説明

光学デバイス、レーザ装置および露光装置

【課題】複数の波長変換処理を組み合わせて行う際、また波長変換処理と光変調処理とを組み合わせて行う際に、これらの組み合わせ処理を安定的に、かつ高い効率で行うことができる優れた光学性能を有する光学デバイス、当該光学デバイスを用いて所望波長のレーザ光を安定して発生するレーザ装置、および当該光学デバイスを用いて所望波長の光を被露光面に照射して露光する露光装置を提供する。
【解決手段】強誘電体基板31では、波長変換部315と出射面311bとの間に空間光変調部35が設けられ、波長変換部315から出力されるレーザ光を変調するとともに特定波長の0次光のみが基板に導光されてLSIデータに対応するパターンが描画される。また、単一の強誘電体基板31内で波長変換部314、315とともに空間光変調部35が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波長変換機能を有する光学デバイス(以下においては、単に「光学デバイス」という)、当該光学デバイスを用いたレーザ装置および当該光学デバイスを使用する露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、強誘電体結晶により構成された強誘電体基板を用いて波長変換処理や光変調処理を行う光学デバイスおよび該光学デバイスを用いた装置が数多く提案されている。例えば特許文献1には、光変調処理を行う光学デバイスを用いて露光処理を行う装置が記載されている。この装置では、所定の波長の光ビームを出射する半導体レーザなどにより構成された光源部が設けられている。そして、光源部から出力されたレーザ光が照明光学系により平行光ビームに整形された後、光学デバイス(空間光変調器)に入射される。この光学デバイスでは、強誘電体結晶が薄板形状(スラブ形状)に仕上げられており、強誘電体結晶の一方主面(または両主面)上に複数の電極要素が一定ピッチで配列されて格子電極が形成されている。そして、これらの電極要素間に電位差を付与することによって強誘電体結晶中で生じる電界により強誘電体結晶の内部で周期的な屈折率の変化が生じて回折格子が形成される。この強誘電体結晶に対して格子電極の長さ方向とほぼ平行に光を入射させ、主にラマン・ナス回折を生じさせることにより空間光変調が行われている。
【0003】
このような装置のコンパクト化および使用波長の適正化を図るために波長変換技術を用いることが提案されている。例えば特許文献2では、強誘電体基板に波長変換部を設け、近赤外レーザ光を短波長化する技術が提案されている。この従来技術では、強誘電体基板に導波型第2高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)部を設けた光学デバイスが用いられている。つまり、固体レーザ素子から出力される基本波を光学デバイス中の第2高調波発生部に伝播させることで、基本波に対して半分の波長(2倍の周波数)に波長変換された第2高調波を得ている。したがって、特許文献2に記載のレーザ装置を特許文献1に記載の露光装置(光学ヘッド)に適用することで装置の小型化を図ることができる。
【0004】
また、露光装置で使用するレーザ光の短波長化を図るために、第2高調波発生部を備えた光学デバイスの後段側に和周波数発生(SFG:Sum Frequency Generation)部を備えた光学デバイスを追加配置することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−31732号公報(図2、図3)
【特許文献2】国際公開第WO2009/016709号(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、波長変換処理を行う光学デバイスを複数個組み合わせて所定の波長の光を出力させる場合、あるいは波長変換処理を行う光学デバイスと光変調処理を行う光学デバイスとを組み合わせる場合のいずれにおいても、これらの光学デバイスはそれぞれディスクリートな素子であるため、光軸アライメントに対して高い精度が要求される。さらに、温度環境変化や湿度変化などの影響で、光軸アライメントがずれることがあり、光量安定性、波長変換効率および光変調効率などの光学性能が不安定となることがある。
【0007】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数の波長変換処理を組み合わせて行う際、また波長変換処理と光変調処理とを組み合わせて行う際に、これらの組み合わせ処理を安定的に、かつ高い効率で行うことができる優れた光学性能を有する光学デバイス、当該光学デバイスを用いて所望波長のレーザ光を安定して発生するレーザ装置、および当該光学デバイスを用いて所望波長の光を被露光面に照射して露光する露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる光学デバイスは、上記目的を達成するため、強誘電体結晶により構成され、光が入射される入射面と、入射面と対向する出射面と、入射面および出射面と異なる被支持面とを有する強誘電体基板と、被支持面と対向する対向面を有する支持基板と、被支持面と対向面との間に配置されて強誘電体基板を支持基板に一体化させる金属膜とを備え、強誘電体基板は、入射面と出射面との間に設けられた第1の周期分極反転構造部と、第1の周期分極反転構造部と出射面との間に設けられた第1の周期分極反転構造部と異なる第2の周期分極反転構造部とを有し、入射面に入射される光に対して第1の周期分極反転構造部により波長変換処理を行うとともに、第1の周期分極反転構造部から出力された光に対して第2の周期分極反転構造部により波長変換処理または光変調処理を行うことを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、強誘電体結晶により構成された強誘電体基板に対し、互いに異なる2つの周期分極反転構造部が設けられ、まず第1の周期分極反転構造部が入射面に入射された光に対して波長変換処理を行う。また、第2の周期分極反転構造部が第1の周期分極反転構造部から出力された光に対して波長変換処理または光変調処理を行う。このように単一の強誘電体基板内で複数の波長変換処理を組み合わせた処理(2段階の波長変換処理)、波長変換処理と光変調処理とを組み合わせた処理が行われる。このため、これらの組み合わせ処理を安定的に、かつ高い効率で行うことができ、優れた光学性能が得られる。しかも、この強誘電体基板は金属膜により支持基板と一体化されているため、支持基板と一体化した状態で強誘電体基板内の光路長制御や周期分極反転構造の形成が可能となる。その結果、強誘電体基板の薄膜化や周期分極反転構造の高精度化が可能となり、光学性能をさらに高めることができる。
【0010】
ここで、入射面に入射された光を出射面に導波するスラブ導波路を強誘電体基板内に設けてもよく、このスラブ導波路を伝播する光に対して上記した2段階の波長変換を実行することで所望波長の光が得られる。また1段目の波長変換により得られた所望波長の光に対して光変調処理を行うことができる。
【0011】
また、第1の周期分極反転構造部を、第2高調波発生部、第3高調波発生部、和周波数発生部、差周波数発生部および光パラメトリック発振器のいずれかを構成する第1の波長変換部として設けてもよい。また、第2の周期分極反転構造部を、第2高調波発生部、第3高調波発生部、和周波数発生部、差周波数発生部および光パラメトリック発振器のいずれかを構成する第2の波長変換部として設けてもよい。このように2段階の波長変換により所望波長の光が得られる。例えば第1の周期分極反転構造部および第2の周期分極反転構造部として、それぞれ第2高調波発生部および和周波数発生部を設けてもよい。また、第1の周期分極反転構造部および第2の周期分極反転構造部として、それぞれ第2高調波発生部および差周波数発生部を設けてもよい。
【0012】
また、上記のように2つの周期分極反転構造部をともに波長変換部とした場合、強誘電体基板に対して光変調部、ビームエキスパンダー等のビーム拡大部、ホモジナイザー等の光強度均一化部、あるいは光学部などを追加的に設けて光学デバイスの多機能化を図ってもよい。従来技術では、このように光変調部、ビーム拡大部、光強度均一化部や光学部などについては、それぞれディスクリートな素子で提供されていたため、上記したように高精度な光軸アライメントが必要となるという問題、光量安定性および波長変換効率などの光学性能が不安定であるという問題などがあったが、強誘電体基板に対して光変調部などを設けることによって上記問題が解消される。
【0013】
このような多機能化の一例として、例えば第2の周期分極反転構造部(第2の波長変換部)と出射面との間に光変調部を設けて第2の周期分極反転構造部から出力された光を変調するように構成してもよい。もちろん、第2の周期分極反転構造部を波長変換部とする代わりに光変調部としてもよい。
【0014】
このような光変調部としては、例えば光変調部を挟んで金属膜に対向して第1電極を複数個配置し、複数の第1電極と金属膜の間に与えられる電界に応じて周期分極反転構造内でブラッグ回折またはラマン・ナス回折を発生させて空間光変調を行うものを採用してもよい。
【0015】
また、第2の波長変換部と光変調部との間にビーム拡大部や光強度均一化部を設けてもよい。例えばビーム拡大部を設けることで光変調部に入射される前に光を所望形状に整形することができる。また、光強度均一化部を設けることで光変調部に入射される前に光強度の均一化を図ることができる。
【0016】
また、光変調部と出射面との間に光学部を設け、当該光学部の第1レンズにより光変調部から出力された光を所望位置に集光するように構成してもよい。ここで、第1レンズを可変焦点レンズとすることで光の集光位置を調整することができる。より具体的には、第2電極が光学部を挟んで金属膜に対向して配置されるとともに、電界を受けて発生する分極の向きが第1レンズと第1レンズの周辺部とで互いに反対となる分極反転構造を光学部に設け、第2電極と金属膜の間に与えられる電界に応じて第1レンズと、第1レンズの周辺部とで屈折率を変化させて第1レンズの焦点距離を変化させるように構成してもよい。
【0017】
また、光学部内を伝播する光の進行方向に第1レンズを複数個配置したレンズ群を設けてもよい。このように複数の第1レンズを組み合わせることで高性能な投影性能や結像性能が得られる。また、このように構成されたレンズ群が光学部内を伝播する光の進行方向と直交する方向に複数個配置されてもよい。さらに、このような複数のレンズ群を1または複数個に区分けし、区分けされたレンズ群毎に第1レンズの焦点距離の変化量を制御するように構成してもよく、この場合、区分けされた領域ごとにフォーカス量を変更することができる。
【0018】
