説明

光触媒コートが施された外装面の清掃方法およびその装置

【課題】 日光(紫外線)が当らなかったり、雨水が少ないなどのセルフクリーニング作用が発揮されない要因があっても光触媒コートが施された外装面をそのセルフクリーニング作用を利用して清掃することで、従来の清掃手段で発生する光触媒コートの損傷や剥離を防止でき、効率的に清掃することができる光触媒コートが施された外装面の清掃方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】 清掃範囲閉塞手段13で光触媒コートが施された外装面Wの清掃範囲を囲って閉塞空間を形成し、外装面Wに紫外線照射手段15で清掃の際に紫外線を照射することで、光触媒を活性化して付着した汚れの付着力を弱め、散水手段18で水膜を形成するよう散水して上方から下方に洗い流すことで、外装面Wを清浄するようにしている。そして、水膜で洗い流した清浄面Wに水切り乾燥手段22でエアを吹き付けて水切りと乾燥を行い、埃などの汚れの再付着を防止し、さらに、散水回収循環手段23で汚水を回収してフィルタで汚れを除去して循環し、最小限の水で清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光触媒コートが施された外装面の清掃方法およびその装置に関し、建築物などの構造物の外壁やガラスなどの外装面の汚れを防止するためセルフクリーニング作用のある光触媒コートを施した外装面をセルフクリーニング作用を利用して清掃できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物などの構造物の外壁やガラスなどの外装面の汚れを防止するためセルフクリーニング作用のある光触媒コートを施すことが提案され、一部実用化されている。
【0003】
このような外装面に施す光触媒コートは二酸化チタンの化学反応によるセルフクリーニング作用を利用するもので、例えばガラス面に光触媒コートを設けた場合には、光(紫外線)が当ると光触媒の表面に活性酸素が発生し、ガラス面に付着した汚れを活性酸素が分解し、付着力を弱め、付着力が弱くなった汚れが雨水によって流されることでセルフクリーニングが可能となる(特許文献1など)。
【0004】
したがって、セルフクリーニング作用が発揮されない条件として、いくつかの要因がある。
まず、汚れ成分が無機物の場合には理論上、分解することができないこと、日光(紫外線)が当らない面では、化学反応が起きず、効果が発揮されないこと、雨水がかからなかったり、雨水が少量で洗い流せない場合は、逆に汚れが酷くなることを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−320240号公報
【特許文献2】特開2009−138125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような要因から光触媒コートを施した外装面でも上記要因のほか、その耐久性や防汚性はある程度、手を入れてメインテナンスしないと、これまでのガラスと同等な清掃した状態にすることはできないという問題があることが分かった。
【0007】
一方、これまでのガラス面の清掃のように少量の水を表面に散水し、ブラシやへら等で掻き落として汚水と汚れを回収する清掃では、ガラス面の光触媒コートが損傷したり、剥離してしまう恐れがあり、一層セルフクリーニング作用が発揮できなくなるという問題がある。
【0008】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、日光(紫外線)が当らなかったり、雨水が少ないなどのセルフクリーニング作用が発揮されない要因があっても光触媒コートが施された外装面をそのセルフクリーニング作用を利用して清掃することで、光触媒コートの損傷や剥離を防止でき、効率的に清掃することができる光触媒コートが施された外装面の清掃方法およびその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法は、光触媒コートが施された外装面に清掃範囲を定めて閉塞空間を形成し、この閉塞空間の前記外装面に紫外線を照射した後、当該外装面の上方から下方に水膜が形成されるように散水して洗い流すようにし、水膜が形成された外装面に、エアを吹き付けて水切り・乾燥させた後、散水した水を回収して循環するようにし、次いで、前記閉塞空間を移動して清掃するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
この発明の請求項2記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法は、請求項1記載の構成に加え、前記清掃範囲の周囲をエアクッションで囲って閉塞空間を形成するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
