説明

光沢測定装置および該方法

【課題】本発明は、測定試料に応じた基準値を選択するに当たって特に測定試料に記録媒体を取り付けておく必要がなく、測定試料に応じた基準を自動的に選択することができる光沢測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の光沢測定装置1は、測定試料に光を照射する光照射部と、光照射部から照射された光が前記測定試料で反射された反射光を受光する受光部と、受光部の出力に基づいて所定の光沢特性を導出する光沢特性導出部31dと、所定の光沢特性に対応し、測定試料における互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準を記憶する基準記憶部34aと、光沢特性導出部31dで導出された光沢特性に基づいて複数の光沢基準の中から1つの光沢基準を選択する基準選択部31eと、基準選択部31eで選択された光沢基準と光沢特性導出部31dで導出された光沢特性とを比較する比較部31fを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料に応じた基準を自動的に選択することができる光沢測定装置および光沢測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、塗装、成形、印刷および繊維等の分野では、製品の光沢の管理が重要視されつつある。この光沢管理では、光沢計を用いて製品の光沢値が測定され、測定された光沢値がその基準値と比較されることによって光沢の点で製品の合否が判定される。この製品の光沢管理において、1個の光沢計を用いて種類の異なる複数の製品(測定試料)について製品の合否を判定する場合には、各種の製品に応じて基準値が異なるため、当該製品に合った基準値で当該製品の合否を判定する必要がある。あるいは、1個の製品でも各部分(測定試料)で光沢が異なる場合では、各部分ごとに基準値が異なるため、当該部分に合った基準値で当該部分の合否を判定する必要がある。例えば、自動車の場合では、各車種のボディカラーに応じた各基準値が予め設定され、当該車種のボディカラーに合った基準値で当該製品の合否が判定される。また例えば、ボディ、バンパーおよびインナーパネルのそれぞれに応じた各基準値が予め設定され、当該部分(例えばボディ)に合った基準値で当該部分の合否が判定される。
【0003】
このため、従来の光沢計では、まず、測定試料の種類ごとに設けられた基準となる複数の基準試料がそれぞれ測定され、測定された各光沢値が各基準値として光沢計に登録される。あるいは、複数の基準値が数値入力され、複数の基準値が光沢計に登録される。次に、ユーザが光沢計を操作することによって登録された複数の基準値の中から測定試料に対応する基準値が選択される。次に、測定試料の光沢値が測定され、この測定された光沢値がこの選択された基準値と比較され、その合否が判定される。
【0004】
一方、下記特許文献1に開示の光学測定システムでは、属性識別情報を書き込んだ記録媒体等の識別票が予め個別に試料に取り付けられ、複数種類の試料に関する光学特性管理情報が各試料の属性識別情報と対応付けて記憶手段に記憶され、読み取り手段によって前記識別票から読み取った試料についての属性識別情報に対応する光学特性管理情報が前記記憶手段から読み出され、この読み出された光学特性管理情報と当該試料について測定手段によって測定した光学特性値とが比較され、当該光学特性値が当該光学特性管理情報で許容される範囲内であるか否かが判定される。
【特許文献1】特開2006−010562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の光沢計では、測定試料の合否を判定する場合に、当該測定試料に対応する基準値をユーザがマニュアル操作で選択する必要がある。このため、選択の手間が発生し、操作が煩雑であるという不都合がある。特に、複数種類の測定試料の合否を判定する場合では、測定試料の種類が変わるごとにそれに対応する基準値を選択する必要があり、多大な手間が発生する。
【0006】
一方、前記特許文献1では、ユーザのマニュアル操作による基準値の選択は、必要ないが、測定試料に記録媒体等の識別票を予め取り付けておかなければならない。このため、測定試料の個数に応じた個数の識別票が必要であるという不都合や、識別票のない測定試料については、その合否が適切に判定することができないという不都合が生じてしまう。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、測定試料に応じた基準値を選択するに当たって特に測定試料に記録媒体を取り付けておく必要がなく、測定試料に応じた基準を自動的に選択することができる光沢測定装置および光沢測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる光沢測定装置は、測定試料に光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射された光が前記測定試料で反射された反射光を受光する受光部と、前記受光部の出力に基づいて所定の光沢特性を導出する光沢特性導出部と、前記所定の光沢特性に対応し、前記測定試料における互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準を記憶する基準記憶部と、前記光沢特性導出部で導出された光沢特性に基づいて前記複数の光沢基準の中から1つの光沢基準を選択する基準選択部と、前記基準選択部で選択された光沢基準と前記光沢特性導出部で導出された光沢特性とを比較する比較部とを備えることを特徴とする。そして、本発明の他の一態様にかかる光沢測定方法は、測定試料に光を照射する光照射工程と、前記光照射工程で照射された光が前記測定試料で反射された反射光を受光する受光工程と、前記受光工程で得られた前記反射光の受光量に基づいて所定の光沢特性を導出する光沢特性導出工程と、前記光沢特性導出工程で導出された光沢特性に基づいて、前記所定の光沢特性に対応し前記測定試料における互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準の中から1つの光沢基準を選択する基準選択工程と、前記基準選択工程で選択された光沢基準と前記光沢特性導出工程で導出された光沢特性とを比較する比較工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成の光沢測定装置および光沢測定方法では、測定試料における互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準が基準記憶部に記憶され、これら複数の光沢基準の中から1つの光沢基準が光沢特性導出部で導出された光沢特性に基づいて選択され、基準選択部で選択された光沢基準と光沢特性導出部で導出された光沢特性とが比較部で比較される。このように本発明の光沢測定装置および光沢測定方法は、測定試料に応じた光沢基準を選択するに当たって測定試料に記録媒体を取り付けておく必要がなく、測定試料に応じた光沢基準を自動的に選択することができる。このため、ユーザは、従来のように、測定試料に応じた光沢基準をマニュアル操作で選択する必要がなく、その手間や煩雑さが解消される。
【0010】
また、上述の光沢測定装置において、前記比較部の比較結果に基づいて前記測定試料の合否を判定する判定部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
このような構成の光沢測定装置は、測定試料の合否を自動的に判定することができる。
【0012】
また、これら上述の光沢測定装置において、前記光沢特性および光沢基準は、光沢値であることを特徴とする。
【0013】
このような構成の光沢測定装置は、光沢値によって測定試料の光沢特性を評価することができる。
【0014】
また、これら上述の光沢測定装置において、前記光沢特性および光沢基準は、前記受光部の受光面に予め設定された所定の方向に沿った受光量の強度分布である光沢プロファイルであることを特徴とする。
【0015】
このような構成の光沢測定装置は、光沢プロファイルによって測定試料の光沢特性を評価することができる。
【0016】
また、これら上述の光沢測定装置において、前記光沢特性導出部は、第1光沢特性および前記第1光沢特性と異なる第2光沢特性を導出し、前記基準記憶部に記憶される光沢基準は、前記第1および第2光沢特性にそれぞれ対応する第1および第2光沢基準であり、前記基準選択部は、前記光沢特性導出部で導出された第1光沢特性に基づいて前記複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準を選択し、前記光沢特性導出部で導出された第2光沢特性に基づいて、前記選択した第1光沢基準に対応した前記第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準を選択し、前記選択した第2光沢基準に対応する第1光沢基準を前記比較部の光沢基準として選択し、前記比較部は、前記基準選択部で選択された第1光沢基準と前記光沢特性導出部で導出された第1光沢特性とを比較することを特徴とする。
【0017】
このような構成の光沢測定装置では、まず、光沢特性導出部で導出された第1光沢特性に基づいて複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準が選択され、次に、光沢特性導出部で導出された第2光沢特性に基づいて、この選択された第1光沢基準に対応した第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準が選択される。そして、この選択された第2光沢基準に対応する第1光沢基準が比較部の光沢基準として選択される。このように第1光沢基準が2段階で選抜されるため、例えば光沢値等の第1光沢特性によって複数の第1光沢基準が選択される場合でも、例えば光沢プロファイル等の第2光沢特性によって1つの第1光沢基準が選択される。あるいは、このように第1光沢基準が二段階で選抜されるため、まず第1光沢基準の候補として、例えば光沢値等の第1光沢特性によって複数の第1光沢基準が選出され、この中から最も適切な第1光沢基準が例えば光沢プロファイル等の第2光沢特性によって選択される。
