説明

光硬化性熱硬化性樹脂組成物及びドライフィルムとこれらを用いたプリント配線板

【課題】孔部を設けたレジストパターンを形成したときに、孔部周縁部にバリ状の部分が残ったり、所定の穴径よりも小さな孔部になってしまうという問題がなく、所定の露光パターン通りのレジストパターンを形成できる光硬化性熱硬化性樹脂組成物とドライフィルムを提供し、もって生産性良く信頼性の高いプリント配線板を提供する。
【解決手段】孔部を設けたレジストパターンを形成するために用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物とドライフィルムであって、光硬化性成分及び熱硬化性成分と共に含有する光重合開始剤として、リン含有光重合開始剤を用いたことを特徴とする光硬化性熱硬化性樹脂組成物とドライフィルムが提供される。好適には、上記リン含有光重合開始剤はアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造、電子部品への実装等のアプリケーションに好適な光硬化性熱硬化性樹脂組成物のドライフィルムに関し、さらに詳しくは、孔部を設けたレジスト層などを民生用乃至産業用プリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板に形成するのに適した光硬化性熱硬化性樹脂組成物とドライフィルムに関する。本発明はまた、かかる光硬化性熱硬化性樹脂組成物とドライフィルムにより孔部を設けたソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体部品の急速な進歩により、電子機器は小型軽量化、高性能化、多機能化の傾向にあり、これらに追従してプリント配線板の高密度化が進みつつある。例えば、導体回路の細線化、高多層化や、スルーバイアホール、ブラインドバイアホール等の小径化、さらには小型チップ部品の表面実装による高密度実装等が進みつつある。また、このようなプリント配線板の高密度化に対応して、QFP(クワッド・フラットパック・パッケージ)、SOP(スモール・アウトライン・パッケージ)等と呼ばれるICパッケージに代わって、BGA(ボール・グリッド・アレイ)、CSP(チップ・スケール・パッケージ)等と呼ばれるICパッケージが登場した。このようなパッケージ基板や車載用のプリント配線板において、パッケージ基板上の半導体部品と接続するためのパッド等の開口部には、信頼性を向上させるための金めっき等を施すために、ソルダーレジストが用いられる。
【0003】
ソルダーレジストとしては、高密度プリント配線板の製造においては一般にフォトソルダーレジストが採用されており、また、作業性、膜厚精度、硬化膜表面の平滑性等の観点から、ソルダーレジストのドライフィルム化が要求されるようになってきた。また、最近では、プリント配線板やパッケージ基板に用いられるコア材の薄板化が進み、例えば、TAB(テープ・オート・ボンディング)、T−BGA(テープ・ボール・グリッド・アレイ)、T−CSP(テープ・チップ・スケール・パッケージ)、UT−CSP(ウルトラ・シン・チップ・スケール・パッケージ)などが登場してきた。このようなテープ状のコア材を用いた場合、ロール・ツー・ロール(roll−to−roll)法によりドライフィルムタイプのソルダーレジストをラミネートする必要がある。
【0004】
ドライフィルムタイプのフォトソルダーレジストは、一般にキャリアフィルムと呼ばれる支持体上に光硬化性熱硬化性樹脂組成物の乾燥皮膜を形成し、あるいはさらにその表面をカバーフィルムで被覆したものであり、シート状又はロール状にて供給され、キャリアフィルム又はカバーフィルムの一方を剥がしながらプリント配線板上にラミネートした後、選択的露光を行い、その後、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥離した後、現像を行うことによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0005】
ドライフィルムタイプのフォトソルダーレジストとしては、感光性樹脂として、例えばウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する組成物(特許文献1、2参照)や、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する組成物(特許文献3、4参照)など、種々の組成物が提案されている。しかしながら、従来の光硬化性熱硬化性樹脂組成物のドライフィルムを用いて孔部を設けたレジストパターンを形成した場合、プリント配線板上にラミネートし、選択的露光後、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥離し、現像したときに、孔部周縁部にバリ状の部分が残ったり、所定の孔径よりも小さな孔部になってしまう、という問題があった。このように孔部周縁部にバリ状の部分が残ったり、孔部の径が変化した場合、金めっき等の付着性が低下し、得られるプリント配線板の信頼性を大きく損なってしまう。また、孔部の径の変化状況や、金めっき等の付着状況によっては不良品となるため、生産性が低下するという問題もあった。
【0006】
一方、液状のフォトソルダーレジストの光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤が、硬化深度、解像性、耐熱性、ミストの面から、好適に用いられてきた(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、ドライフィルムタイプのソルダーレジストに用いた場合、上記のような問題が発生した。
【特許文献1】特開昭57−55914号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平7−248622号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2000−131836号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2002−229201号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2000−214584号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、プリント配線板にドライフィルムをラミネートし、選択的露光後、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥離し、現像して孔部を設けたレジストパターンを形成したときに、孔部周縁部にバリ状の部分が残ったり、所定の孔径よりも小さな孔部になってしまうという問題がなく、所定の露光パターン通りのレジストパターンを形成できる光硬化性熱硬化性樹脂組成物のドライフィルムを提供し、もって生産性良く信頼性の高いプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記ドライフィルムを用いなくても、フィルムを介して露光する孔部を設けたレジストパターンを形成する際に生じる上述した同様の問題を解消し得る光硬化性熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明によれば、孔部を設けたレジストパターンを形成するために用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物のドライフィルムであって、光硬化性成分及び熱硬化性成分と共に含有する光重合開始剤として、リン含有光重合開始剤を用いたことを特徴とするドライフィルムが提供される。
好適な態様においては、上記リン含有光重合開始剤はアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である。