この発明の請求項3記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法は、請求項1または2記載の構成に加え、前記紫外線照射を、紫外線ランプの周りに設けた反射板を揺動させて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項4記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記水膜を形成する散水を、散水ノズルを揺動させて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項5記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記エアの吹き付けと、前記散水の回収とを、送風手段の吸排気系を利用して行うようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項6記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置は、光触媒コートが施された外装面の清掃範囲を囲って閉塞空間を形成する清掃範囲閉塞手段と、この清掃範囲閉塞手段で囲まれた前記外装面に紫外線を照射して光触媒コートを活性化する紫外線照射手段と、この紫外線照射手段で活性化された当該外装面に水膜が形成されるように散水して洗い流す散水手段と、この散水手段で洗い流された前記外装面に、エアを吹き付けて水切り・乾燥させる水切り乾燥手段と、この水切り乾燥手段で流下する散水を回収するとともに、循環させる散水回収循環手段と、を清掃装置本体に備えてなることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項7記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置は、請求項6記載の構成に加え、前記清掃範囲閉塞手段を、前記清掃装置本体の周囲に設けられるエアクッションで構成したことを特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項8記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置は、請求項6または7記載の構成に加え、前記紫外線照射手段を、紫外線ランプと、その周りに設けた反射板と、この反射板を揺動させる揺動機構とで構成したことを特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項9記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置は、請求項6〜8のいずれかに記載の構成に加え、前記散水手段を、水タンクと、ポンプと、散水ノズルと、この散水ノズルを揺動させる揺動機構とで構成したことを特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項10記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置は、請求項6〜9のいずれかに記載の構成に加え、前記水切り乾燥手段と前記散水回収循環手段とを、送風手段の吸排気系を利用して行うよう構成したことを特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項11記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置は、請求項6〜10のいずれかに記載の構成に加え、前記清掃装置本体に、昇降させる昇降機構に設けて前記清掃範囲を移動することを繰り返して清掃可能に構成したことを特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項12記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置は、請求項6〜11のいずれかに記載の構成に加え、前記清掃装置本体に、光触媒コートが施された前記外装面を監視するCCDカメラを設けて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明の請求項1記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、光触媒コートが施された外装面に清掃範囲を定めて閉塞空間を形成し、この閉塞空間の前記外装面に紫外線を照射した後、当該外装面の上方から下方に水膜が形成されるように散水して洗い流すようにし、水膜が形成された外装面に、エアを吹き付けて水切り・乾燥させた後、散水した水を回収して循環するようにし、次いで、前記閉塞空間を移動して清掃するようにしたので、光触媒コートが施された外装面に、清掃の際に紫外線を照射することで、光触媒を活性化して付着した汚れの付着力を弱めることができ、この状態で水膜を形成するよう散水して上方から下方に洗い流すことで、外装面を清浄にすることができる。