説明

光学フィルムおよびその製造方法ならびに発光装置

【課題】ラッピングを用いずに製造することの可能な光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム91の複数個所にレーザ光L1を照射して(図15(A))、基材フィルム91に複数の貫通孔91Aを形成する(図15(B))。次に、例えば真空蒸着法やスパッタリング法などを用いて各貫通孔91Aの側面91Dに沿って光反射膜92を形成する(図15(C))。次に、液状のエネルギー硬化型の透明樹脂93Dを少なくとも各貫通孔91Aに充填した上で、基材フィルム91を、互いに対向する2つの平板(駆動パネル70、封止パネル80)で挟み込むと共に重ね合わせる(図15(D))。次に、透明樹脂93Dに対して熱を加えて透明樹脂93Dを硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の放射角を補正する光学フィルムおよびその製造方法、ならびにこの光学フィルムを備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機EL(electro-luminescence)素子を用いた有機ELディスプレイが実用化されている。有機EL素子は自発光型であるので、液晶などに比較して視野角が広く、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものと考えられている。
【0003】
有機EL素子は、例えば、基板上に、第1電極と、発光層を含む有機層と、第2電極とを順に有しており、第1電極と第2電極との間に直流電圧が印加されると発光層において正孔−電子再結合が起こり、光を発生するものである。発生した光は、一般に、第2電極の側から取り出される。
【0004】
有機EL素子では、素子内部における屈折率が高い(例えば1.5以上)ので、空気層(屈折率1.0)との界面において全反射が生じ易く、発光光を外部に十分に取り出すことが困難である。そこで、有機EL素子の光取り出し側に反射板(リフレクタ)を配設することにより、発光光の放射角を補正して光取り出し効率を高める手法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。特許文献1,2に記載のリフレクタは、ガラス基板上に、有機EL素子の配列に対応して複数の突部が形成され、各突部の側面が反射部材によって覆われたものである。
【0005】
リフレクタは、例えば、以下のようにして作製することが可能である。まず、ガラス基板の一主面上に、例えばナノインプリント法などを用いて、複数の凸部を規則的に形成したのち、例えば蒸着により表面全体に反射部材を成膜する。次に、反射部材を樹脂で埋め込み、その樹脂を硬化させたのち、例えばラッピングにより凸部の上面を面出しする。このようにして作製されたリフレクタでは、凸部の上面に入射した光の一部が凸部の側面に形成された反射部材によって反射され、放射角の補正された光が、臨界角未満の角度でガラス基板と空気との界面に入射し、ガラス基板側から外部に射出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3573393号公報
【特許文献2】特表2005−531102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述にようにしてリフレクタを作製した場合には、以下の2つの点で問題があった。まず、1つ目の問題点は、表面全体に反射部材を成膜する工程を経ることから、リフレクタの光入射面を形成するためにラッピングを用いることが必要となるが、ラッピングでは、コストが高く、しかも面内の精度を確保することが困難であるということである。2つ目の問題点は、ラッピングにより凸部の上面を面出しする工程を経ることから、リフレクタの光入射面に界面が必ず形成されてしまい、この界面での反射に起因して光取り出し効率が低下してしまうということである。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、ラッピングを用いずに製造することの可能な光学フィルムの製造方法を提供することにある。また、第2の目的は、光入射面の界面での反射に起因した光取り出し効率の低下をなくすることの可能な光学フィルムおよびそれを備えた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学フィルムの製造方法は、基材フィルムに複数の貫通孔を形成したのち、各貫通孔の内面に沿って光反射膜を形成する工程を含むものである。本発明の光学フィルムの製造方法では、基材フィルムに形成された貫通孔の内面に光反射膜が形成される。このとき、貫通孔の開口部には何も構造物が設けられていないので、貫通孔の開口部に光反射膜が形成されることはない。
【0010】
本発明の光学フィルムは、複数の貫通孔が形成された基材フィルムを備えたものである。この光学フィルムは、各貫通孔の内面に沿って光反射膜を備えており、かつ各貫通孔を介して基材フィルムの両面に一括して形成された光透過部を備えている。本発明の発光装置は、支持基板上に複数の発光素子を有する発光パネルと、発光パネルとの関係で発光素子側に設けられた光学フィルムとを備えたものである。この発光装置に搭載された光学フィルムは、上記光学フィルムと同一の構成要素を有している。本発明の光学フィルムおよび発光装置では、光透過部が、各貫通孔の内部および基材フィルムの両面上に一括して形成されており、貫通孔の開口部に界面が存在していない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、貫通孔の開口部に何も構造物が設けられないようにしたので、貫通孔の開口部に光反射膜が形成されることがなく、光入射面を形成するためにラッピングを用いる必要がない。そのため、次工程で、例えば、各貫通孔に樹脂を充填した上で基材フィルムを、互いに対向する2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせ、樹脂を硬化させることにより光透過部を形成するだけで、光学フィルムを完成させることができる。従って、ラッピングを用いずに光学フィルムを製造することができる。
【0012】
