説明

光感作型ざ瘡治療剤、光感作型ざ瘡治療剤の組成物、光力学的ざ瘡治療用キット、光感作型皮脂分泌抑制剤、光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物および光力学的皮脂分泌抑制剤キット

【課題】光力学療法をざ瘡や乾癬の治療により効果的に適応させるための新しい光感作剤を提供する。
【解決手段】本発明は、インドール−3−アルキルカルボン酸(Indole−3−alkylcarboxylic acid:IAA)とその誘導体のざ瘡治療剤および皮脂分泌抑制剤としての新たな用途に関するものである。より詳細に説明すると、本発明は、光線により活性化される性質を持つIAAを含む光力学療法(photodynamic therapy:PDT)用の光感作剤およびこれを含む光力学療法用のキットおよび光力学療法用の組成物に関するもので、ざ瘡治療剤と皮脂分泌抑制剤としての新たな用途に関するものである。IAAを活性化する光源としては、紫外線または可視光線が使用可能であるが、特に青色あるいは緑色光を利用することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドール−3−アルキルカルボン酸(Indole−3−alkylcarboxylic acid:IAA)を含むざ瘡治療剤、皮脂分泌抑制剤およびこれを含む光力学的療法用キット(ACNE THERAPEUTICS AND SEBUM SECERNENT INHIBITOR WHICH COMPRISE INDOLE−3−ALKYLCARBOXYLCACID, AND KITS FOR PHOTODYNAMIC THERAPY CONTAINING THE SAME)に関する。本発明は、インドール−3−アルキルカルボン酸とその誘導体のざ瘡治療剤および皮脂分泌抑制剤としての新たな用途に関するものである。より詳細に説明すると、本発明は、光線により活性化される性質を持つIAAを含む光力学療法(photodynamic therapy:PDT)用の光感作剤およびこれを含む光力学療法用のキットおよび光力学療法用組成物に関するもので、ざ瘡治療剤と皮脂分泌抑制剤としての新たな用途に関するものである。本発明のインドール−3−アルキルカルボン酸を活性化する光源としては、紫外線または可視光線が使用可能であるが、特に青色あるいは緑色光を利用することが望ましい。
【背景技術】
【0002】
光力学療法(photodynamic therapy:PDT)は、最近ガン治療において最も嘱望される治療法の一つである。光力学療法の原理は、酸素と外部から供給される光(光子)と光に敏感に反応する物質(光感作剤:photosensitizer)との総合的な化学反応により派生される単一状態の酸素(singlet oxygen)あるいはフリーラジカルが各種の病変部やガン細胞を破壊し、ガンを治療する方法である。
【0003】
このような光力学療法の長所は、正常な細胞は温存しつつ病的細胞だけを選択的に除去できる点と、これにより局所麻酔のみで手術が可能であるため、全身麻酔のリスクを排除でき、施術が容易である点が挙げられる。したがって光力学療法は、ガン細胞の特異的な除去効果に優れているのみならず、施術後の回復が早く、入院期間を短縮することで患者のQOL(Quality of Life)を高め、社会活動への復帰を円滑にするなど、社会・経済的にも優れた効果を得ることが可能である。
【0004】
光力学療法は、1980年代から本格的に研究が進み、1990年代に入りカナダ、ドイツ、日本などで治験が承認されて以来、アメリカFDAは1996年1月に食道ガンの治療を許可、さらに1997年9月には早期肺ガンの治療に対しても承認している。1996年初めの統計によると、約32カ国で3000件余りの光力学療法が施行された。
【0005】
しかし、現在施行されている光力学療法は、容量の大きい腫瘍においては光が腫瘍全体を透過できず施行範囲が制限される点や、ポルフィリン(porphyrin)に代表される光感作剤のほとんどが高価である点、また体内での代謝が遅く光毒性の副作用を発生し、腫瘍内の光感作剤の濃度が低く光力学療法の効果が十分に得られないなどその問題点も多数挙げられる。
【0006】
光力学療法に使用される光感作剤であるPhotofrin(商標)は、1996年にアメリカFDAの承認を受けた良好な治療効果と安全性を持つ治療剤である。しかしながら、投薬後5〜6週間体内に累積して副作用を起こす可能性がある他、純粋なPhotofrin(商標)は製造が困難で光力学療法時の最適条件とされる650〜850nmより短い630nmにおいて吸収されることにより腫瘍細胞に数ミリしか浸透できず、相対的に治療効果が低いという短所もある(Chemistry & Industry,Sep 21,1998,739−743、Chemical & Engineering News,Nov 2,1998,22−27)。したがってこのような問題点を克服する新たな光感作剤の開発が切実に要求されている。
