同時に作製することにより、プロセス条件の変動等により、高屈折率領域15と低屈折率領域16の形状等に変動が生じた場合においても、回折格子ミラー62も同様に変動が生じる。従って、このような形状の変動により生じる動作波長の変動は、DBRレーザ61と光変調装置1の間でほぼ同じ量の値となる。よって、プロセス条件に変動が生じた場合においても、DBR半導体レーザ61における動作波長と光変調装置1における動作波長とを一致させやすい。
【0069】
次に、図14に基づき本実施の形態における他の光変調集積装置について説明する。この光変調集積装置は、第1の実施の形態における光変調装置1の光導波路10の入射部に接続される半導体レーザとして、λ/4位相シフトDFBレーザ65を形成したものである。このλ/4位相シフトDFBレーザ65は、波長選択反射ミラーとなる回折格子ミラー66及び67と、回折格子ミラー66と回折格子ミラー67との間には、λ/4位相シフト領域68が形成される。λ/4位相シフトDFBレーザ65において発振した光は、光導波路10を伝搬し、光変調装置1において第1の電気信号源31及び第2の電気信号源32により光が変調され、出射部42より出射光として出射される。
【0070】
尚、DFBレーザは、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザとは異なり、モードホップによる低周波ノイズの問題が少なく、駆動が容易であるという利点を有している。ここで、λ/4位相シフトDFBレーザ65の形成される領域の光導波路は、光利得を有する材料を用いる必要があるため、光変調装置1における光導波路10を形成する材料とは異なった材料により形成する必要がある。
【0071】
尚、本実施の形態では、光変調装置として、第1の実施の形態における光変調装置を用いた場合について説明したが、第2の実施の形態から第4の実施の形態における光変調装置についても同様に用いることが可能である。
【0072】
また、本実施の形態における光変調集積装置において形成される半導体レーザは、同一基板上に形成されるものであれば、ファブリ・ペロー型半導体レーザ等であってもよく、波長選択ミラーは、リング共振器型であってもよい。
【0073】
〔第6の実施の形態〕
次に、第6の実施の形態について説明する。図15に基づき本実施の形態における光変調装置について説明する。本実施の形態における光変調装置は、半導体基板上に、第1のアーム111と第2のアーム112を有する光導波路110が形成されている。第1のアーム111及び第2のアーム112は、光の入射側に設けられた直線光導波路領域113とともに接続されており、また、光の出射側に設けられた直線光導波路領域114とも接続されている。第1のアーム111及び第2のアーム112の両側には、第1のアーム111及び第2のアーム112に沿って、電界を印加することにより屈折率を変化させるための電極121、122及び123が設けられている。具体的には、第1のアーム111の両側に設けられた電極121と電極122との間に電圧を印加することにより、第1のアーム111における屈折率を変化させることができる。また、第2のアーム112の両側に設けられた電極122と電極123との間に電圧を印加することにより、第2のアーム112における屈折率を変化させることができる構造となっている。
【0074】
このため、電極121と電極122との間には、第1の電気信号源131が設けられており、電極122と電極123との間には、第2の電気信号源132が設けられており、電極122は接地されている。入射部141より入射した連続光である入射光は、光導波路110における直線光導波路領域113に伝搬した後、第1のアーム111と第2のアーム112に分岐して伝搬し、第1の電気信号源131と第2の電気信号源132とを制御することにより変調される。この後、再び合波して光導波路110における直線光導波路領域114を伝搬し、出射部142より変調光である出射光として出射される。
【0075】
具体的には、第1の電気信号源131と第2の電気信号源132により、高周波の電圧による変調を加えることにより、第1のアーム111又は第2のアーム112における電子又はホールの濃度を調節し、フリー・キャリア・プラズマ効果を利用する。この電子又はホールのキャリア濃度の変調により、第1のアーム111又は第2のアーム112における屈折率を変化させ、光を変調させるものである。尚、第1の電気信号源131と第2の電気信号源132とはプッシュプル駆動するように制御されている。
【0076】
次に、図16に基づき、第1のアーム111及び第2のアーム112について説明する。図16は、第1のアーム111の要部拡大図である。図に示すように、第1のアーム111における光導波路は、高屈折率領域115と低屈折率領域116とが交互に設けられた回折格子領域と、λ/4位相シフト領域118を有している。尚、第2のアーム112についても、第1アーム111と同様の構造により形成されている。
