説明

光学用部材及びその製造方法

【課題】EUVリソグラフィにおけるフォトマスクまたはミラー材等として好適な、表層部分に微小空孔(ボイド)やパーティクル等の異物が実質的に内包されない光学用部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】チタニア−シリカガラスWの最表面から少なくとも0.2mm(d)の表層領域における単位面積あたりの空孔、異物個数が、前記表層領域を超えた内部領域にける空孔、異物個数より少なく、かつ、チタニア−シリカガラス体の最表面から少なくとも0.2mm(d)の表層領域におけるSiO2含有量と、前記表層領域を超えた部領域にけるSiO2含有量の変化率が0.1%以下であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体・液晶等の製造工程において、超紫外光リソグラフィ(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)リソグラフィという。)のフォトマスクまたはミラー材等の光学用部材及びその製造方法に関し、特に、チタニア−シリカガラスを用いた光学用部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路の高集積化において、微細加工技術は、最も重要な役割を担っている。半導体集積回路のさらなる微細化に伴い、光リソグラフィ技術の開発も進んでおり、その一つとして、露光光源にEUV光を用いたEUVリソグラフィが注目されている。
このEUV光は、波長が13.5nm以下で高エネルギーを有することから、あらゆる材料に吸収されるため、反射光学系のリソグラフィシステムが採用されている。
【0003】
このEUVリソグラフィにおいては、フォトマスク基板には、高出力レーザが照射されるため、サブナノメータオーダーでの熱的安定性が要求される。したがって、フォトマスク基板の材料としては、従来のフォトリソグラフィに用いられていたシリカガラスよりも、低熱膨張のガラスが必要となる。
【0004】
このような低熱膨張ガラスとしては、例えば、チタニア−シリカガラスが知られている。このチタニア−シリカガラスは、従来は、例えば、特許文献1に記載されているように、シリカ前駆体およびチタニア前駆体を火炎加水分解して得られた多孔質ガラス体を昇温して透明化し、成形後、アニール処理することにより製造される。
【特許文献1】特開2005−22954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記チタニア−シリカガラスをフォトマスク基板として用いる場合、製造されたチタニア−シリカガラスを所定形状に研削加工し、更に研磨加工して表面を平坦化し、その表面に反射膜を蒸着することが行なわれる。
そのため、前記チタニア−シリカガラスには、前記したように熱膨張係数が非常に小さいことのほか、研磨したときに研磨むらが発生しないこと、更に研磨終了時に表面欠陥がないことが求められる。
【0006】
特に、表面欠陥がないチタニア−シリカガラスを作るには、研磨の工程管理等が非常に重要であるが、研磨によって内部から最表面に露出する欠陥がないことが重要である。
即ち、研磨されるチタニア−シリカガラスの内部、特に表層部分に微小空孔(ボイド)やパーティクル等の異物が内包されていないことが重要である。
【0007】
しかしながら、表面欠陥として問題となる空孔や異物は30nm以上のものであり、上記特許文献1に記載されているような従来のチタニア−シリカガラスの製造方法のような高温に長時間曝して製造するものにあっては、前記した微小な空孔(ボイド)やパーティクル等の異物を無くすことは極めて困難である。
【0008】
従来のチタニア−シリカガラスの内部、特に表層部分には、微小空孔(ボイド)やパーティクル等の異物が内包されているため、これを所定形状に加工し、更にその表面を研磨して、その表面に反射膜を蒸着してEUV用の光学用部材とすることは、研磨することによって最表面に微小な空孔(ボイド)やパーティクル等の異物が露出するため好ましいものではなかった。
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、EUVリソグラフィにおけるフォトマスクまたはミラー材等として好適な、表層部分に微小空孔(ボイド)やパーティクル等の異物が実質的に内包されない光学用部材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明にかかる光学用部材は、チタニア−シリカガラスからなる光学用部材において、前記チタニア−シリカガラスの最表面から少なくとも0.2mmの表層領域における単位面積あたりの空孔、異物個数が、前記表層領域を超えた内部領域における空孔、異物個数より少なく、かつ、チタニア−シリカガラスの最表面から少なくとも0.2mmの表層領域におけるSiO2含有量と、前記表層領域を超えた内部領域におけるSiO2含有量の変化率が0.1%以下であることを特徴としている。
