説明

光学式測定装置

【課題】 保護ガラスの汚れを検知する精度を向上させることが可能な光学式測定装置を提供する。
【解決手段】 しきい値90%,50%,10%でそれぞれ、測定対象物の寸法の測定値Q90,Q50,Q10を得る。測定値Q90と測定値Q50との差(つまり測定値の変位量)が予め決められた基準値以上か判断する。(b)〜(d)は基準値以上の場合を示しており、保護ガラスに汚れが存在する。(a)は基準値より小さく、汚れがない。次に、測定値Q50と測定値Q10との差が予め決められた基準値以上か判断する。(c)はこの基準値以上の場合を示しており、保護ガラスに濃い汚れが存在する。よって、ブザーを鳴らしかつ赤色ランプを点灯させ、オペレータに直ぐに汚れの除去をするように警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行ビームを利用する走査型の光学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学式測定装置は、測定対象物が位置する走査領域を隔てて配置された投光部と受光部とを備える。投光部からの平行ビームにより走査領域を繰り返し走査し、走査領域を通過したビームを受光部で受光し、これにより発生した走査信号に所定の処理をして、測定値(測定対象物の寸法や真円度等)を表示する。
【0003】
投光部や受光部は、高価な光学部品(半導体レーザ、フォトダイオード、レンズ、ミラー等)を含んでいる。光学部品の汚れや損傷を防ぐために、投光部や受光部はそれぞれ、光学部品を収容するキャビネットを備える。
【0004】
キャビネットには、保護ガラスが嵌め込まれた窓が設けられている。投光部で生成された平行ビームは、保護ガラスを透過して外部雰囲気中にある走査領域に導かれる。そして、走査領域を通過した平行ビームは、保護ガラスを透過して受光部内に導かれる。保護ガラスは外部雰囲気に露出しているため、汚れやすく、また、損傷することもある。汚れ等は、測定の際の障害になったり、測定誤差を大きくする原因になったりする。このため、ビームの光路上に存在する異物を検知できる寸法測定装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−83448号公報(段落0029〜0043,図2,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビームの光路上の異常を検知する精度を向上させることが可能な光学式測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光学式測定装置は、発光素子から出射されたビームを基にした平行ビームで測定対象物が位置する走査領域を繰り返し走査する投光手段と、前記走査領域を通過したビームを受光して走査信号を出力する受光素子と、前記走査信号を所定のしきい値で二値化して生成された二値化信号を基にして演算された測定値を表示する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記走査信号を複数の異なるしきい値でそれぞれ二値化して、各しきい値に対応する複数の二値化信号を生成する生成手段と、前記複数の二値化信号のそれぞれを基にして演算された複数の測定値を比較して、前記発光素子から前記受光素子までのビームの光路上に異常が発生しているか否か判断する判断手段と、前記異常の判断がされるとその異常を報知する報知手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光学式測定装置によれば、発光素子から受光素子までのビームの光路上に異常が発生している場合、しきい値を変えて測定すると測定値に差が生じることを利用して異常を検知し、異常が検知されるとそれを報知するようにしている。
【0008】
本発明に係る光学式測定装置において、前記複数の異なるしきい値の数は三つ以上であり、前記判断手段は、前記複数の測定値の組合せのそれぞれについて測定値を比較することにより、前記異常の程度を判断し、前記報知手段は前記異常の程度に応じた報知をする、ようにすることができる。これによれば、異常の程度に応じて報知する内容を変えているので、オペレータは異常の程度を容易に知ることができる。
【0009】
本発明に係る光学式測定装置において、前記生成手段は、前記複数のしきい値の切り替えをするしきい値切替回路を含む、ようにすることができる。これによれば、回路を共通化できる。特に、しきい値の数が多い場合に有効となる。
【0010】
本発明に係る光学式測定装置において、前記所定のしきい値は、前記複数のしきい値のいずれかと同じにすることができる。これによれば、通常の測定に利用される所定のしきい値を、異常の検知にも利用できるので、その分だけ装置の構成の簡略化ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビームの光路上に異常が発生した状態でしきい値を変えて測定すると測定値に差が生じることを利用して、異常の検知をしているので、異常検知の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0013】
[光学式測定装置の構成]
