説明

光学基板およびその製造方法

【課題】本発明は、透明性、耐熱性、湿水性、耐水性、耐溶剤性、酸やアルカリ等への耐薬品性に優れ、熱膨張係数(線膨張係数)が小さく、機械的性質が改良された靱性のある光学基板、およびその製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】
本発明の光学基板は、置換基を有さないか、ハロゲン原子、メチル基、エチル基のいずれかの置換基のみを有する環状オレフィン構造単位(1)と、トリメチルシリル基などの置換基を有する環状オレフィン構造単位(2)とを特定割合で有し、数平均分子量(Mn)が20,000〜300,000である環状オレフィン付加共重合体からなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学透明な基板およびその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、特定の環状オレフィン付加共重合体からなる光学基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶基板、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)基板、電子ペーパー用基板などの表示素子の基板として、ガラス基板は、透明性、耐熱性、寸法安定性などには優れるが、割れにくく、軽量化され、取り扱いの容易な基板が求められるため、プラスチック材料からなる基板への代替が多数検討されている。そして、プラスチック材料からなる基板には、ガラス材料製基板に準ずる透明性、耐熱性、寸法安定性などの特性が求められる。
【0003】
プラスチック材料の設計上、高透明性を有するプラスチック材料としては、芳香族構造単位が多く存在すると光の吸収があって高度な透明性が得られ難いことから、脂環族の構造単位を有するものが好ましい。しかしながら、脂環族の構造単位を有するプラスチックは機械的性質が劣り、その改良が望まれている。
【0004】
寸法安定性に優れたプラスチック材料としては、これに係る指標である熱膨張係数または線膨張係数が小さいものが好ましい。また、寸法安定性に係わる他の要因として材料の吸湿性があり、材料自身は低吸湿性であることが必要である。
【0005】
さらに、表示素子の基板では、鉛フリーハンダ付け、ITO電極付けなどの二次加工時に高温での処理が必要なるため、材料の耐熱性が求められ、たとえば220℃以上のガラス転移温度を有することが求められる。また、基板の形態としては取り扱いが容易なフィルムまたはシートであることが望まれている。
【0006】
プラスチック材料である液晶基板材料としては、環状オレフィンの水素化された開環重合体、環状オレフィン付加重合体が、光学透明性に優れた環状オレフィン系重合体として提案されている。(特許文献1〜3)
しかし、従来公知の環状オレフィンの水素化された開環重合体や環状オレフィンとエチレンの付加共重合体では、ガラス転移温度が200℃未満で耐熱性や熱膨張係数が大きく、基板材料としては不十分なものが多い。
【0007】
このため、液晶基板材料として、種々の環状オレフィン付加重合体が提案されている。例えば、側鎖置換基にヘキシル基を有する環状オレフィンの付加共重合体(特許文献4、5)、側鎖置換基にアルコキシシリル基を有する環状オレフィンの付加共重合体、およびその架橋体、複合体(特許文献6〜9)、側鎖置換基にシラシクロアルキレン基を有する環状オレフィン付加共重合体およびその架橋体複合体(特許文献10)などが提案されている。
【0008】
また、液晶表示素子基板、有機EL表示素子基板材料としては、環状オレフィン系重合体以外に、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、バクテリアセルロースなどの有機材料やこれら有機材料とガラスフィラー、ガラス繊維布などとの透明複合体が提案されている。(特許文献11〜20)
従来提案されている環状オレフィン系付加重合体を、液晶基板、有機EL基板および電子ペーパー基板などのガラス代替基板の基板材料として使用する際、たとえば、5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを含む環状オレフィン付加共重合体では、熱膨張係数(線膨張係数)が大きく、熱的な寸法安定性が不十分である。すなわち、側鎖
置換基にアルコキシシリル基を有する環状オレフィンの付加共重合体、およびその架橋体、複合体や、側鎖置換基にシラシクロアルキレン基を有する環状オレフィン付加共重合体およびその架橋体、複合体では、吸水性が大きく湿度変化による寸法安定性が不十分なものになる。
【0009】
本発明者は、このような状況に鑑みて鋭意研究したところ、置換基を有さないか、ハロゲン原子、メチル基、エチル基のいずれかの置換基のみを有するビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンと、ブチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基のいずれかの置換基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンとを特定割合で付加共重合して得られる共重合体が、光学基板材料に特に好適であることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
なお、特許文献21には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンと5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(モル比:50/50)とのパラジウム系触媒による付加共重合体が記載されており、これは本発明で用いる付加共重合体と類似しているが、このような重合比率の共重合体は、熱膨張係数が大きいという、他の材料との積層・接着等の工程を有する光学基板の材料としては好ましくない性質を有している。また、特許文献21において用いられるパラジウム系触媒は、重合活性が不十分で、多くのパラジウムを用いているため、生成する付加共重合体も高度な光学透明性を有するものではない。また、この文献には付加共重合体を表示素子用の基板材料などに用いることについては記載されていない。
【特許文献1】特開平5−61026号公報
【特許文献2】特開2001−215482号公報
【特許文献3】特開平6−202091号公報
【特許文献4】特開2002−047318号公報
【特許文献5】特開2002−012624号公報
【特許文献6】特開2002−114826号公報
【特許文献7】特開2002−327024号公報
【特許文献8】特開2003−48998号公報
【特許文献9】特開2003−105214号公報
【特許文献10】特開2003−160620号公報
【特許文献11】特開2004−300433号公報
【特許文献12】特開2004−168945号公報
【特許文献13】特開2004−168944号公報
【特許文献14】特開2004−269727号公報
【特許文献15】特開2004−307845号公報
【特許文献16】特開2004−307845号公報
【特許文献17】特開2002−302539号公報
【特許文献18】特開2002−173529号公報
【特許文献19】特開2005−60480号公報
【特許文献20】特開2005−60680号公報
【特許文献21】特許第3646334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、透明性、耐熱性、湿水性、耐水性、耐溶剤性、酸やアルカリ等への耐薬品性に優れ、熱膨張係数(線膨張係数)が小さく、機械的性質が改良された靱性のある光学基板、およびその製造方法を提供することを課題としている。また、本発明では、液晶基板、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)基板、電子ペーパーなどの用途に好適な光学基板、特にフィルムまたはシート状の光学基板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光学基板は、
下記式(1)で表される構造単位(1)と、下記式(2)で表される構造単位(2)とを有し、
構造単位(1)と構造単位(2)との合計100モル%中、構造単位(1)の割合が55〜98モル%、構造単位(2)の割合が2〜45モル%であり、
数平均分子量(Mn)が20,000〜300,000である環状オレフィン付加共重合体からなることを特徴としている。
【0013】
【化1】

【0014】
(式(1)中、A1〜A4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
【0015】
【化2】

【0016】
(式(2)中、B1〜B4の1つが、ブチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基から選ばれる基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)。
【0017】
本発明では、前記環状オレフィン付加共重合体が、構造単位(1)と構造単位(2)との合計100モル%中、構造単位(1)の割合が80〜98モル%、構造単位(2)の割合が2〜20モル%であることが好ましい。
【0018】
本発明では、前記環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度が220〜400℃であることが好ましい。
本発明の光学基板は、線膨張係数が70ppm/℃以下であることが好ましい。
【0019】
本発明では、前記環状オレフィン系付加共重合体が、膜厚100μmのフィルムに成形して広角X銭散乱を測定した際に、下記条件1)および2)を満たすことが好ましい。
1)検出される2つのピークのうち、低角位のピーク位置(2θ)が8°以上。
2)低角位のピーク強度に対する高角位のピーク強度の比が、0.5以上。
【0020】
本発明の光学基板は、フィルム状またはシート状であることが好ましい。
本発明の光学基板は、液晶表示素子用の基板であることが好ましく、有機EL用の基板であることも好ましく、プラズマディスプレイパネル用の基板であることも好ましく、電子ペーパー用の基板であることも好ましい。
【0021】
本発明の光学基板の製造方法は、下記式(i)で表される単量体(i)と、下記式(ii)で表される単量体(ii)とを含み、単量体(i)と単量体(ii)との合計100モル%中、単量体(i)の割合が55〜98モル%、単量体(ii)の割合が2〜45モル%である単量体組成物を、
パラジウム化合物(a)と、未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロヘキシル基を少なくとも2つ有するホスフィン化合物(b)とを含む重合触媒の存在下で付加共重合反応させて、
数平均分子量が20,000〜300,000である環状オレフィン付加共重合体を製造する工程と、
得られた環状オレフィン付加共重合体を成形する工程とを有することを特徴としている。
【0022】
【化3】