【0011】
このように、チタニア−シリカガラスの最表面から少なくとも0.2mmの表層領域における単位面積あたりの空孔、異物個数が、前記表層領域を超えた内部領域にける空孔、異物個数より少ないため、研磨しても最表面に微小な空孔(ボイド)やパーティクル等の異物が露出することがなく、良好な光学用部材を得ることができる。
また、チタニア−シリカガラスの最表面から少なくとも0.2mmの表層領域におけるSiO2含有量と、前記表層領域を超えた内部領域におけるSiO2含有量の変化率が0.1%以下であるため、光学的な歪みがなく、良好な光学用部材を得ることができる。
このようにチタニア−シリカガラスの最表面から少なくとも0.2mmの表層領域を特定したのは、通常研磨によって最表面から0.2mm程度研磨されるからであり、チタニア−シリカガラスの最表面からの領域は、0.2mm〜0.8mmの範囲であることが望ましい。
【0012】
また、本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明にかかる光学用部材の製造方法は、チタニア−シリカガラスからなる光学用部材の製造方法において、チタニア−シリカガラスを研削、あるいは研磨加工し、所定の形状になす工程と、所定形状のチタニア−シリカガラスの表面を、加圧条件下、加熱条件下でレーザ照射し、所定深さの表層を溶融し、空孔、異物を除去する工程と、前記空孔、異物が除去されたチタニア−シリカガラスの表面を、前記所定深さ以下の寸法をもって研磨する工程を含むことを特徴としている。
【0013】
このように、所定形状のチタニア−シリカガラスの表面を、加圧条件下、加熱条件下でレーザ照射し、所定深さの表層を溶融し、空孔、異物を除去する工程と、前記空孔、異物が除去されたチタニア−シリカガラスの表面を、前記所定深さ以下の寸法をもって研磨する工程を含むため、チタニア−シリカガラスの最表面における単位面積あたりの空孔、異物個数を少なくすることができ、良好な光学用部材を得ることができる。
【0014】
また、前記加圧条件が1.5気圧以上5気圧以下であって、かつ前記加熱条件が200℃以上1100℃以下であることが望ましい。
このように、レーザ照射の際、1.5気圧以上5気圧以下で加圧するのは、SiO2の昇華を防止するためである。このSiO2の昇華は光学的に歪みを起こし、光学用部材として用いたときに高精度の描画ができないためである。尚、5気圧以上に加圧しても、SiO2の昇華の抑制の効果が変わらないため、5気圧以下が好ましい。
【0015】
また、前記レーザ照射により溶融される表層の所定深さが0.2mm以上0.8mm以下であることが好ましい。このようにレーザ照射により溶融される表層の所定深さが0.2mm以上0.8mm以下と特定したのは、通常研磨によって最表面から0.2mm〜0.5mm程度研磨されるからであり、また0.8mmを超えて溶融しても、より深い領域を溶融するのはより強いエネルギーが必要である反面、研磨により最表面に露出することがないためである。
【発明の効果】
【0016】
上述したとおり、EUVリソグラフィにおけるフォトマスクまたはミラー材等の光学用部材として好適な、表層部分に微小空孔(ボイド)やパーティクル等の異物が実質的に内包されない光学用部材及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明にかかる光学用部材のチタニア−シリカガラスの製造方法は、特には限定されないが、例えば、特許文献1に記載された製造方法を用いることができる。即ち、前工程として、シリカ前駆体およびチタニア前駆体を火炎加水分解して得られた多孔質ガラス体を昇温して透明化し、成形後、アニール処理することによって、チタニア−シリカガラスを得ることができる。
また、VAD(Vapor-phase Axial Desposition)法により作製したチタニア−シリカ多孔体を高周波誘導発熱体であるカーボン筒状体内に配置し、真空雰囲気下で誘導加熱する方法により、透明化処理したものであっても良い。
【0018】
そして、得られたチタニア−シリカガラスに対する後工程として、まずチタニア−シリカガラスを研削、あるいは研磨加工し、所定の形状になし、更に所定形状のチタニア−シリカガラス体の表面を、加圧条件下、加熱条件下でレーザ照射し、所定深さの表層を溶融し、空孔、異物を除去する。
その後、前記空孔、異物が除去されたチタニア−シリカガラスの表面を、前記所定深さ以下の寸法をもって研磨する。そして、最後にフォトマスクまたはミラーとするために、表面に反射膜を蒸着することが行なわれる。
【0019】
