説明

光学補償素子の製造方法及びプロジェクタ

【課題】従来よりも容易に製造することが可能で、製造コストの低減を図ることが可能な光学補償素子の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の透光性支持基板と複屈折性を有する無機材料からなる複数の無機基板30とを準備する基板準備工程S10と、複数の透光性支持基板及び複数の無機基板を所定の厚みに研削する基板研削工程S20と、複数の透光性支持基板のそれぞれの厚みを測定して、測定後の透光性支持基板を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が1ミクロンとなるようにグループ分けする基板グループ分け工程S30と、無機基板とグループ分けされた透光性支持基板とを貼り合わせる基板貼り合わせ工程S40と、同一グループの透光性支持基板が貼り合わされた無機基板を、研削装置及び研磨装置にセットして、無機基板を研削・研磨する無機基板研削・研磨工程S50とをこの順序で含む光学補償素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償素子の製造方法及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタの投写画像のコントラスト向上が求められており、その要求に応えるものとして、液晶光変調装置に光学補償素子が配置されたプロジェクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。従来のプロジェクタによれば、光学補償素子を備えているため、液晶パネルのプレチルト角に起因する複屈折(液晶分子によって生ずる光学的な位相差)を補償することができ、その結果、投写画像のコントラストを向上することが可能となる。
【0003】
光学補償素子としては、有機材料系の光学補償素子(例えば延伸位相差フィルム)のほかに、無機材料系の光学補償素子が知られている。無機材料系の光学補償素子は、例えば、水晶やサファイア等の複屈折性の無機光学補償板を有する。このような無機材料系の光学補償素子は、有機材料系の光学補償素子に比べて、耐熱性、放熱性及び耐光性に優れ、長寿命であり、屈折率異方性の面内均一性がよいという長所を有する。
【0004】
なお、光学補償素子における無機光学補償板は、例えば研削装置又は研磨装置で研削・研磨して薄くすることが考えられる。この場合、そのように薄片化された無機光学補償板は単独では扱いづらいことから、所定の厚みを有する透光性支持基板の表面に当該薄片化された無機光学補償板を貼り付けた状態で用いる必要があると考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−131320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無機光学補償板と透光性支持基板とを備える光学補償素子を製造する方法として、複屈折性を有する無機材料からなる無機基板を研削装置・研磨装置の順にセットして所定の厚みとなるまで研削・研磨した後、研削・研磨後の無機基板を研磨装置から取り出して、研削・研磨後の無機基板と透光性支持基板とを例えば接着剤によって接着する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、このような光学補償素子の製造方法においては、研削・研磨後の無機基板は非常に薄い(例えば10μm以下)ものであるため、研削・研磨後の無機基板を研磨装置から取り出す際や研削・研磨後の無機基板を透光性支持基板に接着する際のハンドリングが容易ではなく、光学補償素子を製造するのが容易ではない。
また、上述の光学補償素子の製造方法においては、研削・研磨後の無機基板を単独でハンドリングするのが容易ではないことから、研削・研磨後の無機基板を損傷する危険性が高く、製造コストの低減を図ることが容易ではないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、従来よりも容易に製造することが可能で、製造コストの低減を図ることが可能な光学補償素子の製造方法を提供することを目的とする。また、このような優れた製造方法によって製造された光学補償素子を備えるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学補償素子の製造方法は、複数の透光性支持基板と複屈折性を有する無機材料からなる複数の無機基板とを準備する基板準備工程と、前記複数の透光性支持基板及び前記複数の無機基板を所定の厚みに研削する基板研削工程と、前記複数の透光性支持基板及び前記複数の無機基板のうち少なくとも前記複数の透光性支持基板のそれぞれの厚みを測定して、測定後の前記透光性支持基板を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が1ミクロン以下となるようにグループ分けする基板グループ分け工程と、前記無機基板とグループ分けされた前記透光性支持基板とを貼り合わせる基板貼り合わせ工程と、同一グループの前記透光性支持基板が貼り合わされた前記無機基板を、研削装置及び研磨装置のうち少なくとも一方にセットして、前記無機基板を研削・研磨する無機基板研削・研磨工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の光学補償素子の製造方法によれば、無機基板と透光性支持基板とを貼り合わせた後で無機基板側の面を研削・研磨することとしているため、研削・研磨後の無機基板を単独でハンドリングする必要が無い。その結果、光学補償素子を従来よりも容易に製造することが可能となる。
【0011】
また、本発明の光学補償素子の製造方法によれば、研削・研磨後の無機基板を単独でハンドリングするのが不要であることから、研削・研磨後の無機基板を損傷する危険性が低くなり、結果として、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0012】
ところで、従来よりも容易に製造することが可能で、製造コストの低減を図ることが可能な光学補償素子の製造方法として、本発明のような基板グループ分け工程を行わずに、単に無機基板と透光性支持基板とを貼り合わせた後、無機基板側の面を研削・研磨する方法も考えられる。このような方法とすることによっても、研削・研磨後の無機基板を単独でハンドリングする必要が無いため、光学補償素子を従来よりも容易に製造することが可能となるとともに、製造コストの低減を図ることが可能となる。
しかしながら、無機基板と貼り合わせる前の透光性支持基板の厚みに許容範囲を超えるバラつきが存在する場合、単に無機基板と透光性支持基板とを貼り合わせた後で無機基板側の面を研削・研磨するだけでは、研削・研磨後の無機基板(無機光学補償板)の厚みは、透光性支持基板の厚みバラつきによる影響を受けてしまう。特に、研削・研磨後の無機基板の厚みは非常に薄い(例えば10μm以下)ものであることから、透光性支持基板の厚みバラつきが研削・研磨後の無機基板に与える影響は大きく、研削・研磨後の無機基板の厚みバラつきが大きくなる。その結果、光学補償素子の光学特性のバラつきが大きくなる。
なお、上記の方法において、研削・研磨中の無機基板単独の厚みを知ることができれば、研削・研磨後の無機基板の厚みバラつきを低減することも可能であるが、無機基板と透光性支持基板とは既に貼り合わされているため、研削・研磨中の無機基板単独の厚みを知ることは容易なことではない。
