光学素子及び光損失測定装置
【課題】下部電極と上部電極との距離を可及的に小さく抑え、コア層に印加する電圧を効率良く十分に確保して消費電圧を低減させると共に、光導波路の光損失量を小さく抑える信頼性の高い光学素子を提供する。
【解決手段】基板1と、基板1上に形成された電気光学材料からなる光導波路2とを備えて光偏向素子が構成されている。光導波路2は、下部クラッド層3と上部クラッド層5との間に光路が形成されるコア層4が挟持されて構成されている。下部及び上部クラッド層3,5は、導電性酸化物を材料として形成されており、コア層4に電圧を印加するための下部及び上部電極を兼ねている。
【解決手段】基板1と、基板1上に形成された電気光学材料からなる光導波路2とを備えて光偏向素子が構成されている。光導波路2は、下部クラッド層3と上部クラッド層5との間に光路が形成されるコア層4が挟持されて構成されている。下部及び上部クラッド層3,5は、導電性酸化物を材料として形成されており、コア層4に電圧を印加するための下部及び上部電極を兼ねている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信及び光信号処理等の技術分野において用いられる光学素子、及び光学素子の構成要素である光導波路の光損失量を測定する光損失測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信における伝送帯域は近年増大の一途を辿り、波長多重化技術の進展と相俟って、高速・大容量化が進んでいる。光変調、光スイッチなどの光を制御する素子が活発に開発されている。これら光制御素子を作製する物質として、酸化物誘電体はその幅広い特性から有力な候補である。光制御は酸化物誘電体に電圧を印可して使用する。そのため酸化物誘電体の上部と下部に電極が必要である。しかしながら、これらの電極を作製すると、当該電極において光が吸収されて光損失となる。
【0003】
そこで、この電極への光の漏れを防止するために、屈折率の異なる酸化物誘電体を材料として用いてコア層及びクラッド層を供えた光導波路を作製し、コア層内に光を閉じこめる方式が採用されている。例えば、特許文献1には、基板として、下部電極を兼ねた導電性基板、ここではNb−SrTiO3(STO)単結晶を材料とした導電性基板を採用し、当該基板上に下部クラッド層、コア層、上部クラッド層、及び上部電極を積層してなる構造の光導波路素子が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−37704号公報
【特許文献2】特開平6−4708号公報
【特許文献3】特開平7−243941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、基板が下部電極を兼ねることにより、小型化及び構成簡略化を図ることができる。しかしながら、光導波路の厚みは以前の構成のものと同様であり、光導波路のコア層に十分な電圧を印加するためには比較的高い電圧を光導波路に与えることが必要となる。この場合、光学素子の消費電圧が大きいという問題がある。更に、Nb−STO単結晶は所期の波長の光を吸収し易く、これを基板材料に用いた場合、光導波路の光損失量が大きいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、下部電極と上部電極との距離を可及的に小さく抑え、コア層に印加する電圧を効率良く十分に確保して消費電圧を低減させると共に、光導波路の光損失量を小さく抑えることを可能とする信頼性の高い光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子は、基板と、前記基板上に設けられた電気光学材料からなる光導波路とを含み、前記光導波路は、コア層と、前記コア層を挟持する下部クラッド層及び上部クラッド層とを備えて構成されており、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層のうち、少なくとも前記下部クラッド層が導電性酸化物を含む材料からなる。
【0008】
本発明の光損失測定装置は、光が入射するプリズムと、光強度を測定する光強度測定手段とを含み、光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、前記プリズムが前記光導波路上を移動自在に設置され、前記プリズムは、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、前記光強度測定手段は、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定する。
【0009】
本発明の光損失測定方法は、光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、プリズムを前記光導波路上で移動自在に設置して、前記プリズムにより、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下部電極と上部電極との距離を可及的に小さく抑え、消費電圧を低減させるも、コア層に印加する電圧を効率良く十分に確保する共に、光導波路の光損失量を小さく抑えることを可能とする信頼性の高い光学素子が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
−本発明の基本骨子−
光学素子の消費電圧を抑えるも、コア層に印加する電圧を十分に確保するには、光導波路の構成要素であり、コア層の上下を挟持するクラッド層の一方、望ましくは双方を導電材料で作製すれば良い。下部及び上部クラッドを導電材料で作製することにより、これらが下部及び上部電極を兼ねることになり、電極間距離がコア層の厚みとなり、言わば可及的に電極間距離を低減させることができる。この構成により、消費電圧を低減させるも、コア層に印加する電圧を十分に確保することができる。
【0012】
しかしながらこの場合、コア層の材料や基板材料との関係を考慮して導電材料を選択する必要がある。本発明では、導電材料の選択基準として光導波路の光損失量を採択し、この光導波路の光損失量を低値に抑えることを指向する。以下に説明するように、本発明者は、少なくとも下部クラッド(望ましくは上部及び上部クラッドの双方)の導電材料として、導電性酸化物が最適であることを見出した。
【0013】
先ず、基板に絶縁材料、ここではSTOを用いた光学素子について、光導波路の光損失量を調べた。ここで、基板上には光導波路(コア層)として(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)(PLZT:9/65/35)を材料として、膜厚2μm程度に形成した。入射光として、波長1.55μmの光を用いて光損失量を測定した。測定結果を図1に示す。絶縁材料であるSTOは光を吸収しないため、光損失は殆ど見られず、光損失量はTEモード(光の伝搬方向に電界成分を持たない分極方向)で0.5dB/cmという極めて小さい値を示した。このことから、基板で光が吸収されなければ、PLZT(9/65/35)には殆ど光損失が見られない(0.5dB/cm以下程度)であることが判る。
【0014】
続いて、基板に導電材料、ここではNb−STO単結晶を用いた従来(特許文献1と同様)の光学素子について、光損失量を調べた。ここで、上記と同様に、基板上には光導波路(コア層)としてPLZT(9/65/35)を材料として、膜厚2μm程度に形成した。入射光として、波長1.55μmの光を用いて測定した。測定結果を図2に示す。光損失はTEモードで10dB/cmと大きい値を示した。この結果を上記の結果と併せて考察すれば、基板の導電材料としてNb−STO単結晶を用いた場合には、Nb−STOが波長1.55μmの光を吸収し、光導波路の光損失量が大きく、光学素子として実効を確保することが困難であることが判る。
【0015】
以上の考察を踏まえ、クラッドに導電材料として導電性酸化物を用いる場合について説明する。
先ず、導電性酸化物としてSrRuO3(SRO)を用いた場合について述べる。ここでは、絶縁性のSTO基板上にSROを膜厚100nm程度に形成し、このSRO上に光導波路(コア層)としてPLZT(9/65/35)を膜厚2μm程度に形成した。測定結果を図3に示す。光損失はTEモードで2.7dB/cmと比較的小さい値を示した。
【0016】
次に、導電性酸化物として(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1)(LSCO)を用いた場合について述べる。ここでは、絶縁性のSTO基板上にLSCOを膜厚150nm程度に形成し、このLSCO上に光導波路(コア層)としてPLZT(9/65/35)を膜厚2μm程度に形成した。測定結果を図4に示す。光損失はTEモードで3.5dB/cmと比較的小さい値を示した。
【0017】