また、本発明にかかる露光装置の一態様は、請求項5ないし9のいずれか一項に記載の光学デバイスと、強誘電体基板の入射面に光を出力する光源部と、強誘電体基板の変調部で変調されて出射面から出力される光を被露光面上に導光する光学部とを備えることを特徴としている。また、本発明にかかる露光装置の他の態様は、請求項10ないし15のいずれか一項に記載の光学デバイスと、強誘電体基板の入射面に光を出力する光源部と、強誘電体基板の出射面と被露光面との間に配置される第2レンズとを備え、第1レンズは光変調部から出力された光を強誘電体基板の結晶軸方向と直交する方向に集光し、第2レンズは強誘電体基板の出射面から出力された光を少なくとも結晶軸方向に集光することを特徴としている。このように構成された発明では、露光装置内での光軸アライメントが容易となり、しかも露光処理を安定して行うことができる。なお、光源部が近赤外レーザ光を出力し、第1の周期分極反転構造部が第2高調波発生部であり、第2の周期分極反転構造部が和周波数発生部であり、光変調部が第2の周期分極反転構造部と出射面との間に設けられる場合、紫外線領域のレーザ光を用いて露光処理を行うことが可能となる。
【0019】
また、本発明にかかるレーザ装置は、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光学デバイスと、強誘電体基板の入射面に光を出力する光源部とを備えることを特徴としている。このように構成された発明では、レーザ装置内での光軸アライメントが容易となり、しかも所望波長のレーザ光を安定して出力することができる。なお、光源部が近赤外レーザ光を出力し、第1の周期分極反転構造部は第2高調波発生部であり、第2の周期分極反転構造部は和周波数発生部である場合、紫外線領域のレーザ光を安定して出力することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、強誘電体基板が金属膜により支持基板と一体化され、しかも当該強誘電体基板に対して波長変換処理を行う第1の周期分極反転構造部と、波長変換処理または光変調処理を行う第2の周期分極反転構造部とが設けられているため、優れた光学性能が得られる。また、このように構成された光学デバイスを用いて露光装置を構成することで所望波長の光を被露光面に照射して露光することができる。さらに、このように構成された光学デバイスを用いてレーザ装置を構成することで所望波長のレーザ光を安定して発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる光学デバイスの第1実施形態を用いたレーザ装置を示す図である。
【図2】本発明にかかる光学デバイスの第2実施形態を用いたレーザ装置を示す図である。
【図3】本発明にかかる光学デバイスの第6実施形態を用いた露光装置を装備したパターン描画装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示すパターン描画装置の側面図である。
【図5】図3のパターン描画装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】光学ヘッドの内部構成を簡略化して示す図である。
【図7】光学ヘッドの一部構成を示す斜視図である。
【図8】空間光変調部の部分拡大模式図である。
【図9】本発明にかかる光学デバイスの第7実施形態を用いた露光装置を装備したパターン描画装置を示す図である。
【図10】本発明にかかる光学デバイスの第8実施形態を示す図である。
【図11】本発明にかかる光学デバイスの第9実施形態を示す図である。
【図12】本発明にかかる光学デバイスの第10実施形態を示す図である。
【図13】本発明にかかる光学デバイスの第11実施形態を示す図である。
【図14】本発明にかかる光学デバイスの第12実施形態を示す斜視図である。
【図15】図14の光学デバイスの断面図である。
【図16】図14の光学デバイスに組み込まれた投影光学系の部分拡大図である。
【図17】本発明にかかる光学デバイスの第13実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一態様は、金属膜を介して支持基板に支持された強誘電体基板中の強誘電体結晶に対して互いに異なる周期分極反転構造部を設けて多段階の波長変換処理を行う光学デバイス、および当該光学デバイスを用いたレーザ装置に関するものである。また、本発明の他の態様は、波長変換処理を行う1つまたは複数の周期分極反転構造部と、光変調処理を行う周期分極反転構造部とを設けた光学デバイス、および当該光学デバイスを用いた露光装置に関するものである。そこで、これらの本発明の作用・効果を一層明らかにするため、「A.本発明にかかる光学デバイスを用いたレーザ装置」と、「B.本発明にかかる光学デバイスを用いた露光装置」とに分けて説明する。
【0023】
A.本発明にかかる光学デバイスを用いたレーザ装置
A−1.光学デバイスの第1実施形態を用いたレーザ装置
図1は本発明にかかる光学デバイスの第1実施形態を用いたレーザ装置を示す図であり、同図(a)はレーザ装置の構成を示す斜視図であり、同図(b)は断面図である。なお、同図は模式的なものであり、各部のサイズやサイズ比率などは現実のものとは異なる。この点に関しては、後で説明する図面においても同様である。
【0024】
このレーザ装置LSは、励起光源1と、励起光源1から出力されるレーザ光L1を励起光とし、レーザ光の増幅とともに発振を行う固体レーザ部2と、固体レーザ部2から出力される近赤外線領域(波長1064[nm])のレーザ光L2を2段階で波長変換して紫外線領域のレーザ光に変換する光学デバイス3とを備えている。
【0025】
励起光源1は、支持基板11と、支持基板11の上面に配置された共通電極12と、共通電極12の上面に配置された4つの半導体レーザ13とを有している。これら4つの半導体レーザ13は幅方向Xに配列されており、各半導体レーザ13の上面に設けられた電極(図示省略)と共通電極12とに所定電位を与えることで、各半導体レーザ13から励起光L1が幅方向Xと直交する光軸方向Yに出力され、固体レーザ部2に照射される。このように、本明細書ではレーザ光が進む方向を光軸方向Yとしている。
【0026】
この固体レーザ部2は、支持基板21と、支持基板21の上面に配置された固体レーザ素子22とを備えている。この固体レーザ素子22は平板形状を有しており、光軸方向Yに対して垂直な2つの端面を有しており、それらのうち半導体レーザ13を向いた端面が入射面221となっており、この入射面221に対して半導体レーザ13から励起光L1が入射される。一方、反半導体レーザ側の端面は出射面222となっている。また、入射面221と出射面222とに挟まれた素子内部では、光導波路構造が形成されており、半導体レーザ13からの励起光L1を吸収し、誘導放出によって生成されるレーザ光を光軸方向Yに伝播し、出射面222から出力する。この実施形態では、固体レーザ素子22は、半導体レーザ13からの励起光L1を吸収して1064[nm]のレーザ光L2を出力するNd:YAG結晶層と、この結晶層の上下両面上に接合したクラッド層とで構成されている。なお、結晶層としては、上記したNd:YAG以外に、例えばNd:YVOを用いることができる。この場合、波長1064[nm]もしくは914[nm]のレーザ光L2が主に発振される。このように本実施形態では、励起光源1と固体レーザ部2とで本発明の「光源部」が構成されている。
【0027】
このように構成された固体レーザ部2から出力される近赤外線領域のレーザ光L2は光学デバイス3に入射される。この光学デバイス3は、本発明にかかる光学デバイスの第1実施形態に相当するものであり、強誘電体結晶により構成される強誘電体基板31と、強誘電体基板31を下方から支持する支持基板32と、強誘電体基板31の下面と支持基板32の上面との間に介挿されて強誘電体基板31を支持基板32で支持しながら一体化させる金属膜33とを備えている。このように強誘電体基板31の下面が本発明の「被支持面」に相当し、支持基板32の上面が本発明の「対向面」に相当している。
【0028】
この強誘電体基板31は、平板形状を有する強誘電体結晶311と、強誘電体結晶311の上下面に形成された絶縁層312、313とを有している。強誘電体結晶311は、光軸方向Yに対して垂直な2つの端面を有しており、それらのうち固体レーザ素子22を向いた端面が入射面311aとなっており、この入射面311aに対して固体レーザ素子22から出力されるレーザ光L2が入射される。一方、反固体レーザ素子側の端面は出射面311bとなっている。また、強誘電体結晶311が上下方向Zから絶縁層312、313で挟み込まれ、結晶内部にステップインデックス型のスラブ導波路が形成されている。このため、入射面311aを介して入射されたレーザ光L2は、上下方向Zにおいてスラブ導波路に閉じ込められながら結晶内部を光軸方向Yに進む。なお、第1実施形態および以下に説明する実施形態では、強誘電体結晶311として酸化マグネシウム(MgO)を添加したストイキオメトリリチウムタンタレート(MgO:Stoichiometric Lithium Tantalate)の単結晶を用いており、以下の説明では、単に「MgO:SLT」と称する。また、絶縁層312、313として、0.5〜1.0[μm]程度の厚みを有するシリコン酸化膜を用いている。
【0029】
また、強誘電体結晶311には、2種類の波長変換部314、315が形成されている。この波長変換部314は、分極の向きが互いに反対である第1分極部3141および第2分極部3142が交互に配列された周期分極反転構造を有している。こうして、波長変換部314では分極反転グレーティングが形成されている。より詳しくは、第1分極部3141および第2分極部3142はいずれも幅方向Xに伸びる帯状形状を有するとともに、互いに隣接配列された第1分極部3141および第2分極部3142からなる分極対が所定周期Λ1で光軸方向Yに配列されている。この実施形態では、図1(b)に示すように、光軸方向Yにおける第1分極部3141および第2分極部3142の厚みはいずれも3.9[μm]であり、周期Λ1は7.8[μm]である。このため、波長変換部314は導波型第2高調波発生部として機能し、入射面311aを介して入射されたレーザ光L2の半分の波長、つまり532[nm]のレーザ光を発生する。このため、波長変換部314から出力されるレーザ光L3は、
・第2高調波の光(波長532[nm])と、
・波長変換部314で変換されずに透過してきた光(波長1064[nm])と
を含んでおり、次の波長変換部315に出力される。このように波長変換部314が本発明の「第1の周期分極反転構造部」および「第1の波長変換部」に相当している。
【0030】