【0013】
これに対し、本発明の光学補償素子の製造方法によれば、無機基板を研削・研磨する前に、少なくとも複数の透光性支持基板のそれぞれの厚みを測定して、測定後の透光性支持基板を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が1ミクロン以下となるようにグループ分けすることとしているため、研削・研磨する前の透光性支持基板の厚みバラつきを低減することが可能となる。これにより、無機基板研削・研磨工程において基板全体(透光性支持基板と無機基板とが貼り合わされた部材)の厚みを測定すれば、基板全体の厚みから透光性支持基板の厚みを差し引くことによって必然的に無機基板単独の厚みを知ることが可能となる。
すなわち、本発明の光学補償素子の製造方法によれば、基板研削工程を行った後の透光性支持基板の厚みにバラつきがあったとしても、上述の基板グループ分け工程を行うことによって、透光性支持基板の厚みバラつきが研削・研磨後の無機基板に与える影響を低減することが可能となる。これにより、研削・研磨後の無機基板の厚みバラつきを低減することができ、結果として、光学補償素子の光学特性のバラつきを低減することが可能となる。
【0014】
したがって、本発明の光学補償素子の製造方法は、従来よりも容易に製造することが可能で、製造コストの低減を図ることが可能で、さらには光学特性のバラつきを低減することが可能な光学補償素子の製造方法となる。
【0015】
本発明の光学補償素子の製造方法において、前記基板貼り合わせ工程においては、前記無機基板の外形サイズよりも大きな外形サイズを有する前記透光性支持基板を前記無機基板と貼り合わせることが好ましい。
【0016】
このような方法とすることにより、透光性支持基板と無機基板とが貼り合わされた部材について、どちらの面が無機基板側の面であってどちらの面が透光性支持基板側の面であるか比較的容易に判別することが可能となる。このため、無機基板研削・研磨工程において、無機基板側の面が研削・研磨されるように、透光性支持基板と無機基板とが貼り合わされた部材を研削装置又は研磨装置にセットするのが容易となる。
【0017】
また、接着剤を用いて無機基板と透光性支持基板とを接着する場合であれば、上記のような方法とすることにより、無機基板と透光性支持基板とを接着した際に無機基板と透光性支持基板との間から接着剤が流れ出たとしても、当該接着剤は透光性支持基板側に広がることとなる。つまり、流れ出た接着剤が無機基板の研削・研磨面に付着するのを抑制することができ、無機基板を精度よく研削・研磨することが可能となる。
【0018】
本発明の光学補償素子の製造方法において、前記基板グループ分け工程においては、少なくとも前記透光性支持基板の周辺部分の厚み及び中央部分の厚みを測定することが好ましい。
【0019】
このような方法とすることにより、研削・研磨する前の透光性支持基板の厚みを正確に把握・管理することが可能となるため、基板全体の厚みから透光性支持基板の厚みを差し引くことによって算出される無機基板単独の厚みについても、より正確な値を知ることが可能となる。その結果、光学補償素子の光学特性のバラつきをさらに低減することが可能となる。
【0020】
本発明の光学補償素子の製造方法において、前記基板貼り合わせ工程においては、接着剤を用いて、前記無機基板と前記透光性支持基板とを接着することが好ましい。
【0021】
このような方法とすることにより、無機基板と透光性支持基板との界面における表面反射の発生が抑制され、光透過率を高めることが可能になる。
また、無機基板及び透光性支持基板の線膨張係数がそれぞれ異なる場合であっても、各基板間の貼り合わせ面における剥離が起こりにくくなり、長期信頼性の低下を抑制することが可能になる。
【0022】
本発明の光学補償素子の製造方法において、前記基板貼り合わせ工程においては、直接接合によって、前記無機基板と前記透光性支持基板とを接合することが好ましい。
【0023】
このような方法とすることによっても、無機基板と透光性支持基板との界面における表面反射の発生が抑制され、光透過率を高めることが可能になる。また、無機基板と透光性支持基板とを強固に貼り合わせることができる。また、接着剤を用いた場合に起こりうる接着剤の厚みバラつきが生じないため、研削・研磨後の無機基板の面内厚みむらを低減することが可能となる。
【0024】
本発明の光学補償素子の製造方法においては、前記無機基板として、水晶基板又はサファイア基板を用いることが好ましい。
【0025】
このため、本発明の光学補償素子の製造方法によれば、水晶又はサファイアからなる無機光学補償板を備える光学補償素子を従来よりも容易に、かつ、安価に製造することが可能となる。
【0026】
本発明のプロジェクタは、本発明の光学補償素子の製造方法によって製造された光学補償素子を備えることを特徴とする。
【0027】
このため、本発明のプロジェクタは、投写画像のコントラストを向上することが可能で、従来よりも安価で、かつ、光学特性のバラつきの少ないプロジェクタとなる。
【0028】
本発明のプロジェクタにおいては、照明光束を射出する照明装置と、前記照明装置からの前記照明光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルを有する液晶光変調装置と、前記液晶光変調装置で変調された光を投写する投写光学系とを備え、前記光学補償素子は、前記液晶パネルの光入射面又は光射出面のうち少なくとも一方に配置され、前記液晶パネルの防塵ガラスとしての機能を有することが好ましい。
【0029】
本発明の光学補償素子が液晶パネルの防塵ガラスを兼ねることによって、光学補償素子を配置するために本来必要としていたスペースを削減することができ、装置の小型化を図ることが可能となる。また、液晶パネルの光射出面に本発明の光学補償素子を配置した場合には、液晶光変調装置から投写光学系までの距離を短くすることが可能となるため、投写光学系として、バックフォーカス(BF)がそれほど大きくない投写レンズを用いることができ、結果として、さらに安価なプロジェクタを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の光学補償素子の製造方法及びプロジェクタについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0031】
[実施形態1]
まず、実施形態1に係るプロジェクタ1000の構成について、図1を用いて説明する。
【0032】
図1は、実施形態1に係るプロジェクタ1000を説明するために示す図である。図1(a)はプロジェクタ1000の光学系を示す図であり、図1(b)はプロジェクタ1000の要部を示す図である。
【0033】
実施形態1に係るプロジェクタ1000は、図1に示すように、照明装置100と、照明装置100からの照明光束を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系200と、色分離導光光学系200で分離された3つの色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する3つの液晶光変調装置400R,400G,400Bと、3つの液晶光変調装置400R,400G,400Bによって変調された色光を合成するクロスダイクロイックプリズム500と、クロスダイクロイックプリズム500によって合成された光をスクリーンSCR等の投写面に投写する投写光学系600とを備えたプロジェクタである。