本発明において顕著な特徴は、所定形状のチタニア−シリカガラスの表面を、加圧条件下、加熱条件下でレーザ照射し、所定深さの表層を溶融し、空孔、異物を除去し、その後、前記空孔、異物が除去されたチタニア−シリカガラスの表面を、前記所定深さ以下の寸法をもって研磨する点にある。
【0020】
即ち、前工程で製造されたシリカガラス体の内部には、最表面に現れない欠陥(微小空孔(ボイド)や、異物(パーティクルの混入)が内包している。そのため、チタニア−シリカガラス体を所定形状に研削加工し、更に研磨加工して表面を平坦化する際、内包されていた欠陥が最表面に出現する。本発明にあっては前記欠陥を消滅させるため、研磨されたチタニア−シリカガラスの表面を、加圧下でレーザアニールし、チタニア−シリカガラスの表層を溶融するものである。
【0021】
このレーザアニールは、レーザ光をチタニア−シリカガラスの表面に照射することによってなされる。図1に示しように、レーザ発振機1から放射されたレーザ光Lはチタニア−シリカガラスWの表層を溶融し、空孔、異物を除去する。このとき、チタニア−シリカガラスWを、X方向、Y方向に移動させることにより、チタニア−シリカガラスWの表層を面状に処理することができる。図中、符号W1はチタニア−シリカガラスWの処理面を表している。また符号W2はチタニア−シリカガラスWの非処理面を表している。
【0022】
また、図2に示すように、処理深さdは、最表面から0.2mm〜0.8mmの範囲である。即ち、最表面から0.2mm〜0.8mmの範囲で溶融され、空孔、異物が除去される。例えば、炭酸ガスレーザで、3Kv〜15Kvでの照射において、スキャニングスピード0.1〜10cm/sec、望ましくは2cm/sec以下の処理を行うことにより、最表層から0.2mm〜0.8mmの処理深さを実現することができる。
このように、処理深さdを最表面から0.2mm以上としたのは、その後になされる研磨の研磨量を考慮したものである。また、0.8mm以下としたのは、より深い領域を溶融するのは、より強いエネルギーが必要であるが、使用時に表面にならないことにより、改善効果が得られないことになるからである。
【0023】
また、レーザ照射する際、チタニア−シリカガラスWは高温環境下におかれ、200℃〜1100℃、望ましくは、900℃に保持される。このように、チタニア−シリカガラスWの温度を200℃〜1100℃、望ましくは、900℃に保持するのは、レーザ照射により発生する歪みを緩和し、ひび割れなどの不具合を発生させないためである。
【0024】
更に、レーザ照射する際、チタニア−シリカガラスWは、少なくとも1.5気圧の加圧下におかれる。好ましくは、5気圧のチャンバー内で、レーザ照射される。
このように、少なくとも1.5気圧の加圧下でレーザ加熱し、チタニア−シリカガラスWの表層部を溶融するのは、レーザアニールによるSiO2の昇華を抑制するためである。
【0025】
チタニア−シリカガラスWの表層部のSiO2が昇華し、前記表層部におけるSiO2含有量とチタニア−シリカガラスWの内部のSiO2含有量とが異なると、光学的に歪みが生じ、EUVリソグラフィにおけるフォトマスク等として用いた場合、高精度の描画ができないためである。
ここで、チタニア−シリカガラスの表層部の溶融領域におけるSiO2量と、チタニア−シリカガラスの内部領域にけるSiO2量の変化率が0.1%以下である望ましい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
【0027】
(実験1)
先ず、シリカ前駆体およびチタニア前駆体を火炎加水分解して得られた多孔質ガラス体を昇温して透明化し、成形後、アニール処理し、20mm(横)、20mm(縦)、68mm(厚さ)チタニア−シリカガラスを得え、酸化セリウムで研磨し、チタニア−シリカガラス体を得た。このチタニア−シリカガラスの最表面をレーザ欠陥観察装置を用いて計測したところ、30nm以上の空孔や異物が、20個/cm2存在していた。
【0028】
次に、このチタニア−シリカガラス体を図3に示すレーザ加熱装置内に設置し、レーザ加熱処理を行った。尚、図3において、1は炭酸ガスレーザ発振機、2はXYテーブル、3はチャンバー、3aはガス導入管、3bはガス排出管、4は弁、5は圧力計、6は補助加熱手段である。
この装置内に配置されたチタニア−シリカガラス体は、この加熱手段6により900℃に保持され、またチャンバー3内は、ドライエアーガスを導入することにより、5気圧なされている。
【0029】
そして、6Kvでの照射において、レーザ光のスキャニングスピード2cm/secで表層部を溶融した。
冷却後、最表面から厚さ0.2mm研磨し、その表面における30nm以上の空孔や異物を計測した。その結果、最表面から厚さ0.2mmの領域で欠陥が2個/cm2となり減少を確認した(実施例1)。
【0030】
(実施例2)更に最表面から厚さ0.6mm研磨し、その表面における30nm以上の空孔や異物を計測した。その結果、最表面から厚さ0.6mmの領域で欠陥が2個/cm2となり減少を確認した。