また、水膜で洗い流した清浄面にエアを吹き付けて水切りと乾燥を行うことで外装面に再び埃などの汚れの再付着を防止することができる。さらに、散水に用いた水は回収して(フィルタなどで汚れを除去して)循環して使用することで、清掃に必要な水を最小限とすることができる。また、清掃範囲を定めて閉塞空間とする清掃面を移動しながら清掃を行うことで、清掃の必要な全範囲を清掃することができる。
これにより、日光(紫外線)が当らなかったり、雨水が少ないなどのセルフクリーニング作用が発揮されない要因があっても清掃の際に紫外線を照射して光触媒コートが施された外装面をそのセルフクリーニング作用を利用して清掃することができ、光触媒コートの損傷や剥離を防止することができるとともに、効率的に清掃することができる。
【0022】
この発明の請求項2記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、前記清掃範囲の周囲をエアクッションで囲って閉塞空間を形成するようにしたので、エアクッションを用いて清掃範囲を設定する閉塞空間を簡単に作り出すことができ、汚れや水などの飛散を防止して清掃することができる。
【0023】
この発明の請求項3記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、前記紫外線照射を、紫外線ランプの周りに設けた反射板を揺動させて行うようにしたので、揺動する反射板で紫外線ランプからの紫外線を広範囲に照射することができ、効率よく清掃することができる。
【0024】
この発明の請求項4記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、前記水膜を形成する散水を、散水ノズルを揺動させて行うようにしたので、揺動させた散水ノズルから散水させて水膜を形成することができ、最小限の水で水膜を形成して効率よく清掃することができる。
【0025】
この発明の請求項5記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、前記エアの吹き付けと、前記散水の回収とを、送風手段の吸排気系を利用して行うようにしたので、エアの吹き付けを送風手段の排気系で行い、散水の回収を送風手段の吸気系で行うことで、一基の送風手段で清掃することができる。
【0026】
この発明の請求項6記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置によれば、光触媒コートが施された外装面の清掃範囲を囲って閉塞空間を形成する清掃範囲閉塞手段と、この清掃範囲閉塞手段で囲まれた前記外装面に紫外線を照射して光触媒コートを活性化する紫外線照射手段と、この紫外線照射手段で活性化された当該外装面に水膜が形成されるように散水して洗い流す散水手段と、この散水手段で洗い流された前記外装面に、エアを吹き付けて水切り・乾燥させる水切り乾燥手段と、この水切り乾燥手段で流下する散水を回収するとともに、循環させる散水回収循環手段と、を清掃装置本体に備えてなるので、清掃範囲閉塞手段で光触媒コートが施された外装面の清掃範囲を囲って閉塞空間を形成することができ、光触媒コートが施された外装面に紫外線照射手段で清掃の際に紫外線を照射することで、光触媒を活性化して付着した汚れの付着力を弱めることができ、この状態で散水手段で水膜を形成するよう散水して上方から下方に洗い流すことで、外装面を清浄にすることができる。また、水膜で洗い流した清浄面に水切り乾燥手段でエアを吹き付けて水切りと乾燥を行うことで外装面に再び埃などの汚れの再付着を防止することができる。さらに、散水回収循環手段で散水に用いた水を回収して(フィルタなどで汚れを除去して)循環して使用することで、清掃に必要な水を最小限とすることができる。
これにより、日光(紫外線)が当らなかったり、雨水が少ないなどのセルフクリーニング作用が発揮されない要因があっても清掃の際に紫外線を照射して光触媒コートが施された外装面をそのセルフクリーニング作用を利用して清掃することができ、光触媒コートの損傷や剥離を防止することができるとともに、効率的に清掃することができる。
【0027】
