説明

光触媒ガラスセラミックス及びその製造方法

【課題】製造工程での取扱いが容易であって、表面の剥離や経時劣化も少なく、高い光触媒特性を有するガラスセラミックス、及びその製造方法を提供する。特に、比較的容易な方法で所望の形状に成形できる光触媒活性が高いガラスセラミックスを提供する。
【解決手段】TiO、又はこの固溶体、から選ばれる少なくとも1種を含む結晶性組成物と、SiO成分、B成分、又はP成分から選ばれる少なくとも1種以上を含むガラス性組成物とからなるガラスセラミックスであって、該ガラス性組成物をマトリックス成分とする。結晶性組成物は、光触媒性が高い結晶型を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能を有するガラスセラミックス及びその製造方法に関し、特に、光触媒機能を有するガラスセラミックス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、光触媒機能を有する半導体にそのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーの光を照射することで生成する電子や正孔が関与することにより、酸化又は還元反応をその表面近傍で生じさせるものである。特に触媒活性の高いチタニア(TiO)を用いる表面処理は、一般によく知られている。
【0003】
例えば、光触媒作用のある部材を製造するために、表面に塗布する光触媒としての酸化チタンを高濃度に含む光触媒性塗布剤が開示されている(例えば、特許文献1)。このようにすれば、基材の機械的な特性を維持したまま、表面にのみ光触媒作用を付加することができ、非常に便利である。しかしながら、塗布やコーティングでは、塗布膜やコーティング層の耐久性が十分ではなく、使用状況により剥離が問題となる。
【0004】
一方、バルクの中に光触媒材料を入れた例として、ポリプロピレン樹脂に対して、光触媒(光触媒活性を有するのに必要な金属原子としてのチタンを有してなるアパタイト(光触媒チタンアパタイト))としての、カルシウム・チタンハイドロキシアパタイトを30質量%添加し、混練して直径3cmのボール状(球状)に成形し、破断機にかけ、篩で約5mm角に粉砕した光触媒複合材料が開示されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、これはポリプロピレン樹脂をバインダーとして、カルシウム・チタンハイドロキシアパタイトを結合させた約5mm角の複合材に過ぎない。そのため適用分野が、反応容器内に投入される触媒粒子のような分野に限られる。
【0005】
また、重量百分率(%)で、SiO、Al、CaO、MgO、B、ZrO、およびTiOを所定の組成比に選び、これらを常套の手段で溶融ガラス化して、光触媒用ガラスとしたものが開示されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、チタンイオンが後に記述するような結晶構造を取ることが無く、ガラスの中にただ酸素と結合し、アモルファスの形で存在するだけで、高い光触媒特性を示すとは言い難い。
【0006】
更に、チタニアとガラス形成酸化物とを含有する混合物を溶融して分相融液を得る工程を経て、前記分相融液をガラス化して分相ガラスを得る工程を経て、前記分相ガラス中のチタニアをアナターゼ型チタニアとして結晶化させる光触媒用組成物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、この方法では、TiO−SiOの2成分系からなり、約1780℃以上の高温で溶融し、ツインローラによる急冷を必要とするため、非常に高価となるばかりではなく、バルクやファイバー状や機械的な強度を得ることは困難である。また、ガラス粒子を結着剤で集塊させたガラス粒子集塊物を基体とし、その表面に無機物質を結合剤として光触媒粒子を固定させた光触媒体が開示されている(例えば、特許文献5)。
【特許文献1】特開2008−81712号公報
【特許文献2】特開2008−36465号公報
【特許文献3】特開平9−315837号公報
【特許文献4】特開2001−113177号公報
【特許文献5】特開2000−107608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、基材の表面に塗布若しくはコーティングする場合、基材の基本特性は使用目的にかなうものを選択することができるが、表面に付けた塗布膜等は、剥離するおそれがある。また、膜生成にはよく有機バインダーが用いられているので、紫外線、酸性雨等による経時変化や白ボケ現象が生じる問題点がある。一方、チタニア結晶と樹脂を複合化した一体型の触媒材料もあるが、上述と同様に紫外線の照射で、樹脂が分解され、又は光触媒による酸化/還元作用のため、良好な耐久性が得られ難い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、このような事情に鑑み、剥離等による耐久性の問題がなく、比較的容易な方法で所望の形状に成形でき、更に光触媒活性が高いガラスセラミックスを提供することを目的とする。より具体的には、光触媒としての活性が比較的高い無機化合物組成を結晶相として含むことを特徴とするガラスセラミックスを提供する。
【0009】
