説明

光学装置用モジュラーコンポーネント

光信号を伝送する装置は、複数の光伝導ブロックを備え、各ブロックは、他のブロックと協働して少なくとも2次元で光信号用の経路を画定する。上記ブロックのマトリックスは、複数の光信号を伝送するために、内部に1次元、2次元、または3次元の複数の経路を作製するように構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置の改良または光学装置に関連する改良に関する。より詳細には、しかしながら限定されることなく、光信号を誘導または配向する改良された装置、および該装置を採用することのできるロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクスの分野においては、コンポーネント間の接続は電気接続から光接続への移行が一般的になりつつある。光信号伝送速度が極めて高速化されたということは、光信号が従来の電気信号に比べデータ転送、およびスイッチング速度を飛躍的に高めることができることを意味する。さらに、光信号は、クロストークまたは他の干渉により導体を歪ませる可能性のある電気または電磁ノイズを発生させず、また近接導体で発生するこのようなノイズの影響を受けにくい。
【0003】
しかし一方で、光信号通信の使用に付き物の問題があるため、その技術の普及は限定的なものに止まっている。この問題の一つは光信号の制御および/または指向性にある。エアギャップを電気絶縁体として用いることのできる電気信号の場合と異なり、空気は良好な光導体であるため、光信号の完全な制御のための手段を設けなければならない。更に光素子は、効果的な信号伝送および伝導に必要な極めて小さな許容誤差に素子を揃えることが困難であるため、組立コストが割高である。
【0004】
最も一般的な光信号の誘導または配向方法としては、光ファイバつまり光パイプが挙げられる。最も一般的な光ファイバは円筒形ガラスのコアと、コアを包むコアより屈折率の低い外部被覆つまりクラッドとから成る。ファイバ中の光は全反射(TIR)の原理により伝播する。つまり、光ビームは絶えずクラッドで反射を繰返しコア内部に戻されて、ファイバの長手方向に沿って伝播する。
【0005】
大半の光ファイバの外径は約100から150ミクロン程度であるが、この場合ファイバは通常良好な機械的柔軟性を示し、信号の劣化を伴うことなくある程度までの曲げ、または捻りが可能である。ただし、光ファイバ中における光伝播の状態を考えると、ファイバの曲げ半径は比較的大きくする必要がある。
【0006】
狭い体積で光ファイバの方向を何度も変更するには、空間上非効率な一連のループを必要とする。1本のファイバ内で急な曲げをいくつも形成すると、信号の劣化が生ずるおそれがある。しかも、このような光ファイバは取り扱いが難しく接合も容易ではない。
【0007】
光ファイバは、その実装の困難性と小型化の趨勢とが相俟って、エレクトロニクス装置中で広く使用されるには至っていない。
【0008】
上記のような理由から、低コスト、製造および組立の簡易化、および電子装置内の他の光学素子との接続の簡易化を実現しつつ、電子装置における信号通信に光信号を使用することのできる方法および/または装置が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の有する上記諸問題を解決する装置および/または方法を提供することである。本発明のもう1つの目的は、前段落で述べた利点のうちの1つまたは複数を実現する装置および/または方法を提供することである。本発明の他の目的および利点は以下の説明、請求項および図面により明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1側面によると、複数の光伝導性ブロック、ユニットまたは部材(以下「ブロック」と称する)を備え、各ブロックが互いに協働して少なくとも2次元で光信号の経路を画定する、光信号伝送装置が提供される。
【0011】
一実施形態によると、ブロックの形状は一定で、各ブロックは他のブロックの面または表面と協働する少なくとも1つの面または表面を有する。一実施形態によると、ブロックのうちの少なくとも1つは、6面を有する立方体である。一実施形態によると、ブロックのうちの少なくとも1つは実質的に矩形である。一実施形態によると、各ブロックはサイズおよび/または形状が実質的に同一である。
【0012】
前記ブロックは2次元または3次元マトリックス状に配置して装置を形成することができる。
【0013】
一実施形態によると、ブロックのうちの少なくとも1つ(「スルー」ブロックと称する)は、対向する2つの光伝導面(「アクティブ」面と称する)を有することによって、その2面間に実質的に直線状の光信号路を画定する。残りのブロック面(「非アクティブ」面と称する)は、光信号の伝送を低減または実質上阻止するように反射面または実質的に不透明面とすることができる。