この発明の請求項7記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置によれば、前記清掃範囲閉塞手段を、前記清掃装置本体の周囲に設けられるエアクッションで構成したので、エアクッションで構成した清掃範囲閉塞手段で清掃範囲を設定する閉塞空間を簡単に作り出すことができ、汚れや水などの飛散を防止して清掃することができる。
【0028】
この発明の請求項8記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置によれば、前記紫外線照射手段を、紫外線ランプと、その周りに設けた反射板と、この反射板を揺動させる揺動機構とで構成したので、揺動する反射板で紫外線ランプからの紫外線を広範囲に照射することができ、効率よく清掃することができる。
【0029】
この発明の請求項9記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置によれば、前記散水手段を、水タンクと、ポンプと、散水ノズルと、この散水ノズルを揺動させる揺動機構とで構成したので、揺動機構で揺動させた散水手段の散水ノズルに、水タンクと、ポンプとから給水して散水させることで、水膜を形成することができ、最小限の水で水膜を形成して効率よく清掃することができる。
【0030】
この発明の請求項10記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置によれば、前記水切り乾燥手段と前記散水回収循環手段とを、送風手段の吸排気系を利用して行うよう構成したので、エアを吹き付ける水切り乾燥手段を送風手段の排気系で行い、散水の回収を行う散水回収循環手段を送風手段の吸気系で行うことで、一基の送風手段で水切り乾燥と散水の回収とを行うことができ、コンパクトな装置で清掃することができる。
【0031】
この発明の請求項11記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置によれば、前記清掃装置本体に、昇降させる昇降機構に設けて前記清掃範囲を移動することを繰り返して清掃可能に構成したので、昇降位置を変えることで、清掃範囲を定めて閉塞空間とする清掃面を移動しながら清掃を行うことができ、清掃の必要な全範囲を昇降移動によって清掃することができる。
【0032】
この発明の請求項12記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置によれば、前記清掃装置本体に、光触媒コートが施された前記外装面を監視するCCDカメラを設けて構成したので、CCDカメラで監視することで、清掃と同時に外装面の状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の光触媒コートが施された外装面の清掃装置の一実施の形態にかかる作業前の概略側断面図である。
【図2】この発明の光触媒コートが施された外装面の清掃装置の一実施の形態にかかる作業状態の概略側断面図である。
【図3】この発明の光触媒コートが施された外装面の清掃装置の一実施の形態にかかる正面図、平断面図および右側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の光触媒コートが施された外装面の清掃装置の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
この光触媒コートが施された外装面の清掃では、光触媒コートが施された窓ガラスなどの外装面Wに、清掃のために紫外線を照射し、光触媒を活性化させて付着した汚れの付着力を弱め、水膜を形成するように散水して洗い流した後、水切りと乾燥を行って再び汚れが付着することを防止するようにして清掃するものであり、通常の少量の水を掛けてブラシやへらで掻き落とすものとは異なり、外装面の光触媒コートを利用して洗い流すようにして清掃するものである。
【0035】
このような清掃方法を行う光触媒コートが施された外装面の清掃装置1は、清掃に必要な各手段や機器などが搭載される清掃装置本体10を備えており、窓ガラスなどの被清掃面である外装面Wと対向する正面が開口した矩形の箱状に構成されている。
【0036】
この清掃装置本体10は、図示省略したが、構造物の屋上などに設置されるルーフカーに設けた巻取装置で構成された昇降機構を構成する吊りワイヤ11を介して吊り下げられ、巻取装置による巻上げ、巻戻しで昇降されるようになっている。
また、この清掃装置本体10には、開口部の四隅に被清掃面である外装面に予め設置されたガイドレールに沿ってガイドするガイド機構12が設けられ、水平回転軸が直交する走行輪とガイド輪とを組合わせて昇降方向両側である左右および外装面Wに対する接近離反方向である前後のガイドができるようにしてある。
【0037】