より具体的には、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1)TiO、又はこの固溶体、から選ばれる少なくとも1種を含む結晶性組成物と、SiO成分、B成分、又はP成分から選ばれる少なくとも1種以上を含むガラス性組成物とからなるガラスセラミックスであって、該ガラス性組成物をマトリックス成分とすることを特徴とするガラスセラミックス。
【0011】
ここでガラスセラミックスとは、ガラス粉末のみ又はガラス粉末と他の物質との混合物を焼結することにより緻密に作製される材料を含んでよく、また、ガラスを熱処理することによりガラス相中に結晶相を析出させて得られる材料を含んでよい。非晶質からなる相と結晶からなる相を含むことができる。前記結晶析出は、例えば、結晶の核の生成後に十分成長して結晶層が形成されると、X線回折法等により検出可能である。また、ガラスセラミックスには、結晶の粒子間や結晶中に空孔がほとんどなくガラス相すべてを結晶相に相転移させた材料、すなわち、材料中の結晶量(結晶化度)が100質量%のものを含む。
【0012】
また固溶体とは、2種類以上の金属固体または非金属固体が互いの中に原子レベルで溶け込んで全体が均一の固相になっている状態のことをいい、混晶と言う場合もある。溶質原子の溶け込み方によって、結晶格子の隙間より小さい元素が入り込む侵入型固溶体、母相原子と入れ代わって入る置換型固溶体などがある。TiOの固溶体としては、溶質物質は特に限定されず、種々のものを含むことができる。例えばTi1−XZrを挙げることができる。
【0013】
ここで、TiO、又はこの固溶体、から選ばれる少なくとも1種を含む結晶性組成物は、光触媒特性(光触媒機能)を有する。また、SiO成分、B成分、又はP成分から選ばれる少なくとも1種以上を含むガラス性組成物は、上記結晶性組成物を包み込み、ガラスセラミックスを形成する母体材料となる。これにより、所定の機械的特性を有する成形体であって、表面に現れる結晶性組成物により、耐久性のある光触媒成形体を得ることができる。
【0014】
ここで、酸化チタン(TiO)の結晶型には、一般にアナターゼ(Anatase)、ルチル(Rutile)、ブルッカイト(Brookite)の3種類がある。光触媒としては、Anataseが最も好ましい。Anatase(正方I41/amd、低温安定)は一般的には酸化硫酸チタン(硫酸チタニル)、硫酸チタン、テトラアルコキシチタン等の湿式加水分解で製造され、光触媒として利用されている。Rutile(正方P42/mmm、高温安定)は四塩化チタンの湿式加水分解、Anataseの700℃以上の高温処理等で製造され、塗料、顔料に使用される。これらに比較してBrookite(Pbca、板チタン石)の合成や用途に関する研究例は、少ない。これらの結晶型の安定性については定説がなく、結晶粒子径によって安定性が異なるとの報告もある。例えば光触媒として有効な14nm以下の粒子径ではAnataseがRutileより安定になるとの報告もある。結晶型から計算される理論密度は次のようになる。
Rutile (4.25g/cm) > Brookite (4.12g/cm) > Anatase (3.893g/cm
【0015】
TiOは、化学的に安定で毒性もないことから好適に使用される。TiOは、高い光触媒特性を発揮するアナターゼ型の結晶構造とすることが好ましく、条件によってはルチル型、ブルッカイト型であってもよい。TiOの結晶構造は、X線回折法(XRD測定法)により測定することができる。ここでバンドギャップエネルギーは、2.0eVから4.0eVまでの範囲にあることが好ましい。また、TiOの固溶体を用いることにより、TiOのバンドギャップエネルギーを調整することができる。
【0016】
その他に光触媒特性を発揮する物質として、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、及び酸化鉄(Fe)を含むことができ、これらから選択した1種又は2種以上を混合して含むことができる。
【0017】
また、ガラスセラミックには、SiO成分、B成分、又はP成分から選ばれる少なくとも1種以上を含むガラス性組成物のマトリックス成分を含むため、TiO等からなる結晶性組成物を含んだガラスセラミックスを形成することができる。
【0018】
(2)前記ガラス性組成物は、当該組成物内において、酸化物基準のモル%で、SiO成分、B成分、P成分から選ばれる少なくとも1種以上を10〜80モル%及び/又は、RO成分、RnO成分から選ばれる少なくとも1種以上を1〜70モル%(Rは、Li、Na、K、及びCsから選ばれる1種又はそれ以上。Rnは、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選ばれる1種又はそれ以上。)及び/又は、GeO成分を0〜10%及び/又は、Al成分を0〜40モル%及び/又は、ZrO成分を0〜20モル%及び/又は、TiO成分を0〜80モル%及び/又は、SnO成分を0〜10モル%及び/又は、Bi成分、TeO成分から選ばれる少なくとも1種以上を0〜60モル%及び/又は、Nb成分、Ta成分、WO成分から選ばれる少なくとも1種以上を0〜30モル%及び/又は、Ln成分を0〜30%(LnはY、Ce、La、Nd、Gd、Dy、及びYbから選ばれる1種又はそれ以上。)及び/又は、MO成分を0〜10モル%(Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種又はそれ以上。)及び/又は、As成分、Sb成分から選ばれる少なくとも1種以上を0〜5モル%含むことを特徴とする上記(1)に記載のガラスセラミックス。
