説明

光学積層体および建具

【課題】周囲の気温を上昇させることなく近赤外線を遮蔽することができる光学積層体および建具を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光学積層体1は、可視光を透過し赤外線を再帰反射させる構造層20と、構造層20を挟み込む2枚の透明基材11、12とを有する。これにより、周囲の温度上昇を抑制しつつ視認性に優れた採光が可能となる。また、上記構造層は2枚の透明基材11、12で挟み込まれた構造を有しているため、構造層20の耐候性あるいは耐久性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、赤外線帯域の光を選択的に反射させ、可視広帯域の光を透過させる光学積層体および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビル、住居などの建築用ガラスや車窓ガラスに太陽光の一部を吸収、又は反射させる層が設けられるケースが増加している。これは、地球温暖化防止を目的とした省エネルギー対策のひとつであり、例えば、太陽から注がれる近赤外線が窓から屋内に入り屋内温度が上昇することによる冷房設備の負荷を軽減することを目的としている。
【0003】
可視領域の透明性を維持しながら近赤外線を遮蔽する構造としては、近赤外領域に高い反射率を有する層を窓ガラスに設ける構造が知られている。例えば特許文献1には、高屈折率無機質材料被膜と低屈折率無機質材料被膜との積層構造を有する赤外線反射膜を外側ガラス板と内側ガラス板とで挟み込んだ、窓用合わせガラスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−37667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、反射層は平面状の窓ガラスに設けられるため、入射した太陽光を正反射させることしかできない。このため、上空から照射されて正反射された光は、屋外の別な建物や地面に到達し、吸収されて熱に変わり周囲の気温を上昇させるという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、周囲の気温を上昇させることなく近赤外線を遮蔽することができる光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学積層体は、第1の透明基材と、第2の透明基材と、構造層とを具備する。
上記第2の透明基材は、上記第1の透明基材と対向する。
上記構造層は、上記第1の透明基材と上記第2の透明基材との間に配置される。上記構造層は、上記第2の透明基材を透過した光を部分的に指向反射し、部分的に光を透過させる。
【0008】
上記光学積層体は、構造層が指向反射構造を有しているため、例えば、第1の波長帯域と第2の波長帯域とで異なる分光特性を示し、第1の波長帯域の光をその入射方向に指向性をもって反射する。したがって、第1の波長帯域を例えば赤外帯域とすることで、入射光を正反射させる場合に比べて周囲の気温の上昇を抑制することができる。また、第2の波長帯域を可視光帯域とすることで、温度上昇を抑制しつつ視認性に優れた採光が可能となる。単に半反射層を設ける場合には、波長選択性は付与できないが安価に指向反射層を形成できる。また、上記構造層は2枚の透明基材で挟み込まれた構造を有しているため、構造層の耐候性あるいは耐久性を高めることができる。
【0009】
上記構造層は、透光体と、光学機能層とを有する。光学機能層は、入射光を部分的に反射する層であり、例えば、半透過層または波長選択反射層である。上記透光体は、指向反射性の凹部が配列された第1の表面を有する。上記光学機能層は、上記第1の表面に形成され、上記第1の波長帯域の光を反射し上記第2の波長帯域の光を透過させる光学多層膜を含む。
【0010】
上記のように、構造層は、第1及び第2の透明基材と別に形成されることができる。これにより構造層の作製が容易となる。
再帰反射性の凹部は、上記第1の表面に一次元的に配列されたプリズム形状、シリンドリカルレンズ形状等の凹部であってもよいし、上記第1の表面に二次元的に配列された角錐形状、曲面形状等の凹部であってもよい。上記透光体は、例えば紫外線硬化樹脂で形成されることができ、上記凹部は透光体の形成と同時に形成されてもよい。
上記光学多層膜は、金属酸化膜等の誘電体、金属などを含んでもよく、各層の材料、厚み、積層数等は、遮蔽対象である光の波長帯域、透過率(反射率)等に応じて適宜設定される。
【0011】
上記透光体は、上記第1の表面とは反対側の第2の表面をさらに有してもよい。上記光学積層体は、上記第2の表面を上記第1の透明基材に接着させる第1の透明粘着層をさらに具備してもよい。
これにより、構造層を第1の透明基材と一体化させることができる。第1の透明粘着層は、熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂等でもよいし、粘着テープ等であってもよい。
【0012】
上記光学積層体は、上記構造層を上記第2の透明基材へ接着させる第2の透明粘着層をさらに具備してもよい。
これにより、構造層を第2の透明基材と一体化させることができる。また、構造層を第1の透明基材と第2の透明基材との間で封止することができるため、構造層の耐久性の向上を図ることができる。
上記構成に代えて、上記光学積層体は、上記構造層と上記第2の透明基材との間に封入された不活性ガスの層をさらに具備してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば周囲の気温を上昇させることなく近赤外線を遮蔽することができる、耐久性に優れた光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学積層体の部分概略断面図である。
【図2】上記光学積層体における透光体の一構成例を示す部分斜視図である。
【図3】上記光学積層体における透光体の他の構成例を示す部分斜視図である。
【図4】上記光学積層体における透光体の他の構成例を示す部分平面図である。
【図5】上記光学積層体の一作用を説明する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る光学積層体の製造方法を説明する各工程の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る光学積層体の製造方法を説明する断面図である。
【図8】上記製造方法によって製造された光学素子の部分概略断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る光学積層体の部分概略断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る光学積層体の部分概略断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る光学積層体の部分概略断面図である。
【図12】上記透光体を作製するための金型の構成例を示す要部の概略断面図である。
【図13】本発明の変形例に係る、光学素子に対して入射する入射光と、光学素子により反射された反射光との関係を示す斜視図である。
【図14】(A)は、本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図であり、(B)は、本発明の変形例に係る、光学素子の構造体の一構成例を示す斜視図である。
【図15】(A)は、本発明の変形例に係る、形状層に形成された構造体の形状例を示す斜視図であり、(B)は、形状層に形成された構造体の主軸の傾きの方向を示す断面図である。
【図16】本発明の変形例に係る、光学素子の一構成例を示す断面図である。
【図17】本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す斜視図である。
【図18】(A)は、本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す平面図であり、(B)は、(A)に示した形状層のB−B線に沿った断面図であり、(C)は、(A)に示した形状層のC−C線に沿った断面図である。
【図19】(A)は、本発明の変形例に係る、光学素子における形状層の構成例を示す平面図であり、(B)は、(A)に示した形状層のB−B線に沿った断面図であり、(C)は、(A)に示した形状層のC−C線に沿った断面図である。
【図20】本発明の適用例に係る建具の一構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