そして、上述のSROを用いた場合及びLSCOを用いた場合について、入射光の波長と光透過率との関係について調べた。測定結果を図5に示す。このように、双方の場合とも、1000nm程度〜2500nm程度の広範囲にわたって、比較的良好な光透過率を示すことが判る。
【0018】
以上の結果から、少なくとも下部クラッド(望ましくは上部及び上部クラッドの双方)の導電材料として、導電性酸化物を用いることにより、光学素子の消費電圧を抑えるも、コア層に印加する電圧を十分に確保するのみならず、光導波路の光損失量を低値に抑えることが可能となる。
【0019】
ここで、詳しい実験結果の記載は省略するが、クラッドの材料に用いる導電性酸化物としては、SROやLSCO以外にも、(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),Sr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)等も好適である。
【0020】
なお、特許文献2には、光導波路のクラッドに導電材料として化合物半導体(InP)を用いた例が開示されている。この特許文献2では、上記のような光導波路の光損失量に関する考察・実証を欠いており、基板やコア層との相性を勘案するに、光損失量を十分に低減させることは困難であると考える。
【0021】
−本発明を適用した好適な諸実施形態
以下、本発明を適用した具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
本実施形態では、本発明を光学素子である光偏向素子に適用した例を開示する。光偏向素子とは、入射光を所望の角度で偏向させて出力する光学素子である。
【0023】
図6は、第1の実施形態による光偏向素子の主要構成を示す模式図であり、(a)が平面図、(b)が(a)の線分I−Iに沿った断面図である。
この光偏向素子は、基板1と、基板1上に形成された電気光学材料からなる光導波路2とを備えて構成されている。
【0024】
基板1は、絶縁材料、ここではSrTiO3(STO)を主成分しており、例えばNbを1%含有するSTOを材料として主成長面の結晶方位が(100)となるように構成されている。
【0025】
光導波路2は、いわゆるスラブ型導波路であり、電気光学効果膜が2層以上、ここでは3層積層されてなるものであり、具体的には、下部クラッド層3と上部クラッド層5との間に光路が形成されるコア層4が挟持されて構成されている。
【0026】
コア層4の電気光学材料としては、大きな電気光学効果を持つ強誘電体である例えば単純ペロブスカイト構造のPb(Zr1-xTix)O3(0≦x≦1)、(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)、Pb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、Pb(B'1/2B"1/2)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、及びPb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は6価の遷移金属、B"は3価の遷移金属)、Ba(FexNb1-x)O3(0≦x≦1)、(1−x)NaNbO3・xKNbO3(0≦x≦1)のうちから選ばれた1種を含むものが好ましい。ここで、光導波路3の各電気光学効果膜は、エピタキシャル成長により形成されるエピタキシャル膜であり、主成長面の結晶方位が例えば(100)とされてなるものである。
【0027】
また、タングステンブロンズ構造の電気光学材料、例えば(Sr1-xBax)Nb2O6(0≦x≦1)、(Sr1-xBax)Ta2O6(0≦x≦1)、PbNb2O6、及びBa2NaNb5O15のうちから選ばれた1種を含むものや、ビスマス層状構造の電気光学材料、例えば(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素:0≦x≦1)、SrBi2Ta2O9、及びSrBi4Ti4O15のうちから選ばれた1種を含むものを用いても好適である。
【0028】
下部クラッド層3は、導電性酸化物を材料として形成されており、コア層4に電圧を印加するための下部電極を兼ねている。なお、下部クラッド層下に別個に所期の下部電極を形成するようにしても良い。
この導電性酸化物としては、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。
【0029】
上部クラッド層5は、導電性酸化物を材料として形成されており、コア層4に電圧を印加するための上部電極(偏向電極)を兼ねている。なお、上部クラッド層上に別個に所期の上部電極を形成するようにしても良い。この上部クラッド層5は、コア層4上で例えば三角形状に形成されており、下部クラッド層3との間で所期の電圧を印加することにより、入射光を所望の角度に偏向させて出力する機能を有するものである。
【0030】
上部クラッド層5の導電性酸化物としては、下部クラッド層3と同様に、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。
【0031】
なお、下部クラッド層3及び上部クラッド層5とは、通常は同一の材料で形成されるが、各々異なる導電性酸化物を用いて形成される場合も考えられる。
【0032】
ここで、本実施形態による光偏向素子の製造方法について説明する。
主成長面の結晶方位が(100)であるSrTiO3からなる基板1上に、導電性酸化物であるLa0.5Sr0.5CoO3を膜厚40nm程度に堆積して下部クラッド層3とし、その上に屈折率2.40(波長1.55nm)のPLZT (9/65/35)を膜厚2μm程度に堆積しコア層4とし、La0.5Sr0.5CoO3を膜厚40nm程度に堆積して上部クラッド層5とする。
【0033】
以下、コア層4のPLZTと、下部及び上部クラッド層11,13のLa0.5Sr0.5CoO3の作製方法について説明する。
PLZTは、ゾルゲル法でエピタキシャル成長させることにより作製する。PLZT用のゾルゲル溶液としては、構成金属元素の有機化合物であるPb(CH3COO)2・3H2O〔酢酸鉛〕、La(i−OC3H7)3〔ランタンイソプロポキシド〕、Ti(i−OC3H7)4〔チタニウムイソプロポキシド〕、Zr(OC3H7)4〔ジルコニウムプロポキシド〕、及び安定剤としてのCH3COCH2COCH3 (2,4−ペンタンジオン)を溶剤であるCH3C2H4OH〔2−メトキシエタノール〕で還流により合成する。
【0034】
PLZT(9/65/35)組成を作製する場合には、Pb(CH3COO)2・3H2O/La(i−OC3H7)3のモル比を101/9とし、Zr(OC3H7)4/Ti(i−OC3H7)4のモル比を65/35とすれば良い。このゾルゲル溶液をスピンコート法により基板1上に塗布し、酸素雰囲気中にて350℃で仮焼成、750℃で焼成を行う。1回に成長可能な膜厚は約120nm程度であり、所望の膜厚となるまで塗布、仮焼成及び焼成の工程を繰り返す。
La0.5Sr0.5CoO3は、いわゆるレーザーアブレーション法(PLD法)により作製する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、下部電極と上部電極との距離、即ち下部クラッド層3と上部クラッド層5との距離を可及的に小さく抑え、消費電圧を低減させるも、コア層4に印加する電圧を効率良く十分に確保する共に、光導波路2の光損失量を小さく抑えることを可能とする信頼性の高い光偏向素子が実現する。
【0036】
(第2の実施形態)
本実施形態では、光学素子の構成要素である光導波路の光損失量を測定するための光損失測定装置を開示する。
【0037】
第1の実施形態において説明したように、光学素子(光偏向素子)の光導波路の光損失量を正確に測定することは、当該光学素子の光学特性を評価するために必須である。
しかしながら、光導波路の光損失量の正確な測定は困難であった。研究段階の光損失測定は、透明基板上に作製した酸化物誘電体の透過光(表面から入射して、酸化物誘電体と透明基板を透過した光)の強度から測定していた。ところがこの方法では、実際の光導波路としたときの光損失と関連性に乏しく、容易に光導波路としての損失を測定する方法が求められていた。
【0038】
従来の光損失測定方法としては、カットバック法、プリズム移動法、散乱検出法がある。
カットバック法は、試料の長さを適宜変え、その長さに対する光強度から光損失を測定する手法である。この手法を用いた場合、実際の光導波路に即した形で測定することができる反面、破壊測定であること、光導波路に光を正確に入射するにはかなりの熟練を要すること等の問題があった。
【0039】