この波長変換部315も、波長変換部314と同様に、分極の向きが互いに反対である第1分極部3151および第2分極部3152が交互に配列された周期分極反転構造を有しており、分極反転グレーティングが形成されている。より詳しくは、互いに隣接配列された、厚み1.1[μm]の第1分極部3151および厚み1.1[μm]の第2分極部3152からなる分極対が周期Λ2(=2.2[μm])で光軸方向Yに配列されている。そして、波長変換部315は和周波数発生部として機能し、第2高調波の光(波長532[nm])と、波長変換部314で変換されずに透過してきた光(波長1064[nm])との和周波数の光(波長355[nm])が発生する。このため、波長変換部315から出力されるレーザ光L4は、
・波長変換部314、315で変換されずに透過してきた光(波長1064[nm])と、
・波長変換部314で発生し、波長変換部315で変換されずに透過してきた第2高調波の光(波長532[nm])と、
・波長変換部315で発生した第3高調波の光(波長355[nm])と
を含んでおり、出射面311bを介して強誘電体基板31から出力される。このように波長変換部315が本発明の「第2の周期分極反転構造部」および「第2の波長変換部」に相当している。
【0031】
以上にように、第1実施形態にかかる光学デバイス3では、単一の強誘電体基板31内で2段階の波長変換(1064[nm]→532[nm]→355[nm])が行われる。このため、それぞれディスクリートな第2高調波発生素子および和周波数発生素子を組み合わせていた従来技術での問題は解消される、つまり高精度な光軸アライメントは不要となる。また、温度環境変化や湿度変化などの影響で、光軸アライメントがずれることもなく、光量安定性および波長変換効率などの光学性能を安定化させることができる。
【0032】
また、上記実施形態では、スラブ導波路を形成して入射面311aを介して入射されたレーザ光L2を強誘電体基板31中のスラブ導波路に閉じ込めながら波長変換を行っているため、いわゆるバルク型の光学デバイスに比べて高い波長変換効率が得られる。また、波長変換部314では、強誘電体結晶311の分極を周期的に反転させた分極反転グレーティングを作製することで2次非線形光学テンソルの周期的符号反転構造を実現し、励起光と第2高調波光との間の位相速度不整合を補償して擬似的に位相整合を達成している。このように擬似位相整合法(QPM:Quasi Phase Matching)を採用することで波長変換部314での波長変換の高効率化が図られている。この点に関しては、波長変換部315についても同様である。
【0033】
また、上記のように強誘電体基板31を金属膜33により支持基板32と一体化するという構成を採用しているため、優れた光学性能が担保される。すなわち、このような構成を採用しているため、支持基板32と一体化した状態で強誘電体基板31を構成する強誘電体結晶311の厚み制御や高精度な周期分極反転構造の形成が可能となる。例えば絶縁層312が形成されていない強誘電体基板31の下面と、支持基板32の上面とに金属材料をそれぞれコーティングし、両コーティング面を相互に密着させて金属膜33を形成することで強誘電体基板31が支持基板32と一体化される。この状態で強誘電体基板31の上面、つまり強誘電体結晶311の上面を研磨することで強誘電体結晶311の結晶厚を所望サイズまで薄膜化することができ、さらに従来より周知の電圧印加法を適用して強誘電体結晶311に周期分極反転構造を高精度で作製することができる。その結果、優れた光学性能が得られる。なお、金属膜33を構成する金属材料としては、例えば金やクロムなどを用いることができる。
【0034】
さらに、このように優れた光学性能を有する光学デバイス3を用いてレーザ装置LSを構成しているので、レーザ装置LS内での光軸アライメントが容易となり、しかも所望波長のレーザ光を安定して出力することができる。
【0035】
A−2.光学デバイスの第2実施形態を用いたレーザ装置
図2は本発明にかかる光学デバイスの第2実施形態を用いたレーザ装置を示す図であり、同図(a)はレーザ装置の構成を示す斜視図であり、同図(b)は断面図である。この第2実施形態にかかる光学デバイスが第1実施形態のそれと大きく相違する点は、波長選択部34が追加されている点であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。そこで、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
この波長選択部34は波長変換部315と出射面311bとの間に設けられた周期分極反転構造部316を有している。そして、この周期分極反転構造部316の上方位置に複数の電極317が配置されており、支持基板32の上面全体を覆うように形成された金属膜33とで周期分極反転構造部316を挟み込むように構成されている。この実施形態では、金属膜33は複数の電極317に対して対向して配置されており、次のように構成された周期分極反転構造部316に回折格子を形成するための共通電極331として機能する。
【0037】
周期分極反転構造部316は、波長変換部314、315と同様に、分極の向きが互いに反対である第1分極部3161および第2分極部3162が交互に配列された周期分極反転構造を有しているが、それらが配列される方向は光軸方向Yに対して所定角度θb(図8(b)参照)だけ傾いた方向となっている。また、複数の電極317はいずれもレーザ光の進む方向、つまり光軸方向Yと平行な方向に伸びるスラブ形状を有しており、幅方向Xに所定ピッチで離間配置されている。さらに、金属膜33の共通電極331は強誘電体基板31全体を下方より覆うように設けられるとともに、一部が幅方向Xに翼状で延設されて接地されている。
【0038】
このように波長選択部34は実質的に周期分極反転構造部316、複数の電極317および共通電極331で構成されており、レーザ装置LSを制御する制御部(図示省略)から各電極317に所定電位が与えられると、電極317と共通電極331の間で生じる電界により分極方位に従った屈折率変化が発生して周期分極反転構造部316に回折格子が形成される。しかも、この実施形態では、第1分極部3161および第2分極部3162の配列方向の傾斜角θbは上記のようにして形成される回折格子によりブラッグ回折が生じる条件を満足するように設定されている。したがって、ブラッグ回折により波長変換部315から出力されるレーザ光L4に含まれる光のうち特定の光、例えば紫外線領域のレーザ光のみがブラッグ回折されて水平面(XZ平面)内で光軸方向Yに対して角度(2θb)だけ傾いて波長選択部34からブラッグ回折光として出射される。このように第2実施形態では、ブラッグ回折により特定波長のレーザ光を他のレーザ光と異なる方向に取り出すことが可能となっている。
【0039】
なお、この実施形態で採用した波長選択部34の構成や動作は、後で説明する露光装置で採用した空間光変調部と共通するため、後で詳述する。また、本実施形態では、ブラッグ回折型の分極反転グレーティングを作成して特定波長のレーザ光を取り出しているが、これと異なる回折方式、例えば特許文献1に記載のラマン・ナス回折型の分極反転グレーティングを作成するように構成してもよい。
【0040】
以上のように、第2実施形態にかかる光学デバイスを用いたレーザ装置LSでは、波長変換部315と出射面311bとの間に波長選択部34を設け、波長変換部315から出力される複数の波長領域を有するレーザ光のうち特定波長のレーザ光のみを所定方向に取り出すことができる。また、このように波長選択部34を追加しているが、波長選択部34(周期分極反転構造部316)は単一の強誘電体基板31内で波長変換部314、315とともに設けられているため、高精度な光軸アライメントは不要となっている。また、温度環境変化や湿度変化などの影響で、光軸アライメントがずれることもなく、光量安定性、波長変換効率および波長選択性などの光学性能を安定化させることができる。
【0041】
A−3.光学デバイスの第3実施形態を用いたレーザ装置
なお、上記第2実施形態では、回折型の分極反転グレーティングを用いて波長選択を行っているが、これに代えて波長選択コーティングを用いることができる。すなわち、図1に示すレーザ装置LSにおいて、誘電体多層膜や金属膜などの波長選択コーティングを出射面311bに施すことで、レーザ装置LSから出力されるレーザ光L5の波長を選択することが可能である。
【0042】
A−4.光学デバイスの第4実施形態を用いたレーザ装置
また、上記実施形態にかかる光学デバイス3では、擬似位相整合法により波長変換の高効率化を図っている。したがって、各波長変換部314、315において、分極部を高精度に形成する必要がある。しかしながら、波長変換部314、315を作製する際に生じる加工誤差を完全に回避することは困難である。そこで、各波長変換部314、315に対応して熱制御位相整合手段を設け、各波長変換部314、315の温度を調整することで波長変換のための位相整合を確実に行うように構成してもよい。なお、この実施形態で採用した熱制御位相整合手段の構成や動作は、後で説明する露光装置で採用した熱制御位相整合手段と同一であるため、後で詳述する。
【0043】
A−5.光学デバイスの第5実施形態を用いたレーザ装置
また、上記第4実施形態にかかる光学デバイスでは、温度制御部により波長変換部の温度を調整することで位相整合の向上を図っているが、各波長変換部の上面に電極を設け、当該電極と金属膜との間に発生させる電界を調整することで位相整合の向上を図ってもよい。なお、この実施形態で採用した電界調整の構成や動作は、後で説明する露光装置で採用した電界調整と同一であるため、後で詳述する。
【0044】
B.本発明にかかる光学デバイスを用いた露光装置
B−1.光学デバイスの第6実施形態を用いた露光装置
図3は本発明にかかる光学デバイスの第6実施形態を用いた露光装置を装備したパターン描画装置を示す斜視図であり、図4は図3に示すパターン描画装置の側面図であり、図5は図3のパターン描画装置の電気的構成を示すブロック図である。このパターン描画装置100は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板Wの表面に光を照射してパターンを描画する装置である。
【0045】
このパターン描画装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部に装置各部が配置されて本体部が構成されるとともに、本体部の外側(本実施形態では、図4に示すように本体部の右手側)に基板収納カセット110が配置されている。この基板収納カセット110には、露光処理を受けるべき未処理基板Wが収納されており、本体内部に配置される搬送ロボット120によって本体部にローディングされる。また、未処理基板Wに対して露光処理(パターン描画処理)が施された後、当該基板Wが搬送ロボット120によって本体部からアンローディングされて基板収納カセット110に戻される。