【0077】
次に、本実施の形態における光変調装置の断面構造について説明する。図17は、図16における破線17A−17Bにおいて切断した断面図であり、図18は、図16における破線18A−18Bにおいて切断した断面図である。図17及び図18に示すように、シリコン基板151上に、SiOからなる埋め込み酸化膜152が形成され、酸化膜152上にシリコンからなる凸部153が形成されている。光導波路110となる凸部153の両側には、n型領域157及びp型領域158が形成されており、凸部153の上には、酸化膜155が形成されている。
【0078】
図17及び図18に示すように、高屈折率領域115における凸部153の幅は低屈折率領域116よりも広く形成されている。尚、高屈折率領域115及び低屈折率領域116はともに、n型領域157上において酸化膜155には開口が設けられており、金属材料により形成された電極121がn型領域157と接続されている。同様に、p型領域158上において酸化膜155には開口が設けられており、金属材料により形成された電極122がp型領域158と接続されている。
【0079】
本実施の形態では、酸化膜152の膜厚は約2μmであり、n型領域157及びp型領域158における膜厚は約50nmである。また、高屈折率領域115は、厚さが約250nm、幅が約1.45μmであり、低屈折率領域116の厚さは、厚さが約250nm、幅が約450nmである。更に、λ/4位相シフト領域118における断面は、低屈折率領域115における断面構造と同様である。
【0080】
本実施の形態では、高屈折率領域115と低屈折率領域116が交互に形成された回折格子領域間に、λ/4位相シフト領域118が設けられたものである。本実施の形態における光変調装置は、波長が1.55μmの波長の光に対応するものである。即ち、図16において矢印P2に示す光の進行方向に対し、高屈折率領域115の長さEが約240nm、低屈折率領域116の長さFが約60nmであり、高屈折率領域115と低屈折率領域116は、約300nmの周期で形成されている。また、λ/4位相シフト領域118の長さGは、約390nmで形成されている。尚、λ/4位相シフト領域118の長さGは、高屈折率領域115の長さEと、波長が1.55μmの光に対応する高屈折率領域115と低屈折率領域116とにおける屈折率を考慮した波長の長さ約600nmの1/4との和により算出される。また、長さE、F、Gは、使用される波長等に依存して異なる。
【0081】
本実施の形態における位相変調装置は、第1の実施の形態における光変調装置と同様に用いることができ、第5の実施の形態における光変調集積装置においても用いることができる。尚、上記以外の構造については、第1の実施の形態と同様である。
【0082】
〔第7の実施の形態〕
次に、第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、光変調装置における第1のアーム及び第2のアームにおける構造が、第1の実施の形態とは異なる構造のものである。具体的には、MOS型構造と呼ばれる構造のものである。本実施の形態における光変調装置は、半導体基板上に、第1のアームと第2のアームを有する光導波路が形成されている。また、第1のアーム及び第2のアームは、光の入射側に設けられた直線光導波路領域とともに接続されており、更に、光の出射側に設けられた直線光導波路領域とも接続されている。第1のアーム及び第2のアームの両側及び上部には、第1のアーム及び第2のアームに沿って、電界を印加することにより屈折率を変化させるための電極が設けられている。具体的には、第1のアームの両側に設けられた電極と上部に設けられた電極との間に第1の電気信号源により電圧を印加することにより、第1のアームにおける屈折率を変化させることができる。また、第2のアームの両側に設けられた電極と上部に設けられた電極との間に第2の電気信号源電圧を印加することにより、第2のアームにおける屈折率を変化させることができる構造となっている。
【0083】
次に、図19に基づき、本実施の形態の光変調装置における第1のアーム及び第2のアームについて説明する。図19は、本実施の形態の光変調装置における第1のアームの光導波路が形成される領域の要部拡大図である。図に示すように、第1のアームにおける光導波路は、高屈折率領域215と低屈折率領域216とが交互に設けられた回折格子領域と、λ/4位相シフト領域218を有している。尚、第2のアームについても、第1アームと同様の構造により形成されている。
【0084】