また、本発明の他の側面によれば、上記ドライフィルムにより孔部を設けたソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板が提供される。
また、本発明は、他の目的を達成するために、フィルムを介して露光する孔部を設けたレジストパターンの形成方法に用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物であって、光硬化性成分及び熱硬化性成分と共に含有する光重合開始剤として、リン含有光重合開始剤を用いたことを特徴とする光硬化性熱硬化性樹脂組成物が提供される。本発明によればまた、かかる光硬化性熱硬化性樹脂組成物により孔部を設けたソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドライフィルムは、それに用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物に含有させる光重合開始剤として、リン含有光重合開始剤を用いているため、プリント配線板に孔部を設けたレジストパターンを形成する際に、プリント配線板にドライフィルムをラミネートし、選択的露光後、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥離し、現像したときに、孔部周縁部にバリ状の部分が残ったり、所定の孔径よりも小さな孔部になってしまうという問題がなく、所定の露光パターン通りのレジストパターンを形成できる。その結果、金めっき等の付着性が低下することもなく、生産性良く信頼性の高いプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、感光性樹脂層として光硬化性熱硬化性樹脂組成物のドライフィルムを用いた場合に起こる前記した現象について鋭意研究を行った。その結果、このような現象は以下のような理由により起こるものと考えられる。すなわち、プリント配線板にドライフィルムをラミネートする場合、キャリアフィルム又はカバーフィルムの一方を剥がしながらプリント配線板上にラミネートした後、選択的露光を行い、その後、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥離した後、現像を行うことによって、所定のレジストパターンが形成される。従って、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)が剥がされるまで、プリント配線板上に形成された光硬化性熱硬化性樹脂組成物の層(ドライフィルム)はその上面がフィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)で覆われた状態であるため、外気の酸素との接触は妨げられ、酸素による重合阻害は起こらない状態となっている。そのため、フォトマスクにより活性エネルギー線の照射が遮断されている孔部パターンの周縁部でハレーションが起こり、また、露光後、フィルムを剥がすまでの間にも少なからず重合反応が進むため、孔部周縁部にバリ状の現像残り部分が生じたり、所定の孔径よりも小さな孔部になってしまうものと考えられる。
【0011】
本発明者らは、このような現象についてさらに検討を重ねた結果、ドライフィルムに用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物に含有させる光重合開始剤として、リン含有光重合開始剤を用いた場合、プリント配線板に孔部を設けたレジストパターンを形成する際に、上記のように孔部周縁部にバリ状の部分が残ったり、所定の孔径よりも小さな孔部になってしまうという問題がなく、所定の露光パターン通りのレジストパターンを形成できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。その理由は必ずしも明らかとは言い難いが、リン含有光重合開始剤が重合阻害因子として作用し、プリント配線板上に形成された光硬化性熱硬化性樹脂組成物の層(ドライフィルム)の上面がフィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)で覆われて外気の酸素との接触は妨げられた状態(酸素阻害が起こらない状態)であっても、露光後、フィルムを剥がすまでの間の重合反応の進行を阻害するためであると考えられる。
【0012】
前記のような作用・効果に優れた好適なリン含有光重合開始剤は、下記一般式(I)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又は、ハロゲン原子、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されたアリール基を表し、但し、R及びRの一方は、R−C(=O)−基(ここで、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)であってもよい。)
【0013】
上記一般式(I)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例としては、(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、LR8953X、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0014】
また、前記のような作用・効果に優れた特に好適なリン含有光重合開始剤は、下記一般式(II)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である。
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又は、ハロゲン原子、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されたアリール基を表し、但し、R及びRの一方は、R−C(=O)−基(ここで、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)であってもよい。)
【0015】
上記一般式(II)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例としては、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートがあり、市販品としてはBASF社製のルシリンTPO−Lがある。
【0016】
前記のようなリン含有光重合開始剤の配合量は、後述するカルボキシル基含有感光性樹脂又は/及びカルボキシル基含有樹脂100質量部(合計量又は単独使用の場合には単独量、以下同様)に対して、0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部の割合が適当である。リン含有光重合開始剤の配合割合が上記範囲より少ない場合には光硬化性が悪くなり、一方、上記範囲より多い場合には硬化塗膜の特性が悪くなり、また、保存安定性が悪くなるので好ましくない。なお、本発明の効果を損なわない量的割合で、公知慣用の光重合開始剤や光開始助剤を添加することができる。
【0017】
次に、本発明のドライフィルム形成に利用できる光硬化性熱硬化性樹脂組成物について説明する。本発明に用いる組成物は、光重合開始剤としてリン含有光重合開始剤を用いること以外は、従来公知の各種アルカリ現像型の光硬化性熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。光硬化性熱硬化性樹脂組成物中の光硬化性成分としては、従来公知の各種カルボキシル基含有感光性プレポリマーやエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性モノマーを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、光重合性モノマーとアルカリ可溶性のカルボキシル基含有樹脂を組み合わせて用いることができる。特にアルカリ現像性の組成物とするために、カルボキシル基含有樹脂を含有することが好ましく、それ自体がエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂や、エチレン性不飽和二重結合を有する感光性のカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用でき、特定のものに限定されないが、特に以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでも良い)を好適に使用できる。