図1は、本実施形態に係る光学式測定装置1を説明するブロック図である。装置1は、投光部3、受光部5及び制御部7を備える。投光部3と受光部5は走査領域Rを挟んで対向している。走査領域Rは、測定対象物Wを位置させる領域であり、外部雰囲気にある。制御部7は、図示しないケーブルにより投光部3及び受光部5と接続され、測定に必要な各種制御を実行する。
【0014】
投光部3は、半導体レーザのような発光素子9と、素子9から出射されたビームB1を反射するミラー11と、モータ13により矢印方向Aに高速回転された状態でミラー11により反射されたビームB1が照射されるポリゴンミラー15と、ミラー15で反射されたビームB1を平行ビームB2にするコリメータレンズ17と、を備える。ポリゴンミラー15の回転により、平行ビームB2は走査領域Rを繰り返し走査するように照射される。
【0015】
投光部3を構成するこれらの部品は、キャビネット19に収容されている。キャビネット19の一つの側面には、コリメータレンズ17と対向するように、保護ガラス21が嵌め込まれた窓が設けられている。平行ビームB2は保護ガラス21を透過して走査領域Rを照射する。投光部3は、さらに、ポリゴンミラー15で反射されたビームB1の有効走査範囲外に配置され、一回分の走査の開始又は終了を検出するタイミング用フォトダイオード23を備える。
【0016】
受光部5は、走査領域Rを通過した平行ビームB2が入射する集光レンズ25と、ここで集光されたビームB3を受光して走査信号S1を出力する受光素子27と、走査信号S1を増幅するアンプ33と、を備える。受光素子27は、例えばフォトダイオードである。集光レンズ25、受光素子27、アンプ33は、キャビネット29に収容されている。キャビネット29の一つの側面には、集光レンズ25と対向するように、保護ガラス31が嵌め込まれた窓が設けられている。走査領域Rを通過した平行ビームB2は、保護ガラス31を透過して集光レンズ25に入射する。
【0017】
次に、制御部7について説明する。制御部7は、アンプ33で増幅された走査信号S1を整形して整形信号S2を出力する整形部35を備える。整形部35は、三つの整形回路(具体的には比較回路)37を有する。整形回路37−1ではしきい値90%(TH90)、整形回路37−2ではしきい値50%(TH50)、整形回路37−3ではしきい値10%(TH10)をそれぞれ、基準にして走査信号S1を整形する。
【0018】
制御部7は、整形信号S2のエッジを選択して、二値化信号S3であるゲート信号を発生する回路39を備える。ゲート信号発生回路39は三つあり、回路39−1,39−2,39−3はそれぞれ整形回路37−1,37−2,37−3と対応している。整形部35とゲート信号発生回路39とにより、走査信号を複数の異なるしきい値を基準に二値化して、各しきい値に対応する複数の二値化信号を生成する生成部45が構成される。
【0019】
制御部7は、クロックパルス発振器47、三つのAND49及び三つのカウンタ51を備える。AND49やカウンタ51は、各整形回路37に対応して設けられている。各二値化信号S3は、対応するAND49の一方の入力端子から入力する。発振器47で発生したクロックパルスCLKは、AND49の他方の入力端子から入力する。AND49からの出力は、対応するカウンタ51に入力する。制御部7は、また、クロックパルス発振器47からのクロックパルスが入力する分周回路53を備え、分周回路53からの出力はモータ13の回転同期に利用される。
【0020】
さらに、制御部7は、測定に必要な各種制御をするCPU55と、測定に必要な各種データ等が記憶されるメモリ57と、測定値等が表示される表示部59と、測定に必要な各種設定を入力するための設定キー61と、ビームの光路上に異常が発生している場合にそれを報知する報知部63と、を備える。なお、投光部3のタイミング用フォトダイオード23は、一回分の走査の開始又は終了を検出してタイミング信号S4を出力する。信号S4は、投光部3に設けられたアンプ65で増幅されてから、CPU55及びゲート信号発生回路39に入力する。
【0021】
CPU55、メモリ57、ゲート信号発生回路39、三つのカウンタ51は、メインバス67により互いに接続されている。また、表示部59、設定キー61及び報知部63は、入出力インターフェース69を介してメインバス67に接続されている。
【0022】
[光学式測定装置の測定動作]
光学式測定装置1を用いて測定値(例えば測定対象物Wの直径)を得る動作について、図1及び図2を用いて説明する。図2は、この測定動作を説明するためのタイミングチャートである。まず、クロックパルスCLKと同調してポリゴンミラー15を高速回転させた状態で、発光素子9からビームB1を出射させる。ビームB1はポリゴンミラー15で反射され、コリメータレンズ17により平行ビームB2にされる。平行ビームB2により、測定対象物Wが位置する走査領域Rが繰り返し走査される。
【0023】
走査領域Rを通過したビームは集光レンズ25で集光されて、受光素子27で受光される。これにより、受光素子27から走査信号S1が出力される。受光素子27は測定対象物Wにより遮られるために、走査信号S1はこれに対応した波形となる。sは、一回分の走査で出力される走査信号を示している。電圧の低い箇所Lは測定対象物Wの直径と対応している。