【0014】
一実施形態によると、ブロックのうちの少なくとも1つ(「コーナ」ブロックと称する)が入射した光信号の伝送方向を変更する反射部材を含む。反射部材は、ブロック面の一つに対し傾斜した状態でブロック本体内に配置されたミラーまたはその他の反射面を備える。一実施形態によると、ミラーはブロック内でアクティブ面に対し約45度の角度で配置され、該アクティブ面は互に直角をなしている。
【0015】
一実施形態において、反射部材はその2つの対向面で反射することができる。本実施形態において、コーナブロックはそこを通る2つの光絶縁された信号の誘導用に4つのアクティブ面を含むことができ、各光信号は約90度回転する。
【0016】
従ってスルーブロックには、面平行な2つのアクティブ面が存在し得、コーナブロックには直角をなす二つのアクティブ面が存在し得る。
【0017】
一実施形態によると、ブロックのうちの少なくとも1つ(「デッド」ブロックと称する)は実質上光学的に非伝導性であり、装置内における一つまたはそれ以上の光路の終端または光信号の光学的絶縁に用いることができる。
【0018】
各スルーブロックおよびコーナブロックは、適切な機械的および/または光学的特性を有するポリウレア、尿素ホルムアルデヒド、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、CDグレードポリカーボネート、従来のまたは光学グレードのガラス等の適合素材を用いて形成することができる。各デッドブロックは実質的に不透明な材料を用いて形成することができる。
【0019】
本発明の他の側面によると、ロックシリンダとロックシリンダに挿入するように適合されたキーとを備え、ロックシリンダとキーのうちの少なくとも1つが先の段落に記載の装置を含むドアや窓等に用いるロック機構が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の側面によると、キー溝またはキー孔を有するシリンダと、キー溝またはキー孔に挿入されるように構成されるキーと、光信号を生成し伝送する1つまたは複数の光源と、各光信号を受信する1つまたは複数の受信機とを備えるドアや窓等に用いるロック機構であって、キーが光源と受信機とを光学的に結合させてロック機構を動作させるために内部にほぼ規則的に配置される複数の光伝導ユニットを含むロック機構が提供される。
【0021】
先の段落、請求項、および以下の説明に記載される各種側面、実施形態、または代替案は個別に、または組み合わせて実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明を、単に例示として添付の図面を参照しつつ、説明する。
【0023】
まず図1および図2を参照すると、既存の光電装置が10で概略的に示されている。装置10は、同時係属中のヨーロッパ特許出願第EP01921592.0号(公開第EP1272721号)に記載の光電ロック機構の形式のセキュリティシステムである。上記出願の内容は参照により本書に組み込む。
【0024】
システム10は、自動車やバンなどの車輌のドアを施錠および解錠することを主に目的とするが、ロック機能が必要とされるほぼいかなる用途にも利用可能である。
【0025】
システム10は、シリンダ12と、ハンドル部15および軸部16を有するキー14とを含む。シリンダ12の孔とキー14の軸部16は実質的に同一の断面を有するため、キーをシリンダに挿入することができる。特に、図2に最適に示されるキー14の軸部16は長手方向に沿って十字形状であり、4つの直角アームつまり突条18a〜18dを備える。
【0026】
各突条の三つの面に沿って複数の孔20が配置されている。各孔20は、キー14の軸部16内を延びる光ファイバリンク(図示せず)により他の孔と接続される。光ファイバの可撓性により2つの任意の孔20をリンクすることが可能であり、キーの組み合わせは膨大な数になる。
【0027】
シリンダ12内には複数の孔22が配置されており、その数および位置はキー14の軸部16上に配置された孔20に対応している。シリンダ12内の各孔22は伝送回路40または受信機回路50に光学的に接続されている。伝送回路40はLEDなどの複数の光源を含み、複数の光信号を生成するように光源を起動させるべく動作可能である。各光信号は光ファイバ24などの各自の光導体を介してシリンダ12内の孔22のいずれか1つに伝送される。
【0028】
受信機回路50は光信号を検出するように動作可能な複数のセンサを含む。該センサは光ファイバ26などのさらに別の光導体によりシリンダ12内の孔22に接続される。受信機回路50は車輌ドアのロックアクチュエータ70にさらに接続されている制御回路に接続される。
【0029】
シリンダ12内にキー14を挿入すると、キーの軸部16上の孔20とシリンダ12内の孔22とが重なるため、キー14を介して伝送回路40と受信機回路50との間に連続した伝送経路が生成される。