次に、本実施の形態における光変調装置の断面構造について説明する。図20は、図19における破線20A−20Bにおいて切断した断面図であり、図21は、図19における破線21A−21Bにおいて切断した断面図である。図20及び図21に示すように、シリコン基板251上に、SiOからなる埋め込み酸化膜252が形成され、酸化膜252上にシリコン層253が形成されている。更に、その上に、酸化膜254を介し、p型シリコンにより形成されるp型領域255が形成され、p型ポリシリコン領域256、酸化膜257、金属材料により形成された電極258及び電極259が形成されている。電極258と電極259との間には電気信号源260が設けられている。尚、電気信号源260は、第1のアームにおいては、第1の電気信号源に相当し、第2のアームにおいては、第2の電気信号源に相当するものである。また、電極259はシリコン層253と電気的に接続されており、また、電極258はp型領域256と電気的に接続されており、電気信号源260により電圧を印加することにより、p型領域255においてキャリアが変動し、屈折率が変化する。
【0085】
本実施の形態における光変調装置では、酸化膜252の膜厚は約2μmであり、シリコン層253における膜厚は約1μmである。p型領域255における膜厚は約0.55μmであり、シリコン層253とp型領域255との間の酸化膜254の膜厚は10nmである。尚、p型領域255の幅は、高屈折率領域215では1.7μmで形成されており、低屈折率領域216では1μmで形成されている。よって、高屈折率領域215におけるp型領域255の幅は、低屈折率領域216よりも広く形成されている。入射光は、p型領域255と酸化膜254を介したシリコン層253において伝達される。また、λ/4位相シフト領域218における断面は、低屈折率領域216における断面構造と同様である。
【0086】
本実施の形態では、高屈折率領域215と低屈折率領域216が交互に形成された回折格子領域間に、λ/4位相シフト領域218が設けられたものである。本実施の形態における光変調装置は、波長が1.55μmの波長の光に対応するものである。即ち、図19において矢印P3に示す光の進行方向に対し、高屈折率領域215の長さHが約240nm、低屈折率領域216の長さIが約60nmであり、従って、高屈折率領域215と低屈折率領域216とは、約300nmの周期で形成されている。また、λ/4位相シフト領域218の長さJは、約390nmで形成されている。尚、λ/4位相シフト領域218の長さJは、高屈折率領域215の長さHと、波長が1.55μmの光に対応する高屈折率領域215と低屈折率領域216における屈折率を考慮した波長の長さ約600nmの1/4との和により算出される。また、長さH、I、Jは、使用される波長等に依存して異なる。
【0087】
本実施の形態における位相変調装置は、第1の実施の形態における光変調装置と同様に用いることができ、第5の実施の形態における光変調集積装置においても用いることができる。
【0088】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0089】
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板上に間隔を隔てて形成された第1の光導波路及び第2の光導波路と、
前記第1の光導波路または前記第2の光導波路における屈折率を変化させるため、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に沿って設けられた電極と、
前記電極に接続されており、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に電圧を印加するための電源と、
を有し、
前記第1の光導波路または前記第2の光導波路のうち、どちらか一方または双方の光導波路は、波長λの光を反射する構造の回折格子領域と、0からλ/2の範囲で位相シフトさせる位相シフト領域により形成されていることを特徴とする光変調装置。
(付記2)
前記位相シフト領域における位相シフトは略λ/4であることを特徴とする付記1に記載の光変調装置。
(付記3)
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路における双方の光導波路は、前記回折格子領域と、前記位相シフト領域により形成されている場合であって、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路における光導波路は、前記回折格子領域と、前記位相シフト領域により形成される構造が同一の構造であることを特徴とする付記1または2に記載の光変調装置。
(付記4)
前記光導波路において、前記位相シフト領域の両側には、前記回折格子領域が設けられていることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の光変調装置。