【0024】
走査信号S1はアンプ33で増幅され、各整形回路37に入力するが、測定には、しきい値50%(所定のしきい値の一例)で生成された二値化信号が用いられる。よって、ここからは、整形回路37−2に入力した走査信号S1の処理について説明する。
【0025】
走査信号S1が整形回路37−2に入力すると、しきい値50%で整形された整形信号S2が出力される。この信号S2を基にしてゲート信号発生回路39−2から二値化信号S3であるゲート信号が発生する。信号S3とクロックパルスCLKがAND49−2に入力する。これにより、AND49−2から、二値化信号S3が「H」の期間のクロックパルスCLKが出力され、この個数がカウンタ51−2で計測される。言い換えれば、受光素子27が測定対象物Wで遮られてビームB3を受光できない期間のクロックパルスCLKが計測される。この個数を用いて測定値(ここでは測定対象物Wの直径)がCPU55で演算される。走査領域Rは繰り返し走査されるので、何回分かのデータを平均化した値が測定値として表示部59に表示される。
【0026】
[光学式測定装置の主な特徴]
本実施形態は、保護ガラス21,31に汚れが存在する場合(発光素子9から受光素子27までのビームの光路上に異常が発生している場合の一例)、しきい値を変えて測定すると測定値に差が生じることを利用して汚れを検知し、汚れが検知されるとそれを報知するようにしている。以下、詳細に説明する。
【0027】
図3は、走査信号S1と保護ガラスの汚れとの関係を示す波形図である。波形の乱れが生じている箇所Eは、汚れの存在を示している。箇所Eの幅の大小は、汚れの面積の大小と対応しており、箇所Eの幅が大きいと汚れの面積が大きいことを示し、幅が小さいと面積が小さいことを示している。一方、箇所Eの深さの大小は、汚れの濃さと対応しており、箇所Eの深さが大きいと濃い汚れを示し、深さが小さいと薄い汚れを示している。
【0028】
(a)は汚れがない場合、(b)は小面積の薄い複数の汚れが存在する場合、(c)は中面積の濃い一つの汚れが存在する場合、(d)は大面積の薄い一つの汚れが存在し、その汚れの一部が測定対象物Wと重なっている場合を示している。(a)に示すように、汚れがない場合、しきい値を変えて測定しても、測定値に差がほとんど生じない。これに対して、(b)〜(d)に示すように、汚れが存在する場合、しきい値を変えて測定すると、図2に示す整形信号S2がその影響を受ける結果、測定値に差が生じる。汚れの存在により走査信号S1の波形が乱れる原因を(c)の例で説明する。
【0029】
走査信号S1は、通常、しきい値50%で整形される。この値から外れると、ビーム径に比例した誤差が測定値に生じる。誤差を小さくするために、測定対象物Wの位置でビーム径が最小になるように設定されている。これにより、(a)に示すように、汚れが存在しない場合、しきい値を変えても測定値に差が生じないのである。一方、保護ガラスの位置ではビーム径が大きいので、(c)に示すように汚れが存在する場合、しきい値を変えて測定すると、測定値が大きく異なる。
【0030】
ビーム径について具体例を説明すると、通常、測定対象物Wはコリメータレンズ17の焦点位置に配置されて、ビームが最も細く絞り込まれるようされており、したがって、測定対象物Wの位置ではビーム径が0.1mmである。これに対して、保護ガラス21,31の位置ではビーム径が2mmとなる。
【0031】
このように、保護ガラス21や保護ガラス31に汚れが存在する場合、汚れの程度(面積の大小、濃さの大小)に応じて、測定値が変化する。これを利用して、本実施形態は汚れを検知する。
【0032】
次に、本実施形態による汚れの検知について図1〜図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る汚れ検知処理のフローチャートである。まず、しきい値90%,50%,10%のそれぞれを基準にした測定値Q90,Q50,Q10を演算する(ステップ1)。このステップを詳しく説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態では、しきい値50%で測定値Q50を得る際に、しきい値90%の場合の測定値Q90及びしきい値10%の場合の測定値Q10も得ている。つまり、整形回路37−1,37−3には、整形回路37−2と同時に走査信号S1が入力する。そして、以下はしきい値50%と同様の処理で、整形回路37−1,37−3で整形信号S2を生成し、ゲート信号発生回路39−1,39−3で二値化信号S3を生成し、AND49−1,49−3で二値化信号S3が「H」の期間のクロックパルスCLKが出力され、この個数がカウンタ51−1,51−3で計測される。この個数を基に測定値Q90,Q10がCPU55で演算される。
【0034】
次に、ステップ2でCPU55により、測定値Q90と測定値Q50との差の絶対値(つまり測定値の変位量)が予め決められた基準値V1以上か判断する。基準値V1は、汚れの程度(面積の大小、濃さの大小)を異ならせて測定値を求め、これを基にして汚れと測定値の変位量との関係を検証して定める。
【0035】