【0046】
この本体部では、図3および図4に示すように、カバー102に囲まれた本体内部の右手端部に搬送ロボット120が配置されている。また、この搬送ロボット120の左手側には基台130が配置されている。この基台130の一方端側領域(図3および図4の右手側領域)が、搬送ロボット120との間で基板Wの受け渡しを行う基板受渡領域となっているのに対し、他方端側領域(図3および図4の左手側領域)が基板Wへのパターン描画を行うパターン描画領域となっている。この基台130上では、基板受渡領域とパターン描画領域の境界位置にヘッド支持部140が設けられている。このヘッド支持部140では、基台130から上方に2本の脚部材141、142が立設されるとともに、それらの脚部材141、142の頂部を橋渡しするように梁部材143が横設されている。そして、図4に示すように、梁部材143のパターン描画領域側側面にカメラ(撮像部)150が固定されてステージ160に保持された基板Wの表面(被描画面、被露光面)を撮像可能となっている。
【0047】
このステージ160は基台130上でステージ移動機構161によりX方向、Y方向ならびにθ方向に移動される。すなわち、ステージ移動機構161は基台130の上面にY軸駆動部161Y(図5)、X軸駆動部161X(図5)およびθ軸駆動部161T(図5)をこの順序で積層配置したものであり、ステージ160を水平面内で2次元的に移動させて位置決めする。また、ステージ160をθ軸(鉛直軸)回りに回転させて後述する光学ヘッドOHに対する相対角度を調整して位置決めする。なお、このようなステージ移動機構161としては、従来より多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
【0048】
また、このように構成されたヘッド支持部140のパターン描画領域側で光学ヘッドOHがボックス172に対して固定的に取り付けられている。なお、光学ヘッドOHは本発明にかかる光学デバイスを用いており、基板Wに対して光を照射して露光するものであり、本発明の「露光装置」に相当している。その構成および動作については、後で詳述する。
【0049】
また、基台130の反基板受渡側端部(図3および図4の左手側端部)においても、2本の脚部材144が立設されている。そして、この梁部材143と2本の脚部材144の頂部を橋渡しするように光学ヘッドOHの一部を収納したボックス172が設けられており、基台130のパターン描画領域を上方から覆っている。したがって、パターン描画装置100が設置されるクリーンルーム内に供給されているダウンフローを本体内部に引き入れたとしても、パターン描画領域にダウンフローが供給されない空間SPが形成される。
【0050】
そこで、本実施形態にかかるパターン描画装置100では、上記空間SPの反搬送ロボット側にステージ160と光学ヘッドOHのボックス172とに挟まれた空間SPに向けて温調された気体を吹き出す気体吹出部190が配置されている。この実施形態では、本体部の左手側壁を構成するカバー102を貫通するように2つの気体吹出部190が上下に取り付けられている。これらの気体吹出部190は空調器191に接続されており、露光制御部181から指令に応じて作動して空調器191で温調された空気を空間SPに向けて吹き出す。これによって、気体吹出部190から吹き出された温調気体が横向きに流れて空間SPを通過する。これによって上記空間SPの雰囲気が入れ替えられてパターン描画領域での温度変化が抑制される。また、このように上記空間SPを通過した空気は搬送ロボット120に流れ込むが、この実施形態では、搬送ロボット120の下方部に排気口192が設けられるとともに、排気口192が配管193を介して空調器191に接続されている。したがって、排気口192を設けたことで搬送ロボット120を取り囲む雰囲気は排気されて同雰囲気内で下向きの気流、つまりダウンフローが形成される。したがって、搬送ロボット120でパーティクルが舞い上がり散乱するのが効果的に防止される。
【0051】
次に光学ヘッド(露光装置)OHの構成および動作について説明する。この実施形態では、光学ヘッドOHはボックス172に対して固定的に取り付けられており、光学ヘッドOHの直下位置で移動している基板Wに対して光を落射することでステージ160に保持された基板Wを露光してパターンを描画する。なお、本実施形態では、光学ヘッドOHはX方向に複数チャンネルで光を同時に照射可能となっており、X方向が「副走査方向」に相当している。また、ステージ160をY方向に移動させることで基板Wに対してパターンを2次元的に描画することが可能となっており、Y方向が「主走査方向」に相当している。
【0052】
図6は光学ヘッドの内部構成を簡略化して示す図であり、同図(a)は光学ヘッドOHの光軸OAおよび副走査方向Xに沿って光学ヘッドOHを上方(すなわち、図3中の(+Z)側)から見た場合の光学ヘッドOHの内部構成を示し、同図(b)は主走査方向Yに沿って図3の装置手前側(左下側)から光学ヘッドOH側を見た場合(すなわち、光学ヘッドOHの(+X)側から(−X)方向を向いて見た場合)の光学ヘッドOHの内部構成を示している。また、図7は光学ヘッドの一部構成を示す斜視図である。また、図8は空間光変調部の部分拡大模式図である。
【0053】
図6に示す光学ヘッドOHは、光源制御部14により制御される励起光源1と、固体レーザ部2と、固体レーザ部2から出力される近赤外線領域(波長1064[nm])のレーザ光L2を2段階で波長変換して紫外線領域(波長355[nm])のレーザ光に変換するとともに当該レーザ光を変調する光学デバイス3と、光学デバイス3から出力される変調光を基板Wの表面上に導光する光学系4とを備えている。これらの構成要素のうち励起光源1および固体レーザ部2はレーザ装置LSで採用しているものと同一であり、これらが本発明の「光源部」に相当している。また、光学デバイス3は本発明にかかる光学デバイスの第6実施形態に相当する。なお、励起光源1および固体レーザ部2の構成は第1実施形態と同一であるため、同一構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
光学デバイス3では、図6および図7に示すように、支持基板32の上面全体を覆うように金属膜33が設けられており、後述するように共通電極331として機能する。また、金属膜33上に強誘電体結晶により構成される強誘電体基板31が配置されており、金属膜33により支持基板32と接合されて一体化されている。この強誘電体基板31は、MgO:SLTの単結晶の上下面にシリコン酸化膜312、313を形成したものであり、結晶内部にステップインデックス型のスラブ導波路を有している。そして、第1実施形態ないし第5実施形態にかかる光学デバイス3と同様に、強誘電体基板31に互いに異なる周期分極反転構造を有する波長変換部314、315が形成されている。一方、第6実施形態にかかる光学デバイス3では、波長変換部315の出力側に空間光変調部35が追加して設けられている。
【0055】
この空間光変調部35は、波長変換部315と出射面311bとの間に設けられた周期分極反転構造部316を有している。そして、この周期分極反転構造部316の上方位置に複数の電極317が配置されており、金属膜33とで周期分極反転構造部316を挟み込むように構成されている。この実施形態では、金属膜33は複数の電極317に対して対向して配置されており、次のように構成された周期分極反転構造部316に回折格子を形成するための共通電極331として機能する。このように、本実施形態では、電極317が本発明の「第1電極」に相当している。
【0056】
この周期分極反転構造部316では、電界を受けて発生する分極の向きが互いに反対である第1分極部3161および第2分極部3162が交互に配列されている。この実施形態では、特に、図8に示すように、第1分極部3161および第2分極部3162はいずれも配列方向ADに垂直な方向WDに伸びる帯状形状を有し、配列方向ADにおいて同一幅を有するとともに、互いに隣接配列された第1分極部3161および第2分極部3162からなる分極対3163が所定周期(XZ断面において格子周期Λ3)で配列方向ADに配列されており、強誘電体基板31の空間光変調部35はいわゆる周期分極反転構造を有している。なお、本実施形態では、レーザ光の進む方向Yに対して角度θbだけ傾いた方向となっている。
【0057】
また、周期分極反転構造部316では、第1分極部3161および第2分極部3162の結晶軸は互いに反対の向きを有しており、次に説明するように電極317と共通電極331の間で電位差を発生させて電界を周期分極反転構造内に与えると、当該電界を受けて発生する分極の向きが互いに反対となる。
【0058】
また、第1分極部3161と第2分極部3162は結晶の軸方位が逆であるが、元々均一な方位を持った結晶に例えば第2分極部に相当する部分(周期的)に結晶が固有に持っている分極反転電圧を一時的に印加するなどして部分的(周期的)に結晶の軸方位を反転させて作る。この加工を施された結晶を用いる。故に本実施形態の場合、第1分極部3161は元々の結晶の軸方位であり、第2分極部は分極反転加工された軸方位となっている。
【0059】
この実施形態では、図5および図6に示すように、複数(図8では「5本」のみを図示している)の電極317はいずれも波長変換部315から出力されてきたレーザ光L4の進む方向Yと平行な方向に伸びるスラブ形状を有しており、レーザ光L4の進む方向Yとほぼ直交する幅方向Xにおける電極幅EW1は格子周期Λ3の約3倍となっている。また、このような形状を有する電極317は、強誘電体基板31の上面で、かつ周期分極反転構造部316の上方位置でX方向に格子周期Λ3より短い間隔EW2で平行に配列されている。一方、強誘電体基板31の下面に対しては、当該下面全体を覆うように共通電極331が配置されており、複数の電極317に対する共通電極として機能する。
【0060】
