説明

光学的情報読取装置

【課題】 現時点における電池の残容量でどのような種類の作業を実行可能であるかを極めて容易に把握できるようにすること。
【解決手段】 制御部11は、バッテリ3の残容量の検出動作を行い、検出した電池残量が規定値未満であった場合には、光学的情報の読み取りや解析などに関連した複数種類の作業毎に当該作業を完了させるために必要となる消費電力の予測を行い、その予測した消費電力と前記検出電池残量に基づいて、現時点でのバッテリ3の容量により実行可能な作業の種類名をリストアップすると共に、その種類名に対応したメニュー番号を含む実行可能作業リスト画面を表示部16に表示し、表示された実行可能作業リスト画面に基づいて作業種類名の選択操作が行われたときには、選択操作された作業をトリガスイッチ5のオン操作に応じて実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵電池からの供給電力によって複数種類の作業を実行可能に構成された光学的情報読取装置、特には、内蔵電池の消耗時に有益な対処が可能となる光学的情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商品管理を行うための方法として、商品に記載または添付されている光学的情報(QRコード、バーコードなど)を、光学的情報読取装置(以下、単に読取装置と呼ぶ)を用いて読み取り、読み取った情報をデコードした結果を、例えば無線通信手段によりホスト装置へ出力するようにした技術が広く普及している。この種の読み取り装置は、内蔵電池からの供給電力により動作する構成とされるのが一般的であるため、電池の消耗によるデータ消失や作業の不用意な中断といった事態の発生を未然に防止するための手段が講じられている。例えば、装置に設けられた表示部に対して、電池の残容量(以下、電池残量と呼ぶ)を示す形象や電池残量の不足を報知する警告メッセージを表示する手段、或いは電池残量の低下を報知するための警告音を発生する手段などを設けることにより、使用者に電池交換や充電を促すことが行われている。
【0003】
但し、このような手段は、電池交換時期や充電時期(電源アダプタの接続時期)を報知するに過ぎないため、現在時点における電池残量で、情報読み取り作業をどの程度の時間継続できるのか不明になる、という問題点がある。従来では、このような問題点を解決するために、特許文献1に見られるような手段が考えられている。
【0004】
即ち、この手段は、現時点での電池残量と、使用デバイス及びその使用比率に基づいて演算した使用電力とに基づいて、現時点の電池残量から予想される予想作業時間を算出して通知(表示)する構成となっている。また、当該手段では、複数の作業についての作業比率が入力された場合に、各作業の種類及び作業比率と、各作業で使用するデバイスの消費電流及び合計消費電流とを対応付けた形態の一覧表を表示する構成となっており、予想作業時間内で所望する作業の実行が不可能な状況であった場合に、使用するデバイスの設定を変更して消費電流を低減することにより予想作業時間を確保すると共に、上記一覧表の表示内容を設定変更後のものに更新する構成となっている。
【特許文献1】特開2002−62955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来の手段の場合、使用者側では、現時点の電池残量で作業を継続可能な時間(予想作業時間)を知ることができるが、現時点の電池残量でどのような種類の作業を実行可能であるかを簡単に把握することが困難になる。つまり、従来の手段では、複数の作業についての作業比率が入力された状態で、それら作業が入力された比率で実行された場合の合計消費電流や予想作業時間を表示しているに過ぎない。このため、電池残量の低下時にどうしても済ませておきたい作業があった場合には、当該作業の作業比率として100%を入力し直すという面倒な操作が必要になってくるものであり、結果的に、現時点の電池残量でどのような種類の作業を実行可能であるかを簡単に把握できない、という事情がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、現時点における電池の残容量でどのような種類の作業を実行可能であるかを極めて容易に把握できるなどの効果を奏する光学的情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、消費電力予測手段が、内蔵電池からの供給電力によって実行可能な複数種類の作業毎に当該作業を完了させるために必要となる消費電力を予測する動作を実行するようになる。