【0019】
以下に本発明におけるガラス性組成物が含有し得る成分について説明する。以下は、特に記載されなければ、酸化物基準のモル%である。SiO、B、Pの各成分はガラス形成酸化物の代表的な成分であり、ガラスを得るには少なくとも1種を含まなければならない。十分な安定性のあるガラスを得て、更に高い光触媒活性を確保するためには、これら成分の1種又は2種以上の合計量を10%以上とすることが好ましく、20%以上とすることがより好ましく、30%以上とすることが最も好ましい。また、80%以下とすることが好ましく、70%以下とすることがより好ましく、65%以下とすることが最も好ましい。これらの成分の内、SiO成分がB、P成分より、熱に対して安定で、化学的耐久性を高める効果が大きいので、含有するのが好ましい。
【0020】
O成分、RnO成分から選ばれる少なくとも1種以上(Rは、Li、Na、K、及びCsから選ばれる1種又はそれ以上。Rnは、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選ばれる1種又はそれ以上。)は、ガラスのガラス転移温度(Tg)を下げるため、より低温での焼結が可能となる。しかし、その量が少ないと、ガラス転移温度(Tg)の下げが不十分となり易く、多すぎると、混合したTiO結晶との反応性が高くなり易く、その結果TiO結晶がガラスマトリックス中から消失し易くなる。従って、1〜70%とすることが好ましく、2〜65%とすることがより好ましい。
【0021】
GeO成分は、SiOと同様な働きをするので、SiOの一部または全部を置き換えることが可能であるが、高価であるため、上限値を10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが最も好ましい。
【0022】
Al成分は、化学耐久性を高め、更にTiO結晶相に固溶し、光触媒特性の向上に寄与するので、必要に応じて添加できるが、40%以下が好ましく、より好ましくは30%以下であり、更に好ましくは20%以下である。
【0023】
ZrO成分は、化学耐久性を高め、更にTiO結晶相に固溶し、光触媒特性の向上に寄与するので、必要に応じて添加できるが、20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは8%以下である。
【0024】
TiO成分は、化学耐久性を高め、更にガラスと混合したTiO結晶との反応性を抑える効果があるので、必要に応じて添加できるが、80%以下が好ましく、より好ましくは65%以下であり、更に好ましくは55%以下である。
【0025】
SnO成分は、Ti4+の還元を防ぐ効果があり、更にTiO結晶相に固溶し、光触媒特性の向上に寄与するので、必要に応じて添加できるが、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下であり、更に好ましくは3%以下である。
【0026】
Bi成分及びTeO成分はガラスのTgを大きく下げ、より低温での焼結が可能となるので、添加できるが、その量が多すぎると耐久性が低下するので、両成分の合計量の上限値を60%以下とすることが好ましく、55%以下とすることがより好ましく、50%以下とすることが最も好ましい。
【0027】
Nb成分及び/又はTa成分及び/又はWO成分は耐久性を高め、更に結晶相に固溶し、光触媒特性の向上に寄与するので、添加できるが、高価であるため、これら成分の合計量の上限値を30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましく、10%以下とすることが最も好ましい。
【0028】
Ln成分(LnはY、Ce、La、Nd、Gd、Dy、Ybから選ばれる1種又はそれ以上)は耐久性を高め、更に結晶相に固溶し、光触媒特性の向上に寄与するので、添加できるが、高価であり、また、その量が多すぎるとガラスの安定性が著しく低下するので、これら成分の合計量の上限値を30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましく、10%以下とすることが最も好ましい。
【0029】
MO成分(Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuから選ばれる1種又はそれ以上。yはMの価数を2で割った数)は結晶相に固溶し、光触媒特性の向上に効果があり、更に一部の可視光を吸収するため、デザインに合わせて所望の外観色を付与することが可能であるので、添加できる。しかし、添加量が多すぎると、ガラスの安定性が悪くなり、可視光の吸収が強すぎて外観の色調節が困難となるので、これらの成分の合計量の上限値を10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが最も好ましい。
【0030】
As成分、Sb成分は、ガラスの泡切れに寄与するので、必要に応じて含ませることができるが、5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下である。
【0031】
また、ガラスセラミックスの組成には、環境や人体に対して害を与える可能性のあるPb、Cd、Hgなどの成分もできる限り含有しないほうが望ましい。
【0032】
(3)更に、フッ素及び/又は塩素を含む上記(1)又は(2)に記載のガラスセラミックス。
【0033】
