説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】複数ビームの光出力レベルの調整を、往復光走査時の任意の復路において、適正時間内に行える、新たな光走査装置を提供する。
【解決手段】複数光ビーム発生手段11と、発生した複数の光ビームを感光体19に向けて偏向するビーム偏向手段14と、複数光ビーム発生手段11からの光ビームの各々に対応し、対応する光ビームの偏向方向を選択的に変更可能な複数の光偏向素子を有するマトリックスビーム偏向手段10と、感光体19に対する往復走査の際、往路では任意のグループの光偏向素子が、対応する光ビームを感光体19に対する走査方向に偏向し、復路では任意のグループは、走査方向以外の方向(B1〜B3)に偏向するように光偏向素子の偏向方向を制御する制御手段Ctrと、偏向された光ビームの光量を検出する光検知素子17と、検知結果に基づいて、対応する光ビームの光量を複数光ビーム発生手段に調整させる光出力制御手段80と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光束の光強度を検出するための光路分岐手段を備えた光走査装置及び画像形成装置に関し、特に面発光センサ(VCSELアレイ)やLDアレイなどの光源アレイを用いた光走査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光走査装置において、光ビームを走査する光偏向器としてポリゴンミラーが多く用いられている。ポリゴンミラーは高速に回転して光ビームを走査するが、ポリゴンミラーを用いた画像形成では、より高い解像度の画像及び高速の画像形成を達成するには、ポリゴンミラーをさらに高速に回転させる必要がある。しかし、ミラーの高速回転を達成するには、軸受けの耐久性を向上し、発熱、騒音の対策を行う必要がある課題を解決しなければ成らない、したがって、ミラーが形成された回転体を使用した高速走査には限界がある。
そこで、近年光ビームを走査する光走査装置は、シリコンマイクロマシニング技術を利用した微小ミラーを揺動させる構成のものが提案されている。この様なマイクロミラーデバイスはその駆動方式から大別して、例えば特許文献1に記載されるような電磁駆動方式、特許文献2に記載されるような静電駆動方式がある。これらの方式ではマイクロミラー可動部の駆動させる駆動電圧を正弦波交流信号として定常的に印加するようになっている。
静電誘導発生手段を用いた代表的な例としては、特許文献3に開示されるような、静電引力によってミラーを揺動させる光走査装置がある。
【0003】
なお、静電駆動方式は現在2つの方式が用いられている。
一つは駆動電極が平行平板電極構成であり、もう一つは、特許文献4〜6に記載される櫛歯型電極構成とした方式である。櫛歯型電極方式は、一般的に変動量、駆動力とも、平行平板電極方式より大きく優れていると言われている。
この様な、シリコンマイクロマシニング技術を利用した光走査装置は、上記ポリゴンミラーを用いた光走査装置に比べ高速走査が可能になり、マイクロミラーデ場合スのサイズは数mmで実現出来、ポリゴンミラーよりも小型化が実現できる。
さらに、高速かつ高密度な光走査を達成するための別の手段としては、一度に複数の光ビームを走査して、同時に複数ラインを走査させる方法がある。
複数の光ビームを走査可能とする複数ビーム光源装置としては、複数の光ビームを発生する1つの複数素子光源、すなわち、1つのパッケージ内に複数の発光点を持つレーザアレイ光源を用いるも方法、1つのパッケージ内に1つの発光点を持つレーザ光源を複数個もちいて、複数光源装置を構成する方法等、提案されている。
【0004】
光源としては、一般に半導体レーザ(LD:Laser Diode)が用いられている。LDは従来から端面発光レーザがその主流であったが、近年では、面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)と称されるものが提案されている。この面発光レーザは、従来からの端面発光レーザに比べてアレイ化が容易であることから、端面発光レーザでは数ビーム程度が限界であったアレイ化に対して、面発光レーザでは16ビーム以上のアレイ化が可能となっている。その結果、画像形成装置の印字速度向上や、書き込み密度向上を実現するための光源として期待されている。