【0023】
(式(i)中、A1〜A4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
【0024】
【化4】

【0025】
(式(ii)中、B1〜B4の1つが、ブチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基から選ばれる基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)。
【0026】
本発明の光学基板の製造方法では、前記重合触媒が、
(a)パラジウムの有機酸塩、またはパラジウムのベータジケトン化合物から選ばれるパラジウム化合物、
(b)下記式(3)で表される化合物から選ばれるホスフィン化合物;
P(R12(R2) …(3)
(式(3)中、Pはリン原子であり、
1は炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロヘ
キシル基であり、
2は、炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロ
ヘキシル基、炭素数6〜12の未置換またはアルキル置換のフェニル基、並びに炭素数3〜6の分岐状アルキル基から選ばれる基である。)、
(c)ルイス酸性のホウ素化合物、ルイス酸性のアルミニウム化合物、イオン性のホウ素化合物およびイオン性のアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、
および、必要に応じて
(d)有機アルミニウム化合物
を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の光学基板の製造方法では、パラジウム化合物(a)とホスフィン化合物(b)とが、下記式(4)で表される錯体を形成していることがより好ましい。
Pd(X)2・〔P(R12(R2)〕k …(4)
(式(4)中、Pdはパラジウム原子であり、Xは有機酸アニオンまたはベータジケトンアニオンであり、R1およびR2は前記式(3)と同じであり、kは1または2を示す。)
本発明の光学基板の製造方法では、前記ホスフィン化合物(b)が、炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のトリシクロペンチルホスフィン化合物であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の光学基板の製造方法では、ルイス酸性のホウ素化合物、ルイス酸性のアルミニウム化合物、イオン性のホウ素化合物およびイオン性のアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(c)が、カルベニウムカチオンまたはホスフォニウムカチオンのイオン性ホウ素化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、透明性、耐熱性、湿水性、耐水性、耐溶剤性、および酸やアルカリ等への耐薬品性に優れ、熱膨張係数(線膨張係数)が小さく、機械的性質が改良された靱性のある光学基板、およびその製造方法を提供できる。また、本発明では、液晶基板、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)基板、電子ペーパーなどの用途に好適な光学基板、特にフィルムまたはシート状の光学基板を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について具体的に説明する。
環状オレフィン付加共重合体
本発明の光学基板を構成する環状オレフィン付加共重合体は、下記式(1)で表される構造単位(1)と、下記式(2)で表される構造単位(2)とを有する。
【0031】
【化5】

【0032】
(式(1)中、A1〜A4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
【0033】
【化6】

【0034】
(式(2)中、B1〜B4の1つが、ブチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基から選ばれる基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、構造単位(1)と構造単位(2)との合計100モル%に対して、構造単位(1)を55〜98モル%、構造単位(2)を2〜45モル%の割合で有し、好ましくは構造単位(1)を70〜98モル%、構造単位(2)を2〜30モル%の割合で、より好ましくは構造単位(1)を80〜98モル%、構造単位(2)を2〜20モル%の割合で有する。構造単位(1)と(2)とを有する環状オレフィン付加共重合体では、構造単位(1)の割合が多くなるに従い、立体規則性の高い構造単位(1)の割合が増加するため、環状オレフィン付加共重合体から得られるフィルム状、シート状などの光学基板の機械的特性が向上し、線膨張係数が小さくなる。
【0035】
構造単位(1)の割合が55モル%未満、すなわち構造単位(2)の割合が45モル%を超えると、環状オレフィン付加共重合体から成形して得られるフィルムまたはシートの線膨張係数が大きくなり、寸法安定性の点で好ましくない。
【0036】
また、構造単位(1)の割合が98モル%を超えると、すなわち、構造単位(2)の割合が2モル%未満では、環状オレフィン付加共重合体が室温〜100℃で安全性の高い芳香族炭化水素、脂環族炭化水素溶媒などに溶解せず、溶液流延法(キャスト法)により、フィルムまたはシートを得ることが困難となる場合がある。
【0037】
環状オレフィン付加共重合体中の構造単位(1)は、下記式(i)で表される単量体(i)を付加共重合することにより形成され、構造単位(2)は、下記式(ii)で表される単量体(ii)を付加共重合することにより形成される。
【0038】
【化7】

【0039】
(式(i)中、A1〜A4は式(1)と同様であって、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
【0040】
【化8】

【0041】
(式(ii)中、B1〜B4は式(2)と同様であって、B1〜B4の1つが、ブチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基から選ばれる基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
上記式(i)で表される単量体(i)の具体例としては、たとえば、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
などが挙げられる。
【0042】
これらの単量体(i)の中では、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンが、付加共重合体から成形されるフィルムまたはシートの機械的強度、靱性の点で特に好ましい。
また、上記式(ii)で表される単量体(ii)の具体例としては、たとえば、
5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−sec−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−tert−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−トリメチルシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−トリメチルシリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−トリメチルシリル−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−n−ブチル−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−6−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチル−6−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−n−ブチル−6−クロロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
などが挙げられる。
【0043】
これらの単量体(ii)の中では、
5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどの、式(ii)中B1〜B4のうちの1つがブチル基である化合物、
5−トリメチルシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
が、得られる環状オレフィン付加共重合体から成形されたフィルムまたはシートに靱性を付与して、線膨張係数を小さくできるので好ましい。
【0044】
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、上述した構造単位(1)と構造単位(2)のほかに、接着性付与、架橋部位の導入などの目的で、構造単位(1)と構造単位(2)との合計100モル%に対して10モル%以下の割合で、側鎖置換基に極性または官能基を有するその他の環状オレフィン系の構造単位(3)を有していてもよい。構造単位(3)は、エステル基、酸無水物基、カルボンイミド基、オキセタニル基などから選ばれる
極性基または官能基を有する環状オレフィン系の単量体(iii)を付加重合することによ
り形成される。
【0045】
このような単量体(iii)の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、
2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、
2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸t−ブチル、
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、
4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、
4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸t−ブチル、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2、3−無水カルボン酸、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−スピロ−3’−exo−無水スクシン酸

テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−スピロ−3’−exo−無水スクシン酸、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−N−シクロヘキシル−2,3−カルボンイミド、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−N−(2’,6’−ジエチルフェニル)−2,3−カルボンイミド、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−N−シクロヘキシル−2−スピロ−3’−exo−無水スクシンイミド
5−[(3−エチル−3−オキタセニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−[(3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸(3−エチル−3−オキセタニル)メチル。
【0046】
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量で、数平均分子量(Mn)が20,000〜300,000、重量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000、好ましくは数平均分子量(Mn)が50,000〜150,000、重量平均分子量(Mw)が100,000〜300,000である。
【0047】
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体の数平均分子量(Mn)が20,000未満では、成形したフィルムまたはシートの機械的強度が低下し、割れ易いものとなる場合がある。一方、その数平均分子量(Mn)が300,000を超えると溶液流延法によるフィルムまたはシートを作製するに際し、溶液粘度が高くなりすぎて、フィルムまたはシートへの成形が困難となったり、成形されたフィルムまたはシートの平坦性が損なわれることが多い。
【0048】
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性で測定される貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E”)から導かれるTanδ(Tanδ=E”/E’)の温度分散ピーク温度から求められる。
【0049】
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度は、220〜400℃、好ましくは250〜350℃である。このガラス転移温度が220℃未満では耐熱性が不足し、フィルムまたはシート材料としての線膨張係数が大きくなったり、ITO(インジウ
ム・スズオキサイド)電極付けなどフィルムまたはシートへの二次加工時に高温での処理が困難となり、ITO電極としての導電性効果が低下する。
【0050】
また、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度が400℃を超えると靱性のあるフィルムまたはシートが得られないことが多い。
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、透明性に優れ、膜厚100μmのフィルムで測定される光線透過率(波長400nm)が通常85%以上、好ましくは88%以上であり、ヘイズ値は通常1.0%未満、好ましくは0.6%以下である。
【0051】
また、本発明に係る環状オレフィン系付加共重合体は、膜厚100μmのフィルムに成形して広角X銭散乱を測定した際に、下記条件1)および2)を満たすことが好ましい。1)検出される2つのピークのうち、低角位のピーク位置(2θ)が8°以上。
2)低角位のピーク強度に対する高角位のピーク強度の比が、0.5以上。
【0052】
なお、広角X線散乱図の低角位のピーク位置(2θ)が大きいほど、ポリマーにおける分子間距離が小であるという特徴を有する。また、高角位のピークは分子内の配列が規則的であるほどピーク強度が大であるという特徴を有する。すなさち、上記条件1)および2)を満たす環状オレフィン付加共重合体は、分子間距離が小さく、かつ、分子内配列が規則的である。このような環状オレフィン系付加共重合体としては、本発明の光学基板の製造方法において得られる環状オレフィン付加共重合体が好適なものとして挙げられる。
【0053】
環状オレフィン付加共重合体の製造
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、上述した単量体(i)、単量体(ii)および必要に応じて単量体(iii)からなる単量体組成物を、付加共重合することにより得
ることができる。付加共重合に供する単量体組成物は、単量体(i)と単量体(ii)との合計100モル%中、単量体(i)の割合が55〜98モル%、単量体(ii)の割合が2〜45モル%であり、好ましくは単量体(i)の割合が70〜98モル%、単量体(ii)の割合が2〜30モル%であり、より好ましくは単量体(i)の割合が80〜98モル%、単量体(ii)の割合が2〜20モル%である。単量体組成物中の単量体(iii)の割合
は、単量体(i)と単量体(ii)との合計100モル%に対して10モル%以下の割合である。
【0054】
本発明において、単量体組成物の付加共重合には、パラジウム系触媒を用いるのが好ましく、パラジウム化合物と特定のホスフィン化合物を含有する特定のパラジウム系触媒を用いるのがより好ましい。環状オレフィン付加共重合体の製造を、特定のパラジウム系触媒を用いて行うと、環状オレフィン付加共重合体中の構造単位(1)が高い立体規則性となり、環状オレフィン付加共重合体の分子量を容易に好ましい範囲に制御することができる。ニッケル系の触媒では、高い立体規則性の構造単位(1)が得られず、25℃での炭化水素溶媒への溶解性は高いものの、得られる成形体の機械的性質が劣り、線膨張係数も大きなものとなるため好ましくない。
【0055】
ところで、特定のパラジウム触媒を用いて付加重合して得た構成単位(1)は、上述のように高い立体規則性を示すため、単量体(i)のみの付加重合体では、25℃の炭化水素溶媒には溶解し難く、溶液流延法による成形が困難である。このため、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、構成単位(2)を有することが必要であり、これにより溶液流延法によるフィルムまたはシートへの成形を行うことができる。
・重合触媒
本発明において、環状オレフィン付加重合体を製造する重合触媒は、好ましくは、パラジウム化合物(a)と、ホスフィン化合物(b)とを含むパラジウム系触媒であり、より具体的には、(a)パラジウム化合物、(b)ホスフィン化合物、(c)ルイス酸性のホ
ウ素化合物、ルイス酸性のアルミニウム化合物、イオン性のホウ素化合物およびイオン性のアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、および、必要に応じて、(d)有機アルミニウム化合物からなる触媒である。
(a)パラジウム化合物
触媒成分(a)であるパラジウム化合物としては、下記の群の化合物が挙げられる。
1)パラジウムの有機酸塩、パラジウムのベータジケトン化合物、パラジウムのハロゲン化物。好ましくは、パラジウム(ii)の炭素数1〜20のカルボン酸塩、炭素数1〜20のスルフォン酸塩、炭素数4〜30のリン酸エステル塩、ベータジケトン化合物、ハロゲン化物、パラジウム(ii)の炭素数5〜15のベータジケトン化合物。
2)σ(シグマ)結合でPd原子に結合するアルキル基、アリ−ル基およびまたはπ(パイ)結合でPd原子に結合するアルケニル基、置換または未置換のシクロアルカジエニル基、シクロアルカジエン基から選ばれた置換基を少なくとも1つを有するパラジウム錯体。
【0056】
上記1)群のパラジウム化合物としては、具体的には、たとえば、
パラジウムジメタノアート、パラジウムジエタノアート、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジエタノアート、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジエタノアート、
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジエタノアート、
パラジウムビス(トリフルオロエタノアート)、
パラジウムジブタノアート、
パラジウムビス(2−エチルヘキサノアート)、
パラジウムジドデカノアート、
パラジウムジ(オクタデカ−9−エンア−ト)、
パラジウムビス(シクロヘキサンカルボキシラート)、
パラジウムビス(ベンゼンカルボキシラート)、
パラジウムビス(3−メチルベンゼンカルボキシラート)、
パラジウムビス(4-メチルベンゼンカルボキシラート)、
パラジウムビス(ナフタレンカルボキシラート)、
パラジウムビス(ブチルホスフェート)、
パラジウムビス(ジブチルホスフェート)、
パラジウムビス(ジヘキシルホスフェート)、
パラジウムビス(メタンスルフォナート)、
パラジウムビス(トリフルオロメタンスルフォナート)、
パラジウムビス(p−トルエンスルフォナート)、
パラジウムビス(ベンゼンスルフォナート)、
パラジウムビス(ナフタレンスルフォナート)、
パラジウムビス(ドデシルベンゼンスルフォナート)、
パラジウムビス(2,4−ペンタジオナート)、
パラジウムビス(1−エトキシ−1,3−ブタンジオナート)、
パラジウムビス(1,1,1-トリフルオロ−5,5,5−トリフルオロ−2,4−ペンタジオナート)、
パラジウムビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタ-3,5-ジオナート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジクロライド、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジブロマイド、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジクロライド、
ビス〔トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジブロマイド、
ビス〔トリ(4−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジブロマイド、
1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンパラジウムジクロライド、
1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンパラジウムジクロライド、
ビス(ジメチルグリオキシム)パラジウムジクロライド、
などが挙げられる。
【0057】
上記2)群のパラジウム化合物としては、具体的には、たとえば、
(1,5-シクロオクタジエン)パラジウムジクロライド、
〔(η3-クロチル)(1,5-シクロオクタジエン)パラジウムクロライド〕、
〔(η3-クロチル)(1,5-シクロオクタジエン)パラジウムブロマイド〕、
〔(η3-クロチル)(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム〕〔エタノアート〕、
〔(η3-アリル)(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム〕{トリフルオロエタノアート}、
(シクロペンタジエニル)(メチル)(トリフェニルホスフィン)パラジウム、
〔ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(メチル)パラジウム(クロライド)〕、