(実施例3)更にまた、最表面から厚さ0.8mm研磨し、その表面における30nm以上の空孔や異物を計測した。その結果、最表面から厚さ0.8mmの領域で欠陥が2個/cm2となり減少を確認した。
(比較例1)更に最表面から厚さ1mm研磨し、その表面における30nm以上の空孔や異物を計測した。その結果、最表面から厚さ1mmの領域で欠陥が20個/cm2となり減少を確認できなかった。
【0031】
(実験2)
(実施例4)実施例1に示したレーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2含有量を測定した。尚、レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2含有量は、レーザアニ−ル後のレーザアニ−ルの影響を受けない内部領域のSiO2含有量に等しい。
また、実施例1(最表面から厚さ0.2mmの領域)におけるSiO2含有量を測定し、変化率を求めた。測定はESR(電子スピン共鳴)装置で行った。
その結果、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、前記チタニア−シリカガラス体の最表面から厚さ0.2mmの領域におけるSiO2量の変化率は0.1%以下であった。
【0032】
(実施例5)実施例2(最表面から厚さ0.6mmの領域)におけるSiO2含有量を測定し、変化率を求めた。測定は実施例4と同様にして行った。
その結果、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、前記チタニア−シリカガラス体の最表面から厚さ0.6mmの領域におけるSiO2量の変化率は0.1%以下であった。
【0033】
(実施例6)実施例3(最表面から厚さ0.8mmの領域)におけるSiO2含有量を測定し、変化率を求めた。測定は実施例4と同様にして行った。
その結果、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、前記チタニア−シリカガラス体の最表面から厚さ0.8mmの領域におけるSiO2量の変化率は0.1%以下であった。
【0034】
(実施例7)比較例1(最表面から厚さ1mmの領域)におけるSiO2含有量を測定し、変化率を求めた。測定は実施例4と同様にして行った。
その結果、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、前記チタニア−シリカガラス体の最表面から厚さ1mmの領域におけるSiO2量の変化率は0.1%以下であった。
【0035】
(実験3)
(比較例2)実施例1と同様にしてチタニア−シリカガラスを得て、レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量を測定した。そして、このチタニア−シリカガラスを大気圧下でレーザアニ−ルした。このレーザアニ−ルの条件は、前記圧力を除いて実施例1と同一とした。尚、レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2含有量は、レーザアニ−ル後のレーザアニ−ルの影響を受けない内部領域のSiO2含有量に等しい。
その結果、最表面から厚さ0.2mmの領域で欠陥が2個/cm2となり減少を確認した。しかしながら、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、チタニア−シリカガラスの最表面から厚さ0.2mmの表層領域におけるSiO2量の変化率は1.2%であった。
このチタニア−シリカガラスを研磨し、フォトマスクブランクスとして形成したが、表面に組成変化に対応した、うねりを発生し、反射フォトマスクとして、好ましいものではなかった。
【0036】
(実施例8)また、実施例1と同様にしてチタニア−シリカガラスを得て、レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量を測定した。そして、このチタニア−シリカガラス体を1.5気圧下でレーザアニ−ルした。このレーザアニ−ルの条件は、前記圧力を除いて実施例1と同一とした。
その結果、最表面から厚さ0.2mmの領域で欠陥が2個/cm2となり減少を確認した。
また、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、チタニア−シリカガラスの最表面から厚さ0.2mmの領域におけるSiO2量の変化率は0.1%であった。
このチタニア−シリカガラス体を研磨し、フォトマスクブランクスとして形成したが、表面に組成変化に対応した、うねりが無く、反射フォトマスクとして、好的であった。
【0037】