抽出手段は、電池残量検出手段により検出された前記内蔵電池の残容量と、上記のような消費電力予測手段による予測結果とに基づいて、現時点での電池容量により実行可能な作業の種類名をリストアップするようになり、そのリストアップされた作業種類名が、表示手段によりリスト画面として表示される。このように表示されたリスト画面に基づいて作業種類名が選択操作されたときには、動作制御手段が、選択操作された作業を実行するようになる。つまり、使用者側では、上記リスト画面に基づいて、現時点の電池残量でどのような種類の作業を実行可能であるかを極めて容易に把握できるようになり、また、リスト画面に表示された作業種類名の選択操作を行うだけで、現時点で実行可能な作業を開始させることができるから、電池の消耗によるデータ消失や作業の不用意な中断といった事態の発生を未然に且つ確実に防止できることになる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、抽出手段は、現時点での電池容量により実行可能な作業の種類名をリストアップする際に、過去の実行回数が相対的に多い作業に対応した種類名を優先的にリストアップするようになる。これにより、リスト画面には、実際に実行されることが多いと想定される作業種類名が表示されることになるから、実用上において非常に有用になる。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、消費電力予測手段による予測、つまり、複数種類の作業毎に当該作業を完了させるために必要となる消費電力の予測が、過去に実行された作業の完了までに消費された電力を示す実績データが利用して行われるから、当該消費電力の予測を正確に行い得るようになり、リスト画面の信頼性が向上するようになる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、表示手段により表示されるリスト画面中には、抽出手段によりリストアップされた作業種類名(現時点での電池容量により実行可能な作業の種類名)と対応付けた状態で、当該種類名に対応した作業についての実行可能回数も表示されるから、内蔵電池が消耗した状況下において同一の作業を複数回続けて実行できるか否かを判断する必要がある場合に非常に有用になる。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、リスト画面にリストアップされた種類名に対応した作業の実行時には、その作業の実行に際して不要となる機能が全て停止された状態に切り替えられるから、不要な電力消費が抑制されるようになり、電池寿命を伸ばす上で有益になる。
【0012】
請求項6記載の発明によれば、表示手段は、リスト画面にリストアップされた種類名に対応した作業が実行される場合に、その作業の実際の進行ペースと、当該作業を完了させるのに必要な標準的な時間を基準にした標準進行ペースとを比較した結果を表示するようになるから、操作者側では、実際の作業進行ペースが標準的なペースより早いのか或いは遅いのか(つまり、現在の電池容量により実行可能な作業量が、増える方向に変化したのか或いは減る方向に変化したのか)を容易に把握できるようになり、実際の使用上において非常に便利になる。
【0013】
請求項7記載の発明によれば、表示手段は、リスト画面にリストアップされた種類名に対応した作業の実行時において、当該作業の実際の進行ペースが標準的な進行ペースより所定の割合以上遅くなった場合には、現時点での電池容量により実行可能な作業量が減少した旨の表示を行うようになるから、操作者側では、電池の消耗によるデータ消失や作業の不用意な中断といった事態に対し早めに対処可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、携帯型の光学的情報読取装置であるハンディターミナル1の電気的構成が機能ブロックの組み合わせにより示されている。この図1において、ハンディターミナル1の主要部である情報読取ユニット2の電源は、図示しない電源スイッチがオンされた状態でバッテリ3(内蔵電池に相当)から安定化電源回路4を介して供給される構成となっている。また、ハンディターミナル1には、動作開始操作を行うためのトリガスイッチ5、並びに複数の操作スイッチ及びテンキースイッチを備えたスイッチパネル6が設けられている。
【0015】