【0030】
シリンダ12内の孔22と実質的に重なる孔20を有するキー14のみがロック機構を作動させるために使用可能である。従って、ロック機構は、孔20の特定の配列を持つただ1つのキーのみが錠に正しく「適合」できる唯一の「組み合わせ」を提供する。
【0031】
次に図3を参照すると、本発明を具体化する第1の形状の装置が100で概略的に示されている。装置100は1次元、2次元または3次元で可視光、赤外光、または紫外光の信号などの1つまたは複数の光信号を伝送するのに適するため、上記装置のキー14での使用に適する。
【0032】
装置100は、3次元マトリックス104に配置された独立した複数の多面形光伝送体102を備える。図示の実施形態においては、各光伝送体102は、実質的に等しい寸法の、ほぼ平面状の6つの側面つまり面を有するブロックつまり立方体の形態を成している。
【0033】
マトリックス104は規則的に配列されるブロック102から成り、各ブロック102は、少なくとも1つの面が他のブロックの対応面と隣接つまり当接するように配置される。図示の実施形態において、マトリックス104は、3×3×3のラティス構造に配置された27個のブロック102から成る。ブロック102は、ブロック間に配置される複数のピン106の形態をとる支持手段により保持され、ケージ配列を画定する。装置100はモジュラ式である、すなわち、独立した複数の光伝送体から形成されるため、その使用目的に応じて、所望の形状または形態で配列される所望数のブロック102を含むことができる。例えば、上述のロック機構10のキー12で使用する場合、軸部16の形状に合致するようにブロック202のマトリックス204は細長で、断面を十字状とすることができる。
【0034】
各ブロック102は、光伝導性または伝送性を有し、全部または一部が透明である。図示の典型的実施例では、各ブロック102は、半透明または透明プラスチックベースの素材を用いて形成されている。
【0035】
概して、減衰、回折、または屈折による損失を無視した場合、ブロック202のうちの外側の1つに伝送される光信号は、マトリックスが単一ブロックから構成されているかのように実質的に直線的にマトリックス204内を伝送される。しかし、マトリックス204は、所望の複数の異なる位置に出入り可能な複数の光信号を搬送できるように、光信号を2次元以上に誘導または配向する性能を備えることが望ましい。
【0036】
図示の実施形態では、これを、それぞれが独自の光学機械特性を有する、様々なタイプのブロック102を使用することで達成している。かかる各種ブロックの例を図4および5に示す。
【0037】
まず図4aは、第1のタイプのブロック110の透視図である。一般的に「スルー」ブロックと呼ばれるブロック110は、実質的に同一の表面積の6面110a〜110fを有する透明または半透明の正立方体である。立方体110の屈折率は、立方体の1面、たとえば面110aに入射した光信号Sが大幅に偏向せず材料中を伝送され、本例では面110eを通過して入射とほぼ同じ角度でブロックの反対側から出射されるように、全体を通じて実質的に均一である。したがって、スルーブロックはエアギャップと同様に機能することがわかる。
【0038】
図示の実施形態において、光信号Sが入出力する面110a、110eを「アクティブ」面と称する。残りの面110b、110c、110d、110fは、光信号が通常の使用では通過しないため、「非アクティブ」面と称する。図4bは該ブロックの正面立面図である。
【0039】
図5aは第2のタイプのブロック120の透視図である。このブロックは「コーナ」ブロックと称し、上述の「スルー」ブロックとサイズおよび形状が類似しているか、または実質上同一である。したがって、ブロック120は立方形であり、ほぼ透明な材料から形成され、実質的に同一の6面120a〜120fを有する。
【0040】
ただしこの場合、ブロック120は、ブロック内に伝送される光信号の方向を最高90度まで変更するよう適合している。したがって、アクティブ面110aと110eとが面平行である「スルー」ブロック110と異なり、コーナブロック120のアクティブ面120a、120cは相互に直角である。
【0041】
光信号Sの方向を変更するため、ブロック120は反射部材122の形式のビーム配向エレメントを含む。反射部材122は、ブロック120内に配置され、ブロックのアクティブ面120a、120cに対して約45度の角度をなしている。
【0042】
ブロック120の側面立面図である図5bに最適に示されるように、該ブロックは2つの直角プリズム121a、121bから構成される。第1のプリズム121aは断面が三角形であり、略正方形で相互に垂直なアクティブ面120a、120cと、該プリズムの斜面を表す第3の面(符号なし)と、該ブロック120の側面120b、120dの実質的に半分を成す2つの三角形側面とを含む。