従って、マイクロミラーデバイスと、面発光レーザを組み合わせることで、より高速かつ高密度な光走査を達成することが出来ることになるが、面発光レーザを用いた光源を光走査装置へ搭載する場合には、端面発光レーザの場合と比較して、以下の、問題点がある。
すなわち、端面発光レーザでは、後方への出射光をモニタしながらフィードバックすることによって光出力レベルの調整を行う、いわゆるAPC(Auto Power Control)制御を施して用いている。これに対して、面発光レーザではその構造上、後方への出射が実現できず、後方出射光の利用が不可能な為、他の手段による光量調整が必要となる。光量調整が実施できない光源装置を用いた画像形成装置の出力画像は、光源装置の光出力変動に起因する濃度変動が発生し、画質の劣化が生じるという問題が生じる。
その為、面発光レーザを用いた場合の光量調整手段として、面発光レーザから放出される光ビームのうち、一定割合の光ビームの一部を分岐させて光検出器に導き、その光検出器の出力に応じて、レーザ光量調整装置にて面発光レーザの光出力が所定の出力となるようにその駆動電流を制御して、面発光レーザを駆動することが従来から提案されている。
【0005】
例えば、特許文献7には、ビーム偏向素子を透過した光を光検出素子に導き、光検出素子の出力結果に応じて光量制御を行うことが提案されている。また、特許文献8には、ビームスプリッタを用いビーム光の一部をモニタ光として分岐させ、光検出器に導くことが開示されている。また、特許文献9には、ハーフミラーにて光ビームの一部を反射せしめ、受光素子で光量を検出する方法が開示されている。そして、特許文献10には、複数ビームの各素子の光量調整は、複数ビームの代表素子からの光ビームの光量に基づいて、他の各素子の光量を調整することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献7〜10に開示の技術には、以下に述べるような問題がある。すなわち、レーザ光源から出射したレーザ光の光量を画像形成用に100%を用いることが出来ず、光の利用効率が低く、必要とする光量を得る為に、駆動電流の増大化が必要となり、駆動電流増加による、発熱、発散角の変化等の問題が生じてしまう問題がある。
さて、今日、本発明者は、40ビームから構成される、複数ビームを用いた光走査装置を開発している。画像品質向上の為、40ビームの各素子の光量の適時調整が必須であることは、特許文献に開示の様に自明である。しかしながら、多量個数の複数ビームを用いる場合、さらに以下の問題がある。
まず、各ビーム間の光量変動は画質劣化に重大な影響があり、個別の光量調整が必要である。
【0007】
また、画像形成時多数の光ビームを駆動する必要があり、少ない駆動電流で適正光量を得ることが必須である。そのためには、特許文献で開示されたように、光ビームを分岐して、100%以下の分割光量を用いた光束を光検知器へ導くことはは、光効率低下の原因となる。
また、複数ビームの代表素子からの光ビームの光量に基づいて、他の各素子の光量を調整するという特許文献10に開示の方法は、代表素子を設定する場合、代表素子間のバラツキをも考慮が必要となり、制御処理が複雑になる。
さらに、APC(Auto Power Control)制御は理想的には、1走査周期毎に実施するのが良いが、多個数からなる複数ビームを、適正時間内に実施する方法は、上記の特許文献には開示例が無く、新たな提案が必要である。
上記の問題点を鑑みて、本発明は、多個数の複数ビームの光出力レベルの調整を、往復光走査時の任意の復路において、適正時間内に行える、新たな光走査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、複数の光ビームを発生するマトリックス発光素子構造を有する複数光ビーム発生手段と、前記複数光ビーム発生手段から発生された複数の光ビームを感光体に向けて偏向するビーム偏向手段と、を少なくとも備えた光走査装置において、前記複数光ビーム発生手段から発生される前記複数の光ビームの各々に対応し、対応する光ビームの偏向方向を選択的に変更可能な複数の光