このように構成された空間光変調部35では、共通電極331は接地されるのに対し、複数の電極317は変調制御部36に接続され、露光制御部181からの動作指令に応じてそれぞれ独立して変調制御部36から電位付与を受ける。このため、周期分極反転構造部316内では、変調制御部36から所定電位V1(0V以外の電位)が付与された電極317に対応する領域でのみ電極317と共通電極331の間で生じる電界により分極方位に従った屈折率変化が発生して回折格子が形成される。しかも、この実施形態では、角度θbは上記のようにして形成される回折格子により露光処理に供する波長(355[nm])についてブラッグ回折が生じる条件を満足するように設定されている。したがって、例えば図8に示すように、5本の電極317のうち第2チャンネルに相当する電極317(2ch)に対してのみ電位V1を印加すると、当該電極317(2ch)に対応する周期分極反転構造の内部領域でのみ屈折率変化による回折格子が形成され、レーザ光L4のうち電極317(2ch)と第2電極331の間を進む波長(355[nm])の光ビームのみがブラッグ回折して水平面(XZ平面)内で方向Yに対して角度(2θb)だけ傾いて空間光変調部35からブラッグ回折光BLとして出射する。一方、電極317への電圧印加を行わずに電極317と第2電極331の電位差がゼロであり、電界が発生しない場合には、両電極317、331間の屈折率分布は一様となっており、回折格子は形成されない。したがって、この場合の光ビームはそのまま真っ直ぐに強誘電体基板31のスラブ導波路内を直進して光学デバイス3から0次光L0として出射する。このように各電極317に対する電位付与をそれぞれ制御することで電極317の設置本数分の光変調を行うことができる。
【0061】
図6に戻って、光学ヘッドOHの構成説明を続ける。上記のように構成された光学デバイス3の出力側(図6の右手側)に、投影光学系4が配置されている。この投影光学系4では、バンドパスフィルター41と、シリンドリカルレンズ42と、シュリーレン光学部43とがこの順序でY方向に配置されている。このバンドパスフィルター41は波長355[nm]のレーザ光のみを透過させるものである。したがって、光学デバイス3の出射面311bから出力された複数波長(本実施形態では、1064[nm]、532[nm]、355[nm])のうち波長355[nm]のレーザ光のみがシリンドリカルレンズ42に入射される。このシリンドリカルレンズ42はZ方向にのみ正の集光機能を有しており、バンドパスフィルター41を通過した0次光L0または回折光BLは、図6(b)に示すように、シリンドリカルレンズ42にて平行な光とされ、シュリーレン光学部43に入射される。
【0062】
このシュリーレン光学部43では、レンズ431、アパーチャ4321を有するアパーチャ板432、レンズ433がこの順序でY方向に配置されている。レンズ431の前側焦点は電極317の(+Y)側の端部近傍における空間光変調部35内の位置とされ、レンズ431の後側焦点にアパーチャ4321が位置するようにアパーチャ板432が配置される。したがって、空間光変調部35中で回折を受けず、バンドパスフィルター41およびレンズ42を通過した波長355[nm]の0次光L0は、図6(a)中に細い実線にて示すように、レンズ431を介してアパーチャ4321に集光し、当該アパーチャ4321を通過してレンズ433に入射する。このレンズ433は、前側焦点がアパーチャ4321の近傍に位置し、後側焦点がステージ160に保持された基板Wの表面上となるように配置されており、この0次光L0はレンズ433を介して基板Wの表面上に照射されて露光される。一方、回折光BLは、図6(a)中に破線にて示すように、光軸OAに対して所定角度だけ傾いて空間光変調部35から出射されるため、アパーチャ4321から離れた位置、つまりアパーチャ板432の表面で遮蔽される。
【0063】
このように構成されたシュリーレン光学部43は両側テレセントリック光学系と同等の配置であり、図6に示すように、複数のチャンネルを有する光学ヘッドOHで基板Wに露光する場合にも、その露光面(基板Wの表面)に対して各チャンネルの0次光L0の主光線(図6中の2点鎖線)は垂直であり、露光面のピント方向Yの変動に対して倍率の変化を受けない。その結果、高精度な露光が可能となる。このように第6実施形態にかかる光学デバイス3を用いた光学ヘッドOHでは、波長355[nm]の0次光を用いて基板Wへのパターン描画を行っている。また、上記のように配置された投影光学系4が本発明の「光学系」として機能しており、空間光変調部35からの光を基板Wの表面(被露光面、被描画面)に案内している。
【0064】
なお、上記のように構成されたパターン描画装置100は装置全体を制御するためにコンピュータ200を有している。このコンピュータ200はCPUやメモリ201等を有しており、露光制御部181とともに電装ラック(図示省略)内に配置されている。また、コンピュータ200内のCPUが所定のプログラムに従って演算処理することにより、ラスタライズ部202、伸縮率算出部203、データ修正部204およびデータ生成部205が実現される。例えば1つのLSIに相当するパターンのデータは外部のCAD等により生成されたデータであり、予めLSIデータ211としてメモリ201に準備されており、当該LSIデータ211に基づき次のようにしてLSIのパターンが基板W上に描画される。
【0065】
ラスタライズ部202は、LSIデータ211が示す単位領域を分割してラスタライズし、ラスタデータ212を生成してメモリ201に保存する。こうしてラスタデータ212の準備後、または、ラスタデータ212の準備と並行して、上記のようにしてカセット110に収納されている未処理の基板Wが搬送ロボット120により搬出され、搬送ロボット120によってステージ160に載置される。
【0066】
その後、ステージ移動機構161によりステージ160がカメラ150の直下位置に移動して基板W上の各アライメントマーク(基準マーク)を順番にカメラ150の撮像可能位置に位置決めし、カメラ150によるマーク撮像が実行される。カメラ150から出力される画像信号は電装ラック内の画像処理回路(図5において図示省略)により処理され、アライメントマークのステージ160上の位置が正確に求められる。そして、これらの位置情報に基づきθ軸駆動部161Tが作動してステージ160を鉛直軸回りに微小回転させて基板Wへのパターン描画に適した向きにアライメント(位置合わせ)される。ここで、ステージ160を光学ヘッドOHの直下位置に移動させた後で当該アライメントを行ってもよい。
【0067】
図5に示す伸縮率算出部203は、画像処理回路にて求められた基板W上のアライメントマークの位置、および基板Wの向きの修正量を取得し、アライメント後のアライメントマークの位置、並びに、主走査方向Yおよび副走査方向Xに対する基板Wの伸縮率(すなわち、主面の伸縮率)を求める。
【0068】
一方、データ修正部204はラスタデータ212を取得し、伸縮の検出結果である伸縮率に基づいてデータの修正を行う。なお、このデータ修正については、例えば特許第4020248号に記載の方法を採用することができ、1つの分割領域のデータ修正が終了すると、修正後のラスタデータ212がデータ生成部205へと送られる。データ生成部205では、変更後の分割領域に対応する描画データ、すなわち、1つのストライプに相当するデータが生成される。
【0069】
こうして生成された描画データは、データ生成部205から露光制御部181へと送られ、露光制御部181が光源制御部14、変調制御部36およびステージ移動機構161の各部を制御することにより1ストライプ分の描画が行われる。なお、露光動作については、光源制御部14により半導体レーザ13を点灯させるとともに変調制御部36による電界発生制御により行われる。そして、1つのストライプに対する露光記録が終了すると、次の分割領域に対して同様の処理が行われ、ストライプごとの描画が繰り返される。こうして、基板W上の全ストライプの描画が終了して基板Wの表面への所望パターンの描画が完了すると、ステージ160は描画済み基板Wを載置したまま基板受渡位置(図3および図4の右側領域)に移動した後、基板搬送ロボット120により基板Wがカセット110へと戻され、次の基板Wが取り出されて上記したと同様の一連の処理が繰り返される。さらに、カセット110に収納されている全ての基板Wに対するパターン描画が終了すると、カセット110がパターン描画装置100から搬出される。
【0070】
以上のように、第6実施形態にかかる光学デバイスを用いた光学ヘッド(露光装置)OHでは、波長変換部315と出射面311bとの間に空間光変調部35を設け、波長変換部315から出力されるレーザ光が変調されるとともに、特定波長(本実施形態では355[nm])の0次光L0のみが基板W(記録材料)に導光されてLSIデータに対応するパターンが描画される。また、単一の強誘電体基板31内で波長変換部314、315とともに空間光変調部35が設けられているため、これら波長変換部314、315および空間光変調部35の間での高精度な光軸アライメントは不要となっている。また、温度環境変化や湿度変化などの影響で、光軸アライメントがずれることもなく、光量安定性、波長変換効率および空間光変調性などの光学性能を安定化させることができる。
【0071】
また、強誘電体基板31では、厚さ方向Zよりも幅方向Xに広がるスラブ導波路を設けるとともに、幅方向Xに複数の電極317を配置し、変調制御部36が電極317に印加する電圧を制御して電極317の各々と共通電極331の間での電界発生を制御し、電極317ごとに周期分極反転構造内での回折効率を変調している。このように本実施形態では、電極317と同数のチャンネル数で光変調を行うことが可能となっている。
【0072】
また、2つの波長変換部314、315および空間光変調部35が形成される強誘電体基板31を金属膜33により支持基板32と一体化するという構成を採用しているため、第1実施形態と同様の理由から、優れた光学性能が担保される。
【0073】
さらに、このように優れた光学性能を有する光学デバイス3を用いて光学ヘッド(露光装置)OHを構成しているので、光学ヘッドOH内での光軸アライメントが容易となり、しかも露光処理に適した波長(本実施形態では、波長355[nm])のレーザ光を安定して出力することができる。
【0074】
B−2.光学デバイスの第7実施形態を用いた露光装置
図9は本発明にかかる光学デバイスの第7実施形態を用いた露光装置を装備したパターン描画装置を示す図である。この第7実施形態にかかる光学デバイスを用いた光学ヘッド(露光装置)OHはブラッグ回折光BLを用いて基板Wの表面へのパターン描画を行う点で、0次光L0を用いて露光記録を行う光学ヘッドと大きく相違している。すなわち、第7実施形態の特徴部分は、図9に示すように、投影光学系4にバンドパスフィルター41が設けられておらず、シリンドリカルレンズ42とシュリーレン光学系43とで投影光学系4が構成されている点と、その投影光学系4がXY平面において入射レーザ光L4の進む方向(空間光変調部35の入射側の光軸OA)に対して角度2θbだけ傾斜して配置されている点である。
【0075】