【0018】
また、これら上述の光沢測定装置において、前記光沢特性導出部は、第1光沢特性および前記第1光沢特性と異なる第2光沢特性を導出し、前記基準記憶部に記憶される光沢基準は、前記第1および第2光沢特性にそれぞれ対応する第1および第2光沢基準であり、前記基準選択部は、前記光沢特性導出部で導出された第1光沢特性に基づいて前記複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準を選択し、前記光沢特性導出部で導出された第2光沢特性に基づいて、前記選択した第1光沢基準に対応した前記第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準を選択し、前記比較部は、前記基準選択部で選択された第2光沢基準と前記光沢特性導出部で導出された第2光沢特性とを比較することを特徴とする。
【0019】
このような構成の光沢測定装置では、まず、光沢特性導出部で導出された第1光沢特性に基づいて複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準が選択され、そして、光沢特性導出部で導出された第2光沢特性に基づいて、この選択された第1光沢基準に対応した第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準が選択される。このように2段階で選抜されるので、適切な第2光沢基準が選択される。また、第1光沢基準により第2光沢基準の候補を絞ることになり、測定した光沢特性を、すべての第2光沢基準に対して比較演算処理する場合に較べて、処理時間が短縮される。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる光沢測定装置および光沢測定方法は、測定試料に応じた光沢基準を選択するに当たって測定試料に記録媒体を取り付けておく必要がなく、測定試料に応じた光沢基準を自動的に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(実施形態の構成)
図1は、実施形態の光沢測定装置における光学系の構成を示す図である。図2は、実施形態の光沢測定装置における開口板の構成を示す図である。図3は、実施形態の光沢測定装置における受光部の構成を示す図である。図4は、実施形態の光沢測定装置における電気的な構成を示す図である。図5は、実施形態の基準記憶部における記憶内容を説明するための図である。
【0022】
まず、本発明に係る実施の一形態における光沢測定装置1の光学的な構成について説明する。図1ないし図3において、光沢測定装置1は、測定試料SMの試料表面SMaにおける所定領域に光を照射する照明側光学系10と、前記所定領域からの反射光を受光する受光側光学系20とを備えて構成される。
【0023】
照明側光学系10および受光側光学系20は、測定試料SMの試料表面SMaにおける或る点を通る試料表面SMaの法線Gに対して互いに反対側の領域に配設される。測定試料SMが正規姿勢である場合において、照明側光学系10は、その光軸13aが試料表面SMaの法線Gに対して所定の角度θ1を成すように配置され、受光側光学系20は、その光軸22aが試料表面SMaの法線Gに対して所定の角度θ2を成すように配置される。これら所定の角度θ1、θ2は、任意の角度でよいが、例えばISOやJISなどによって規格化されており、20度、60度または85度とされる。本実施形態では、例えば、一例として60度光沢を測定するために、所定の角度θ1、θ2は、ASTMD523の規定に基づいて60度とされている。したがって、照明側光学系10と受光側光学系20とは、これらの光軸13aおよび光軸22aが試料表面SMaの法線Gを対称軸とする線対称となるように、それぞれ配設されている。
【0024】
照明側光学系10は、光源部11と、開口板12と、照明レンズ13とを備え、試料表面SMaから遠い順に光源部11、開口板12および照明レンズ13が各光軸を光軸13aに揃えて配置されている。
【0025】
光源部11は、例えば発光ダイオード(LED)等の発光素子を備えて構成され、試料表面SMaに向けて光を放射する装置である。開口板12は、光源部11から試料表面SMaに向けて放射された光を所定の開き角に規制する部材である。開口板12は、例えば、本実施形態では、光源部11から放射され試料表面SMaに照射すべき光の波長を遮光する材料で形成された板状部材であり、図2に示すように、開口12aが開口板12を貫通するように穿設されている。この開口12aは、画角にして、幅(図1では紙面内略上下方向)wが0.75度であって、高さ(図1では紙面垂直方向)hが2.5度の矩形形状とされている。照明レンズ13は、開口板12の開口12aを通過した光を光軸13aに略平行な平行光束11aとして試料表面SMaに導く光学素子である。
【0026】
受光側光学系20は、受光部21と、受光レンズ22とを備え、試料表面SMaから遠い順に受光部21および受光レンズ22が各光軸を光軸22aに揃えて配置されている。
【0027】
受光レンズ22は、測定試料SMの試料表面SMaからの反射光を集光して受光部21の受光面に導く光学素子である。受光部21は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子からなる複数の受光素子を備える。受光部21の各受光素子は、照明側光学系10によって試料表面SMaに照射され当該試料表面SMaによって反射された反射光における略正反射方向の成分21aの光を受光することによって、受光量に応じた電気信号をそれぞれ出力する。
【0028】
照明側光学系10および受光側光学系20において、開口板12における開口12aの位置と、受光部21における受光面の位置とは、光学的に共役な位置関係になるように受光部21が配設される。なお、測定試料SMの姿勢の変化が予め設定された所定の角度までならば、略正反射光方向の成分が受光部21の受光面に入射されるように受光面の大きさと受光レンズ22の焦点距離fとが設定される。
【0029】
受光部21は、本実施形態では、各受光素子から直接的に各出力が引き出し可能なように構成され、例えば数個ないしは十数個の受光素子を備えて構成されている。より具体的には、受光部21は、例えば、図3に示すように、一方向に配列された6個の受光素子p0〜p5を備え、各受光素子p0〜p5から直接的に各出力が引き出されるように構成されたシリコンフォトダイオードアレイを備えて構成されている。測定試料SMの試料表面SMaが鏡面である場合にあって開口板12の開口12aの像が受光部21の受光面に結像した場合に、開口12aの幅w方向と各受光素子p0〜p5の配列方向とが一致するように、受光部21は、受光レンズ22の焦点位置fに配設される。なお、図1および図3では、各受光素子p0〜p5の配列方向がx方向として表されている。
【0030】
次に、光沢測定装置1の電気的な構成について説明する。図4において、光沢測定装置1は、光源部11と、受光部21と、制御部31と、発光駆動部32と、アナログディジタル変換部(以下、「A/D変換部」と略記する。)33と、記憶部34と、表示部35と、入力操作部36とを備えて構成される。
【0031】
光源部11および受光部21は、図1に示す光源部11および受光部21に対応する。発光駆動部32は、制御部31の制御に従って光源部11に発光動作を行わせる回路である。A/D変換部33は、受光部21のアナログ出力を、複数のビット(例えば8ビットや10ビット等)からなるディジタル信号に変換する回路である。A/D変換部33には、受光部21における各受光素子からの各出力がパラレルにあるいはシリアルにそれぞれ入力される。
【0032】
記憶部34は、A/D変換部33から出力されたディジタル信号を一時的に記憶する回路であり、このディジタル信号に対して制御部31によって各種処理を行うための作業領域として用いられる。そして、記憶部34は、予め設定された所定の光沢特性に対応し、測定試料SMにおける互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準を記憶する回路でもあり、機能的に、前記複数の光沢基準を記憶する基準記憶部34aを備える。所定の光沢特性は、本実施形態では、例えば、光沢値が用いられ、基準記憶部34aには、図5に示すように、基準値として、互いに異なる複数種類の試料のそれぞれに対応した複数の光沢値st(m)(m=1、2、3、・・・)が記憶される。測定試料SMには、例えば、素材、部品、半完成品および完成品等の物品や物品の部分が含まれる。測定試料SMにおける互いに異なる複数の種類には、物品自体が異なる場合は物品の種類が含まれ、同一種類の物品であっても物品ごとにその光沢が異なる場合は各物品の光沢の種類が含まれ、そして、1個の物品であっても部分ごとにその光沢が異なる場合は物品の各部分における光沢の種類が含まれる。記憶部34は、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶素子、および、例えばROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子を備えて構成される。
【0033】