本発明の光学フィルムおよび発光装置によれば、貫通孔の開口部に界面が存在しないようにしたので、光入射面の界面での反射に起因した光取り出し効率の低下をなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の概略構成図である。
【図2】画素駆動回路の構成図である。
【図3】図1の発光装置の断面図である。
【図4】図1の発光装置の一変形例の断面図である。
【図5】図3のリフレクタの上面である。
【図6】図3の貫通孔の一例の斜視図、上面図および側面図である。
【図7】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図8】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図9】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図10】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図11】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図12】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図13】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図14】図3の貫通孔の他の例の斜視図、上面図および側面図である。
【図15】図3のリフレクタの製造過程の一例を説明するための断面図である。
【図16】図3のリフレクタの製造過程の他の例を説明するための断面図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る発光装置の概略構成図である。
【図18】図17の発光装置の一変形例の断面図である。
【図19】上記各実施の形態の発光装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図20】上記各実施の形態の発光装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図21】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図22】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図23】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図24】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(リフレクタに接着層あり。図3、図4参照)
2.第2の実施の形態(リフレクタに接着層なし。図17、図18参照)
3.適用例(デジタルカメラなど。図19〜図24参照)
【0015】
<第1の実施の形態>
(概略構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の概略構成を表したものである。この発光装置1は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などに用いられるものである。この発光装置1は、例えば、複数の有機EL素子10R,10G,10B(発光素子)がマトリクス状に配置された表示領域20を備えている。本実施の形態では、例えば、表示領域20において互いに隣り合う有機EL素子10R,10G,10Bが1つの画素11を構成している。なお、以下では、有機EL素子10R,10G,10Bの総称として有機EL素子10を用いるものとする。この発光装置1は、さらに、表示領域20の周辺に、信号線駆動回路30、走査線駆動回路40および電源線駆動回路50を備えている。
【0016】
(回路構成)
図2は、表示領域20内の回路構成の一例を表したものである。表示領域20内には、例えば、図2に例示したような画素駆動回路60が形成されている。この画素駆動回路60は、後述する駆動用基板71に形成されたものである。この画素駆動回路60は、例えば、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2、保持容量Csおよび有機発光素子10によって構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている。TFTの種類は特に限定されるものではなく、例えば、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)であってもよいし、スタガー構造(トップゲート型)であってもよい。駆動トランジスタTr1または書き込みトランジスタTr2は、pチャネルMOS型のTFTであってもよい。
【0017】
画素駆動回路60において、列方向には信号線DTLが複数配置され、行方向には走査線WSLおよび電源線Vccが複数配置されている。各信号線DTLと各走査線WSLとの交差点が、有機発光素子10のいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線DTLは、信号線駆動回路30に接続され、信号線駆動回路30から信号線DTLを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極またはドレイン電極(図示せず)に画像信号が供給されるようになっている。各走査線WSLは走査線駆動回路40に接続され、走査線駆動回路40から走査線WSLを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極(図示せず)に走査信号が順次供給されるようになっている。各電源線Vccは電源線駆動回路60に接続され、電源線駆動回路60から電源線Vccを介して駆動トランジスタTr1のソース電極またはドレイン電極(図示せず)に電源電圧が供給されるようになっている。
【0018】
(断面構成)
図3は、発光装置1の一部、具体的には一の画素11の断面構成の一例を表したものである。発光装置1は、例えば、一の画素11において、駆動パネル70(発光パネル)と封止パネル80とがリフレクタ90(光学フィルム)を介して貼り合わされた構造となっている。なお、駆動パネル70とリフレクタ90との間に何らかの層(例えば接着層)が設けられていてもよい。同様に、封止パネル80とリフレクタ90との間に何らかの層(例えば接着層)が設けられていてもよい。なお、発光装置1が後述の製法によって製造されている場合には、後述の樹脂93Dが接着層の役割を果たす。そのため、上述の接着層が設けられていなくても、駆動パネル70や封止パネル80がリフレクタ90から剥離する虞はない。