なお、清掃装置本体の昇降機構としては、清掃装置本体内に設けたワインダ(無端巻取装置)に巻き掛けて巻き掛け位置を移動しながら昇降する機構としたり、昇降に加え、横方向への移動も可能とする横行機構を組合わせて設けるようにすることもできる。また、ガイド機構は、予め設置されたガイドレールを利用するもののほか、清掃装置本体に真空吸着パッドなどを搭載して吸着位置を移動するなどでガイドや清掃装置本体を支持する機構とすることもできる。
【0038】
このような昇降移動される清掃装置本体10には、1回分の清掃範囲を囲って閉塞される空間(閉塞空間)を形成するための清掃範囲閉塞手段13としてエアクッション14が清掃装置本体10の開口の周囲に取り付けてある。
このエアクッション14は、中空体の内部にエアを供給することで膨らませて外装面Wと清掃装置本体10との間を密閉状態にし、空気を排出することで収縮させて外装面Wと清掃装置本体10との間に空間を確保して移動可能とする。このエアクッション14は4辺に一気室で構成したものを配置したり、各辺ごとに気室を区分して配置するもののいずれでも良い。
【0039】
このようなエアクッション14で囲まれた閉塞空間で清掃するため、清掃装置本体10には、紫外線照射手段15として棒状の紫外線ランプ16が水平に配置されるとともに、2本が上下に配置され、紫外線ランプ16の外側を覆って円筒体の側面に照射開口部17aを形成した反射板17が設けてある。この反射板17は図示しない揺動機構を備え、反射板17を水平軸回りに揺動することで、紫外線を照射開口部17aから上下方向の広範囲に向けて照射し、2つの紫外線ランプ16、16で1回分の清掃範囲全体に紫外線を照射できるようにしてある。
このような紫外線照射手段15の紫外線ランプ16で光触媒コートが施された外装面Wに紫外線を照射することで、日光(紫外線)が当たらなかった外装面Wであっても光触媒を活性化して汚れの付着力を弱めることができる。
【0040】
この清掃装置本体10には、紫外線照射手段15で活性化された外装面Wに水膜を形成するよう散水して汚れを洗い流す散水手段18が搭載され、水平な散水管19に複数の散水ノズル20が取り付けてあり、1回分の清掃範囲の横幅全体に散水できるようにしてある。また、散水管19には、図示しない揺動機構が設けてあり、揺動管21を介して散水管19を水平軸回りに揺動することで、散水ノズル20を上下方向に向けることができ、これにより、上方から下方に水膜が形成されるように散水して汚れを洗い流すことができる。
したがって、この散水手段18による散水量は、外装面Wに付着し付着力が弱められた汚れを洗い流すことができる状態を確保できるように定めればよいことになる。
この散水手段18には、水タンクやポンプが備えられ、水タンクからの水をポンプで加圧して散水ノズル20から散水できるようにしてあり、散水後の水は、後述するように、回収して再循環するようにしてある。
【0041】
汚れが洗い流された外装面Wには、水切りと乾燥を行うことで埃などが再付着して汚れることを防止するため、水切り乾燥手段22が清掃装置本体10に設けてある。
さらに、この清掃装置本体10には、水切り乾燥手段22によって流下する散水を回収するとともに、循環して使用するための散水回収循環手段23が設けてあり、ここでは、水切り乾燥手段22と散水回収循環手段23とが送風手段24の吸気系を散水の回収に、排気系を乾燥に、それぞれ利用することで、1つの送風手段24を兼用するように構成してある。
【0042】
すなわち、送風手段24としてエアブロア25が設置され、排気側である吹き出し側と吸引側である吸気側にそれぞれ排気ダクト26と吸気ダクト27が接続されて外装面Wに対して伸縮可能な伸縮部が介装されて外装面Wに当接させるように接近させたり、離反させることができるようにしてある。
そして、排気ダクト26の先端部には、1回分の清掃範囲の上端縁に沿って吹出口26aが形成されるとともに、吹出口26aの上部には、ゴム等の上部スクイジー28が取り付けられて外装面Wに当ててシール状態にしてエアを吹き付けて水切りと乾燥ができるようにしてある。
また、吸気ダクト27の先端部にも同様に、1回分の清掃範囲の下端縁に沿って吸込口27aが形成されるとともに、吸込口27aの下部には、ゴム等の下部スクイジー29が取り付けられて外装面Wに当ててシール状態として汚水を漏らすことなく吸込口27aに回収できるようにしてあり、吸気ダクト27の途中には、防滴フィルタ27bが介装され、汚水の汚れを分離するとともに、気体をエアブロア25に吸引させ、水分は水タンクに戻すことができるようにしてある。
【0043】
さらに、この清掃装置本体10には、外装面Wを監視できるようにCCDカメラ30が設けてあり、例えば反射板17,17にそれぞれCCDカメラ30,30を取り付けることで、紫外線照射手段15の揺動機構を利用して外装面W全体を監視できるようにしてある。