表示部35は、入力操作部36の操作結果、制御部31により導出された測定試料SMの光沢特性(例えば本実施形態では光沢値)、光沢基準と測定試料SMの光沢特性との比較結果、および、測定試料に対する合否判定の判定結果等を表示する回路であり、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示回路を備えて構成される。入力操作部36は、光沢測定装置1の主電源のオンオフを切り替えるための電源ボタン回路や、光沢特性の測定開始を指示する測定開始指示を入力するためのスイッチ回路などを含むものである。
【0034】
制御部31は、測定試料SMの光沢特性を測定して光沢の点で測定試料SMの合否を判定すべく、上記各部を当該機能に応じてそれぞれ制御する回路である。例えば、制御部31は、例えば制御プログラムなどを記憶する記憶素子、制御プログラムに従って動作するマイクロプロセッサおよびその周辺回路を備えたマイクロコンピュータによって構成される。記憶素子は、例えばROM、EEPROMおよびRAM等を備えて構成される。制御部31は、機能的に、発光制御部31aと、受光制御部31bと、表示制御部31cと、光沢特性導出部31dと、基準選択部31eと、比較部31fと、判定部31gとを備えている。
【0035】
発光制御部31aは、発光駆動部32の動作を制御するものであり、測定試料SMに対する測定開始の指示が入力操作部36の操作によって入力されると、光源部11に所定時間の発光動作を行わせる。
【0036】
受光制御部31bは、A/D変換部33の動作を制御するものであり、測定試料SMに対する測定開始の指示が入力操作部36の操作によって入力されると、光源部11の発光タイミングに応じて受光部21のアナログ出力をディジタル信号に変換する動作をA/D変換部33に行わせる。
【0037】
光沢特性導出部31dは、A/D変換部33からのディジタル信号に基づいて測定試料SMの光沢特性を導出する。本実施形態では、光沢特性導出部31dは、受光部21の受光面上に設定された座標軸(x軸)に沿った反射光の受光量の強度分布を表す分布関数P(x)を受光部21の出力に基づいて求める。この分布関数P(x)が受光部21の受光面に予め設定されたx方向(x軸)に沿った受光量の強度分布である光沢プロファイルである。そして、光沢特性導出部31dは、この求めた分布関数P(x)を所定の範囲で積分し、この積分した積分値に基づいて測定試料SMの所定の光沢値meを導出する。
【0038】
基準選択部31eは、光沢特性導出部31dで導出された光沢特性に基づいて記憶部34の基準記憶部34aに記憶されている複数の光沢基準の中から1つの光沢基準を選択する。本実施形態では、光沢基準は、上述したように、光沢値で光沢管理を行うべく光沢値が採用されている。このため、より具体的には、本実施形態では、基準選択部31eは、光沢特性導出部31dで導出された光沢値meに基づいて記憶部34の基準記憶部34aに記憶されている光沢基準としての複数の光沢値st(m)の中から1つの光沢値st(m)を選択する。
【0039】
比較部31fは、基準選択部31eで選択された光沢基準と光沢特性導出部31dで導出された測定試料SMの光沢特性とを比較する。より具体的には、本実施形態では、比較部31fは、基準選択部31eで選択された光沢基準としての光沢値st(m)と光沢特性導出部31dで導出された測定試料SMの光沢値meとを比較する。
【0040】
判定部31gは、比較部31fの比較結果に基づいて光沢の点で測定試料SMの合否を判定する。すなわち、判定部31gは、測定試料SMの光沢値meが所定の許容範囲以内にあるか否かが判断され、判断の結果、測定試料SMの光沢値meが所定の許容範囲以内である場合には合格と判定され、一方、測定試料SMの光沢値meが所定の許容範囲以内にない場合には不合格と判定される。所定の許容範囲は、例えば、測定試料SMに応じた仕様等によって適宜に設定される。
【0041】
表示制御部31cは、光沢特性導出部31dによって算出された光沢特性、比較部31fの比較結果、および、判定部31gで判定した測定試料SMの判定結果等を表示部35に表示させる。
【0042】
次に、光沢測定装置1の動作について説明する。図6は、実施形態における光沢測定装置の動作を示すフローチャートである。図7は、実施形態における光沢特性の演算手順を説明するための図である。図7(A)は、受光部における各受光素子の出力値を示す図であり、その横軸は、受光素子pn(n=0〜5)を表し、その縦軸は、受光素子pnの出力値Pnを示す。図7(B)は、受光部21の出力を近似した分布関数P(x)(光沢プロファイル)を示す図であり、図7(C)は、光沢値を求めるための分布関数P(x)の積分範囲を説明するための図である。図7(B)、(C)の横軸は、x軸であり、その縦軸は、分布関数P(x)の関数値P(x)を表す。x軸は、図1および図3に示すように各受光素子p0〜p5の配列方向(x方向)に設定される。
【0043】
ユーザによって測定試料SMが光沢測定装置1に配置され、入力操作部36から測定開始の指示が入力されると、制御部31は、測定試料SMの光沢特性、本実施形態では、光沢値を測定する(S11)。
【0044】
より具体的には、まず、制御部31の発光制御部31aは、光源部11に発光動作を行わせる。
【0045】
光源部11から射出された光は、開口板12の開口12aによって所定の開き角に規制され、照明レンズ13によって光軸13aに略平行な平行光束11aとされ、測定試料SMの試料表面SMaに照射される。そして、試料表面SMaによって反射された反射光における略正反射方向の成分21aの光は、受光レンズ22によって収束され、受光部21で受光される。
【0046】
反射光には、試料面の法線方向を中心とするランベルト拡散光と、正反射方向を中心とする散乱光が含まれており、光沢がある面ほど(鏡面に近くなるほど)ランベルト拡散光の割合が少なく、正反射方向を中心とする散乱光の割合が多くなり、さらに分布の幅が小さくなる。一方、光沢のない面ほどランベルト拡散光の割合が多く、正反射方向を中心とする散乱光の割合が少なくなる。
【0047】
制御部31の受光制御部31bは、光源部11の発光タイミングに応じて受光部21のアナログ出力をディジタル信号に変換する動作をA/D変換部33に行わせる。本実施形態では、受光部21は、上述したように、6個の受光素子p0〜p5を備えて構成されており、各受光素子p0〜p5のアナログ出力がA/D変換部33によってディジタル信号に変換される。例えば、図7(A)に示すように、受光素子p0では受光出力値P0が出力され、受光素子p1では受光出力値P1が出力され、受光素子p2では受光出力値P2が出力され、受光素子p3では受光出力値P3が出力され、受光素子p4では受光出力値P4が出力され、そして、受光素子p5では受光出力値P5が出力される。図7(A)に示す例では、受光素子p3の受光出力値P3が最も大きく、受光素子p3を中心に開口板12の開口12aの像が結像されている。
【0048】
そして、制御部31の光沢特性導出部31dは、まず、受光部21の受光面上に設定された一方向に延びる直線、例えば図1および図3に示す上記x軸に沿った反射光の受光量の分布を表す分布関数P(x)を受光部21の出力に基づいて求める。より具体的には、光沢特性導出部31dは、受光部21の出力を一次元の分布関数P(x)で近似する。
【0049】
光沢の程度に起因して反射光には、試料面の法線方向を中心とするランベルト拡散光と正反射方向を中心とする散乱光が含まれ、受光部21における反射光の受光量の分布は、例えば、式1によって近似することができる(例えばOptical Research Associates 社、Light Tool Version5.1 Core Module User’s Guide P121-125参照)
【0050】
【数1】

【0051】
ここで、fは、受光レンズ22の焦点距離であり、x0は、受光部21における受光量の分布の中心座標であり、Nは、光沢の程度に依存する数値であり、Lは、試料面SMaの法線方向を中心とするランベルト拡散光の中心強度であり、Sは、正反射方向を中心とする散乱光の中心強度であり、lは、試料表面SMaが鏡面である場合の受光部21における像の幅である。また、θは、座標xに入射する光線の試料面法線からの角度である。つまり、受光レンズ22の焦点距離fが与えられていると、分布関数P(x)は、受光量の分布の中心座標x0、光沢の程度に依存する数値N、ランベルト拡散光の中心強度L、正反射方向を中心とする散乱光の中心強度S、像の幅lを与えることで確定する。
【0052】
したがって、光沢特性導出部31dは、受光部21における各受光素子p0〜p5の受光出力値P0〜P5を用いて、式1の受光量の分布の中心座標x0、光沢の程度に依存する数値N、ランベルト拡散光の中心強度L、正反射方向を中心とする散乱光の中心強度Sおよび像の幅lを求め、受光部21の出力を表す一次元の分布関数P(x)を求め、受光部21の出力を近似する。より具体的には、図7(A)および図7(B)に示すように、各受光素子p0〜p5の受光出力値P0〜P5と、各受光素子p0〜p5の受光領域に対応する範囲で、式1の分布関数P(x)を積分した各積分値S0〜S5とが最も一致するように、分布関数P(x)を求め、受光部21の出力を近似する。さらに具体的には、式2で表される、各受光素子p0〜p5の受光出力値P0〜P5と、各受光素子p0〜p5の受光領域に対応する範囲で、式1の分布関数P(x)を積分した各積分値S0〜S5との差の二乗和Dが最小となるように、定数x0、N、L、S、lを求めて分布関数P(x)を求め、受光部21の出力を近似する。
【0053】
【数2】

【0054】