【0019】
(駆動パネル70)
駆動パネル70は、上述した画素駆動回路60の形成された駆動用基板71(支持基板)上に、所定のピッチ(例えば20μm〜100μm)でマトリクス状に配置された複数の有機EL素子10を有している。本実施の形態では、例えば、マトリクス状に配置された複数の有機EL素子10のうち互いに隣接する3つの素子が有機EL素子10R,10G,10Bに対応しており、1つの画素11を構成している。各有機EL素子10R,10G,10Bは、駆動用基板71上に第1電極72を有しており、第1電極の表面上に有機層73、第2電極75を駆動用基板71側から順に有している。
【0020】
ここで、第1電極72は、有機層73へ電流を注入する電極(陽極)としての機能だけでなく、後述の発光層で発生した光を反射する機能も有している。第1電極72は、例えば、アルミニウムなどの金属によって構成されている。有機層73は、例えば、有機EL素子10R,10G,10Bごとに異なる材料によって構成されている。有機EL素子10Rにおける有機層73(73R)は、赤色の発光が生じる材料からなる発光層を含んでいる。有機EL素子10Gにおける有機層73(73G)は、緑色の発光が生じる材料からなる発光層を含んでいる。有機EL素子10Bにおける有機層73(73B)は、青色の発光が生じる材料からなる発光層を含んでいる。第2電極75は、有機層73および後述の絶縁膜74の上面を含む表面全体に渡って形成されており、各有機EL素子10R,10G,10Bに対する共通の電極として機能する。第2電極75は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)などの透明導電膜によって構成されている。
【0021】
駆動パネル70は、また、互いに隣り合う有機層73同士の間に絶縁膜74を有している。絶縁膜74は、第1電極72と第2電極75との絶縁性を確保すると共に、サブピクセルごとの開口を規定するものである。絶縁膜74は、例えば、感光性樹脂によって構成されている。絶縁膜74は、第1電極72との対向領域内に開口74Aを有している。従って、有機層73において、第1電極72のうち開口74A内に露出している部分との接触部分が発光領域(図示せず)となる。開口74Aは、光取り出し効率の観点から、後述のリフレクタ90の光入射側の開口91Bとの対向領域内に形成されていることが好ましい。
【0022】
なお、図3では、駆動パネル70の上面が第2電極75となっている場合が例示されているが、何らかの層(例えば絶縁性の保護膜)が第2電極75上に形成されていてもよい。この絶縁性の保護膜は、光取り出し効率の観点から、有機EL素子10の上面と後述のリフレクタ90の開口91Bとの距離が10μm以下となるような厚さとなっていることが好ましい。
【0023】
(封止パネル80)
封止パネル80は、有機EL素子10を封止する封止用基板81を有している。封止用基板81は、有機EL素子10で発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止パネル80は、例えば、カラーフィルタ82を有している。カラーフィルタ82は、例えば、封止用基板81の表面のうち有機EL素子10の光が入射する側に設けられている。カラーフィルタ82は、例えば、有機EL素子10R,10G,10Bのそれぞれに対応して、赤色用のフィルタ82R、緑色用のフィルタ82Gおよび青色用のフィルタ82Bを有している。カラーフィルタ82は、例えば、フィルタ82R,82G,82Bの境界に沿ってブラックマトリクス82BMを有している。
【0024】
フィルタ82R,82G,82Bは、有機EL素子10と同一の配列ピッチでマトリクス状に形成されており、それぞれ、有機層73に対向して形成されている。これらは、顔料を混入した樹脂によってそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤、緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。ブラックマトリクス82BMは、入射した外光のうち、駆動パネル70内や封止パネル80内で反射され、封止用基板81側に向かう光を吸収し、コントラストを改善するものである。ブラックマトリクス82BMは、例えば、黒色の着色剤を混入した黒色の樹脂によって構成されている。
【0025】
なお、図3では、封止パネル80の下面にカラーフィルタ82が設けられている場合が例示されているが、カラーフィルタ82に代わって何らかの層(例えば色変換フィルタや偏光フィルタ等の光学素子)が設けられていてもよい。ここで、色変換フィルタとは、単一色(例えば青色)の光を例えばRGB3色の光に変換するものである。従って、カラーフィルタ82に代わって色変換フィルタが設けられている場合には、各有機層73は、単一色(例えば青色)の発光が生じる材料からなる発光層を含んで構成されていることが好ましい。
【0026】
また、図3では、封止パネル80にカラーフィルタ82が設けられている場合が例示されていたが、例えば、図4に示したように、カラーフィルタ82が封止パネル80から取り除かれていてもよい。この場合に、有機層73が、有機EL素子10R,10G,10Bごとに異なる材料によって構成されていてもよいし、各有機層73が、単一色(例えば白色)の発光が生じる材料からなる発光層を含んで構成されていてもよい。
【0027】
(リフレクタ90)
リフレクタ90は、有機EL素子10から射出された光の放射角を補正することにより光取り出し効率を高めるものである。リフレクタ90は、例えば、図3、図5に示したように、複数の貫通孔91Aの形成された基材フィルム91と、光反射膜92と、光透過部93とを有している。なお、図5は、基材フィルム91を封止パネル80側から見たときの上面構成の一例を表したものである。
【0028】
基材フィルム91は、例えば、ポリイミドなどの樹脂フィルムによって構成されており、例えば、貫通孔91Aのピッチの0.2倍〜1.0倍程度の厚さを有している。複数の貫通孔91Aは、有機EL素子10と同一の配列ピッチでマトリクス状に形成されており、それぞれ、有機層73に対向して形成されている。