【0007】
次世代光感作剤として知られている化学物質には、ポルフィリン類(porphyrins)、クロリン類(chlorines)、バクテリオクロリン類(bacteriochlorins)、ポルフィセン類(porphycenes)などが最も盛んに研究されている(J.Org.Chem.,63,1998,1646−1656)。この中でも植物に多く分布されている葉緑素類(chlophylls)から金属イオンを除去したフェオフィチン類(pheophytins)は、ヘマトポルフィリン(hematoporphyrin)誘導体であるPhotofrin(商標)より長い波長で吸収されるだけでなく、高純度に分離および製造が可能であるため、次世代光感作剤として多数の研究が集中して行われているが、現時点で注目されるべき結果が出されていないのが実状である。
【0008】
また、近来ではこのような光力学療法をざ瘡や乾癬の治療に利用する試みもなされている。ざ瘡治療には主に光感作剤としてアミノレブリン(aminolevulinic acid:ALA)が使用されているが、この物質もまた前述した光感作剤と同様に、ある程度の時間、光を遮断しなければならず、施術時の強い疼痛、炎症後色素沈着のような副作用といった短所を持つ。
【0009】
したがって当業界では、光力学療法をざ瘡や乾癬の治療により効果的に適応させるための新しい光感作剤の開発が要求されている。本発明者らは最近、インドール−3−アルキルカルボン酸(IAA)と光との並行使用が、ガンを始めとした疾患の治療に適応できることを確認し、特許を出願した(大韓民国特許出願 第10−2006−0063841号)。しかし、上記の発明ではこのようなインドール−3−アルキルカルボン酸と光との並行使用がざ瘡治療に利用でき、また皮脂分泌の抑制剤としても治療効果があることを認知、確認することができなかった。
【0010】
本発明者らは、このような先行した特許の適用限定範囲を克服するため、インドール−3−アルキルカルボン酸をざ瘡治療剤や皮脂分泌の抑制剤として使用する方法に関して新たな研究を遂行した結果、インドール−3−アルキルカルボン酸のざ瘡治療剤と皮脂分泌抑制剤としての薬理効果を確認し本発明を完成するに至った。
【0011】
【特許文献1】大韓民国特許出願第10−2006−0063841号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の基本的な目的は、インドール−3−アルキルカルボン酸のざ瘡に対する光力学療法の治療剤としての新たな用途を提供することにある。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、インドール−3−アルキルカルボン酸の皮脂分泌抑制剤としての新しい光力学療法の治療剤としての用途を提供することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、インドール−3−アルキルカルボン酸をざ瘡治療剤あるいは皮脂分泌抑制剤として使用するために、上記のインドール−3−アルキルカルボン酸の光感作剤を含む光力学療法用のキットおよび光力学療法用の薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した本発明の基本的な目的は、インドール−3−酢酸(Indole−3−acetic acid:IAA)のざ瘡治療および皮脂分泌の抑制のための光感作剤(Photosensitizer)としての新たな薬理効果を究明することにより達成される。
【0016】
また本発明のもう一つの目的は、ざ瘡治療および皮脂分泌の抑制のため、光線により活性化される性質を持つインドール−3−アルキルカルボン酸を含有する光力学療法(photodynamic therapy:PDT)用の光感作剤およびこれを含む光力学療法用のキットおよび光力学療法用の薬学組成物を提供することにより達成される。
【0017】
本発明のインドール−3−アルキルカルボン酸を活性化させる光源としては、紫外線または可視光線が使用可能であるが、特に青色あるいは緑色光を利用することが望ましい。
【0018】
インドール−3−酢酸は、オーキシン(auxin)の一種で、植物のオーキシンと同一の意味で使用されてもいる。オーキシンは、植物の生長を調節するホルモンとして知られており、幹細胞の伸長を促進し、根では細胞の伸長を抑制する。オーキシンは、植物の茎が光に向かって伸びるよう屈光性に影響し、重力の作用する方向によって生長する屈置性には反作用する。インドール−3−酢酸は、以前から抗ガン効果などの疾病の治療に効果があるとされてきたが、その作用機序はあまり知られていなかった。
【0019】