次に、光沢特性導出部31dは、図7(C)に示すように、この求めた分布関数P(x)をその中心座標x0を中心に、60度光沢を測定する場合における受光側開口の幅W=4.4度に相当する範囲(x0−W/2〜x0+W/2、積分区間)について積分し、積分値Sを求める。すなわち、光沢特性導出部31dは、式3によって分布関数P(x)の積分値Sを求める。
【0055】
【数3】

【0056】
このように受光レンズ22と受光部21との間の光路上に、60度光沢を測定する場合における受光側開口を持つ受光側開口板を配置することなく、前記受光側開口の幅Wに相当する積分区間Wで分布関数P(x)を積分することによって、測定試料SMの姿勢が正規姿勢からずれ、開口板12における開口12aの像が、測定試料SMが正規姿勢である場合における結像位置からずれて受光部21の受光面に結像した場合でも、前記積分値Sは、測定試料SMが正規姿勢である場合における出力と略同等となる。
【0057】
ここで、より高精度に光沢値を求めるためには、積分区間Wに複数の受光素子が含まれることが望ましい。したがって、各受光素子p0〜p5の配列方向(x方向)における各受光素子p0〜p5の幅d1は、背景技術の受光側開口板122における受光側開口122aの幅Wの1/2以下であることが好ましい(d1≦W/2)。
【0058】
次に、光沢特性導出部31dは、予め与えられている変換テーブルや変換式等を用いることによって、この求めた積分値Sを光沢値meに変換する。
【0059】
このように動作することによって、測定試料SMの光沢特性、本実施形態では、光沢値meが測定される。
【0060】
光沢特性導出部31dが光沢特性を導出すると、制御部31の基準選択部31eは、測定した測定試料SMに対応する光沢基準を記憶部34の基準記憶部34aに記憶されている複数の光沢基準の中から選択する(S12)。
【0061】
より具体的には、基準選択部31eは、複数mの光沢基準として基準記憶部34aに記憶されている複数の光沢値st(m)のそれぞれと光沢特性導出部31dによって導出された光沢特性の光沢値meとの差の絶対値abs(m)(=|st(m)−me|)をそれぞれ求める。次に、基準選択部31eは、これら求めた各絶対値abs(m)の中から最小の絶対値abs(m)を求める。そして、基準選択部31eは、この求めた最小の絶対値abs(m)を与える光沢値st(m)を求め、この求めた光沢値st(m)を光沢特性導出部31dによって導出された光沢値meの光沢基準として選択する。
【0062】
基準選択部31eが光沢基準を選択すると、制御部31の比較部31fは、基準選択部31eで選択された光沢基準と光沢特性導出部31dで導出された光沢特性とを比較する(S13)。
【0063】
より具体的には、例えば、比較部31fは、基準選択部31eによって選択された光沢基準としての光沢値st(m)と光沢特性導出部31dによって導出された光沢特性の光沢値meとの差sbを求める。
【0064】
そして、制御部31の判定部31gは、比較部31fの比較結果に基づいて光沢の点で測定試料SMの合否を判定する(S14)。
【0065】
より具体的には、判定部31gは、比較部31fによって求められた前記差sbが予め設定されている判定閾値th以内であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて測定試料SMの合否を判定する。すなわち、判定部31gは、−th≦sb≦+th(0≦|sb|≦th)であるか否かを判定し、判定の結果、この差sbが判定閾値th以内である場合には光沢の点で測定試料SMが合格(適合)であると判定し、一方、この差sbが判定閾値th以内ではない場合には光沢の点で測定試料SMが不合格(不適合)であると判定する。
【0066】
判定部31gが測定試料SMの合否を判定すると、制御部31の表示制御部31cは、測定試料SMに対する判定結果の合否等を表示部35に表示する(S15)。例えば、表示制御部31cは、簡便に表示してユーザが容易に認識することができるように、測定された光沢特性および測定試料SMに対する判定結果の合否を表示する。また例えば、表示制御部31cは、光沢測定装置1が選択した光沢基準の適否をユーザが判定することができるように、測定試料SMに対して選択された光沢基準をさらに表示する。また例えば、表示制御部31cは、光沢測定装置1が選択した光沢基準の適否をユーザが容易に判定することができるように、測定試料SMに対して選択された光沢基準と測定された光沢特性との差をさらに表示する。ここで、判定結果の合否をユーザが容易に視認することができるようにするために、合格と不合格とで表示色が異なっていても良い。
【0067】
また例えば、ユーザが測定試料SMの合否を判定すべく、上述の測定試料SMに対する判定結果の合否の表示に代え、測定試料SMに対して選択された光沢基準と測定された光沢特性との差を表示するように、光沢測定装置1が構成されてもよい。この場合では、制御部31に必ずしも判定部31gが必要とされない。
【0068】
このように動作することによって、光沢測定装置1は、測定試料SMに応じた光沢基準を自動的に選択することができる。このため、背景技術で説明したように、測定試料SMに応じた光沢基準を選択するに当たって測定試料SMに記録媒体を取り付けておく必要がない。また、ユーザは、従来のように、測定試料SMに応じた光沢基準をマニュアル操作で選択する必要がなく、その手間や煩雑さが解消される。
【0069】
特に、生産ラインにおいて、様々なボディカラーの製品が生産され、その各製品の合否を判定する場合に、本実施形態の光沢測定装置1では、測定試料SMである各製品に応じた光沢基準が自動的に選択されるので、スピーディに各製品の合否が判定可能となる。また特に、生産ラインにおいて、1個の製品の各部分の合否を判定する場合に、本実施形態の光沢測定装置1では、測定試料SMである製品の各部分に応じた光沢基準が自動的に選択されるので、スピーディに製品の各部分の合否が判定可能となる。
【0070】
そして、本実施形態では、光沢測定装置1は、光沢値によって測定試料SMの光沢特性を評価することができる。このため、適切に光沢管理が実施可能となる。
【0071】
なお、上述の実施形態において、光沢測定装置1は、2段階で光沢基準を選抜するように構成されても良い。このように2段階で光沢基準を選抜することで、例えば光沢値等の第1光沢特性によって複数の第1光沢基準が選択される場合でも、例えば光沢プロファイル等の第1光沢特性と異なる第2光沢特性によって1つの第1光沢基準を選択することが可能となる。あるいは、このように2段階で光沢基準を選抜することで、まず第1光沢基準の候補として、例えば光沢値等の第1光沢特性によって複数の第1光沢基準を選出し、この中から最も適切な第1光沢基準を例えば光沢プロファイル等の第2光沢特性によって選択することが可能となる。
【0072】
図8は、異なる2つの測定試料における光沢プロファイルを示す図である。図8(A)は、第1測定試料SM1の場合を示し、図8(B)は、第2測定試料SM2の場合を示す。図8(A)、(B)の横軸は、x軸を示し、それらの縦軸は、光強度を示す。
【0073】
例えば、第1および第2測定試料SM1、SM2の光沢値が略同じ、例えば80GUであっても、図8に示すように、第1および第2測定試料SM1、SM2の光沢プロファイルが互いに異なる場合がある。一例を挙げると、艶のある80GU塗板(第1測定試料SM1)と、本来100GUのガラス板が曇ったり傷ついたりすることによって80GU相当になった場合(第1測定試料SM2)とである。このような場合では、塗板およびガラス板の光沢値は、略80GUで略同じとなるが、塗板の光沢プロファイルは、図8(A)に示すように、山形のピークを示すが、ガラス板の光沢プロファイルは、図8(B)に示すように、図8(A)に示す山形のピークにおける半値幅よりも広い半値幅を持つ丘形のピークを示し、塗板およびガラス板の光沢プロファイルは、互いに異なる。
【0074】
上述の実施形態では、基準記憶部34aに同じ光沢基準が複数記憶されている場合や、光沢特性導出部31dで導出された光沢特性が、基準記憶部34aに記憶されている複数の光沢基準における略中間値である場合(例えば基準記憶部34aに基準値として70GUおよび90GUが記憶されており、光沢特性導出部31dで導出された光沢値が80GUの場合)等では、適切な光沢基準の候補を自動的に選択することは可能であるが、最適な光沢基準を自動的に選択することができない場合が生じ得る。このような場合でも、上述のように2段階で光沢基準を選択することによって最適な光沢基準を自動的に選択することが可能となる。
【0075】
図9は、実施形態の他の形態における基準記憶部の記憶内容を説明するための図である。図10は、実施形態の他の形態における2段階選抜で光沢基準を選択する場合のフローチャートを示す図である。図11は、実施形態の他の形態における受光部の全受光素子の各出力を用いた光沢プロファイルの相関演算を説明するための図である。図12は、実施形態の他の形態における受光部の一部の受光素子の各出力を用いた光沢プロファイルの相関演算を説明するための図である。図11(A)および図12(A)は、受光部21における各受光素子pnの各出力を示し、図11(B)および図12(B)は、第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)として基準記憶部44aに記憶されている受光部21における各受光素子pnに対応する各基準値を示す。図13は、実施形態の他の形態における表示部の表示内容を説明するための図である。
【0076】
この場合における光沢測定装置1は、大略、図1ないし図7を用いて説明した上述の光沢測定装置1と略同様に構成されるが、次の異なる点を有している。
【0077】
記憶部34の基準記憶部34aに代え、基準記憶部44aが用いられ、制御部31の光沢特性導出部31d、基準選択部31eおよび比較部31fに代え、光沢特性導出部41d、基準選択部41eおよび比較部41fが用いられる。