【0043】
第2のプリズム121bは第1のプリズム121aと形状は類似するが、非アクティブ面120e、120fと、斜面と、ブロック120の側面120b、120dの実質的に半分を成す2つの側面とを含む。
【0044】
コーナブロック120形成のため、2個のプリズム121a、121bは接着剤または機械的継手等を用いてその斜面で結合又は連結される。反射部材122はプリズム121a、121bの接合部分に配置され、一実施形態においては、金属またはそれ以外の反射性材料で第1のプリズム121aの斜面を被覆することにより形成される。
【0045】
アクティブ面120aを通してブロック120に伝送された光信号Sは、反射部材122により反射され90度回転し、もう一方のアクティブ面120cを通して出射される。このようにして、コーナブロックは光信号を直角に屈折させることにより少なくとも2次元で光路を画定するために使用することができる。
【0046】
他の代替配置(図示せず)としては、第2のプリズム121bに対して第1のプリズム121aのように半透明材料を使用せず、金属、クロム、または他の反射性材料を用いる。この手法では第2のプリズム121bは、それ自体で反射部材122を形成するので、構成部品数が少なくなるため、コーナブロックの形成が容易になり得る。
【0047】
例えば、上記コーナブロックは、断面が三角形の透明材料をある長さ分押し出し、同様の長さに成型した反射材料に接着またはそれ以外の方法で固定することによって断面が正方形の1本のバーを形成することによって作成することができることがわかる。その後、結合された押出成形材は任意長にカットまたはダイスカットしてコーナブロックを形成することができる。
【0048】
図4および図5に図示された2種類のブロック110、120は例えば図3を参照して説明したマトリックス104状に結合して、光信号を誘導または配向するモジュラー式装置を作製することができる。一連の隣接ブロックは、1次元、2次元、または3次元光路を形成するように配置され、該光路では、最初のブロックのアクティブ面を通して装置に入射した光信号はこの構造体を通過して伝送または伝導され、たとえば異なる方向および/または異なる面にある他のブロックのアクティブ面から出射することができる。
【0049】
多くの場合、2つ以上の光信号を伝送するにはこのようなモジュラー構造の使用が有益である。2次元または3次元マトリックス構造状に配置されたかかる複数のブロックは、1次元、2次元、または3次元で複数の光路を画定可能であることがわかる。
【0050】
しかしかかる実施形態においては、個々の光学回路または光路間の干渉またはクロストークを減少または除去するのが望ましい。
【0051】
一実施形態において、上記は各ブロックの「非アクティブ」面を不透明または反射コーティングで覆い光の伝送を防止することで達成される。例えば、スルーブロック110の正面立面図である図4bを参照すると、非アクティブ面110b、110c、110d、110fは反射性または実質的に不透明なコーティングで覆われており、上記面を光が通過するのを阻止または防止する。該コーナブロック120の非アクティブ面は同様の方法で被覆可能である。
【0052】
他の実施形態(図示せず)において、ブロックの非アクティブ面はブロックに適した光伝送体を形成する材料よりも低い屈折率を有する材料で被覆される。この場合、従来の光ファイバと同様の全反射の原理によりブロック内信号伝播が達成され得る。
【0053】
他の実施形態において、第3のタイプのブロック(図示せず)が用いられる。この第3のタイプのブロックは「デッド」ブロックと称され、スルーブロックおよびコーナブロック110、120と同じ寸法の立方体を構成する。該ブロックは不透明プラスチック等の非光伝導材料を用いて形成される。デッドブロックをマトリックス構造104内に適切に配置することで、一連のスルーブロック110およびコーナブロック120で形成される個々の光路を光学的に絶縁することができる。
【0054】
このような多光路モジュラー構造の機能的効果は、複数の光信号が伝送され、それぞれ光ファイバ束を様々な位置および様々な角度で入射および出射されるという点で、光ファイバ束を使用する場合と同様である。ただし、上述のモジュラー構造は製造および組立が非常に単純化されるため、結果的に製造コストを大幅に低減することができる。さらに、従来の光ファイバと比べて、より複雑な三次元配向で所与の体積内にはるかに多数の光路を形成することが可能である。
【0055】
次に図6a〜6cを参照すると、図1および2に示され、本発明を具体化するモジュラー構造を採用した光電ロックシステム10のキー14での使用に適した装置214が図示されている。図6aは装置214のY−Z面における断面図であり、図6bは装置214のX−Y面における断面図である。さらに、図6cは装置214のX−Z面における断面図である。