【0029】
貫通孔91Aの上面側(封止パネル80側)の開口91Cは、カラーフィルタ82が形成されている場合には、フィルタ82R,82G,82Bとの対向領域内に形成されている。つまり、開口91Cの横幅W1は、フィルタ82R,82G,82Bの横幅W2と同一となっているか、またはそれよりも狭くなっている(図3参照)。また、開口91Cの面積と、貫通孔91Aの下面側(駆動パネル70側)の開口91Bの面積とは互いに異なっている。具体的には、開口91Cの面積の方が開口91Bの面積よりも大きくなっている。つまり、貫通孔91Aは封止パネル80側から見ると、すり鉢状となっている。ここで、貫通孔91Aの中心軸(図示せず)は、例えば、基材フィルム91の法線と平行となっており、かつ、開口91B,91Cのそれぞれの中心点(図示せず)を通過していることが好ましい。また、開口91Bは、開口91Cと対向する領域内に形成されていることが好ましい。
【0030】
開口91Bの外縁と開口91Cの外縁との間には、貫通孔91Aの軸方向の形状を規定する側面91D(貫通孔91Aの内面)が設けられている。側面91Dは、図5に例示したように、開口91Bの外縁と開口91Cの外縁とに連結された環状の形状となっており、封止パネル80側に向いている。側面91Dを基材フィルム91の法線と平行な面で切断したときの断面形状、すなわち、各貫通孔91Aの、基材フィルム91の法線と平行な面での断面の輪郭は、例えば、直線状または放物線状となっている。側面91Dは、基材フィルム91の法線方向と平行な一の線分(図示せず)を中心として、n回回転対称(nは2以上の整数)または完全回転対称となっている。貫通孔91Aの中心軸が基材フィルム91の法線方向と平行となっている場合には、側面91Dは、例えば、貫通孔91Aの中心軸を中心として、n回回転対称または完全回転対称となっている。
【0031】
ここで、n回回転対称とは、回転対象を所定の軸を中心として360度回転させる間に回転前と対称となる回転位置の数がn個あることを意味する。完全回転対称とは、通常の意味における回転対称とは異なり、回転対象を所定の軸を中心として0度〜360度のいかなる角度で回転させても、回転前と対称となることを意味する。なお、貫通孔91Aの具体的な形状について説明は後述する。
【0032】
光反射膜92は、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、Al合金、Ag合金などによって構成されており、例えば、真空蒸着法あるいはスパッタリング法を用いて形成されたものである。光反射膜92は、少なくとも側面91Dに沿って形成されている。そのため、光反射膜92は、側面91Dと同様、環状の形状となっており、封止パネル80側に向いている。また、光反射膜92は、側面91Dと同一の対称性を有しており、基材フィルム91の法線方向と平行な一の線分(図示せず)を中心として、n回回転対称となっている。貫通孔91Aの中心軸が基材フィルム91の法線方向と平行となっている場合には、光反射膜92は、例えば、貫通孔91Aの中心軸を中心として、2回回転対称、4回回転対称または完全回転対称となっている。なお、側面91Dが光反射の機能を有する場合には、光反射膜92が形成されていなくてもよい。
【0033】
光透過部93は、有機EL素子10から射出された光を封止パネル80側に通過させるものであり、エネルギー硬化型の透明樹脂によって構成されている。エネルギー硬化型の透明樹脂としては、例えば、熱硬化型樹脂や、紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。光透過部93は、各貫通孔91Aの内部に充填されており、かつ基材フィルム91の両面(上面91E、下面91F)に層状に形成されている。光透過部93のうち各貫通孔91Aの内部に充填された部分と、基材フィルム91の両面(上面91E、下面91F)に層状に形成された部分(接着層93A,93B)とは、製造過程において一括に形成されており、これらの間に界面は存在していない。つまり、各貫通孔91Aの開口91B,91Cには、界面が存在していない。
【0034】
ここで、接着層93Aの厚さは、基材フィルム91の下面91Fでの反射や吸収による光取り出し効率の低下を低減するために、有機EL素子10の上面と後述のリフレクタ90の開口91Bとの距離が基材フィルム91の厚さの半分以下となっていることが好ましい。一方、接着層93Bの厚さは、封止パネル80の下面にカラーフィルタ82が設けられている場合には、画素ピッチ(有機EL素子10の配列ピッチ)に対して15%程度以下となっていることが好ましい。接着層93Bの厚さは、隣の素子への光漏れ(クロストーク)やブラックマトリクス82BMでの吸収(ケラレ)を低減するために、できるだけ小さいことが好ましい。
【0035】
(貫通孔91Aのバリエーション)
次に、図6(A),(B)〜図14(A),(B)を参照して、貫通孔91Aの種々の形状について説明する。ただし、図6(A),図7(A),図8(A),図9(A),図10(A),図11(A),図12(A),図13(A),図14(A)は、貫通孔91Aを斜め上方から見たものである。図6(B),図7(B),図8(B),図9(B),図10(B),図11(B),図12(B),図13(B),図14(B)は、貫通孔91Aの上面図および側面図である。なお、側面図は、基材フィルム91の面内において互いに直交する2方向(第1方向、第2方向)から見たものである。第1方向は、例えば、水平方向に対応しており、第2方向が、例えば、垂直方向に対応している。
【0036】
図6(A),(B)は、完全回転対称の一例を表したものである。貫通孔91Aは、完全回転対称形状となっている。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を第1方向および第2方向の双方において互いに等しく補正する機能を有する。上面91Eおよび下面91Fがそれぞれ、円形状となっており、貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面も円形状となっている。側面91Dは、第1方向および第2方向を含む、基材フィルム91の面内のあらゆる方向から見たときに、同一形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0037】