フッ素及び/又は塩素のようなハロゲン元素は、上記ガラス組成物中に含まれるとガラス転移温度(Tg)を大きく下げ、より低温での焼結が可能となるので、添加できるが、その量が多すぎると耐久性が低下するので、合計量の上限値を60%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましく、40%以下とすることが最も好ましい。ここでハロゲン元素の含有量は、ガラスを構成するカチオン成分全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス全体のモル数を100%として、ハロゲン元素イオンのモル数を表したものである。なお、ハロゲン元素はアルカリ金属またはアルカリ土類金属との化合物の形で導入するのが好ましい。
【0034】
(4)前記結晶性組成物を3重量%〜98重量%、前記ガラス性組成物を2重量%〜97重量%含むことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0035】
結晶性組成物は、光触媒機能に寄与するが、ガラスセラミックスの強度等の機械的特性にあまり寄与しないので、その組成物の適正な量がある。即ち、結晶性組成物は、良好な光触媒特性を得るために重量パーセントで、3%以上が好ましく、より好ましくは4%以上であり、更に好ましくは5%以上である。一方、良好な機械的な強度を得るためには、この成分は、重量パーセントで、98%以下が好ましく、より好ましくは97%以下であり、更に好ましくは95%以下である。
【0036】
逆に、ガラス性組成物は、良好な機械的な強度を得るためには重量パーセントで、2%以上が好ましく、より好ましくは3%以上であり、更に好ましくは5%以上である。一方、良好な光触媒特性を得るために、この成分は、重量パーセントで、97%以下が好ましく、より好ましくは96%以下であり、更に好ましくは95%以下である。
【0037】
(5)前記ガラス性組成物からなるマトリックス内で、前記結晶性組成物は結晶相として所定の大きさを有し、球近似したときの平均径が、3nm〜50μmであることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0038】
前記結晶性組成物のマトリックス内での結晶相は粒径が小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので、結晶相は球近似したときの平均径が50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が最も好ましい。また、あまりに小さくすると、結晶性を保つことが難しくなり光触媒特性が低下するおそれがあるので、結晶相の球近似平均径は3nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、5nm以上が最も好ましい。また、ガラスセラミックス表面全体で光触媒特性を均一にするために、結晶性組成物の結晶相は均一の大きさに揃っていることが好ましいが、表面全体で光触媒特性が均一可能であれば、結晶性組成物は異なる大きさの結晶相を含んでよい。
【0039】
(6)前記ガラス性組成物のガラス転移温度(Tg)が、200℃〜850℃の範囲内にあることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0040】
ガラス性組成物のガラス転移温度(Tg)は、焼結温度を決めるファクターである。ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、焼結のための温度を高くするので、光触媒活性の高いアナターゼ結晶が光触媒活性の低いルチルに変り易くなる。従って、高い光触媒活性を得るためにガラス転移温度(Tg)の範囲を850℃以下とすることが好ましく、800℃以下とすることがより好ましく、750℃以下とすることが最も好ましい。一方、Tgが低すぎると、ガラスの化学耐久性が低下し、できたガラスセラミックスの特性の経時劣化が起こってしまうので、高い耐久性を得るためにはガラス転移温度(Tg)の範囲を200℃以上とすることが好ましく、300℃以上とすることがより好ましく、450℃以上とすることが最も好ましい。
【0041】
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、非晶質(若しくはガラス)固体材料にガラス転移が起きる温度である。非晶質の固体は、低温では結晶同様に堅く(剛性率が大きく)、粘度が測定不可能なほど大きいが、加熱していくと、ある狭い温度範囲で急速に剛性と粘度が低下する。このような温度がガラス転移温度とされる。ガラス転移温度より低温の非晶質状態をガラス状態といい、ガラス転移温度より高温では液体又はゴム状態である。このガラス転移温度は、被測定物の温度をゆっくりと上昇又は下降させながら力学的物性の変化を測定する(TMA等)の方法や、吸熱や発熱を測定する(DSC、DTA等)の方法や、メカニカルスペクトロスコピー(動的粘弾性測定)による方法等が一般に知られている。本願では、DTAという方法を用いて、ガラス転移温度を測定する。
【0042】
(7)前記結晶性組成物の前記ガラス性組成物からなるマトリックスに対する表面の面積比が、前記結晶性組成物の前記ガラス性組成物からなるマトリックスに対する内部の体積比より高いことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0043】