[光学積層体の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学積層体を示す要部断面図である。本実施形態の光学積層体1は、第1の透明基材11と、第2の透明基材12と、第1及び第2の透明基材の間に配置された構造層20とを有する。光学積層体1は、建築用あるいは車載用の窓として用いられる。なお各図において、説明を分かりやすくするため、各部の大きさ、厚み等は誇張して示している。
【0017】
以下、光学積層体1の各部の詳細について説明する。
【0018】
[透明基材]
第1及び第2の透明基材11、12には、厚みが例えば2.5mmのフロートガラスが用いられる。なお、ガラス以外にも、アクリル板やポリカーボネート板などの透明プラスチック材料を用いて第1及び第2の透明基材11、12を形成することも可能である。透明基材11、12の厚みは特に限定されず、例えば1mm〜3mmである。
【0019】
透明基材11、12に用いられるガラスには、Si(シリコン)、P(リン)、B(ホウ素)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Nd(ネオジム)、Pb(鉛)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Nb(ニオブ)、Li(リチウム)、Fe(鉄)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、In(インジウム)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、Al(アルミニウム)などが含まれてもよく、用途に応じて使い分けられる。
【0020】
また、透明基材11、12の表面に液晶層が塗布されたり、透明基材11、12間に液晶材料が封入されたりしてもよい。また、いわゆるサーモクロミック材料(熱によって着色する材料)やエレクトロクロミック(電圧印加によって着色する材料)などの機能的色素が付加されてもよい。
【0021】
[構造層]
構造層20は、透光体21と、透光体21の表面に形成された光学機能層22とを有する。
【0022】
(透光体)
図2〜図4は、透光体21の形態を模式的に示す要部の斜視図あるいは平面図である。透光体21は、光学機能層22が形成される側の面に、複数の凹部211が配列されてなる構造面21a(第1の表面)を有する。透光体21の構造面21aとは反対側の裏面21b(第2の表面)は平坦面である。
【0023】
構造面21aを形成する凹部211は、指向反射構造を有する。本実施形態において、凹部211は、底部に頂点を有する構造体で形成されており、例えば、角錐形状、円錐形状、角柱形状、曲面形状、プリズム形状、シリンドリカル形状、半球状、コーナーキューブ状等で形成されている。個々の凹部211は、同一の形状及び大きさで形成されるが、領域ごとに又は周期的に、形状あるいは大きさを異ならせてもよい。
【0024】
図2は、三角柱形状(プリズム形状)の凹部211が一次元配列された構造面の部分斜視図、図3は、曲面形状(シリンドリカルレンズ形状)の凹部211が一次元配列された構造面の部分斜視図である。図4は、三角錐形状の凹部211が二次元配列された構造面の部分平面図である。凹部211の配列ピッチ(凹部211の頂点間の間隔)は、特に限定されず、例えば数十μm〜数百μmの間で適宜設定することができる。また、凹部211の深さも特に限定されず、例えば、10μm〜100μmとされる。凹部211のアスペクト比(深さ寸法/平面寸法)は特に限定されず、例えば0.5以上である。
【0025】
透光体21は、透明な樹脂材料で形成されており、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化樹脂などで形成されている。透光体21は、光学機能層22を支持する支持体としての機能を有し、所定厚みのフィルム状、シート状あるいはプレート状に形成される。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリルポリマー;ポリカーボネート;酢酸セルロース、セルロース(アセテート−コ−ブチレート)、硝酸セルロース等のセルロース系材料;エポキシ樹脂;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリステル;ポリクロロフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフルオロポリマー;ポリカプロラクタム、ポリアミノカプロン酸、ポリ(ヘキサメチレンジアミン−コ−アジピン酸)、ポリ(アミド−コ−イミド)及びポリ(エステル−コ−イミド)等のポリアミド;ポリエ−テルケトン;ポリエーテルイミド;ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリスチレン及びポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−ブタジエン)等のポリスチレン共重合体;ポリスルフォン;シリコーンポリアミド及びシリコーンポリカーボネート等のシリコーン変性ポリマー〔即ち、少重量%(10重量%未満)のシリコーンを含有するポリマー〕;パーフルオロポリエチレンテレフタレート等のフッ素変性ポリマー;並びにポリエステル/ポリカーボネートブレンド及びフルオロポリマー/アクリルポリマーブレンド等の上記ポリマーの混合物が挙げられる。
【0027】
エネルギー線硬化樹脂としては、電子線、紫外線又は可視光を照射することによりラジカル重合機構により架橋できる反応性樹脂系である。さらに、これらの材料は、過酸化ベンゾイル等の熱開始剤を添加して熱的手段により重合できる。放射線開始カチオン重合樹脂も使用できる。
反応性樹脂は、光開始剤と、アクリレート基を有する少なくとも一種の化合物との配合物でよい。好ましくは、樹脂配合物は、二官能又は多官能化合物を含有して照射により架橋高分子網状構造を確実に形成する。フリーラジカル機構により重合できる樹脂としては、例えば、エポキシ化合物、ポリエステル、ポリエーテル及びウレタンから誘導したアクリル系樹脂、エチレン性不飽和化合物、少なくとも一個のペンダントアクリレート基を有するアミノプラスト誘導体、少なくとも一個のペンダントアクリレート基を有するイソシアネート誘導体、アクリレート化エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂並びにそれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。ここで、「アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する意味で使用される。
エチレン性不飽和樹脂としては、例えば、炭素原子、水素原子及び酸素原子並びに任意に窒素、イオウ及びハロゲンを含有するモノマー及びポリマー化合物の両方が挙げられる。酸素原子若しくは窒素原子又は両方の原子は、一般的に、エーテル、エステル、ウレタン、アミド及びウレア基に存在する。エチレン性不飽和化合物は、好ましくは、分子量が約4000未満であり、そして好ましくは脂肪族モノヒドロキシ基又は脂肪族ポリヒドロキシ基含有化合物と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸との反応から得られるエステルである。アクリル基又はメタクリル基を有する化合物のいくつかの例を以下に示す。なお、以下に挙げる化合物は具体例であって、これらには限定されない。
(1)一官能化合物:
エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート及びN,N−ジメチルアクリルアミド;
(2)二官能化合物:
1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びテトラエチレングリコールジアクリレート;
(3)多官能化合物:
トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート。他のエチレン性不飽和化合物及び樹脂のいくつかの代表例を挙げると、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ジアリルフタレート及びジアリルアジペート等のモノアリル、ポリアリル及びポリメタリルエステル並びにN,N−ジアリルアジパミド等のカルボン酸のアミドなどがある。アクリル化合物と配合できる光重合開始剤としては、例えば、以下の具体的な開始剤が挙げられる:ベンジル、メチルo−ベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等、ベンゾフェノン/第三アミン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノ−1−プロパノン等。これらの化合物は、個々に単独でも組み合わせて使用してもよい。