プリズム移動法は、2つのプリズムを使用して測定を行う手法である。プリズムから光導波路に光を入射させ、プリズムの位置を変えて出射光を取り出し、その光強度から光損失を測定する。この測定方法を用いた場合、比較的容易に光損失を測定することができるが、プリズムへの入射光と出射光の角度を正確に合わせる必要があり、測定を困難にしていた。
【0040】
散乱検出法は、プリズムから光導波路に光を入射させ、光導波路の表面散乱を測定し、光損失を測定する手法である。出射光をプリズムにより取り出す必要がなく簡単な方法である反面、平面導波路の下部に光を吸収するもの(例えば基板)があると、正確な光損失値を測定することができない等の問題があった。
【0041】
本実施形態では、上記の課題を解決すべく、光導波路の端面を特に精緻に形成する必要なく、プリズムに対する入射光及び出射光の角度を正確に調整する必要なく、光導波路の下部に光を吸収する部材(基板等)がある場合においても正確に光損失量を測定することを可能とする光損失測定装置を開示する。
【0042】
図7は、第2の実施形態による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
この光損失測定装置は、プリズムカップリング法を用いた装置であり、光が入射するプリズム11と、光強度を検出する光強度検出器12とを備えて構成されている。
【0043】
プリズム11は、光損失の測定対象となる光導波路(ここでは平面導波路22)を含む被測定部材に対して、光導波路22上を移動自在に設置され、光導波路22内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光する。被測定部材は、基板21上に平面導波路22が形成されたものである。図7中で、プリズム11の屈折率をnp、平面導波路22の屈折率をn1、基板21の屈折率をn2とする。
【0044】
光強度検出器12は、プリズム11の設置位置に応じた平面導波路22の端面からの散乱光強度を、当該端面近傍で測定するものである。
【0045】
ここで、入射光及び平面導波路の端面における反射光のプリズム入射角依存について説明する。図8は、このプリズム入射角依存を説明するための参考図である。
図8(a)に示すように、基板111上に形成された平面導波路112の表面からの反射光を光強度検出器102で検出する場合、光強度の極小ピーク値を示す入射角θ1,θ2が存在する。図8中で、平面導波路112の屈折率をnF、基板21の屈折率をnSとし、nF>nSとする。
【0046】
また、図8(b)に示すように、平面導波路112内で反射を繰り返して平面導波路112の端面で散乱する光を光強度検出器102で検出する場合、光強度の極大ピーク値を示す入射角θ1,θ2が存在する。
【0047】
実際の平面導波路を用いて、入射光の角度と光強度との関係について測定した結果を図9に示す。このように、プリズム111へ入射した光がそのまま端面反射光となっていることが判る。
【0048】
なお、図8の装置構成を用いて、平面導波路の光損失量を得る技術が特許文献3に開示されている。しかしながらこの場合、基板111による光吸収により正確な光損失量を検出することが困難となる懸念がある。
【0049】
次に、図7の光損失測定装置を用いた光損失量の測定方法について説明する。
図7において、先ずプリズム11を平面導波路22上に設置する。当該設置位置を0として、プリズム11を図中右方へ移動させて距離Lを変えて、平面導波路22の端面反射光の光強度を光強度検出器12により検出する。
【0050】
測定に基づく光強度のピーク値Pとプリズム11の位置Lとの関係を図10に示す。
このように、両者の関係は、Lの増加に伴いPがほぼ線形に減少する。
光損失測定装置は、光強度のピーク値Pとプリズム11の位置Lとの関係から光損失αを求める。光損失αは以下の式で求める。
α=|10*log(ΔP/ΔL)|
【0051】
ここで、Nb−STO基板上に作製したPLZTからなる平面導波路における光損失の測定結果を示す。測定した光の波長は1.55μmであり、Si単結晶からなるプリズムを用いた。
先ず、散乱光検出法を用いた場合の光損失の測定結果を図11に示す。
図11の横軸0.2cm〜0.5cmの傾きから、光損失量は0.3dB/cm程度と測定できる。しかしながらこの場合、実際には平面導波路の下部に存するNb−STO基板に光が吸収されるので、実際の平面導波路の光損失量は当然に更に高値となると考えられる。このことは、PLZTからなる平面導波路に導光した場合と、導光しない場合とにおいて、出射光の強度差から求めた損失が約20dB/cm程度であることから裏付けられる。
【0052】
続いて、本実施形態の光損失測定装置を用いた光損失の測定結果を図12に示す。
プリズム11の位置Lに対して、光導波路12の端面の散乱光強度をプロットした。傾きから光損失が15dB/cm程度であることが判る。この結果から、光導波路の下部に基板等の光を吸収する部材が存する場合でも、本実施形態の光損失測定装置を用いることにより光損失を正確且つ容易に測定することができることが判る。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、光導波路の端面を特に精緻に形成する必要なく、プリズムに対する入射光及び出射光の角度を正確に調整する必要なく、光導波路の下部に光を吸収する部材(基板等)がある場合においても正確に光損失量を測定することを可能とする光損失測定装置が実現する。
【0054】
(変形例)
以下、第2の実施形態の変形例について説明する。なお、第2の実施形態による光損失測定装置の構成部材等と同一のものについては、同符号を記して詳しい説明を省略する。
【0055】
図13は、第2の実施形態の変形例による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
この光損失測定装置は、第2の実施形態による図7の装置構成に加え、光強度検出器12により検出された光強度から光損失量を算出する光損失算出部13を備えて構成されている。
光損失算出部13は、光強度検出器12により測定された光強度を積分して、光損失量を算出するものである。
【0056】
光強度検出器12で光強度を測定する場合、図14(a)に示すように、光強度は光強度検出器12の測定位置L'に依存した曲線を描く。ここで、光強度のピーク値Pを光強度と見なしても良い場合が多いが、当該曲線で囲む面積、即ち積分値がより正確な光強度値となる。
【0057】
本変形例では、この事実を踏まえ、光損失算出部13により、光強度検出器12で測定された光強度を積分して、図14(b)に示すように光損失量を算出する構成を採る。この構成により、第2の実施形態で奏する緒効果に加え、更に正確に光損失量を測定することが可能となる。
【0058】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0059】
(付記1)基板と、
前記基板上に設けられた電気光学材料からなる光導波路と
を含み、
前記光導波路は、コア層と、前記コア層を挟持する下部クラッド層及び上部クラッド層とを備えて構成されており、
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層のうち、少なくとも前記下部クラッド層が導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする光学素子。
【0060】
(付記2)前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層は、共に前記導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0061】
(付記3)前記導電性酸化物は、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする付記1又は2に記載の光学素子。
【0062】
(付記4)前記基板は、SrTiO3及びLaAlO3から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
【0063】
(付記5)前記コア層は、絶縁膜基板の結晶方位に対してエピタキシャル成長されてなることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【0064】
(付記6)前記コア層の主成長面が(100)であることを特徴とする付記5に記載の光学素子。
【0065】
(付記7)前記コア層は、単純ペロブスカイト構造を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【0066】