図7(A),(B)は、完全回転対称の他の例を表したものである。貫通孔91Aは、完全回転対称形状となっている。従って、この貫通孔91Aについても、入射光の視野角を第1方向および第2方向の双方において互いに等しく補正する機能を有する。上面91Eおよび下面91Fがそれぞれ、円形状となっており、貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面も円形状となっている。側面91Dは、第1方向および第2方向を含む、基材フィルム91の面内のあらゆる方向から見たときに、同一形状となっている。側面91Dは、円錐面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は直線状となっている。
【0038】
図8(A),(B)は、2回回転対称の一例を表したものである。貫通孔91Aは、2回回転対称形状となっている。上面91Eが第1方向に延在する楕円形状となっており、下面91Fが円形状となっている。貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面は、下面91Fから上面91Eに向かうにつれて円形状から楕円形状に変化する。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を、第1方向に大きく補正すると共に、第2方向に小さく補正する機能を有する。側面91Dは、第1方向から見たときに最も幅の狭い形状となっており、第2方向から見たときに、最も幅の広い形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0039】
図9(A),(B)は、2回回転対称の他の例を表したものである。貫通孔91Aは、2回回転対称形状となっている。上面91Eおよび下面91Fがそれぞれ、第1方向に延在する楕円形状となっており、貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面も第1方向に延在する楕円形状となっている。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を、第1方向に大きく補正すると共に、第2方向に小さく補正する機能を有する。側面91Dは、第1方向から見たときに最も幅の狭い形状となっており、第2方向から見たときに、最も幅の広い形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0040】
図10(A),(B)は、2回回転対称の他の例を表したものである。貫通孔91Aは、2回回転対称形状となっている。上面91Eが第1方向に延在する楕円形状となっており、下面91Fが第2方向に延在する楕円形状となっている。貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面については、下面91Fから上面91Eに向かうにつれて第2方向の長さが第1方向の長さよりも急激に短くなり、中途から長軸方向が第2方向から第1方向に変化する。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を、第1方向に大きく補正すると共に、第2方向に小さく補正する機能を有する。側面91Dは、第1方向から見たときに最も幅の狭い形状となっており、第2方向から見たときに、最も幅の広い形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0041】
図11(A),(B)は、4回回転対称の一例を表したものである。貫通孔91Aは、4回回転対称形状となっている。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を第1方向および第2方向の双方において互いに等しく補正する機能を有する。上面91Eおよび下面91Fがそれぞれ、正方形状となっており、貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面も正方形状となっている。側面91Dは、第1方向から見たときと、第2方向から見たときに、同一形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0042】
図12(A),(B)は、2回回転対称の他の例を表したものである。貫通孔91Aは、2回回転対称形状となっている。上面91Eが第1方向に延在する長方形状となっており、下面91Fが円形状となっている。貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面は、下面91Fから上面91Eに向かうにつれて円形状から長方形状に変化する。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を、第1方向に大きく補正すると共に、第2方向に小さく補正する機能を有する。側面91Dは、第1方向から見たときに最も幅の狭い形状となっており、第2方向から見たときに、最も幅の広い形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0043】
図13(A),(B)は、2回回転対称の他の例を表したものである。貫通孔91Aは、2回回転対称形状となっている。上面91Eが第1方向に延在する長方形状となっており、下面91Fが第1方向に延在する楕円形状となっている。貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面は、下面91Fから上面91Eに向かうにつれて楕円形状から長方形状に変化する。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を、第1方向に大きく補正すると共に、第2方向に小さく補正する機能を有する。側面91Dは、第1方向から見たときに最も幅の狭い形状となっており、第2方向から見たときに、最も幅の広い形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0044】