カチオン重合性材料にはエポキシ及びビニルエーテル官能基を含有する材料などがあるが、これらには限定されない。これらの系は、トリアリールスルホニウム及びジアリールヨードニウム塩等のオニウム塩開始剤により光開始される。
透光体21の形成に好ましいポリマーには、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート及び多官能アクリレート又はエポキシ等の架橋アクリレート並びにアクリ化ウレタンと一官能及び多官能モノマーとの配合物などがある。これらのポリマーは、一つ以上の以下の理由により好ましい:熱安定性、環境安定性、透明性、成形用具又は金型からの離型性及び光学機能層の受容性。
【0028】
(光学機能層)
光学機能層22は、透光体21の構造面21aに形成される。光学機能層22は、特定波長帯域(第1の波長帯域)の光を反射し特定波長帯域以外(第2の波長帯域)の光を透過させる光学多層膜を含む。本実施形態において、上記特定波長帯域の光は近赤外線を含む赤外線帯域であり、上記特定波長帯域以外の光は可視光帯域である。
【0029】
光学機能層22は、例えば、第1の屈折率層(低屈折率層)と、第1の屈折率層よりも高い屈折率を有する第2の屈折率層(高屈折率層)とを交互に複数積層してなる積層膜で形成される。あるいは、光学機能層22は、赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層または透明導電膜とを、交互に積層してなる積層膜で形成される。
【0030】
赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする。また、金属層の材料として合金を用いる場合には、金属層は、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgCu、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFeなどを用いることができる。上記光学透明層は、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。上記透明導電膜は、例えば、酸化亜鉛、インジウムドープ酸化錫などを主成分とする。
【0031】
光学機能層22は、無機材料からなる薄膜の多層膜に限定されるものではなく、高分子材料からなる薄膜や高分子中に微粒子などを分散した層が積層された膜でもよい。光学機能層22の厚みは特に限定されず、目的とする波長帯域の光を所望の反射率で反射できる膜厚を有していればよい。光学機能層22の形成方法としては、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等のドライプロセスや、ディップコーティング法、ダイコーティング法等のウェットプロセスを用いることができる。光学機能層22は、透光体21の構造面21a上にほぼ均一な厚みで形成される。この場合、光学機能層22との密着性を高める目的で、構造面21aに表面処理を施してもよいし、樹脂膜などの密着層を形成してもよい。
【0032】
[中間層]
構造層20は、例えば熱圧着法により、第1及び第2の透明基材11、12に対して、中間層31、32を介して接着される。中間層31、32は、透明な熱可塑性樹脂で形成され、熱圧着時に軟化して構造層20に密着する。すなわち、中間層31は、構造層20の裏面21bを第1の透明基材11に接着させる透明粘着層を構成し、中間層32は、構造層20の構造面21aを第2の透明基材12に接着させる透明粘着層を構成する。
【0033】
中間層31、32としては、構造層20の透光体21よりも軟化点の低い樹脂材料が用いられる。これにより、熱圧着時における透光体21の構造面21aの熱変形を防止することができる。熱圧着温度は特に限定されないが、本実施形態では熱圧着温度を130℃〜140℃としており、したがって中間層31、32には、130℃以下の温度に軟化点を有する樹脂材料が用いられる。中間層31、32の構成材料としては、主剤として、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)などを含むコポリマーを用いることができる。
【0034】
一方、透光体21は、当該温度で軟化しない樹脂材料で形成される。好適には、透光体21は、140℃以上、あるいは150℃以上、あるいは170℃以上の温度に軟化点を有する樹脂材料で形成される。また、透光体21は、140℃かつ周波数1Hzで1.0×10−6Pa以上の損失弾性率を有する。貯蔵弾性率が1.0×10−6Pa未満の場合、熱圧着時に構造面21aの形状が崩れ、再帰反射性が低下するおそれがある。
【0035】
中間層31、32は、110℃における10000Pa・s以上の溶融粘度を有し、かつ、140℃において100000Pa・s以下の溶融粘度を有する。110℃における溶融粘度が10000Pa・s未満であると、熱圧着の際に透明基材11、12に対して構造層20の位置ずれが生じることがある。また、中間層31、32の強度が弱くなりすぎて、光学積層体1の耐貫通性が低下することがある。一方、140℃における溶融粘度が100000Pa・sを超えると、中間層31、32を安定して成形することが困難になることがある。また、中間層31、32の極度の硬化による脆化が原因で、光学積層体1の耐貫通性が低下することがある。
【0036】
構造層20と第2の透明基材12との間に形成される中間層32は、光学機能層22で被覆された構造層20の構造面21aを包埋する。このため中間層32は、光学積層体1を透過する像の鮮明性を確保するべく、透光体21の屈折率と同等の屈折率を有することが好ましい。中間層32と透光体21との屈折率差は、例えば、0.03以下、より好ましくは0.01以下とされる。また、光学機能層22が腐食されないよう、中間層32の水分量は少ないほど好ましく、例えば、1重量%以下とされる。中間層32の含有水分量が極端に少なくなることによる光学機能層22との密着性低下を防止するために、中間層32に密着付与剤を添加してもよい。
【0037】
[光学積層体の作用]
図5は、光学積層体1の一作用を説明する模式図である。光学積層体1は、第1の透明基材11を屋内(車内)側、第2の透明基材12を屋外(車外)側に向けて設置される。光学積層体1には、例えば、太陽光が入射する。光学積層体1は、第2の透明基材12を透過した太陽光のうち、赤外線帯域の光L1を光学機能層22で反射し、可視光帯域の光L2を透過させて第1の透明基材11側から出射させる。これにより、屋外あるいは車外の視認性を確保しつつ、屋内あるいは車内の温度上昇を抑制することができる。
【0038】
本実施形態の光学積層体1において、光学機能層22は、再帰反射構造を有する構造面21a上に形成されているため、赤外光(熱線)L1はその入射方向に指向性をもつように再帰反射される。したがって、入射光が光学機能層で正反射される場合に比べて、屋外または車外の周囲の気温の温度上昇を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の光学積層体1において、中間層32は、第1の透明基材11と第2の透明基材12との間で、構造面21a及び光学機能層22を封止する保護層として機能する。これにより、構造面21a及び光学機能層22の損傷あるいは汚損を防止して、構造層20の耐候性および耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
さらに本実施形態によれば、構造層20は2枚の透明基材11、12との積層構造を有するため、窓材と一体的に家屋あるいは車体への取り付けを行うことができる。
【0041】
[光学積層体の製造方法]
次に、本実施形態の光学積層体1の製造方法について説明する。図6及び図7は、光学積層体1の製造方法を説明する概略工程図である。
【0042】
まず、図6(A)〜(C)に示すように、構造面21aを有する透光体21を形成する。透光体21の形成方法としては、あらかじめ構造面21aに対応する凹凸形状を有する転写面100aが形成された型100を作製し、転写面100aに所定量の紫外線硬化樹脂12Rを塗布する(図6(A))。次いで、紫外線の透過特性を有する透明な樹脂フィルムで形成された基材41を転写面100a上に載置し、紫外線硬化樹脂12Rの上面を平坦化する(図6(B))。基材41としては、所定厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が用いられる。続いて、UV光源40から基材41を介して紫外線を照射して紫外線硬化樹脂12Rを硬化させることで、転写面100aの形状に対応する構造面21aを有する透光体21が形成される(図6(C))。そして、透光体21を型100から剥離し、構造面21aに光学機能層22を形成することで、構造層20が作製される。
【0043】
