説明

光学式測定装置

【課題】光学式測定装置において、測定性能を高める。
【解決手段】光学式測定装置1は、第1の受光レンズ11と、この第1の受光レンズ11の周囲に配置された環状の第2の受光レンズ12と、光を検出する光検出器15と、光学素子13と、を具備する。この光学素子13は、第1の受光レンズ11により受光された光、および第2の受光レンズ12により受光された光L1,L2を光検出器15に導光する導波路13aを含む。この導波路13aは、光を反射する反射面13bで形成され、光検出器15に近づくほど断面積が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じる実施態様は、光を検出することにより測定を行う光学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6および図7に示すように、光学式測定装置200は、例えば、車両100の前端中央に配置され、前方車両である測定対象物300との距離を測定する。
光学式測定装置200は、レーザ発振器201と、ポリゴンミラー202と、受光レンズ203と、光検出器204と、筐体205とを備える。
【0003】
レーザ発振器201は、レーザ光L11を照射する。
ポリゴンミラー202は、回転しながら、外周面においてレーザ光L11を反射させる。
【0004】
受光レンズ203は、筐体205の表面に配置され、測定対象物300において反射した散乱光であるレーザ光L12を受光する。
光検出器204は、受光回路204aを有し、受光レンズ203から入射するレーザ光L12を検出する。
【0005】
また、光学式測定装置としては、側方から入射する光を外側に反射させて受光素子に受光させるレンズを用いた光学式測定装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−332822号公報
【特許文献2】特開2009−229462号公報
【特許文献3】特開2005−259824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図7に示すような光学式測定装置200は、受光レンズ203がシングレット(一枚構成)の単純なものであるため、図8に示すように入射光軸Aからの傾きθが大きい、側方から入射する光は、光検出器204の受光領域から外れる場合が生じる。
【0008】
然るに、光検出器の受光領域から反射光が外れることは、計測信号のSNR(Signal to Noise Ratio)を劣化させ、例えば距離などの測定結果に誤差を誘引する要因となる。
また、上述の光学式測定装置のうち、側方から入射する光を外側に反射させて受光素子に受光させるレンズを用いた光学式測定装置では、レンズに側方から入射する光を確実に光検出器に反射させるのは困難である。
【0009】
本明細書で開示する光学式測定装置は、測定性能を高めることができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示する光学式測定装置は、第1の受光レンズと、この第1の受光レンズの周囲に配置された環状の第2の受光レンズと、光を検出する光検出器と、光学素子と、を具備する。上記光学素子は、上記第1の受光レンズにより受光された光、および上記第2の受光レンズにより受光された光を上記光検出器に導光する導波路を含む。この導波路は、光を反射する反射面で形成され、上記光検出器に近づくほど断面積が小さくなる、
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する光学式測定装置によれば、測定性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施の形態に係る光学式測定装置を示す概略構成図である。
【図2】一実施の形態に係る光学式測定装置を説明するための説明図である。
【図3】一実施の形態における光学素子を示す断面図である。
【図4A】一実施の形態における第2の受光レンズを示す平面図である。
【図4B】一実施の形態における第2の受光レンズを示す断面図である。
【図5】一実施の形態に係る光学式測定装置を備える車両を示す平面図である。
【図6】参考技術に係る光学式測定装置を備える車両を示す平面図である。
【図7】参考技術に係る光学式測定装置を示す概略構成図である。
【図8】参考技術に係る光学式測定装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に係る光学式測定装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施の形態に係る光学式測定装置1を示す概略構成図である。
図1に示す光学式測定装置1は、第1の受光レンズ11と、第2の受光レンズ12と、光学素子13と、集光レンズ14と、光検出器15と、筐体16と、照射部20と、を具備する。後述するが、光学式測定装置1は、例えば、図5に示す車両(移動体)100である測定対象物からの反射光を検出することで、測定対象物までの距離を測定する。なお、集光レンズ14としては、例えば、両凸レンズや、平凸レンズが採用される。
【0014】
第1の受光レンズ11は、図2に示すように、例えば、筐体16の表面から突出した位置において、主に正面からの光L1を受光する。第1の受光レンズ11は、正面部11aが凸形状を呈し、背面部11bが凹形状を呈するメニスカスレンズであるが、他の形状とすることも可能である。
【0015】
図4Aおよび図4Bに示す第2の受光レンズ12は、環状を呈し、第1の受光レンズ11の周囲に配置されている。本実施の形態では、第2の受光レンズ12は、前後方向(入射光軸Aの方向)の長さが第1の受光レンズ11よりも短いが、第2の受光レンズ12の前端は、前後方向の位置が第1の受光レンズ11の前端の位置と一致する。
【0016】
第2の受光レンズ12は、図2に示すように、主に側方からの光L2を受光する。第2の受光レンズ12は、例えば、外周面12aから入射する光L2を、内周面12bにおいて光学素子13に向けて反射させる。