図14(A),(B)は、2回回転対称の他の例を表したものである。貫通孔91Aは、2回回転対称形状となっている。上面91Eが第1方向に延在する長方形状となっており、下面91Fが第2方向に延在する楕円形状となっている。貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面は、下面91Fから上面91Eに向かうにつれて楕円形状から長方形状に変化する。さらに、貫通孔91Aを上面91Eと平行な面で切断したときの断面については、下面91Fから上面91Eに向かうにつれて第2方向の長さが第1方向の長さよりも急激に短くなり、中途から長軸方向が第2方向から第1方向に変化する。従って、この貫通孔91Aは、入射光の視野角を、第1方向に大きく補正すると共に、第2方向に小さく補正する機能を有する。側面91Dは、第1方向から見たときに最も幅の狭い形状となっており、第2方向から見たときに、最も幅の広い形状となっている。側面91Dは、放物面によって構成されており、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭は放物線状となっている。
【0045】
なお、図8(A),(B)〜図14(A),(B)に記載の貫通孔91Aにおいて、貫通孔91Aの、上面91Eの法線と平行な面での断面の輪郭が直線状となっていてもよい。以上で、貫通孔91Aの種々の形状について説明を終了する。
【0046】
(製造方法)
次に、本実施の形態の発光装置1の製造方法について説明する。
【0047】
図15(A)〜(D)は、発光装置1の製造方法の一例を工程順に表したものである。まず、基材フィルム91を用意したのち、基材フィルム91の複数個所にレーザ光L1を照射する(図15(A))。このとき、形成する貫通孔91Aの形状に対応した開口を有するマスクを基材フィルム91の上に配置してもよい。これにより、基材フィルム91に複数の貫通孔91Aが形成される(図15(B))。
【0048】
次に、例えば真空蒸着法またはスパッタリング法を用いて、基材フィルム91の側面91Dに沿って光反射膜92を形成する(図15(C))。続いて、液状のエネルギー硬化型の透明樹脂93Dを少なくとも各貫通孔91Aに充填した上で、基材フィルム91を、互いに対向する2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせる。このとき、液状のエネルギー硬化型の透明樹脂93Dとして、例えば、熱硬化型樹脂を用いる。また、基材フィルム91を挟み込む平板として、例えば、図15(D)に示したように、駆動パネル70および封止パネル80を用いる。
【0049】
また、上記の工程において、基材フィルム91を2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせる際に、透明樹脂93Dが各貫通孔91Aの内部だけでなく、基材フィルム91の上面91E側や下面91F側にも、ある一定の厚さで存在している。そのため、例えば、図15(D)に示したように、駆動パネル70の上面と下面91Fとの間や、封止パネル80の下面と上面91Eとの間にも透明樹脂93Dが存在しており、各貫通孔91Aの開口91B,91Cに界面が存在していない。
【0050】
次に、透明樹脂93Dに対して、エネルギー(例えば熱)を照射して、透明樹脂93Dを硬化させる。これにより、各貫通孔91Aの内部や、基材フィルム91の上面91Eおよび下面91Fに、光透過部93が一体に形成される(図3参照)。このようにして、本実施の形態のリフレクタ90および発光装置1が製造される。
【0051】
なお、基材フィルム91への貫通孔91Aの作製については、他の方法を採ることが可能である。図16(A)〜(C)は、貫通孔91Aの作製工程の他の例を工程順に表したものである。
【0052】
まず、基材フィルム91を用意したのち、基材フィルム91の表面に、感光性のレジスト層100を塗布などにより形成する(図16(A))。次に、レジスト層100の上に、形成する貫通孔91Aの形状に対応した開口を有するマスク(図示せず)介して、レジスト層100を露光したのち、現像する。これにより、レジスト層100の所定の箇所に開口100Aが形成される(図16(B))。
【0053】
次に、例えば、ウエットエッチング法、ドライエッチング法またはサンドブラスト法を用いて、開口100Aを介して基材フィルム91を選択的に除去する。これにより、基材フィルム91のうち開口100A直下の部分に、貫通孔91が形成される(図16(C))。その後、レジスト層100を除去する。このようにしても、基材フィルム91に複数の貫通孔91Aを作製することが可能である。
【0054】
次に、本実施の形態の発光装置1の作用、効果について説明する。
【0055】
本実施の形態の発光装置1では、各サブピクセルに対して駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、各サブピクセルの有機EL素子10に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極72と第2電極75との間で多重反射し、第2電極75、光透過部93、フィルタ82R,82G,82Bおよび封止用基板81を透過して取り出される。
【0056】
ところで、本実施の形態では、光透過部93が、各貫通孔91Aの内部に充填されており、かつ基材フィルム91の両面(上面91E、下面91F)に層状に形成されている。そして、光透過部93のうち各貫通孔91Aの内部に充填された部分と、基材フィルム91の両面(上面91E、下面91F)に層状に形成された部分(接着層93A,93B)とが、製造過程において一括に形成されており、これらの間に界面は存在していない。このように、本実施の形態では、各貫通孔91Aの開口91B,91Cに界面が存在していないので、各貫通孔91Aの開口91B,91Cにおいて有機EL素子10からの光が反射される虞がない。これにより、各貫通孔91Aの開口91B,91Cにおいて、界面での反射に起因した光取り出し効率の低下が生じる虞をなくすることができる。
【0057】