本発明者らは、インドール−3−アルキルカルボン酸の抗ガン効果を研究中、インドール−3−アルキルカルボン酸単独では細胞への毒性効果がなく、インドール−3−アルキルカルボン酸とホースラディッシュぺルオキシダーゼ(horseradish peroxidase:以下、HRPと略称する)とが複合的に作用するときのみガン細胞を壊死させることを確認した(Kim DS et al.,Oxidation of indole−3−acetic acid by horseradish peroxidase induces apoptosis in G361 human melanoma cells. Cell Signal 2004; 16: 81−8)。しかしHRPを使用する場合、これを高濃度に維持しつつガン細胞に対して特異的にターゲット設定をせねばならず、このようなターゲット設定は免疫学的な問題点と肝細胞での代謝などで技術的に困難な点が多く、万一このような問題点を克服したとしてもガン細胞に対して特異的にターゲット設定が成されなかった場合、正常な細胞が損傷することが起こり得るため実際に臨床での使用が難しい。このような問題点により、インドール−3−アルキルカルボン酸を実際のガン治療に使用するには限界があった。
【0020】
本発明者らは、上記のように臨床の現場で使用困難なHRPの代わりにインドール−3−アルキルカルボン酸を活性化できる他の物質および刺激を研究中、生体に無害であり組織の奥深くまで浸透可能な光をインドール−3−アルキルカルボン酸と共に使用する場合、インドール−3−アルキルカルボン酸の活性化において同等な効果が得られる事実を確認、さらに可視光線のうち、特に青色あるいは緑色光に優れた治療効果があることも確認した。もちろん紫外線もインドール−3−アルキルカルボン酸を活性化させることができることも確認され、インドール−3−アルキルカルボン酸を利用した光力動療法が、ガンを含む多様な疾患に適応可能であるという事実を発明した。
【0021】
本発明者らはさらに、インドール−3−アルキルカルボン酸自体が光感作剤として作用し、特にざ瘡治療と皮脂分泌の抑制効果に優れていることを確認した。またこのような効果は、可視光線、特に青色あるいは緑色光が効果的であることも確認した。
【0022】
本発明者らは、ざ瘡治療と皮脂分泌を抑制するインドール−3−アルキルカルボン酸の光感作剤としての作用の確認のみならず、実際にインドール−3−アルキルカルボン酸と光線の照射を併用することでアクネ桿菌と炎症性細菌の殺菌効果が得られることも確認した(図1参照)。
【0023】
また臨床的な効果を確認した結果、ざ瘡治療において優れた効果がある上、皮脂分泌も効果的に抑制することを究明した(図2参照)。これまで皮脂の分泌を調節する方法については明らかにされていなかったが、本発明の方法は、皮脂分泌を抑制する新たな方法として美容的な応用にもまた非常に有効である。
【0024】
上記の目的を達成するため、本発明は、ざ瘡治療あるいは皮脂分泌の調節のために下記の化学式1の構造を持つインドール−3−アルキルカルボン酸(IAA)とその誘導体を含む光感作剤を提供する。
【0025】
【化1】


化学式1
(上記のnは0〜3の定数である。)
【0026】
また本発明は、ざ瘡治療と皮脂分泌の調節のための有効成分として、光活性化という特徴を持つ上記の化学式1の構造のインドール−3−アルキルカルボン酸を治療に必要な有効量を含む光力学療法用の組成物を提供する。
【0027】
また本発明は、上記の化学式1の構造を持つインドール−3−アルキルカルボン酸および生体内あるいは生体外へ光を照射する光源を含む光力学療法用のキットを提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のインドール−3−アルキルカルボン酸は、新たな光感作剤として使用することにより、ざ瘡治療および皮脂分泌の抑制効果を示す。本発明のインドール−3−アルキルカルボン酸は、可視光線、特に青色光や緑色光により効果的に活性化され、優秀な抗菌効果および皮脂分泌の調節効果を示し、新しいざ瘡治療剤および皮脂分泌抑制剤として医薬産業における商業的活用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0030】
上記化学式1の構造を持つインドール−3−アルキルカルボン酸は、別途の光感作剤の使用を必要とせず、それ自体が光感作剤として作用し光線の照射により光活性化され、アクネ桿菌およびブドウ球菌のような皮膚細菌の殺菌効果があるというのが特徴である。インドール−3−アルキルカルボン酸を光活性化できる光源は、紫外線および可視光線の範囲内の光線で、その波長は範囲には制限がない。
【0031】
ただし生体においてインドール−3−アルキルカルボン酸を光活性化する場合には、正常組織に対する副作用を考慮し、280nm以上の光線を使用することが望ましく、波長が長いほどエネルギが低く照射時間が延長されるため、適当な照射時間を考慮すると300nm〜750nmの範囲にある光線を使用することが望ましい。