上記情報読取ユニット2は、以下に述べるような構成となっている。
即ち、光学ヘッド部7は、光学的情報(図1にはQRコードを示す)の読み取り対象領域に光を照射するための例えばLEDより成る照明部8と、その読み取り対象領域からの反射光が撮像光学系9を通じて入力される光学的センサ10とにより構成されている。
【0016】
照明部8は、制御部11(電池残量検出手段、消費電力予測手段、抽出手段、動作制御手段に相当)から照明駆動回路12を通じて与えられる制御信号に基づいて駆動される構成となっている。また、光学的センサ10は、CCDエリアセンサなどの2次元半導体撮像素子を利用した周知構成のもので、制御部11からセンサ駆動回路13を通じて与えられる制御信号に基づいて駆動された状態で読み取り対象領域を撮像し、その撮像画像に応じた画像信号を出力する。この光学的センサ10からの画像信号は、信号増幅機能を備えた波形整形部14で波形整形・増幅された後に、図示しないA/D変換部により二値化された状態で制御部11に与えられる。
【0017】
制御部11は、CPU、ROM、RAMなどを含んだマイクロコンピュータを中心に構成されている。この制御部11は、画像データを一時的に記憶するためのメモリ15と共にデコード処理部を構成するものであり、前記トリガスイッチ5及びスイッチパネル6からの各操作信号が入力されるようになっている。また、この制御部11は、バッテリ3の出力電圧を常時において監視し、その監視電圧に基づいて当該バッテリ3の残容量を検出する機能(電池残量検出手段としての機能)を備えた構成となっているが、周知の電池残量検出ICを電池残量検出手段として別途に設け、この電池残量検出手段の出力を制御部11に与える構成としても良いものである。
【0018】
表示部16(表示手段に相当)は、例えば液晶表示パネルにより構成されたもので、制御部11からの表示制御回路17を通じて与えられる表示制御信号に基づいた表示動作を行うようになっている。また、データ出力部18は、制御部11による光学的情報のデコード結果を外部へ出力するために設けられている。尚、データ出力部18は、無線通信装置(例えば無線LAN)により構成されている。
【0019】
前記制御部11は、ハンディターミナル1の動作全般を制御する機能を有しており、図2のフローチャートに示すような制御動作を実行する構成となっている。
即ち、図2に示す制御動作は、図示しない電源スイッチがオンされたときに開始されるものであり、まず、最初に、バッテリ3の残容量つまり電池残量を検出し(ステップS1)、その電池残量が予め設定された規定値以上か否かを判断する(ステップS2)。電池残量が規定値以上ある場合には、トリガスイッチ5がオンされるまで前記ステップS1及びS2を反復実行する(ステップS3)。
【0020】
トリガスイッチ5がオンされたときには、通常時読み取り処理ルーチンS4を実行した後に、ステップS1へリターンする。具体的には、この処理ルーチンS4では、光学的情報の読み取り動作に係る複数の処理を、図3に示すようなシーケンスで実行する構成となっている。
【0021】
即ち、図3の光学的情報読取シーケンスにおいては、露光処理a、画像取込処理b、取込画像デコード処理c、デコードデータ出力処理dという複数種類の作業が順次実行されることになる。具体的には、露光処理aでは、照明駆動回路12を通じて照明部8を駆動することにより読み取り対象領域に光を照射する。画像取込処理bでは、光学的センサ10から波形整形部14及び図示しないA/D変換部を通じて与えられる二値化画像信号に対応した画像データをメモリ15に記憶する。取込画像デコード処理cでは、メモリ15に記憶した画像データに含まれる光学的情報を解析してデコードする。デコードデータ出力処理dでは、取込画像デコード処理cでの解析により得られたデコードデータをデータ出力部18から外部(例えばホストコンピュータ)へ出力する。この場合、画像取込処理bにおいてメモリ15に記憶された画像データは、必要に応じてそのまま蓄積できる構成となっており、また、取込画像デコード処理cでのデコードデータも、必要に応じてメモリ15に蓄積できる構成となっている。
【0022】
電池残量が規定値未満であった場合(ステップS2で「NO」)には、光学的情報の読み取り動作に係る複数の作業を実行するのに必要な消費電力の予測を実行する(ステップS5)。具体的には、この消費電力の予測は、例えば、制御部11に予め記憶されている消費電力テーブルを利用して行うことができる。つまり、この消費電力テーブルは、図3に示した光学的情報読取シーケンスを構成する露光処理a、画像取込処理b、取込画像デコード処理c、デコードデータ出力処理dに係るラベルと対応付けた状態で、各処理a〜dを実行するのに必要な消費電力を記憶した形態となっている。そして、ステップS5では、当該消費電力テーブルにアクセスすることにより、