偏向素子を有するマトリックスビーム偏向手段と、前記感光体に対する往復走査の際、往路では、前記複数の光偏向素子のうち、任意のグループの光偏向素子が、対応する光ビームを前記感光体に対する走査方向に偏向し、復路では、前記任意のグループは、前記走査方向以外の少なくとも1方向に偏向するように前記光偏向素子の偏向方向を制御する光偏向素子制御手段と、前記少なくとも一方向に設けられ、当該方向に偏向された光ビームを受光して該光ビームの光量を検出する光検知素子と、該検知素子の検知結果に基づいて、該検知結果に対応する光ビームの光量を前記複数光ビーム発生手段に調整させる光出力制御手段と、を備えたことを特徴とする光走査装置。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記光偏向素子は、基板の一方の面に設けた複数の電極及び電極として機能する支柱と、該支柱に一点を支持された前記光ビームを反射するための反射板を有し、前記反射板は、前記複数の電極のうちの一つおよび前記支柱の間の電位差によって発生する静電力により変位可能であり、前記複数の電極のうち、電圧を印可する電極を切り替えることによって前記光偏向素子の偏向方向を制御可能である請求項1に記載の光走査装置を特徴とする。
また、請求項3の発明は、前記複数の光偏向素子の偏向方向は、前記複数の電極に対する切替指定信号によって、各光偏向素子について個別かつ選択的に切替可能である請求項2に記載の光走査装置を特徴とする。
また、請求項4の発明は、前記マトリックスビーム偏向手段は、前記複数光ビーム発生手段と、前記ビーム偏向手段を結ぶ光路の途中に配設した請求項1乃至3の何れか一項に記載の光走査装置を特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、前記光偏向素子は、前記支柱の高さを変更することで、偏向角度を調整可能であり、前記マトリックスビーム偏向手段において、前記走査方向以外に偏向される光ビームが、前記走査方向以外の1方向に出射される場合、当該光ビームが、同一の収束点に収束するように前記偏向角度を調整する請求項1乃至4の何れか一項に記載の光走査装置を特徴とする。
また、請求項6の発明は、前記光偏向素子は、前記支柱の高さを変更することで、偏向角度を調整可能であり、前記マトリックスビーム偏向手段において、前記走査方向以外に偏向される光ビームが、前記走査方向以外の複数方向に出射される場合、当該光ビームが、複数の収束点に収束するように前記偏向角度を調整する請求項1乃至5の何れか一項に記載の光走査装置を特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の光走査装置を備えた画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように構成したので、本発明の光走査装置によれば、マトリックス光偏光器に入射される複数の光ビームの任意の一部を、往復走査の任意の往路では、走査方向に出射し、復路ではそれ以外の方向に出射するように制御することで、感光体面上を光走査実行中に、光ビームを他の目的、すなわち、光量検知及び検知結果に基づく光出力レベルの調整に同時に使用可能とすることができる。これにより、複数ビームの光出力レベルの調整を、往復光走査時の任意の復路において、適正時間内に行える、新たな光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光走査装置の構成の概要を示す図。
【図2】本発明の光走査装置のその他の構成を示す図。
【図3】40素子の複数光ビーム発生手段の例を示す図。
【図4】面発光レーザの一つの発光素子の構成を示す概略断面図。
【図5】マイクロスキャナの構成を示す図。
【図6】光ビーム偏向素子の概略構造図。
【図7】光ビーム偏向素子の可動板の傾斜角が設定可能であることを示す図。
【図8】ビーム偏向素子40の動作原理の概略を説明する図。
【図9】可動板の変位状態を、図1のA方向、B1−B3方向に当てはめた図。
【図10】複数光ビーム発生手段から出射された、複数ビームがビーム偏向素子に偏向され、光ビーム出力量検知器に導かれる様子を模式的に示した図。