【0018】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸(a)と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和二重結合を有する化合物(b)を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0019】
(2)不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体の一部に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基とエポキシ基、酸クロライド等の反応性基を有する化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0020】
(3)グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体に、不飽和カルボン酸(a)を反応させ、生成した二級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0021】
(4)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和二重結合を有する酸無水物(e)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(f)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0022】
(5)後述するような分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物(g)又は多官能エポキシ化合物の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸(h)のカルボキシル基とをエステル化反応(全エステル化又は部分エステル化、好ましくは全エステル化)させ、生成した水酸基にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性化合物。
【0023】
(6)不飽和二重結合を有する化合物(b)とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、炭素数2〜17のアルキルカルボン酸、芳香族基含有アルキルカルボン酸等の1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸(i)を反応させ、生成した二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0024】
(7)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート(j)と、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物(k)、及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物(m)の重付加反応により得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0025】
(8)ジイソシアネート(j)と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物(n)、カルボキシル基含有ジアルコール化合物(k)、及びジオール化合物(m)の重付加反応により得られる感光性のカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0026】
(9)前記(7)又は(8)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(f)を加え、末端に不飽和二重結合を導入したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0027】
(10)前記(7)又は(8)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物などの分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0028】
(11)後述するような分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた変性オキセタン化合物中の一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(12)後述するような2官能エポキシ樹脂又は2官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生成した1級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を付加させて得られるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0030】
(13)ビスエポキシ化合物とビスフェノール類との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0031】
(14)ノボラック型フェノール樹脂と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のアルキレンオキシド及び/又はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、2,3−カーボネートプロピルメタクリレート等の環状カーボネートとの反応生成物に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた反応生成物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0032】
前記したカルボキシル基含有樹脂の中でも好ましいものは、前記(7)〜(10)の樹脂の合成に用いられるイソシアネート基を有する化合物(ジイソシアネートも含む)がベンゼン環を有していないジイソシアネートの場合、及び前記(5)、(8)、(12)の樹脂の合成に用いられる多官能及び2官能エポキシ樹脂がビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビフェニル骨格、ビキシレノール骨格を有する線状構造の化合物及びその水添化合物の場合が、可撓性等の点で好ましい。また、別の側面では、前記(7)〜(10)の樹脂及びそれらの前記(12)の如き変性物は、主鎖にウレタン結合を有しており、反りに対して好ましい。また、前記(1)、(6)、(7)、(11)、(12)以外の樹脂は分子内に感光性基(ラジカル重合性不飽和二重結合)を有しているため、光硬化性の点で好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0033】
前記したようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。前記カルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲にあることが望ましく、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの形成が困難となるので好ましくない。