(1)露光処理a及び画像取込処理b(以下、これら一連の処理を「第1の作業」とも呼ぶ)を完了するのに必要な消費電力、
(2)露光処理a、画像取込処理b、取込画像デコード処理c(以下、これら一連の処理を「第2の作業」とも呼ぶ)を完了するのに必要な消費電力、
(3)全部の処理、つまり露光処理a、画像取込処理b、取込画像デコード処理c、デコードデータ出力処理d(以下、これら一連の処理を「第3の作業」とも呼ぶ)を完了するのに必要な消費電力、
(4)取込画像デコード処理c(以下、この処理を「第4の作業」とも呼ぶ)のみを単独で完了するのに必要な消費電力、
(5)デコードデータ出力処理d(以下、この処理を「第5の作業」とも呼ぶ)のみを単独で完了するのに必要な消費電力、
を予測することになる。
【0023】
消費電力予測処理ステップS5の実行後にはリストアップ処理ルーチンS6を実行する。この処理ルーチンS6では、ステップS2で検出した電池残量とステップS5で予測した第1〜第5の作業をそれぞれ実行するのに必要な各消費電力との比較に基づいて、その検出電池残量(現時点でのバッテリ3の容量)により実行可能な作業の種類をリストアップすると共に、当該作業を実行可能な回数を算出する。
【0024】
このようなリストアップ処理ルーチンS6の実行後には、表示部16に対して、図4に一例を示すような実行可能作業リスト画面を表示する(ステップS7)。即ち、図4において、実行可能作業リスト画面には、そのリスト名が表示されると共に、前記リストアップ処理ルーチンS6で得られたデータ(現在の電池残量で実行可能な作業の種類並びに当該作業の実行可能回数を示すデータ)に基づいて作成した作業開始/終了選択メニューが表示される。具体的には、作業開始/終了選択メニューには、「1」〜「5」のメニュー番号(作業の種類名に相当)とそれぞれ対応付けた状態で、第1の作業〜第5の作業の具体的内容が表示されると共に、各作業の実行可能回数を示すメッセージ(この例では「W回可能」、「X回可能」、「Y回可能」、「Z回可能」:但し、W、X、Y、Zは自然数)、または当該作業が実行不可能である旨を示すメッセージ(この例では「不可」)が表示され、さらに、「6」のメニュー番号と対応付けた状態で「終了」の文字が表示される。尚、上記作業開始/終了選択メニューにおいて、選択操作が可能なメニュー番号(この例では「1」、「2」、「4」、「5」、「6」)には、それらを囲んだ形態の四角枠が表示されるようになっている。
【0025】
上記実行可能作業リスト中の作業開始/終了選択メニューからメニュー番号を選択する操作は、スイッチパネル6のテンキースイッチにより行うものであり、表示部16に対して実行可能作業リストを表示した状態では、メニュー番号の選択操作が行われるまで待機する(ステップS8)。
【0026】
メニュー番号の選択操作が行われたときには、選択されたメニュー番号が作業開始に係るものであるか否かを判断する(ステップS9)。このステップS9で「NO」と判断した場合、つまり、選択されたメニュー番号が作業終了に係るもの(この例では「6」)であったときには、表示部16の表示を初期化するステップS10を実行した後にステップS1へリターンする。
【0027】
これに対して、選択されたメニュー番号が作業開始に係るもの(この例では「1」、「2」、「4」、「5」の何れか)であったときには、トリガスイッチ5がオンされたか否かを判断する(ステップS11)。トリガスイッチ5がオフされたままであった場合には、ステップS8へ戻るが、オンされた場合には、電池消耗時読み取り処理ルーチンS12を実行した後に、ステップS1へリターンする。上記処理ルーチンS12では、選択されたメニュー番号に対応した作業(この例では、第1の作業、第2の作業、第4の作業、第5の作業の何れか)を実行するように制御するものである。具体的には、
(1)メニュー番号「1」が選択されたときには、第1の作業(露光処理a及び画像取込処理b)を実行して、その画像取込処理bで取り込んだ画像データをメモリ15に蓄積する、
(2)メニュー番号「2」が選択されたときには、第2の作業(露光処理a、画像取込処理b、取込画像デコード処理c)を実行して、その取込画像デコード処理cでのデコードデータをメモリ15に蓄積する、