【図11】複数光ビーム発生手段から出射された、複数ビームがビーム偏向素子に偏向され、複数の光ビーム出力量検知器に導かれる様子を模式的に示した図。
【図12】一個の光ビーム出力量検知器が複数の検知部から構成されている例を示す図。
【図13】光出力制御手段を付加した構成を示す図。
【図14】従来の像担持体への光ビーム走査周期内での光ビーム状態と本発明の場合の光ビームを状態を比較する図。
【図15】図1の光ビーム偏向器について説明する図。
【図16】図1の光ビーム偏向器について説明する図。
【図17】本発明に係る光走査装置を用いた画像形成装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の光走査装置の構成の概要を示す図である。
図1に示すように、本発明の光走査装置は、面発光レーザである複数光ビーム発生手段11、光ビームを平行光に変換するためのカップリングレンズ12、面発光レーザの複数の発光素子にそれぞれ対応する複数の光偏向素子を有し、光ビームのそれぞれを個別に偏向するためのマトリックス光ビーム偏向手段(マイクロスキャナ)10、第一の光学系13、複数の光ビームを像担持体(感光体)方向に偏向する光ビーム偏光器(ビーム変更手段)14、第二の光学系15、光同期検知器16、光ビーム出力量検知器(光検知素子)17を備えている。
図1に示すように、複数光ビーム発生手段11から出射された複数ビームは、カップリングレンズ12を介在して、マイクロスキャナ10に到達し、第2の光学系15を経て像担持体19上を走査して潜像18を形成する。
【0014】
ここで、本発明のマイクロスキャナ10は、複数の光ビーム偏向素子のマトリックス構造を有し、複数光ビーム発生手段11から発生された複数ビーム光束の光ビーム偏向器14への光路上に配置されている。
かかるマイクロスキャナ10の光ビーム偏向素子が一定周期で単振動することにより、偏向された複数光ビームは一定の周期で往復光走査を行うが、光ビーム偏向素子は、後述する構成によって任意の方向に回転傾斜が可能な可動板を有し、各光ビーム偏向素子の可動板に入射される光ビームの光路を、選択的に切り替え可能である。
すなわち、図1に示すように、マイクロスキャナ10は、複数光ビームの光路を例えば第1の光学系13に向かうA方向(走査方向)及びそれ以外の複数のB方向(B1〜B3)に切替可能である。
従って、往復光走査において、往路では、任意の光ビームをA方向に偏向して、復路では逆にB方向の何れか、あるいは複数のB方向に偏向し、往路では逆にB方向に偏向した光ビームを復路ではA方向に偏向して走査を行う、というように動作させることができる。
【0015】
そして、図1においては、B2方向に配設された光ビーム出力量検知器17に入射する光ビームが示されているが、像担持体19面上を光走査実行中に、B方向に偏向された複数ビームは他の目的に同時に使用可能とすることを意味している。
なお、マイクロスキャナ10における各ビーム偏向素子の変位動作(A方向、B方向の切替)は、光偏向素子制御部(光偏向素子制御手段)Ctrからの切替指定信号によって個別に行うことができる。これにより、光ビーム出力量検知器17方向に導かれる光ビームと、像担持体方向に導かれる光ビームを適宜、的確に選択することができる。
なお、光偏向素子制御部Ctrは、光走査装置内に設けているように記載しているが、光走査装置を有する画像形成装置の制御部による制御としてもよい。
【0016】
図2は、本発明の光走査装置のその他の構成を示す図である。
(a)は、図1におけるB3方向、(b)はB2方向、(c)はB1方向に、光ビーム出力量検知器17を配設した構成を示している。このように、光ビーム偏向素子の偏向方向を任意に変えることで光ビーム出力量検知器17の配設位置の自由度を確保することができる。
以下に、本発明の光走査装置の各構成について、詳細に説明する。
まず、面発光レーザ11の構成について説明する。
図3は、複数光ビーム発生手段11の40素子の場合の例を示す図である。
図3から分かるように、面発光レーザ11は、40個の発光素子20を有して構成されているが、この個数に限るものではない。
【0017】
図4は、面発光レーザ11の一つの発光素子の構成を示す概略断面図である。
