説明

光学積層フィルム、偏光板および光学製品

透明樹脂を含んでなる基材フィルムの片面に、直接または他の層を介してハードコート層およびエアロゲルからなる低屈折率層をこの順に積層してなり、ハードコート層の屈折率をn、低屈折率層の屈折率をnとしたとき、以下の式[1]、[2]および[3]を満たす光学積層フィルム。
式[1]:n≦1.37
式[2]:n≧1.53
式[3]:√n−0.2<n<√n+0.2
この光学積層フィルムは、光学部材の反射防止保護フィルム、特に偏光板保護フィルムとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層フィルムに関し、さらに詳しくは、効率よく低光反射率を実現できる低屈折率層を積層した、光学部材の反射防止保護フィルムや偏光板保護フィルムなどとして有用な光学積層フィルムに関する。さらには、この光学積層フィルムを用いた反射防止機能付偏光板、およびこの偏向板を備えた光学製品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(以下、「LCD」と記す)用の偏光フィルムには、映り込み防止のために、低屈折率層を設ける加工処理が施されることがある。特に、野外などに用いられるLCDにおける偏光フィルムでは、高性能の反射防止機能の付与が求められている。そこで、基材フィルムの表面に多層膜または単層膜の低屈折率層を形成することが行われている。
【0003】
多層膜の低屈折率層としては、相対的に高屈折率を有する膜と相対的に低屈折率を有する膜とをこの順に積層したもの(例えば、特許文献1を参照)がある。
【0004】
膜を形成する方法について、ゾルゲル法、真空蒸着法、スパッタリング法、化学気相析出法などが挙げられるが、いずれも高温や真空を伴う工程が含まれ、とりわけ基材を高温にする工程が含まれる場合には、高温プロセスにおいて樹脂基材が変形・変質が生じるおそれがあり、また膜の光学特性を変化させ、所望の反射防止膜を形成することが困難であった。また、真空成膜プロセスでは真空装置内で樹脂からガスが放出されるために膜の形成に必要な高真空が得られなくなって、所望の特性の反射防止膜を形成することが困難であった。
【0005】
さらに、低屈折率層を2以上の膜から構成する場合には、膜のコーティング操作が2回以上必要なために工程が複雑となるうえに、製造コストが高い、膜厚制御が困難である、低光反射率を達成することが困難であるなどの問題がある。
【0006】
単層膜の低屈折率層としては、ガラス上にゾルゲル法で多成分の金属酸化物膜を形成し、次いで多成分の金属酸化物膜を加熱処理により分相させ、その後、分相した金属酸化物膜を弗化水素酸でエッチングして各相のエッチング速度の差を利用して多孔質化したもの(例えば、非特許文献1を参照)や、ガラス上にゾルゲル法により酸化マグネシウムと二酸化炭素との複合膜を形成させた後、高温でフッ素を含有するガス中にさらして酸素をフッ素と置換したもの(例えば、非特許文献2を参照)がある。
【0007】
他に、特許文献2には、アミノ基を有する有機珪素化合物を少なくとも含む1種以上の有機珪素化合物もしくはその加水分解物を含有する塗布液を樹脂基材の表面に塗布し、前記塗布液を乾燥することにより樹脂基材の表面に第一次被膜を形成し、前記第一次被膜の上に屈折率が1.40以下であり、表面が凹凸形状である二酸化珪素膜を形成させたことを特徴とする低反射樹脂基材が記載されている。特許文献2によれば、低温プロセスで、密着性良く樹脂基材の全面に同時に形成することができると記載されている。
【0008】
しかしながら、該公報に記載されている低反射樹脂基材を特に液晶表示装置に使用すると、視認性(例えば、輝度)が悪くなったり、明暗表示のコントラストが悪くなったりすることがある。そこで更なる改善が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開平4−357134号公報
【特許文献2】特開2002−328202号公報
【非特許文献1】S.P.Mukherjeeら、J.Non−Cryst.Solids,Vol.48,p177(1982)
【非特許文献2】J.H.Simmonsら、J.Non−Cryst.Solids,Vol.178,p166(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、従来のものよりも、光反射率が低く、グレアや映り込みが少なく、視認性に優れ、さらに液晶表示装置に用いたとき、明暗表示でのコントラストに優れる光学積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして本発明によれば、
(1)透明樹脂を含んでなる基材フィルムの片面に、直接または他の層を介してハードコート層およびエアロゲルからなる低屈折率層をこの順に積層してなり、ハードコート層の屈折率をn、低屈折率層の屈折率をnとしたとき、以下の式[1]、[2]および[3]を満たす光学積層フィルム;
式[1]:n≦1.37
式[2]:n≧1.53
式[3]:√n−0.2<n<√n+0.2
(2)ハードコート層の屈折率nおよび低屈折率層の屈折率nが、以下の式[4]、[5]および式[6]の関係を満たす前記(1)に記載の光学積層フィルム;
式[4]:1.25≦n≦1.35
式[5]:n≧1.55
式[6]:√n−0.15<n<√n+0.15
(3)波長550nmにおける反射率が0.7%以下で、波長430〜700nmにおける反射率が1.5%以下である前記(1)または(2)に記載の光学積層フィルム;
(4)基材フィルムのダイラインの深さまたは高さが0.1μm以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学積層フィルム;
(5)透明樹脂が、脂環式構造を有する重合体樹脂、セルロース樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる樹脂である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学積層フィルム;
(6)透明樹脂が、脂環式構造を有する重合体樹脂である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学積層フィルム;
(7)光学部材の反射防止保護フィルムである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学積層フィルム;
(8)偏光板保護フィルムである前記(7)に記載の光学積層フィルム;
(9)前記(8)記載の偏光板保護フィルムの低屈折率層が設けられている面の反対側の面に偏光膜を積層してなる反射防止機能付偏光板;および
(10)前記(9)記載の反射防止機能付偏光板を備える光学製品がそれぞれ提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光反射率が低く、グレアや映り込みが少なく、視認性に優れ、さらに液晶表示装置に用いたとき、明暗表示でのコントラストに優れる光学積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光学積層フィルムの層構成断面図である。
【図2】本発明の反射防止機能付偏光板の層構成断面図である。
【図3】本発明の反射防止機能付偏光板を液晶表示セルに貼り合せた層構成断面図である。
【図4】図3に示す液晶表示セルの層構成断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の光学積層フィルムの基材フィルムに使用する透明樹脂としては、1mm厚における全光線透過率が80%以上のものが用いられる。樹脂の種類は、特に制限されず、例えば、脂環式構造を有する重合体樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリエステル系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリエーテルスルホン系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、アシル変性セルロース系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体およびポリメタクリレート系重合体、などが挙げられる。これらの重合体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、透明性に優れ、複屈折が小さい点で、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、トリアセチルセルロース、ブチリルセルロースなどのアシル変性セルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、および脂環式構造を有する重合体樹脂が好ましく、透明性および軽量性の観点から、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレートおよび脂環式構造を有する重合体樹脂がより好ましい。寸法安定性および膜厚制御性の観点から、ポリエチレンテレフタレートおよび脂環式構造を有する重合体樹脂が特に好ましい。
【0015】
脂環式構造を有する重合体樹脂は、主鎖および/または側鎖に脂環式構造を有するものであり、中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
