説明

光走査装置および画像形成装置

【課題】ポリゴンミラー等の偏向手段の回転軸方向の寸法を小さくして低エネルギで高速回転を可能ならしめ、偏向手段より被走査面側にあるレンズの剛性を確保する。
【解決手段】共通の偏向手段7がその回転軸に関して同じ側において偏向させる偏向光束が互いに副走査方向に近接して分離され、走査光学系の各組は、偏向手段7から対応する被走査面までの間に複数のレンズ8、10を有し、第1レンズ8の主走査方向のパワー>第2レンズ10の主走査方向のパワー、第1レンズ8の副走査方向のパワー<第2レンズ10の副走査方向のパワーとなる第1レンズ、第2レンズが各走査光学系内に別個のレンズとして存在する光走査装置において、第1レンズ8の光軸方向の厚さ:Wm、第2レンズ10の光軸方向の厚さ:Wn、第1レンズ8の副走査方向の厚さ:hm、第2レンズ10の副走査方向の厚さ:hnが、大小関係:Wm>Wn、hm<hnを満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光走査装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近来、デジタルカラー複写機やカラーレーザプリンタ、カラーレーザプロッタ等の画像形成装置として、例えば、4つの感光体ドラムを記録紙の搬送方向に配列し、これらの各感光体ドラムを同時に露光して潜像をつくり、これら潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以降Y、M、C、K)などの各々異なる色の現像剤を使用する現像器で可視像化したのち、これら可視像を同一の記録紙に順次重ね合わせて転写してカラー画像を得る所謂4ドラムタンデム方式のものが実用化されつつある。
【0003】
4ドラムタンデム方式は、1ドラム方式の画像形成装置に比して、カラー画像もモノクロ画像も同じ速度で出力できるため高速の画像形成に有利である。
また、複数の感光体ドラムを光走査するための複数組の光学系に対して、偏向手段を共通化することも提案されている(特許文献1〜3等)。このように複数組の光学系に対して偏向手段を共通化することは、コストダウンに有利である。
【0004】
偏向手段としてはポリゴンミラーが一般的であるが、複数組の光学系に共通化されたポリゴンミラーは回転軸方向のサイズが大きくなりやすく、このため画像形成の高速化のためにポリゴンミラーを高速回転させる場合、駆動エネルギが大きくなり、また駆動音も増大する。
【0005】
ポリゴンミラーの駆動エネルギを小さくするには、ポリゴンミラーの回転軸方向の寸法を小さくすればよいが、このようにすると、ポリゴンミラーの回転軸に関して同じ側で偏向される複数の光束の「副走査方向の間隔」が狭まり、ポリゴンミラーの近傍において、各偏向光束に光学的に作用するレンズ相互の「副走査方向の間隔」も小さくなる。
【0006】
その結果、上記レンズの副走査方向の厚さが薄くなってしまう。ポリゴンミラーと被走査面との間に配置されるレンズは一般に主走査方向に長い長尺レンズであるので、副走査方向の厚さが薄くなると、その剛性が小さくなって変形しやすくなる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−250880
【特許文献2】特開平10−186252号公報
【特許文献3】特開2003−262812
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は上記の如き事情を鑑み、上記の如き光走査装置において、ポリゴンミラー等の偏向手段の回転軸方向の寸法を小さくして、低エネルギで高速回転を可能ならしめ、なおかつ、偏向手段より被走査面側にあるレンズの剛性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の光走査装置は「N(≧2)個の光源からの光束を共通の偏向手段により偏向させ、偏向された複数の光束をN組の走査光学系を介してN個の被走査面に導光し、N個の被走査面を同時に光走査する光走査装置」であって、共通の偏向手段が「その回転軸に関して同じ側」において偏向させる偏向光束が、互いに副走査方向に近接して分離され、走査光学系の各組は偏向手段から対応する被走査面までの間に複数のレンズを有する。
【0010】
走査光学系の各組が有する複数のレンズを、偏向手段の側から数えて第iレンズ(i=1,2,・・)とするとき、偏向手段の回転軸に関して同じ側に配置される走査光学系の組は第jレンズ(j≧1)と第j+1レンズとの間で対応する被走査面へ向かう光路が分離し、m≦j、n>jとして、
第mレンズの主走査方向のパワー>第nレンズの主走査方向のパワー
第mレンズの副走査方向のパワー<第nレンズの副走査方向のパワー
となる第mレンズ、第nレンズが各走査光学系内に別個のレンズとして存在する。