〔ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(フェニル)パラジウム(クロライド)〕、
〔2,6−(ジメチルアミノメチル)フェニル〕パラジウムクロライド、
〔2−(ジメチルアミノメチル)フェニル〕(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム〕〔エタノアート〕、
〔2−(ジメチルアミノメチル)フェニルパラジウムエタノアート〕2
(1,5,9-シクロドデカトリエン)パラジウム、
ビス(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン)パラジウム、
ビス(η3-アリルパラジウムクロライド)、
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、
ビス〔μ2-クロロ-1η2,5η1-6-エトキシ-exo-5,6-ジヒドロジシクロペンタジエンパラジウム(II)〕
などが挙げられる。
【0058】
これらのパラジウム化合物のうちでは、煩雑な合成を必要とせず、かつ重合活性が優れる、パラジウムの有機酸塩、またはパラジウムのベータジケトン化合物から選ばれる化合物が好ましく用いられる。
(b)ホスフィン化合物
触媒成分(b)であるホスフィン化合物としては、未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロヘキシル基を少なくとも2つ有するホスフィン化合物が好ましく、より好ましくは、下記式(3)で表される化合物から選ばれるホスフィン化合物が望ましい。
【0059】
P(R12(R2) …(3)
(式(3)中、Pはリン原子であり、
1は炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロヘ
キシル基であり、
2は、炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロ
ヘキシル基、炭素数6〜12の未置換またはアルキル置換のフェニル基、並びに炭素数3〜6の分岐状アルキル基から選ばれる基である。)
このようなホスフィン化合物の具体例としては、
トリシクロペンチルホスフィン、
ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン、
ジシクロペンチル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、
ジシクロペンチル(イソプロピル)ホスフィン、
ジシクロペンチル(s-ブチル)ホスフィン、
ジシクロペンチル(t−ブチル)ホスフィン、
ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン、
トリシクロヘキシルホスフィン、
ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン、
ジシクロヘキシル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、
ジシクロヘキシル(イソプロピル)ホスフィン、
ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン
などが挙げられる。
【0060】
これらのホスフィン化合物(b)の中では、炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のトリシクロペンチルホスフィンが特に好ましい。
本発明に係る重合触媒では、パラジウム化合物(a)が、ホスフィン化合物(b)とが錯体を形成していることがより好ましく、パラジウム化合物(a)とホスフィン化合物(b)とが下記式(4)で表される錯体を形成していることがさらに好ましい。
【0061】
Pd(X)2・〔P(R12(R2)〕k …(4)
(式(4)中、Pdはパラジウム原子であり、Xは有機酸アニオンまたはベータジケトンアニオンであり、R1およびR2は前記式(3)と同じであり、kは1または2を示す。)。
(c)ルイス酸性のホウ素化合物、ルイス酸性のアルミニウム化合物、イオン性のホウ素化合物およびイオン性のアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物
触媒成分(c)としては、1)ルイス酸性のホウ素化合物、2)ルイス酸性のアルミニウム化合物、3)イオン性のホウ素化合物および4)イオン性のアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
1)ルイス酸性のホウ素化合物
ルイス酸性のホウ素化合物としては、次式で表される化合物が挙げられる。
【0062】
B(R33・D
(式中、Bはホウ素原子、R3はフッ素原子置換、またはフッ素化アルキル置換のフェニ
ル基またはフッ素原子、Dは炭素数1〜10のジアルキルエーテル、トリアルキルアミン、フェノールおよびアルコールから選ばれた電子供与性の化合物)
このようなルイス酸性のホウ素化合物としては、具体的には、例えば、
トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、
トリス(3,5−フルオロフェニル)ホウ素、
トリス〔3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ホウ素、
三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、
三フッ化ホウ素・ジブチルエーテル錯体、
三フッ化ホウ素・トリエチルアミン錯体、
などの化合物が挙げられる。
2)ルイス酸性のアルミニウム化合物
ルイス酸性のアルミニウム化合物としては、次式で表される化合物が挙げられる。
【0063】
AlR4k3-k
(式中、Alはアルミニウム原子、R4はフッ素原子置換、またはフッ素化アルキル置換
のフェニル基または炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基、Xはフッ素、塩素、臭素から選ばれたハロゲン原子、kは0〜3の整数を示す。)
このようなルイス酸性のアルミニウム化合物としては、具体的には、例えば、
トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、
トリス(3,5−フルオロフェニル)アルミニウム、
トリス〔3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕アルミニウム、
三フッ化アルミニウム、ジエチルエーテル錯体、
エチルアルミニウムジフロライド、
エチルアルミニウムジクロライド、
ブチルアルミニウムジブロマイド、
ジエチルアルミニウムフロライド、
3,5−ジメチルフェニルアルミニウムジフロライド
などの化合物が挙げられる。
3)イオン性のホウ素化合物
イオン性のホウ素化合物としては、次式で表される化合物が挙げられる。
【0064】
〔R5+〔B(R64-
(式中、R5はカルボニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン、
アンモニウムカチオン、アニリニウムカチオンから選ばれた炭素数1〜30の有機カチオン、R6はフッ素原子置換またはフッ化アルキル置換のフェニル基、Bはホウ素原子を示
す。)
このようなイオン性のホウ素化合物としては、具体的には、例えば、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(p-トリル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニル(メチル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ビス(ジフェニル)メチルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、
トリフェニルホスフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルホスフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジフェニルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
リチウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、
などが挙げられる。
4)イオン性のアルミニウム化合物
イオン性のアルミニウム化合物としては、次式で表される化合物が挙げられる。
【0065】
〔R5+〔Al(R64-
(式中、R5はカルボニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン、
アンモニウムカチオン、アニリニウムカチオンから選ばれた炭素数1〜30の有機カチオン、R6はフッ素原子置換またはフッ化アルキル置換のフェニル基、Alはアルミニウム
原子を示す。)
このようなイオン性のアルミニウム化合物としては、具体的には、例えば、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミナート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]アルミナート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)アルミナート、
トリフェニルカルベニウムテトラフェニルアルミナート
などが挙げられる。
【0066】
これらの触媒成分(c)の中では、3)イオン性ホウ素化合物が好ましく、特にカルベニウムカチオンやホスフォニウムカチオンのイオン性ホウ素化合物が好ましい。
(d)有機アルミニウム化合物
必要に応じて用いられる触媒成分(d)である有機アルミニウム化合物は、少なくとも1つのアルミニウム−アルキル結合を有するアルミニウム化合物である。
【0067】
このような触媒成分(d)である有機アルミニウム化合物としては、具体的には、例えば、
メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサンなどのアルキルアルモキサン化合物;
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、などのトリアルキルアルミニウム化合物;
ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルキルアルミニウムヒドリド化合物;などが好ましく用いられる。
【0068】
また、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン原子を有するアルキルアルミニウム化合物などを挙げることもできる。
【0069】
触媒成分(d)である有機アルミニウム化合物は、触媒成分(a)のパラジウム化合物がアルキル基やη3-アリル基を有する場合や、パラジウムの有機カルボン酸塩、またはパラジウムのベータジケトン化合物である場合には、必ずしも必要な成分ではないが、重合系に存在した場合に重合を阻害するアミン類、硫黄化合物を除去する作用はある。
【0070】
これらの各触媒成分は、通常以下の範囲の使用量で用いられる。
触媒成分(a)のパラジウム化合物は、単量体1モルに対して、0.001〜0.1ミリモル、好ましくは0.002〜0.02ミリモルの範囲で用いられる。
【0071】
触媒成分(b)のホスフィン化合物は、触媒成分(a)のパラジウム化合物のパラジウム原子1モルに対して、0.2〜2.0モル、好ましくは0.5〜1.5モルの範囲で用いられる。なお、パラジウム化合物(a)が触媒成分(b)のホスフィン化合物と錯体を形成した化合物である場合は、別途の触媒成分(b)は必ずしも必要としない。
【0072】
触媒成分(c)のルイス酸性のホウ素化合物、ルイス酸性のアルミニウム化合物、
イオン性のホウ素化合物またはイオン性のアルミニウム化合物から選ばれた化合物は、触媒成分(a)のパラジウム化合物1モル当たり、0.1〜10モル、好ましくは0.5〜2.0モルである。