(付記8)前記単純ペロブスカイト構造は、Pb(Zr1-xTix)O3(0≦x≦1)、(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)、Pb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、Pb(B'1/2B"1/2)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、及びPb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は6価の遷移金属、B"は3価の遷移金属)、Ba(FexNb1-x)O3(0≦x≦1)、(1−x)NaNbO3・xKNbO3(0≦x≦1)のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする付記7に記載の光学素子。
【0067】
(付記9)前記コア層は、少なくとも1層がタングステンブロンズ構造を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【0068】
(付記10)前記タングステンブロンズ構造は、(Sr1-xBax)Nb2O6(0≦x≦1)、(Sr1-xBax)Ta2O6(0≦x≦1)、PbNb2O6、及びBa2NaNb5O15のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする付記9に記載の光学素子。
【0069】
(付記11)前記コア層は、少なくとも1層がビスマス層状構造を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【0070】
(付記12)前記ビスマス層状構造は、(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素:0≦x≦1)、SrBi2Ta2O9、及びSrBi4Ti4O15のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする付記11に記載の光学素子。
【0071】
(付記13)光が入射するプリズムと、
光強度を測定する光強度測定手段と
を含み、
光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、前記プリズムが前記光導波路上を移動自在に設置され、
前記プリズムは、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、
前記光強度測定手段は、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定することを特徴とする光損失測定装置。
【0072】
(付記14)前記光強度測定手段により測定された前記光強度を積分して、光損失を算出する光損失算出手段を更に含むことを特徴とする付記13に記載の光損失測定装置。
【0073】
(付記15)光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、プリズムを前記光導波路上で移動自在に設置して、
前記プリズムにより、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、
前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定することを特徴とする光損失測定方法。
【0074】
(付記16)測定された前記光強度を積分して、光損失を算出することを特徴とする付記15に記載の光損失測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】STO基板上に形成されたPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図2】Nb−STO基板上に形成されたPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図3】STO基板上に形成されたSRO及びPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図4】STO基板上に形成されたLSCO及びPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図5】SROを用いた場合及びLSCOを用いた場合について、入射光の波長と光透過率との関係を示す特性図である。
【図6】第1の実施形態による光偏向素子の主要構成を示す模式図である。
【図7】第2の実施形態による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】入射光及び平面導波路の端面における反射光のプリズム入射角依存の説明図である。
【図9】実際の平面導波路を用いて、入射光の角度と光強度との関係について測定した結果を示す特性図である。
【図10】測定に基づく光強度のピーク値とプリズム11の位置との関係を示す特性図である。
【図11】散乱光検出法を用いた場合の光損失の測定結果を示す特性図である。
【図12】第2の実施形態の光損失測定装置を用いた光損失の測定結果を示す特性図である。
【図13】第2の実施形態の変形例による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図14】第2の実施形態の変形例による光損失測定装置を用いた各種測定例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0076】
1,21 基板
2 光導波路
3 下部クラッド層
4 コア層
5 上部クラッド層
11 プリズム
12 光強度検出器
13 光損失算出部
22 平面導波路
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信及び光信号処理等の技術分野において用いられる光学素子、及び光学素子の構成要素である光導波路の光損失量を測定する光損失測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信における伝送帯域は近年増大の一途を辿り、波長多重化技術の進展と相俟って、高速・大容量化が進んでいる。光変調、光スイッチなどの光を制御する素子が活発に開発されている。これら光制御素子を作製する物質として、酸化物誘電体はその幅広い特性から有力な候補である。光制御は酸化物誘電体に電圧を印可して使用する。そのため酸化物誘電体の上部と下部に電極が必要である。しかしながら、これらの電極を作製すると、当該電極において光が吸収されて光損失となる。
【0003】
そこで、この電極への光の漏れを防止するために、屈折率の異なる酸化物誘電体を材料として用いてコア層及びクラッド層を供えた光導波路を作製し、コア層内に光を閉じこめる方式が採用されている。例えば、特許文献1には、基板として、下部電極を兼ねた導電性基板、ここではNb−SrTiO3(STO)単結晶を材料とした導電性基板を採用し、当該基板上に下部クラッド層、コア層、上部クラッド層、及び上部電極を積層してなる構造の光導波路素子が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−37704号公報
【特許文献2】特開平6−4708号公報
【特許文献3】特開平7−243941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、基板が下部電極を兼ねることにより、小型化及び構成簡略化を図ることができる。しかしながら、光導波路の厚みは以前の構成のものと同様であり、光導波路のコア層に十分な電圧を印加するためには比較的高い電圧を光導波路に与えることが必要となる。この場合、光学素子の消費電圧が大きいという問題がある。更に、Nb−STO単結晶は所期の波長の光を吸収し易く、これを基板材料に用いた場合、光導波路の光損失量が大きいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、下部電極と上部電極との距離を可及的に小さく抑え、コア層に印加する電圧を効率良く十分に確保して消費電圧を低減させると共に、光導波路の光損失量を小さく抑えることを可能とする信頼性の高い光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子は、基板と、前記基板上に設けられた電気光学材料からなる光導波路とを含み、前記光導波路は、コア層と、前記コア層を挟持する下部クラッド層及び上部クラッド層とを備えて構成されており、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層のうち、少なくとも前記下部クラッド層が導電性酸化物を含む材料からなる。
【0008】
本発明の光損失測定装置は、光が入射するプリズムと、光強度を測定する光強度測定手段とを含み、光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、前記プリズムが前記光導波路上を移動自在に設置され、前記プリズムは、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、前記光強度測定手段は、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定する。