次に、図7に示すように、中間層31が形成された第1の透明基材11と、中間層32が形成された第2の透明基材12とをそれぞれ準備する。中間層31、32の形成方法は特に限定されず、種々の塗布技術あるいは貼り合わせ技術を用いることができる。そして、中間層31、32を内側に向けて構造層20を第1及び第2の透明基材11、12で挟み込み、熱圧着する。これにより、図8に示す光学積層体2が作製される。
【0044】
光学積層体2は、透光体21と中間層31との間に基材41が介在する点で、図1の光学積層体1と異なる。したがって、構造層20の作製後、基材41を剥離した状態で透明基材11、12を積層することで、図1に示す光学積層体1が作製されることになる。図2に示す光学積層体2によれば、基材41で透光体21を支持できるため、透光体21の作製及びハンドリングが容易となり、透明基材11、12との積層化も安定して行えるようになる。また、基材41を用いることで、構造層20をロール方式で連続的に作製できるため、生産性の向上を図ることができる。
【0045】
透明基材11、12に対する構造層20の熱圧着技術には、ホットプレス(HP)、熱間静水圧プレス(HIP)などが用いられる。熱圧着の条件は適宜設定することができ、例えば温度は130℃〜140℃、圧力は1MPa〜1.5MPaとされる。なお、この熱圧着工程を真空中で行うことにより、中間層31、32に含まれる水分を効率よく除去することができる。また、熱圧着前に、数kPaの減圧雰囲気で予備加熱することによっても、中間層31、32の脱気を促進することができる。
【0046】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態に係る光学積層体の要部の概略断面図である。図において上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態の光学積層体3は、第1の透明基材11と、第2の透明基材12と、これらの間に配置された構造層20とを備える。構造層20と第1の透明基材11との間には中間層31が形成されており、構造層20と第2の透明基材12との間はガス層33が形成されている。そして、第1の透明基材11と第2の透明基材12との間には、ガス層33を封止するための封止部材34が配置されている。
【0048】
ガス層33は、希ガスあるいは不活性ガスで形成される。ここでは、希ガス及び不活性ガスを総称して「不活性ガス」という。ガス層33を形成する不活性ガスには、例えばアルゴン、窒素などが用いられる。ガス層33の圧力は特に限定されず、例えば、ガス層33を陽圧に設定してもよい。これにより、ガス層33への外気の侵入が阻止されるため、水蒸気の混入による光学機能層22の腐食あるいは劣化を防ぐことができる。また、外圧に対する透明基材12の破損を抑制することができる。
【0049】
封止部材34は、透明基材11、12の周囲に沿って環状(枠状)に形成されている。封止部材34は、ゴム、エラストマ等の弾性体、あるいは接着剤等で形成されており、第1の透明基材11と第2の透明基材12とを一体的に接合すると共に、透明基材11、12の間に気密空間を形成する。ガス層33は当該気密空間へ不活性ガスが充填されることで形成される。ガス層33は、不活性ガス中で第1の透明基材11と第2の透明基材12とを積層することで容易に形成できる。あるいは、透明基材11、12の積層後、封止部材34に形成した脱気孔を介して上記気密空間を排気した後、不活性ガスを上記脱気孔を介して上記気密空間へ導入することで、ガス層33を形成することが可能である。上記脱気孔は、ガスの充填後、封止される。
【0050】
以上のように構成される本実施形態の光学積層体3においても、上述の第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。なお、第1の透明基材11と構造層20との間を中間層31で接合する構成に代えて、これらの間も不活性ガスの層で形成することも可能である。
【0051】
<第3の実施形態>
図10は、本発明の第3の実施形態に係る光学積層体の要部の概略断面図である。図において上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
本実施形態の光学積層体4は、第1の透明基材11の内面に、再帰反射性の複数の凹部が一次元又は二次元的に配列された構造面11aを有する点で、上述の第1の実施形態と異なる。本実施形態では、光学機能層22は上記構造面11a上に形成される。すなわち本実施形態において、光学積層体4は、構造面11aと光学機能層22とによって構成された構造層201を有する。
【0053】
本実施形態の光学積層体4によれば、上述の第1の実施形態と同様な作用効果を有する。特に本実施形態によれば、第1の実施形態における透光体21の形成が不要となるため、光学積層体4の厚みの低減を図ることが可能となる。
【0054】
<第4の実施形態>
図11は、本発明の第4の実施形態に係る光学積層体の要部の概略断面図である。図において上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施形態の光学積層体5は、構造層の構成が上述の第1の実施形態と異なる。本実施形態の構造層202は、再帰反射性の構造面21aを有する第1の透光体21と、構造面21aの上に形成された光学機能層22と、構造面21a及び光学機能層22を被覆する第2の透光体23とを有する。第2の透光体23は、第1の透光体21と同様に紫外線硬化樹脂で形成され、光学機能層22を包埋する保護層としての機能を有する。
【0056】
構造層202は、第1の基材41と、第2の基材42とをさらに有する。第1及び第2の基材41、42は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の透明なプラスチックフィルムで形成される。これらの基材41、42は、紫外線硬化樹脂で透光体21、23を成形する際に、成形体を支持する支持層としての機能を有し、ロール・ツー・ロール方式による構造層202の連続生産に供される。基材41、42は、透光体21、23の成形後、剥離されてもよいし、図11に示すように剥離されることなく透光体21、23と一緒に透明基材11、12に積層されてもよい。
【0057】
本実施形態においても上述の第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。特に、第1の透光体21と第2の透光体23とを同種の樹脂材料で形成することで屈折率差を実質的にゼロとすることができるため、光学積層体5を透過する像の鮮明性の低下を抑制することができる。
【0058】
<第5の実施形態>
本実施形態では、光学積層体1が指向反射体として機能する場合について、説明する。図13は、光学積層体1に対して入射する入射光と、光学積層体1により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学積層体1は、光Lが入射する平坦な入射面S1を有する。光学積層体1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光Lを選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光Lを透過する。また、光学積層体1は、上記特定波長帯以外の光に対して透明性を有する。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。但し、θは、入射面S1に対する垂線lと、入射光Lまたは反射光Lとのなす角である。φは、入射面S1内の特定の直線lと、入射光Lまたは反射光Lを入射面S1に射影した成分とのなす角である。ここで、入射面内の特定の直線lとは、入射角(θ、φ)を固定し、光学積層体1の入射面S1に対する垂線lを軸として光学積層体1を回転したときに、φ方向への反射強度が最大になる軸である。但し、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線lとして選択するものとする。なお、垂線lを基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線lを基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0059】
選択的に指向反射する特定の波長帯の光、および透過させる特定の光は、光学積層体1の用途により異なる。例えば、窓材として光学積層体1を適用する場合、選択的に指向反射する特定の波長帯の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定の波長帯の光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、入射光を正反射(入射角と反射角が等しい反射)の方向以外のある特定の方向へ反射すると共に、その反射光強度が正反射光強度より強く、かつ、指向性をもたない拡散反射強度よりも十分に強い反射のことである。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