図4において、発光素子20は、レーザ光を出射する出射口21、P型電極22、コンタクト層23、酸化狭窄部24、絶縁膜25、活性領域26、下部反射膜27、半導体基板28、n型電極29、上部反射膜30から構成される。
注入された電流が、活性領域26の中心部に狭窄され、電流密度が高められてレーザ発振を生じる。光出力方向は出射口21の一方向である。この為、レーザ光の光量調整は、この一方向の光束を利用しなければならない。これは、背景技術の説明で述べたとおりである。
次に、図1におけるマイクロスキャナ10の構成を説明する。
図5は、本発明のマイクロスキャナの構成を示す図であり、40個の光ビーム偏向素子40からなる例を示している。
なお、(a)は、非動作時、(b)は、一部の光ビーム偏向素子40が回転傾斜している様子を示している。
なお、図5において、光ビーム偏向素子の数は、40個であるが、この数に限るものではなく、また、面発光レーザの発光素子の数に対応するものとする。
【0018】
図6は光ビーム偏向素子の概略構造図であり、(a)は概略斜視図、(b)は、可動板を取った状態の概略斜視図、(c)は、可動板の構造を示す断面図である。
(a)に示すように、光ビーム偏向素子40は、実際に可動して光ビームを偏向する反射板としての可動板41を備えており、さらに、(b)に示すように、絶縁膜42、基板43、規制部材44、電極45(A〜D)、支柱47を有する。
詳しくは、基板43上に絶縁膜42を介し、基板43に対向して電極45A、45B、45C、45Dが配設され、電極面は図示されない絶縁膜で覆われている。また、支柱47は電極の機能も有している。
ここでは、電極数が4極の例を示しているが、必要に応じ任意の極数を設定することが可能である。
(c)に示すように、可動板41は光ビーム反射部41Aと導体層41Bからなり、(a)に示す状態で導体層41Bは、支柱47と電気的に接続されていて、導体層41Bに電位を付加することが出来る。
また、可動板41は規制部材44により移動距離が規制され、一定の角度で任意の方向に傾斜することが可能である。
図7は、光ビーム偏向素子の概略構造をさらに説明する図である。図7からわかるように、支柱47と規制部材44の組み合わせにより可動板41の傾斜角が設定可能とすることを示している。
光ビーム偏向素子40の製造方法は、特開2007−199096公報に開示されている方法を用いて実現できる。すなわち、半導体製造工程或いは、マイクロエレクトリックマシーンシステム製造工程を用いて製作可能である。
【0019】
図8は、ビーム偏向素子40の動作原理の概略を説明する図である。
(a)は、初期状態の可動板41の状態及び各電極の電位状態を示す図、(b)は、ある回転傾斜時の可動板の状態及び各電極の電位状態を示している。
なお、可動板41は、他の部材などに固定されていない。可動板41の中心部が、支柱47の上部に接触し、全体的に任意の電極側に傾斜している。
(1)初期状態では、電極D、電極C、電極Aの電位(TD、TC、TA)はそれぞれ0ボルト、支点電位(P0)Epボルト、電極B(TB)はE1ボルトとする。つまり、電極Dと支点との電位差は電極Bと支点との電位差より大きい状態である。
(2)(1)状態から支点電位をEpボルトから0ボルトに変更する。すると、電極Dと支点との電位差は同電位となり、電極Bと支点との電位差はE1ボルトとなり、電極Bと可動板41の間に静電引力が働き、可動板41は、電極B側に回転傾斜し、図7(b)の状態になる。
この様に、電極A、B、C、D及び支点に選択的に電位を付加することにより、任意の方向に、可動板41を回転傾斜が可能である。電極A側、B側、C側、D側に傾斜変位する4つの変位状態をとることが出来る。
図9は、可動板41の変位状態を、図1のA方向、B1−B3方向に当てはめた図である。
なお、これらの各電極側への可動板の変位動作は、図示しない制御部からの切替指定信号に対応して光偏向素子40ごとに個別に行うことで、光ビームの偏向方向(A方向、B1−B3)を適宜、的確に選択することができる。
【0020】
図10は、複数光ビーム発生手段11から出射された、複数ビームがビーム偏向素子40に偏向され、光ビーム出力量検知器17に導かれる様子を模式的に示した図である。