【0034】
照明装置100は、被照明領域側に照明光束を射出する光源装置110と、光源装置110から射出される照明光束を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレイ130と、第2レンズアレイ130からの各部分光束を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光に変換して射出する偏光変換素子140と、偏光変換素子140から射出される各部分光束を被照明領域で重畳させるための重畳レンズ150とを有する。
【0035】
光源装置110は、楕円面リフレクタ114と、楕円面リフレクタ114の第1焦点近傍に発光中心を有する発光管112と、発光管112から被照明領域側に向けて射出される光を発光管112に向けて反射する副鏡116と、楕円面リフレクタ114からの集束光を略平行光として射出する凹レンズ118とを有する。光源装置110は、照明光軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0036】
発光管112は、管球部と、管球部の両側に延びる一対の封止部とを有する。管球部は、球状に形成された石英ガラス製であって、この管球部内に配置された一対の電極と、管球部内に封入された水銀、希ガス及び少量のハロゲンとを有する。発光管112としては、種々の発光管を採用でき、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を採用できる。
【0037】
楕円面リフレクタ114は、発光管112の一方の封止部に挿通・固着される筒状の首状部と、発光管112から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面とを有する。
【0038】
副鏡116は、発光管112の管球部の略半分を覆い、楕円面リフレクタ114の反射凹面と対向して配置される反射手段である。副鏡116は、発光管112の他方の封止部に挿通・固着されている。副鏡116は、発光管112から放射された光のうち楕円面リフレクタ114に向かわない光を発光管112に戻し楕円面リフレクタ114に入射させる。
【0039】
凹レンズ118は、楕円面リフレクタ114の被照明領域側に配置されている。そして、楕円面リフレクタ114からの光を第1レンズアレイ120に向けて射出するように構成されている。
【0040】
第1レンズアレイ120は、凹レンズ118からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。図示による説明は省略するが、第1小レンズ122の外形形状は、後述する液晶パネル410R,410G,410Bの画像形成領域の外形形状に関して相似形である。
【0041】
第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶パネル410R,410G,410Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120と略同様な構成を有し、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0042】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの照明光束のうち一方の偏光成分(例えばP偏光成分)を有する光を透過し他方の偏光成分(例えばS偏光成分)を有する光を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の偏光成分を有する光を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、偏光分離層を透過した一方の偏光成分を有する光を他方の偏光成分を有する光に変換する位相差板とを有する。
【0043】
重畳レンズ150は、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び偏光変換素子140を経た複数の部分光束を集光して液晶パネル410R,410G,410Bの画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150の光軸と照明装置100の照明光軸100axとが略一致するように、重畳レンズ150が配置されている。なお、重畳レンズ150は、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。
【0044】
色分離光学系200は、ダイクロイックミラー210,220と、反射ミラー230,240,250と、入射側レンズ260と、リレーレンズ270とを有する。色分離光学系200は、重畳レンズ150から射出される照明光束を、赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる3つの液晶光変調装置400R,400G,400Bに導く機能を有する。
【0045】
ダイクロイックミラー210,220は、基板上に所定の波長領域の光束を反射し、他の波長領域の光束を透過する波長選択膜が形成された光学素子である。光路前段に配置されるダイクロイックミラー210は、赤色光成分を反射し、その他の色光成分を透過させるミラーである。光路後段に配置されるダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射し、青色光成分を透過させるミラーである。
【0046】
ダイクロイックミラー210で反射された赤色光成分は、反射ミラー230により曲折され、集光レンズ300Rを介して赤色光用の液晶光変調装置400Rに入射する。集光レンズ300Rは、重畳レンズ150からの各部分光束を各主光線に対して略平行な光束に変換するために設けられている。なお、他の集光レンズ300G,300Bも、集光レンズ300Rと同様に構成されている。
【0047】
ダイクロイックミラー210を通過した緑色光成分及び青色光成分のうち緑色光成分は、ダイクロイックミラー220で反射され、集光レンズ300Gを通過して緑色光用の液晶光変調装置400Gに入射する。一方、青色光成分は、ダイクロイックミラー220を透過し、入射側レンズ260、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ270、射出側の反射ミラー250及び集光レンズ300Bを通過して青色光用の液晶光変調装置400Bに入射する。入射側レンズ260、リレーレンズ270及び反射ミラー240,250は、ダイクロイックミラー220を透過した青色光成分を液晶光変調装置400Bまで導く機能を有する。
【0048】
液晶光変調装置400R,400G,400Bは、画像情報に応じて照明光束を変調するものであり、照明装置100の照明対象となる。
液晶光変調装置400R,400G,400Bは、液晶パネル410R,410G,410Bと、液晶パネル410R,410G,410Bの光入射側に配置される入射側偏光板420R,420G,420Bと、液晶パネル410R,410G,410Bの光射出側に配置される射出側偏光板430R,430G,430Bと、入射側偏光板420R,420G,420Bと液晶パネル410R,410G,410Bとの間に配置される光学補償素子440R,440G,440Bと、液晶パネル410R,410G,410Bと射出側偏光板430R,430G,430Bとの間に配置される光学補償素子450R,450G,450Bとを有する。