【0016】
脂環式構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度および耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造およびシクロアルケン構造が好ましい。中でも、シクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性およびフィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこのように大きいと基材フィルムの透明性および耐熱性が高くなる。
【0017】
脂環式構造を有する重合体樹脂としては、具体的には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、およびこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性および成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
【0018】
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、およびそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素添加物が特に好ましい。
【0019】
上記の脂環式構造を有する重合体樹脂は、例えば特開2002−321302号公報などに開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0020】
基材フィルムに使用する透明樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃の範囲である。ガラス転移温度がこのように高い透明樹脂からなる基材フィルムは、高温下での使用における変形や応力が生じることがなく耐久性に優れる。
【0021】
基材フィルムに使用する透明樹脂の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは25,000〜80,000、より好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度および成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0022】
透明樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1.0〜10.0、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
【0023】
本発明の光学積層フィルムに使用する基材フィルムは、透明樹脂の他に配合剤を含んでいてもよい。配合剤としては、格別限定はないが、例えば、無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料および顔料などの着色剤;帯電防止剤などが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができる。その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、透明樹脂100重量部に対して、通常0〜5重量部、好ましくは0〜3重量部である。
【0024】
基材フィルムの膜厚は、機械的強度などの観点から、好ましくは30〜300μm、より好ましくは40〜200μmである。
【0025】
また、基材フィルムの膜厚は均一であることが好ましく、具体的には、基材フィルム全幅にわたって膜厚変動が膜厚の3%以内であることが好ましい。基材フィルムの膜厚変動が膜厚の3%以内であることにより、ハードコート層の密着性およびその上に積層する低屈折率層の表面平滑性を向上させることができる。
【0026】
基材フィルムのダイラインの深さまたは高さは、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがさらに好ましい。基材フィルムのダイラインの深さまたは高さを小さくすることにより、本発明の光学積層フィルムを偏光板保護フィルムとして使用したとき、ダイラインが目立たず、視認性に優れる。
【0027】
ダイラインは、非接触式の3次元表面形状・粗さ測定機を用いて測定することができる。
【0028】
基材フィルムの揮発性成分の含有量は、0.1重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以下であることがさらに好ましい。基材フィルムの揮発性成分の含有量がこのように少ないと、基材フィルムの寸法安定性が向上し、ハードコート層を積層する際の積層むらを小さくすることができる。加えて、フィルム全面にわたって均質な低屈折率層を形成させることができる。その結果、フィルム全面にわたってむらのない反射防止効果が得られる。
【0029】
揮発性成分は、基材フィルムに微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、透明樹脂に含まれる分子量200以下の物質の合計として、基材フィルムをガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
【0030】
基材フィルムの飽和吸水率は、好ましくは0.01重量%以下、より好ましくは0.007重量%以下である。飽和吸水率が0.01重量%を超えると、ハードコート層と基材フィルムとの密着性、およびハードコート層と低屈折率層との密着性が低くなり、長期間の使用において低屈折率層の剥離が生じやすくなる。
【0031】
基材フィルムの飽和吸水率は、ASTM D530に従い、23℃で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求めることができる。
【0032】
基材フィルムとして、片面または両面に表面改質処理を施したものを使用してもよい。表面改質処理を行うことにより、ハードコート層との密着性を向上させることができる。表面改質処理としては、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。
【0033】
エネルギー線照射処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理などが挙げられ、処理効率の点などから、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。
【0034】
薬品処理の好ましい方法としては、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸などの酸化剤水溶液中に、浸漬し、その後充分に水で洗浄する方法が採られる。浸漬した状態で振盪すると浸漬効果は増大する。長時間処理すると表面が溶解したり、透明性が低下したりするといった問題があり、用いる薬品の反応性、濃度などに応じて、処理時間などを調整すればよい。
【0035】
基材フィルムを成形する方法としては、溶液キャスティング法または溶融押出成形法が挙げられる。中でも、基材フィルム中の揮発性成分の含有量や厚さムラを少なくできる点から、溶融押出成形法が好ましい。さらに溶融押出成形法としては、ダイスを用いる方法やインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
【0036】
Tダイを用いる溶融押出成形法を採用する場合、Tダイを有する押出機における透明樹脂の溶融温度は、透明樹脂のガラス転移温度よりも80〜180℃高い温度にすることが好ましく、ガラス転移温度よりも100〜150℃高い温度にすることがより好ましい。押出機での溶融温度が過度に低いと透明樹脂の流動性が不足するおそれがあり、逆に、溶融温度が過度に高いと樹脂が劣化する可能性がある。
【0037】
本発明に使用する基材フィルムのダイラインの深さまたは高さを0.1μm以下にするための手段としては、(1)ダイリップの先端部にクロム、ニッケル、チタンなどのメッキが施されたダイスを用いる、(2)ダイリップの内面にPVD(Phisical Vapor Deposition)法などにより、TiN、TiAlN、TiC、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜が形成されたダイスを用いる、(3)ダイリップの先端部にその他のセラミックスが溶射されたダイスを用いる、(4)ダイリップの先端部の表面を窒化処理したダイスを用いる方法が挙げられる。
【0038】
このようなダイスは、表面硬度が高く、樹脂との摩擦が小さいため、得られる基材フィルムに、焼けゴミなどが混入することを防止することができると共に、ダイラインの深さまたは高さを0.1μm以下にすることができる。
【0039】
さらに表面精度の良いダイスを用いることにより、厚みむらを小さくすることが可能である。表面の微視的凹凸に関する表面粗さは、「平均高さRa」によって表すことができ、ダイス内面特にダイリップの先端部の平均高さRaが好ましくは0.2μm以下、より好ましくはRaが0.1μm以下である。
【0040】