【0032】
またインドール−3−アルキルカルボン酸の光活性化の効率を考慮すると、350nm〜400nm間の長波長の紫外線、400nm〜500nm間の青色光、または500nm〜600nm間の緑色光を使用することが適当である。またインドール−3−アルキルカルボン酸の活性化の程度、細胞へ浸透する程度および生体への安全性などを考慮すると、青色光あるいは緑色光を照射するのが望ましい。
【0033】
上記の光線を照射するための光源は、超音波照射放出器、光放出ダイオード、レーザダイオード、ダイレーザ、ハロゲン化金属ランプ、フラッシュランプ、機械的にフィルタ処理された蛍光光源、機械的にフィルタ処理された白熱およびフィラメント光源からなるグループの中から選択された生体外光照射のための光源;および生体内の光照射のための光力学治療用のレーザファイバからなるグループの中から選択した1種以上が該当する。
【0034】
光線によりインドール−3−アルキルカルボン酸を光活性化する場合、インドール−3−アルキルカルボン酸は、上記の光源から照射された一種以上の波長の光線に治療学的に有効なパルス持続時間照射され、活性化される。
【0035】
インドール−3−アルキルカルボン酸を光活性化する場合、照射する光の強度(エネルギ)には制限がなく、光の強度が弱い場合、持続時間を長くあるいは照射回数を増やし、光の強度が強い場合、持続時間を短くあるいは照射回数を減らして、インドール−3−アルキルカルボン酸を光活性化させる。
【0036】
インドール−3−アルキルカルボン酸を光活性化する場合、光の強度が弱すぎると適切にターゲットとする組織に浸透してインドール−3−アルキルカルボン酸の光活性化効果をもたらすことが出来ず、逆に光の強度が強すぎると正常な組織にまで壊死などの副作用が発生することを考慮すると、照射する光の強度は1〜100J/cmの範囲内とすることが望ましい。また、パルスの持続時間が短すぎたり照射回数が少なすぎると十分な光活性化の効果が得られず、パルスの持続時間が長すぎたり照射回数が多すぎたりすると正常な組織の壊死などの副作用が起こりうる。
【0037】
さらに上記したように、照射する光の強度によって光の強度が弱い時には持続時間を延ばしたり照射回数を増やし、光の強度が強い時には持続時間を縮めたり照射回数を減らすことにより、安全に有用な効果を得ることができる。したがってパルスの持続時間と照射回数は、光の強度の範囲、正常な組織に対する副作用などを考慮しながら適切に調節するものとし、一律に定義をするのは難しいが、理想としてはパルス持続時間を0.1〜500ms、光線の照射回数を1回〜100回とするのが効果的である。例えば、本発明の実施例の一つにおいて人体に対してざ瘡治療効果を調べる試験では、光の強度を20J/cmとし、パルスの長さを15ms、光線の照射回数を1回としている。理想としてはIPL(Intense Pulse Light)のような強い光の照射装置によって光活性化がなされる。
【0038】
上記のインドール−3−酢酸含有の光力学療法用の組成物は、光感作の活性を持つインドール−3−酢酸を0.001重量%以上99重量%以下、理想としては0.001重量%〜30重量%含有していることが望ましい。十分にインドール−3−酢酸の光感作効果および治療効果を得るためには、インドール−3−酢酸の含有量が0.001重量%以上であることが好ましい。上記組成物は、液体、半固体、固体あるいはエアゾール形態で使用が可能であり、例えば水性または非水性の懸濁液、溶液、クリーム、軟膏、ゲル、シロップ、座薬、錠剤、カプセルそして微小フォームスプレなどの形態として再形化され使用される。
【0039】
したがって上記の組成物は、上記のような再形化に必要な賦形剤を含んでいる。また上記の組成物は、その適用形態あるいは投与の経路などの貯蔵および投与条件の要求によって、通常の保存剤、安定化剤、緩衝剤、pH調節剤、甘味剤、香料、染料などからなるグループから選択する一種以上の補助剤が追加される。また上記の組成物は、目的とする治療効果を持つ他の種類の薬物を一種以上追加が可能である。
【0040】
上記の組成物に含有する光感作活性を持つインドール−3−酢酸は、投与前に光を照射し光活性化がなされていたり、または投与後に光源による光照射により光活性化されるものである場合もあり得る。
【0041】
本発明の光力学療法用の組成物あるいは光力学療法用のキットは、ざ瘡治療に効果的であり、特に皮脂の分泌を調節することが可能である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明のための実施例を通してより詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を例示したものであり、本発明の範囲をこれらの実施例の内容に限定するものではない。