【0049】
液晶パネル410R,410G,410Bは、ここでは図示による説明を省略するが、一対の透明なガラス基板(対向基板とTFT基板)に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、TN型の液晶パネルである。例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に従って、入射側偏光板420R,420G,420Bから射出される1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。また、液晶パネル410R,410G,410Bの光入射側及び光射出側には、それぞれ防塵ガラス(図示せず。)が設けられている。
【0050】
入射側偏光板420R,420G,420B、液晶パネル410R,410G,410B及び射出側偏光板430R,430G,430Bによって入射する各色光の光変調が行われる。
【0051】
光学補償素子440R,440G,440B,450R,450G,450Bは、液晶パネル410R,410G,410Bのプレチルト角に起因する複屈折(液晶分子によって生ずる光学的な位相差)を補償するための素子であり、ここでは詳細な説明を省略するが、複屈折性の無機材料からなる無機光学補償板と、無機光学補償板を支持する透光性支持基板とを有する。無機光学補償板は、例えば水晶からなる無機光学補償板であり、透光性支持基板は、例えば石英ガラスからなる透光性支持基板である。
なお、これら光学補償素子440R,440G,440B,450R,450G,450Bの製造方法については、詳細に後述する。
【0052】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板430R,430G,430Bから射出された各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって青色光及び赤色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0053】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で大画面画像を形成する。
【0054】
次に、光学補償素子440R,440G,440B,450R,450G,450Bを製造するための製造方法(実施形態1に係る光学補償素子の製造方法)について、図2〜図5を用いて説明する。なお、光学補償素子440R,440G,440B,450R,450G,450Bは、以下の説明における光学補償素子1と同一の構成からなるとともに、同一の製造方法によって製造されたものである。
【0055】
図2は、光学補償素子1の構成を示す図である。
図3は、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を示すフローチャートである。
図4及び図5は、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を説明するために示す図である。図4(a)〜図4(e)及び図5(a)〜図5(e)は各工程を模式的に示す図であって、図4(a)は準備される透光性支持基板20及び無機基板30の斜視図であり、図4(b)はインゴットから各基板を切り出す様子を示す概念図であり、図4(c)は研削後の透光性支持基板20及び無機基板30の側面図であり、図4(d)は基板グループ分け工程を示す概念図であり、図4(e)は基板貼り合わせ工程後の透光性支持基板20及び無機基板30の側面図であり、図5(a)は無機基板30を研削している様子を示す概念図であり、図5(b)は透光性支持基板20及び無機基板30をキャリア730の孔732に嵌合させる様子を示す斜視図であり、図5(c)は研磨皿740にキャリア730を仮着した状態を示す斜視図であり、図5(d)は無機基板30を研磨している様子を示す概念図であり、図5(e)は全工程終了後の透光性支持基板20及び無機基板30(無機光学補償板10)の側面図である。
なお、図2、図4及び図5においては、説明を簡略化するため、各部材(無機光学補償板10、透光性支持基板20、無機基板30など)の厚みや大きさなどについては誇張して図示している。
【0056】
実施形態1に係る光学補償素子の製造方法は、図2に示すように、無機光学補償板10と、無機光学補償板10を支持する透光性支持基板20とを有する光学補償素子1を製造するための製造方法であって、図3に示すように、「基板準備工程」、「基板研削工程」、「基板グループ分け工程」、「基板貼り合わせ工程」及び「無機基板研削・研磨工程」が順次実施される。以下、これら各工程を順次説明する。
【0057】
1.基板準備工程S10
まず、図4(a)に示すように、複数の透光性支持基板20と、複屈折性を有する無機材料からなる複数の無機基板30とを準備する。透光性支持基板20としては、例えば石英ガラス基板を用い、無機基板30としては、例えば水晶基板を用いている。なお、透光性支持基板20の外形サイズは、無機基板30の外形サイズよりも大きい。
基板準備工程について具体的に説明すると、図4(b)に示すように、例えばワイヤーソーを用いて、石英ガラスインゴットから薄板状の石英ガラス基板を切り出し、水晶インゴットから薄板状の水晶基板を切り出す。このとき切り出された石英ガラス基板及び水晶基板の厚みは、例えば約700μmである。そして、これら各基板を切断して、複数の透光性支持基板20及び複数の無機基板30を作成する。
【0058】
2.基板研削工程S20
次に、複数の透光性支持基板20及び複数の無機基板30を研削装置(図示せず。)にセットして、複数の透光性支持基板20及び複数の無機基板30を所定の厚みに研削する(図4(c)参照。)。研削後の透光性支持基板20及び無機基板30の厚みは、例えば500μmである。
【0059】
3.基板グループ分け工程S30
次に、各透光性支持基板20の周辺部分(透光性支持基板20の四隅)の厚み及び中央部分の厚みを測定して、測定後の透光性支持基板20を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が最大でも例えば1ミクロンとなるようにグループ分けする(図4(d)参照。)。実施形態1においては、各透光性支持基板20について、周辺部分の厚み及び中央部分の厚みとして測定された5点の測定結果から平均値を算出し、当該平均値をその透光性支持基板20の厚みとしている。図4(d)を用いて説明すると、例えば符号Aで示すグループは、透光性支持基板20の厚みが499μm(498.5μm〜499.4μm)のものであり、符号Aで示すグループは、透光性支持基板20の厚みが500μm(499.5μm〜500.4μm)のものであり、符号Aで示すグループは、透光性支持基板20の厚みが501μm(500.5μm〜501.4μm)のものである。このようにして、透光性支持基板20を厚みごとにグループ分けする。
なお、グループの数や各グループに振り分けるための数値の範囲等については、適宜調整してよい。
【0060】
4.基板貼り合わせ工程S40