平均高さRaとは、JIS B 0601−2001によって定義される「算術平均高さRa」と同様のものであり、具体的には、測定曲線をカットオフ値0.8mmで位相補償型高域フィルターを通して粗さ曲線を求め、この粗さ曲線からその平均線の方向に一定の基準長さを抜き取り、この抜き取り部分の平均線から粗さ曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均することにより求められる。
【0041】
基材フィルムのダイラインの深さまたは高さを0.1μm以下にするためのその他の手段としては、ダイリップに付着しているもの(例えば、ヤケやごみ)を取り除く;ダイリップの離型性をあげる;ダイリップのぬれ性を全面にわたり均一にする;樹脂ペレットの溶存酸素量および/または樹脂粉を少なくする;溶融押出し機内にポリマーフィルターを設置する;などの方法が挙げられる。
【0042】
また、基材フィルムの揮発性成分の含有量を少なくするための手段としては、(1)透明樹脂自体として、揮発性成分量が少ないものを用いる、(2)溶融押出成形法により基材フィルムを成形する、(3)フィルムを成形する前に用いる透明樹脂を予備乾燥するなどの手段が挙げられる。予備乾燥は、例えば原料をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などで行われる。乾燥温度は100℃以上が好ましく、乾燥時間は2時間以上が好ましい。予備乾燥を行うことにより、フィルム中の揮発成分量を低減させることができ、さらに、押し出す透明樹脂の発泡を防ぐことができる。
【0043】
本発明の光学積層フィルムを構成するハードコート層は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験(試験板はガラス板)で「2H」以上の硬度を示す材料から形成される。この硬度を有する材料であれば、特に制限されない。その具体例としては、有機系シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの有機ハードコート材料;および、二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料;などが挙げられる。なかでも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、ウレタンアクリレート系および多官能アクリレート系ハードコート材料の使用が好ましい。
【0044】
本発明においては、光反射率が低く、かつ耐擦傷性に優れる光学積層フィルムを得るためには、ハードコート層の屈折率nが、その上に積層する低屈折率層の屈折率nとの間に、下記関係式[2]および[3]を満たすことが必要であり、下記関係式[5]および[6]を満たすことが好ましい。ハードコート層の屈折率nが下記式[2]を満たさない場合は、その上に積層する低屈折率層の設計が難しくなり、低屈折率層がもろくなってしまう。
式[2]:n≧1.53
式[3]:√n−0.2<n<√n+0.2、
式[5]:n≧1.55
式[6]:√n−0.15<n<√n+0.15
【0045】
ハードコート層には、所望により、ハードコート層の屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、耐熱性、帯電防止性、防眩性などの向上を図る目的で、例えば、シリカ、アルミナ、水和アルミナなどの各種フィラーを含有せしめてもよい。さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤などの各種添加剤を配合することもできる。
【0046】
ハードコート層にフィラーを含有させる場合において、屈折率や帯電防止性を調整する場合には、各種フィラーの中でもハードコート層の屈折率や帯電防止性を容易に調整可能であるという点で、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、5酸化アンチモン、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)が好ましく、透明性を維持できるという点から五酸化アンチモン、ITO、IZO、ATO、FTOがさらに好ましい。これらのフィラー粒子の大きさは、一次粒子径が1nm以上であり、かつ100nm以下、好ましくは30nm以下である。
【0047】
ハードコート層にフィラーを含有させる場合において、防眩性を付与する場合には、平均粒径が0.5〜10μmのものが好ましく、1〜7μmのものがより好ましい。防眩性を付与するフィラーの具体例としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、フッ化ビニリデン樹脂およびその他のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの有機樹脂フィラー;または酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫、酸化ジルコニウム、ITO、フッ化マグネシウム、酸化ケイ素などの無機フィラーが挙げられる。
【0048】
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、例えば、ハードコート層形成用塗工液を公知の塗工方法により基材フィルム上に塗工して、加熱または紫外線照射により、硬化させて形成する方法が挙げられる。
【0049】
ハードコート層の厚さは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは3〜15μmである。ハードコート層の厚さが薄すぎると、その上に形成する各層の硬度を維持できなくなり、逆に、厚すぎると光学積層フィルム全体の柔軟性が低下し、硬化に時間がかかり生産効率の低下を招くおそれがある。
【0050】
本発明の光学積層フィルムの低屈折率層はエアロゲルから構成される。エアロゲルとしては、低屈折率層の屈折率nが、下記式[1]および[3]を満たすものであれば特に制限されない。
式[1]:n≦1.37
式[3]:n√−0.2<n<√n+0.2
ここで、nは、ハードコート層の屈折率である。
特に、下記関係式[4]および[6]が満たされることが好ましい。
式[4]:1.25≦n≦1.35
式[6]:√n−0.15<n<√n+0.15
【0051】
低屈折率層の構成は、少なくとも1層からなればよく、多層でもよい。低屈折率層が多層からなる場合は、少なくともハードコート層に一番近い層の屈折率がnが上記各式を満たせばよい。
【0052】
エアロゲルは、マトリックス中に微小な気泡が分散した透明性多孔質体である。気泡の大きさは大部分が200nm以下であり、気泡の含有量は、通常10〜60体積%、好ましくは20〜40体積%である。
【0053】
微小な気泡が分散したエアロゲルの具体例としては、シリカエアロゲルおよび中空粒子がマトリックス中に分散された多孔質体が挙げられる。
【0054】
シリカエアロゲルは、米国特許第4,402,927号公報、米国特許第4,432,956号公報および米国特許第4,610,863号公報などに開示されているように、アルコキシシランの加水分解重合反応によって得られたシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、アルコールあるいは二酸化炭素などの溶媒(分散媒)の存在下で、この溶媒の臨界点以上の超臨界状態で乾燥することによって製造することができる。超臨界乾燥は、例えばゲル状化合物を液化二酸化炭素中に浸漬し、ゲル状化合物が含む溶媒の全部または一部をこの溶媒よりも臨界点が低い液化二酸化炭素に置換し、この後、二酸化炭素の単独系、あるいは二酸化炭素と溶媒との混合系の超臨界条件下で乾燥することによって、行うことができる。また、シリカエアロゲルは、米国特許第5,137,279号公報、米国特許5,124,364号公報などに開示されているように、ケイ酸ナトリウムを原料として、上記と同様にして製造してもよい。
【0055】
ここで、特開平5−279011号公報および特開平7−138375号公報に開示しているように、上記のようにしてアルコキシシランの加水分解、重合反応によって得られたゲル状化合物を疎水化処理することによって、シリカエアロゲルに疎水性を付与することが好ましい。このように疎水性を付与した疎水性シリカエアロゲルは、湿気や水などが浸入し難くなり、シリカエアロゲルの屈折率や光透過性などの性能が劣化することを防ぐことができる。
【0056】
この疎水化処理の工程は、ゲル状化合物を超臨界乾燥する前、あるいは超臨界乾燥中に行うことができる。疎水化処理は、ゲル状化合物の表面に存在するシラノール基の水酸基を疎水化処理剤の官能基と反応させ、疎水化処理剤の疎水基と置換させることによって疎水化するために行うものである。疎水化処理を行う手法としては、疎水化処理剤を溶媒に溶解させた疎水化処理液中にゲルを浸漬し、混合するなどしてゲル内に疎水化処理剤を浸透させた後、必要に応じて加熱して、疎水化反応を行わせる方法があげられる。
【0057】
疎水化処理に用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルジシロキサンなどを挙げることができるが、疎水化処理剤が容易に溶解し、かつ、疎水化処理前のゲルが含有する溶媒と置換可能なものであればよく、これらに限定されるものではない。
【0058】