また、本実施の形態の製造方法では、基材フィルム91に複数の貫通孔91Aが形成されたのち、例えば真空蒸着法やスパッタリング法などを用いて各貫通孔91Aの側面91Dに沿って光反射膜92が形成される。このとき、各貫通孔91Aの開口91B,91Cには何も構造物が設けられておらず、開口91B,91Cに光反射膜92が形成されることがないので、貫通孔91Aの光入射面を形成するために、従来から用いられてきたラッピングを用いる必要がない。そのため、次工程で、例えば、透明樹脂93Dを各貫通孔91Aに充填した上で、基材フィルム91を2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせ、透明樹脂93Dを硬化させることにより光透過部93を形成するだけで、リフレクタ90を完成させることができる。従って、本実施の形態の製造方法では、ラッピングを用いずにリフレクタ90を製造することができるので、低コストで、しかも面内の精度を容易に確保することができる。
【0058】
また、本実施の形態の製造方法では、例えばナノインプリント法などを用いて、複数の凸部を規則的に形成した従来の場合と比べて、接着層93Bの厚さを70%以下に抑えることが可能である。このように、接着層93Bの厚さが70%以下に抑えられた結果、光取り出し効率が5%程度向上し、かつ放射角特性についても2〜3%程度、向上することがシミュレーション結果からわかった。従って、本実施の形態の製造方法は、光取り出し効率および放射角特性を向上させることの可能な有益な方法と言える。
【0059】
<第2の実施の形態>
図17は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置2の断面構成の一例を表したものである。この発光装置2は、リフレクタ90に接着層93A,93Bが設けられていない点で、上記実施の形態の発光装置1の構成と相違する。そこで、以下では、相違点について主に説明し、共通点については適宜省略するものとする。
【0060】
本実施の形態のリフレクタ90は、上述したように、接着層93A,93Bを有していない。そのため、基材フィルム91の上面91Eおよび貫通孔91の開口91Cが直接、封止パネル80に接しており、かつ、基材フィルム91の下面91Fおよび貫通孔91の開口91Bが直接、駆動パネル70に接している。
【0061】
なお、図17は、封止パネル80にカラーフィルタ82が設けられている場合が例示されているが、例えば、図18に示したように、カラーフィルタ82が封止パネル80から取り除かれていてもよい。この場合に、有機層73が、有機EL素子10R,10G,10Bごとに異なる材料によって構成されていてもよいし、各有機層73が、単一色(例えば白色)の発光が生じる材料からなる発光層を含んで構成されている。
【0062】
(製造方法)
本実施の形態の発光装置2は、上記実施の形態の発光装置1と同様の方法によって製造することが可能である。まず、基材フィルム91を用意したのち、基材フィルム91の複数個所にレーザ光L1を照射する。このとき、形成する貫通孔91Aの形状に対応した開口を有するマスクを基材フィルム91の上に配置してもよい。これにより、基材フィルム91に複数の貫通孔91Aが形成される。
【0063】
次に、例えば真空蒸着法またはスパッタリング法を用いて、基材フィルム91の側面91Dに沿って光反射膜92を形成する。続いて、液状のエネルギー硬化型の透明樹脂93Dを各貫通孔91Aの内部にだけ充填した上で、基材フィルム91を、互いに対向する2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせる。このとき、液状のエネルギー硬化型の透明樹脂93Dとして、例えば、熱硬化型樹脂を用いる。また、基材フィルム91を挟み込む平板として、例えば、駆動パネル70および封止パネル80を用いる。なお、透明樹脂93Dを各貫通孔91Aの内部にだけ充填するためには、例えば、以下のような方法が有効である。まず、基材フィルム91を駆動パネル70に接して配置する。次に、例えばインクジェット法を用いて、各貫通孔91Aの内部にだけ透明樹脂93Dを滴下する。次に、基材フィルム91の上面に封止パネル80を重ね合わせる。このようにして、透明樹脂93Dを各貫通孔91Aの内部にだけ充填させることが可能である。
【0064】
上記の工程において、基材フィルム91を2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせた際に、透明樹脂93Dが各貫通孔91Aの内部にだけ存在している。そのため、例えば、図15(D)に示したように、駆動パネル70の上面と下面91Fとの間や、封止パネル80の下面と上面91Eとの間には、透明樹脂93Dが存在していない。
【0065】
次に、透明樹脂93Dに対して、エネルギー(例えば熱)を照射して、透明樹脂93Dを硬化させる。これにより、各貫通孔91Aの内部にだけ光透過部93が形成される。このようにして、本実施の形態のリフレクタ90および発光装置2が製造される。
【0066】
本実施の形態では、光透過部93が各貫通孔91Aの内部にだけ設けられている。そのため、基材フィルム91の上面91Eおよび貫通孔91の開口91Cが直接、封止パネル80に接しており、かつ、基材フィルム91の下面91Fおよび貫通孔91の開口91Bが直接、駆動パネル70に接している。これにより、有機層73の上面と、リフレクタ90の開口91Bとの距離を小さくすることができるので、有機層73から発せられた光が基材フィルム91のうち貫通孔91以外の部分で反射されたり吸収される割合を小さくしたりすることができる。その結果、光取り出し効率を向上させることができる。
【0067】
また、本実施の形態の製造方法では、基材フィルム91に複数の貫通孔91Aが形成されたのち、例えば真空蒸着法やスパッタリング法などを用いて各貫通孔91Aの側面91Dに沿って光反射膜92が形成される。このとき、各貫通孔91Aの開口91B,91Cには何も構造物が設けられておらず、開口91B,91Cに光反射膜92が形成されることがないので、貫通孔91Aの光入射面を形成するために、従来から用いられてきたラッピングを用いる必要がない。そのため、次工程で、例えばインクジェット法を用いて、各貫通孔91Aの内部にだけ透明樹脂93Dを滴下したのち、基材フィルム91の上面に封止パネル80を重ね合わせ、透明樹脂93Dを硬化させるだけで、リフレクタ90を完成させることができる。従って、本実施の形態の製造方法では、ラッピングを用いずにリフレクタ90を製造することができるので、低コストで、しかも面内の精度を容易に確保することができる。