上記絶対値が基準値V1以上の場合、図3(b)〜(d)に示すように、保護ガラスに汚れが存在すると判断する。この場合、図3(b)〜(d)のいずれにも該当する可能性がある。一方、上記絶対値が基準値V1より小さい場合、保護ガラスに汚れが存在しないと判断して、処理を終了する。
【0036】
ステップ2で保護ガラスに汚れが存在すると判断された場合、ステップ3に移る。ここでは、測定値Q50と測定値Q10との差の絶対値が予め決められた基準値V2以上か判断する。基準値V2は、基準値V1と同様にして定められる。なお、本実施形態では、基準値V1と基準値V2は同じ値(例えば0.5mm)であるが、異なっていてもよい。値Q50と値Q10との差の絶対値が基準値V2以上の場合、図3(c)のように、濃い汚れが存在していると判断される。この汚れは測定に大きな悪影響を及ぼすので、ステップ4で図1の報知部63のブザーを鳴らしかつ赤色ランプを点灯させ、オペレータに直ぐに汚れの除去をするように警告する。
【0037】
一方、値Q50と値Q10との差の絶対値が基準値V2より小さい場合、図3(b)や図3(d)のように、薄い汚れが存在していると判断される。この種の汚れは測定に大きな悪影響を及ぼすことはないが、測定精度を高めたい場合、汚れを除去した方がよい。したがって、ステップ5で報知部63の黄色ランプを点灯させ、オペレータに注意を促す。なお、ステップ1,2,3の処理は図1のCPU55で実行される。したがって、CPU55は、複数の二値化信号のそれぞれを基にして演算された複数の測定値を比較して、保護ガラスが汚れているか否か判断する判断部71として機能する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、保護ガラス21や保護ガラス31に汚れが存在する場合、しきい値を変えると測定値が変わることを利用して保護ガラスの汚れを判断し、汚れがあると報知するようにしている。なお、汚れの検知は、図3(b)に示すように、しきい値50%,90%のそれぞれについて汚れの個数をカウントして、これらを比較しても実現できる。
【0039】
しかし、このような場合、図3(d)に示すように、波形の乱れている箇所Eと電圧の低い箇所Lが重なると、汚れのカウントがされないので汚れを検知できず、また、図3(c)に示すように、濃い一つの汚れが存在すると、しきい値を変えても汚れの個数は共に一つなので汚れを検知できない。これに対して、本実施形態では、しきい値を変えれば測定値が異なることを利用しているので、図3(c),(d)のような状態でも汚れを検知することができる。したがって、本実施形態によれば、保護ガラスの汚れを検知する精度を向上させることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態によれば、測定値Q90と測定値Q50の組合せ、測定値Q50と測定値Q10の組合せのそれぞれについて測定値を比較することにより、汚れの程度を判断している。そして、汚れが濃い場合、報知ブザーと赤色の報知ランプで知らせ、汚れが薄い場合、黄色の報知ランプで知らせるようにしている。このように、汚れの程度(進行度)に応じて報知する内容を変えているので、オペレータは汚れの程度を容易に知ることができる。これにより、保護ガラスのメンテナンスの際に参考にすることができるし、保護ガラスのクリーニング状態の診断も可能である。
【0041】
なお、しきい値の数が三つ(10%,50%,90%)の場合で説明したが、しきい値の数は三つに限らず少なくとも二つ以上あればよい。しきい値50%は、通常の測定値の演算にも利用される。このため、汚れの検知にしきい値50%を利用すれば、汚れの検知に用いる他のしきい値の数を減らすことができるので、その分だけ整形回路37、カウンタ51等の数を減らすことができる。
【0042】
しきい値の大きさは10%,50%,90%に限らず、これら以外の値でもよい。また、図3(b)〜(d)に示すように、汚れが薄くなるに従い検知可能なしきい値が高くなる。したがって、低いしきい値(例えば10%)、高いしきい値(例えば90%)、複数の中間のしきい値(例えば30%、50%、70%)を用いれば、汚れの濃さの程度をより細かく区別できる。
【0043】
基準値V1,V2は光学式測定装置の機種により異なる。基準値V1,V2は光学式測定装置のメモリ57に予め格納していておいてもよいし、オペレータが入力するようにしてもよい。また、基準値V1,V2の大きさをオペレータが変更できるようにしてもよい。
【0044】
保護ガラス21,31の汚れを例に説明したが、保護ガラスが損傷した場合も、汚れと同様に測定値に差が生じるので、損傷を検知できる。さらに、発光素子9から受光素子27までのビームの光路上に異常(例えば、コリメータレンズ17や集光レンズ25に汚れや損傷発生)があれば、保護ガラスの場合と同様に測定値に差が生じるので、これらの異常を検知できる。
【0045】
また、CCD素子に測定対象物の投影像を結像させて、CCD素子から出力される信号のしきい値を調整して測定対象物の測定をする装置にも、本発明を適用することができる。
【0046】
最後に、本実施形態に係る光学式測定装置の変形例について説明する。図5はこの装置73を説明するブロック図である。図5において、図1の符号で示すものと同一のものについては、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0047】