また後の工程で超臨界乾燥が行われる場合、超臨界乾燥の容易な媒体、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、液化二酸化炭素などと同一種類もしくはそれと置換可能なものが好ましく用いられる。また、疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0059】
シリカエアロゲルの屈折率は、シリカエアロゲルの原料配合比によって自由に変化させることができる。
【0060】
低屈折率層がシリカアエロゲルである場合の、形成方法は特に制限されず、例えば、ハードコート層の上に前記ゲル状化合物を公知の塗工方法により塗工して、前記の超臨界乾燥を行って形成する方法が挙げられる。また、超臨界乾燥前または超臨界乾燥中に疎水化処理を行ってもよい。超臨界乾燥は、例えば、前記ゲル状化合物を液化二酸化炭素中に浸漬し、該ゲル状化合物を含む溶媒の全部または一部をこの溶媒よりも臨界点が低い液化二酸化炭素に置換し、この後、二酸化炭素の単独系、あるいは二酸化炭素と溶媒との混合系の超臨界条件下で乾燥を行うことによって行うことができる。
【0061】
中空粒子がマトリックス中に分散された多孔質体としては、特開2001−233611号公報および特開2003−149642号公報に開示されているような、微粒子の内部に空隙を持つ中空微粒子をバインダー樹脂に分散させた多孔質体が挙げられる。
【0062】
バインダー樹脂としては中空微粒子の分散性、多孔質体の透明性、多孔質体の強度などの条件に適合する樹脂などから選択して用いることができ、例えば従来から用いられているポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変性体などの塗料用樹脂、またはアルコキシシランなどの加水分解性有機珪素化合物およびその加水分解物などが挙げられる。
【0063】
これらの中でも微粒子の分散性、多孔質体の強度からアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルコキシシランなどの加水分解性有機珪素化合物、およびその加水分解物が好ましい。
【0064】
本発明において、低屈折率層として中空粒子がマトリックス中に分散された多孔質体を用いる場合には、低屈折率層の反射特性や防汚性を向上させることから、上記樹脂にフッ素樹脂を混合してもよい。
【0065】
フッ素樹脂は結晶による光の散乱が実質的にない非晶性の含フッ素重合体であれば何ら限定されないが、中でもテトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン=37〜48重量%/15〜35重量%/26〜44重量%の3元共重合体などの非晶性のフルオロオレフィン系共重合体、および含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が機械的特性に優れるため好ましい。
【0066】
前記アルコキシシランなどの加水分解性有機珪素化合物およびその加水分解物は、下記(a)〜(c)からなる群から選ばれる1種以上の化合物から形成されたものであって、分子中に、−(O−Si)−O−(式中、mは自然数を表す。)結合を有するものである。
(a)式(i):SiX表される化合物(以下、化合物(i)という)。
(b)前記化合物(i)の少なくとも1種の部分加水分解生成物(以下、化合物(ii)という)。
(c)前記化合物(i)の少なくとも1種の完全加水分解生成物(以下、化合物(iii)という)。
【0067】
前記(a)の化合物(i)において、Xは、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;置換基を有していてもよい一価の炭化水素基;酸素原子;酢酸根、硝酸根などの有機酸根;アセチルアセトナートなどのβ−ジケトナート基;硝酸根、硫酸根などの無機酸根;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基などのアルコキシ基;または水酸基を表す。
【0068】
これらの中でも、化合物(i)としては、式(i)−1:RSiY4−a〔式中、Rは置換基を有していてもよい一価の炭化水素基を表し、aは0〜2の整数を表し、aが2のとき、Rは同一であっても相異なっていてもよい。Yは加水分解性基を表し、Yは同一であっても相異なっていてもよい。〕で表されるケイ素化合物(以下、化合物(i)−1という)が好ましい。
【0069】
置換基を有していてもよい一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などの置換基を有していてもよいアリール基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基などのアラルキル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基などのハロアルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘプタデカフルオロデシル基、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロオクチル基などのパーフルオロアルキル基;γ−メタクリロキシプロピル基などのアルケニルカルボニルオキシアルキル基;γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などのエポキシ基を有するアルキル基;γ−メルカプトプロピル基などのメルカプト基を有するアルキル基;3−アミノプロピル基などのアミノ基を有するアルキル基;などを例示することができる。これらの中でも、合成の容易性、入手容易性、低反射特性から、炭素数1〜4のアルキル基、パーフルオロアルキル基、フェニル基が好ましい。
【0070】
前記式(i)−1においてYは加水分解性基を表す。ここで、加水分解性基は、所望により酸または塩基触媒の存在下に加水分解して、−(O−Si)−O−結合を生じせしめる基をいう。
【0071】
加水分解性基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基などのアシルオキシ基;オキシム基(−O−N=C−R’(R’’))、エノキシ基(−O−C(R’)=C(R’’)R’’’)、アミノ基、アミノキシ基(−O−N(R’)R’’)、アミド基(−N(R’)−C(=O)−R’’)などが挙げられる。これらの基において、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立して水素原子または一価の炭化水素基を表す。これらの中でも、Yとしては、入手容易性などからアルコキシ基が好ましい。
【0072】
化合物(i)−1としては、式(i)−1中、aが0〜2の整数であるケイ素化合物が好ましい。その具体例としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、オキシムシラン類、エノキシシラン類、アミノシラン類、アミノキシシラン類、アミドシラン類などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易さからアルコキシシラン類がより好ましい。
【0073】
式(i)−1中、aが0であるテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを例示でき、aが1であるオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどを例示できる。また、aが2であるジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどを例示できる。
【0074】
化合物(i)−1の分子量は特に制限されないが、40〜300であるのが好ましく、100〜200であるのがより好ましい。
【0075】
化合物(i)の少なくとも1種の部分加水分解生成物である化合物(ii)、および化合物(i)の少なくとも1種の完全加水分解生成物である化合物(iii)は、化合物(i)の1種またはそれ以上を、全部または部分的に加水分解、縮合させることによって得ることができる。
【0076】
化合物(ii)および化合物(iii)は、例えば、Si(Or)(rは1価の炭化水素基を表す。)で表される金属テトラアルコキシドを、モル比[HO]/[Or]が1.0以上、例えば1.0〜5.0、好ましくは1.0〜3.0となる量の水の存在下、加水分解して得ることができる。加水分解は、5〜100℃の温度で、2〜100時間、全容を撹拌することにより行うことができる。
【0077】
化合物(i)を加水分解する場合、必要に応じて触媒を使用してよい。使用する触媒としては、特に限定されるものではないが、得られる部分加水分解物および/あるいは加水分解物が2次元架橋構造になりやすく、その縮合化合物が多孔質化しやすい点、および加水分解に要する時間を短縮する点から、酸触媒が好ましい。
【0078】
用いる酸触媒としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸;塩酸、硝酸、ハロゲン化シランなどの無機酸;酸性コロイダルシリカ、酸化チタニアゾルなどの酸性ゾル状フィラー;を挙げることができる。これらの酸触媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
また、前記酸触媒の代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、アンモニア水、アミン類の水溶液などの塩基触媒を用いてもよい。