図10では、光ビーム出力量検知器17は単一個で、複数の光ビームを検知する構成になっている。
この様な構成においては、ビーム偏向素子40の機能として、入射された複数光ビームを偏向出射する場合、光ビーム出力量検知器17の検知部に適確に導光される必要がある。そのため、各ビーム偏向素子40からの出射光が、光ビーム出力量検知器17の同一点に導光されるよう、各ビーム偏向素子40が各々異なった偏向角を有するように設定しておく。このようにすれば、一つの光ビーム出力量検知部17に、適格に各光ビームを入射させることができる。
なお、偏向角度の設定は図6に示す様、支柱47の高さ方向の寸法と、規制部材44高さ方向の寸法の組み合わせにより決定できる。
【0021】
さらに、図11では、複数光ビーム発生手段11から出射された、複数ビームがビーム偏向素子40に偏向され、複数の光ビーム出力量検知器17に導かれる様子を模式的に示されている。
図11では、光ビーム出力量検知器17は複数個(図では4個)で、複数の光ビームを一ビームずつ検知する構成になっている。この様な構成においては、ビーム偏向素子40の機能として、入射された複数光ビームを偏向出射する場合、各光ビーム出力量検知器17(17−1〜17−4)の検知部に適確に導光される必要がある。そのため、各ビーム偏向素子40からの出射光が、複数の光ビーム出力量検知器17の検知エリアに導光されるよう、各ビーム偏向素子40が各々異なった偏向角を有するよう設定しておく。
このようにすれば、複数の光ビーム出力量検知器17に、各光ビームを適格に入射させることができる。
【0022】
また、図12は、一個の光ビーム出力量検知器17が複数の検知部から構成されている例を示す図である。この場合も、図11の場合と同様に、各ビーム偏向素子40が各々異なった偏向角を有するよう設定しておけば、各検知部に適格に光ビームを入射させることができる。
なお、図11、12の場合も、偏向角度の設定は図6に示す様、支柱47の高さ方向の寸法と、規制部材44の高さ方向の寸法の組み合わせにより調整できる。
図13は光出力制御手段80を付加した構成を示す図である。
複数の光ビームに対応する光ビーム出力量検知器17の出力結果に基づいて、光出力制御手段80により、光ビームの光出力を調整可能としている。
【0023】
図14は、従来の像担持体への光ビーム走査周期内での光ビーム状態と本発明の場合の光ビームの状態を比較する図であり、(a)は、従来の場合の光ビーム状態、(b)は本発明の場合を示す図である。
像担持体面上を走査する光ビームは同期検知器で光ビームを検知し、その出力信号をトリガーとして、担持体走査領域では、光ビームを適時点滅せしめ、像担持体に、像を形成する。担持体走査領域から外れたAPC(Auto Power Control)動作領域でAPC動作を実施し、該当光ビームの光出力レベルを調節する。図14(a)に示すように、従来このAPC動作領域では、光ビームの光出力調整は、調整時間との関係から、最大で8ビームが限界である。
本発明で用いる、多数個からなる複数光ビーム発生手段11としての、40ビームのマトリック構成からなる複数光ビーム発生手段の場合、従来のAPC動作領域では、全ての光ビームの光出力調整が出来ない。
そこで、図14(b)に示す様、像担持体への光ビーム走査周期内で、像担持体面上を走査する光ビーム以外の他の光ビームは同時に光出力調整を可能とすることを、本発明で提供する。図14(b)に示す、APC動作領域1では、担持体面上に出射される光ビーム以外の光ビームの光出力調整が可能であり、APC領域2では、担持体走査領域で用いた光ビームに関し、選択的に光出力調整を可能とする。
【0024】
次に、図1の光ビーム偏向手段14の構成について説明する。
図15は、光ビーム偏向手段14の第1の例を示す説明する図である。
シリコンからなる支持基板61に、可動板62の両端が弾性支持部63で支持されている。可動板62端面には可動電極65、反射面66が設けられ、可動電極66に対向する位置に固定電極64が設けられている。可動電極65と、可動電極に対向する固定電極64の間には例えば5μmのギャップを設けていて、この電極間に電圧を印加する事により電極間に静電引力が働き、可動板62の端面が固定電極64に引き寄せられる。