【0043】
<実施例1:インドール−3−酢酸と光によるアクネ桿菌および皮膚細菌の殺菌効果>
本発明を通じて本発明者らは、インドール−3−酢酸の殺菌効果は光との併用により現れ、インドール−3−酢酸単独では全く毒性を示さない事実を確認した。菌種としては、P.acnes 706486およびS.aureus W−1−14を使用した。菌種培養のための液体培地には、Mueller Hinton II broth(Becton,Dickinson Co.,Sparks,U.S.A.)を使用した。S.aureusの集落を滅菌したPhosphate Buffered Saline(PBS,Invitrogen Co.,NY,U.S.A.)を溶かし、McFarland濁度も0.5となるよう希釈した。この際の菌の濃度は、1×10/mlであった。菌の濃度が2×10/mlとなるようにさらに希釈し、12個のMueller Hinton II agar(Becton,Dickinson Co.,Sparks,U.S.A.)plateに菌液を10μlずつスプレッドで均等に塗抹した後、clean benchで30分間乾燥させた。インドール−3−酢酸を、20mM、10mM、5mM、1mM、0.5mMとなるよう、Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline(DPBS,Invitrogen Co.,NY,U.S.A.)で希釈した。6個の菌液が塗布された培地に、0mM(インドール−3−酢酸を含有しないDPBS)、0.5mM、1mM、5mM、10mM、20mMのインドール−3−酢酸を4mlずつ加え、3分間反応させた後、IPL(Ellipse Flex DDD,Denmark)を照射した。Intermittent Pulse Laser(以下、IPL)を、400nm〜720nmのフィルタが付着したアプリケーターを利用し、10J/cm照射した。IPL照射1分後に培地内のインドール−3−酢酸を捨て、PBSで培地を2回洗浄、さらに37℃で24時間培養した後、集落の数を数えた。他の6個の菌液が塗抹された培地には、0mM、0.5mM、1mM、5mM、10mM、20mMのインドール−3−酢酸を4mlずつ加え、4分間反応させた後、IPLは照射せずに同様の方法で処理をし、窒素ガスで置換したanaerobic chamber内で24時間培養し、集落の数を数えた。P.acnesとS.aureusにインドール−3−酢酸を処理した後、IPLで光力学反応を起こした群とIPLを照射しなかった群の集落の数を比較した。P.acnesの場合、IPLを照射した群が照射しなかった群に比べ集落の数が著しく少なく、このような効果は0.5mMから20mMまでの全てのインドール−3−酢酸の濃度において顕著に観察された。20mMのインドール−3−酢酸にIPLを照射した群では集落が見られなかった。IPLを照射しなかった群の場合、5mM以上のインドール−3−酢酸での処理により集落数が対照群の68%以下に減少し、5mM以上のインドール−3−酢酸はそれ自体がP.acnesの成長を抑制するものと見られる。
【0044】
S.aureusの場合にも、IPLを照射した群がIPLを照射しなかった群に比べ集落数が減少していた。0.5mMのインドール−3−酢酸で処理した場合、IPLを照射した群の集落数が照射しなかった群の63%程度に減少しており、1mMのインドール−3−酢酸で処理した場合には32%を示し、さらに顕著に減少した。インドール−3−酢酸の濃度が増加するほど、IPL照射後に成長する集落数が減少する様相を見せた。IPLを照射しない群の場合、20mM未満のインドール−3−酢酸で処理した際の集落数が対照群と大差はなかったが、20mMのインドール−3−酢酸で処理した際には集落数が対照群の60%に減少した。P.acnesの場合と同様に、光活性化されてないインドール−3−酢酸もその濃度が十分であれば、S.aureusの成長を抑制するものと見られる。
【0045】
<実施例2:インドール−3−酢酸と光によるざ瘡の好転効果>
顔の半分にはインドール−3−酢酸を塗抹し、他の半分には何の薬剤も塗抹しない状態でIPLをエネルギ20Jで照射した。照射は2週間隔で3回反復し、炎症性病変の数を数えて、ざ瘡の好転の程度を観察した。炎症性病変の数を治療前と比較した結果、IPL単独処理群では統計学的に有意な差異は示さなかったが、インドール−3−酢酸を塗抹してIPLを照射した群では有意差を示し、インドール−3−酢酸とIPL照射がざ瘡治療に効果があると立証した(図2)。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
<実施例3:インドール−3−酢酸と光による皮脂分泌の抑制効果>