【0056】
装置214は、ブロックの3次元マトリックス214から成る。図6a〜6cの例示的実施形態において、ブロックは図2に示すキー14の軸部16の形状に適合するように配置されている。すなわち、マトリックス214の断面は十字状である。マトリックス214は、各光路の終端がキー14の軸部ハウジング18の孔つまり窓20のうちの1つと一致するように延在する複数の光路を画定する。したがって、使用時には、軸部ハウジング18の孔20の一つを通して光路に伝送された光ビームや他の光信号は、光路内を伝導し他の窓20からハウジングを出射する。
【0057】
図6a〜6cでは、矢印Sで示される典型的な光信号が、装置214内のブロックにより画定される光路に沿って伝送されるのを示している。図の例では、光信号SがスルーブロックT1のアクティブ面を通じて装置に入射し、別のスルーブロックT6のアクティブ面を通じてキーから出射することを示している。
【0058】
光信号が伝送される光路は、以下の一連のブロック、すなわち、スルーブロックT1、X−Z面で信号を90度回転させるコーナブロックC1、スルーブロックT2、スルーブロックT3、X−Y面で信号を90度回転させるコーナブロックC2、スルーブロックT4、Y−Z面で信号を90度回転させるコーナブロックC3、スルーブロックT5およびスルーブロックT6、によって表される。
【0059】
装置214は、適切にスルーブロックおよびコーナブロックを配置することでほぼ無制限の数の他の光路を形成することが可能であることが分かる。形成可能な光路の数はマトリックス214内で使用されているブロック数およびその形状のみに依存する。
【0060】
キー214は、図1および2で示したロックシステムのキー14とほぼ同様に機能することができる。
【0061】
マトリックス214は、図2で示したキーと類似のキーに使用する場合、軸部ハウジング18への挿入前に組立可能である、もしくは、ブロックを軸部ハウジング18内に個々に、群で、または層で挿入あるいは投下することにより、全てのブロックが挿入された時点でマトリックスを形成することもできることがわかる。
【0062】
本発明は本明細書に開示される実施形態に限定されるものではなく、本明細書に添付の請求項の範囲内で様々な変更が可能であることを理解されたい。
【0063】
例えば、マトリックス構造で使用されるブロックのサイズおよび数は所望に選択することができる。さらに、構造の形状は用途により大幅に異なる。図3の実施形態においてはマトリックス構造は単純な立方体形状となっているが、図6の実施形態においてはマトリックスはキー軸部ハウジング内部に対応した形状を規定している。ただし、用途に応じて任意の形状を採用し得る。
【0064】
各ブロックの側面は0.5〜10mm長とすることができるが、立方体ブロックの好適なサイズは約1〜2mmであることがわかる。ただし、本明細書で用いる「ブロック」という用語は限定された意味では決してなく、各ブロックは、通常の配列を可能にする、あるいは2つのブロックが少なくとも2次元で光路を形成するように協働することができる所望の形状を成すことができることがわかる。たとえば、各ブロックは、規則的な配列つまりマトリックスを組立可能な球体、回転楕円体、角柱、円錐、角錐、またはその他の3次元形状を取ることができる。
【0065】
ブロックは適切な任意の透明または半透明の材料で形成することができる。特に、光信号の波長に合う透過性を有する材料を選択することができる。
【0066】
例えば可視光線の波長の信号が使用される場合、材料は特にポリウレア、ウレア、ホルムアルデヒド、ポリメチルアクリレート、ポリスチレンまたはCDグレードポリカーボネートから選択することができる。上記材料は取り扱いが容易で射出成形に適し、しかも製造コストが安く非常に高い耐性を示す。もしくは、BK7のような標準グレードまたは光学グレードガラスも使用することができる。材料の屈折率は所望に選択可能だが、一実施形態における屈折率は1.54〜1.58である。
【0067】
光路に沿った光信号の伝播は、特定範囲の波長を持つ光信号のみを伝送させるように構成される、いわゆるチャネルドロップフィルタにより制御および/または操作することができる。例えば、赤外線波長の信号のみを伝送させるブロックを設けることができる。該チャネルドロップフィルタは、関連ブロックに所望の波長の光のみを透過させるコーティングを施すことによって形成することができる。
【0068】
状況によっては、各ブロックは2つ以上の信号を伝送するように適合させることができることがわかる。例えば、図5a〜5bにおいて、反射素子122は、面120aを通じて入射する第1の光信号が90度反射し、面120cから出射する(またはその逆)一方で、面120eを通じて入射する第2の光信号が90度反射し、面120fを通じて出射する(またはその逆)ように、両面に反射性を持たせることができることがわかる。上記2つの信号は反射素子122の反射性/不透明性により相互に光学的に絶縁される。