【0011】
請求項1記載の光走査装置は、このような構成において、
第mレンズの光軸方向の厚さ:Wm、第nレンズの光軸方向の厚さ:Wn、
第mレンズの副走査方向の厚さ:hm、第nレンズの副走査方向の厚さ:hn
が、大小関係:
Wm>Wn、hm<hn
を満足することを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の光走査装置においては、第mレンズを通過する光束の副走査方向の光束幅が、第nレンズを通過する光束の副走査方向の光束幅よりも小さいことが好ましい(請求項2)。
【0013】
この発明の画像形成装置は、請求項1または2記載の光走査装置を有する画像形成装置である。
【0014】
若干、説明を補足すると、この発明の光走査装置は「N(≧2)個の光源からの光束を共通の偏向手段により偏向させ、偏向された複数の光束をN組の走査光学系を介してN個の被走査面に導光し、N個の被走査面を同時に光走査する光走査装置」であるから、例えば、N=2として2個の光源を用い、2個の光源からの光束により「別個の被走査面」の実体をなす2個の感光体ドラムを同時且つ別個に光走査して潜像を書き込み形成し、これら2種の潜像を別個に現像して得られるトナー画像を、同一の記録紙上に重ね合わせて転写して「各感光体ドラムに形成されたトナー画像を合成した画像」を形成することができる。この場合、各潜像を現像するトナーの色を異ならせることにより、2色あるいは3色(1色は異なる色のトナー画像の重なり合いによる)の画像を形成できる。
【0015】
また、N=3もしくは4として、3個または4個の感光体ドラムを用い、各感光体ドラムに形成される潜像を、イエロー、マゼンタ、シアンもしくは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色トナーで可視像化し、これら可視像を同一の記録紙上に転写してカラー画像を形成することもできる。
【0016】
上記2個又は3個又は4個の感光体ドラムを記録紙の搬送方向へ配列して、タンデム型の画像形成装置を実現できる(請求項3)。
また、N個の光源の個々から放射される光束は単一光束でもよいし複数光束でも良い。各光源から複数光束を放射させることにより被走査面を「マルチビーム走査方式」で光走査することができる。
【0017】
偏向手段は、ポリゴンミラーを好適に用いることができるが、これに限らず、回転単面鏡や回転2面鏡、ガルバノミラー等を用いることもできる。偏向手段としてポリゴンミラーを用いる場合、N個の光源からの光束の全てを「回転軸に関して同じ側」で偏向させるようにしてもよいし、N個の光源からの光束を、回転軸の両側に振り分けて偏向させるようにしてもよい。特許文献1に記載された光走査装置は「4個の光源からの4本の光束を、共通化されたポリゴンミラーの回転軸の両側に2本づつ振り分けて偏向」する場合の例である。また、特許文献3に記載された光走査装置は「4個の光源からの4本の光束を、共通化されたポリゴンミラーの回転軸の同じ側で偏向」させる場合の例である。
【0018】
上記の如く、この発明の光走査装置では、偏向手段の回転軸に関して同じ側に配置される走査光学系の組は第jレンズ(j≧1)と第j+1レンズとの間で対応する被走査面へ向かう光路が分離し、m≦j、n>jとして、
第mレンズの主走査方向のパワー>第nレンズの主走査方向のパワー
第mレンズの副走査方向のパワー<第nレンズの副走査方向のパワー
となる第mレンズ、第nレンズが各走査光学系内に別個のレンズとして存在する。第mレンズは、偏向手段により近く、主走査方向のパワーが第nレンズの主走査方向のパワーより大きいため、レンズの厚みを大きくすることができる。第mレンズは「異なる被走査面へ向かう光路が大きく分離していない位置」に設けられるので、その副走査方向における厚さを小さくしないと、偏向手段の回転軸方向の寸法を小さくできない。しかし、第mレンズは偏向手段の回転軸方向に対応する副走査方向の厚さが小さくても、光軸方向の厚さ:Wmを第nレンズの光軸方向の厚さ:Wnより大きくできるので、光軸方向の肉厚:Wmにより「第mレンズに必要な剛性」を確保することができる。
【0019】
また、第nレンズが配置される位置では、隣接する光束の光路は大きく分離しているので、第nレンズにはそのサイズに対する制約は緩い。しかし、第nレンズは「主走査方向のパワー」が小さいので、レンズ光軸方向の肉厚:Wnは大きくできない。しかし、第nレンズは「サイズに対する制約が緩い」ことを利用して、副走査方向の厚さ:hnを、第mレンズの副走査方向の厚さ:hmよりも大きく設定することにより、副走査方向の厚み:hnにより「第nレンズに必要な剛性」を確保することができる。
【0020】