【0060】
指向反射する方向φoは、−90°以上、90°以下であることが好ましい。光学積層体1を、例えば窓材に適用した場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空方向に戻すことができるからである。周辺に高い建物がない場合にはこの範囲の光学積層体1が有用である。また、指向反射する方向が(θ、−φ)近傍であることが好ましい。近傍とは、好ましく(θ、−φ)から5度以内、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内の範囲内のずれのことをいう。この範囲にすることで、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。このような指向反射を実現するためには、例えば球面や双曲面の一部や三角錐、四角錘、円錐などの3次元構造体を用いることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、その形状に基づいて(θo、φo)方向(0°<θo<90°、−90°<φo<90°)に反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて(θo、−φ)方向(0°<θo<90°)に反射させることができる。
【0061】
特定波長体の光の指向反射が、再帰反射近傍方向、すなわち、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光に対する、特定波長体の光の反射方向が、(θ、φ)近傍であることが好ましい。光学積層体1を、例えば窓材に適用した場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に戻すことができるからである。ここで近傍とは5度以内が好ましく、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内である。この範囲にすることで、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができるからである。また、赤外線センサーや赤外線撮像のように、赤外光照射部と受光部が隣接している場合は、指向反射方向は入射方向と等しくないとならないが、本発明のように特定の方向からセンシングする必要がない場合は、厳密に同一方向とする必要はない。
【0062】
透過性を持つ波長帯に対する透過像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。透過像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。60以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した透過像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。透過像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、透過像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0063】
透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。光学積層体1の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、透過像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置および測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A(株式会社小坂研究所)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
【0064】
光学積層体1の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得る観点からすると、入射面S1から入射し、構造層20を透過し、出射面S2から出射される透過光および反射光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすのが望ましい。更に、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。また、反射色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩くと色が変化して見えたりするため好ましくない。このような色調の変化を抑制する観点からすると、5°以上60°以下の入射角度θで入射面S1または出射面S2から入射し、構造層20により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、光学積層体1の両主面のいずれにおいても、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。このような反射光に対する色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、および出射面S2の両方の面において満たされることが望ましい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0066】
透光体21を形成する紫外線硬化樹脂の種類と積層構造とが異なる複数の光学積層体サンプルを作製し、各サンプルの透過率の経時変化を測定した。
【0067】
サンプルの作製に先立ち、図12に示す金型80を作製した。金型80はNi−P製であり、断面二等辺三角形状のプリズム形状の凹部が連続して配列された構造面80aを有する。CCP(コーナーキューブプリズム)プリズム形状の凹部の幅(配列ピッチ)は100μm、深さは47μmとした。また、以下の基本組成を有する4種類の紫外線硬化樹脂A、B、C及びDを作製した。
【0068】
<樹脂Aの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス(同社の登録商標。以下同じ。)」):97重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184(「イルガキュア」はスイス国 チバ ホールディング インコーポレーテッド社の登録商標。以下同じ。)」:3重量%
140℃での損失弾性率:1.3×10Pa
屈折率:1.533
<樹脂Bの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス」):82重量%
架橋剤(東京化成工業(株)製「T2325」):15重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184」:3重量%
140℃での損失弾性率:1.0×10Pa
屈折率:1.529
<樹脂Cの基本組成>
ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製「アロニックス」):67重量%
架橋剤(東京化成工業(株)製「T2325」):30重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184」:3重量%
140℃での損失弾性率:2.1×10Pa
屈折率:1.525
<樹脂Dの基本組成>
ウレタンアクリレート(共栄社化学(株)製「UF−8001G」):30重量%
トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学(株)製「ライトアクリレート3EG−A」):30重量%
ベンジルメタクリレート(共栄社化学(株)製「ライトエステルBZ」):7重量%
架橋剤(東京化成工業(株)製「T2325」):30重量%
光重合開始剤(日本化薬(株)社製「イルガキュア184」:3重量%
140℃での損失弾性率:1.1×10Pa
屈折率:1.486
【0069】
各樹脂A〜Dの損失弾性率は以下のように測定した。
膜厚100μmになるように硬化させた樹脂を、幅5mm、長さ20mmに打ち抜き、温度を−50℃から150℃まで毎分5℃で上昇させ、1Hzでの動的粘弾性を測定した。測定装置には、アイティ計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−220」を用いた。
【0070】
(実施例1)