【0073】
触媒成分(d)の有機アルミニウム化合物は、触媒成分(a)のパラジウム化合物1モル当たり、0.5〜100モルの範囲で、好ましくは1〜10モルの範囲で用いられる。
本発明では、付加共重合に用いる触媒の調製方法、すなわち、上述した各触媒成分の添加方法については、特に制約はないが、たとえば、
1)単量体(i)、単量体(ii)および必要に応じて単流体(iii)からなる環状オレフ
ィン系の単量体組成物と、重合溶媒の混合物に、触媒成分(a)、触媒成分(b)および触媒成分(c)さらに必要に応じて触媒成分(d)の順に添加する
方法。
2)単量体組成物と重合溶媒の混合物に、必要に応じて用いられる触媒成分(d)、触媒成分(c)、触媒成分(a)さらに触媒成分(b)の順に添加する方法、
3)予め触媒成分(a)、(b)および(c)を混合接触したものを単量体組成物、重合溶媒の混合物に添加する方法
などの方法が用いられる。
・分子量調節剤(連鎖移動剤)
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体の製造に用いられる分子量調節剤としては、以下の1)、2)および3)が挙げられる。
1)シクロペンテン環を有する炭素数5〜15のシクロペンテン化合物
例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、3−エチルシクロペンテン、3−イソプロピルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、4−エチルシクロペンテン、4−イソプロピルシクロペンテンなどが挙げられる。
2)炭素数1〜12のα−オレフィン化合物。
【0074】
例えばエテン、プロパ−1−エン、ブタ−1−エン、ヘキサ−1−エン、オクタ−1−エン、スチレン、ビニルトリメチルシランなどが挙げられる。
3)炭素数6〜10のシクロアルカジエン環を有する炭素数6〜15のシクロアルカジエン化合物。
【0075】
例えばシクロオクタ−1,5−ジエン、シクロ−1,3−ジエン、シキロヘキサ−1,4−ジエンなどが挙げられる。
これらの分子量調節剤の使用量は、製造する環状オレフィン付加共重合体の所望分子量、分子量調節剤の種類、パラジウム化合物の種類、ホスフィン化合物の種類にもよるが、通常、単量体1モル当たり、0.001〜5モル、このましくは0.01〜2モルの範囲で用いることができる。これにより、得られる環状オレフィン付加共重合体の数平均分子量(Mn)を、20,000〜300,000の範囲に好適に制御することができる。
・重合
本発明において、環状オレフィン付加共重合に用いることができる溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられるが、非ハロゲン系の溶媒を用いることが安全衛生上や環境対策上、好ましい。なお、本発明においては、これら溶媒を2種以上使用した混合溶媒も用いることができる。
【0076】
重合溶媒は単量体100重量部当たり、0〜2000重量部の範囲で用いることができる。
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体を製造する際の重合温度は、通常、−20〜120℃の範囲であり、経時的に温度を変えることも可能である。本発明において、重合系の雰囲気は、窒素下、アルゴン下、および空気下でも重合を行うことができる。
【0077】
本発明においては、単量体を一括して仕込む方式や逐次添加する方式など採ることができる。二種以上の単量体を用いる場合、生成する共重合体は共重合反応性の違いと単量体の仕込み方法により、組成分布ないランダムな共重合体から組成分布のある共重合体まで制御することができるが組成分布はできるだけないようにすることが好ましい。また、重合プロセス方式としては、バッチ重合方式、あるいは、槽型反応器、塔型反応器もしくはチューブ型反応器などによる連続重合方式いずれも採用することができる。
・環状オレフィン付加共重合体の回収
本発明においては、上記重合で生成した環状オレフィン付加重合体の溶液を、乳酸、グリコール酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸などのオキシカルボン酸やトリエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸塩などの水溶液、メタノール溶液およびエタノール溶液から選ばれた溶液を用いて抽出・分離処理するか、珪藻土、シリカ、アルミナ、活性炭、セライトなどの吸着剤を用いて吸着およびフィルターでのろ過分離の処理を行うことにより脱触媒が行うことができる。
【0078】
さらに、脱触媒された溶液から、直接、溶媒を蒸発除去したり、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトンを用いて凝固し、次いで乾燥したりすることにより、環状オレフィン付加共重合体を回収することができる。
【0079】
このような方法により、本発明に係る環状オレフィン付加重合体は、Pd原子として、5ppm以下、好ましくは1ppm以下さらに好ましくは0.1ppm以下にすることができる。
・添加剤
本発明に係る環状オレフィン付加重合体には、必要に応じて添加剤を添加することができる。
【0080】
酸化防止剤としては、
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4−エチ
ル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ-t-ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリ
チルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)などのフェノール系、ヒドロキノン系酸化防止剤;
トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイトなどのリン系酸化防止剤;
さらにはチオエーテル系、ラクトン系から選ばれた酸化防止剤を、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体100重量部当たり、0.01〜5重量部添加して、さらに耐熱劣化性を改良することができる。
【0081】
また、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、縮合型リン酸エステル化合物、代表的には1,3−ビス〔ジ(2’,6’-ジメチルフェニル)ホスフォリル〕ベンゼンな
どを添加して難燃性を付与することも好ましく、環状オレフィン付加共重合体100重量部当たり、5〜15重量部の範囲で添加した場合には、難燃性V−0でかつ透明性を保持することができる。
光学基板
本発明の光学基板は、上述した本発明に係る環状オレフィン付加共重合体あるいは該付加共重合体を含有する組成物を成形して得られる。また、本発明の光学基板の形状は、その用途に応じたものであればよく、特に限定されるものではないが、フィルム状またはシート状であることが好ましい。
【0082】
本発明の光学基板は、線膨張係数が通常70ppm/℃以下、好ましくは60ppm/℃以下であって、耐熱性および寸法安定性に優れる。
また、本発明の光学基板は、JIS K7113に準じて引っ張り速度3mm/分で測
定した破断強度が、好ましくは35MPa以上、さらに好ましくは40〜90MPaである。このような破断強度の光学基板は、各種表示素子等に用いた場合に十分な機械的強度を有するものとなる。
【0083】
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体あるいは該付加共重合体を含有する組成物の成形法については、特に限定されるものではないが、フィルム状またはシート状の光学基板を製造する場合には、熱履歴による重合体の劣化を抑制できる点で、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体もしくはその付加共重合体を含む組成物を溶媒に溶解させて、支持体に塗工し、しかる後、溶媒を乾燥させる溶液流延法(キャスト法)により成形するの
が好ましく、これにより膜厚20〜300μmの薄膜、フィルム、およびシートが好適に得られる。
【0084】
溶液流延法に用いられる溶媒は、成形する環状オレフィン付加共重合体を溶解できる溶媒である必要がある。本発明に係る環状オレフィン付加共重合体の多くは、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素溶媒や、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒に溶解するが、構造単位(1)の割合が多くなるに従い、脂環族炭化水素溶媒の割合が多い溶媒でないと溶解しにくい傾向がある。また、脂環族炭化水素溶媒は本発明に係る環状オレフィン付加共重合体に対して芳香族溶媒よりも溶解性は優れるが、膜厚によっては、乾燥時にフィルムまたはシートから残留溶媒が除去しにくい場合がある。しかし、塩化メチレン、メタノール、エタノールなどの蒸気または溶液処理し、乾燥することにより、フィルムまたはシートから残留溶媒を除去することができる。
【0085】
本発明の好ましい光学基板は、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体を溶液流延法で成形してなるフィルムまたはシートであるので、表面の平滑性に優れていることから、画像の歪みが少なく、また光学透明性に優れることいから画像のコントラストに優れる。さらに光学弾性係数が小さいため、曲面表示素子ディスプレイのように曲げて使用することができる。
【0086】
本発明の光学基板は、各種表示素子の基板として好適に用いることができ、液晶表示素子用、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)用、プラズマディスプレイパネル用、電子ペーパー用などの光学基板として特に有用である。
【0087】
液晶ディスプレイのプラスチック基板は、通常、アンダーコート膜、ガスバリアー膜、ハードコート膜、さらにはITO(インジウム・スズオキサイド)などの透明導電膜を付与して用いられる。本発明に係るフィルムまたはシート状の光学基板は、ガラス転移温度が220℃以上である環状オレフィン付加重合体からなるため、熱膨張が小さく、寸法安定性がよい。そして、耐熱性がよいため、基板上にITO(インジウム・スズオキサイド)による電極付与する際にも高温で処理ができ、優れた導電性の良い電極が得られる。
【0088】
さらに本発明に係るフィルムまたはシート状の光学基板は、耐湿性、耐水性に優れている。液晶基板を水分が透過すると液晶や透明導電膜が劣化することがあるが、本発明の光学基板は、耐湿性、耐水性に優れ、吸湿性が0.05%以下、好ましくは0.01%以下のフィルムまたはシートとすることができるため、液晶表示素子用の基板(液晶基板)としても好適である。また、フィルムまたはシート作製時に生じるフィルムまたはシートの複屈折は溶媒を5〜20%含んだフィルムまたはシートを50〜150℃でアニーリングすることにより、低減できる。
【0089】
また、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体は、塩酸、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等への耐薬品性があり、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)等の基板上での薄膜トランジスター(TFT)の配列形成(TFTアレイ工程)時に使用する洗浄溶剤に対して耐溶剤性がある。このため、本発明の光学基板は、液晶基板として好適に使用することができ、2枚の液晶基板の間に液晶を封入して使用した場合にも、この液晶に対して耐液晶性にも優れる。