【0078】
基準記憶部44aは、予め設定された所定の第1光沢特性に対応し、測定試料SMにおける互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の第1光沢基準を記憶すると共に、予め設定された第1光沢特性と異なる所定の第2光沢特性に対応し、測定試料SMにおける互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の第2光沢基準を記憶する。所定の第1光沢特性は、本他の形態では、例えば、光沢値が用いられ、所定の第2光沢特性は、本他の形態では、例えば、光沢プロファイルが用いられる。基準記憶部44aには、図9に示すように、基準値として、互いに異なる複数種類の試料のそれぞれに対応した、複数の光沢値st(m)および複数の光沢プロファイルpr(m)(m=1、2、3、・・・)が記憶される。第1光沢基準としての光沢値st(m)は、第2光沢基準としての光沢プロファイルpr(m)と互いに対応付けられて基準記憶部44aに記憶されている。光沢プロファイルpr(m)は、例えば、分布関数P(x)の形式で基準記憶部44aに記憶されても良く、また受光部21における受光素子pnごとの各出力値stPnの形式で基準記憶部44aに記憶されても良い。
【0079】
光沢特性導出部41dは、A/D変換部33からのディジタル信号に基づいて測定試料SMの第1光沢特性およびこの第1光沢特性と異なる第2光沢特性を導出する。例えば、本他の形態では、光沢特性導出部41dは、受光部21の受光面上に設定された座標軸(x軸)に沿った反射光の受光量の強度分布を表す分布関数P(x)を受光部21の出力に基づいて求めることによって、第2光沢特性として光沢プロファイルmpを導出する。そして、光沢特性導出部41dは、この求めた分布関数P(x)を所定の範囲で積分し、この積分した積分値に基づいて測定試料SMの所定の光沢値meを求めることによって、第1光沢特性として光沢値を導出する。
【0080】
基準選択部41eは、光沢特性導出部41dで導出された第1光沢特性に基づいて複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準を選択し、光沢特性導出部41dで導出された第2光沢特性に基づいて、この選択した第1光沢基準に対応した第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準を選択し、そして、この選択した第2光沢基準に対応する第1光沢基準を比較部31fの光沢基準として選択する。本他の形態では、より適切に光沢管理を実施すべく、上述したように、第1および第2光沢特性ならびに第1および第2光沢基準には、光沢値および光沢プロファイルが採用されている。このため、より具体的には、本実施形態では、基準選択部41eは、光沢特性導出部41dで導出された光沢値meに基づいて基準記憶部44aに記憶されている第1光沢基準としての複数の光沢値st(m)の中から光沢値st(m)を選択し、光沢特性導出部41dで導出された光沢プロファイルmpに基づいて、この選択した光沢値st(m)に対応した第2光沢基準としての光沢プロファイルpr(m)の中から1つの光沢プロファイルpr(m)を選択し、そして、この選択した光沢プロファイルpr(m)に対応する光沢値st(m)を比較部31fの光沢基準として選択する。
【0081】
比較部41fは、基準選択部41eで選択された第1光沢基準と光沢特性導出部41dで導出された第1光沢特性とを比較する。より具体的には、本実施形態では、比較部41fは、基準選択部41eで選択された第1光沢基準の光沢値st(m)と光沢特性導出部41dで導出された第1光沢特性の光沢値meとを比較する。
【0082】
そして、このような構成の光沢測定装置1では、ユーザによって測定試料SMが光沢測定装置1に配置され、入力操作部36から測定開始の指示が入力されると、図6を用いて説明した上述の実施形態と同様に、発光制御部31a、受光制御部31bおよび光沢特性導出部41dによって、測定試料SMの光沢特性、本他の形態では、第1および第2光沢特性として、光沢値および光沢プロファイルが測定される。
【0083】
そして、光沢特性導出部41dが第1および第2光沢特性を導出すると、制御部31の基準選択部41eは、測定試料SMに対応する光沢基準を記憶部34の基準記憶部44aに記憶されている複数の第1および第2光沢基準の中から選択する。
【0084】
より具体的には、図10に示すように、基準選択部41eは、まず、複数mの第1光沢基準として基準記憶部44aに記憶されている複数の光沢値st(m)のそれぞれと光沢特性導出部41dによって導出された第1光沢特性の光沢値meとの差の絶対値abs(m)(=|st(m)−me|)をそれぞれ求める(S21)。次に、基準選択部41eは、これら求めた各絶対値abs(m)の中から、最小の絶対値abs(m)およびこの最小の絶対値abs(m)から所定値tha(例えばこの最小の絶対値abs(m)の5%や10%や15%等)以内の絶対値abs(m)を求める。次に、基準選択部41eは、最小の絶対値abs(m)を与える第1光沢基準の光沢値st(m)、および、この最小の絶対値abs(m)から所定値tha以内の絶対値abs(m)を与える第1光沢基準の光沢値st(m)を選出する(S22)。これによって複数の第1光沢基準の光沢値st(m)が一次抽出される。
【0085】
次に、基準選択部41eは、これら選出された第1光沢基準の光沢値st(m)に対応する第2光沢基準の光沢プロファイルのそれぞれと、光沢特性導出部41dで導出された光沢プロファイルmpとの相関を求める(S23)。
【0086】
この相関演算の相関値D1は、例えば、基準記憶部44aに受光部21における受光素子pnごとの各出力値stPnで記憶されている場合において、受光部21の受光素子pnごとに、測定で得られた受光素子pnの出力値Pnと基準記憶部44aに記憶されている受光素子pnに対応する基準値の出力値stPnとの差の2乗を合計することによって求められる(D1=Σ((Pi−stPi))、i=1〜n)。例えば、図11に示すように、受光素子p0〜p5の各測定出力値がそれぞれP0〜P5であり、受光素子p0〜p5に対応する各基準出力値がそれぞれstP0〜stP5である場合では、相関値D1=(P0−stP0)+(P1−stP1)+(P2−stP2)+(P3−stP3)+(P4−stP4)+(P5−stP5)となる。このような相関演算では、相関値D1が小さいほど相関が高い。
【0087】
また例えば、相関演算の相関値D2は、基準記憶部44aに受光部21における受光素子pnごとの各出力値stPnで記憶されている場合において、受光部21の受光素子pnごとに、測定で得られた受光素子pnの出力値Pnと基準記憶部44aに記憶されている受光素子pnに対応する基準値の出力値stPnとの積を合計した後に、正規化することによって求められる(D2=Σ((Pi×stPi)/(ΣPi×ΣstPi))、i=1〜n)。このような相関演算では、相関値D2が大きいほど相関が高い。
【0088】
このように基準記憶部44aに受光部21における受光素子pnごとの各出力値stPnで記憶されている場合では、光沢特性導出部41dは、相関演算の点では、第2光沢特性の光沢プロファイルとして、受光部21における各受光素子pnの出力が導出される。
【0089】
また例えば、相関演算は、基準記憶部44aに関数式で記憶されている場合では、通常の関数式同士の相関演算が用いられる。
【0090】
この他、プロファイルの相関(合致度)を表す任意の演算法を採用することが可能である。
【0091】
また例えば、相関演算において、上述では、受光部21における全受光素子pnの各出力が演算対象となったが、受光部21における一部の受光素子pnの各出力が演算対象とされてもよい。例えば、基準記憶部44aに受光部21における受光素子pnごとの各出力値stPnで記憶されている場合において、測定で得られた受光素子pnの各出力値Pnにおける最大値およびその前後所定個数の出力値Pnと、基準記憶部44aに記憶されている基準値の各出力値stPnにおける最大値およびその前後所定個数の出力値stPnが相関演算の演算対象とされる。例えば、所定個数が2個であって図12(A)に示す場合では、測定で得られた受光素子pnの各出力値Pnにおける最大値がP3であるので、その前後2個の出力値を含む出力値P1、P2、P3、P4、P4と、基準記憶部44aに記憶されている基準値の各出力値stPnにおける最大値がstP2であるので、その前後2個の基準値の出力値を含む出力値stP0、stP1、stP2、stP3、stP4とが演算対象とされる。
【0092】
次に、基準選択部41eは、これら求めた相関値に基づいて最も相関している第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)を求め、この求めた第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)に対応する第1光沢基準の光沢値st(m)を比較部41fの光沢基準として選択する(S24)。
【0093】
このように基準選択部41eが動作することによって、光沢特性導出部41dで導出された第1光沢特性の光沢値meに基づいて基準記憶部44aに記憶されている第1光沢基準の複数の光沢値st(m)の中から光沢値st(m)が選択され、光沢特性導出部41dで導出された光沢プロファイルmpに基づいて、この選択した光沢値st(m)に対応した第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)の中から1つの光沢プロファイルpr(m)が選択され、この選択された第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)に対応する第1光沢基準の光沢値st(m)が比較部41fの光沢基準として選択される。