結晶性組成物のガラス性組成物からなるマトリックスに対する、表面の面積比を内部の体積比より高くすると、結晶性組成物をガラスセラミックスの内部よりも表面に多く形成させることになる。面積比は、例えば透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、プローブ顕微鏡等を使用した画像解析による方法で前記結晶性組成物の面積を求めることにより計算することができる。
【0044】
(8)紫外線から可視光までの光に応答し、光触媒特性を有する上記(1)から(7)のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【0045】
ここで、紫外線は、波長が可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波を意味してよく、例えば、波長が10〜400nmの電磁波を意味することができる。また、可視光は、電磁波のうち、人間の目で見える波長の電磁波を意味してよく、例えば、その範囲は、およそ400nm〜700nmである。このような範囲の波長の光をTiOを含むガラスセラミックスの表面に照射すると、ガラスセラミックスは、光触媒特性を発揮し、防汚作用や抗菌作用等に利用することができる。
【0046】
TiO結晶は紫外線の照射に対して高い触媒効果を示すが、可視光に対する応答性は紫外線より弱い。本発明では、後で述べるように熱処理の過程で他のイオンをTiO結晶相に固溶させることにより、TiOのバンドギャップエネルギーを小さくすることができるため、可視光に対しても有効な応答効果を示すガラスセラミックスを得ることが可能である。また、このような効果により本発明のガラスセラミックスは幅広い用途に適用できる。
【0047】
(9)上記(1)から(8)のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法であって、前記結晶性組成物と前記ガラス性組成物を含む原料組成物を混合する混合工程と、混合組成物を成形する成形工程と、その混合組成物を前記ガラス性組成物のガラス転移温度(Tg)より50〜600℃高い温度に保持する焼成工程とを含むことを特徴とするガラスセラミックスの製造方法。
【0048】
ここで、混合工程には、秤量した原料組成物を均一に混ぜ合わせる工程を含むことができる。混合工程は、乳鉢により手で、或いはボールミル・遊星回転ボールミル等の装置により行うことができる。なお、混合工程の前には、各原料組成物を準備する準備工程を含むことができる。
【0049】
また、混合工程において、成形性を考慮して各原料組成物を仮接着させるために有機バインダーを加えて混ぜ合わせてもよい。有機バインダーとしては、原料組成物と化学反応を起こさず、ガラスと結晶性組成物の原料物質の仮接着が可能であればよい。なお、二酸化チタン(TiO)を有機バインダーで仮接着させた場合、光触媒特性を有する二酸化チタン(TiO)にバインダー自体が分解される可能性はあるが、損なわれる接着剤の量が無視できる程度であれば、バインダーとして使用することができる。ここでは成形助剤として市販されている汎用のバインダーを用いることができる。具体的な有機バインダーには、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチルメタアクリレート、ビニル系の共重合物等を挙げることができる。
【0050】
成形工程には、型に入れ加圧するプレス成形、溶かした状態で型に入れる鋳込み成形等を含むことができる。例えば、混合組成物を型に入れ常圧でペレット状に成形することも含まれる。
【0051】
焼成工程は、主に、成型した混合組成物を構成する無機物の粒子を焼き固める目的で行われ、また原料中のミクロンオーダーの酸化チタン(TiO)粒子を周りのガラスと反応させて、ナノオーダーの小さな粒子にする目的で行われてもよい。焼成工程では、大きな焼成炉を用いることにより、多量の混合組成物を同時に焼き固めることができるので、光触媒機能を有するガラスセラミックスを一度で多量に作製することができる。焼成温度は、主にガラス組成物のガラス転移温度(Tg)により決定することができる。十分な強度を有するガラスセラミックスを得るために、また、ガラスとTiO結晶を反応させ、デザインしたTiO結晶サイズを得るために、Tgより50℃以上高い焼結温度が好ましい。より好ましい下限値はTg+100℃であり、最も好ましくはTg+150℃である。一方焼結温度が高くなりすぎるとガラスマトリックスとTiO結晶との反応性が高くなり易く、光触媒特性が消失し易くなるので、Tg+600℃以下が好ましく、Tg+500℃以下がより好ましく、Tg+400℃以下が最も好ましい。
【0052】
焼成工程には、被焼成物に予熱を加える工程、設定温度にゆっくりと昇温する工程、設定温度で一定時間保持する工程、徐冷して室温近くまで温度を下げる工程を含んでよい。焼成工程の前には、必要であれば脱脂工程を含むことができ、前記予熱工程を脱脂工程とすることもできる。脱脂工程とは、混合組成物を焼成工程より低い温度で処理し、構成する無機物以外の有機バインダー等の成分をガス化して混合組成物から排出する工程をいう。焼成工程と脱脂工程いずれにおいても炉内の雰囲気を一定に保つため、吸排気を行うことが好ましい。焼成工程及び脱脂工程は、ガス炉、マイクロ波炉などの公知の焼成炉を用いて行えばよいが、環境・炉内温度分布・コストなどの理由から電気炉を用いることが好ましい。焼成工程及び脱脂工程の雰囲気は、特に限定されないが、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気、酸化ガス雰囲気、あるいは上記雰囲気の組み合わせから選ばれる。