【0009】
本発明の光損失測定方法は、光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、プリズムを前記光導波路上で移動自在に設置して、前記プリズムにより、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下部電極と上部電極との距離を可及的に小さく抑え、消費電圧を低減させるも、コア層に印加する電圧を効率良く十分に確保する共に、光導波路の光損失量を小さく抑えることを可能とする信頼性の高い光学素子が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
−本発明の基本骨子−
光学素子の消費電圧を抑えるも、コア層に印加する電圧を十分に確保するには、光導波路の構成要素であり、コア層の上下を挟持するクラッド層の一方、望ましくは双方を導電材料で作製すれば良い。下部及び上部クラッドを導電材料で作製することにより、これらが下部及び上部電極を兼ねることになり、電極間距離がコア層の厚みとなり、言わば可及的に電極間距離を低減させることができる。この構成により、消費電圧を低減させるも、コア層に印加する電圧を十分に確保することができる。
【0012】
しかしながらこの場合、コア層の材料や基板材料との関係を考慮して導電材料を選択する必要がある。本発明では、導電材料の選択基準として光導波路の光損失量を採択し、この光導波路の光損失量を低値に抑えることを指向する。以下に説明するように、本発明者は、少なくとも下部クラッド(望ましくは上部及び上部クラッドの双方)の導電材料として、導電性酸化物が最適であることを見出した。
【0013】
先ず、基板に絶縁材料、ここではSTOを用いた光学素子について、光導波路の光損失量を調べた。ここで、基板上には光導波路(コア層)として(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)(PLZT:9/65/35)を材料として、膜厚2μm程度に形成した。入射光として、波長1.55μmの光を用いて光損失量を測定した。測定結果を図1に示す。絶縁材料であるSTOは光を吸収しないため、光損失は殆ど見られず、光損失量はTEモード(光の伝搬方向に電界成分を持たない分極方向)で0.5dB/cmという極めて小さい値を示した。このことから、基板で光が吸収されなければ、PLZT(9/65/35)には殆ど光損失が見られない(0.5dB/cm以下程度)であることが判る。
【0014】
続いて、基板に導電材料、ここではNb−STO単結晶を用いた従来(特許文献1と同様)の光学素子について、光損失量を調べた。ここで、上記と同様に、基板上には光導波路(コア層)としてPLZT(9/65/35)を材料として、膜厚2μm程度に形成した。入射光として、波長1.55μmの光を用いて測定した。測定結果を図2に示す。光損失はTEモードで10dB/cmと大きい値を示した。この結果を上記の結果と併せて考察すれば、基板の導電材料としてNb−STO単結晶を用いた場合には、Nb−STOが波長1.55μmの光を吸収し、光導波路の光損失量が大きく、光学素子として実効を確保することが困難であることが判る。
【0015】
以上の考察を踏まえ、クラッドに導電材料として導電性酸化物を用いる場合について説明する。
先ず、導電性酸化物としてSrRuO3(SRO)を用いた場合について述べる。ここでは、絶縁性のSTO基板上にSROを膜厚100nm程度に形成し、このSRO上に光導波路(コア層)としてPLZT(9/65/35)を膜厚2μm程度に形成した。測定結果を図3に示す。光損失はTEモードで2.7dB/cmと比較的小さい値を示した。
【0016】
次に、導電性酸化物として(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1)(LSCO)を用いた場合について述べる。ここでは、絶縁性のSTO基板上にLSCOを膜厚150nm程度に形成し、このLSCO上に光導波路(コア層)としてPLZT(9/65/35)を膜厚2μm程度に形成した。測定結果を図4に示す。光損失はTEモードで3.5dB/cmと比較的小さい値を示した。
【0017】
そして、上述のSROを用いた場合及びLSCOを用いた場合について、入射光の波長と光透過率との関係について調べた。測定結果を図5に示す。このように、双方の場合とも、1000nm程度〜2500nm程度の広範囲にわたって、比較的良好な光透過率を示すことが判る。
【0018】
以上の結果から、少なくとも下部クラッド(望ましくは上部及び上部クラッドの双方)の導電材料として、導電性酸化物を用いることにより、光学素子の消費電圧を抑えるも、コア層に印加する電圧を十分に確保するのみならず、光導波路の光損失量を低値に抑えることが可能となる。
【0019】
ここで、詳しい実験結果の記載は省略するが、クラッドの材料に用いる導電性酸化物としては、SROやLSCO以外にも、(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),Sr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)等も好適である。
【0020】
なお、特許文献2には、光導波路のクラッドに導電材料として化合物半導体(InP)を用いた例が開示されている。この特許文献2では、上記のような光導波路の光損失量に関する考察・実証を欠いており、基板やコア層との相性を勘案するに、光損失量を十分に低減させることは困難であると考える。
【0021】
−本発明を適用した好適な諸実施形態
以下、本発明を適用した具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
本実施形態では、本発明を光学素子である光偏向素子に適用した例を開示する。光偏向素子とは、入射光を所望の角度で偏向させて出力する光学素子である。
【0023】
図6は、第1の実施形態による光偏向素子の主要構成を示す模式図であり、(a)が平面図、(b)が(a)の線分I−Iに沿った断面図である。
この光偏向素子は、基板1と、基板1上に形成された電気光学材料からなる光導波路2とを備えて構成されている。
【0024】
基板1は、絶縁材料、ここではSrTiO3(STO)を主成分しており、例えばNbを1%含有するSTOを材料として主成長面の結晶方位が(100)となるように構成されている。
【0025】
光導波路2は、いわゆるスラブ型導波路であり、電気光学効果膜が2層以上、ここでは3層積層されてなるものであり、具体的には、下部クラッド層3と上部クラッド層5との間に光路が形成されるコア層4が挟持されて構成されている。
【0026】
コア層4の電気光学材料としては、大きな電気光学効果を持つ強誘電体である例えば単純ペロブスカイト構造のPb(Zr1-xTix)O3(0≦x≦1)、(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)、Pb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、Pb(B'1/2B"1/2)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、及びPb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は6価の遷移金属、B"は3価の遷移金属)、Ba(FexNb1-x)O3(0≦x≦1)、(1−x)NaNbO3・xKNbO3(0≦x≦1)のうちから選ばれた1種を含むものが好ましい。ここで、光導波路3の各電気光学効果膜は、エピタキシャル成長により形成されるエピタキシャル膜であり、主成長面の結晶方位が例えば(100)とされてなるものである。
【0027】
また、タングステンブロンズ構造の電気光学材料、例えば(Sr1-xBax)Nb2O6(0≦x≦1)、(Sr1-xBax)Ta2O6(0≦x≦1)、PbNb2O6、及びBa2NaNb5O15のうちから選ばれた1種を含むものや、ビスマス層状構造の電気光学材料、例えば(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素:0≦x≦1)、SrBi2Ta2O9、及びSrBi4Ti4O15のうちから選ばれた1種を含むものを用いても好適である。
【0028】
下部クラッド層3は、導電性酸化物を材料として形成されており、コア層4に電圧を印加するための下部電極を兼ねている。なお、下部クラッド層下に別個に所期の下部電極を形成するようにしても良い。