【0094】
基準選択部41eが光沢基準を選択すると、図6を用いて説明した上述の実施形態と同様に、比較部41fによって、基準選択部41eで選択された第1光沢基準と光沢特性導出部41dで導出された第1光沢特性とが比較され、判定部31gによって、比較部31fの比較結果に基づいて光沢の点で測定試料SMの合否が判定され、表示制御部31cによって、測定試料SMに対する判定結果の合否等が表示部35に表示される。
【0095】
表示制御部31cは、図6を用いて説明した上述の実施形態と同様に表示部35に表示しても良いが、例えば、表示制御部31cは、光沢測定装置1が選択した第2光沢基準の適否をユーザが判定することができるように、基準選択部41eで演算された相関値を表示しても良い。また例えば、表示制御部31cは、光沢測定装置1が選択した第2光沢基準の適否をユーザが容易に判定することができるように、測定試料SMに対して選択された第2光沢基準をさらに表示してもよい。
【0096】
この測定試料SMに対して選択された第2光沢基準の光沢プロファイルの表示では、例えば、図13(A)に示すように、光沢特性導出部41dによって導出された測定試料SMの光沢プロファイルmp(測定データ)と、基準選択部41eによって選択された第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)(基準データ)とが同時に表示部35にグラフによって表示される。また例えば、図13(B)に示すように、光沢特性導出部41dによって導出された測定試料SMの光沢プロファイルmp(測定データ)と、基準選択部41eによって選択された第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)(基準データ)との差が表示部35にグラフによって表示される。このように表示部35に表示されることによって、光沢測定装置1が選択した第2光沢基準の適否をユーザが容易に判定することができる。
【0097】
また、上述の2段階で光沢基準を選抜する実施形態において、次のように光沢基準が2段階で選抜されてもよい。このように2段階で選抜されるので、適切な第2光沢基準を選択することが可能となる。また、第1光沢基準により第2光沢基準の候補を絞ることになり、測定した光沢特性を、すべての第2光沢基準に対して比較演算処理する場合に較べて、処理時間が短縮される。
【0098】
図14は、実施形態の他の形態における他の2段階選抜で光沢基準を選択する場合のフローチャートを示す図である。
【0099】
この場合における光沢測定装置1は、大略、図1ないし図7を用いて説明した上述の光沢測定装置1と略同様に構成されるが、次の異なる点を有している。
【0100】
記憶部34の基準記憶部34aに代え、基準記憶部54aが用いられ、制御部31の光沢特性導出部31d、基準選択部31eおよび比較部31fに代え、光沢特性導出部51d、基準選択部51eおよび比較部51fが用いられる。
【0101】
基準記憶部54aは、予め設定された所定の第1光沢特性に対応し、測定試料SMにおける互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の第1光沢基準を記憶すると共に、予め設定された第1光沢特性と異なる所定の第2光沢特性に対応し、測定試料SMにおける互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の第2光沢基準を記憶する。所定の第1光沢特性は、本他の形態では、例えば、光沢値が用いられ、所定の第2光沢特性は、本他の形態では、例えば、光沢プロファイルが用いられる。基準記憶部54aには、図9に示す基準記憶部44aと同様に、基準値として、互いに異なる複数種類の試料のそれぞれに対応した、複数の光沢値st(m)および複数の光沢プロファイルpr(m)(m=1、2、3、・・・)が記憶される。第1光沢基準としての光沢値st(m)は、第2光沢基準としての光沢プロファイルpr(m)と互いに対応付けられて基準記憶部44aに記憶されている。
【0102】
光沢特性導出部51dは、光沢特性導出部41dと同様に、A/D変換部33からのディジタル信号に基づいて測定試料SMの第1光沢特性およびこの第1光沢特性と異なる第2光沢特性を導出する。
【0103】
基準選択部51eは、光沢特性導出部51dで導出された第1光沢特性に基づいて複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準を選択し、光沢特性導出部51dで導出された第2光沢特性に基づいて、この選択した第1光沢基準に対応した第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準を選択する。本他の形態では、より適切に光沢管理を実施すべく、上述したように、第1および第2光沢特性ならびに第1および第2光沢基準には、光沢値および光沢プロファイルが採用されている。このため、より具体的には、本実施形態では、基準選択部51eは、光沢特性導出部51dで導出された光沢値meに基づいて基準記憶部54aに記憶されている第1光沢基準としての複数の光沢値st(m)の中から光沢値st(m)を選択し、光沢特性導出部51dで導出された光沢プロファイルmpに基づいて、この選択した光沢値st(m)に対応した第2光沢基準としての光沢プロファイルpr(m)の中から1つの光沢プロファイルpr(m)を選択する。
【0104】
比較部51fは、基準選択部51eで選択された第2光沢基準と光沢特性導出部51dで導出された第2光沢特性とを比較する。より具体的には、本実施形態では、比較部51fは、基準選択部51eで選択された第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)と光沢特性導出部51dで導出された第2光沢特性の光沢プロファイルmpとを比較する。
【0105】
そして、このような構成の光沢測定装置1では、ユーザによって測定試料SMが光沢測定装置1に配置され、入力操作部36から測定開始の指示が入力されると、図6を用いて説明した上述の実施形態と同様に、発光制御部31a、受光制御部31bおよび光沢特性導出部51dによって、測定試料SMの光沢特性、本他の形態では、第1および第2光沢特性として、光沢値および光沢プロファイルが測定される。
【0106】
そして、光沢特性導出部51dが第1および第2光沢特性を導出すると、制御部31の基準選択部51eは、測定試料SMに対応する光沢基準を記憶部34の基準記憶部54aに記憶されている複数の第1および第2光沢基準の中から選択する。
【0107】
より具体的には、図14に示すように、基準選択部51eは、まず、図10に示す処理S21と同様に、複数mの第1光沢基準として基準記憶部54aに記憶されている複数の光沢値st(m)のそれぞれと光沢特性導出部51dによって導出された第1光沢特性の光沢値meとの差の絶対値abs(m)(=|st(m)−me|)をそれぞれ求める(S31)。次に、基準選択部51eは、図10に示す処理S22と同様に、これら求めた各絶対値abs(m)の中から、最小の絶対値abs(m)およびこの最小の絶対値abs(m)から所定値tha(例えばこの最小の絶対値abs(m)の5%や10%や15%等)以内の絶対値abs(m)を求める。次に、基準選択部51eは、最小の絶対値abs(m)を与える第1光沢基準の光沢値st(m)、および、この最小の絶対値abs(m)から所定値tha以内の絶対値abs(m)を与える第1光沢基準の光沢値st(m)を選出する(S32)。これによって複数の第1光沢基準の光沢値st(m)が一次抽出される。
【0108】
次に、基準選択部51eは、図10に示す処理S23と同様に、これら選出された第1光沢基準の光沢値st(m)に対応する第2光沢基準の光沢プロファイルのそれぞれと、光沢特性導出部41dで導出された光沢プロファイルmpとの相関を求める(S33)。
【0109】
次に、基準選択部51eは、これら求めた相関値に基づいて最も相関している第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)を求め、この求めた第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)を比較部51fの光沢基準として選択する(S34)。
【0110】
このように基準選択部51eが動作することによって、光沢特性導出部51dで導出された第1光沢特性の光沢値meに基づいて基準記憶部54aに記憶されている第1光沢基準の複数の光沢値st(m)の中から光沢値st(m)が選択され、光沢特性導出部51dで導出された光沢プロファイルmpに基づいて、この選択した光沢値st(m)に対応した第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)の中から1つの光沢プロファイルpr(m)が選択され、この選択された第2光沢基準の光沢プロファイルpr(m)が比較部51fの光沢基準として選択される。
【0111】
基準選択部51eが光沢基準を選択すると、図6を用いて説明した上述の実施形態と同様に、比較部51fによって、基準選択部51eで選択された第2光沢基準と光沢特性導出部51dで導出された第2光沢特性とが比較され、判定部31gによって、比較部51fの比較結果に基づいて光沢の点で測定試料SMの合否が判定され、表示制御部31cによって、図6を用いて説明した上述の実施形態と同様に、あるいは、図10を用いて説明した上述の他の形態と同様に、測定試料SMに対する判定結果の合否等が表示部35に表示される。