この様に構成される光偏向器の動作を、図15を参照して説明する。
図15において、可動板62に付設された可動電極65は支持基板61に引き出された図示されないパッドを介して接地される。
図15において、固定電極64と可動電極65の位置関係が図15(b)の(A)の状態において、固定電極64に、例えば30Vの電圧を印加すると、固定電極64と可動電極66の間に働く静電力と梁の捻り剛性により、可動板は図中時計回りに振れる。
その後、図15(b)の(B)に示す様に、可動板62が水平位置に達した時点で固定電極64への電圧印加をOFFにすると、可動板62は慣性モーメントにより時計回り方向に更に振れる。最終的に、図15(b)の(C)に示す様に慣性モーメントと梁の捻り剛性とが釣り合う位置まで振れる。最大振れ角まで到達すると一時停止しその後振れてきた方向と逆向きに振れを開始する。すなわち、図15(b)では反時計回りに振れ始める。反時計方向に振れ始めた後、適時固定電極64に再度電圧を印加すると、固定電極64と可動電極66の間に働く静電力と梁の捻り剛性により、可動板62は図中反時計回りに振れる。再び可動板が水平位置に達した時点で固定電極64への電圧印加をOFFすると、可動板62は慣性モーメントにより反時計回り方向に更に振れる。
最終的に、図15(b)の(A)に示す様に慣性モーメントと梁の捻り剛性とが釣り合う位置まで振れる。
固定電極64への電圧印加周波数を可動板62の共振周波数に合わせることに拠り変位の大きい振れ角で可動板62を揺動させることが出来る。
【0025】
図16は、光ビーム偏向手段14の第2の例を示す説明する図であり、(a)は概略斜視図、(b)は動作時の様子を示した図である。
ミラー基板72の梁73に支持されていない端部は櫛歯形状をなしており、端部に設けられた櫛歯形状の可動電極75、同一部位の内フレーム71に設けられた同じく櫛歯形状の駆動様の固定電極74に微小ギャップを隔ててかみ合う形で対向している。この櫛歯形状が駆動用電極として作用して、(b)に示すように梁73を回転軸としてミラー基板72は揺動する。
両電極74、75を櫛歯形状にすることにより、電極面積が大きく出来、従って駆動トルクをより大きくすることが出来、ひいては可動板の振れ角をより大きくすることが出来る。
この様に揺動する可動板(ミラー基板)72の反射面5に光ビームを照射すると、可動板72の揺動により、入射光を反射面76によって偏向することができる。
【0026】
図17は本発明に係る光走査装置を用いた画像形成装置の概略図である。
感光体145の廻りに帯電手段144、光走査装置143、現像手段142、転写手段149、クリーニング手段146を配し、画像形成装置制御部153により画像形成の開始を指示されると、感光体145は図示する様時計方向に回転して、光書き込み手段143は光走査装置を駆動し同期信号を生成し、帯電手段144により感光体を帯電し、光書き込み手段143にて図示していない外部入力装置から入力された画像データに対応し、前記同期信号に同期してビーム発生装置152を用い光ビームを生成し感光体145面上に潜像を形成する。
画像の階調値を表す0〜255の整数値画像データが入力され、その入力データに対応してビーム発光時間(幅)を設定する、ビーム発光時間設定データはビーム発生部に供給
され、ビーム発生部で生成された信号はビーム駆動部に供給され発光源であるレーザーダイオードに電流を供給しレーザーダイオードを発光させ感光体面上に潜像を形成するビームを生成する。現像手段142にて像可視化剤により可視化像を得る。用紙収納部140に収納された用紙は、給紙手段141により給紙され、レジスト部151により用紙搬送タイミングと書き込みタイミングを合わせ所定の位置に像可視化剤による顕在像を転写手段149にて転写可能とする。
用紙に転写された像可視化剤による顕在像は定着手段147で定着され、入力された画像データが用紙上に可視化固定される。
【符号の説明】
【0027】