また、その場合、請求項2記載の光走査装置のように、第mレンズを通過する光束の副走査方向の光束幅が、第nレンズを通過する光束の副走査方向の光束幅よりも小さくすると、偏向手段の回転軸方向のサイズを小さくすることが容易であり、光学レイアウトを小さくできる。
【発明の効果】
【0021】
以上に説明したように、この発明の光走査装置では、ポリゴンミラー等の偏向手段の回転軸方向の寸法を小さくできるので、低エネルギで高速回転が可能となり、なおかつ、偏向手段よりも被走査面側にあるレンズの剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施の形態を説明するが、最初に、この発明を適用できる画像形成装置の1例を、図2および図3を参照して説明する。
図2は、光走査装置の光学系部分を、副走査方向、即ち、偏向手段であるポリゴンミラー7の回転軸方向から見た状態を示している。図示の簡単のため、ポリゴンミラー7から光走査位置である被走査面に至る光路上における光路屈曲用のミラーの図示を省略し、光路が直線となるように描いた。
【0023】
この光走査装置は、N=4の場合であり、4つの被走査面をそれぞれ1本の光ビームで光走査する。また、4個の被走査面は実態的には光導電性の感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kであり、これら4個の感光体ドラムに形成される静電潜像をマゼンタ、イエロー、シアン、黒のトナーで個別に可視化し、カラー画像を形成する。
【0024】
図2において、符号1Y、1M、1C、1Kは「光源」としての半導体レーザを示す。半導体レーザ1Y、1Mは、図面に直交する方向である副走査方向に重なりあうように配置されている。半導体レーザ1Mは「マゼンタ画像に対応する画像信号」により強度変調され、半導体レーザ1Yは「イエロー画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0025】
同様に、半導体レーザ1C、1Kも副走査方向に重なりあうように配置されており、半導体レーザ1Cは「シアン画像に対応する画像信号」により強度変調され、半導体レーザ1Kは「黒画像に対応する画像信号」により強度変調される。
【0026】
半導体レーザ1Y、1Mの個々から放射された光束は、カップリングレンズ3Y、3M(副走査方向に重ねて配置され、各半導体レーザからの光束を入射される。)により平行光束化され、アパーチュア12Y、12M(副走査方向に重なりあうように配置されている。)を通過してビーム整形されたのち、副走査方向に配列されたシリンドリカルレンズ5Y、5M(副走査方向に重なり合うように配置されている。)により、それぞれ副走査方向へ集光されてポリゴンミラー7に入射する。シリンドリカルレンズ5Y、5Mによる主走査方向に長い線像はポリゴンミラー7の偏向反射面近傍に結像する。
【0027】
多面鏡式光偏向器7により偏向される光ビームは、それぞれ第1レンズ8Y、8M、第2レンズ10Y、10Mを透過し、これらレンズの作用により被走査面11Y、11Mに光スポットを形成し、これらを光走査する。
【0028】
同様に、半導体レーザ1C、1Kから放射された光束はカップリングレンズ3C、3Kにより平行光束化され、アパーチュア12C、12Kを通過してビーム整形されたのち、副走査方向に配列されたシリンドリカルレンズ5C、5Kによりそれぞれ、副走査方向へ集光され、ポリゴンミラー7に入射して偏向され、それぞれ第1レンズ8C、8K、第2レンズ10C、10Kを透過し、これらレンズの作用により被走査面11C、11Kに光スポットを形成し、これらを光走査する。
【0029】
図3に符号20で示す部分が光走査装置で、図2に即して説明した部分である。図3に示すように、ポリゴンミラー7の上部側で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmM1、mM2、mM3により屈曲された光路により感光体ドラム11Mに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmC1、mC2、mC3により屈曲された光路により感光体ドラム11Cに導光される。
【0030】
また、ポリゴンミラー7の下部側で偏向される光束のうち一方は、光路折り曲げミラーmYにより屈曲された光路により感光体ドラム11Yに導光され、他方の光ビームは、光路折り曲げミラーmKにより屈曲された光路により感光体ドラム11Kに導光される。
【0031】
従って、N=4個の半導体レーザ1Y、1M、1C、1Kからの4本の光束により、4個の感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kが光走査される。感光体ドラム11Y〜11Kは何れも時計回りに等速回転され、帯電手段をなす帯電ローラTY、TM、TC、TKにより均一帯電され、それぞれ対応する光束の光走査を受けてイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色画像を書込まれ対応する静電潜像(ネガ潜像)を形成される。