【0112】
また、上述の実施形態では、光沢値で測定試料SMの合否が判定されたが、光沢プロファイルで測定試料SMの合否が判定されてもよい。この場合には、記憶部34の基準記憶部34aは、測定試料SMにおける互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準として複数の光沢プロファイルpr(m)を記憶する。制御部31の光沢特性導出部31dは、測定試料SMの光沢特性として光沢プロファイルを導出する。基準選択部31e、比較部31fおよび判定部31gは、光沢値に代え、光沢プロファイルを用いる。基準選択部31eは、光沢特性導出部31dで求めた光沢プロファイルと基準記憶部34aに記憶されている光沢基準としての各光沢プロファイルとの相関を求め、最も相関する光沢基準を選択することで、光沢基準を選択する。そして、比較部31fは、光沢特性導出部31dで求めた光沢プロファイルと基準選択部31eで選択された基準としての光沢プロファイルとの相関を求める。このように光沢特性および光沢基準に光沢プロファイルが採用されることによって、光沢測定装置1は、光沢プロファイルによって測定試料SMの光沢特性を評価することができる。このため、適切に光沢管理が実施可能となる。
【0113】
なお、上述の実施形態では、受光部21の出力を近似する式1は、正反射方向を中心とする散乱光の強度分布を、cosを基本形式として表す関数であるが、他の関数式を用いてもよい。受光部21の出力を近似する式は、例えば、式4のように、正反射方向を中心とする散乱光の強度分布を、ガウス関数を基本形式として強度分布を表す関数としてもよい。
【0114】
【数4】

【0115】
ここで、dは、分布の幅であり、光沢の程度に依存する。
【0116】
図15は、受光部の受光面上に形成される開口板の開口の像を説明するための図である。
【0117】
開口板12における開口12aの試料表面SMaによる像は、図15に示すように、測定試料SMの試料表面SMaが鏡面ではない場合には二次元的に拡がる。
【0118】
また、上述の実施形態では、測定試料SMの試料表面SMaが鏡面である場合にあって開口板12の開口12aの像が受光部21の受光面に結像した場合に、開口12aの幅w方向(x軸方向)の強度分布によって光沢特性を求めるように光沢測定装置1が構成されたが、測定試料SMの試料表面SMaが鏡面である場合にあって開口板12の開口12aの像が受光部21の受光面に結像した場合に、開口12aの高さh方向(y軸方向)の強度分布によって光学特性を求めるように、光沢測定装置1が構成されてもよい。
【0119】
あるいは、図15に示すように、受光部21の受光面上に形成される開口板12の開口12aの像における強度分布を表す二次元分布関数を求めることによって光学特性を求めるように、光沢測定装置1が構成されてもよい。上述したように、開口板12の開口12aが画角にして幅0.75度であって高さ2.5度である場合には、60度光沢を測定する場合における受光側開口は、画角にして幅4.4度であって高さ11.7度と想定される。幅方向をx軸とし、高さ方向をy軸とし、前記受光側開口の中心を座標原点とするxy直交座標系を受光部21の受光面上に設定すると、前記受光側開口は、高さ方向に長い矩形であるため、光沢値に対し、図15に示すように、x軸方向の強度分布が支配的に影響するが、y軸方向の強度分布も考慮した二次元的な強度分布を考慮することによって、より高精度に光学特性が測定可能となる。
【0120】
図16は、実施形態の他の形態における受光部の構成を示す図である。このような構成の光沢測定装置1では、図3に示す一次元の受光部21に代えて、二次元の受光部51が用いられる。この二次元の受光部51は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子からなる複数の受光素子を備え、これら複数の受光素子が線形独立な二方向に配列されて成り、本実施形態では、各受光素子から直接的に各出力が引き出されるように構成され、例えば数個ないしは十数個の受光素子を備えている。受光部51の各受光素子は、照明側光学系10によって試料表面SMaに照射され当該試料表面SMaによって反射された反射光における略正反射方向の成分21aの光を受光することによって、受光量に応じた電気信号をそれぞれ出力する。
【0121】
受光部51は、例えば、本実施形態では、図16に示すように、一方向に6個の受光素子p00〜p05、p10〜p15が配列された受光素子列が前記一方向に直交する他方向に2列備え、各受光素子p00〜p05、p10〜p15から直接的に各出力が引き出されるように構成されたシリコンフォトダイオードアレイを備えて構成されている。測定試料SMの試料表面SMaが鏡面である場合にあって開口板12の開口12aの像が受光部21の受光面に結像した場合に、開口12aの幅w方向と受光素子列の受光素子p00〜p05、p10〜p15が配列される方向(x軸方向)とが一致すると共に、開口12aの高さh方向と2個の受光素子列が配列される方向(y軸方向)とが一致するように、受光部51は、受光レンズ22の焦点位置fに配設される。
【0122】
図16に示すように、xy座標系の座標原点(0,0)が受光部51の中心に設定されているとすると、測定試料SMが正規姿勢からずれているために、図15は、開口板12の開口12aにおける試料表面SMaによる像がxy座標系の座標原点(0,0)からずれた座標点(x0,y0)を中心に二次元的に拡がっている例を示している。なお、図15では、受光量の強度分布が等高線で示されている。
【0123】
そして、このような構成の光沢測定装置1では、例えば、受光部51の受光面上に設定された線形独立な第1および第2の座標軸(図16に示す例ではx軸およびy軸)で定義される平面での反射光の受光量の分布を表す二次元分布関数P(x、y)を受光部51の出力に基づいて求め、この求めた二次元分布関数P(x、y)を所定の範囲で積分し、この積分した積分値Sに基づいて測定試料SMの光沢値を導出するように、制御部31の光沢特性導出部31dが構成される。
【0124】
例えば、受光部51の受光面に設定された互いに直交する第1および第2の座標軸で定義される平面での受光量の分布は、例えば、式5に示す二次元分布関数P(x、y)によって近似することができる。
【0125】
【数5】

【0126】
ここで、fは、受光レンズ22の焦点距離であり、(x0、y0)は、受光部51における受光量の分布の中心座標であり、Nは、光沢の程度に依存する数値であり、Lは、試料面SMaの法線方向を中心とするランベルト拡散光の中心強度であり、Sは、正反射方向を中心とする散乱光の中心強度であり、lおよびmは、試料表面SMaが鏡面である場合の受光部21における像のx軸方向およびy軸方向の幅である。また、θは、座標xに入射する光線の試料面法線からの角度である。ここで、y軸方向の分布の巾mは、x軸方向の分布の巾lおよび照明側開口12aの巾wと高さhの比h/wからm=l・(h/w)によって近似することができる。つまり、二次元分布関数P(x、y)は、定数x0、y0、N、L、S、lを与えることによって確定する。
【0127】
この二次元分布関数P(x、y)は、上述した一次元の分布関数P(x)を求める手順と同様な手順によって、受光部51における各受光素子p00〜p05、p10〜p15の出力に基づいて求めることができる。そして、二次元分布関数P(x、y)を積分する所定の範囲(積分区間)は、図15に破線で示すように、その中心座標(x0、y0)を中心に、60度光沢を測定する場合における受光側開口の幅W=4.4度および高さH=11.7度に相当する範囲(x軸方向がx0−W/2〜x0+W/2であってy軸方向がy0−H/2〜y0+H/2の矩形内)である。そして、光沢値は、予め与えられている変換テーブルや変換式などを用いることによって、この求めた積分値Sから求められる。
【0128】
上述では、受光部51の受光面上に形成される開口板12の開口12aの像における強度分布を二次元分布関数で表したが、受光部51の受光面上に設定された線形独立な第1および第2の座標軸にそれぞれ沿った反射光の受光量の分布をそれぞれ表す第1および第2一次元分布関数で表して該第1および第2一次元分布関数を求めることによって光沢値を求めるように、光沢測定装置1が構成されてもよい。このような構成によれば、より高精度に光沢値が測定可能となる一方、第1および第2一次元分布関数を個々に求めればよいので、二次元分布関数を求める場合に較べて、より容易に第1および第2一次元分布関数を求めることができる。
【0129】
このような構成の光沢測定装置1では、例えば、受光部21に代えて図16に示す上述の受光部51が用いられる。そして、例えば、受光部51の受光面上に設定された線形独立な第1および第2の座標軸(図16に示す例ではx軸およびy軸)にそれぞれ沿った反射光の受光量の分布をそれぞれ表す第1および第2一次元分布関数P(x)、Q(y)をそれぞれ受光部51の出力に基づいて求め、この求めた各一次元分布関数P(x)、Q(y)を所定の範囲でそれぞれ積分し、この積分した各積分値Sp、Sqに基づいて測定試料SMの所定の光沢値を導出ように、制御部31の光沢特性導出部31dが構成される。
【0130】
この第1および第2一次元分布関数P(x)、Q(y)は、上述した一次元の分布関数P(x)を求める手順と同様な手順によって、受光部51における各受光素子p00〜p05、p10〜p15の出力に基づいて求めることができる。図17は、実施形態の他の形態における分布関数の演算手順を説明するための図である。例えば、第1分布関数P(x)は、各受光素子の行出力P0〜P5に基づいて求められる。ここで、行出力Pn(n=0、1、2、3、4、5)は、受光素子P0nの出力と受光素子P1nの出力との和である。そして、第2分布関数Q(y)は、各受光素子の列出力Q0(=各受光素子P00〜P05の各出力の和)、Q1(=各受光素子P10〜P15の各出力の和)に基づいて求められる。