この導電性酸化物としては、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。
【0029】
上部クラッド層5は、導電性酸化物を材料として形成されており、コア層4に電圧を印加するための上部電極(偏向電極)を兼ねている。なお、上部クラッド層上に別個に所期の上部電極を形成するようにしても良い。この上部クラッド層5は、コア層4上で例えば三角形状に形成されており、下部クラッド層3との間で所期の電圧を印加することにより、入射光を所望の角度に偏向させて出力する機能を有するものである。
【0030】
上部クラッド層5の導電性酸化物としては、下部クラッド層3と同様に、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。
【0031】
なお、下部クラッド層3及び上部クラッド層5とは、通常は同一の材料で形成されるが、各々異なる導電性酸化物を用いて形成される場合も考えられる。
【0032】
ここで、本実施形態による光偏向素子の製造方法について説明する。
主成長面の結晶方位が(100)であるSrTiO3からなる基板1上に、導電性酸化物であるLa0.5Sr0.5CoO3を膜厚40nm程度に堆積して下部クラッド層3とし、その上に屈折率2.40(波長1.55nm)のPLZT (9/65/35)を膜厚2μm程度に堆積しコア層4とし、La0.5Sr0.5CoO3を膜厚40nm程度に堆積して上部クラッド層5とする。
【0033】
以下、コア層4のPLZTと、下部及び上部クラッド層11,13のLa0.5Sr0.5CoO3の作製方法について説明する。
PLZTは、ゾルゲル法でエピタキシャル成長させることにより作製する。PLZT用のゾルゲル溶液としては、構成金属元素の有機化合物であるPb(CH3COO)2・3H2O〔酢酸鉛〕、La(i−OC3H7)3〔ランタンイソプロポキシド〕、Ti(i−OC3H7)4〔チタニウムイソプロポキシド〕、Zr(OC3H7)4〔ジルコニウムプロポキシド〕、及び安定剤としてのCH3COCH2COCH3 (2,4−ペンタンジオン)を溶剤であるCH3C2H4OH〔2−メトキシエタノール〕で還流により合成する。
【0034】
PLZT(9/65/35)組成を作製する場合には、Pb(CH3COO)2・3H2O/La(i−OC3H7)3のモル比を101/9とし、Zr(OC3H7)4/Ti(i−OC3H7)4のモル比を65/35とすれば良い。このゾルゲル溶液をスピンコート法により基板1上に塗布し、酸素雰囲気中にて350℃で仮焼成、750℃で焼成を行う。1回に成長可能な膜厚は約120nm程度であり、所望の膜厚となるまで塗布、仮焼成及び焼成の工程を繰り返す。
La0.5Sr0.5CoO3は、いわゆるレーザーアブレーション法(PLD法)により作製する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、下部電極と上部電極との距離、即ち下部クラッド層3と上部クラッド層5との距離を可及的に小さく抑え、消費電圧を低減させるも、コア層4に印加する電圧を効率良く十分に確保する共に、光導波路2の光損失量を小さく抑えることを可能とする信頼性の高い光偏向素子が実現する。
【0036】
(第2の実施形態)
本実施形態では、光学素子の構成要素である光導波路の光損失量を測定するための光損失測定装置を開示する。
【0037】
第1の実施形態において説明したように、光学素子(光偏向素子)の光導波路の光損失量を正確に測定することは、当該光学素子の光学特性を評価するために必須である。
しかしながら、光導波路の光損失量の正確な測定は困難であった。研究段階の光損失測定は、透明基板上に作製した酸化物誘電体の透過光(表面から入射して、酸化物誘電体と透明基板を透過した光)の強度から測定していた。ところがこの方法では、実際の光導波路としたときの光損失と関連性に乏しく、容易に光導波路としての損失を測定する方法が求められていた。
【0038】
従来の光損失測定方法としては、カットバック法、プリズム移動法、散乱検出法がある。
カットバック法は、試料の長さを適宜変え、その長さに対する光強度から光損失を測定する手法である。この手法を用いた場合、実際の光導波路に即した形で測定することができる反面、破壊測定であること、光導波路に光を正確に入射するにはかなりの熟練を要すること等の問題があった。
【0039】
プリズム移動法は、2つのプリズムを使用して測定を行う手法である。プリズムから光導波路に光を入射させ、プリズムの位置を変えて出射光を取り出し、その光強度から光損失を測定する。この測定方法を用いた場合、比較的容易に光損失を測定することができるが、プリズムへの入射光と出射光の角度を正確に合わせる必要があり、測定を困難にしていた。
【0040】
散乱検出法は、プリズムから光導波路に光を入射させ、光導波路の表面散乱を測定し、光損失を測定する手法である。出射光をプリズムにより取り出す必要がなく簡単な方法である反面、平面導波路の下部に光を吸収するもの(例えば基板)があると、正確な光損失値を測定することができない等の問題があった。
【0041】
本実施形態では、上記の課題を解決すべく、光導波路の端面を特に精緻に形成する必要なく、プリズムに対する入射光及び出射光の角度を正確に調整する必要なく、光導波路の下部に光を吸収する部材(基板等)がある場合においても正確に光損失量を測定することを可能とする光損失測定装置を開示する。
【0042】
図7は、第2の実施形態による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
この光損失測定装置は、プリズムカップリング法を用いた装置であり、光が入射するプリズム11と、光強度を検出する光強度検出器12とを備えて構成されている。
【0043】
プリズム11は、光損失の測定対象となる光導波路(ここでは平面導波路22)を含む被測定部材に対して、光導波路22上を移動自在に設置され、光導波路22内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光する。被測定部材は、基板21上に平面導波路22が形成されたものである。図7中で、プリズム11の屈折率をnp、平面導波路22の屈折率をn1、基板21の屈折率をn2とする。
【0044】
光強度検出器12は、プリズム11の設置位置に応じた平面導波路22の端面からの散乱光強度を、当該端面近傍で測定するものである。
【0045】
ここで、入射光及び平面導波路の端面における反射光のプリズム入射角依存について説明する。図8は、このプリズム入射角依存を説明するための参考図である。
図8(a)に示すように、基板111上に形成された平面導波路112の表面からの反射光を光強度検出器102で検出する場合、光強度の極小ピーク値を示す入射角θ1,θ2が存在する。図8中で、平面導波路112の屈折率をnF、基板21の屈折率をnSとし、nF>nSとする。
【0046】
また、図8(b)に示すように、平面導波路112内で反射を繰り返して平面導波路112の端面で散乱する光を光強度検出器102で検出する場合、光強度の極大ピーク値を示す入射角θ1,θ2が存在する。
【0047】
実際の平面導波路を用いて、入射光の角度と光強度との関係について測定した結果を図9に示す。このように、プリズム111へ入射した光がそのまま端面反射光となっていることが判る。
【0048】
なお、図8の装置構成を用いて、平面導波路の光損失量を得る技術が特許文献3に開示されている。しかしながらこの場合、基板111による光吸収により正確な光損失量を検出することが困難となる懸念がある。
【0049】
次に、図7の光損失測定装置を用いた光損失量の測定方法について説明する。
図7において、先ずプリズム11を平面導波路22上に設置する。当該設置位置を0として、プリズム11を図中右方へ移動させて距離Lを変えて、平面導波路22の端面反射光の光強度を光強度検出器12により検出する。
【0050】
測定に基づく光強度のピーク値Pとプリズム11の位置Lとの関係を図10に示す。
このように、両者の関係は、Lの増加に伴いPがほぼ線形に減少する。
光損失測定装置は、光強度のピーク値Pとプリズム11の位置Lとの関係から光損失αを求める。光損失αは以下の式で求める。
α=|10*log(ΔP/ΔL)|
【0051】
ここで、Nb−STO基板上に作製したPLZTからなる平面導波路における光損失の測定結果を示す。測定した光の波長は1.55μmであり、Si単結晶からなるプリズムを用いた。
先ず、散乱光検出法を用いた場合の光損失の測定結果を図11に示す。
図11の横軸0.2cm〜0.5cmの傾きから、光損失量は0.3dB/cm程度と測定できる。しかしながらこの場合、実際には平面導波路の下部に存するNb−STO基板に光が吸収されるので、実際の平面導波路の光損失量は当然に更に高値となると考えられる。このことは、PLZTからなる平面導波路に導光した場合と、導光しない場合とにおいて、出射光の強度差から求めた損失が約20dB/cm程度であることから裏付けられる。