金型80の構造面80aに樹脂Bを塗布し、その上に厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製「A4300」)を載置した。次に、PETフィルム側から紫外線を照射することで樹脂Bを硬化させた後、樹脂BとPETフィルムとの積層体を金型80から剥離した。これにより、プリズム形状の凹部(図2)が配列された構造面を有する樹脂層(透光体21)を作製した。
次に、得られた積層体のプリズム構造面に、光学機能層として、五酸化二ニオブ膜及び銀膜を交互に積層した多層膜をスパッタ法によって作製した。
次に、光学機能層の上に樹脂Bを塗布した後、PETフィルム(東洋紡社製「A4300」)を積層した。そして、当該樹脂Bを紫外線の照射によって硬化させることで、第2の透光体(図11)を形成した。これにより、目的とする指向反射体である構造層(図11)を作製した。
【0071】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(シグマアルドリッチ社製)100重量部に対して、トリエチレングリコール−ジーエチレンブチレート(3GO、シグマアルドリッチ社製)40重量部、マグネシウムの酢酸水溶液(濃度15重量%、シグマアルドリッチ社製)0.3重量部を添加した後、混練機で混練し、押出機によりシート状に押し出して、厚さ320μmの合わせガラス用中間膜を作製した。得られた中間膜2枚を、フロートガラス(縦100mm、横100mm、厚さ2.5mm)2枚に各々重ねた。そして、各フロートガラスで構造層202を挟み込み、これをゴムパック内に入れ、ゴムパック内を2.6kPaに減圧して20分間脱気した。その後、脱気した積層体をそのままオーブンに移し、100℃で30分間保持することで真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着した。これにより、図11に示す構造の光学積層体サンプルを作製した。
【0072】
次に、上記光学積層体サンプルの可視光(波長550nm)の透過率を測定した。そして、当該光学素子サンプルに対し、ヒートサイクル試験を実施した後、再び可視光(波長550nm)の透過率を測定し、透過率の変化を評価した。透過率の測定には、日本分光(株)製「V−7100」を用いた。また、ヒートサイクル試験には、エスペック(株)製「TSA−301L−W」を用いた。試験条件としては、−40℃で1時間保持した後、85℃で1時間保持、というサイクルを300回繰り返した後、常温で取り出した。構造層に損傷があると、透過率が変化するため、透過率の変化に基づく間接評価法により、光学積層体サンプルの耐久性を評価した。
【0073】
(実施例2)
樹脂Bの代わりに樹脂Cを用いた以外は、上述の実施例1と同様な条件で光学積層体サンプルを作製し、上記ヒートサイクル試験前後の透過率の変化を評価した。
【0074】
(実施例3)
樹脂Bの代わりに樹脂Aを用い、実施例1と同様な条件で構造層を作製した。得られた構造層を2枚のフロートガラス(縦100mm、横100mm、厚さ2.5mm)間に各々スペーサを介して挟み込んだ後、内部をアルゴンガスで置換し、両ガラスの端部を封止した。得られた光学積層体サンプルについて、上記ヒートサイクル試験前後の透過率の変化を評価した。
【0075】
(実施例4)
光学機能層としての五酸化二ニオブ膜及び銀膜の積層膜の代わりに、半透過膜としてアルミニウム膜を蒸着法により形成した以外は、上述の実施例1と同様な条件で光学積層体サンプルを作製した。得られたサンプルについて、上記ヒートサイクル試験前後の透過率の変化を評価した。
【0076】
(実施例5)
金型80の構造面80aに樹脂Dを塗布し、その上に厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製「A4300」)を載置した。次に、PETフィルム側から紫外線を照射することで樹脂Dを硬化させた後、樹脂DとPETフィルムとの積層体を金型80から剥離した。これにより、プリズム形状の凹部(図2)が配列された構造面を有する樹脂層(透光体21)を作製した。
次に、得られた積層体のプリズム構造面に、光学機能層として、五酸化二ニオブ膜及び銀膜を交互に積層した多層膜をスパッタ法によって作製した。これにより、目的とする指向反射体である構造層(図9)を作製した。
【0077】
次に、実施例1と同様な条件で合わせガラス用中間膜を作製し、これを第1のフロートガラス(縦100mm、横100mm、厚さ2.5mm)の一方の面に重ね、その上に上記構造層を載置した。そして、上記構造層の構造面と対向するように、第2のフロートガラス(縦100mm、横100mm、厚さ2.5mm)を、スペーサを介して第1のフロートガラスに積層し、これをゴムパック内に入れ、ゴムパック内を2.6kPaに減圧して20分間脱気した。その後、脱気した積層体をそのままオーブンに移し、100℃で30分間保持することで真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着した。その後、構造層と第2のフロートガラスとの間の空間部にアルゴンガスを充填し、両ガラスの端部を封止することで、図9に示す構造の光学積層体サンプルを作製した。得られたサンプルについて、上記ヒートサイクル試験前後の透過率の変化を評価した。
【0078】
(比較例1)
樹脂Bの代わりに樹脂Aを用いた以外は、実施例1と同様な条件で構造層を作製した。得られた構造層を粘着材を介してフロートガラス(縦100mm、横100mm、厚さ2.5mm)の片面に接着し、光学積層体サンプルを作製した。得られたサンプルについて、上記ヒートサイクル試験前後の透過率の変化を評価した。
【0079】
(比較例2)
比較例1で作製した構造層を、2枚のフロートガラス(縦100mm、横100mm、厚さ2.5mm)間に各々スペーサを介して挟み込んだ後、内部の大気を置換せずに、両ガラスの端部を封止した。得られた光学積層体サンプルについて、上記ヒートサイクル試験前後の透過率の変化を評価した。
【0080】
(比較例3)
樹脂Bの代わりに樹脂Aを用いた以外は、実施例1と同様な条件で光学積層体サンプルを作製した。得られたサンプルについて、上記ヒートサイクル試験前後の透過率の変化を評価した。
【0081】
実施例1〜5及び比較例1〜3に係る各サンプルの試験前後の透過率及び透過率変化の評価結果を表1にまとめて示す。ここでは、透過率変化の評価として、透過率の変化量が2%以上を不合格「×」、透過率変化量が2%未満を合格「○」とした。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示すように、比較例1〜3に係る各サンプルにおいて、透過率の顕著な低下が認められた。その理由は、比較例1に関しては、ヒートサイクルによる構造層の構造面の変形が考えられ、比較例2に関しては、ガラス内の残留水蒸気の影響による光学機能層の劣化が考えられる。また、比較例3に関しては、構造面を形成する樹脂Aの損失弾性率が低いため、熱圧着時における構造面の形状の崩れが透過率の低下を招いたものと考えられる。
【0084】
これに対して、実施例1〜5に関しては、透過率の顕著な低下は認められなかった。特に、実施例1及び2に関しては、構造面を形成する樹脂B、Cの損失弾性率が1.0×10−6Pa以上であったため、熱圧着時の構造面の変形が抑えられたものと考えられる。実施例3及び5に関しては、ガラス内をアルゴンで置換したため、残留水蒸気による影響を回避できたものと考えられる。一方、実施例4に関しては、比較例1〜3と同じ樹脂Aを用いているにもかかわらず、光学機能層の代わりに半透過膜を形成したことで、透過率の低下として表れにくかったものと推認される。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0086】
例えば以上の実施形態では、光学機能層22は、赤外線帯域の光を反射し、可視光帯域の光を透過させるように構成されたが、これに限られない。例えば、可視光帯域において反射すべき波長帯域と透過させるべき波長帯域を設定することで、本発明に係る光学素子をカラーフィルタとして機能させることができる。
【0087】
また、以上の実施形態では、本発明に係る光学積層体を建築用あるいは車載用の窓材に用いる例について説明したが、特定の波長帯域の光のみを選択的に透過させる各種光学デバイス用の窓部材にも、本発明は適用可能である。
【0088】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0089】
<変形例1>
構造層20として、散乱が少なく反対側を視認できる透明性を有する半透過層を用いる場合の具体例を以下に示す。半透過層は、例えば、単層または複数層の金属層からなる。
(1)構造体上に製膜する反射層をAgTi:8.5nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)として本発明に係る光学積層体を得た。