次に、図4(e)に示すように、接着剤Cを用いて、無機基板30とグループ分けされた透光性支持基板20とを接着する。接着剤Cとしては、紫外線硬化性の樹脂接着剤を用いている。なお、当該接着剤を硬化する方法としては、蛍光灯下で接着剤を仮硬化した後、UVベルト炉で本硬化することが好ましい。このように仮硬化を行うことによって、連鎖反応を促進して樹脂の分子量を大きくすることができ、接着力を高めることができる。
【0061】
5.無機基板研削・研磨工程S50
次に、透光性支持基板20が貼り合わされた無機基板30を研削装置及び研磨装置にセットして、無機基板30を所定の厚み(例えば7μm)となるまで研削・研磨する。
【0062】
無機基板研削・研磨工程について具体的に説明すると、まず、図5(a)に示すように、同一グループの透光性支持基板20が貼り合わされた無機基板30を研削装置(ロータリー研削盤)700にセットして、無機基板30側の面を砥石710で研削する。このとき、透光性支持基板20側の面は真空固定されている。研削後の無機基板30の厚みは、例えば300μmである。
【0063】
次に、図5(b)に示すように、研削後の無機基板30(透光性支持基板20と無機基板30とが貼り合わされた部材)をキャリア730の孔732に嵌合させ仮固定させた後、図5(c)に示すように、仮着剤Dを用いて、キャリア730を研磨皿740に仮着する。仮着剤Dとしては、例えば、水溶性仮着剤(株式会社アーデル製、K40)、熱軟化性仮着剤(例えば、株式会社テスク製、A−1579)又はワックス(ろう)などを用いることができる。
【0064】
そして、図5(d)に示すように、研磨皿740を研磨装置750にセットして、無機基板30側の面をラップ研磨及びポリッシュ研磨する。ラップ研磨においては、例えばGC(グリーンカーボン)を用いて無機基板30をある程度の厚みとなるまで研磨する。ポリッシュ研磨においては、例えば酸化セリウムを用いて無機基板30を所定の厚み(例えば7μm)となるまで研磨する。
【0065】
なお、本実施形態のように、無機基板30が貼り合わされた透光性支持基板20をキャリア730に仮固定させていると、ラップ研磨及びポリッシュ研磨の途中で無機基板30の厚みを測定するために研磨装置750から着脱するのが容易となる。
【0066】
無機基板研削・研磨工程においては、透光性支持基板20の表面にできた傷を取るために透光性支持基板20側の面をポリッシュ研磨してもよい。
【0067】
無機基板研削・研磨工程が終了したら、無機基板30の研削・研磨面(及び透光性支持基板20の研磨面)をアルコールで拭いたり洗浄したりすることが好ましい。
【0068】
以上の工程を実施することにより、図2に示す光学補償素子1(光学補償素子440R,440G,440B,450R,450G,450B)を製造することができる。
【0069】
このように、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法によれば、無機基板30と透光性支持基板20とを貼り合わせた後で無機基板30側の面を研削・研磨することとしているため、研削・研磨後の無機基板30を単独でハンドリングする必要が無い。その結果、光学補償素子を従来よりも容易に製造することが可能となる。
【0070】
また、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法によれば、研削・研磨後の無機基板30を単独でハンドリングするのが不要であることから、研削・研磨後の無機基板30を損傷する危険性が低くなり、結果として、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0071】
ここで、比較例に係る光学補償素子の製造方法をもとにして、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0072】
図6は、比較例に係る光学補償素子の製造方法を示すフローチャートである。
図7は、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を説明するために示す図である。図7(a)及び図7(b)は比較例に係る光学補償素子の製造方法を説明するために示す図であって、図7(a)は研削・研磨前(基板貼り合わせ後)の無機基板30及び透光性支持基板20を示す概念図であり、図7(b)は研削・研磨後の無機基板30及び透光性支持基板20を示す概念図である。一方、図7(c)及び図7(d)は実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を説明するために示す図であって、図7(c)は研削・研磨前(基板貼り合わせ後)の無機基板30及び透光性支持基板20を示す概念図であり、図7(d)は研削・研磨後の無機基板30及び透光性支持基板20を示す概念図である。
なお、図7において、説明の簡略化を図るため、透光性支持基板20と無機基板30との間に介在する接着剤Cの図示を省略している。
【0073】
比較例に係る光学補償素子の製造方法は、図6に示すように、透光性支持基板と無機基板とを準備する基板準備工程S110と、透光性支持基板及び無機基板を所定の厚みに研削する基板研削工程S120と、無機基板と透光性支持基板とを貼り合わせる基板貼り合わせ工程S130と、無機基板を研削・研磨する無機基板研削・研磨工程S140とをこの順序で含んでいる。比較例における基板準備工程S110、基板研削工程S120、基板貼り合わせ工程S130及び無機基板研削・研磨工程S140は、実施形態1で説明した工程と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0074】
すなわち、比較例に係る光学補償素子の製造方法は、基板グループ分け工程を行わずに、単に無機基板と透光性支持基板とを貼り合わせた後、無機基板側の面を研削・研磨する方法である。
【0075】
比較例に係る光学補償素子の製造方法によっても、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法の場合と同様に、研削・研磨後の無機基板を単独でハンドリングする必要が無いため、光学補償素子を従来よりも容易に製造することが可能となるとともに、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0076】
しかしながら、図7(a)に示すように、無機基板30と貼り合わせる前の透光性支持基板20の厚みに許容範囲を超えるバラつきが存在する場合、単に無機基板30と透光性支持基板20とを貼り合わせた後で無機基板30側の面を研削・研磨するだけでは、研削・研磨後の無機基板30の厚みは、図7(b)に示すように、透光性支持基板20の厚みバラつきによる影響を受けてしまう。特に、研削・研磨後の無機基板30の厚みは非常に薄い(例えば10μm以下)ものであることから、透光性支持基板20の厚みバラつきが研削・研磨後の無機基板30に与える影響は大きく、研削・研磨後の無機基板30の厚みバラつきが大きくなる。その結果、光学補償素子の光学特性のバラつきが大きくなる。
【0077】