【0044】
次に、このように構成した光触媒コートが施された外装面の清掃装置1の動作とともに、清掃方法について説明する。
まず、清掃装置本体10を第1回分の清掃範囲とする位置に昇降機構を構成する吊りワイヤ11を介してガイド機構12でガイドして昇降移動する(図1参照)。
【0045】
清掃装置本体10を移動した後、清掃範囲を閉塞空間とするため、清掃範囲閉塞手段13のエアクッション14にエアを供給して膨らますことで、外装面Wと清掃装置本体10の開口部との間を塞いだ状態にする(図2参照)。
さらに、水切り乾燥手段22および散水回収手段23を構成する排気ダクト26および吸気ダクト27を伸縮部で伸張させて上部スクイジー28および下部スクイジー29を外装面Wの上端縁および下端縁に当接させてシール状態とする。
【0046】
こうして清掃の準備が完了した後、清掃の開始として、まず、紫外線照射手段15の紫外線ランプ16,16を点灯するとともに、反射板17,17を揺動機構を介して照射開口部17a,17aを上下方向に回動させて外装面W全体に紫外線を照射する。
この紫外線の照射は、光触媒コートが施された外装面Wが活性化して汚れの付着力が弱まるように設定すればよく、紫外線ランプ16,16大きさや容量、外装面Wの汚れの状態などに応じて定めるようにする。
【0047】
次に、紫外線の照射により汚れの付着力が弱められた外装面Wに、清掃装置本体10の散水手段18の散水管19先端の散水ノズル20から散水するとともに、揺動管21を揺動機構で揺動することで、水膜を上方から下方に形成して外装面Wの汚れを洗い流すようにする(図2参照)。
散水による洗い流しに連続して、水切り乾燥手段22および散水回収手段23を兼用する送風手段24のエアブロア25を運転し、外装面Wの上端の排気ダクト26の吹出口26aから水切り乾燥用のエアを吹き付けて水切りを行うとともに、外装面Wの下端の吸気ダクト27の吸込口27aから汚水を回収するようにする。
回収された汚水は、吸気ダクト27の途中の防滴フィルタ27bで汚れ等の挟雑物と気体分と水分とに分離され、水分は循環して使用するため散水手段18の水タンクに戻され、気体分であるエアはエアブロア25に吸引され、挟雑物は取り出して廃棄処分する。
【0048】
こうして閉塞空間として設定した1回の清掃分の外装面Wの清掃が終了した後、清掃範囲を閉塞空間とするための清掃範囲閉塞手段13のエアクッション14のエアを排出して縮めることで、外装面Wと清掃装置本体10の開口部との間に空間をあけ、さらに、水切り乾燥手段22および散水回収手段23を構成する排気ダクト26および吸気ダクト27を伸縮部で収縮させて上部スクイジー28および下部スクイジー29を外装面Wから引き戻した退避状態とする。
【0049】
この後、清掃装置本体10を次の1回分の清掃範囲とする位置に昇降機構を構成する吊りワイヤ11を介してガイド機構12でガイドして昇降移動し、再び、清掃のための準備を行うことおよび清掃ための全工程を繰り返すことで、外装面W全体を清掃することで、清掃が完了する。
【0050】
なお、清掃装置本体10の移動を昇降機構だけでなく横行機構を組み合わせることで、効率的に移動して全面を短時間に清掃することができる。
【0051】
以上、実施の形態とともに、詳細に説明したように、この光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、光触媒コートが施された外装面Wに、清掃の際に紫外線を照射することで、光触媒を活性化して付着した汚れの付着力を弱めることができ、この状態で水膜を形成するよう散水して上方から下方に洗い流すことで、外装面Wを清浄にすることができる。また、水膜で洗い流した清浄面にエアを吹き付けて水切りと乾燥を行うことで外装面Wに埃などの汚れの再付着を防止することができる。さらに、散水に用いた水は回収してフィルタで汚れを除去して循環して使用することで、清掃に必要な水を最小限とすることができる。また、清掃範囲を定めて閉塞空間として、清掃面を移動しながら清掃を行うことで、汚れや汚水などの飛散を防止して清掃の必要な全範囲を効率良く清掃することができる。
これにより、日光(紫外線)が当らなかったり、雨水が少ないなどのセルフクリーニング作用が発揮されない要因があっても清掃の際に紫外線を照射して光触媒コートが施された外装面Wをそのセルフクリーニング作用を利用して清掃することができ、光触媒コートの損傷や剥離を防止することができるとともに、効率的に清掃することができる。
【0052】
また、この光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、清掃範囲の周囲をエアクッション14で囲って閉塞空間を形成するようにしたので、清掃範囲を設定する閉塞空間を簡単に作り出すことができ、汚れや水などの飛散を防止して清掃することができる。