(2)構造体上に製膜する反射層をAgTi:3.4nm(Ag/Ti=98.5/1.5at%)として本発明に係る光学積層体を得た。
(3)構造体上に製膜する反射層をAgNdCu:14.5nm(Ag/Nd/Cu=99.0/0.4/0.6at%)として本発明に係る光学積層体を得た。
なお、半透過層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法を用いることができる。
【0090】
<変形例2>
図14(A)は、本発明の変形例2に係る光学積層体の一構成例を示す断面図(透光体21、光学機能層22、中間層32のみを抜き出した断面図)である。変形例2は、光の入射面に対して傾斜した複数の光学機能層22を、透光体21および中間層32の間に備え、これらの光学機能層22が互いに平行または略平行に配列されている。図14(A)は一例として、透光体21および中間層32がともに透光性を有し、中間層32側から入射した特定の波長帯域の光L1が光学機能層22によって指向反射し、それ以外の波長帯域の光L2が透過する場合を示している。ただし、光入射面は透光体21側であってもよい。
【0091】
図14(B)は、本変形例に係る光学素子の構造体の一構成例を示す斜視図である。構造体11aは、一方向に延在された三角柱状の凸部であり、この柱状の構造体11aが他の一方向に向かって一次元配列されることで透光体21の表面に凹部が形成されている。構造体11aの延在方向に垂直な断面は、例えば、直角三角形状を有する。構造体11aの鋭角側の傾斜面上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法などにより、光学機能層22が形成される。
【0092】
本変形例によれば、複数の光学機能層22を平行に配列していることより、光学機能層22による反射回数を、コーナーキューブ形状やプリズム形状の構造体11aを形成した場合に比べて低減することができる。したがって、反射率を高くすることができ、かつ、光学機能層22による光の吸収を低減できる。
【0093】
<変形例3>
図15(A)に示すように、構造体11aの形状を、光入射面または光出射面に垂直な垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。この場合、構造体11aの主軸lmが、垂線l1を基準にして構造体11aの配列方向Aに傾くことになる。ここで、構造体11aの主軸lmとは、構造体断面の底辺の中点と構造体の頂点とを通る直線を意味する。地面に対して略垂直に配置された窓材として光学積層体を使用する場合には、図15(B)に示すように、構造体11aの主軸lmが、垂線l1を基準にして下方(地面側)に傾いていることが好ましい。一般に窓材を介した熱の流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多いため、上記形状を採用することで、これら高角度から入射する光を効率的に上方に反射できるからである。図15では、プリズム形状の構造体11aを垂線l1に対して非対称な形状とした例が示されている。なお、プリズム形状以外の構造体11aを垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。例えば、コーナーキューブ体を垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。
【0094】
構造体11aがコーナーキューブ形状の場合、稜線Rが大きい場合は、上空に向けて傾けた方が良く、下方反射を抑制するという目的においては、地面側に向けて傾いている方が好ましい。太陽光線は、光学積層体に対して斜めから入射するため、構造の奥まで光が入射しにくく、入射側の形状が重要となる。すなわち、稜線部分のRが大きい場合は、再帰反射光が減少してしまうため、上空に向けて傾けることでこの現象を抑制することができる。また、コーナーキューブでは、反射面で3回反射することで再帰反射を実現するが、一部の光が2回反射により再帰反射以外の方向に漏れる。コーナーキューブを地面側に向けて傾けることで、この漏れ光を上空方向に多く戻すことができる。このように、形状や目的に応じてどちらの方向に傾けても良い。
【0095】
<変形例4>
本変形例では、図示しないが、光学積層体1の一主面上に、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層をさらに備えている。自己洗浄効果層は、例えば、TiOなどの光触媒を含んでいる。上述したように、光学積層体1は特定波長帯の光を部分的に反射する点に特徴を有している。光学積層体1を屋外や汚れの多い部屋などで使用する際には、表面に付着した汚れにより光が散乱され部分反射特性(例えば、指向反射特性)が失われてしまうため、表面が常に光学的に透明であることが好ましい。そのため、表面が撥水性や親水性などに優れ、表面が自動的に洗浄効果を発現することが好ましい。本変形例によれば、光学素子1の入射面上に自己洗浄効果層を形成しているので、撥水性や親水性などを入射面に付与することができる。したがって、表面への汚れ付着を抑制し、部分反射特性(例えば、指向反射特性)の低減を抑制できる。
【0096】
<変形例5>
本変形例は、光学積層体6が、特定波長の光を指向反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、上記実施形態とは異なっている。光学積層体6は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。この散乱体は、例えば、透光体21又は中間層32の表面または内部、および透光体21又は中間層32と光学機能層22との間のうち、少なくとも一箇所に設けられている。例えば、光学積層体6を窓材として適用する場合、光入射面とは反対側の領域にのみ、光散乱体を設けることが好ましい。光入射面側に光散乱体が存在すると、指向反射特性が失われてしまうからである。
【0097】
図16(A)は、本変形例に係る光学積層体6の第1の構成例を示す断面図である。図16(A)に示すように、光入射面と反対側にある透光体21は、樹脂と微粒子110とを含んでいる。微粒子110は、透光体21の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子110としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子または中空微粒子を用いることができる。具体的には、シリカ、アルミナなどの無機微粒子、スチレン、アクリル、やそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0098】
図16(B)〜(C)は、それぞれ本変形例に係る光学積層体6の第2および第3の構成例を示す断面図である。図16(B)の光学積層体6は、透光体21の裏面に光拡散層7をさらに備えている。一方、図16(C)の光学積層体6は、光学機能層22と透光体21との間に光拡散層7をさらに備えている。光拡散層7は、例えば、上記と同様の樹脂と微粒子とを含んでいる。
【0099】
本変形例によれば、赤外線などの特定波長帯の光を指向反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学積層体6を曇らせて、光学積層体6に対して意匠性を付与することができる。なお、光入射面が透光体21側の場合には、中間層32側に上記光拡散体を設ければよい。また、図示しないが、光散乱体は、中間層31若しくは中間層32、または基材11若しくは基材12、またはそれらの界面に設けても良い。
【0100】
<変形例6>
図17〜図19は、本発明に係る光学積層体の構造体の変形例を示す断面図である。
【0101】
本変形例の一態様は、図17(A)〜(B)に示すように、透光体21の一主面には、例えば、第1の方向に向かって配列された第1の構造体11cと、上記第1の方向とは直交する第2の方向に向かって配列された第2の構造体11cとが、互いの側面を貫通するように配列されている。柱状の構造体11cは、例えば、上述したプリズム形状やレンチキュラー形状などの柱状を有する凸部または凹部である。
【0102】
また、透光体21の一主面に、例えば、球面状やコーナーキューブ状などの形状を有する構造体11cを最稠密充填状態で2次元配列することにより正方稠密アレイ、デルタ稠密アレイ、六方稠密アレイなどの稠密アレイを形成するようにしてもよい。正方稠密アレイは、例えば図18(A)〜(C)に示すように、四角形状(例えば正方形状)の底面を有する構造体11cを正方稠密状に配列させたものである。六方稠密アレイは、例えば図19(A)〜(C)に示すように、六方形状の底面を有する構造体11cを六方稠密状に配列させたものである。
【0103】
以下、本発明の適用例について説明する。