これに対し、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法によれば、無機基板30を研削・研磨する前に、少なくとも複数の透光性支持基板20の厚みを測定して、測定後の透光性支持基板20を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が1ミクロンとなるようにグループ分けすることとしているため、図7(c)に示すように、研削・研磨する前の透光性支持基板20の厚みバラつきを低減することが可能となる。これにより、無機基板研削・研磨工程において基板全体(透光性支持基板20と無機基板30とが貼り合わされた部材)の厚みを測定すれば、基板全体の厚みから透光性支持基板20の厚みを差し引くことによって必然的に無機基板30単独の厚みを知ることが可能となる。
すなわち、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法によれば、基板研削工程を行った後の透光性支持基板20の厚みにバラつきがあったとしても、上述の基板グループ分け工程を行うことによって、図7(d)に示すように、透光性支持基板20の厚みバラつきが研削・研磨後の無機基板30に与える影響を低減することが可能となる。これにより、研削・研磨後の無機基板30の厚みバラつきを低減することができ、結果として、光学補償素子の光学特性のバラつきを低減することが可能となる。
【0078】
したがって、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法は、従来よりも容易に製造することが可能で、製造コストの低減を図ることが可能で、さらには光学特性のバラつきを低減することが可能な光学補償素子の製造方法となる。
【0079】
実施形態1に係る光学補償素子の製造方法において、基板貼り合わせ工程においては、無機基板30の外形サイズよりも大きな外形サイズを有する透光性支持基板20を無機基板30と貼り合わせることとしているため、透光性支持基板20と無機基板30とが貼り合わされた部材について、どちらの面が無機基板30側の面であってどちらの面が透光性支持基板20側の面であるか比較的容易に判別することが可能となる。このため、無機基板研削・研磨工程において、無機基板30側の面が研削・研磨されるように、透光性支持基板20と無機基板30とが貼り合わされた部材を研削装置700又は研磨装置750にセットするのが容易となる。
また、無機基板30と透光性支持基板20とを接着した際に無機基板30と透光性支持基板20との間から接着剤Cが流れ出たとしても、接着剤Cは透光性支持基板20側に広がることとなる。つまり、流れ出た接着剤Cが無機基板30の研削・研磨面に付着するのを抑制することができ、無機基板30を精度よく研削・研磨することが可能となる。
【0080】
実施形態1に係る光学補償素子の製造方法において、基板グループ分け工程においては、少なくとも透光性支持基板20の周辺部分の厚み及び中央部分の厚みを測定することとしている。これにより、研削・研磨する前の透光性支持基板20の厚みを正確に把握・管理することが可能となるため、基板全体の厚みから透光性支持基板20の厚みを差し引くことによって算出される無機基板30単独の厚みについても、より正確な値を知ることが可能となる。その結果、光学補償素子の光学特性のバラつきをさらに低減することが可能となる。
【0081】
実施形態1に係る光学補償素子の製造方法において、基板貼り合わせ工程においては、接着剤Cを用いて、無機基板30と透光性支持基板20とを接着することとしているため、無機基板30と透光性支持基板20との界面における表面反射の発生が抑制され、光透過率を高めることが可能になる。
また、無機基板30及び透光性支持基板20の線膨張係数がそれぞれ異なる場合であっても、各基板間の貼り合わせ面における剥離が起こりにくくなり、長期信頼性の低下を抑制することが可能になる。
【0082】
実施形態1に係る光学補償素子の製造方法においては、無機基板30として、水晶基板を用いているため、水晶からなる無機光学補償板10を備える光学補償素子1を従来よりも容易に、かつ、安価に製造することが可能となる。
【0083】
実施形態1に係るプロジェクタ1000は、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法によって製造された光学補償素子440R,440G,440B,450R,450G,450Bを備えるため、投写画像のコントラストを向上することが可能で、従来よりも安価で、かつ、光学特性のバラつきの少ないプロジェクタとなる。
【0084】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係るプロジェクタ1002を説明するために示す図である。図8(a)はプロジェクタ1002の光学系を示す図であり、図8(b)はプロジェクタ1002の要部を示す図である。
なお、図8において、図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0085】
実施形態2に係るプロジェクタ1002は、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ1000とよく似た構成を有しているが、液晶パネルの構成(光学補償素子の配置位置)が、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なる。
【0086】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、図8に示すように、液晶光変調装置402R,402G,402Bは、液晶パネル412R,412G,412Bと、液晶パネル412R,412G,412Bの光入射側に配置される入射側偏光板420R,420G,420Bと、液晶パネル412R,412G,412Bの光射出側に配置される射出側偏光板430R,430G,430Bと、液晶パネル412R,412G,412Bの光入射側に配置される光学補償素子460R,460G,460Bと、液晶パネル412R,412G,412Bの光射出側に配置される光学補償素子470R,470G,470Bとを有する。
【0087】
液晶パネル412Rは、図8(b)に示すように、TFT基板416Rと、対向基板414Rと、TFT基板416Rと対向基板414Rとの間に密閉封入された液晶(図示せず。)とを有する。このとき、光学補償素子460R,470Rは、液晶パネル412Rの光入射側及び光射出側に設けられる防塵ガラスの代わりとして用いられている。光学補償素子460R,470Rは、複屈折性の無機材料からなる無機光学補償板462R,472Rと、無機光学補償板462R,472Rを支持する透光性支持基板464R,474Rとを有する。無機光学補償板462R,472Rは、例えば水晶からなる無機光学補償板であり、透光性支持基板464R,474Rは、例えば石英ガラスからなる透光性支持基板である。
なお、ここでは図示による説明を省略したが、他の液晶パネル412G,412Bの光入射側及び光射出側に配置された光学補償素子460G,460B,470G,470Bも、光学補償素子460R,470Rと同様の構成を有するとともに、防塵ガラスの代わりとして用いられている。
【0088】
光学補償素子460R,460G,460B,470R,470G,470Bは、実施形態1で説明した光学補償素子1と同様の構成を有しており、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法によって製造することができる。
【0089】