【0034】
また、前記カルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000の範囲が望ましく、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量が2,000未満であると、塗膜のタックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
【0035】
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂又は/及びカルボキシル基含有樹脂の配合量は、全組成物の20〜70質量%の範囲にあることが望ましく、好ましくは30〜60質量%の範囲である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、組成物の粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0036】
前記カルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、それ自体がエチレン性不飽和二重結合を有さないので、光硬化性熱硬化性樹脂組成物として組成するためには、さらに光重合性モノマーを用いる必要がある。
【0037】
前記光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類;カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレートなどのカプロラクトン変性のアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などの感光性(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これら感光性(メタ)アクリレート化合物の使用目的は、組成物に光硬化性を持たすことにある。室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物は、組成物に光硬化性を持たす目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助ける役割も果たす。しかし、室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物を多量に使用すると、塗膜の指触乾燥性が得られず、また塗膜の特性も悪化する傾向があるので、多量に使用することは好ましくない。感光性(メタ)アクリレート化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して100質量部以下が好ましい。また、前記カルボキシル基含有感光性樹脂に、光反応性を上げる目的で、感光性(メタ)アクリレート化合物を配合することができる。この場合、感光性(メタ)アクリレート化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂又は/及びカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、100質量部以下が好ましい。
【0038】
本発明に用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、硬化皮膜に耐熱性を付与するために、熱硬化性成分を含有する。好ましい熱硬化性成分は、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性樹脂である。これらの中でも2官能性のエポキシ樹脂が好ましく、他にはジイソシアネートやその2官能性ブロックイソシアネートも使用することができる。
【0039】
このような分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物、分子中に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物、分子中に2個以上のチオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0040】
前記多官能エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。また、難燃性付与のために、燐等の原子がその構造中に導入されたものを使用してもよい。これらエポキシ樹脂は、熱硬化することにより、硬化皮膜の密着性、はんだ耐熱性、無電解めっき耐性等の特性を向上させる。尚、ドライフィルムの作成の際に、エポキシ樹脂は、光硬化性熱硬化性樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布する直前に混合することが好ましい。エポキシ樹脂を塗布直前に混合することにより、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の増粘を避けることができる。
【0041】
また、本発明に用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物においては、エポキシ樹脂として、室温で固形状又は半固形状で、好ましくは希釈剤(室温で液状の光重合性モノマー又は有機溶剤)に不溶もしくは難溶性のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いることにより、硬化前の光硬化性熱硬化性樹脂組成物中に、固形状又は半固形状のエポキシ樹脂が微粒状に分散している状態となる。その粒径はスクリーン印刷等に支障をきたさない程度が好ましい。このように、硬化前の光硬化性熱硬化性樹脂組成物中に、固形状又は半固形状のエポキシ樹脂が微粒状に分散していると、光硬化性熱硬化性樹脂組成物のポットライフが長くなるため好ましい。このような室温で固形状又は半固形状の好ましいエポキシ樹脂としては、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂などが挙げられる。
【0042】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0043】
前記分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000などが挙げられる。また、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0044】
前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂及び/又はカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、環状(チオ)エーテル基が好ましくは0.6〜2.5当量、より好ましくは、0.8〜2.0当量となる範囲にあることが望ましい。分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.6当量未満である場合、硬化皮膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0045】
本発明で用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を含有するため、熱硬化触媒を含有することができる。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特にこれらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0046】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0047】
また、本発明に用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、前記光硬化性成分や熱硬化性成分を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整するために、有機溶剤を配合することができる。