【0090】
本発明の光学基板は、液晶基板以外にガラス基板が使用されている有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)基板にも適用できる。有機ELに対しては発光材料の長寿命化のために、特に高度な耐湿性、耐水性が要求されるため、スパッタリングやCVD(気相析出
法)による水蒸気、酸素に対する耐性のために、酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは窒化ケイ素のバリアー膜の付与が必要となる。本発明の光学基板は、容易に表面上にプラズマ、コロナなどの処理を行うことができるので、これらバリアー膜の形成時、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび窒化ケイ素などとの接着性の問題はない。
【0091】
また、本発明の光学基板は、さらにマイクロカプセル型や薄膜有機EL型の電子ペーパーの基板にも適用できる。電子ペーパーは液晶ディスプレイと同様に基板プラスチック材、ハードコート層、透明導電層、ガスバリアー層などから構成される。基板プラスチック材としては屈曲性、寸法安定性、透明性、各層との接着性が必要となる。本発明の光学基板は十分な屈曲性を有し、特に環状オレフィン付加共重合体の構造単位(1)の割合を多くすることにより優れた屈曲性を有するフィルムまたはシートとなる。アンダーコート膜と本発明の光学基板との接着性は、コロナ処理されたフィルムまたはシートを用いることによってより優れたものになる。
【0092】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
なお、環状オレフィン付加共重合体の分子量、ガラス転移温度、組成およびフィルムの透明性などの性状は、下記の方法で求めた。
(1)分子量
ウォーターズ(WATERS)社製150C型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置で東ソー(株)製Hタイプカラムを用い,o−ジクロロベンゼンを溶媒として120℃で測定した。得られた分子量は標準ポリスチレン換算値である。
(2)ガラス転移温度
ガラス転移温度は動的粘弾性で測定されるTanδ(貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”との比Tanδ=E”/E’)の温度分散のピーク温度で測定した。動的粘弾性の測定はレオバイブロンDDV−01FP(オリエンテック製)を用い、測定周波数が10Hz、昇温速度が4℃/分、加振モードが単一波形、加振振幅が2.5μmのものを用いてTanδのピーク温度を測定した。
(3)共重合体中の組成解析
重合後の重合体溶液の一部を採取し、標準物質としてテトラリンを添加し、過剰のイソプロパノールで重合体を凝固した。その上澄み溶液をガスクロマトグラム(島津製作所製GC−14B)装置、キャピラリーカラム(膜厚1μm、内径0.25mm、長さ60m、カラム温度200℃)を使用することにより、検量線から残留単量体量を分析した。残留単量体量と仕込み単量体量から生成した共重合体の組成を求めた。
(4)透明性(光線透過率、ヘイズ)
膜厚100μmのフィルムについて、可視UVスペクトロメーターHITATI U−2010 Spectrophotometerを用いて、波長400nmの光線透過率をASTM−D1003
に従い測定した。
【0094】
またヘイズはビックケミージャパン製「Haze−gard plus BKY Gardner」を用いて、JIS K7105−1981に準じて求めた。
(5)機械的性質(破断強度、伸び)
JIS K7113に準じて試験片を引っ張り速度3mm/min.で測定した。
(6)線膨張係数
TMA(Thermal Mechanical Analysis)SS6100装置(セイコーインスツルメン
ト社製)を用い、膜厚100μm、縦10mm、横10mmの試験形状のフィルム片を直立に固定し、プローブにより、1g重の荷重をかける。フィルムの熱履歴を除去するため、室温から200℃まで5℃/min.で一旦、昇温した後、再度、室温から5℃/min.で
昇温し、50〜150℃間のフィルム片の伸びの傾きから線膨張係数を求めた。
(7)吸水率
23℃の水中にフィルムを24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化より吸水率を求めた。(8)広角X線散乱〔Wide-angle X-ray Scattering(WAXS)〕測定
サンプルとして、膜厚100μm、2cmx2cm角のフィルムを用い、装置として、X線源がCuKα(λ=1.54Å)のブルカーエイエックスエス(株)製のX線回折装置MXP18を用い、室温で2θが3°〜30°の範囲を5°/分で走査して測定した。
【実施例1】
【0095】
2000mlの耐圧反応器に窒素雰囲気下で水分10ppmのトルエン470ml、単量
体の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを380mmol、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン520mmolを仕込み、分子量調節剤シクロペンテンを200mmol仕込んだ。次に予め、触媒成分(a)のパラジウムジ(エタノアート)を0.0025mmolと、触媒成分(b)のトリシクロペンチルホスフィン0.0025mmolとを接触して錯体化した化合物を仕込んだ。さらに2分後、触媒成分(c)のトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔Ph3C・
B(C654〕0.0025mmolを仕込んで、付加重合を50℃で行った。
【0096】
重合開始1時間後、および3時間後にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンをそれぞれ50mmol添加して重合を6時間行い、付加共重合体−1を得た。付加共重合体−1への転化率は99.9%であった。
【0097】
生成した付加共重合体−1の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来する構造単位の割合は38モル%であった。また、付加共重合体−1の数平均分子量(Mn)は65,000、重量平均分子量(Mw)は205,000で、そのガラス転移温度は310℃であった。
【0098】
次いで、付加共重合体−1の溶液に酸化防止剤ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ付加重合体100重量部当たり、0.3重量部添加し、溶解した後、セライトのフィルターで通し、さらに口径10μmのテフロン(登録商標)のフィルターを通した。
【0099】
この付加共重合体−1の重合体溶液を、固形分20重量%のトルエン溶液に調製し、溶液流延法により製膜し、その後、180℃、90分乾燥して、膜厚100μmのフィルムF−1を得た。
【0100】
このフィルムを用いて各種物性および広角X線散乱を測定した。結果を表−1および図−1に示す。図−1の広角X線散乱図より、低角位のピーク位置(2θ)は9.0°、高角位/低角位のピーク強度比は0.59であった。
【実施例2】
【0101】
実施例1にて溶媒としてトルエン400ml、シクロヘキサン70ml、単量体の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを200mmol、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン700mmolを仕込み、分子量調節剤としてエチレンを10mmolを重合開始前に仕込む以外、実施例−1と同様に行い、付加共重合体−2を得た。付加共重合体−2への転化率は99.7%であった。
【0102】
付加共重合体−2の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は19.9モル%、数平均分子量(Mn)は55,000、重量平均分子量
(Mw)は195,000で、そのガラス転移温度は320℃であった。
【0103】
次いで、実施例1と同様にして、膜厚100μmのフィルムF−2を得た。評価結果を表−1に示す。
【実施例3】
【0104】
100mlのガラス製耐圧ビンに窒素雰囲気下で、単量体として5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン5mmol、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン95mmol、溶媒メチルシクロヘキサン50ml、分子量調節剤エチレンを1mmolを仕込み、ゴムキャップ付き穴あき王冠で封止した。触媒としてパラジウムジ(エタノアート)2.5x10-4mmol、トリシクロヘキシルホスフィン2.5x10-4の錯体mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔Ph3C・B(C664〕2.5x10-4mmolを用いて60℃で6時間重合を行い、付加共重合体−3を得た。付加共重合体−3への転化率は99.9%であった。
【0105】
この付加共重合体−3の数平均分子量(Mn)は52,900、重量平均分子量(Mw)は193,000で、そのガラス転移温度は360℃であった。また、付加共重合体−3の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は4.7モル%であった。
【0106】
次いで、実施例1と同様にして、重合体溶液に酸化防止剤ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ付加重合体100重量部当たり、0.3重量部添加し、溶解した後、セライトのフィルター、口径10μmのテフロン(登録商標)のフィルターを通して脱触媒を行い、さらに溶液流延法により、製膜化した。フィルムに残留するメチルシクロヘキサンを除去するために、塩化メチレンの蒸気下にフィルムを30分曝した後、乾燥して、膜厚100μmのフィルムF−3を得た。
【0107】
このフィルムを用いて各種物性および広角X線散乱を測定した。結果を表−1および図−2に示す。図−2の広角X線散乱図より、低角位のピーク位置(2θ)は10.5°、高角位/低角位のピーク強度比は0.79であった。これより、フィルムF−3では、図−1に示されるフィルムF−1の測定結果と比べ、低角部のピーク(分子間の相互作用)の2θが大きいため、高密度の高分子鎖の充填となっていることがわかる。
【0108】
このフィルムF−3はN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、イソプロパノール、塩酸、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの溶剤、薬品に浸せきしても安定で膨潤や白濁することもなかった。
【実施例4】
【0109】
100mlのガラス製耐圧ビンに窒素雰囲気下で、単量体として5−トリメチルシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン5mmol、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン95mmol、溶媒メチルシクロヘキサン50ml、分子量調節剤のエチレン1mmolを仕込み、ゴムキャップ付き穴あき王冠で封止した。触媒としてパラジウムビス(2,4−ペンタジオナート)2.5x10-4mmol、トリシクロペンチルホスフィン2.5x10-4の錯体mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔Ph3C・B(C664〕2.5x10-4mmolを用いて50℃で6時間重合を行い、付加共重合体−4を得た。付加共重合体−4への転化率は99.8%であった。