【0080】
化合物(ii)および化合物(iii)の分子量は特に制限されないが、通常、その重量平均分子量が200〜5000の範囲である。
【0081】
中空微粒子は無機化合物の微粒子であれば、特に制限されないが、外殻の内部に空洞が形成された無機中空微粒子が好ましく、シリカ系中空微粒子の使用が特に好ましい。
【0082】
無機化合物としては、無機酸化物が一般的である。無機酸化物としては、SiO、Al、B、TiO、ZrO、SnO、Ce、P、Sb、MoO、ZnO、WOなどの1種または2種以上を挙げることができる。2種以上の無機酸化物として、TiO−Al、TiO−ZrO、In−SnO、Sb−SnOを例示することができる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
無機中空微粒子としては、(A)無機酸化物単一層、(B)種類の異なる無機酸化物からなる複合酸化物の単一層、および(C)上記(A)と(B)との二重層を包含するものを用いることができる。
【0084】
中空微粒子の外殻は細孔を有する多孔質なものであってもよく、あるいは細孔が閉塞されて空洞が外殻の外側に対して密封されているものであってもよい。外殻は、内側の第1無機酸化物被覆層および外側の第2無機酸化物被覆層からなる複数の無機酸化物被覆層であることが好ましい。外側に第2無機酸化物被覆層を設けることにより、外殻の細孔を閉塞させて外殻を緻密化したり、さらには、内部の空洞を密封した無機中空微粒子を得ることができる。特に第2無機酸化物被覆層の形成に含フッ素有機珪素化合物を用いる場合は、フッ素原子を含む被覆層が形成されるために、得られる粒子はより低屈折率となるとともに、有機溶媒への分散性もよく、さらに低屈折率層の防汚性付与にも効果があり好ましい。このような含フッ素有機珪素化合物の具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0085】
外殻の厚みは1〜50nm、特に5〜20nmの範囲であるのが好ましい。外殻の厚みが1nm未満であると、無機中空微粒子が所定の粒子形状を保持できない場合がある。逆に、外殻の厚みが50nmを超えると、無機中空微粒子中の空洞が小さく、その結果、空洞の割合が減少して屈折率の低下が不十分であるおそれがある。さらに、外殻の厚みは、無機中空微粒子の平均粒子径の1/50〜1/5の範囲にあることが好ましい。
【0086】
上述のように第1無機酸化物被覆層および第2無機酸化物被覆層を外殻として設ける場合、これらの層の厚みの合計が、上記1〜50nmの範囲となるようにすればよく、特に、緻密化された外殻には、第2無機酸化物被覆層の厚みは20〜40nmの範囲が好適である。
【0087】
また、空洞には無機中空微粒子を調製するときに使用した溶媒および/または乾燥時に浸入する気体が存在してもよいし、後述する空洞を形成するための前駆体物質が空洞に残存していてもよい。
【0088】
前駆体物質は、外殻によって包囲された核粒子から核粒子の構成成分の一部を除去した後に残存する多孔質物質である。核粒子には、種類の異なる無機酸化物からなる多孔質の複合酸化物粒子を用いる。前駆体物質は、外殻に付着してわずかに残存していることもあるし、空洞内の大部分を占めることもある。
【0089】
なお、この多孔質物質の細孔内にも上記溶媒あるいは気体が存在してもよい。このときの核粒子の構成成分の除去量が多くなると空洞の容積が増大し、屈折率の低い無機中空微粒子が得られ、この無機中空微粒子を配合して得られる透明被膜は低屈折率で反射防止性能に優れる。
【0090】
無機中空微粒子の平均粒径は特に制限されないが、5〜2,000nmの範囲が好ましく、20〜100nmがより好ましい。5nmよりも小さいと、中空によって低屈折率になる効果が小さく、逆に、2,000nmよりも大きいと、透明性が極端に悪くなり、拡散反射による寄与が大きくなってしまう。ここで、平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察による数平均粒子径である。
【0091】
上述のような無機中空微粒子の製造方法は、例えば、特開2001−233611号公報に詳細に記載されており、本発明に使用できる無機中空微粒子は、そこに記載された方法に基づいて製造することができ、また一般に市販されている無機中空微粒子を用いることもできる。
【0092】
無機微粒子の配合量は、特に制限されないが、低屈折率層全体に対して、10〜30重量%であるのが好ましい。無機微粒子の配合量がこの範囲であるときに、低屈折率性と耐擦傷性を兼ね備えた光学積層フィルムを得ることができる。
【0093】
前記無機微粒子は、分散液の形で用いることもできる。分散液に用いる有機溶媒の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノール、イソブタノールなどの低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコール誘導体;ジアセトンアルコール;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;などが挙げられる。これらの有機溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
低屈折率層が中空粒子がマトリックス中に分散された多孔質体である場合、その形成方法は特に制限されず、例えば、ハードコート層の上に少なくとも微粒子の内部に空隙をもつ中空微粒子をバインダー樹脂を含有してなる塗布液を公知の塗工方法により塗工し、必要に応じ乾燥・加熱処理を施す方法が挙げられる。必要に応じて行われる加熱の温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜150℃である。
【0095】
本発明において、低屈折率層の厚さは、10〜1000nm、好ましくは30〜500nmである。また、前述のように、低屈折率層は、少なくとも1層から構成されればよく、多層でもよい。
【0096】
本発明の光学積層フィルムは、前述のように、ハードコート層の屈折率n低屈折率層の屈折率nLとが、式[1]n≦1.37、式[2]n≧1.53、および式[3]√n−0.2<n<√n+0.2を満足しなければならず、式[4]1.25≦n≦1.35、式[5]n≧1.55、および式[6]√n−0.15<n<√n+0.15、を満足することが好ましい。これらの式が満たされることにより、光学積層フィルムの光反射率を低くすることができ、視認性、耐擦傷性及び強度に優れた光学製品が得られる。
【0097】
本発明の光学積層フィルムは、波長550nmにおける反射率が0.7%以下でかつ波長430nm〜700nmにおける反射率が1.5%以下であることが好ましく、波長550nmにおける反射率が0.6%以下でかつ波長430nm〜700nmにおける反射率が1.4%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
本発明の光学積層フィルムの層構成の一例を図1に示す。図1に示す光学積層フィルム50は、図中下側から、基材フィルム層11、ハードコート層21、低屈折率層31、および防汚層41からなっている。
【0099】
本発明の光学積層フィルムにおいては、基材フィルム11とハードコート層21との間にその他の層を介在させることができる。その他の層としては、プライマー層(図示を省略)が挙げられる。
【0100】
プライマー層は、基材フィルムとハードコート層との接着性の付与および向上を目的として形成される。プライマー層を構成する材料としては、ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエーテルウレタン系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、主鎖に炭化水素骨格および/またはポリブタジエン骨格を有する樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、環化ゴムまたはこれらの重合体に極性基を導入した変性物が挙げられる。
【0101】
なかでも、主鎖に炭化水素骨格および/またはポリブタジエン骨格を有する樹脂の変性物および環化ゴムの変性物が好ましい。
【0102】
主鎖に炭化水素骨格および/またはポリブタジエン骨格を有する樹脂としては、ポリブタジエン骨格もしくはその少なくとも一部を水素添加した骨格を有する樹脂、具体的には、ポリブタジエン樹脂、水添ポリブタジエン樹脂、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS共重合体)およびその水素添加物(SEBS共重合体)などが挙げられる。中でも、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物の変性物が好ましい。
【0103】
導入する極性基としては、カルボン酸またはその誘導体が好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸;塩化マレイル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸のハロゲン化物、アミド、イミド、無水物、エステルなどの誘導体;などによる変性物が挙げられ、密着性に優れることから、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物による変性物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸がより好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの不飽和カルボン酸などの2種以上を混合して用い、変性してもよい。