(実施例9)また、実施例1と同様にしてチタニア−シリカガラス体を得て、レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量を測定した。そして、このチタニア−シリカガラス体を5気圧下でレーザアニ−ルした。このレーザアニ−ルの条件は、前記圧力を除いて実施例1と同一とした。
その結果、最表面から厚さ0.4mmの領域で欠陥が2個/cm2となり減少を確認した。また、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、チタニア−シリカガラスの最表面から厚さ0.4mmの表層領域におけるSiO2量の変化率は0.1%であった。
このチタニア−シリカガラス体を研磨し、フォトマスクブランクスとして形成したが、表面に組成変化に対応した、うねりが無く、反射フォトマスクとして、好的であった。
【0038】
(実施例10)また、実施例1と同様にしてチタニア−シリカガラス体を得て、レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量を測定した。そして、このチタニア−シリカガラスを7気圧下でレーザアニ−ルした。このレーザアニ−ルの条件は、前記圧力を除いて実施例1と同一とした。
その結果、最表面から厚さ0.4mmの領域で欠陥が2個/cm2となり減少を確認した。また、前記レーザ加熱する前のチタニア−シリカガラス体の表面のSiO2量に対する、チタニア−シリカガラスの最表面から厚さ0.4mmの領域におけるSiO2量の変化率は0.1%であった。この変化率は、5気圧の場合と略同様な変化率であった。
このチタニア−シリカガラス体を研磨し、フォトマスクブランクスとして形成したが、表面に組成変化に対応した、うねりが無く、反射フォトマスクとして、好的であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明にかかる光学用部材及びその製造方法は、半導体・液晶等の製造工程における、EUVリソグラフィにおけるフォトマスクまたはミラー材等の光学用部材、またその製造方法として好適に使用することができ、ひいては、半導体・液晶等の各種処理工程における歩留の向上に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、チタニア−シリカガラス体の表層部をレーザ加熱している状態を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、チタニア−シリカガラス体の表層部をレーザ加熱している状態を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明にかかる光学用部材を製造するためのレーザ加熱装置である。
【符号の説明】
【0041】
1 (炭酸ガス)レーザ発振機
2 XYテーブル
3 チャンバー
3a ガス導入管
3b ガス排出管
4 弁
5 圧力計
6 加熱手段
L レーザ光
W チタニア−シリカガラス
W1 処理面
W2 非処理面
d 処理深さ(処理寸法)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニア−シリカガラスからなる光学用部材において、
前記チタニア−シリカガラスの最表面から少なくとも0.2mmの表層領域における単位面積あたりの空孔、異物個数が、前記表層領域を超えた内部領域における空孔、異物個数より少なく、
かつ、チタニア−シリカガラスの最表面から少なくとも0.2mmの表層領域におけるSiO2含有量と、前記表層領域を超えた内部領域におけるSiO2含有量の変化率が0.1%以下であることを特徴とする光学用部材。
【請求項2】
チタニア−シリカガラスからなる光学用部材の製造方法において、
チタニア−シリカガラスを研削、あるいは研磨加工し、所定の形状になす工程と、
所定形状のチタニア−シリカガラスの表面を、加圧条件下、加熱条件下でレーザ照射し、所定深さの表層を溶融し、空孔、異物を除去する工程と、
前記空孔、異物が除去されたチタニア−シリカガラス体の表面を、前記所定深さ以下の寸法をもって研磨する工程を含むことを特徴とする光学用部材の製造方法。
【請求項3】
前記加圧条件が1.5気圧以上5気圧以下であって、かつ前記加熱条件が200℃以上1100℃以下であることを特徴とする請求項2記載の光学用部材の製造方法。
【請求項4】
前記レーザ照射により溶融される表層の所定深さが0.2mm以上0.8mm以下であることを特徴とする請求項2または請求項3記載の光学用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−247635(P2008−247635A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88088(P2007−88088)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】