【0131】
そして、第1分布関数P(x)を積分する所定の範囲(積分区間)は、図15に破線で示すように、その中心座標(x0、y0)のx座標x0を中心に、60度光沢を測定する場合における受光側開口の幅W=4.4度に相当する範囲(x0−W/2〜x0+W/2)である。第2分布関数Q(y)を積分する所定の範囲(積分区間)は、前記中心座標(x0、y0)のy座標y0を中心に、60度光沢を測定する場合における受光側開口の高さH=11.7度に相当する範囲(y0−H/2〜y0+H/2)である。そして、光沢値は、予め与えられている変換テーブルや変換式などを用いることによって、この求めた分布関数P(x)の積分値Spと分布関数Q(y)の積分値Sqとの積Sp・Sqから求められる。
【0132】
このような第1および第2分布関数P(x)、Q(y)は、例えば、式6−1、式6−2を利用することができる。
【0133】
【数6】

【0134】
ここで、第2分布関数Q(y)の分布の幅mは、第1分布関数P(x)の分布の幅lおよび照明側開口12aの幅wと高さhの比h/wから、m=l・(h/w)、によって近似することができる。このため、制御部31の光沢特性導出部31dは、中心座標のy座標y0を、列出力Q0、Q1に基づいて分布関数P(x)と同様の方法で求めればよい。
【0135】
このように第1および第2一次元分布関数P(x)、Q(y)が、式6−1および式6−2で示されるように、同型であって、それらを確定する定数のうち、N、L、Sが共通の値(同じ値)を持つ場合には、第1および第2一次元分布関数P(x)、Q(y)が近似される際に決定すべき定数を減らすことができ、受光素子の個数を減らし、処理を簡略化することができる。
【0136】
なお、上述では、第1および第2一次元分布関数P(x)、Q(y)は、同型とされたが、異なる型でもよい。
【0137】
また、上述の実施形態では、受光部21、41は、フォトダイオードアレイを備えて構成されたが、他のセンサを備えて構成されてもよい。受光部21、41は、例えば、1次元や2次元のCMOSセンサを備えて構成されても良く、また例えば、1次元や2次元のCCDセンサを備えて構成されてもよい。
【0138】
また、上述の実施形態において、光沢測定装置1は、光源部11、受光部21、発光駆動部32およびA/D変換部33等を備えた測定ヘッド部と、制御部31、記憶部34、表示部35および入力操作部36等として機能する、前記測定ヘッド部より受信した測定値から光沢特性を導出し、比較し、そして判定するコンピュータとから構成される光沢測定システムであっても良い。
【0139】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施形態の光沢測定装置における光学系の構成を示す図である。
【図2】実施形態の光沢測定装置における開口板の構成を示す図である。
【図3】実施形態の光沢測定装置における受光部の構成を示す図である。
【図4】実施形態の光沢測定装置における電気的な構成を示す図である。
【図5】実施形態の基準記憶部における記憶内容を説明するための図である。
【図6】実施形態における光沢測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態における光沢特性の演算手順を説明するための図である。
【図8】異なる2つの測定試料における光沢プロファイルを示す図である。
【図9】実施形態の他の形態における基準記憶部の記憶内容を説明するための図である。
【図10】実施形態の他の形態における2段階選抜で光沢基準を選択する場合のフローチャートを示す図である。
【図11】実施形態の他の形態における受光部の全受光素子の各出力を用いた光沢プロファイルの相関演算を説明するための図である。
【図12】実施形態の他の形態における受光部の一部の受光素子の各出力を用いた光沢プロファイルの相関演算を説明するための図である。
【図13】実施形態の他の形態における表示部の表示内容を説明するための図である。
【図14】実施形態の他の形態における他の2段階選抜で光沢基準を選択する場合のフローチャートを示す図である。
【図15】受光部の受光面上に形成される開口板の開口の像を説明するための図である。
【図16】実施形態の他の形態における受光部の構成を示す図である。
【図17】実施形態の他の形態における分布関数の演算手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0141】
1 光沢測定装置
10 照明側光学系
11 光源部
12 開口板
13 照明レンズ
20 受光側光学系
21 受光部
22 受光レンズ
31 制御部
31a 発光制御部
31b 受光制御部
31c 表示制御部
31d、41d、51d 光沢特性導出部
31e、41e、51e 基準選択部
31f、41f、51f 比較部
31g 判定部
32 発光駆動部
33 変換部
34 記憶部
34a、44a、54a 基準記憶部
35 表示部
36 入力操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料に光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射された光が前記測定試料で反射された反射光を受光する受光部と、
前記受光部の出力に基づいて所定の光沢特性を導出する光沢特性導出部と、
前記所定の光沢特性に対応し、前記測定試料における互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準を記憶する基準記憶部と、
前記光沢特性導出部で導出された光沢特性に基づいて前記複数の光沢基準の中から1つの光沢基準を選択する基準選択部と、
前記基準選択部で選択された光沢基準と前記光沢特性導出部で導出された光沢特性とを比較する比較部とを備えること
を特徴とする光沢測定装置。
【請求項2】
前記比較部の比較結果に基づいて前記測定試料の合否を判定する判定部をさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載の光沢測定装置。
【請求項3】
前記光沢特性および光沢基準は、光沢値であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の光沢測定装置。
【請求項4】
前記光沢特性および光沢基準は、前記受光部の受光面に予め設定された所定の方向に沿った受光量の強度分布である光沢プロファイルであること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の光沢測定装置。
【請求項5】
前記光沢特性導出部は、第1光沢特性および前記第1光沢特性と異なる第2光沢特性を導出し、
前記基準記憶部に記憶される光沢基準は、前記第1および第2光沢特性にそれぞれ対応する第1および第2光沢基準であり、
前記基準選択部は、前記光沢特性導出部で導出された第1光沢特性に基づいて前記複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準を選択し、前記光沢特性導出部で導出された第2光沢特性に基づいて、前記選択した第1光沢基準に対応した前記第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準を選択し、前記選択した第2光沢基準に対応する第1光沢基準を前記比較部の光沢基準として選択し、
前記比較部は、前記基準選択部で選択された第1光沢基準と前記光沢特性導出部で導出された第1光沢特性とを比較すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の光沢測定装置。
【請求項6】
前記光沢特性導出部は、第1光沢特性および前記第1光沢特性と異なる第2光沢特性を導出し、
前記基準記憶部に記憶される光沢基準は、前記第1および第2光沢特性にそれぞれ対応する第1および第2光沢基準であり、
前記基準選択部は、前記光沢特性導出部で導出された第1光沢特性に基づいて前記複数の第1光沢基準の中から第1光沢基準を選択し、前記光沢特性導出部で導出された第2光沢特性に基づいて、前記選択した第1光沢基準に対応した前記第2光沢基準の中から1つの第2光沢基準を選択し、
前記比較部は、前記基準選択部で選択された第2光沢基準と前記光沢特性導出部で導出された第2光沢特性とを比較すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の光沢測定装置。
【請求項7】
測定試料に光を照射する光照射工程と、
前記光照射工程で照射された光が前記測定試料で反射された反射光を受光する受光工程と、
前記受光工程で得られた前記反射光の受光量に基づいて所定の光沢特性を導出する光沢特性導出工程と、
前記光沢特性導出工程で導出された光沢特性に基づいて、前記所定の光沢特性に対応し前記測定試料における互いに異なる複数の種類のそれぞれに対して予め設定される複数の光沢基準の中から1つの光沢基準を選択する基準選択工程と、
前記基準選択工程で選択された光沢基準と前記光沢特性導出工程で導出された光沢特性とを比較する比較工程とを備えること
を特徴とする光沢測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−47581(P2009−47581A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214680(P2007−214680)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】