【0104】
プライマー層の形成方法は特に制限されず、例えば、プライマー層形成用塗工液を公知の塗工方法により基材フィルム上に塗工して形成する方法が挙げられる。
【0105】
プライマー層の厚みは特に制限されないが、通常0.3〜5μm、好ましくは0.5〜2μmである。
【0106】
本発明の光学積層フィルムにおいては、低屈折率層を保護し、かつ、防汚性能を高めるために、低屈折率層の上に防汚層(図1中の参照数字41)をさらに有してもよい。
【0107】
防汚層を構成する材料としては、低屈折率層の機能が阻害されず、防汚層としての要求性能が満たされる限り特に制限はない。通常、疎水基を有する化合物を好ましく使用できる。具体的な例としてはパーフルオロアルキルシラン化合物、パーフルオロポリエーテルシラン化合物、フッ素含有シリコーン化合物を使用することができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、例えば、蒸着、スパッタリングなどの物理的気相成長法、CVDなどの化学的気相成長法、湿式コーティング法などを用いることができる。防汚層の厚みは特に制限はないが、通常20nm以下が好ましく、1〜10nmであるのがより好ましい。
【0108】
本発明の光学積層フィルムは、光学特性に優れ、光反射率が低いことから、光学部材の反射防止性保護フィルムとして好適である。
【0109】
反射防止性保護フィルムは、一般に液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、EL素子、陰極管表示装置などの画像表示装置やタッチパネルなどの光学装置において、外光の反射によるコントラストの低下や像の映り込みを防止するために用いられている。これらの反射防止性保護フィルムは、通常各光学装置における視認側最上層に形成されている光学部材の反射防止性保護フィルムとして設けられることが多い。
【0110】
本発明の光学積層フィルムは、前記光学部材として、特に液晶表示装置における偏光板の保護フィルムに適用することが好ましい。
【0111】
本発明の反射防止機能付き偏光板は、本発明の光学積層フィルムの基材フィルムの反射防止層が設けられていない側の一面に、偏光板が積層されてなることを特徴とする。
【0112】
本発明で使用できる偏光膜は、偏光子としての機能を有するものであれば、特に限定はされない。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系やポリエン系の偏光膜が挙げられる。
【0113】
本発明においては、用いる偏光膜として、偏光度が99.9%以上のものが好ましく、99.95%以上であることがさらに好ましい。偏光度は、2枚の偏光膜を偏光軸が平行になるように重ね合わせた場合の透過率(H)と、直交に重ね合わせた場合の透過率(H90)それぞれを、JIS Z8701の2度視野(C光源)により、分光光度計を用いて測定し、以下の式から偏光度を求める。なお、前記H及びH90は、視感度補正したY値である。
【0114】
偏光度(%)=[(H−H90)/(H+H90)]1/2×100
偏光膜の製造方法は特に限定されない。PVA系の偏光膜を製造する方法としては、PVA系フィルムにヨウ素イオンを吸着させた後に一軸に延伸する方法、PVA系フィルムを一軸に延伸した後にヨウ素イオンを吸着させる方法、PVA系フィルムへのヨウ素イオン吸着と一軸延伸とを同時に行う方法、PVA系フィルムを二色性染料で染色した後に一軸に延伸する方法、PVA系フィルムを一軸に延伸した後に二色性染料で吸着する方法、PVA系フィルムへの二色性染料での染色と一軸延伸とを同時に行う方法が挙げられる。また、ポリエン系の偏光膜を製造する方法としては、PVA系フィルムを一軸に延伸した後に脱水触媒存在下で加熱・脱水する方法、ポリ塩化ビニル系フィルムを一軸に延伸した後に脱塩酸触媒存在下で加熱・脱水する方法などの公知の方法が挙げられる。
【0115】
本発明の反射防止機能付偏光板は、本発明の光学積層フィルムの基材フィルムの反射防止層が設けられていない側の一面に、偏光膜を積層することにより製造することができる。
【0116】
基材フィルムと偏光膜との積層は、接着剤や粘着剤などの適宜な接着手段を用いて貼り合わせることができる。接着剤または粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性や透明性などの観点から、アクリル系のものが好ましい。
【0117】
本発明の反射防止機能付偏光板の層構成断面図を図2に示す。図2に示す反射防止機能付偏光板81は、本発明の光学積層フィルム50の基材フィルム11の低屈折率層31が設けられていない面側に、接着剤または粘着剤からなる層61を介して、偏光膜71が積層された構造を有している。
【0118】
本発明の反射防止機能付偏光板においては、偏光膜の基材フィルムが積層されていない方の面に、接着剤または粘着剤からなる層61を介して、別の保護フィルム(図示を省略)が積層されていてもよい。保護フィルムとしては、光学異方性が低い材料からなるものが好ましい。光学異方性が低い材料としては、特に制限されず、例えばトリアセチルセルロースなどのセルロースエステルや脂環式構造を有する重合体樹脂などが挙げられるが、透明性、低複屈折性、寸法安定性などに優れる点から脂環式構造を有する重合体樹脂が好ましい。脂環式構造を有する重合体樹脂としては、本発明の基材フィルムの部分で記載したものと同様のものが挙げられる。接着剤または粘着剤としては、偏光板保護フィルムと偏光膜との積層に用いる接着剤または粘着剤と同様のものが挙げられる。本発明の反射防止機能付偏光板の厚みは、特に制限されないが、通常60μm〜2mmの範囲である。
【0119】
本発明の光学製品は、本発明の反射防止機能付偏光板を備えることを特徴とする。反射防止機能付偏光板を備える光学製品の好ましい具体例としては、液晶表示装置、タッチパネルなどが挙げられる。
【0120】
本発明の反射防止機能付偏光板を備える光学製品の一例として、本発明の反射防止機能付偏光板を備える液晶表示素子の層構成例を図3に示す。図3に示す液晶表示素子98は、下から順に、偏光板91、位相差板92、液晶セル93、および本発明の反射防止機能付偏光板81からなる。反射防止機能付偏光板81は、液晶セル93上に、接着剤または粘着剤(図示を省略)を介して、偏光板面と貼り合わせて形成されている。液晶セル93は、例えば図4に示すように、透明電極94を備えた電極基板95の2枚をそれぞれ透明電極94が対向する状態で所定の間隔をあけて配置するとともに、その間隙に液晶96を封入することにより作製される。液晶96封入部の両端縁部はシール97で封止されている。
【0121】
液晶表示装置の形成に際しては、例えば、輝度向上フィルム、プリズムアレイシート、レンズアレイシート、導光板、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
液晶96の液晶モードは特に限定されない。液晶モードとしては、例えば、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型、MVA(Multiple Vertical Alignment)型、IPS(In Plane Switching)型、OCB(Optical Compensated Bend)型、などが挙げられる。
【0122】
また、図3に示す液晶表示装置98は、印加電圧が低い時に明表示、高い時に暗表示であるノーマリーホワイトモードでも、また、印加電圧が低い時に暗表示、高い時に明表示であるノーマリーブラックモードでも用いることができる。
【0123】
本発明の光学製品は、広帯域にわたって低光反射率を達成できる反射防止機能付偏光板を備える。従って、特に液晶表示装置に用いた場合に、視認性に優れ(グレアや映り込みがない)、さらに明暗表示のコントラストに優れる。
【実施例】
【0124】
本発明を、実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部は特に断りのない限り重量基準である。
【0125】
本実施例における物性の評価は、以下の方法によって行った。
(1)基材フィルムの膜厚(基準膜厚、膜厚変動値)
フィルムを長さ方向に100mm毎に切り出し、その切り出したフィルムについて、接触式ウェブ厚さ計(明産社製、RC−101)を用いて、フィルムの幅方向に0.48mm毎に測定し、その測定値の算術平均値を基準膜厚T(μm)とする。膜厚変動は、前記測定した膜厚の内最大値をTMAX(μm)、最小値をTMIN(μm)として以下の式から算出する。
膜厚変動(%)=(TMAX−TMIN)/T×100
【0126】
(2)基材フィルムの揮発性成分の含有量(重量%)
基材フィルム200mgを、表面に吸着していた水分や有機物を完全に除去した内径4mmのガラスチューブの試料容器に入れる。次に、その容器を温度100℃で60分間加熱し、容器から出てきた気体を連続的に捕集する。そして、捕集した気体を熱脱着ガスクロマトグラフィー質量分析計(TDS−GC−MS)で分析し、その中で分子量200以下の成分の合計量を残留揮発性成分として測定する。