【0052】
続いて、本実施形態の光損失測定装置を用いた光損失の測定結果を図12に示す。
プリズム11の位置Lに対して、光導波路12の端面の散乱光強度をプロットした。傾きから光損失が15dB/cm程度であることが判る。この結果から、光導波路の下部に基板等の光を吸収する部材が存する場合でも、本実施形態の光損失測定装置を用いることにより光損失を正確且つ容易に測定することができることが判る。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、光導波路の端面を特に精緻に形成する必要なく、プリズムに対する入射光及び出射光の角度を正確に調整する必要なく、光導波路の下部に光を吸収する部材(基板等)がある場合においても正確に光損失量を測定することを可能とする光損失測定装置が実現する。
【0054】
(変形例)
以下、第2の実施形態の変形例について説明する。なお、第2の実施形態による光損失測定装置の構成部材等と同一のものについては、同符号を記して詳しい説明を省略する。
【0055】
図13は、第2の実施形態の変形例による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
この光損失測定装置は、第2の実施形態による図7の装置構成に加え、光強度検出器12により検出された光強度から光損失量を算出する光損失算出部13を備えて構成されている。
光損失算出部13は、光強度検出器12により測定された光強度を積分して、光損失量を算出するものである。
【0056】
光強度検出器12で光強度を測定する場合、図14(a)に示すように、光強度は光強度検出器12の測定位置L'に依存した曲線を描く。ここで、光強度のピーク値Pを光強度と見なしても良い場合が多いが、当該曲線で囲む面積、即ち積分値がより正確な光強度値となる。
【0057】
本変形例では、この事実を踏まえ、光損失算出部13により、光強度検出器12で測定された光強度を積分して、図14(b)に示すように光損失量を算出する構成を採る。この構成により、第2の実施形態で奏する緒効果に加え、更に正確に光損失量を測定することが可能となる。
【0058】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0059】
(付記1)基板と、
前記基板上に設けられた電気光学材料からなる光導波路と
を含み、
前記光導波路は、コア層と、前記コア層を挟持する下部クラッド層及び上部クラッド層とを備えて構成されており、
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層のうち、少なくとも前記下部クラッド層が導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする光学素子。
【0060】
(付記2)前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層は、共に前記導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする付記1に記載の光学素子。
【0061】
(付記3)前記導電性酸化物は、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする付記1又は2に記載の光学素子。
【0062】
(付記4)前記基板は、SrTiO3及びLaAlO3から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
【0063】
(付記5)前記コア層は、絶縁膜基板の結晶方位に対してエピタキシャル成長されてなることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【0064】
(付記6)前記コア層の主成長面が(100)であることを特徴とする付記5に記載の光学素子。
【0065】
(付記7)前記コア層は、単純ペロブスカイト構造を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【0066】
(付記8)前記単純ペロブスカイト構造は、Pb(Zr1-xTix)O3(0≦x≦1)、(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)、Pb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、Pb(B'1/2B"1/2)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、及びPb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は6価の遷移金属、B"は3価の遷移金属)、Ba(FexNb1-x)O3(0≦x≦1)、(1−x)NaNbO3・xKNbO3(0≦x≦1)のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする付記7に記載の光学素子。
【0067】
(付記9)前記コア層は、少なくとも1層がタングステンブロンズ構造を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【0068】
(付記10)前記タングステンブロンズ構造は、(Sr1-xBax)Nb2O6(0≦x≦1)、(Sr1-xBax)Ta2O6(0≦x≦1)、PbNb2O6、及びBa2NaNb5O15のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする付記9に記載の光学素子。
【0069】
(付記11)前記コア層は、少なくとも1層がビスマス層状構造を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
【0070】
(付記12)前記ビスマス層状構造は、(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素:0≦x≦1)、SrBi2Ta2O9、及びSrBi4Ti4O15のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする付記11に記載の光学素子。
【0071】
(付記13)光が入射するプリズムと、
光強度を測定する光強度測定手段と
を含み、
光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、前記プリズムが前記光導波路上を移動自在に設置され、
前記プリズムは、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、
前記光強度測定手段は、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定することを特徴とする光損失測定装置。
【0072】
(付記14)前記光強度測定手段により測定された前記光強度を積分して、光損失を算出する光損失算出手段を更に含むことを特徴とする付記13に記載の光損失測定装置。
【0073】
(付記15)光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、プリズムを前記光導波路上で移動自在に設置して、
前記プリズムにより、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、
前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定することを特徴とする光損失測定方法。
【0074】
(付記16)測定された前記光強度を積分して、光損失を算出することを特徴とする付記15に記載の光損失測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】STO基板上に形成されたPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図2】Nb−STO基板上に形成されたPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図3】STO基板上に形成されたSRO及びPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図4】STO基板上に形成されたLSCO及びPLZTの光導波路の光損失を示す特性図である。
【図5】SROを用いた場合及びLSCOを用いた場合について、入射光の波長と光透過率との関係を示す特性図である。
【図6】第1の実施形態による光偏向素子の主要構成を示す模式図である。