このように、実施形態2に係るプロジェクタ1002は、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは液晶パネルの構成(光学補償素子の配置位置)が異なるが、実施形態1に係る光学補償素子の製造方法によって製造された光学補償素子460R,460G,460B,470R,470G,470Bを備えるため、投写画像のコントラストを向上することが可能で、従来よりも安価で、かつ、光学特性のバラつきの少ないプロジェクタとなる。
【0090】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、光学補償素子460R,460G,460B,470R,470G,470Bは、液晶パネル412R,412G,412Bの光入射側及び光射出側に配置される防塵ガラスとしての機能を有するため、光学補償素子を配置するために本来必要としていたスペースを削減することができ、装置の小型化を図ることが可能となる。また、液晶光変調装置402R,402G,402Bから投写光学系600までの距離を短くすることが可能となるため、投写光学系として、バックフォーカス(BF)がそれほど大きくない投写レンズを用いることができ、結果として、さらに安価なプロジェクタを実現することが可能となる。
【0091】
実施形態2に係るプロジェクタ1002は、液晶パネルの構成(光学補償素子の配置位置)が異なる点以外の点では、実施形態1に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクタ1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0092】
以上、本発明の光学補償素子の製造方法及びプロジェクタを上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0093】
(1)上記実施形態1においては、基板貼り合わせ工程として、接着剤を用いて無機基板と透光性支持基板とを接着する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、直接接合によって無機基板と透光性支持基板とを接合してもよい。直接接合としては、分子間力による接合やプラズマ接合などを例示することができる。
【0094】
(2)上記各実施形態においては、無機基板として、水晶基板を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、サファイア基板を用いてもよいし、他の複屈折性を有する無機材料(例えば、ウルツ鉱、金紅石、チリ硝石、電気石、硫化カドミウム等)からなる無機基板を用いてもよい。
【0095】
(3)上記各実施形態においては、透光性支持基板として、石英ガラス基板を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、白板ガラス、パイレックス(登録商標)、結晶化ガラス、立方晶の焼結体からなる基板を用いてもよい。
【0096】
(4)上記実施形態1においては、基板グループ分け工程において、測定後の透光性支持基板を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が1ミクロンとなるようにグループ分けする場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。同一グループ内での透光性支持基板の厚みの差の最大値が1ミクロン以下(例えば、0.5μm以下)となるようにグループ分けしてもよい。
【0097】
(5)上記実施形態1においては、基板グループ分け工程において、各透光性支持基板20について、周辺部分の厚み及び中央部分の厚みとして測定された5点の測定結果から平均値を算出し、当該平均値をその透光性支持基板20の厚みとしていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記5点の測定結果のうち中央値をその透光性支持基板20の厚みとしてもよいし、透光性支持基板20における周辺部分及び中央部分のうちいずれか1箇所(例えば中央部分)の厚みを、その透光性支持基板20の厚みとしてもよい。
【0098】
(6)上記実施形態1においては、基板グループ分け工程において、透光性支持基板のみをグループ分けしたが、本発明はこれに限定されるものでなく、無機基板についてもその厚みを測定して、無機基板を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が1ミクロン以下となるようにグループ分けすることとしてもよい。
【0099】
(7)上記実施形態1においては、無機基板研削・研磨工程において、透光性支持基板が貼り合わされた無機基板を研削装置(ロータリー研削盤)にセットする際に、透光性支持基板側の面を真空固定したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、仮着剤を用いて、透光性支持基板側の面を研削装置に固定してもよい。
【0100】
(8)上記実施形態1においては、無機基板研削・研磨工程において、無機基板30が貼り合わされた透光性支持基板20をキャリア730に仮固定させて、当該キャリア730を研磨皿740に固定させていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、無機基板30が貼り合わされた透光性支持基板20を直接研磨皿740に仮固定してもよい。
【0101】
(9)上記実施形態1においては、無機基板研削・研磨工程において、無機基板を研削した後でラップ研磨及びポリッシュ研磨する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、研削を行わずに研磨のみで無機基板を所定の厚みにしてもよい。また、上記実施形態1においては、GC(グリーンカーボン)を用いてラップ研磨を行い、酸化セリウムを用いてポリッシュ研磨を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の研磨剤(例えば、ホワイトアランダムやダイヤモンドパウダーなど。)を用いてラップ研磨及びポリッシュ研磨を行ってもよい。
【0102】
(10)上記実施形態2においては、透光性支持基板が液晶パネル側に配置され、かつ、無機光学補償板が液晶パネルとは反対側に配置されるように(図8(b)を用いて説明すると、無機光学補償板462Rが光入射端となり、無機光学補償板472Rが光射出端となるように)、各光学補償素子が配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、無機光学補償板が液晶パネル側に配置され、かつ、透光性支持基板が液晶パネルとは反対側に配置されるように(図8(b)を用いて説明すると、透光性支持基板464Rが光入射端となり、透光性支持基板474Rが光射出端となるように)、各光学補償素子が配置されていてもよい。
【0103】
(11)上記実施形態1においては、液晶パネルの光入射側及び光射出側にそれぞれ1枚ずつ光学補償素子が配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。光学補償素子の枚数及び配置位置については、液晶パネルの種類等に応じて適宜変更してもよい。
【0104】