【0017】
第2の受光レンズ12の外周面12aは、例えば円環面である。内周面12bは、例えば、正面側の前端開口部12cから背面側の後端開口部12dにかけて、光学素子13に近づくほど径が小さくなる円錐面である。なお、後端開口部12dは、外周面12aの後端よりも正面側に奥まって位置している。第2の受光レンズ12は、他の形状とすることも可能である。
【0018】
集光レンズ14は、正面部14aおよび背面部14bの両方が凸形状を有し、第1の受光レンズ11から入射する光L1を光学素子13に出射する。集光レンズ14は、省略することも可能である。また、集光レンズ14以外の1つ以上のレンズ、又は集光レンズ14を含む複数のレンズを、第1の受光レンズ11および第2の受光レンズ12と光学素子13との間に配置してもよい。
【0019】
図3に示す光学素子13は、第1の受光レンズ11から集光レンズ14を介して間接的に入射する光L1、および第2の受光レンズ12から入射する光L2を光検出器15に導光する導波路13aを含む。
【0020】
導波路13aは、例えば外周面に位置し光L1,L2を反射(例えば全反射)する全反射面(反射面の一例)13bで形成され、光検出器15に近づくほど例えば内径が小さくなることで断面積が小さくなるホーン型形状を呈する。なお、導波路13aは、全反射面13bが円錐面である場合のように断面積が一定割合で小さくなるようにしてもよいが、光検出器15に近づくほど断面積が緩やかに小さくなるようにすることが望ましい。
【0021】
光学素子13は、前端に位置する径が一定の前端外周面13c以外の部分では、光検出器15に近づくほど断面積が小さくなる。そのため、本実施の形態では、導波路13aは、光学素子13のうち前端外周面13cよりも下方の部分の全体である。
【0022】
なお、導波路13aが中空になっていたり他の部材からなるようにしたりしてもよい。また、全反射面13bは、塗膜等されてもよいし、光学素子13の内部に形成されてもよい。
【0023】
本実施の形態の光学素子13の前後方向の長さHは、例えば30mm〜60mm程度であるが、これよりも大きくすることも小さくすることも可能である。
【0024】
光検出器15は、第1の受光レンズ11および第2の受光レンズ12からの収束光L1,L2を受光する。光検出器15は、飛行時間計測法を用いた時間測定や画像の2値化を行う受光回路15aを有し、例えば測定対象までの距離を検出する。
【0025】
例えば、受光回路15a(光学式測定装置1)は、後述する光照射部20が光を照射してから光検出器15が反射光を検出するまでに要した時間を用いて、測定対象までの距離を測定する。
【0026】
なお、光検出器15やその受光範囲の大きさW(1辺の長さ或いは径)は、例えば数mm〜数10mm程度であるが、これよりも大きくすることも小さくすることも可能である。また、光検出器15は、距離ではなく、対称物の位置、形状などの他の要素を測定するものでもよい。
【0027】
照射部20は、半導体レーザダイオード21と、コリメータレンズ22と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー23と、集光レンズ24aおよびメニスカスレンズ24bを有する走査拡大レンズ群24とを含む。
【0028】
半導体レーザダイオード21は、例えば光モニタ回路付きのパルス発光回路21aにより発光制御されてパルス光L0を発光する。
コリメータレンズ22は、半導体レーザダイオード21から出射されたパルス光L0を略平行光に変換する。
【0029】
MEMSミラー23は、MEMS駆動回路23aにより揺動制御され、コリメータレンズ22により変換された略平行光を反射させ、数10度の範囲で走査する。走査拡大レンズ群24は、集光レンズ24aと、この集光レンズ24aから出射される光が凹面側から入射するメニスカスレンズ24bとで、さらに走査角を拡大させる。
【0030】
なお、光学式測定装置1は、照射部20を備えず、他の装置の照射部により照射される光の反射光、或いは太陽光の反射光などを測定するようにしてもよい。
【0031】
以下、本実施の形態に係る光学式測定装置1の動作について、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
【0032】
上述の光学式測定装置1は、例えば、図5に示す移動体である車両100の前後左右の計4箇所に配置される場合もあるし、前方部 FRONTだけ、また後方部BACKだけに配置される場合もある。
【0033】
図1に示すように、照射部20の半導体レーザダイオード21により発光されたパルス光L0は、コリメータレンズ22により略平行光に変換される。この略平行光は、揺動制御されるMEMSミラー23において反射し、数10度の範囲で走査され、走査拡大レンズ群24によって広範囲に走査される。
【0034】
上述のように照射されたレーザ光は、図6に示す車両100において反射して散乱光となり、図2に示すように第1の受光レンズ11及び第2の受光レンズ12に入射する(レーザ光L1,L2)。
【0035】
第1の受光レンズ11及び第2の受光レンズ12に入射したレーザ光L1,L2は、直接或いは集光レンズ14を介して間接的に光学素子13に入射する。
【0036】
光学素子13に入射した光L1,L2は、全反射面13bで形成された導波路13aにおいて反射しながら光検出器15に導光され、光検出器15により検出される。そして、光検出器15は、検出した光から測定対象物との距離を計測する。
【0037】
ところで、レーザ光を用いた測距技術の測距可能範囲は、測定対象物に当たって帰って来たレーザ光が受光レンズにて屈折した場合に、屈折光が光検出器15に到達する範囲である。本実施の形態では、光学素子13に入射する光L1,L2は、導波路13a内にて全反射しながら光検出器15方向へ進むとともに、光検出器15方向へ収束するため、広い範囲(入射光軸Aからの傾きθがほぼ90度)から入射したレーザ光L1,L2を光検出器15で検出することができる。つまり、測距可能範囲が広がる。