(付記5)
前記位相シフト領域は複数設けられており、前記位相シフト領域間には前記回折格子領域が設けられていることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の光変調装置。
(付記6)
前記位相シフト領域間に形成された回折格子領域における回折格子の周期の数は、一方のみに前記位相シフト領域が隣接する回折格子領域における回折格子の周期の数の2倍であることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載の光変調装置。
(付記7)
前記位相シフト領域間に形成された回折格子領域を複数有しており、前記位相シフト領域間に形成された回折格子領域の回折格子の周期の数は、略等しいものであることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の光変調装置。
(付記8)
前記回折格子は、前記光導波路において、高屈折率領域と、前記高屈折率領域よりも低い屈折率の低屈折率領域により形成されており、前記光の進行方向における前記高屈折率領域の長さと前記低屈折率領域の長さの和は、略λ/2に対応する長さであることを特徴とする付記1から7のいずれかに記載の光変調装置。
(付記9)
前記回折格子は、前記光導波路において、高屈折率領域と、前記高屈折率領域よりも低い屈折率の低屈折率領域により形成されており、前記位相シフト領域の長さは、前記高屈折率領域または低屈折率領域における前記光の進行方向の長さと、略λ/4に対応する長さの和に略等しいものであることを特徴とする付記1から8のいずれかに記載の光変調装置。
(付記10)
前記高屈折率領域と前記低屈折率領域は同一の材料により形成されており、前記高屈折率領域における前記光導波路の厚さが、前記低屈折率領域における前記光導波路の厚さよりも厚いものであることを特徴とする付記1から9のいずれかに記載の光変調装置。
(付記11)
前記高屈折率領域と前記低屈折率領域は同一の材料により形成されており、前記高屈折率領域における前記光導波路の幅が、前記低屈折率領域における前記光導波路の幅よりも広いものであることを特徴とする付記1から9のいずれかに記載の光変調装置。
(付記12)
前記位相シフト領域は、前記光の進行方向に垂直な前記高屈折率領域における断面形状、又は、前記光の進行方向に垂直な前記低屈折率領域における断面形状と同じであることを特徴とする付記10または11に記載の光変調装置。
(付記13)
前記電源により、前記基板の面方向に対し平行に電圧を印加することにより、前記導波路における屈折率を変化させるものであることを特徴とする付記1から12のいずれかに記載の光変調装置。
(付記14)
前記電源により、前記基板の面方向に対し垂直に電圧を印加することにより、前記導波路における屈折率を変化させるものであることを特徴とする付記1から12のいずれかに記載の光変調装置。
(付記15)
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路との光導波路において、一方の光導波路に電圧が印加されている場合には、他方の光導波路には電圧は印加されず、一方の光導波路に電圧が印加されていない場合には、他方の光導波路には電圧は印加されることにより駆動されることを特徴とする付記1から14のいずれかに記載の光変調装置。
(付記16)
付記1から15のいずれかに記載の光変調装置と、
前記基板に形成された前記光変調装置に光を入力するための光を発するレーザと、
を有することを特徴とする光変調集積装置。
(付記17)
前記レーザは回折格子が設けられていることを特徴とする付記16に記載の光変調集積装置。
(付記18)
前記レーザはDBRレーザの構造からなり、前記DBRレーザにおけるDBRミラーは回折格子を装荷した光導波路からなり、前記光導波路は、前記光変調装置において回折格子が装荷されている部分における光導波路と同じ材料により形成されており、かつ、両者がモノリシック集積形成されていることを特徴とする付記16または17に記載の変調器集積装置。
(付記19)
前記DBRレーザにおけるDBRミラーの光導波路と、前記光変調装置において回折格子が装荷されている部分における光導波路とは、同一の構造となる部分を有していることを特徴とする付記18に記載の光変調集積装置。
(付記20)
前記光変調装置に設けられた回折格子領域における回折格子の周期と、前記レーザにおける回折格子の周期とは、略同一であることを特徴とする付記19に記載の光変調集積装置。
【符号の説明】
【0090】
10 光導波路
11 第1のアーム
12 第2のアーム
13 直線光導波路領域
14 直線光導波路領域
15 高屈折率領域
16 低屈折率領域
18 λ/4位相シフト領域
21 電極
22 電極