【0053】
(10)前記混合組成物は分散媒を有することを特徴とする、上記(9)に記載のガラスセラミックスの製造方法。
【0054】
本発明の混合組成物は原料組成物を均一に分散させるための分散媒を含むことができる。該分散媒は原料組成物を高分散することができるものであれば特に限定されない。例えば、有機分散媒を用いることができ、具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、セロソルブ、カルビトール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミル等のエステル類等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。また、必要であれば、上記分散媒に対する光触媒微粒子の分散性を向上するために分散剤を添加することができる。分散剤としては光触媒微粒子の分散性を向上することができれば特に限定されない。
【0055】
(11)前記成形工程において、混合組成物をシート状に成形することを特徴とする、上記(9)又は(10)に記載のガラスセラミックスの製造方法。
【0056】
また、シート状の成形には、セラミックスのシートの作製に一般的であるグリーンシートを成形する手段を用いて所定の厚み・寸法で成形することを含む。また、大きなグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施し、小さなグリーンシートを複数枚作成することを含む。この焼成前のグリーンシートは柔軟であり、任意の形状に切断することや、積層することも可能である。ここで、グリーンシートとは、焼成前のガラスや無機酸化物等のセラミックスの主に粉体に対して、有機バインダー、可塑剤、溶剤等を混合させて混合スラリーとして、これを薄板状に成形した未焼成体を意味することができる。この成形は、ドクターブレードやカレンダ法、スピンコートやディップコーティングなどの塗布法、インクジェット、バブルジェット(登録商標)、オフセットなどの印刷法、ダイコーター法、スプレー法、射出成型法、押し出し成形法、圧延法、プレス成形法、ロール成型法等により混合スラリーから薄板状のグリーンシートを作ることができる。
【0057】
(12)前記原料組成物は、所定の大きさのTiO粒子を含み、前記焼成工程において、前記TiO粒子の大きさを、球近似したときの平均径が、5nm〜100μmとすることを特徴とする上記(9)から(11)のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法。
【0058】
TiO粒子は光触媒特性を有してよく、粒径が小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので、TiO粒子の粒径は、球近似したときの平均径が100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。また、あまりに小さくすると取扱が容易でなく、更に焼結の際にガラスと反応し、消えてしまうおそれがあるので、前記TiO粒子の粒径は、球近似したときの平均径が5nm以上が好ましく、8nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。また、分散を均一にするために、TiO粒子は均一の大きさに揃っていることが好ましいが、分散が均一可能であれば、異なる粒径のTiO粒子を含んでよい。
【0059】
(13)前記焼成工程の焼成時間は20分〜20時間である、上記(9)から(12)のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法。
【0060】
焼成時間を20分〜20時間にし、前記焼成温度にすることにより、前記混合組成物から、ガラス性組成物中に結晶性組成物が結晶化したガラスセラミックスを作製することができる。焼成時間とは、焼成工程中における、一定の焼成温度で保持する時間をいう。焼成時間は、被焼成物の混合組成、体積等により求められるが、20分以下では、十分に焼成しないおそれがあり、20時間以上では、混合組成物中のTiO結晶がガラスとの反応が進み、結晶粒径が小さくなり過ぎて、ガラスセラミックス中に光触媒機能を発揮するために十分な大きさのTiOの結晶が得られないおそれがある。
【0061】
(14)更に、表面を酸又はアルカリによりエッチングする工程を含むことを特徴とする上記(9)から(13)のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法。
【0062】
ここで、エッチング工程とは、ガラスセラミックスの表面を腐食除去することにより、TiO粒子の露出の向上を図り、光触媒特性を向上させるための工程である。ここで、エッチングには、ガラスセラミックスの表面を腐食可能な酸、例えばフッ素又は塩素を含む酸を用いることができる。具体的には、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、フッ化水素酸、塩酸をガラスセラミックスの表面に吹き付けてよく、またフッ化水素酸、塩酸にガラスセラミックスを浸漬させてよい。また、これらの酸、エッチング方法を組み合わせて処理してもよい。
【0063】