【0053】
さらに、この光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、紫外線照射を、紫外線ランプの周りに設けた反射板を揺動させて行うようにしたので、揺動する反射板17で紫外線ランプ16からの紫外線を広範囲に照射することができ、効率よく清掃することができる。
【0054】
また、この光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、水膜を形成する散水を、散水ノズル20を揺動させて行うようにしたので、揺動させた散水ノズル20で、最小限の水を用いて水膜を形成して効率よく清掃することができる。
【0055】
さらに、この光触媒コートが施された外装面の清掃方法によれば、エアの吹き付けと、散水の回収とを、送風手段24の吸排気系26,27を利用して行うようにしたので、一基の送風手段24でエアの吹き付けと散水の回収を行って清掃することができる。
【0056】
また、この光触媒コートが施された外装面の清掃装置1によれば、清掃範囲閉塞手段13で光触媒コートが施された外装面Wの清掃範囲を囲って閉塞空間を形成することができ、光触媒コートが施された外装面Wに紫外線照射手段15で清掃の際に紫外線を照射することで、光触媒を活性化して付着した汚れの付着力を弱めることができ、この状態で散水手段18で水膜を形成するよう散水して上方から下方に洗い流すことで、外装面Wを清浄にすることができる。また、水膜で洗い流した清浄面Wに水切り乾燥手段22でエアを吹き付けて水切りと乾燥を行うことで外装面Wに埃などの汚れの再付着を防止することができる。さらに、散水回収循環手段23で散水に用いた水を回収してフィルタで汚れを除去して循環して使用することで、清掃に必要な水を最小限とすることができる。
これにより、日光(紫外線)が当らなかったり、雨水が少ないなどのセルフクリーニング作用が発揮されない要因があっても清掃の際に紫外線を照射して光触媒コートが施された外装面Wをそのセルフクリーニング作用を利用して清掃することができ、光触媒コートの損傷や剥離を防止することができるとともに、効率的に清掃することができる。
【0057】
さらに、この光触媒コートが施された外装面の清掃装置1によれば、清掃範囲閉塞手段13を、清掃装置本体10の周囲に設けたエアクッション14で構成したので、エアクッション14で清掃範囲を設定する閉塞空間を簡単に作り出すことができ、汚れや水などの飛散を防止して清掃することができる。
【0058】
また、この光触媒コートが施された外装面の清掃装置1によれば、紫外線照射手段15を、紫外線ランプ16と、その周りに設けた反射板17と、この反射板17を揺動させる揺動機構とで構成したので、紫外線を広範囲に照射することができ、効率よく清掃することができる。
【0059】
さらに、この光触媒コートが施された外装面の清掃装置1によれば、散水手段18を、水タンクと、ポンプと、散水ノズル19と、この散水ノズル19を揺動させる揺動機構とで構成したので、外装面Wに効率良く水膜を形成することができ、最小限の水で水膜を形成して清掃することができる。
【0060】
また、この光触媒コートが施された外装面の清掃装置1によれば、水切り乾燥手段22と散水回収循環手段23とを、送風手段24の吸排気系26,27を利用して行うよう構成したので、一基の送風手段24で水切り乾燥と散水の回収とを行うことができ、コンパクトな装置で清掃することができる。
【0061】
さらに、この光触媒コートが施された外装面の清掃装置1によれば、清掃装置本体10に、昇降させる昇降機構に設けて記清掃範囲を移動することを繰り返して清掃可能に構成したので、昇降位置を変えることで、清掃範囲を定めて閉塞空間とする外装面を移動しながら清掃を行うことができ、清掃の必要な全範囲を昇降移動によって効率的に清掃することができる。
【0062】
また、この光触媒コートが施された外装面の清掃装置1によれば、清掃装置本体10に、光触媒コートが施された外装面Wを監視するCCDカメラ30を設けて構成したので、CCDカメラで各機器の状態や外装面の清掃状態などを監視することができる。
なお、上記実施の形態では、構造物の窓ガラスを外装面とした場合を例に説明したが、これに限らず、窓ガラス以外の光触媒コートが施された外装面の清掃に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 光触媒コートが施された外装面の清掃装置
10 清掃装置本体
11 吊りワイヤ(昇降機構)
12 ガイド機構
13 清掃範囲閉塞手段
14 エアクッション
15 紫外線照射手段