このように構成されたパターン描画装置では、同図(a)の破線にて示すように、空間光変調部35でブラッグ回折されて強誘電体基板31の出射面311bから出力される、ブラッグ回折光BLはレンズ431を介してアパーチャ4321に集光し、当該アパーチャ4321を通過してレンズ433に入射する。そして、このレンズ433によりブラッグ回折光BLは基板Wの表面上に照射される。例えば第1、3〜5チャンネルの第1電極333に電圧V1を付与したときには、これらのチャンネル(1、3〜5ch)に対応するブラッグ回折光BLが上記のようにして基板Wの表面上に照射されて各チャンネル(1、3〜5ch)に対応してスポット状に露光される。一方、2チャンネルの光、つまり0次光L0は、図9(a)中に実線にて示すように、光軸OAと平行に強誘電体基板31から出射されるため、アパーチャ4321から離れた位置、つまりアパーチャ板432の表面で遮蔽される。
【0076】
以上のように、第7実施形態においては、変調制御部36により空間光変調部35の周期分極反転構造部316内での電界発生を制御することでブラッグ回折光BLを生じさせることができ、ブラッグ回折を利用して紫外線領域のブラッグ回折光BLのみを露光処理に供している。そのため、第6実施形態と同様の作用効果が得られるのみならず、バンドパスフィルター41の設置が不要となり、第6実施形態に比べて光学ヘッドOHの装置構成を簡素化することができる。
【0077】
B−3.光学デバイスの第8実施形態を用いた露光装置
図10は本発明にかかる光学デバイスの第8実施形態を示す図である。この第8実施形態が第6実施形態と大きく相違する点は、熱制御位相整合手段が追加されている点であり、その他の構成は基本的に第6実施形態と同一である。したがって、以下の説明では相違点を中心に説明する。
【0078】
この第8実施形態では、金属膜33として3つの金属膜334〜336が強誘電体基板31の下面と支持基板32の上面との間に配置されるとともに、金属膜334、335の上方位置に平面視で矩形波形状を有する配線374、375がそれぞれ配置されている。より詳しくは、金属膜334および配線374は例えば0.1〜0.5[nm]のタングステン(W)、チタン(Ti)、ニクロム(Ni−Cr)などの金属材料で形成されている。この金属膜334は波長変換部314全体を下方より覆うように設けられるとともに、両端部が幅方向Xに翼状で延設されるとともに、温度制御部(図示省略)の正極および負極とそれぞれ電気的に接続されている。そして、温度制御部から金属膜334への給電により金属膜334が発熱して波長変換部314を下方側より加熱する。また、配線374は波長変換部314の上方に配置されるとともに、配線374の両端部が温度制御部の正極および負極とそれぞれ電気的に接続されている。そして、温度制御部から配線374への給電により配線374が発熱して波長変換部314を上方側より加熱する。このように、本実施形態では、金属膜334、配線374および温度制御部により、波長変換部314を加熱する熱制御位相整合手段が構成されている。したがって、波長変換部314の温度を調整することで波長変換のための位相整合を確実に行うことができる。
【0079】
また、波長変換部315に対しても、波長変換部314と同様に、熱制御位相整合手段が設けられている。すなわち、金属膜335は波長変換部315全体を下方より覆うように設けられるとともに、両端部が温度制御部の正極および負極とそれぞれ電気的に接続されている。そして、温度制御部から金属膜335への給電により金属膜335が発熱して波長変換部315を下方側より加熱する。また、配線375は波長変換部315の上方に配置されるとともに、配線375の両端部が温度制御部の正極および負極とそれぞれ電気的に接続されている。そして、温度制御部から配線375への給電により配線375が発熱して波長変換部315を上方側より加熱する。
【0080】
以上のように、第8実施形態においては、2つの波長変換部314、315および空間光変調部35を単一の強誘電体基板31に形成するとともに、当該強誘電体基板31を金属膜334〜336により支持基板32と一体化するという構成を採用しているため、第6実施形態と同様に、優れた光学性能が得られる。また、熱制御位相整合手段により波長変換部314、315の温度を調整可能となっている。したがって、波長変換部314、315を作製する際に加工誤差が生じたとしても、熱制御位相整合手段により、各波長変換部314、315の温度を調整することで波長変換のための位相整合を確実に行うことができ、擬似位相整合法により波長変換を高効率で行うことができる。
【0081】
B−4.光学デバイスの第9実施形態を用いた露光装置
各波長変換部314、315での波長変換のための位相整合を上記第8実施形態では温度調整により行っているが、次に説明するように、各波長変換部314、315に対して電界を与えることで屈折率を変化させて位相整合を図ってもよい。
【0082】
図11は本発明にかかる光学デバイスの第9実施形態を示す図である。この第9実施形態が第8実施形態と大きく相違する点は、熱制御位相整合手段の代わりに、屈折率可変位相整合手段が設けられている点であり、その他の構成は基本的に第8実施形態と同一である。したがって、以下の説明では相違点を中心に説明する。
【0083】
この第9実施形態では、金属膜33として3つの金属膜334〜336が強誘電体基板31の下面と支持基板32の上面との間に配置されるとともに、金属膜334、335の上方位置に平面視で矩形平面形状を有する電極384、385がそれぞれ配置されている。この金属膜334は波長変換部314全体を下方より覆うように設けられるとともに、一方端部が幅方向Xに翼状で延設されるとともに、電圧制御部(図示省略)の負極と電気的に接続されている。また、電極384は波長変換部314全体の上方から覆うように設けられるとともに、電極384が電圧制御部の正極と電気的に接続されている。そして、電圧制御部により金属膜334と電極384との間の電位差を制御することで波長変換部314に印加される電界を可変可能となっている。このように、本実施形態では、金属膜334、電極384および電圧制御部により、波長変換部314の屈折率を変化させる屈折率可変位相整合手段が構成されている。したがって、波長変換部314の屈折率を調整することで波長変換のための位相整合を確実に行うことができる。
【0084】
また、波長変換部315に対しても、波長変換部314と同様に、屈折率可変位相整合手段が設けられている。すなわち、金属膜335は波長変換部315全体を下方より覆うように設けられるとともに、一方端部が電圧制御部の負極と電気的に接続されている。また、電極385は波長変換部315全体の上方から覆うように設けられるとともに、電極385が電圧制御部の正極と電気的に接続されている。そして、電圧制御部により金属膜335と電極385との間の電位差を制御することで波長変換部315に印加される電界を可変可能となっている。このように、本実施形態では、金属膜335、電極385および電圧制御部により、波長変換部315の屈折率を変化させる屈折率可変位相整合手段が構成されている。
【0085】
以上のように、第9実施形態においては、2つの波長変換部314、315および空間光変調部35を単一の強誘電体基板31に形成するとともに、当該強誘電体基板31を金属膜334〜336により支持基板32と一体化するという構成を採用しているため、第6実施形態と同様に、優れた光学性能が得られる。また、屈折率可変位相整合手段により波長変換部314、315の屈折率を調整可能となっている。したがって、波長変換部314、315を作製する際に加工誤差が生じたとしても、屈折率可変位相整合手段により、各波長変換部314、315の屈折率を調整することで波長変換のための位相整合を確実に行うことができ、擬似位相整合法により波長変換を高効率で行うことができる。
【0086】
B−5.光学デバイスの第10実施形態を用いた露光装置
図12は本発明にかかる光学デバイスの第10実施形態を示す図である。この第10実施形態では、励起光源1は単一の半導体レーザ13で構成されており、この半導体レーザ13から出力された励起光が光軸方向Yに出力され、光ファイバー5に導入される。この光ファイバー5のコア部(図示省略)には希土類材料がドープされており、光ファイバー5自体がレーザ媒質となるため、半導体レーザ13からの励起光を吸収し、誘導放出によって生成されるレーザ光を光軸方向Yに伝播する。この実施形態では、光ファイバー5はファイバーレーザを用いており、半導体レーザ13からの励起光を吸収して1064[nm]のレーザ光を出力する。
【0087】
また、光ファイバー5の出力端面から出力されたレーザ光が光学デバイス3の入射面311aに入射する。このため、レーザ光が入射される領域は一部に限定されている。そこで、第10実施形態にかかる光学デバイス3では、チャンネル導波路、ビーム整形領域およびスラブ導波路が形成されている。
【0088】
光学デバイス3は、本発明にかかる光学デバイスの第10実施形態に相当するものであり、強誘電体結晶により構成される強誘電体基板31と、強誘電体基板31を下方から支持する支持基板32と、強誘電体基板31の下面と支持基板32の上面との間に介挿されて強誘電体基板31を支持基板32で支持しながら一体化させる金属膜33とを備えている。
【0089】
この強誘電体基板31は上記実施形態と同様に強誘電体結晶311を有している。そして、強誘電体結晶311の両端面のうち光ファイバー5の出力端面と対向する面が入射面311aとなっており、その入射面311aの中央領域に固体レーザ素子から出力されるレーザ光L2が入射される。そして、チャネル導波路に沿って上記実施形態と同様に波長変換部314、315がこの順序で設けられている。なお、各波長変換部314、315は、幅方向Xの寸法が上記実施形態と比べて小さくなっている点を除き、上記実施形態と同一である。
【0090】
そして、光ファイバー5を介して入射された波長1064[nm]のレーザ光は波長変換部314、315の2段階で波長変換される。つまり、波長変換部314での波長変換処理により
・第2高調波の光(波長532[nm])と、
・波長変換部314で変換されずに透過してきた光(波長1064[nm])と
が次の波長変換部315に出力される。また、波長変換部315での波長変換処理により
・波長変換部314、315で変換されずに透過してきた光(波長1064[nm])と、
・波長変換部314で発生し、波長変換部315で変換されずに透過してきた第2高調波の光(波長532[nm])と、
・波長変換部315で発生した第3高調波の光(波長355[nm])と
が出力される。
【0091】
また、強誘電体結晶311の中央部、つまり波長変換部315と空間光変調部35との間には、本発明の「ビーム拡大部」の一例としてビームエキスパンダー38が設けられている。つまり、図12(a)に示すように、このビームエキスパンダー38は上方からの平面視で波長変換部315から空間光変調部35に向けて末広がり形状の導波路で構成されている。このため、波長変換部315から出力されたレーザ光は、上下方向Zにおける広がりが規制される一方、幅方向Xにおいては当該導波路内を広がりながら空間光変調部35に導光される。その結果、レーザ光は扁平形状に整形されて空間光変調部35に入射される。