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。有機溶剤の配合量は、用途等に応じた任意の量とすることができる。
【0048】
本発明で用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、フェノチアジン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロールなどの公知慣用の光重合禁止剤を含有することが好ましい。このような光重合禁止剤を含有させることにより、プリント配線板にドライフィルムをラミネートした後、選択的露光からフィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥がすまでの間の重合反応の進行防止をよりコントロールし易くなる。光重合禁止剤の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂及び/又はカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは5質量部以下の割合が適当である。
【0049】
本発明で用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーを単独で又は2種以上配合することができる。これらは塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させる目的で用いられる。無機フィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂及び/又はカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、300質量部以下、好ましくは30〜200質量部の割合が適当である。
【0050】
本発明で用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、着色剤を配合することができる。着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなど、赤、青、緑、黄などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0051】
また、本発明で用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤等の難燃剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0052】
ドライフィルム化に際しては、本発明の光硬化性熱硬化性樹脂組成物を前記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム(支持体)上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法や、ノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0053】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
キャリアフィルム上に成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルム(保護フィルム)を積層することが望ましい。
【0054】
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜とキャリアフィルムとの接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0055】
前記ドライフィルムは、基材上にホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる(前記光硬化性熱硬化性樹脂組成物の層と基材とが接触するように貼り合わせる)。上記フィルムの光硬化性熱硬化性樹脂組成物の層上に、さらに剥離可能なカバーフィルムを備えたドライフィルムの場合、カバーフィルム(又はキャリアフィルム)を剥がした後、上記光硬化性熱硬化性樹脂組成物の層と基材とが接触するようにホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる。
【0056】
その後、基材上に貼り合わされたドライフィルム(光硬化性熱硬化性樹脂組成物の層)に対し、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥がさず、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。露光は、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光する方法、あるいはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光する方法のいずれでもよい。この露光により、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の層は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。次いで、フィルム(キャリアフィルム又はカバーフィルム)を剥がし、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。その後さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、又は活性エネルギー線の照射後加熱硬化もしくは加熱硬化後活性エネルギー線の照射で最終硬化(本硬化)させることにより、前記カルボキシル基含有感光性樹脂又は/及びカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基と、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分が反応し、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化皮膜を形成することができる。
【0057】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板の他、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板や、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0058】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザー、固体レーザーのどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜1000mJ/cm、好ましくは100〜900mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0059】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例等を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0061】
合成例1