16 紫外線ランプ
17 反射板
17a 照射開口部
18 散水手段
19 散水管
20 散水ノズル
21 揺動管(揺動機構)
22 水切り乾燥手段
23 散水回収手段
24 送風手段
25 エアブロア
26 排気ダクト(排気系)
26a 吹出口
27 吸気ダクト(吸気系)
27a 吸込口
27b 防滴フィルタ
28 上部スクイジー
29 下部スクイジー
30 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒コートが施された外装面に清掃範囲を定めて閉塞空間を形成し、
この閉塞空間の前記外装面に紫外線を照射した後、
当該外装面の上方から下方に水膜が形成されるように散水して洗い流すようにし、
水膜が形成された外装面に、エアを吹き付けて水切り・乾燥させた後、散水した水を回収して循環するようにし、
次いで、前記閉塞空間を移動して清掃するようにしたことを特徴とする光触媒コートが施された外装面の清掃方法。
【請求項2】
前記清掃範囲の周囲をエアクッションで囲って閉塞空間を形成するようにしたことを特徴とする請求項1記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法。
【請求項3】
前記紫外線照射を、紫外線ランプの周りに設けた反射板を揺動させて行うようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法。
【請求項4】
前記水膜を形成する散水を、散水ノズルを揺動させて行うようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法。
【請求項5】
前記エアの吹き付けと、前記散水の回収とを、送風手段の吸排気系を利用して行うようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒コートが施された外装面の清掃方法。
【請求項6】
光触媒コートが施された外装面の清掃範囲を囲って閉塞空間を形成する清掃範囲閉塞手段と、
この清掃範囲閉塞手段で囲まれた前記外装面に紫外線を照射して光触媒コートを活性化する紫外線照射手段と、
この紫外線照射手段で活性化された当該外装面に水膜が形成されるように散水して洗い流す散水手段と、
この散水手段で洗い流された前記外装面に、エアを吹き付けて水切り・乾燥させる水切り乾燥手段と、
この水切り乾燥手段で流下する散水を回収するとともに、循環させる散水回収循環手段と、を清掃装置本体に備えてなることを特徴とする光触媒コートが施された外装面の清掃装置。
【請求項7】
前記清掃範囲閉塞手段を、前記清掃装置本体の周囲に設けられるエアクッションで構成したことを特徴とする請求項6記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置。
【請求項8】
前記紫外線照射手段を、紫外線ランプと、その周りに設けた反射板と、この反射板を揺動させる揺動機構とで構成したことを特徴とする請求項6または7記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置。
【請求項9】
前記散水手段を、水タンクと、ポンプと、散水ノズルと、この散水ノズルを揺動させる揺動機構とで構成したことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置。
【請求項10】
前記水切り乾燥手段と前記散水回収循環手段とを、送風手段の吸排気系を利用して行うよう構成したことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置。
【請求項11】
前記清掃装置本体に、昇降させる昇降機構に設けて前記清掃範囲を移動することを繰り返して清掃可能に構成したことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置。
【請求項12】
前記清掃装置本体に、光触媒コートが施された前記外装面を監視するCCDカメラを設けて構成したことを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の光触媒コートが施された外装面の清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200285(P2011−200285A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67745(P2010−67745)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000229689)日本ビソー株式会社 (30)
【Fターム(参考)】