(12)上記各実施形態においては、光源装置として、楕円面リフレクタからなる光源装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、放物面リフレクタからなる光源装置を用いてもよい。
【0105】
(13)上記各実施形態においては、光均一化光学系として、レンズアレイからなるレンズインテグレータ光学系を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、インテグレータロッドからなるロッドインテグレータ光学系を用いてもよい。
【0106】
(14)上記各実施形態においては、3つの液晶光変調装置を用いたいわゆる3板式の液晶プロジェクタに本発明が適用される場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶光変調装置を用いたプロジェクタにも本発明を適用することができる。
【0107】
(15)本発明の光学補償素子の製造方法を実施することにより、上述した光透過型の液晶光変調装置に用いる光学補償素子を製造できるのはもちろん、光反射型の液晶光変調装置に用いる光学補償素子も製造することができる。
【0108】
(16)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクタに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクタに適用する場合にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施形態1に係るプロジェクタ1000を説明するために示す図。
【図2】光学補償素子1の構成を示す図。
【図3】実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を示すフローチャート。
【図4】実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を説明するために示す図。
【図5】実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を説明するために示す図。
【図6】比較例に係る光学補償素子の製造方法を示すフローチャート。
【図7】実施形態1に係る光学補償素子の製造方法を説明するために示す図。
【図8】実施形態2に係るプロジェクタ1002を説明するために示す図。
【符号の説明】
【0110】
1,440R,440G,440B,450R,450G,450B,460R,470R…光学補償素子、10,462R,472R…無機光学補償板、20,464R,474R…透光性支持基板、30…無機基板、100…照明装置、100ax…照明光軸、110…光源装置、112…発光管、114…楕円面リフレクタ、116…副鏡、118…凹レンズ、120…第1レンズアレイ、122…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラー、260…入射側レンズ、270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集光レンズ、400R,400G,400B,402R,402G,402B…液晶光変調装置、410R,410G,410B,412R,412G,412B…液晶パネル、414R…対向基板、416R…TFT基板、420R,420G,420B…入射側偏光板、430R,430G,430B…射出側偏光板、500…クロスダイクロイックプリズム、600…投写光学系、700…研削装置、710…砥石、730…キャリア、732…(キャリアの)孔、740…研磨皿、750…研磨装置、1000,1002…プロジェクタ、C…接着剤、D…仮着剤、SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の透光性支持基板と複屈折性を有する無機材料からなる複数の無機基板とを準備する基板準備工程と、
前記複数の透光性支持基板及び前記複数の無機基板を所定の厚みに研削する基板研削工程と、
前記複数の透光性支持基板及び前記複数の無機基板のうち少なくとも前記複数の透光性支持基板のそれぞれの厚みを測定して、測定後の前記透光性支持基板を同一グループ内でそれぞれの厚みの差が1ミクロン以下となるようにグループ分けする基板グループ分け工程と、
前記無機基板とグループ分けされた前記透光性支持基板とを貼り合わせる基板貼り合わせ工程と、
同一グループの前記透光性支持基板が貼り合わされた前記無機基板を、研削装置及び研磨装置のうち少なくとも一方にセットして、前記無機基板を研削・研磨する無機基板研削・研磨工程とをこの順序で含むことを特徴とする光学補償素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学補償素子の製造方法において、
前記基板貼り合わせ工程においては、前記無機基板の外形サイズよりも大きな外形サイズを有する前記透光性支持基板を前記無機基板と貼り合わせることを特徴とする光学補償素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学補償素子の製造方法において、
前記基板グループ分け工程においては、少なくとも前記透光性支持基板の周辺部分の厚み及び中央部分の厚みを測定することを特徴とする光学補償素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学補償素子の製造方法において、
前記基板貼り合わせ工程においては、接着剤を用いて、前記無機基板と前記透光性支持基板とを接着することを特徴とする光学補償素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学補償素子の製造方法において、
前記基板貼り合わせ工程においては、直接接合によって、前記無機基板と前記透光性支持基板とを接合することを特徴とする光学補償素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学補償素子の製造方法において、
前記無機基板として、水晶基板又はサファイア基板を用いることを特徴とする光学補償素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学補償素子の製造方法によって製造された光学補償素子を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項8】
請求項7に記載のプロジェクタにおいて、
照明光束を射出する照明装置と、
前記照明装置からの前記照明光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルを有する液晶光変調装置と、
前記液晶光変調装置で変調された光を投写する投写光学系とを備え、
前記光学補償素子は、前記液晶パネルの光入射面又は光射出面のうち少なくとも一方に配置され、前記液晶パネルの防塵ガラスとしての機能を有することを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−69248(P2009−69248A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235057(P2007−235057)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】