【図7】第2の実施形態による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】入射光及び平面導波路の端面における反射光のプリズム入射角依存の説明図である。
【図9】実際の平面導波路を用いて、入射光の角度と光強度との関係について測定した結果を示す特性図である。
【図10】測定に基づく光強度のピーク値とプリズム11の位置との関係を示す特性図である。
【図11】散乱光検出法を用いた場合の光損失の測定結果を示す特性図である。
【図12】第2の実施形態の光損失測定装置を用いた光損失の測定結果を示す特性図である。
【図13】第2の実施形態の変形例による光損失測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図14】第2の実施形態の変形例による光損失測定装置を用いた各種測定例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0076】
1,21 基板
2 光導波路
3 下部クラッド層
4 コア層
5 上部クラッド層
11 プリズム
12 光強度検出器
13 光損失算出部
22 平面導波路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた電気光学材料からなる光導波路と
を含み、
前記光導波路は、コア層と、前記コア層を挟持する下部クラッド層及び上部クラッド層とを備えて構成されており、
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層のうち、少なくとも前記下部クラッド層が導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層は、共に前記導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記導電性酸化物は、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記基板は、SrTiO3及びLaAlO3から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記コア層は、単純ペロブスカイト構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記単純ペロブスカイト構造は、Pb(Zr1-xTix)O3(0≦x≦1)、(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)、Pb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、Pb(B'1/2B"1/2)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、及びPb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は6価の遷移金属、B"は3価の遷移金属)、Ba(FexNb1-x)O3(0≦x≦1)、(1−x)NaNbO3・xKNbO3(0≦x≦1)のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記コア層は、少なくとも1層がタングステンブロンズ構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記コア層は、少なくとも1層がビスマス層状構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
光が入射するプリズムと、
光強度を測定する光強度測定手段と
を含み、
光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、前記プリズムが前記光導波路上を移動自在に設置され、
前記プリズムは、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、
前記光強度測定手段は、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定することを特徴とする光損失測定装置。
【請求項10】
前記光強度測定手段により測定された前記光強度を積分して、光損失を算出する光損失算出手段を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の光損失測定装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた電気光学材料からなる光導波路と
を含み、
前記光導波路は、コア層と、前記コア層を挟持する下部クラッド層及び上部クラッド層とを備えて構成されており、
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層のうち、少なくとも前記下部クラッド層が導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層は、共に前記導電性酸化物を含む材料からなることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記導電性酸化物は、SrRuO3,(LaxSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)CoO3(0≦x≦1),(RexSr1-x)MnO3(0≦x≦1),Sr1-xCaxRuoO3(0≦x≦1),及びSr1-xBaxRuoO3(0≦x≦1)から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記基板は、SrTiO3及びLaAlO3から選ばれた少なくとも1種を主成分とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記コア層は、単純ペロブスカイト構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記単純ペロブスカイト構造は、Pb(Zr1-xTix)O3(0≦x≦1)、(Pb1-yLa(3/2)y)(Zr1-xTix)O3(0≦x,y≦1)、Pb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、Pb(B'1/2B"1/2)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は2価の遷移金属、B"は5価の遷移金属)、及びPb(B'1/3B"2/3)xTiyZr1-x-yO3(0≦x,y≦1、B'は6価の遷移金属、B"は3価の遷移金属)、Ba(FexNb1-x)O3(0≦x≦1)、(1−x)NaNbO3・xKNbO3(0≦x≦1)のうちから選ばれた1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記コア層は、少なくとも1層がタングステンブロンズ構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記コア層は、少なくとも1層がビスマス層状構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
光が入射するプリズムと、
光強度を測定する光強度測定手段と
を含み、
光損失の測定対象となる光導波路を含む被測定部材に対して、前記プリズムが前記光導波路上を移動自在に設置され、
前記プリズムは、前記光導波路内で光が非反射状態でほぼ平行に導波するように光を導光し、
前記光強度測定手段は、前記プリズムの設置位置に応じた前記光導波路の端面からの散乱光強度を、前記端面近傍で測定することを特徴とする光損失測定装置。
【請求項10】
前記光強度測定手段により測定された前記光強度を積分して、光損失を算出する光損失算出手段を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の光損失測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−163691(P2007−163691A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358049(P2005−358049)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「フォトニックネットワーク技術の開発事業」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「フォトニックネットワーク技術の開発事業」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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