【0110】
この付加共重合体−4の数平均分子量(Mn)は56,000、重量平均分子量(Mw
)は190,000で、そのガラス転移温度は350℃であった。また、付加共重合体−4中の5−トリメチルシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は4.9モル%であった。
【0111】
次いで、実施例3と同様にして、重合体溶液に酸化防止剤ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ付加重合体100重量部当たり、0.3重量部添加し、溶解した後、セライトのフィルター、口径10μmのテフロン(登録商標)のフィルターを通して脱触媒を行い、さらに溶液流延法により、製膜化した。フィルムに残留するメチルシクロヘキサンを除去するために、塩化メチレンの蒸気下にフィルムを30分曝した後、乾燥して、膜厚100μmのフィルムF−4を得た。
【0112】
このフィルムF−4はN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、イソプロパノール、塩酸、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの溶剤、薬品に浸せきしても安定で膨潤や白濁することもなかった。
【実施例5】
【0113】
100mlのガラス製耐圧ビンに窒素雰囲気下で、単量体として5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン1mmol、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン95mmol、溶媒メチルシクロヘキサン40ml、塩化メチレン10ml、分子量調節剤のヘキサ−1−エン5mmolを仕込み、ゴムキャップ付き穴あき王冠で封止した。これら単量体、分子量調節剤および溶媒の混合物に王冠の穴から、触媒としてアンチモン酸(HSbF6)で
変性したニッケルジ(2-エチルヘキサノアート)(HSbF6/Ni=1モル比)0.025mmol、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.225mmol、およびトリエチルアルミニ
ウム0.25mmolを順次、添加して、30℃で2時間重合を行い、付加共重合体−5を得た。付加共重合体−5への転化率は96%であった。
【0114】
塩酸1mmolを含むメタノール1Lに重合体溶液を入れて凝固し、さらにメチルシクロヘキサン50mlに溶解し、メタノール1Lで再凝固して、付加共重合体を分離し、乾燥して付加共重合体−5を回収した。
【0115】
この付加共重合体−5の数平均分子量(Mn)は80,300、重量平均分子量(Mw)は183,000で、そのガラス転移温度は340℃であった。付加共重合体−5の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は4.8モル%であった。
【0116】
固形分20wt%のメチルシクロヘキサン重合体溶液を調製し、酸化防止剤ペンタエリスリチルテトキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ付加重合体100重量部当たり、0.3重量部添加し、溶解した後、溶液流延法により、製膜化した。フィルムに残留するメチルシクロヘキサンを除去するために、塩化メチレンの蒸気下にフィルムを30分曝した後、乾燥して、膜厚100μmのフィルムF−5を得た。
【0117】
このフィルムを用いて各種物性および広角X線散乱を測定した。結果を表−1および図−3に示す。図−3の広角X線散乱図より、低角位のピーク位置(2θ)は9.3°、高角位/低角位のピーク強度比は0.33であった。
比較例1
実施例1において、単量体として5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを500mmol、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン400mmolを仕込
み、分子量調節剤シクロペンテンを200mmol仕込んだ。次に予め、触媒成分(a)パラジウムジ(エタノアート)を0.0025mmol、と触媒成分(b)のトリシクロペンチルホスフィン0.0025mmolを接触して錯体化した化合物を仕込んだ。さらに2分後、触媒成分(c)のトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔Ph3C・B(C654〕0.0025mmolを仕込んで、付加重合を50℃で行った。
【0118】
重合開始1時間後、および3時間後にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンをそれぞれ50mmol添加して重合を6時間行い、付加共重合体−6を得た。付加共重合体−6への転化率は99.9%であった。
【0119】
付加共重合体−6の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来する構造単位の割合は49モル%であった。また、付加共重合体−6の数平均分子量(Mn)は63,000、重量平均分子量(Mw)は205,000で、そのガラス転移温度は290℃であった。
【0120】
次いで、実施例1と同様にして膜厚100μmのフィルムH−1を得た。評価結果を表−1に示すが線膨張係数の大きいフィルムであった。
比較例−2
実施例1において、単量体として5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを400mmol、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン300mmolを仕込み、分子量調節剤シクロペンテンを100mmol仕込んだ。次に予め、触媒成分(a)パラジウムジ(エタノアート)を0.002mmol、を仕込み、触媒成分(b)のトリシクロペンチルホスフィンを0.002mmol仕込んだ。さらに1分後、触媒成分(c)のトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔Ph3
・B(C654〕0.0022mmolを仕込んで、付加重合を50℃で行った。重合
開始1時間後、および3時間後にそれぞれ、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを50mmolの添加を行った。重合は6時間行い、付加共重合体−7を得た。付加共重合体−7への転化率は91%であった。
【0121】
付加共重合体−7の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来する構造単位の割合は48モル%であった。付加共重合体−7の数平均分子量(Mn)は59,000、重量平均分子量(Mw)は189,000で、そのガラス転移温度は290℃であった。
【0122】
次いで、実施例1と同様にして膜厚100μmのフィルムH−2を得た。評価結果を表−1に示すがフィルムのHaze値が大きいものであった。
比較例−3
実施例1において、分子量調節剤のシクロペンテンの使用量を50mmolにする以外、実施例1と同様に付加重合を行い、付加共重合体−8を得た。重合終了時の重合系は固化、膨潤状態であった。
【0123】
付加共重合体−8の数平均分子量(Mn)は335,000、重量平均分子量(Mw)は1,050,000であった。
この付加共重合体−8を、固形分10重量%のトルエン溶液となるように希釈、調製しても、溶液流延法による製膜で、平坦性のある膜厚100μmのフィルムH−3は得られなかった。
比較例−4
実施例2において、分子量調節剤のエチレンの使用量を200mmolにする以外、実施例2と同様に行い、付加共重合体−9を得た。付加共重合体−9への転化率は98.7%で
あった。
【0124】
付加共重合体−9の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は19.8モル%、数平均分子量(Mn)は15,000、重量平均分子量(Mw)は45,000で、そのガラス転移温度は290℃であった。
【0125】
次いで、実施例2と同様にして、膜厚100μmのフィルムH−4を得た。評価結果を表−1に示すが割れやすいフィルムであった。
比較例−5
実施例2において、単量体の5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの代わりに5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを200mmol、を用いる以外、実施例−2と同様に行い、付加共重合体−10を得た。付加共重合体−10への転化率は99.7%であった。
【0126】
付加共重合体−10の5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は19.6モル%、数平均分子量(Mn)は59,000、重量平均分子量(Mw)は205,000で、そのガラス転移温度は300℃であった。
【0127】
実施例1と同様にして、付加共重合体−10から膜厚100μmのフィルムH−5を得た。評価結果を表−1に示すが、実施例2のフィルムF−2に比べ、線膨張係数が大きく、機械的性質が低下した。
比較例−6
実施例3において、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの使用量を100mmolとし、5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを用いず、溶媒をシクロヘキサンに変更する以外、実施例3と同様に行い、付加重合体−11を得た。重合が進むに従い、重合系は白濁して付加重合体が膨潤、固化した。付加重合体−11への添加率は90%であった。
【0128】
この付加重合体−11は、室温〜100℃の温度範囲で、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレンなどに不溶であり、溶液流延法による成形は不可能であった。
【実施例6】
【0129】
実施例1の付加共重合体−1のフィルムF−1に対して、コロナ処理(100W・min
./m2)を行った。フィルム表面の濡れ性は純水に対する接触角で測定した。
コロナ処理前の接触角は100°、コロナ処理後の接触角は50°であった。また、コロナ処理により、フィルムF−1の機械的性質は破断強度60MPa、伸び7.6%で変化なかった。
【0130】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係る光学基板は、液晶表示素子基板、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)表示素子基板、電子ペーパー表示素子などの光学表示素子基板として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、実施例1で得たフィルムF−1の広角X線散乱図を示す。
【図2】図2は、実施例3で得たフィルムF−3の広角X線散乱図を示す。
【図3】図3は、実施例5で得たフィルムF−5の広角X線散乱図を示す。なお、図1〜3において、「cps」は「counts per second」の略である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位(1)と、下記式(2)で表される構造単位(2)とを有し、
構造単位(1)と構造単位(2)との合計100モル%中、構造単位(1)の割合が55〜98モル%、構造単位(2)の割合が2〜45モル%であり、
数平均分子量(Mn)が20,000〜300,000である環状オレフィン付加共重合体からなることを特徴とする光学基板;
【化1】