温度計、撹拌機及び環流冷却器を備えた5Lセパラブルフラスコに、ポリマーポリオールとしてポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製PLACCEL208、分子量830)1,245部、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物としてジメチロールプロピオン酸201部、ポリイソシアナートとしてイソホロンジイソシアナート777部及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとして2−ヒドロキシエチルアクリレート119部、さらにp−メトキシフェノール及びジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエンを各々0.5部ずつ投入した。攪拌しながら60℃まで加熱して停止し、ジブチル錫ジラウレート0.8部を添加した。反応容器内の温度が低下し始めたら再度加熱して、80℃で攪拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアナート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了し、粘稠液体のウレタンアクリレート化合物を得た。カルビトールアセテートを用いて不揮発分50%に調整した。固形物の酸価47mgKOH/g、不揮発分50%のカルボキシル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を得た。
【0062】
合成例2
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショーノールCRG951」、昭和高分子(株)製、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部及びトルエン119.4部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部及びトルエン252.9部を、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部及びトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70.6%、固形物の酸価87.7mgKOH/gであった。
【0063】
合成例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のECON−104S(日本化薬社製、エポキシ当量=220)220部(1当量)を攪拌機及び冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート207.2部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.46部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸50.4部(0.7当量)、p−ヒドロキシフェネチルアルコール41.5部(0.3当量)を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応物(水酸基:1.3当量)を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物73.0部(0.48当量)を加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有の感光性樹脂は、不揮発分65%、固形物の酸価70mgKOH/gであった。
【0064】
合成例4
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量=950、軟化点85℃、平均重合度n=6.2)380部とエピクロルヒドリン925部をジメチルスルホキシド462.5部に溶解させた後、攪拌下70℃で純度98.5%NaOH 60.9部(1.5モル)を100分かけて添加した。添加後さらに70℃で3時間反応を行った。反応終了後、水250部を加え水洗を行った。油水分離後、油層よりジメチルスルホキシドの大半及び過剰の未反応エピクロルヒドリンを減圧下に蒸留回収し、残留した副生塩とジメチルスルホキシドを含む反応生成物をメチルイソブチルケトン750部に溶解させ、更に30%NaOH水溶液10部を加え、70℃で1時間反応させた。反応終了後、水200部で2回水洗を行った。油水分離後、油層よりメチルイソブチルケトンを蒸留回収して、エポキシ当量=310、軟化点69℃の多官能エポキシ樹脂を得た。得られた多官能エポキシ樹脂は、エポキシ当量から計算すると、前記出発物質ビスフェノールF型エポキシ樹脂におけるアルコール性水酸基6.2個のうち約5個がエポキシ化されたものであった。この多官能エポキシ樹脂310部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート282部を攪拌機及び還流冷却器の付いた四つ口フラスコに仕込み、90℃で加熱・攪拌し、溶解した。得られた溶液を一旦60℃まで冷却し、アクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.5部、トリフェニルホスフィン2部を加え、100℃に加熱し、約60時間反応させ、酸価が0.2mgKOH/gの反応物を得た。これにテトラヒドロフタル酸無水物140部を加え、90℃に加熱し、固形分酸価が100mgKOH/gになるまで反応を行い、固形分を65%含有する溶液を得た。
【0065】
合成例5
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−695、大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量220)330部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸108部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物68部を加え、8時間反応させ、冷却させた。固形物の酸価50mgKOH/g、不揮発分60%のカルボキシル基含有感光性樹脂を得た。
【0066】
<光硬化性熱硬化性樹脂組成物の調製>
(1)光重合開始剤の検討
前記合成例1及び合成例2で得られたワニスを用いた表1に示す配合成分を3本ロールミルで混練し、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の主剤を得た。また、表2に示す各成分を配合・攪拌した後、3本ロールにて分散・混練し、硬化剤を調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
(2)カルボキシル基含有感光性樹脂の検討
前記合成例1〜5で得られた各ワニスを用いた表3に示す配合成分を3本ロールミルで混練し、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の主剤を得た。また、硬化剤は、前記表2に示す各成分を配合・攪拌した後、3本ロールにて分散・混練し、硬化剤を用いた。
【0070】
【表3】

【0071】
(3)リン含有光重合開始剤の検討
前記合成例1及び合成例2で得られた各ワニスを用いた表4に示す配合成分を3本ロールミルで混練し、光硬化性熱硬化性樹脂組成物の主剤を得た。また、硬化剤は、前記表2に示す各成分を配合・攪拌した後、3本ロールにて分散・混練し、硬化剤を用いた。
【0072】
【表4】

【0073】
<ドライフィルムの作製>
前記表1、表3及び表4に示される実施例1〜9及び比較例1〜7の各主剤と表2に示される硬化剤を、それぞれカルボキシル基:エポキシ基が1:1.5となる割合で混合し、光硬化性熱硬化性樹脂組成物を調製した。得られた各光硬化性熱硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて、それぞれ乾燥後膜厚が30μmになるようにPETフィルム(三菱ポリエステル社製R310:16μm)に塗布し、40〜100℃で乾燥させてドライフィルムを得た。
【0074】
<評価基板の作製>
回路形成されたFR−4基板をバフ研磨した後、上記方法で作製した各ドライフィルムを真空ラミネーター(名機製作所社製MVLP−500)を用いて0.8MPa、80℃、1分、133.3Paの条件で加熱ラミネートして各評価基板を作製した。
【0075】
(1)光重合開始剤の評価結果