【0068】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した第1および第2の実施の形態で説明した発光装置の適用例について説明する。上記各実施の形態の発光装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0069】
(モジュール)
上記各実施の形態の発光装置は、例えば、図19に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、駆動用基板71の一辺に、封止用基板81から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路30、走査線駆動回路40および電源線駆動回路50の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0070】
(適用例1)
図20は、上記各実施の形態の発光装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0071】
(適用例2)
図21は、上記各実施の形態の発光装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0072】
(適用例3)
図22は、上記各実施の形態の発光装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0073】
(適用例4)
図23は、上記各実施の形態の発光装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0074】
(適用例5)
図24は、上記各実施の形態の発光装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0075】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0076】
例えば、上記実施の形態では、第1電極72を陽極、第2電極75を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極72を陰極、第2電極75を陽極としてもよい。
【0077】
また、上記各実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。また、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路30や、走査線駆動回路40、電源線駆動回路50のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,2…発光装置、10,10R,10G,10B…有機EL素子、11…画素、20…表示領域、30…信号駆動回路、40…走査線駆動回路、50…電源線駆動回路、60…画素駆動回路、70…駆動パネル、71…駆動用基板、72…第1電極、73,73R,73G,73B…有機層、74…絶縁膜、75…第2電極、80…封止パネル、81…封止用基板、82…カラーフィルタ、82R,82G,82B…フィルタ、82BM…ブラックマトリクス、90…リフレクタ、91…基材フィルム、91A…貫通孔、91B,91C…開口、91D…側面、91E…上面、91F…下面、92…光反射膜、93…光透過部、93A,93B…接着層、93D…透明樹脂、Cs…保持容量、d1,d2…厚さ、DTL…信号線、L1…レーザ光、Tr1,Tr2…トランジスタ、Vcc…電源線、W1,W2…幅、WSL…走査線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムに複数の貫通孔を形成したのち、前記各貫通孔の内面に沿って光反射膜を形成する工程を含む
光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記各貫通孔に液状の硬化型樹脂を充填した上で前記基材フィルムを、互いに対向する2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせ、前記硬化型樹脂を硬化させることにより光透過部を形成する工程をさらに含む
請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
複数の貫通孔が形成された基材フィルムと、
前記各貫通孔の内面に沿って形成された光反射膜と、
前記各貫通孔の内部および前記基材フィルムの両面上に一括して形成された光透過部と
を備えた光学フィルム。
【請求項4】
前記貫通孔の一方の開口面積と、前記貫通孔の他方の開口面積とが互いに異なっている
請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記各貫通孔の内面は、前記基材フィルムの法線方向と平行な一の線分を中心として、n回回転対称(nは2以上の整数)または完全回転対称となっている
請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記各貫通孔の、前記基材フィルムの法線と平行な面での断面の輪郭は、直線状または放物線状となっている
請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記光透過部は、前記各貫通孔に液状の硬化型樹脂を充填した上で前記基材フィルムを、互いに対向する2つの平板で挟み込むと共に重ね合わせ、前記硬化型樹脂を硬化させることにより形成されたものである
請求項3ないし請求項6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
支持基板上に複数の発光素子を有する発光パネルと、
前記発光パネルとの関係で前記発光素子側に設けられた光学フィルムと
を備え、
前記光学フィルムは、
前記発光素子との対向領域ごとに貫通孔が形成された基材フィルムと、
前記各貫通孔の内面に沿って形成された光反射膜と、
前記各貫通孔の内部および前記基材フィルムの両面上に一括して形成された光透過部と
を有する
発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−231076(P2010−231076A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80044(P2009−80044)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】