(式(1)中、A1〜A4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
【化2】

(式(2)中、B1〜B4の1つが、ブチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基から選ばれる基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)。
【請求項2】
前記環状オレフィン付加共重合体が、構造単位(1)と構造単位(2)との合計100モル%中、構造単位(1)の割合が80〜98モル%、構造単位(2)の割合が2〜20モル%であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項3】
前記環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度が220〜400℃であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項4】
線膨張係数が70ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項5】
環状オレフィン系付加共重合体が、膜厚100μmのフィルムに成形して広角X銭散乱を測定した際に、下記条件1)および2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学基板;
1)検出される2つのピークのうち、低角位のピーク位置(2θ)が8°以上、
2)低角位のピーク強度に対する高角位のピーク強度の比が、0.5以上。
【請求項6】
フィルム状またはシート状であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項7】
液晶表示素子用の基板であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項8】
有機EL用の基板であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項9】
プラズマディスプレイパネル用の基板であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項10】
電子ペーパー用の基板であることを特徴とする請求項1に記載の光学基板。
【請求項11】
下記式(i)で表される単量体(i)と、下記式(ii)で表される単量体(ii)とを含み、単量体(i)と単量体(ii)との合計100モル%中、単量体(i)の割合が55〜98モル%、単量体(ii)の割合が2〜45モル%である単量体組成物を、
パラジウム化合物(a)と、未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロヘキシル基を少なくとも2つ有するホスフィン化合物(b)とを含む重合触媒の存在下で付加共重合反応させて、
数平均分子量が20,000〜300,000である環状オレフィン付加共重合体を製造する工程と、
得られた環状オレフィン付加共重合体を成形する工程とを有することを特徴とする光学基板の製造方法;
【化3】

(式(i)中、A1〜A4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)
【化4】

(式(ii)中、B1〜B4の1つが、ブチル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基から選ばれる基であり、その他はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基から選ばれる原子または基を示す。)。
【請求項12】
前記重合触媒が、
(a)パラジウムの有機酸塩、またはパラジウムのベータジケトン化合物から選ばれるパラジウム化合物、
(b)下記式(3)で表される化合物から選ばれるホスフィン化合物;
P(R12(R2) …(3)
(式(3)中、Pはリン原子であり、
1は炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロヘ
キシル基であり、
2は、炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のシクロペンチル基またはシクロ
ヘキシル基、炭素数6〜12の未置換またはアルキル置換のフェニル基、並びに炭素数3
〜6の分岐状アルキル基から選ばれる基である。)、
(c)ルイス酸性のホウ素化合物、ルイス酸性のアルミニウム化合物、イオン性のホウ素化合物およびイオン性のアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、
および、必要に応じて
(d)有機アルミニウム化合物
を含むことを特徴とする請求項11に記載の光学基板の製造方法。
【請求項13】
パラジウム化合物(a)とホスフィン化合物(b)とが、下記式(4)で表される錯体を形成していることを特徴とする請求項12に記載の光学基板の製造方法;
Pd(X)2・〔P(R12(R2)〕k …(4)
(式(4)中、Pdはパラジウム原子であり、Xは有機酸アニオンまたはベータジケトンアニオンであり、R1およびR2は前記式(3)と同じであり、kは1または2を示す。)。
【請求項14】
ホスフィン化合物(b)が、炭素数5〜12の未置換またはアルキル置換のトリシクロペンチルホスフィン化合物であることを特徴とする請求項12に記載の光学基板の製造方法。
【請求項15】
ルイス酸性のホウ素化合物、ルイス酸性のアルミニウム化合物、イオン性のホウ素化合物およびイオン性のアルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(c)が、カルベニウムカチオンまたはホスフォニウムカチオンのイオン性ホウ素化合物であることを特徴とする請求項12に記載の光学基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−63356(P2007−63356A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249225(P2005−249225)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】