(15)上記(1)から(8)のいずれかに記載のガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体。
【0064】
ここでは成形体の全部又は一部の表面に、上記(1)から(8)のガラスセラミックスを含むことにより、光触媒機能を有するガラスセラミック成形体を提供することができる。すなわち、上記(1)から(8)のガラスセラミックスは、外界に暴されて有機物などの付着によって汚染したり、又は菌類が浮遊し易い雰囲気などで使用する機械、装置、器具類などのガラス製構造体に用いることができ、例えば光触媒機能を有するタイル、窓枠、建材等に利用することができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、TiO等を含む結晶性組成物と、SiO成分等を含むガラス性組成物とからなるガラスセラミックスであって、該ガラス性組成物をマトリックス成分とすることにより、ガラスセラミックス自体に光触媒特性を持たせることができる。従って、ガラスセラミックス表面の破損に伴う、光触媒特性の経時劣化を防ぐことができる。また、焼成工程を行うことにより、表面にナノオーダー又はミクロン単位のTiO結晶を有するガラスセラミックスを一度で多量に作製することができるので、製造及び取扱いが容易で、かつ高い光触媒特性を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明の実施例について詳しく説明するが、以下の記載は、本発明の実施例を説明するためになされるもので、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
[ガラス性組成物の準備]
表1に示すようなガラス組成物の設計組成となるように、市販の原料を秤量した。
この混合原料を均一に混合し、白金ポットに入れ、電気炉中で大気中で1200℃〜1450℃で3時間溶解した。その後、均一になったガラス融液を水中にキャストさせることにより、フレーク状のガラスを得た。このガラスフレークをボールミルで粉砕し、平均粒径100μm以下のガラス微粒子からなるガラス性組成物粉末を得た。
【0068】
それぞれのガラス性組成物のガラス転移温度(Tg)はDTAを用いて10K/minの昇温速度で測定した。その結果を表に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】



【0071】
[焼結用混合粉末の準備・焼結]
上述のガラス性組成物粉末とアナターゼ型結晶が100%の二酸化チタン(サイズが10μm以下)を、表2に示す割合で秤量した。この混合粉末をボールミルで均一に混合してから、ペレット状に成形した。更にペレットを、表2の温度及び時間で電気炉中で大気雰囲気で焼成し、目的のガラスセラミックスを得た。
【0072】
[X線回折結果]
X線回折装置を用いて、結晶相を同定した結果を表2に示す。いずれのサンプルにもTiO結晶相の存在が確認されたが、焼結温度が高くなると、アナターゼからルチルへの相転移が起こった。SiOを出発原料としたサンプル(ガラスAとB)はBを含有したもの(ガラスCとD)に比べて、ルチルへの相転移の起こる焼結温度が少なくとも50℃高いことから、アナターゼ結晶相を得るには、SiOを含有するガラスの方がより有利であることが分かる。
【0073】
例としていくつかのサンプルのXRDパターンを図1と2に示す。図中に二重丸で示しているピークはアナターゼ型結晶によるものを、丸で示しているピークはルチル型結晶によるものである。尚、バツ印で示しているピークは未知相であるが、ガラス自身の結晶化またはガラスと出発原料のTiOとの反応により生成した結晶相によるものと考えられる。
【0074】
図1から見られるように900℃以下では主相がアナターゼ型TiOであることがわかったが、1000℃ではほぼルチル型TiOに変わった。従って、アナターゼ結晶相を得るためには、焼結温度は1000℃以下とすることが好ましいと考えられる。また図2から、出発原料の配合比によらず750℃の焼成温度においては得られた結晶相がほぼアナターゼ単相からなることが分かる。
【0075】
[光触媒評価]
光触媒特性は光触媒製品技術協議会が策定した光触媒性能評価法Iにより評価した。すなわち、色素の脱色によって光触媒の性能を評価する手法で本発明のサンプルを評価した。上記の実施例サンプルの表面にメチレンブルーの溶液を滴下し、紫外線を照射後の色を観察したところ、いずれも脱色が認められた。これによって本発明のサンプルは光触媒特性を示すことが示された。また、アナターゼ結晶相を含有するサンプルはルチル結晶相を含有するものより、脱色速度が速く、より高い光触媒特性を有した。また、フッ酸でサンプルの表面をエッチングすると、より高い光触媒活性を示すことが確認された。
【0076】
[光触媒ガラスセラミックスの応用]
以上述べてきたように、簡単な焼結により酸化チタンを多く含むガラスセラミックスを得ることができる。焼結温度により好ましい結晶型を得ることも可能である。ここでは、ペレット状に成形しただけであるが、種々の形状に成形できることは言うまでもない。それぞれの成形体の機械的特性や化学的特性は、本発明の組成の範囲内で適宜好ましい組成を選択することにより実現可能である。
【0077】
以上のように、本発明のガラスセラミックスにより、好ましい機械特性を持ち、かつ、剥離等による光触媒機能の劣化を生じることのない光触媒成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】TiO:60wt%とガラスA:40wt%を含有する混合物を各種温度で焼成した後のXRDパターンである。