(3)メニュー番号「4」が選択されたときには、第4の作業(取込画像デコード処理c)を実行して、メモリ15に取込済みの画像データに含まれる光学的情報を解析すると共に、これにより得られたデコードデータをメモリ15に蓄積する、
(4)メニュー番号「5」が選択されたときには、第5の作業(デコードデータ出力処理d)を実行して、メモリ15に蓄積されたデコードデータをデータ出力部18から外部へ出力する、
という制御が行われる。
【0028】
これ以外に、メニュー番号「3」を選択可能な状態において当該メニュー番号「3」が選択されたときには、第3の作業(露光処理a、画像取込処理b、取込画像デコード処理c、デコードデータ出力処理d)が実行されることになる。
尚、電池消耗時読み取り処理ルーチンS12の実行前には、表示部16での実行可能作業リストの表示を終了して所定の作業開始画面及び読み取り結果出力画面を表示することが望ましい。
【0029】
要するに、上記した本実施例によれば、制御部11は、電池残量(バッテリ3の残容量)の検出動作を行い、検出した電池残量が規定値以上ある状態時には、トリガスイッチ5のオン操作に応じて、光学的情報の読み取り、解析及び解析結果の外部への出力を含む一連の処理(図3のa〜d)を実行する。
【0030】
これに対して、検出した電池残量が規定値未満であった場合には、光学的情報の読み取りや解析などに関連した第1〜第5の作業毎に当該作業を完了させるために必要となる消費電力の予測を行い、その予測した消費電力と前記検出電池残量に基づいて、現時点でのバッテリ3の容量により実行可能な作業の種類名をリストアップすると共に、その種類名に対応したメニュー番号を含む実行可能作業リスト画面(図4参照)を表示部16に表示する。そして、制御部11は、このように表示された実行可能作業リスト画面に基づいて、作業種類名の選択操作(メニュー番号の選択操作)が行われたときには、選択操作された作業トリガスイッチ5のオン操作に応じて実行するようになる。つまり、使用者側では、上記実行可能作業リスト画面に基づいて、現時点の電池残量でどのような種類の作業を実行可能であるかを極めて容易に把握できるようになり、また、リスト画面に表示された作業種類名の選択操作及びトリガスイッチ5のオン操作を行うだけで、現時点で実行可能な作業を開始させることができるから、バッテリ3の消耗によるデータ消失や作業の不用意な中断といった事態の発生を未然に且つ確実に防止できることになる。
【0031】
しかも、表示部16に表示される実行可能作業リスト画面中には、リストアップされたメニュー番号(現時点での電池容量により実行可能な作業の種類名に相当)と対応付けた状態で、当該メニュー番号に対応した作業についての実行可能回数も表示されるから、バッテリ3が消耗した状況下において同一の作業を複数回続けて実行できるか否かを判断する必要がある場合に非常に有用になる。
【0032】
本実施例によれば、第1の作業(露光処理a及び画像取込処理b)のみを実行して、その画像取込処理bで取り込んだ画像データをメモリ15に蓄積しておくこと、並びに、第2作業(露光処理a、画像取込処理b、取込画像デコード処理c)のみを実行して、その取込画像デコード処理cでのデコードデータをメモリ15に蓄積しておくこと、が可能であるから、バッテリ3の容量が低下している状態においては、消費電力が相対的に少なくて済む第1の作業或いは第2の作業のみを連続して行い、その後に、バッテリ3の交換や電源アダプタの接続などを行った状態で、メモリ15に蓄積された画像データの解析作業(第4の作業)や、メモリ15に蓄積されたデコードデータをデータ出力部18から外部へ出力する作業(第5の作業)を実行するといった使用形態を実現できる。このため、現場でのハンディターミナル1の使用時において、バッテリ3の容量が不足した状態となったときには、どうしても済ませておきたい光学的情報の読み取り動作のみを緊急的に実行し、その後にバッテリ3の容量不足に対処した上で、読み取った光学的情報の解析及び解析結果の出力を行う、という使用形態を実現できることになり、結果的に、実際の使用上において非常に便利になる。
【0033】
(その他の実施の形態)
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば以下に述べるような変形或いは拡大が可能である。