【0038】
以上説明した本実施の形態では、光学素子13は、第1の受光レンズ11により受光された光、およびその周囲に配置された環状の第2の受光レンズ12により受光された光L1、L2を光検出器15に導光する導波路13aを含む。この導波路13aは、光L1,L2を全反射する全反射面13bで形成され、光検出器15に近づくほど断面積が小さくなる。そのため、側方からの光L2も十分に受光することが可能となり、例えば距離測定用の信号品質が向上し、測定結果の誤差を低減することが可能となる。よって、本実施の形態によれば、測定性能を高めることができる。
【0039】
また、単一の光検出器15で光L1,L2を受光することで、浮遊容量が減り、計測信号の帯域が延び信号品質向上に寄与することも可能となる。
【0040】
また、光学式測定装置1が飛行時間計測法を用いた距離計測を行う場合、光量を受光できれば、結像性能(収差等)を考慮せずに光学系を配置することができる。そのため、枚数の多い、非球面形状を有するレンズ等を配置しなくともよくなり、設計の自由度や構造の簡素化にも寄与することが可能となる。
【0041】
なお、全反射面13bで一回だけ反射する光線と二回以上反射する光線とでは、光検出器15に到達するまでの光路長が変わる分、光の飛行距離が変わるので飛行時間、すなわち、測定対象物までの距離が異なることになる。
【0042】
しかし、光学素子と測定対象物との間に例えば数m〜100m程度の距離がある場合、例えば数mm〜数cmの径の光学素子13内を複数回反射するような光路差は、数m〜100mというオーダーと比較すると無視できる距離差である。光学式測定装置1と測定対象物100が大きい場合でも、光路差の影響を無視した測定が可能となる。
【0043】
また、本実施の形態では、導波路13aの断面積は、光検出器15に近づくほど緩やかに小さくなる。そのため、光学素子13が受光した光をより確実に光検出器15に導光することができ、したがって、測定性能をより一層高めることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、全反射面13bは、光学素子13の外周面に形成されている。そのため、簡素な構成で測定性能を高めることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、第2の受光レンズ12は、内周面12bの径が光学素子13に近づくほど小さくなり、外周(外周面12a)から入射する光を内周面12bにおいて光学素子(13)に向けて反射させる。そのため、第2の受光レンズ12の受光範囲が広がり、測定性能をより一層高めることができる。
【0046】
また、本実施の形態の光学式測定装置1は、測定対象に光を照射する光照射部20を具備し、光検出器15は、光照射部20が測定対象に照射した光の反射光を検出し、光学式測定装置1受光回路15aは、光照射部20が光を照射してから光検出器15が反射光を検出するまでに要した時間を用いて、測定対象までの距離を測定する。そのため、距離測定性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 光学式測定装置
11 第1の受光レンズ
11a 正面部
11b 背面部
12 第2の受光レンズ
12a 外周面
12b 内周面
12c 前端開口部
12d 後端開口部
13 光学素子
13a 導波路
13b 全反射面
13c 前端外周面
14 集光レンズ
14a 正面部
14b 背面部
15 光検出器
15a 受光回路
16 筐体
20 照射部
21 半導体レーザダイオード
21a パルス発光回路
22 コリメータレンズ
23 MEMSミラー
23a MEMS駆動回路
24 走査拡大レンズ群
24a 集光レンズ
24b メニスカスレンズ
100 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の受光レンズと、
前記第1の受光レンズの周囲に配置された環状の第2の受光レンズと、
光を検出する光検出器と、
前記第1の受光レンズにより受光された光、および前記第2の受光レンズにより受光された光を前記光検出器に導光する導波路を含む光学素子と、
を具備し、
前記導波路は、光を反射する反射面で形成され、前記光検出器に近づくほど断面積が小さくなる、
ことを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の光学式測定装置において、
前記反射面は、前記光学素子の外周面に形成されている、
ことを特徴とする光学式測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の光学式測定装置において、
前記第2の受光レンズは、内周面の径が前記光学素子に近づくほど小さくなり、外周から入射する光を前記内周面において前記光学素子に向けて反射させる、
ことを特徴とする光学式測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の光学式測定装置において、
測定対象に光を照射する光照射部を更に具備し、
前記光検出器は、前記光照射部が前記測定対象に照射した光の反射光を検出し、
前記光学式測定装置は、前記光照射部が前記光を照射してから前記光検出器が前記反射光を検出するまでに要した時間を用いて、前記測定対象までの距離を測定する、
ことを特徴とする光学式測定装置。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255738(P2012−255738A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129854(P2011−129854)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】