【0104】
<適用例1>
上述の実施形態では、本発明に係る光学積層体を窓材などに適用する場合を例として説明したが、本発明に係る光学積層体を内装部材や外装部材と組み合わせて使用することも可能である。
【0105】
図20は、本適用例に係る建具(内装部材または外装部材)の一構成例を示す斜視図である。図20に示すように、建具401は、その採光部404に光学積層体402を備える構成を有している。具体的には、建具401は、光学積層体402と、その周縁部に設けられる枠材403とを備える。光学積層体402は枠材403により固定されるが、必要に応じて着脱可能である。採光部を有する種々の建具に適用可能である。光学積層体402としては、上記実施形態または変形例に係る光学積層体を採用し得る。
【0106】
<適用例2>
また、本発明に係る光学積層体は、合わせガラスとして用いることができる。この場合、各ガラスと光学機能層の間には中間層が設けられており、熱圧着等を施すことにより中間層が接着層として機能し、上記合わせガラスを作製することができる。このような中間層としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)を用いることができる。中間層は、合わせガラスが破損した場合に備え、飛散防止機能も有していることが好ましい。この合わせガラスを車載用窓として用いることにより、光学機能層によって熱線を反射できるため、車内が急激に暑くなることを防止することができる。この合わせガラスは、車両、電車、航空機、船舶等のあらゆる輸送手段、テーマパークでの乗り物等に広く用いることができ、用途に応じて2枚のガラスは湾曲していてもよい。この場合、光学体は、ガラスの湾曲に対し追従性を有し、湾曲しても一定の指向反射性、透過性を有していることが好ましい。合わせガラスは、全体としてある程度の透明性を有する必要があるため、中間層に用いられる材質(例えば樹脂)と、光学体に含まれる樹脂とは、屈折率が同じまたは近似していることが好ましい。一方、中間層を省略して、透光体に含まれる樹脂がガラスとの接着層を兼ねるようにしてもよい。この場合には、接着時の熱圧着工程等において、樹脂の形状ができるだけ崩れないような樹脂を用いるのが好ましい。対向する2つの基材はガラスに限定されず、一方または両方が、樹脂フィルム、シートまたはプレート等であってもよい。例えば、軽量かつ強固でフレキシブル性を有するエンジニアリングプラスチックや強化プラスチック等を採用し得る。なお、合わせガラスの用途は車載用途に限定されない。
【0107】
なお、上述の実施形態、実施例、変形例、適用例は適宜組み合わせることが可能であり、このような組み合わせによる発明も、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
1〜6、402…光学積層体
11、12…透明基材
11a、21a…構造面
20、201、202…構造層
21、23…透光体
22…光学機能層
31、32…中間層
33…ガス層
34…封止部材
41、42…基材
211…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明基材と、
前記第1の透明基材と対向する第2の透明基材と、
前記第1の透明基材と前記第2の透明基材との間に配置され、前記第2の透明基材を透過した光を部分的に指向反射させる構造層と
を具備する光学積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の光学積層体であって、
前記構造層は、前記第2の透明基材を透過した光のうち第1の波長帯域の光を指向反射し前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光を透過させる光学積層体。
【請求項3】
請求項2に記載の光学積層体であって、
前記構造層は、
指向反射性の凹部が配列された第1の表面を有する透光体と、
前記第1の表面に形成され、前記第1の波長帯域の光を反射し前記第2の波長帯域の光を透過させる光学機能層とを有する光学積層体。
【請求項4】
請求項3に記載の光学積層体であって、
前記透光体は、前記第1の表面とは反対側の第2の表面をさらに有し、
前記光学積層体は、前記第2の表面を前記第1の透明基材に接着させる第1の透明粘着層をさらに具備する光学積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の光学積層体であって、
前記光学積層体は、前記構造層を前記第2の透明基材へ接着させる第2の透明粘着層をさらに具備する光学積層体。
【請求項6】
請求項4に記載の光学積層体であって、
前記構造層と前記第2の透明基材との間に封入された不活性ガスの層をさらに具備する光学積層体。
【請求項7】
請求項1または2に記載の光学積層体であって、
前記第1及び第2の透明基材は、ガラス基板である光学積層体。
【請求項8】
請求項2に記載の光学積層体であって、
前記第1の波長帯域は赤外線帯域であり、
前記第2の波長帯域は可視光帯域である光学積層体。
【請求項9】
請求項2〜6のいずれか一に記載の光学積層体であって、
前記光学積層体は、光の入射角(θ、φ)(但し、θ:光の入射面に対する垂線と、前記入射面に入射する入射光または前記入射面から出射される反射光とのなす角、φ:前記入射面内の特定の直線と、前記入射光または前記反射光を前記入射面に射影した成分とのなす角)で前記入射面に入射した光のうち、第1の波長帯域の光を正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に選択的に指向反射するのに対して、前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光を透過する光学積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の光学積層体であって、
前記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.5mmの光学くしの透過写像鮮明度が、50以上である光学積層体。
【請求項11】
請求項9に記載の光学積層体であって、
前記透過する波長の光に対する、JIS K−7105に準拠して測定した0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学くしの透過写像鮮明度の合計値が、230以上である光学積層体。
【請求項12】
請求項9に記載の光学積層体であって、
前記第1の波長帯域の光に対する指向反射の方向φが、−90°以上、90°以下である光学積層体。
【請求項13】
請求項9に記載の光学積層体であって、
前記第1の波長帯域の光に対する指向反射の方向が、(θ、−φ)近傍である光学積層体。
【請求項14】
請求項9に記載の光学積層体であって、
前記第1の波長帯域の光に対する指向反射の方向が、(θ、φ)近傍である光学積層体。
【請求項15】
請求項1に記載の光学積層体であって、
前記構造層は、半透過層である光学積層体。
【請求項16】
請求項1または2に記載の光学積層体であって、
前記構造層が、光の入射面に対して傾斜した複数の構造層からなり、
前記複数の構造層が、互いに平行に配置されている光学積層体。
【請求項17】
請求項1または2に記載の光学積層体であって、
前記構造層は、プリズム形状、シリンドリカル形状、半球状、またはコーナーキューブ状である構造体を有する光学積層体。
【請求項18】
請求項17に記載の光学積層体であって、
前記構造体は、1次元または2次元的に配列されており、
前記構造体の主軸が、前記入射面の垂線を基準にして前記構造体の配列方向に傾いている光学積層体。
【請求項19】
請求項1または2に記載の光学積層体であって、
5°以上60°以下の入射角度で前記光学積層体の両面のいずれか一方から入射し、前記光学積層体により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、およびyの差の絶対値が、前記両面のいずれにおいても、0.05以下である光学積層体。
【請求項20】
請求項1または2に記載の光学積層体であって、
前記光学積層体の一主面上に、撥水性または親水性を有する層をさらに具備する光学積層体。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一に記載の光学積層体を採光部に備える建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−189590(P2011−189590A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56934(P2010−56934)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】