図1に示す装置1は、しきい値10%,50%,90%のそれぞれについて整形回路37、カウンタ51等を設けている。これに対して、図5に示す装置73は、整形回路37のしきい値を切り替える回路75を設けている。このため、整形回路37、カウンタ51等を共通に用いることができるので、回路を簡略化できる。特に、しきい値の数が多い場合に有効となる。
【0048】
なお、図5の構成の場合、図2に示すように、第1番目の信号s(一回分の走査で出力される走査信号)のしきい値を90%、第2番目の信号sのしきい値を50%、第3番目の信号sのしきい値を10%、図示しない第4番目の信号sのしきい値を90%、・・・、として測定値を演算する。これを実現するために、タイミング用フォトダイオード23からのタイミング信号S4を基にして、CPU55がしきい値切替回路75を制御している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る光学式測定装置を説明するブロック図である。
【図2】本実施形態に係る光学式測定装置を用いて測定対象物を測定する動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】走査信号と保護ガラスの汚れとの関係を示す波形図である。
【図4】本実施形態に係る汚れ検知処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る光学式測定装置の変形例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・光学式測定装置、3・・・投光部、5・・・受光部、7・・・制御部、9・・・発光素子、11・・・ミラー、13・・・モータ、15・・・ポリゴンミラー、17・・・コリメータレンズ、19・・・キャビネット、21・・・保護ガラス、23・・・タイミング用フォトダイオード、25・・・集光レンズ、27・・・受光素子、29・・・キャビネット、31・・・保護ガラス、33・・・アンプ、35・・・整形部、37・・・整形回路、39・・・ゲート信号発生回路、45・・・生成部、47・・・クロックパルス発振器、49・・・AND、51・・・カウンタ、53・・・分周回路、55・・・CPU、57・・・メモリ、59・・・表示部、61・・・設定キー、63・・・報知部、65・・・アンプ、67・・・メインバス、69・・・入出力インターフェース、71・・・判断部、73・・・光学式測定装置、75・・・しきい値切替回路、A・・・回転方向、B1・・・ビーム、B2・・・平行ビーム、B3・・・ビーム、E・・・波形の乱れている箇所(汚れの存在)、L・・・電圧の低い箇所、R・・・走査領域、S1・・・走査信号、S2・・・整形信号、S3・・・二値化信号、S4・・・タイミング信号、s・・・一回分の走査で出力される走査信号、W・・・測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出射されたビームを基にした平行ビームで測定対象物が位置する走査領域を繰り返し走査する投光手段と、
前記走査領域を通過したビームを受光して走査信号を出力する受光素子と、
前記走査信号を所定のしきい値で二値化して生成された二値化信号を基にして演算された測定値を表示する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記走査信号を複数の異なるしきい値でそれぞれ二値化して、各しきい値に対応する複数の二値化信号を生成する生成手段と、
前記複数の二値化信号のそれぞれを基にして演算された複数の測定値を比較して、前記発光素子から前記受光素子までのビームの光路上に異常が発生しているか否か判断する判断手段と、
前記異常の判断がされるとその異常を報知する報知手段と、を含む
ことを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
前記複数の異なるしきい値の数は三つ以上であり、
前記判断手段は、前記複数の測定値の組合せのそれぞれについて測定値を比較することにより、前記異常の程度を判断し、
前記報知手段は前記異常の程度に応じた報知をする
ことを特徴とする請求項1に記載の光学式測定装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記複数のしきい値の切り替えをするしきい値切替回路を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式測定装置。
【請求項4】
前記所定のしきい値は、前記複数のしきい値のいずれかと同じである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学式測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−38487(P2006−38487A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214624(P2004−214624)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】