【0032】
これら静電潜像はそれぞれ現像装置GY、GM、GC、GKにより反転現像され、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上にそれぞれイエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像が形成される。
【0033】
これら各色トナー画像は、図示されない「転写シート」上に転写される。即ち、転写シートは搬送ベルト17により搬送され、転写器15Yにより感光体ドラム11Y上からイエロートナー画像を転写され、転写器15M、15C、15Kによりそれぞれ、感光体ドラム11M、11C、11kから、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナー画像を順次に転写される。
【0034】
このようにして転写シート上においてイエロートナー画像〜黒トナー画像が重ね合わせられてカラー画像を合成的に構成する。このカラー画像は定着装置19により転写シート上に定着されてカラー画像が得られる。
【0035】
図2、図3に示した画像形成装置では、図3に示されたように、ポリゴンミラーによりその回転軸の同じ側において偏向される2光束は、上記回転軸方向に十分に間隔を有しており、そのためポリゴンミラー7はその回転軸方向のサイズが大きいものと成っている。
【0036】
図1は、この発明を図2、図3に即して説明したタイプの画像形成装置に適用した実施の形態を説明するための図である。図1(a)は、この実施の形態の特徴部分を示している。図2、図3との対応を明らかにするため、図2、図3に対応する部分について、図2、図3におけると同一の符号を付している。
【0037】
図1(a)において、ポリゴンミラー7は図2、図3に即して説明したものよりも、回転軸方向(副走査方向)の寸法が小さくされ、これに応じて第1レンズ8M、8Yも副走査方向の厚みを薄くされている。図1に図示されていないが、第1レンズ8C、8Kも副走査方向の厚みを薄くされている。
【0038】
一方、第2レンズ10M、10Yは(図示されない10C、10Kも)、副走査方向の厚み(図の左右方向の厚み)を大きくされている。
【0039】
図1(b)に符号8で示すレンズは、第1レンズ8M〜8Kを代表して描いたものである。また、図1(c)に符号10で示すレンズは、第2レンズ10M〜10Kを代表して描いたものである。
【0040】
図1(b)に示すように、第1レンズ8における光軸方向の厚みを「8TH」、副走査方向の厚みを「8D」とする。また、図1(c)に示すように、第2レンズ10における光軸方向の厚みを「10TH」、副走査方向の厚みを「10D」とする。
【0041】
これらは、8TH>10TH、8D<10Dの大小関係を満足する。
即ち、この関係を満足することによって、第1レンズ8では、副走査方向の厚み:8Dを小さくしても、光軸方向の厚み:8THを大きく取ることにより、第1レンズ8に必要な剛性を確保できる。また、第2レンズ10では、光軸方向の厚み:10THを小さくしても、副走査方向の厚み:10Dを大きく取ることにより、第2レンズ10に必要な剛性を確保できる。
【実施例1】
【0042】
以下、図1に即して説明した実施の形態に関する具体的な実施例を挙げる。上述したように、光学系の配置は、図2、図3に示したのと同様の配置である。
【0043】
「光源」 半導体レーザ
光源波長:655nm
「カップリングレンズ」
焦点距離:27mm
カップリング作用:コリメート作用
「シリンドリカルレンズ」
副走査方向の焦点距離:70.6mm
「ポリゴンミラー」
偏向反射面数:6
内接円半径:18mm
各光源からポリゴンミラーの偏向反射面への入射は、ポリゴンミラーの回転軸に直交する平面内(偏向反射面という。)で行われ、光源側から入射する光束の偏向反射面への平均入射角(偏向反射面の回転に伴い有効走査領域の両端を走査することになる入射光束の主走査方向に対する傾き角の平均)偏向光束α:37.275度である。
【0044】
ポリゴンミラー以降のレンズデータを以下に示す。
【0045】
第1レンズ8の第1面及び第2レンズ10の両面は式(1)、(2)で表現される。
【0046】
主走査面(光軸を含み主走査方向に平行な仮想的平断面)内の形状
「主走査非円弧形状」
主走査面内における面形状は非円弧形状をなし、光軸における主走査面内の近軸曲率半径をRm、光軸からの主走査方向の距離をY、円錐常数をK、高次の係数をA1、A2、A3・・・とし、光軸方向のデプスをXとして次の多項式で表す。
【0047】
X=(Y/Rm)/[1+√{1−(1+K)(Y/Rm)}]+
+A1・Y+A2・Y+A3・Y+A4・Y+A5・Y+・・ (1)。