【0092】
なお、この空間光変調部35は上記実施形態と同一であり、電極317の設置本数と同一数のチャンネルで光変調を行い、変調光を強誘電体結晶311の出射面311bから出力する。また、このように構成された光学デバイス3から出力される変調光については、投影光学系4により基板Wの表面上に導光される。これによって、基板Wの表面上に照射されて各チャンネルに対応してスポット状に露光される。
【0093】
以上のように、第10実施形態においては、2つの波長変換部314、315、ビームエキスパンダー38および空間光変調部35を単一の強誘電体基板31に形成するとともに、当該強誘電体基板31を金属膜33により支持基板32と一体化するという構成を採用しているため、第6実施形態と同様に、優れた光学性能が得られる。
【0094】
B−6.光学デバイスの第11実施形態を用いた露光装置
上記したように第10実施形態では、波長変換部315と空間光変調部35との間にビームエキスパンダー38を配置しているが、例えば図13に示すように、ビームエキスパンダー38と空間光変調部35との間に本発明の「光強度均一化部」の一例としてホモジナイザー39をさらに設けてもよい(第11実施形態)。これにより空間光変調部35に入射される前に光強度の均一化を図ることができる。もちろん、この場合も、2つの波長変換部314、315、ビームエキスパンダー38、ホモジナイザー39および空間光変調部35を単一の強誘電体基板31に形成するとともに、当該強誘電体基板31を金属膜33により支持基板32と一体化することで上記実施形態と同様の作用効果が得られる。また、ホモジナイザー等の光強度均一化部については、上記第6実施形態ないし第9実施形態に追加してもよい、つまり波長変換部315と空間光変調部35との間に光強度均一化部を追加してもよく、これによって同様の作用効果が得られる。
【0095】
また、上記第11実施形態では、ビームエキスパンダー38およびホモジナイザー39をこの順序で用いているが、配設順序はこれに限定されるものではなく、逆であってもよい。また、ビームエキスパンダー38およびホモジナイザー39の代わりに、ビーム拡大機能と光強度均一化機能とを兼ね備えた複合機能部を強誘電体基板31に設けてもよい。
【0096】
B−7.光学デバイスの第12実施形態を用いた露光装置
ところで、上記第6実施形態ないし第11実施形態の光学デバイス3を用いた露光装置(光学ヘッド)では、光学デバイス3と投影光学系4とをそれぞれ独立させていたが、投影光学系4を光学デバイス3に組み込んでもよい。また、光学デバイス3に組み込まれたレンズの屈折率を制御してオートフォーカス機能を付加してもよい。以下、図14ないし図16を参照しつつ光学デバイスの第12実施形態について説明する。
【0097】
図14は本発明にかかる光学デバイスの第12実施形態を示す斜視図である。また、図15は図14の光学デバイスの断面図である。さらに、図16は図14の光学デバイスに組み込まれた投影光学系の部分拡大図である。この第12実施形態は第9実施形態にかかる光学デバイス3に投影光学部40を組み込んだものである。したがって、以下の説明では、追加された投影光学部40の構成および動作を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
この第12実施形態では、強誘電体結晶311内に投影光学部40が設けられている。この投影光学部40は空間光変調部35と出射面311bとの間に配置されており、分極反転により形成される複数のマイクロレンズMLを有している。すなわち、投影光学部40では、電界を受けて発生する分極の向きがマイクロレンズMLと、マイクロレンズMLの周辺部とで互いに反対となる分極反転構造部318を有している。このようにマイクロレンズMLと、マイクロレンズMLの周辺部とは結晶の軸方位が逆であるが、元々均一な方位を持った結晶に例えば第2分極部に相当する部分に結晶が固有に持っている分極反転電圧を一時的に印加するなどして部分的に結晶の軸方位を反転させて作製しており、本実施形態ではマイクロレンズMLの周辺部は元々の結晶の軸方位であり、マイクロレンズMLは分極反転加工された軸方位となっている。したがって、図16(c)に示すように、各マイクロレンズMLは結晶方位軸(Z軸)に対して直交する方向Xにパワーを有しておりXY平面内で光を集光する。
【0099】
また、複数のマイクロレンズMLはXY平面内で2次元配列されている。より具体的には、Y方向に5個のマイクロレンズMLが一列に配列された小レンズ群SGを一単位とし、当該小レンズ群SGがY方向に4組一列に配列されて大レンズ群LGが形成されている。さらに、X方向に当該大レンズ群LGが空間光変調部35のチャンネル数、つまり電極317の個数と同数個、しかも電極317と同一ピッチで一列に配列されている。なお、構成説明のために、大レンズ群LGを構成する4つの小レンズ群SGのうち最も空間光変調部35に近接するものを「第1小レンズ群SG1」と称し、それからY方向に並んでいる小レンズ群SGをそれぞれ「第2小レンズ群SG2」、「第3小レンズ群SG3」、「第4小レンズ群SG4」と称する。なお、大レンズ群LGの個数は空間光変調部35のチャンネル数と同数であることは、本発明の必須事項ではなく、大レンズ群LGの個数と空間光変調部35のチャンネル数との関係は任意である。
【0100】
このように構成された投影光学部40では、XY平面内で空間光変調部35から出力される変調光は第1小レンズ群SG1および第2小レンズ群SG2により、第2小レンズ群SG2と第3小レンズ群SG3との間に集光されて反転像を形成する。また、この反転像はXY平面内で第3小レンズ群SG3および第4小レンズ群SG4により基板Wの表面(被露光面、被描画面)に結像される。
【0101】
また、上記したように強誘電体基板31内に形成される各マイクロレンズMLは結晶方位軸(Z軸)に対して直交する方向Xにのみパワーを有しており、Z方向にはパワーを有していない。そこで、本実施形態では、強誘電体基板31の出射面311bの近傍にZ方向にパワーを有するシリンドリカルレンズCLを配置している。また、所望の波長のレーザ光のみを露光処理に供するために、出射面311bに波長選択膜などのフィルターFTを設けている。このように本実施形態では、マイクロレンズMLが本発明の「第1レンズ」に相当し、シリンドリカルレンズCLが本発明の「第2レンズ」に相当している。
【0102】
こうして、特定波長のレーザ光を基板Wの表面に集光してパターンを描画する。なお、本実施形態では、ブラッグ回折光BL(図16(b)中の破線)を遮光するために、ブラッグ回折光BLの光路上に微小穴HLが設けられている。つまり、微小穴HLは図16(b)に示すように、第1小レンズ群SG1と第2小レンズ群SG2との間で、かつ大レンズ群LGの光軸OAから回折方向に外れた位置に設けられている。
【0103】
また、本実施形態では、マイクロレンズMLの焦点距離を調整するオートフォーカス機能を投影光学部40に付加するために、電極319A、319Bが投影光学部40の上方に配置されており、支持基板32の上面全体を覆うように形成された金属膜338とで分極反転構造部318を挟み込むように構成されている。この実施形態では、金属膜338は電極319A、319Bに対して対向して配置され、図示を省略する電圧制御部の負極と電気的に接続されている。このように金属膜338は投影光学部40を構成するマイクロレンズMLの屈折率を調整するための共通電極として機能している。
【0104】
電極319A、319BはそれぞれX方向に並んで配置されており、電極319Aは(+X)側のマイクロレンズMLの上方位置に位置する一方、電極319Bは(−X)側のマイクロレンズMLの上方位置に位置している。また、電極319A、319Bは電圧制御部の正極と電気的に接続されている。そして、電圧制御部から電極319A、319Bに対して印加する電位をそれぞれ独立して制御可能となっている。
【0105】
そして、電圧制御部が電極319A、319Bと共通電極(金属膜338)との電位差をそれぞれ制御することでマイクロレンズMLの屈折率を変化させて投影像の位置を調整可能となっている。
【0106】
以上のように、第12実施形態においては、2つの波長変換部314、315、空間光変調部35および投影光学部40を単一の強誘電体基板31に形成するとともに、当該強誘電体基板31を金属膜334〜336、338により支持基板32と一体化するという構成を採用しているため、第6実施形態と同様に、優れた光学性能が得られる。また、投影光学系4と同様の機能を有する投影光学部40を光学デバイス3に組み込んだことで光学ヘッドOHを大幅に小型化することができる。さらに、投影光学部40を構成するマイクロレンズMLは可変焦点レンズとなっており、投影光学部40はオートフォーカス機能を有しているため、投影像を確実に基板Wの表面に結像させて良好なパターン描画を行うことができる。
【0107】
また、2つの電極319A、319Bを設けてオートフォーカス領域を2つに分割しているので、オートフォーカス領域毎にフォーカス量をそれぞれ独立して制御可能となっている。もちろん、投影光学部40の上方に配置する電極の個数、形状および大きさなどについては、上記実施形態のそれに限定されるものではなく、オートフォーカス領域の分割数に応じて設定すればよい。
【0108】
B−8.光学デバイスの第13実施形態を用いた露光装置
図17は本発明にかかる光学デバイスの第13実施形態を示す図である。この第13実施形態は、第2の波長変換部315が設けられていない点を除き、第6実施形態(図7)と基本的に同一である。すなわち、光学デバイス3では、強誘電体基板31の強誘電体結晶311に対して入射面311aと出射面311bの間に波長変換部314が設けられるとともに、この波長変換部314と出射面311bとの間に光変調部35が設けられている。なお、波長変換部314と光変調部35とはいずれも第6実施形態のそれらと同一であり、波長変換部314は導波型第2高調波発生部として機能し、入射面311aを介して入射されたレーザ光L2の半分の波長、つまり532[nm]のレーザ光を発生する。そして、波長変換部314から出力されたレーザ光L3は光変調部35に入射され、変調処理を受けて出射面311bから出力され、第6実施形態と同様に、投影光学系4を介して基板Wの表面に案内される。なお、第13実施形態では、532[nm]の0次光L0のみを基板Wに導光するために、投影光学系4は、波長532[nm]のレーザ光のみを透過させるバンドパスフィルター41(図9参照)を有している。
【0109】