23 電極
31 第1の電気信号源
32 第2の電気信号源
41 入射部
42 出射部
51 シリコン基板
52 酸化膜
53 シリコン層
54 凸部
55 平坦部
56 酸化膜
57 n型領域
58 p型領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に間隔を隔てて形成された第1の光導波路及び第2の光導波路と、
前記第1の光導波路または前記第2の光導波路における屈折率を変化させるため、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に沿って設けられた電極と、
前記電極に接続されており、前記第1の光導波路または前記第2の光導波路に電圧を印加するための電源と、
を有し、
前記第1の光導波路または前記第2の光導波路のうち、どちらか一方または双方の光導波路は、波長λの光を反射する構造の回折格子領域と、0からλ/2の範囲で位相シフトさせる位相シフト領域により形成されていることを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
前記位相シフト領域における位相シフトは略λ/4であることを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項3】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路における双方の光導波路は、前記回折格子領域と、前記位相シフト領域により形成されている場合であって、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路における光導波路は、前記回折格子領域と、前記位相シフト領域により形成される構造が同一の構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調装置。
【請求項4】
前記位相シフト領域間に形成された回折格子領域における回折格子の周期の数は、一方のみに前記位相シフト領域が隣接する回折格子領域における回折格子の周期の数の2倍であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光変調装置。
【請求項5】
前記回折格子は、前記光導波路において、高屈折率領域と、前記高屈折率領域よりも低い屈折率の低屈折率領域により形成されており、前記位相シフト領域の長さは、前記高屈折率領域または低屈折率領域における前記光の進行方向の長さと、略λ/4に対応する長さの和に略等しいものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光変調装置。
【請求項6】
前記高屈折率領域と前記低屈折率領域は同一の材料により形成されており、前記高屈折率領域における前記光導波路の厚さが、前記低屈折率領域における前記光導波路の厚さよりも厚いものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光変調装置。
【請求項7】
前記高屈折率領域と前記低屈折率領域は同一の材料により形成されており、前記高屈折率領域における前記光導波路の幅が、前記低屈折率領域における前記光導波路の幅よりも広いものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光変調装置。
【請求項8】
前記位相シフト領域は、前記光の進行方向に垂直な前記高屈折率領域における断面形状、又は、前記光の進行方向に垂直な前記低屈折率領域における断面形状と同じであることを特徴とする請求項6または7に記載の光変調装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の光変調装置と、
前記基板に形成された前記光変調装置に光を入力するための光を発するレーザと、
を有することを特徴とする光変調集積装置。
【請求項10】
前記レーザはDBRレーザの構造からなり、前記DBRレーザにおけるDBRミラーは回折格子を装荷した光導波路からなり、前記光導波路は、前記光変調装置において回折格子が装荷されている部分における光導波路と同じ材料により形成されており、かつ、両者がモノリシック集積形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光変調集積装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−75992(P2011−75992A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229673(P2009−229673)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】