【0048】
副走査面(主走査方向に直交する仮想的な平断面)内の曲率は、光軸からの主走査方向の距離:Yに応じて変化する。この変化は、以下の(2)式(「副走査曲率式」)で表す。
【0049】
Cs(Y)=1/Rs(0)+
+B1・Y+B2・Y+B3・Y+B4・Y+・・ (2)。
【0050】
第1レンズ8の第2面は共軸非球面で以下の式で表現される。
「共軸非球面」
光軸における近軸曲率半径をR、光軸からの主走査方向の距離をY、円錐常数をK、高次の係数をA1、A2、A3、A4、・・とし、光軸方向のデプスをXとして次の多項式で表す。
【0051】
X=(Y/R)/[1+√{1−(1+K)(Y/Rm)}]+
+A1・Y+A2・Y+A3・Y+A4・Y+A5・Y+・・ (3)。
【0052】
「第1レンズ8の第1面の形状」
Rm=−279.9
Rs= −61.0
K=−2.900000E+01
A4= 1.755765E−07
A6=−5.491789E−11
A8= 1.087700E−14
A10=−3.183245E−19
A12=−2.635276E−24
B1=−2.066347E−06
B2= 5.727737E−06
B3= 3.152201E−08
B4= 2.280241E−09
B5=−3.729852E−11
B6=−3.283274E−12
B7= 1.765590E−14
B8= 1.372995E−15
B9=−2.889722E−18
B10=−1.984531E−19
上の表記に於いて、例えば「−1.984531E−19」は「−1.984531×10−19」を意味する。以下においても同様である。
【0053】
「第1レンズ8の第2面の形状」
R=−83.6
K=−0.549157
A4= 2.748446E−07
A6=−4.502346E−12
A8=−7.366455E−15
A10= 1.803003E−18
A12= 2.727900E−23 。
【0054】
「第2レンズ10の第1面の形状」
Rm=6950
Rs= 110.9
K= 0.000000E+00
A4= 1.549648E−08
A6= 1.292741E−14
A8=−8.811446E−18
A10=−9.182312E−22
B1=−9.593510E−07
B2=−2.135322E−07
B3=−8.079549E−12
B4= 2.390609E−12
B5= 2.881396E−14
B6= 3.693775E−15
B7=−3.258754E−18
B8= 1.814487E−20
B9= 8.722085E−23
B10=−1.340807E−23 。
【0055】
「第2レンズ10の第2面の形状」
Rm=766
Rs= −68.22
K= 0.000000E+00
A4=−1.150396E−07
A6= 1.096926E−11
A8=−6.542135E−16
A10= 1.984381E−20
A12=−2.411512E−25
B2= 3.644079E−07
B4=−4.847051E−13
B6=−1.666159E−16
B8= 4.534859E−19
B10=−2.819319E−23
使用波長における第1、第2レンズの材質の屈折率は全て1.52724である。
【0056】
以下に光学配置を示す。
ポリゴンミラーの偏向面から第1レンズ8の第1面までの距離d1:64mm
第1レンズ1の中心肉厚d2:22.6mm
第1レンズ8の第2面から第2レンズ10の第1面までの距離d3:75.9mm
第2レンズ10の中心肉厚d4:4.9mm
第2レンズ10の第2面から被走査面までの距離d5:158.7mm
再周辺像高と中央像高での副走査方向のFナンバは以下の如くである。
【0057】
像高150mm:41.5
像高0mm:40.4
像高−150mm:41.0
また、第1レンズ8のパワーと、第2レンズ10のパワーとの大小関係は、
第1レンズ8の主走査方向パワー>第2レンズ10の主走査方向パワー
第1レンズ8の副走査方向パワー<第2レンズ10の副走査方向パワー
の関係にある。
【0058】
図1(b)、(c)に示したレンズの厚さは、上記の如く、
第1レンズ8の光軸方向の厚さ:8TH=22.6mm
第1レンズ8の副走査方向の厚さ:8D=6.4mm
第2レンズ10の光軸方向の厚さ10TH:4.9mm
第2レンズ10の副走査方向の厚さ:10D=14.3mm
である。
【0059】
なお、図1〜図3に図示されていないが、ポリゴンミラー7は防音ハウジング内に収納され、光源からの光束はハウジングの窓に設けられた防音ガラスを介してポリゴンミラー7に入射し、偏向光束は防音ガラスを介して第1レンズ8に入射する。
【0060】
防音ガラスは、屈折率:1.514、厚さ1.9mmの平行平板ガラスであり、偏向回転面(ポリゴンミラーの回転軸に直交し、偏向光束が偏向される面)内において主走査方向に対して16度傾き、副走査方向に対して1.3度傾いている。