以上のように、第13実施形態にかかる光学デバイスを用いた光学ヘッド(露光装置)OHでは、波長変換部314と空間光変調部35を設けているので、特定波長(本実施形態では532[nm])の0次光L0のみが基板W(記録材料)に導光されてLSIデータに対応するパターンが描画される。また、単一の強誘電体基板31内で波長変換部314と空間光変調部35とが設けられているため、波長変換部314および空間光変調部35の間での高精度な光軸アライメントは不要となっている。また、温度環境変化や湿度変化などの影響で、光軸アライメントがずれることもなく、光量安定性、波長変換効率および光変調効率などの光学性能を安定化させることができる。
【0110】
また、波長変換部314および空間光変調部35が形成される強誘電体基板31を金属膜33により支持基板32と一体化するという構成を採用しているため、第1実施形態と同様の理由から、優れた光学性能が担保される。
【0111】
このように、第13実施形態では、波長変換部314および空間光変調部35がそれぞれ本発明の「第1の周期分極反転構造部」および「第2の周期分極反転構造部」に相当している。なお、2つの波長変換部の一方に代えて光変調部を設ける、つまり単一の波長変換部と光変調部とを同一の強誘電体基板31内に設けるという技術思想については、第7実施形態ないし第12実施形態などにも適用することができ、上記と同様の作用効果が得られる。
【0112】
C.その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、強誘電体結晶311として、MgO:SLTを用いているが、その他の強誘電体結晶、例えば酸化マグネシウム(MgO)を添加したリチウムナイオベート(MgO:Lithium Niobate)を用いてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、波長変換部314を第2高調波発生部とするとともに、波長変換部315を和周波数発生部としているが、種々の波長変換部から互いに異なる2種を波長変換部314、315として用いることができる。例えば波長変換部314、315の組み合わせとしては、(第2高調波発生部、差周波数発生部)がある。また、波長変換部の個数は「2」に限定されるものではなく、さらに波長変換部314、315と異なる1つ以上の波長変換部を強誘電体基板31に設けてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、スラブ導波路としてステップインデックス導波路を強誘電体基板31に形成しているが、プロトン交換導波路を形成してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、絶縁層としてSiOを用いたが、酸化窒素膜(SiOxNy)や酸化アルミニウム(Al)などの透明誘電体膜を用いてもよい。
【0116】
また、上記した光学ヘッドOHでは空間光変調部35においてブラッグ回折を発生させて光変調を行っているが、ラマン・ナス回折を発生させて光変調を行うように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
この発明は、波長変換機能を有する光学デバイス、当該光学デバイスを用いたレーザ装置および当該光学デバイスを使用する露光装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1…励起光源
2…固体レーザ部
3…光学デバイス
4…投影光学系
13…半導体レーザ
22…固体レーザ素子
31…強誘電体基板
32…支持基板
33、334〜336、338…金属膜
34…波長選択部
35…空間光変調部
38…ビームエキスパンダー(ビーム拡大部)
39…ホモジナイザー(光強度均一化部)
40…投影光学部
41…バンドパスフィルター
42…シリンドリカルレンズ
43…シュリーレン光学部
100…パターン描画装置
311…強誘電体結晶
311a…入射面
311b…出射面
314、315…波長変換部
316…周期分極反転構造部
317…電極
318…分極反転構造部
319A、319B…電極
LG…大レンズ群
LS…レーザ装置
ML…マイクロレンズ
OH…光学ヘッド
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体結晶により構成され、光が入射される入射面と、前記入射面と対向する出射面と、前記入射面および前記出射面と異なる被支持面とを有する強誘電体基板と、
前記被支持面と対向する対向面を有する支持基板と、
前記被支持面と前記対向面との間に配置されて前記強誘電体基板を前記支持基板に一体化させる金属膜とを備え、
前記強誘電体基板は、
前記入射面と前記出射面との間に設けられた第1の周期分極反転構造部と、前記第1の周期分極反転構造部と前記出射面との間に設けられた前記第1の周期分極反転構造部と異なる第2の周期分極反転構造部とを有し、
前記入射面に入射される光に対して前記第1の周期分極反転構造部により波長変換処理を行うとともに、前記第1の周期分極反転構造部から出力された光に対して前記第2の周期分極反転構造部により波長変換処理または光変調処理を行う
ことを特徴とする光学デバイス。
【請求項2】
前記強誘電体基板は、前記入射面に入射された光を前記出射面に導波するスラブ導波路を有する請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記第1の周期分極反転構造部は、第2高調波発生部、第3高調波発生部、和周波数発生部、差周波数発生部および光パラメトリック発振器のいずれかを構成する第1の波長変換部である請求項1または2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記第2の周期分極反転構造部は、第2高調波発生部、第3高調波発生部、和周波数発生部、差周波数発生部および光パラメトリック発振器のいずれかを構成する第2の波長変換部である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記強誘電体基板は、前記第2の周期分極反転構造部と前記出射面との間に設けられ、前記第2の周期分極反転構造部から出力された光を変調する光変調部をさらに有する請求項4に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記第2の周期分極反転構造部は、前記第1の周期分極反転構造部から出力された光を変調する光変調部である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記光変調部を挟んで前記金属膜に対向して配置される複数の第1電極をさらに備え、
前記光変調部は、前記複数の第1電極と前記金属膜の間に与えられる電界に応じて前記周期分極反転構造内でブラッグ回折またはラマン・ナス回折を発生させて空間光変調を行う請求項5または6に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記強誘電体基板は、前記入射面と前記光変調部との間に設けられるビーム拡大部をさらに有する請求項5ないし7のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記強誘電体基板は、前記入射面と前記光変調部との間に設けられる光強度均一化部をさらに有する請求項5ないし8のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記強誘電体基板は、前記光変調部と前記出射面との間に設けられ、前記光変調部から出力された光を集光する第1レンズを含む光学部をさらに有する請求項5ないし9のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記第1レンズは可変焦点レンズである請求項10に記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記光学部を挟んで前記金属膜に対向して配置される第2電極をさらに備え、
前記光学部は、電界を受けて発生する分極の向きが前記第1レンズと、前記第1レンズの周辺部とで互いに反対となる分極反転構造を有し、前記第2電極と前記金属膜の間に与えられる電界に応じて前記第1レンズと、前記第1レンズの周辺部とで屈折率を変化させて前記第1レンズの焦点距離を変化させる請求項11に記載の光学デバイス。
【請求項13】
前記光学部は、前記光学部内を伝播する光の進行方向に前記第1レンズを複数個配置したレンズ群を有する請求項11または12に記載の光学デバイス。
【請求項14】
前記レンズ群が前記光学部内を伝播する光の進行方向と直交する方向に複数個配置される請求項13に記載の光学デバイス。
【請求項15】
前記複数のレンズ群は1または複数個に区分けされ、
前記区分けされたレンズ群毎に前記第1レンズの焦点距離の変化量を制御可能となっている請求項14に記載の光学デバイス。
【請求項16】
請求項5ないし9のいずれか一項に記載の光学デバイスと、
前記強誘電体基板の前記入射面に光を出力する光源部と、
前記強誘電体基板の前記光変調部で変調されて前記出射面から出力される光を被露光面上に導光する光学部と
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項17】
請求項10ないし15のいずれか一項に記載の光学デバイスと、
前記強誘電体基板の前記入射面に光を出力する光源部と、
前記強誘電体基板の前記出射面と被露光面との間に配置される第2レンズとを備え、
前記第1レンズは前記光変調部から出力された光を前記強誘電体基板の結晶軸方向と直交する方向に集光し、
前記第2レンズは前記強誘電体基板の前記出射面から出力された光を少なくとも前記結晶軸方向に集光することを特徴とする露光装置。
【請求項18】
前記光源部は近赤外レーザ光を出力し、
前記第1の周期分極反転構造部は第2高調波発生部であり、
前記第2の周期分極反転構造部は和周波数発生部であり、
前記光変調部は前記第2の周期分極反転構造部と前記出射面との間に設けられる請求項16または17に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光学デバイスと、
前記強誘電体基板の前記入射面に光を出力する光源部と
を備えることを特徴とするレーザ装置。
【請求項20】
前記光源部は近赤外レーザ光を出力し、
前記第1の周期分極反転構造部は第2高調波発生部であり、
前記第2の周期分極反転構造部は和周波数発生部である請求項19に記載のレーザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−145890(P2012−145890A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6130(P2011−6130)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】