例えば、メモリ15を、複数種類の作業に係る過去の実行回数を示す履歴データを蓄積する作業履歴記憶手段として機能させ、制御部11に対して、メモリ15に蓄積された履歴データにより示される実行回数が相対的に多い作業に対応した種類名を優先的にリストアップすると共に、当該リストアップ作業種類名を実行可能作業リスト画面に表示する機能を付加した構成としても良い。この構成によれば、実行可能作業リスト画面には、実際に実行されることが多いと想定される作業種類名が表示されることになるから、実用上において非常に有用になる。尚、作業履歴記憶手段として、上記メモリ15に代えて、例えばフラッシュメモリのようなデータ書換え可能な不揮発性メモリより成る補助メモリを利用する構成としても良い。
【0034】
また、メモリ15を、過去に実行された作業について、その作業の完了までに消費された電力を示す実績データを当該作業の種類毎に区分して記憶した消費電力記憶手段として機能させ、制御部11に対して、メモリ15に記憶された実績データを利用して各作業の完了に必要な消費電力の予測を実行する機能を付加した構成としても良い。この構成によれば、複数種類の作業毎に当該作業を完了させるために必要となる消費電力の予測が、過去に実行された作業の完了までに消費された電力を示す実績データが利用して行われるから、当該消費電力の予測を正確に行い得るようになり、実行可能作業リスト画面の信頼性が向上するようになる。尚、消費電力憶手段として、上記メモリ15に代えて、例えばフラッシュメモリのようなデータ書換え可能な不揮発性メモリより成る補助メモリを利用する構成としても良い。
【0035】
制御部11は、実行可能作業リスト画面に基づいて選択操作された種類名に対応した作業の実行時には、当該作業の実行に際して不要となる機能を全て停止させた状態に切り替える制御を行う構成であっても良い。この構成によれば、実行可能作業リスト画面にリストアップされた種類名に対応した作業の実行時には、その作業の実行に際して不要となる機能が全て停止された状態に切り替えられるから、不要な電力消費が抑制されるようになり、バッテリ3の寿命を伸ばす上で有益になる。
【0036】
光学的情報の読み取りに係る各作業実行時には、表示部16に対して、その作業の実際の進行ペースと、当該作業を完了させるのに必要な標準的な時間を基準にした標準進行ペースとを比較した結果を表示する構成としても良い。この構成によれば、操作者側では、実際の作業進行ペースが標準的なペースより早いのか或いは遅いのか(つまり、現在のバッテリ3の容量により実行可能な作業量が、増える方向に変化したのか或いは減る方向に変化したのか)を容易に把握できるようになり、実際の使用上において非常に便利になる。
【0037】
光学的情報の読み取りに係る各作業実行時には、表示部16に対して、その作業の実際の進行ペースと、当該作業を完了させるのに必要な標準的な時間を基準にした標準進行ペースとを比較し、実際の進行ペースが標準進行ペースより所定の割合以上遅くなった場合には、現時点での電池容量により実行可能な作業量が減少した旨を表示する構成としても良い。この構成によれば、操作者側では、バッテリ3の消耗によるデータ消失や作業の不用意な中断といった事態に対し早めに対処可能になる。
実行可能な作業の種類として、取込画像デコード処理cでの解析処理中の画像データをメモリ15に蓄積する作業を設定する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ハンディターミナルの電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】制御部の制御内容を示すフローチャート
【図3】光学的情報読取シーケンスを示す図
【図4】実行可能作業リスト画面の一例を示す図
【符号の説明】
【0039】
1はハンディターミナル(光学的情報読取装置)、2は情報読取ユニット、3はバッテリ(内蔵電池)、5はトリガスイッチ、7は光学ヘッド部、11は制御部(電池残量検出手段、消費電力予測手段、抽出手段、動作制御手段)、15はメモリ、16は表示部(表示手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵電池からの供給電力によって複数種類の作業を実行可能に構成された光学的情報読取装置において、
前記電池の残容量を検出する電池残量検出手段と、
前記複数種類の作業毎に当該作業を完了させるために必要となる消費電力の予測を実行する消費電力予測手段と、
前記電池残量検出手段による検出結果と前記消費電力予測手段による予測結果とに基づいて、現時点での電池容量により実行可能な作業の種類名をリストアップする抽出手段と、