【0061】
即ち、上に実施例を説明した光走査装置は、N(=4)個の光源1Y〜1Kからの光束を共通の偏向手段7により偏向させ、偏向された複数の光束をN組の走査光学系8Y、10Y〜8K,10Kを介してN(=4)個の被走査面11Y〜11Kに導光し、N個の被走査面を同時に光走査する光走査装置であって、共通の偏向手段7がその回転軸に関して同じ側において偏向させる偏向光束が互いに副走査方向に近接して分離され、走査光学系の各組は、偏向手段から対応する被走査面までの間に複数のレンズ8、10を有し、これら複数のレンズを偏向手段の側から数えて第iレンズ(i=1,2,・・)とするとき、偏向手段7の回転軸に関して同じ側に配置される走査光学系の組は第jレンズ(j=1)と第j+1レンズとの間で対応する被走査面へ向かう光路が分離し、
m(=1)≦j、n(=2)>jとして、
第mレンズ8の主走査方向のパワー>第nレンズ10の主走査方向のパワー
第mレンズ8の副走査方向のパワー<第nレンズ10の副走査方向のパワー
となる第mレンズ8、第nレンズ10が各走査光学系内に別個のレンズとして存在する光走査装置において、
第mレンズの光軸方向の厚さ:Wm(=8TH=22.6mm)、第nレンズの光軸方向の厚さ:Wn(10TH=4.9mm)、第mレンズの副走査方向の厚さ:hm(8D=6.4mm)、第nレンズの副走査方向の厚さ:hn(10D=14.3mm)が、大小関係:
Wm>Wn、hm<hn
を満足する(請求項1)。
【0062】
また、第1レンズ8では、副走査方向のパワーが小さいので、第1レンズ8を通過した偏向光束は弱く発散しつつ第2レンズ10に入射する。即ち、第mレンズ8を通過する光束の副走査方向の光束幅が、第nレンズ10を通過する光束の副走査方向の光束幅よりも小さい(請求項2)。
【0063】
従って、上に実施例を挙げた光走査装置を図2、図3の如き構成の画像形成装置に搭載することにより、請求項1または2記載の光走査装置を有する画像形成装置(請求項3)を実施できる。
【0064】
なお、上に説明した画像形成装置では、各感光体ドラムの光走査を「シングルビーム方式」で行っているが、「マルチビーム方式」で行うようにできることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の特徴部分を説明するための図である。
【図2】この発明を適用できる画像形成装置の1例を説明するための図である。
【図3】図2の画像形成装置の偏向手段以後の光学配置を説明する図である。
【符号の説明】
【0066】
7 共通の偏向手段
8 第1レンズ
10 第2レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(≧2)個の光源からの光束を共通の偏向手段により偏向させ、偏向された複数の光束をN組の走査光学系を介してN個の被走査面に導光し、N個の被走査面を同時に光走査する光走査装置であって、
共通の偏向手段がその回転軸に関して同じ側において偏向させる偏向光束が互いに副走査方向に近接して分離され、
走査光学系の各組は、偏向手段から対応する被走査面までの間に複数のレンズを有し、
これら複数のレンズを偏向手段の側から数えて第iレンズ(i=1,2,・・)とするとき、上記偏向手段の回転軸に関して同じ側に配置される走査光学系の組は第jレンズ(j≧1)と第j+1レンズとの間で対応する被走査面へ向かう光路が分離し、
m≦j、n>jとして、
第mレンズの主走査方向のパワー>第nレンズの主走査方向のパワー
第mレンズの副走査方向のパワー<第nレンズの副走査方向のパワー
となる第mレンズ、第nレンズが各走査光学系内に別個のレンズとして存在する光走査装置において、
第mレンズの光軸方向の厚さ:Wm、第nレンズの光軸方向の厚さ:Wn、
第mレンズの副走査方向の厚さ:hm、第nレンズの副走査方向の厚さ:hn
が、大小関係:
Wm>Wn、hm<hn
を満足することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、
第mレンズを通過する光束の副走査方向の光束幅が、第nレンズを通過する光束の副走査方向の光束幅よりも小さいことを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の光走査装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−235369(P2006−235369A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51604(P2005−51604)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】