前記表1の主剤と表2の硬化剤を用いて得られた各評価基板に、コダックNo.2のステップタブレットを介して露光し、キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで現像を60秒で行った際に残存するステップタブレットのパターンが3段の時を最適露光量とした。
次に、前記各評価基板に、直径80μmの円形の遮光部分が形成されたネガマスクを当て、最適露光量で露光した直後、5分後、10分後、15分後にキャリアフィルムを剥がし、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで現像を60秒で行った。得られたレジストパターンの形状を目視及び顕微鏡写真で下記の評価基準で評価した。その結果を、表5及び図1〜3に示した。
○:孔部の開口径の収縮、バリの発生等が無いもの。
△:孔部の開口径が僅かに、収縮しているもの。
×:孔部にバリが発生しているもの。
【0076】
【表5】

【0077】
(2)カルボキシル基含有感光性樹脂の評価結果
前記表3の主剤と表2の硬化剤を用いて得られた各評価基板に、コダックNo.2のステップタブレットを介して露光し、キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで現像を60秒で行った際に残存するステップタブレットのパターンが3段の時を最適露光量とした。
次に、前記各評価基板に、直径80μmの円形の遮光部分が形成されたネガマスクを当て、最適露光量で露光した直後、10分後、30分後にキャリアフィルムを剥がし、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで現像を60秒で行った。得られたレジストパターンの形状を目視及び顕微鏡写真で下記の評価基準で評価した。その結果を、表6に示した。
○:孔部の開口径の収縮、バリの発生等が無いもの。
△:孔部の開口径が僅かに、収縮しているもの。
×:孔部にバリが発生しているもの。
【0078】
【表6】

【0079】
(3)リン含有光重合開始剤の評価結果
前記表4の主剤と表2の硬化剤を用いて得られた各評価基板に、コダックNo.2のステップタブレットを介して露光し、キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで現像を60秒で行った際に残存するステップタブレットのパターンが3段の時を最適露光量とした。
次に、前記各評価基板に、直径80μmの円形の遮光部分が形成されたネガマスクを当て、最適露光量で露光した直後、10分後、30分後にキャリアフィルムを剥がし、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaで現像を60秒で行った。得られたレジストパターンの形状を目視及び顕微鏡写真で下記の評価基準で評価した。その結果を、表7に示した。
○:孔部の開口径の収縮、バリの発生等が無いもの。
△:孔部の開口径が僅かに、収縮しているもの。
×:孔部にバリが発生しているもの。
【0080】
【表7】

【0081】
表5及び図1〜図3から明らかにように、リン含有光重合開始剤を用いた実施例1では、露光直後、及び露光後放置してからキャリアフィルムを剥離し、現像した場合でも、孔部の形状は、ほぼ設計通りで、孔部の開口径の収縮やバリ等の発生が見られなかった。一方、液状のフォトソルダーレジストで一般的に使用されているα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤を用いた比較例1及び比較例2は、孔部の収縮やバリの発生が見られた。
また、表6から明らかなように、カルボキシル基含有感光性樹脂を変えても、リン含有光重合開始剤を用いたドライフィルム(実施例2〜6)の方が、一般的に使用されているα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤を用いたドライフィルム(比較例3〜7)より、孔部の形状が安定していた。
さらに、表7から明らかなように、リン含有光重合開始剤の種類を変えても、孔部の形状は、ほぼ設計通りで、孔部の開口径の収縮やバリ等の発生が見られず、経時変化も見られなかった。
尚、実施例1において、光重合禁止剤としてフェノチアジンの代わりにハイドロキノンモノメチルエーテルを用いたこと以外は、同様の成分組成にて光硬化性熱硬化性樹脂組成物を調製し評価した結果、実施例1と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】リン含有光重合開始剤(TPO)を用いたドライフィルムから、実施例1で得られた孔部の顕微鏡写真であり、a−1は露光直後、a−2は露光5分後、a−3は露光10分後、a−4は露光15分後にそれぞれキャリアフィルムを剥離し、現像した時の孔部の顕微鏡写真である。
【図2】α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(Irg−907)を用いたドライフィルムから、比較例1で得られた孔部の顕微鏡写真であり、b−1は露光直後、b−2は露光5分後、b−3は露光10分後、b−4は露光15分後にそれぞれキャリアフィルムを剥離し、現像した時の孔部の顕微鏡写真である。
【図3】α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(Irg−369)を用いたドライフィルムから、比較例2で得られた孔部の顕微鏡写真であり、c−1は露光直後、c−2は露光5分後、c−3は露光10分後、c−4は露光15分後にそれぞれキャリアフィルムを剥離し、現像した時の孔部の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部を設けたレジストパターンを形成するために用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物のドライフィルムであって、光硬化性成分及び熱硬化性成分と共に含有する光重合開始剤として、リン含有光重合開始剤を用いたことを特徴とするドライフィルム。
【請求項2】
前記リン含有光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤であることを特徴とする請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項3】
光重合禁止剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドライフィルムにより孔部を設けたソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板。
【請求項5】
フィルムを介して露光する孔部を設けたレジストパターンの形成方法に用いる光硬化性熱硬化性樹脂組成物であって、光硬化性成分及び熱硬化性成分と共に含有する光重合開始剤として、リン含有光重合開始剤を用いたことを特徴とする光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン含有光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤であることを特徴とする請求項5に記載の光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
光重合禁止剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の光硬化性熱硬化性樹脂組成物により孔部を設けたソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−169416(P2009−169416A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326567(P2008−326567)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】