【図2】アナダーゼTiOとガラスBとの異なる混合比率で配合した混合物を750℃で焼成した後のXRDパターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiO、又はこの固溶体、から選ばれる少なくとも1種を含む結晶性組成物と、SiO成分、B成分、又はP成分から選ばれる少なくとも1種以上を含むガラス性組成物とからなるガラスセラミックスであって、該ガラス性組成物をマトリックス成分とすることを特徴とするガラスセラミックス。
【請求項2】
前記ガラス性組成物は、当該組成物内において、酸化物基準のモル%で、
SiO成分、B成分、又はP成分から選ばれる少なくとも1種以上を10〜80モル%及び/又は、
O成分、RnO成分から選ばれる少なくとも1種以上を1〜70モル%(Rは、Li、Na、K、及びCsから選ばれる1種又はそれ以上。Rnは、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選ばれる1種又はそれ以上。)及び/又は、
GeO成分を0〜10%及び/又は、
Al成分を0〜40モル%及び/又は、
ZrO成分を0〜20モル%及び/又は、
TiO成分を0〜80モル%及び/又は、
SnO成分を0〜10モル%及び/又は、
Bi成分、TeO成分から選ばれる少なくとも1種以上を0〜60モル%及び/又は、
Nb成分、Ta成分、WO成分から選ばれる少なくとも1種以上を0〜30モル%及び/又は、
Ln成分を0〜30%(LnはY、Ce、La、Nd、Gd、Dy、及びYbから選ばれる1種又はそれ以上。)及び/又は、
MO成分を0〜10モル%(Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種又はそれ以上。)及び/又は、
As成分、Sb成分から選ばれる少なくとも1種以上を0〜5モル%
を含むことを特徴とする請求項1に記載のガラスセラミックス。
【請求項3】
更に、フッ素及び/又は塩素を含む請求項1又は2に記載のガラスセラミックス。
【請求項4】
前記結晶性組成物を3重量%〜98重量%、前記ガラス性組成物を2重量%〜97重量%含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【請求項5】
前記ガラス性組成物からなるマトリックス内で、前記結晶性組成物は結晶相として所定の大きさを有し、球近似したときの平均径が、3nm〜50μmであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【請求項6】
前記ガラス性組成物のガラス転移温度(Tg)が、200℃〜850℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【請求項7】
前記結晶性組成物の前記ガラス性組成物からなるマトリックスに対する表面の面積比が、前記結晶性組成物の前記ガラス性組成物からなるマトリックスに対する内部の体積比より高いことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【請求項8】
紫外線から可視光までの光に応答する光触媒特性を有する請求項1から7のいずれかに記載のガラスセラミックス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法であって、前記結晶性組成物と前記ガラス性組成物を含む原料組成物を混合する混合工程と、混合組成物を成形する成形工程と、その混合組成物を前記ガラス性組成物のガラス転移温度(Tg)より50〜600℃高い温度に保持する焼成工程とを含むことを特徴とするガラスセラミックスの製造方法。
【請求項10】
前記混合組成物は分散媒を有することを特徴とする、請求項9に記載のガラスセラミックスの製造方法。
【請求項11】
前記成形工程において、混合組成物をシート状に成形することを特徴とする、請求項9又は10に記載のガラスセラミックスの製造方法。
【請求項12】
前記原料組成物は、所定の大きさのTiO粒子を含み、前記焼成工程において、前記TiO粒子の大きさを、球近似したときの平均径が、5nm〜100μmとすることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法。
【請求項13】
前記焼成工程の焼成時間は20分〜20時間である、請求項9から12のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法。
【請求項14】
更に、表面を酸又はアルカリによりエッチングする工程を含むことを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載のガラスセラミックスの製造方法。
【請求項15】
請求項1から8のいずれかに記載のガラスセラミックスを含む光触媒機能性成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263179(P2009−263179A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116460(P2008−116460)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】