【0127】
(3)基材フィルムの飽和吸水率(重量%)
ASTM D530に従い、23℃で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求める。
【0128】
(4)基材フィルムのダイラインの深さまたは高さ(μm)
非接触3次元表面形状・粗さ測定機(ザイゴ社製)を用いて、横5.6mm×縦4.4mmの視野で、縦を480分割、横を640分割して640×480升目で観察する。
【0129】
(5)ハードコート層および低屈折率層の屈折率
高速分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、M−2000U)を用いて、測定波長245〜1000nm、入射角55°、60°および65°で測定し、その測定値を元に算出した値を屈折率とする。
【0130】
(6)偏光膜の偏光度
2枚の偏光膜を偏光軸が平行になるように重ね合わせた場合の透過率(H)と、直交に重ね合わせた場合の透過率(H90)それぞれを、JIS Z8701の2度視野(C光源)により、分光光度計を用いて測定し、以下の式から偏光度を求める。なお、前記H及びH90は、視感度補正したY値である。
偏光度(%)=[(H−H90)/(H+H90)]1/2×100
【0131】
(7)光反射率(%)
光学積層フィルムの任意の3箇所について、分光光度計(日本分光社製:「紫外可視近赤外分光光度計V−570」)を用い、入射角5°で反射スペクトルを測定し、波長430〜700nmにおける光反射率を求め、波長550nmにおける光反射率と、波長430〜700nmにおける光反射率の最大値を波長430〜700nmにおける光反射率とする。
【0132】
(8)視認性
得られた偏光板を適当な大きさ(10インチ四方)に切り出し、低屈折率層を形成させたほうの面を上面にして、図3に示す液晶表示素子に偏光板(図3の上側偏光板21)として組み込んで液晶表示素子を作製する。次いで、市販のライトボックス(商品名:ライトビュア−7000PRO、ハクバ写真産業社製)の上に、液晶表示素子をのせて簡易液晶パネルを作製し、液晶表示素子の表示を黒にして、正面よりパネルを目視にて観察し、以下の3段階で評価を行う。
○:グレア(視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによっておきる不快感や見にくさのことで、光源から直接または間接に受けるギラギラしたまぶしさなどのことをいう)や映りこみがまったくない。
△:グレアや映りこみが少し見られる。
×:グレアや映りこみが画面全面で見られる。
【0133】
なお、図3に示す液晶表示素子98は、液晶セル93の片面に反射防止機能付偏光板81、他面に位相差板92を介して下側偏光板91を積層することにより構成される。液晶セル93は、図4に示すように、透明電極94を備えた電極基板95の透明電極94面に配向膜を形成した後、その透明電極94を備えた電極基板95を2枚それぞれの透明電極94が対向する状態で所定の間隔をあけて配置すると共に、その間隙に液晶96を封入することにより作製される。97はシールである。この液晶表示素子98は、プラスチックの額縁に固定することによって保持される。
【0134】
反射防止機能付偏光板81は、図2に示すように、偏光膜71に接着剤または粘着剤からなる層61を介して、偏光膜の上側に光学積層フィルム50が積層されている。
【0135】
(9)コントラスト
前記(8)で作成した液晶表示パネルを暗室に設置し、暗表示の時と明表示の時の正面から5°の位置における輝度を色彩輝度計(トプコン社製、色彩輝度計BM−7)を用いて測定する。そして、明表示の輝度と暗表示の輝度の比(=明表示の輝度/暗表示の輝度)を計算し、これをコントラストとする。コントラストが大きいほど、視認性に優れる。
【0136】
製造例1 基材フィルム1Aの製造
ノルボルネン系重合体(製品名「ZEONOR 1420R」、日本ゼオン社製;ガラス転移温度136℃、飽和吸水率0.01重量%未満)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて110℃で、4時間乾燥した。そしてこのペレットを、リーフディスク形状のポリマーフィルター(濾過精度30μm)を設置したダイリップ内面に表面粗さRa=0.05μmのクロムメッキを施したリップ幅650mmのコートハンガータイプのTダイを有する短軸押出機を用いて、260℃で溶融押出して600mm幅の基材フィルム1Aを得た。得られた基材フィルム1Aの揮発性成分の含有量は0.01重量%以下、飽和吸水率は0.01重量%以下であった。また、この基材フィルム1Aの基準膜厚は40μm、膜厚変動は2.3%、ダイラインの深さは0.01μmであった。
【0137】
製造例2 ハードコート層形成用組成物1の調製
5酸化アンチモンの変性アルコールゾル(固形分濃度30%、触媒化成社製)100重量部に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート(日本合成化学者製、商品名「紫光UV7000B」)10重量部、光重合開始剤(チバガイキー社製、商品名「イルガキュアー184」)0.4重量部を混合し、紫外線硬化型のハードコート層形成用組成物1を得た。
【0138】
製造例3 シリコンアルコキシド溶液1の調製
テトラメトキシシランのオリゴマー(コルコート社製「メチルシリケート51」)と、メタノールを質量比47:75で混合してA液を調製し、また水、アンモニア水(アンモニア28重量%)、メタノールを重量比で60:1.2:97.2で混合してB液を調製した。
そして、A液とB液を16:17の重量比で混合してシリコンアルコキシド溶液1を得た。
【0139】
製造例4 シリコンアルコキシド溶液2の調製
A液を調製する際、テトラメトキシシランのオリゴマーとメタノールを質量比47:78で混合する他は、製造例3と同様にしてシリコンアルコキシド溶液2を得た。
【0140】
製造例5 シリコンアルコキシド溶液3の調製
A液を調製する際、テトラメトキシシランのオリゴマー(コルコート社製「メチルシリケート51」)メタノールを質量比47:79で混合する他は、製造例3と同様にしてシリコンアルコキシド溶液3を得た。
【0141】
製造例6 低屈折率層形成用組成物の調製
テトラエトキシシラン300gとエタノール455gを混合し、これに1.0質量%クエン酸水溶液295gを添加した後に、室温にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
そして、テトラエトキシシラン加水分解物Aを1020部、末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)を0.42部、プロピレングリコールモノメチルエーテルを2700部およびイソプロピルアルコール6300部を混合して低屈折率層形成用組成物を得た。
【0142】
製造例7 偏光膜の調製
厚さ45μmのPVAフィルム(重合度2400、ケン化度99.9%)を純粋中で膨潤させてから、ヨウ素1重量5とヨウ化カリウム3重量%の混合水溶液に浸漬し、前記PVAフィルムを染色した。次いで、このフィルムを4.5重量%ホウ酸水溶液に浸漬し、長手方向に5.3倍延伸し、続いて5重量%ホウ砂水溶液に浸漬し、長手方向における総延伸倍率が5.5倍となるように延伸した。延伸後、フィルム表面の水分を取り除き、50℃で乾燥して偏光膜を調製した。この偏光膜の厚さは18μm、偏光度は99.95%であった。
【0143】
実施例1
製造例1で得られた基材フィルム1Aの両面に、高周波発振機(コロナジェネレーターHV05−2、Tamtec社製)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を行い、表面張力が0.072N/mになるように表面改質して基材フィルム1Bを得た。
【0144】
基材フィルム1Bの片面に、製造例2で調製したハードコート層形成用組成物1を硬化後のハードコート層の膜厚が5μmになるように、ダイコーターを用いて連続的に塗布した。次いで、80℃で5分間乾燥させた後、紫外線照射(積算光量300mJ/cm)を行い、ハードコート層形成用組成物を硬化させ、ハードコート層積層フィルム1Cを得た。硬化後のハードコート層の膜厚は5μm、表面粗さは0.2μm、屈折率は1.62であった。
【0145】
製造例3で得られたシリコンアルコキシド溶液1を、混合開始後1分を経過した時点で、前記高屈折率積層フィルム1C(縦15cm×横15cm)の上に滴下し、スピンコーターの回転室にこの積層フィルム1Cを入れ、積層フィルム1Cを回転させて積層フィルム1Cの表面にシリコンアルコキシド溶液をスピンコーティングした。ここで、スピンコーターの回転室には予めメタノールを入れてメタノール雰囲気になるようにしてあり、またガラス板の回転は700rpmの回転数で10秒間行った。このようにシリコンアルコキシド溶液をスピンコーティングした後、1分15秒間放置してシリコンアルコキシドがゲル化した薄膜を得た。
【0146】
次に、このゲル状の薄膜を、5分間、水と28%アンモニア水とメタノールを質量比で162:4:640で混合した組成の養生溶液中に浸漬し、室温で1昼夜養生した。さらにこのように養生したゲル状の薄膜をヘキサメチルジシラザンの10%イソプロパノール溶液中に浸漬し、疎水化処理を行った。