【0069】
この場合、コーナブロック120は4つのアクティブ面110a、110c、110e、110fを有すると言えると理解される。さらに、反射部材は光信号の異なる偏差角を達成するため、アクティブ面に対して45度以外の角度で配向させることもできる。
【0070】
一実施形態において、各ブロックは、光信号を伝送させるため、光ファイバまたはその他の光導体を含む、あるいは封入する。一実施形態において例えば、光導体は、ブロック内の光信号伝送に用いることのできる貫通孔または気柱を備える。封入された導体は、スルーブロック用には比較的線形つまり直線形の導体として、コーナブロック用には湾曲した導体とすることができる。
【0071】
この場合、ブロックに適したボディは導体であることを要求されないため、必ずしも透過または半透明材料でブロックを形成する必要はない。ミラーまたはその他の光学装置も、非常に精密で均一な素子であるブロックに埋込可能であり、それは実質上無数の変形を可能とするモジュラー構造を作製するのに供する。
【0072】
場合によっては、粗表面が原因の不透明性または艶のない状態は信号強度に悪影響を与え得ることからブロックのアクティブ面を研磨する、および/またはほぼ汚れのないように確保することが望ましいことがある。もしくは、ブロック間に形成されたギャップに、必要に応じて屈折率の同じ液体又はUV硬化性接着樹脂を注入することができる。
【0073】
ブロックを使用してほぼいかなる所望の形状の3次元構造をも形成することができる。前記のロックおよびキー装置の場合、ブロックが配置されるキーハウジングの形状により、ブロックの配列で形成される構造は概ね十字型となる。一方で、図3においては、ブロックはピン106により保持され実質上立方体マトリックスを形成する。
【0074】
ただし、ハウジングまたはピン106により画定される上記のような「外骨格」の使用は完全に任意であり、ほぼいかなる所望の形状をも構成可能にするために、各ブロックに1つまたは複数のブロックを様々な配向で連結させる手段を提供することができることがわかる。一実施形態(図示せず)において、第1のブロックの少なくとも1つの面に、突起ピンまたはプラグなどの雄連結部品を設けることができる。ブロック同士を連結するように、これらの雄部品は、第2のブロックの面に形成される孔またはソケットなどの対応雌連結部品と係合する。使用するブロックは多面である場合、各ブロックはその一面に雄連結部品を、別の面、おそらくは対向面に雌連結部品を含むことができる。
【0075】
このような方法により、実質的に任意の形状の自己支持型3次元構造を形成するようにブロックを連結することによって、装置の適用範囲が大幅に拡大する。
【0076】
ただし、キー軸部ハウジング120のみによって保持されるように、ブロックの接着または連結を行わないことが望ましい場合がある。この場合、マトリックスを構成するブロックの配置を知る目的でキー軸部ハウジング(ハウジング内のブロック配列が容易に読み取られないよう実質上不透明材料で形成するのが有利である)を開けようとしてもブロックの崩れを招くだけであり結果としてかかる試みは無意味なものとなる。
【0077】
他の方法または追加の方法として、ブロックは、柔軟で、ブロックの3次元構造を「収縮包装」する保護覆いで包むこともできる。
【0078】
本発明の上記側面は、製造および組立が容易で、ほぼ無限のバリエーションで多数の光路を提供する、1つまたは複数の光信号を伝送、および/または誘導するための装置を提供することがわかる。
【0079】
本発明は、製造および組立が容易で、ほぼ無限のバリエーションで多数の光路を提供する、1つまたは複数の光信号を伝送、および/または誘導するための装置を提供することがわかる。本出願はロックシステムという状況で本発明を説明しているが、これにより何等の制限を加えるものではない。さらに、該装置は2点間以上の地点間において1つまたは複数の光信号を誘導する必要のあるほぼすべての用途で採用されることがわかる。特に、上述のタイプのブロックのマトリックスは、最終的にはいかなる種類の光または光電子システムの光ファイバでも置換可能であると想定される。
【0080】
本出願は、2005年3月18日出願の英国特許出願第GB0505583.5号、2005年4月13日出願の英国特許出願第GB0507400.0号、2005年10月18日出願の米国特許出願第11/251、924からの優先権を主張するものである。該特許出願の内容は参照によりここに組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、光誘導装置を必要とする既知の光電ロックシステムを示す。