実施例2と同様に顔の半分にはインドール−3−酢酸を塗抹し、他の半分には何の薬剤も塗抹しない状態でIPLをエネルギ20Jで照射した。照射は2週間隔で3回反復し、皮脂分泌量を測定して、その好転の程度を観察した。皮脂分泌量を治療前と比較した結果、IPL単独処理群では処置4週後と6週後に統計学的に有意な差異は示さなかったが、インドール−3−酢酸を塗抹してIPLを照射した群では有意差を示し、インドール−3−酢酸とIPL照射が皮脂分泌の抑制に効果があると立証した(図2)。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)実施例1のインドール−3−酢酸と光によるアクネ桿菌の抑制効果のグラフである。(b)実施例1のインドール−3−酢酸と光の並行使用によるブドウ球菌の抑制効果のグラフである。
【図2】(a)実施例2でのインドール−3−酢酸と光の並行使用によるざ瘡の好転効果に対するグラフである。(b)実施例3でのインドール−3−酢酸と光の並行使用による皮脂分泌の減少効果に対するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1のインドール−3−アルキルカルボン酸または薬学的に許容される塩類を含むことを特徴とする光感作型ざ瘡治療剤。
【化1】


化学式1
(上記のnは0〜3の定数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の光感作型ざ瘡治療剤において、280nm〜1000nmの範囲内の光線に対し光感作活性を示すことを特徴とする光感作型ざ瘡治療剤。
【請求項3】
下記の化学式1のインドール−3−アルキルカルボン酸または薬学的に許容される塩類を、0.001重量%〜30重量%含有することを特徴とする光感作型ざ瘡治療剤の組成物。
【化2】


化学式1
(上記のnは0〜3の定数である。)
【請求項4】
請求項3に記載の光感作型ざ瘡治療剤の組成物において、前記インドール−3−アルキルカルボン酸は、280nm〜1000nmの範囲内の光線により生体外または生体内で光活性化されることを特徴とする光感作型ざ瘡治療剤の組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の光感作型ざ瘡治療剤の組成物において、前記インドール−3−アルキルカルボン酸は、350nm〜400nmの紫外線、または400nm〜500nmの青色光、または500nm〜600nmの緑色光により生体外または生体内で光活性化されることを特徴とする光感作型ざ瘡治療剤の組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の光感作型ざ瘡治療剤の組成物において、前記ざ瘡治療剤の組成物が、液剤、半固体剤、固体剤および噴霧剤からなるグループの中から選択された剤形であることを特徴とする光感作型ざ瘡治療剤の組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の光感作型ざ瘡治療剤の組成物において、前記ざ瘡治療剤の組成物が、可水性あるいは非水性懸濁液、溶液、クリーム、軟膏、ゲル、シロップ、座薬、錠剤、カプセルそして微小フォームスプレからなるグループの中から選択された剤形であることを特徴とする光感作型ざ瘡治療剤の組成物。
【請求項8】
i)光感作で活性される下記の化学式1の構造のインドール−3−アルキルカルボン酸または薬学的に許容される塩類を、0.001重量%〜30重量%含有する光感作型ざ瘡治療剤の組成物、および、
【化3】


化学式1
(上記のnは0〜3の定数である。)
ii)波長が280nm〜1000nmの範囲内にある光線を発生する光源、
を含むことを特徴とする光力学ざ瘡治療用キット。
【請求項9】
請求項8に記載の光力学ざ瘡治療用キットにおいて、前記光源が、350nm〜400nmの紫外線、または400nm〜500nmの青色光、または500nm〜600nmの緑色光を発生することを特徴とする光力学的ざ瘡治療用キット。
【請求項10】
請求項9に記載の光力学的ざ瘡治療用キットにおいて、前記光源は、超音波照射放出器、光放出ダイオード、レーザダイオード、ダイレーザ、ハロゲン化金属ランプ、フラッシュランプ、機械的にフィルタ処理された蛍光光源、機械的にフィルタ処理された白熱およびフィラメント光源からなるグループの中から選択された生体外光照射のための光源;および生体内の光照射のための光力学治療用のレーザファイバからなるグループの中から選択された1種あるいはそれ以上のものであることを特徴とする光力学的ざ瘡治療用キット。
【請求項11】
請求項9に記載の光力学的ざ瘡治療用キットにおいて、前記光源から照射される光線の強度が、1〜100J/cmの範囲内であることを特徴とする光力学的ざ瘡治療用キット。
【請求項12】
請求項11に記載の光力学的ざ瘡治療用キットにおいて、前記光源から放射される光線のパルス持続時間が、0.1ms〜500ms、光線の照射回数が、1回〜100回の範囲であることを特徴とする光力学的ざ瘡治療用キット。