前記抽出手段によりリストアップされた種類名をリスト画面として表示する表示手段と、
前記表示手段に表示されたリスト画面に基づいて選択操作された種類名に対応した作業を実行する動作制御手段と、
を備えたことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記複数種類の作業に係る過去の実行回数を示す履歴データを蓄積した作業履歴記憶手段を備え、
前記抽出手段は、前記作業履歴記憶手段に蓄積された履歴データにより示される実行回数が相対的に多い作業に対応した種類名を優先的にリストアップすることを特徴とする請求項1記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
過去に実行された作業について、その作業の完了までに消費された電力を示す実績データを当該作業の種類毎に区分して記憶した消費電力記憶手段を備え、
前記消費電力予測手段は、前記消費電力記憶手段に記憶された実績データを利用して前記消費電力の予測を実行することを特徴とすることを特徴とする請求項1または2記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、現時点での電池容量により実行可能な作業の種類名をリストアップすると同時に、当該リストアップした種類名に対応した作業についての実行可能回数を、前記電池残量検出手段による検出結果と前記消費電力予測手段による予測結果とに基づいて判定して出力するように構成され、
前記表示手段は、前記リスト画面中に表示された種類名と関連付けた状態で、当該種類名に対応した作業について前記抽出手段から出力された実行可能回数を表示することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記動作制御手段は、前記リスト画面に基づいて選択操作された種類名に対応した作業の実行時には、当該作業の実行に際して不要となる機能を全て停止させた状態に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記動作制御手段による作業実行時には、その作業の実際の進行ペースと、当該作業を完了させるのに必要な標準的な時間を基準にした標準進行ペースとを比較した結果を表示することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記動作制御手段による作業実行時には、その作業の実際の進行ペースと、当該作業を完了させるのに必要な標準的な時間を基準にした標準進行ペースとを比較し、実際の進行ペースが標準進行ペースより所定の割合以上遅くなった場合には、現時点での電池容量により実行可能な作業量が減少した旨を表示することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
実行可能な作業の種類として、一連の光学的情報読取シーケンスを構成する画像取込処理、取込画像デコード処理、デコードデータ出力処理のうち、取込画像デコード処理でデコードしたデータを蓄積する作業が設定されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項9】
実行可能な作業の種類として、一連の光学的情報読取シーケンスを構成する画像取込処理、取込画像デコード処理、デコードデータ出力処理のうち、取込画像デコード処理での解析処理中の画像データを蓄積する作業が設定されていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光学的情報読取装置。
【請求項10】
実行可能な作業の種類として、一連の光学的情報読取シーケンスを構成する画像取込処理、取込画像デコード処理、デコードデータ出力処理のうち、画像取込処理で取り込んだ画像データを蓄積する作業が設定されていることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の光学的情報読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−4544(P2007−4544A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184824(P2005−184824)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】