【0147】
次に、このように疎水化処理をした薄膜状のゲル状化合物をイソプロパノール中へ浸漬することで洗浄した後、高圧容器中に入れ、高圧容器内を液化炭酸ガスで満たし、80℃、16MPa、2時間の条件で超臨界乾燥をすることによって、積層フィルム1Cの表面に膜厚100nmのシリカエアロゲル薄膜(以下、「低屈折率層」と記す。)が形成された積層フィルム1Dを得た。この積層フィルムの低屈折率層の屈折率を測定したところ、1.33であった。
【0148】
次いで、この積層フィルム1Dの低屈折率層が形成された方の面に、防汚層としてフッ素系表面防汚コーティング剤(ダイキン工業社製、「オプツールDSX」)をパーフルオロヘキサンで0.1重量%に希釈して、ディップコート法により塗布した。塗布後、60℃で1分間加熱乾燥して厚さ5nmの防汚層を形成させて、光学積層フィルム1E(偏光板保護フィルム)を得た。
【0149】
得られた光学積層フィルム1Eの低屈折率層などを形成させていない方の面に、アクリル系接着剤(住友スリーエム社製、「DP−8005クリア」)を介して、製造例7で得られた偏光膜を貼り合わせて反射防止機能付偏光板1Fを得た。この偏光板を用いて光学性能の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0150】
実施例2
基材フィルム1Aの代わりに、厚さ40μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカ社製、商品名「KC4UX2M」、Tg=120℃、飽和吸水率=4.5重量%、揮発性成分の含有量=6.0重量%、以下「基材フィルム2A」と記す。)を用いた他は、実施例1と同様な操作を行い、光学積層フィルム2E(偏光板保護フィルム)および反射機能付偏光板2Fを得た。このときのハードコート層の屈折率は1.62、低屈折率層の屈折率は1.33であった。この偏光板を用いて光学性能の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0151】
実施例3
基材フィルムとして、基材フィルム1Aの代わりに、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、商品名「コスモシャイン A4300」、以下「基材フィルム3A」と記す。)を用いたほかは、実施例1と同様な操作を行い、光学積層フィルム3Eおよび反射機能付偏光板3Fを得た。このときのハードコート層の屈折率は1.62、低屈折率層の屈折率は1.33であった。この偏光板を用いて光学性能の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0152】
実施例4
基材フィルム1Aの代わりに、トリアセチルセルロースフィルムを用いた偏光板(ポラテクノ社製、商品名「スーパーハイコントラスト偏光板 SKN−18243T」、偏光度99.993%)を用いた他は、実施例1と同様にして、ハードコート層および低屈折率層を形成させて、光学積層フィルム4Eを得た。この光学積層フィルム4Eは偏光膜が積層されているので、このフィルムをそのまま反射機機能付偏光板として用いて光学性能の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0153】
以下に比較例を記載して、本発明との違いを説明する。
比較例1
低屈折率層を形成する際に、シリコンアルコキシド溶液1の代わりに、製造例4で得られたシリコンアルコキシド溶液2を使用した他は、実施例1と同様な操作を行い、偏光板保護フィルム5Eおよび反射防止機能付偏光板5Fを得た。このときのハードコート層の屈折率は1.62、低屈折率層の屈折率は1.39であった。この偏光板を用いて光学性能の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0154】
比較例2
低屈折率層を形成する際に、シリコンアルコキシド溶液1の代わりに、製造例5で得られたシリコンアルコキシド溶液3を使用した他は、実施例1と同様な操作を行い、光学積層フィルム6E(偏光板保護フィルム)および反射防止機能付偏光板6Fを得た。このときのハードコート層の屈折率は1.62.低屈折率層の屈折率は1.40であった。この偏光板を用いて光学性能の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0155】
比較例3
ハードコート層形成用組成物として、ハードコート層形成用組成物2(紫外線硬化型高屈折率剤;大日本インキ社製、ダイキュアクリアSD−715)を用い、さらに低屈折率層として製造例6で得た低屈折率層形成用組成物を用いた他は、実施例1と同様な操作を行い、光学積層フィルム7Eおよび反射防止機能付偏光板7Fを得た。このときのハードコート層の屈折率は1.52、低屈折率層の屈折率は1.45であった。この偏光板を用いて光学性能の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0156】


【0157】
表1の結果から以下のことがわかる。本発明によれば、透明樹脂を含んでなる基材フィルムの上に、ハードコート層および少なくとも1層の膜からなる低屈折率層を、この順に積層してなる光学積層フィルムであって、該ハードコート層の屈折率をn、低屈折率層の屈折率をnとしたとき、次の式[1]、式[2]および式[3]
式[1]:n≦1.37、
式[2]:n≧1.53
式[3]:√n−0.2<n<√n+0.2
を満たす光学積層フィルム(実施例1〜3)は、波長550nmにおける光反射率および波長430〜700nmにおける光反射率が小さく、視認性および明暗表示のコントラストに優れる。
【0158】
一方、式[1]、[2]および式[3]を満たさない光学積層フィルム(比較例1〜3)は、波長550nmにおける光反射率および波長430〜700nmにおける光反射率が大きく、視認性に劣るだけでなく、明暗表示のコントラストが悪い。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の光学積層フィルムは、光学特性に優れ、光反射率が低いことから、光学部材の反射防止性保護フィルムとして好適である。
【0160】
この光学積層フィルムを備えた反射防止機能付偏光板は、広帯域にわたって低光反射率を達成でき、液晶表示装置、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス表示装置などの光学製品に利用される。これらの光学製品は、光反射率が低く、グレアや映り込みが少なく、視認性に優れる。特に、液晶表示装置は、さらに、明暗表示でのコントラストに優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂を含んでなる基材フィルムの片面に、直接または他の層を介してハードコート層およびエアロゲルからなる低屈折率層をこの順に積層してなり、ハードコート層の屈折率をn、低屈折率層の屈折率をnとしたとき、以下の式[1]、[2]および[3]を満たす光学積層フィルム。
式[1]:n≦1.37
式[2]:n≧1.53
式[3]:√n−0.2<n<√n+0.2
【請求項2】
ハードコート層の屈折率nおよび低屈折率層の屈折率nが、以下の式[4]、[5]および式[6]の関係を満たす請求項に1記載の光学積層フィルム。
式[4]:1.25≦n≦1.35
式[5]:n≧1.55
式[6]:√n−0.15<n<√n+0.15
【請求項3】
波長550nmにおける反射率が0.7%以下で、波長430〜700nmにおける反射率が1.5%以下である請求項1または2に記載の光学積層フィルム。
【請求項4】
基材フィルムのダイラインの深さまたは高さが0.1μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の光学積層フィルム。
【請求項5】
透明樹脂が、脂環式構造を有する重合体樹脂、セルロース樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層フィルム。
【請求項6】
透明樹脂が、脂環式構造を有する重合体樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層フィルム。
【請求項7】
光学部材の反射防止保護フィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の光学積層フィルム。
【請求項8】
偏光板保護フィルムである請求項7記載の光学積層フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光板保護フィルムの低屈折率層が設けられている面の反対側の面に偏光膜を積層してなる反射防止機能付偏光板。
【請求項10】
請求項9記載の反射防止機能付偏光板を備える光学製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/001525
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511072(P2005−511072)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009119
【国際出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】