【請求項13】
下記の化学式1のインドール−3−アルキルカルボン酸または薬学的に許容される塩類を含むことを特徴とする光感作型皮脂分泌抑制剤。
【化4】


化学式1
(上記のnは0〜3の定数である。)
【請求項14】
請求項13に記載の光感作型皮脂分泌抑制剤において、280nm〜1000nmの範囲内の光線に対し光感作活性を示すことを特徴とする光感作型皮脂分泌抑制剤。
【請求項15】
下記の化学式1のインドール−3−アルキルカルボン酸または薬学的に許容される塩類を、0.001重量%〜30重量%含有することを特徴とする光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物。
【化5】


化学式1
(上記のnは0〜3の定数である。)
【請求項16】
請求項15に記載の光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物において、前記インドール−3−アルキルカルボン酸は、280nm〜1000nmの範囲内の光線により生体外または生体内で光活性化されることを特徴とする光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物において、前記インドール−3−アルキルカルボン酸は、350nm〜400nmの紫外線、または400nm〜500nmの青色光、または500nm〜600nmの緑色光により生体外または生体内で光活性化されることを特徴とする光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物において、前記光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物が、液剤、半固体剤、固体剤および噴霧剤からなるグループの中から選択された剤形であることを特徴とする光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物において、前記光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物が、可水性あるいは非水性懸濁液、溶液、クリーム、軟膏、ゲル、シロップ、座薬、錠剤、カプセルそして微小フォームスプレからなるグループの中から選択された剤形であることを特徴とする光感作型皮脂分泌抑制剤の組成物。
【請求項20】
i)光感作で活性される下記の化学式1の構造のインドール−3−アルキルカルボン酸または薬学的に許容される塩類を、0.001重量%〜30重量%含有する組成物、および、
【化6】


化学式1
(上記のnは0〜3の定数である。)
ii)波長が280nm〜1000nmの範囲内にある光線を発生する光源、
を含むことを特徴とする光力学的皮脂分泌抑制剤キット。
【請求項21】
請求項20に記載の光力学的皮脂分泌抑制剤キットにおいて、前記光源が、350nm〜400nmの紫外線、または400nm〜500nmの青色光、または500nm〜600nmの緑色光を発生することを特徴とする光力学的皮脂分泌抑制剤キット。
【請求項22】
請求項21に記載の光力学的皮脂分泌抑制剤キットにおいて、前記光源は、超音波照射放出器、光放出ダイオード、レーザダイオード、ダイレーザ、ハロゲン化金属ランプ、フラッシュランプ、機械的にフィルタ処理された蛍光光源、機械的にフィルタ処理された白熱およびフィラメント光源からなるグループの中から選択された生体外光照射のための光源;および生体内の光照射のための光力学治療用のレーザファイバからなるグループの中から選択された1種あるいはそれ以上のものであることを特徴とする光力学的皮脂分泌抑制剤キット。
【請求項23】
請求項22に記載の光力学的皮脂分泌抑制剤キットにおいて、前記光源から照射される光線の強度が、1〜100J/cmの範囲内であることを特徴とする光力学的皮脂分泌抑制剤キット。
【請求項24】
請求項23に記載の光力学的皮脂分泌抑制剤キットにおいて、前記光源から放射される光線のパルス持続時間が、0.1ms〜500ms、光線の照射回数が、1回〜100回であることを特徴とする光力学的皮脂分泌抑制剤キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−13162(P2009−13162A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44094(P2008−44094)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(506198861)ウェルスキン カンパニー リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】WELSKIN CO., LTD.
【Fターム(参考)】