【図2】図2は、図2のシステムで使用されるキーを示す。
【図3】図3は、図1のシステムでの利用に適した本発明を具体化する第1の形状の装置を示す。
【図4】図4aおよび4bは、図3の装置で採用可能な第1のタイプのブロックを示す。
【図5】図5aおよび5bは、図3の装置で採用可能な第2のタイプのブロックを示す。
【図6】図6a〜6cは、図1のシステムでの利用に適した本発明を具体化する第2の形状の装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光伝導ブロックを備え、各ブロックが互いに協働して少なくとも2次元で光信号の経路を画定するように構成されることを特徴とする、光信号伝送装置。
【請求項2】
各ブロックが、均一な形状であり、他のブロックの面または表面と協働する少なくとも1つの面または表面を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ブロックのうちの少なくとも1つが、6面を有する立方体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ブロックのうちの少なくとも1つが矩形状であることを特徴とする、先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項5】
各ブロックのサイズおよび/または形状が実質的に同一であることを特徴とする、先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項6】
ブロックが2次元または3次元マトリックス状に配列されることにより、複数の光信号を伝送する複数の光路を画定することを特徴とする、先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項7】
ブロックのうちの少なくとも1つが、対向する2つの光伝導面を有することによって、その間に実質的に直線状の光信号路を画定することを特徴とする、先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項8】
ブロックの残りの面が、光信号の伝送を低減する、あるいは実質上阻止する手段をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ブロックのうちの少なくとも1つが、ブロック内の光信号の伝送方向を変更するビーム配向手段を含むことを特徴とする、先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項10】
ビーム配向手段が、ブロック内に配置され、ブロックの面のうちの1つに対して傾斜したミラーなどの反射部材を備えることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
反射部材が2つの相互に直交するブロック面に対して約45度の角度で、ブロック内に配置されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
反射部材が、光学的に絶縁された2つの信号を間に伝送させる2つの対向面で反射性を有し、各光信号は約90度回転することを特徴とする、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
ブロックのうちの少なくとも1つが、装置内で光路を終端させるため、あるいは、装置内で個々の光信号を光学的に絶縁させるため、光学的に非伝導性を有することを特徴とする、先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項14】
各ブロックが、ポリウレア、尿素ホルムアルデヒド、ポリメチルアクリレート、ポリスチレンまたはCDグレードポリカーボネートのうち1つまたは複数の材料から形成されることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項15】
ロックシリンダと、シリンダに挿入するように適合されたキーとを備え、ロックシリンダとキーのうち少なくとも一方が先行する請求項に記載の装置を含むことを特徴とする、ドアや窓等に用いるロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2008−536025(P2008−536025A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501423(P2008−501423)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001011
【国際公開番号】WO2006/097763
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507305990)
【Fターム(参考)】