10 マイクロスキャナ、11 複数光ビーム発生手段、11 面発光レーザ、12 カップリングレンズ、13 第1の光学系、14 光ビーム偏向器、15 第2の光学系、16 光同期検知器、17 光ビーム出力量検知器、18 潜像、19 像担持体、20 発光素子、21 出射口、22 P型電極、23 コンタクト層、24 酸化狭窄部、25 絶縁膜、26 活性領域、27 下部反射膜、28 半導体基板、29 n型電極、30 上部反射膜、40 光ビーム偏向素子、41 可動板、41A 光ビーム反射部、41B 導体層、42 絶縁膜、43 基板、44 規制部材、45 電極、47 支点、61 支持基板、62 可動板、63 弾性支持部、64 固定電極、66 可動電極、80 光出力制御手段、140 用紙収納部、141 給紙手段、142 現像手段、143 光走査装置、143 手段、144 帯電手段、145 感光体、146 クリーニング手段、147 定着手段、149 転写手段、151 レジスト部、152 ビーム発生装置、153 画像形成装置制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2002−78368公報
【特許文献2】特開平8−211320号公報
【特許文献3】特許第3011144号公報
【特許文献4】特許第3006178号公報
【特許文献5】特開平5−224751号公報
【特許文献6】特開2003−241120公報
【特許文献7】特開2007−79487公報
【特許文献8】特開平8−330661号公報
【特許文献9】特開2002−40350公報
【特許文献10】特開2007−329436公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ビームを発生するマトリックス発光素子構造を有する複数光ビーム発生手段と、
前記複数光ビーム発生手段から発生された複数の光ビームを感光体に向けて偏向するビーム偏向手段と、を少なくとも備えた光走査装置において、
前記複数光ビーム発生手段から発生される前記複数の光ビームの各々に対応し、対応する光ビームの偏向方向を選択的に変更可能な複数の光偏向素子を有するマトリックスビーム偏向手段と、
前記感光体に対する往復走査の際、往路では、前記複数の光偏向素子のうち、任意のグループの光偏向素子が、対応する光ビームを前記感光体に対する走査方向に偏向し、復路では、前記任意のグループは、前記走査方向以外の少なくとも1方向に偏向するように前記光偏向素子の偏向方向を制御する光偏向素子制御手段と、
前記少なくとも一方向に設けられ、当該方向に偏向された光ビームを受光して該光ビームの光量を検出する光検知素子と、
該検知素子の検知結果に基づいて、該検知結果に対応する光ビームの光量を前記複数光ビーム発生手段に調整させる光出力制御手段と、を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記光偏向素子は、基板の一方の面に設けた複数の電極及び電極として機能する支柱と、該支柱に一点を支持された前記光ビームを反射するための反射板を有し、前記反射板は、前記複数の電極のうちの一つおよび前記支柱の間の電位差によって発生する静電力により変位可能であり、前記複数の電極のうち、電圧を印可する電極を切り替えることによって前記光偏向素子の偏向方向を制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記複数の光偏向素子の偏向方向は、前記複数の電極に対する切替指定信号によって、各光偏向素子について個別かつ選択的に切替可能であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記マトリックスビーム偏向手段は、前記複数光ビーム発生手段と、前記ビーム偏向手段を結ぶ光路の途中に配設したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光偏向素子は、前記支柱の高さを変更することで、偏向角度を調整可能であり、
前記マトリックスビーム偏向手段において、前記走査方向以外に偏向される光ビームが、前記走査方向以外の1方向に出射される場合、当該光ビームが、同一の収束点に収束するように前記偏向角度を調整することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光偏向素子は、前記支柱の高さを変更することで、偏向角度を調整可能であり、
前記マトリックスビーム偏向手段において、前記走査方向以外に偏向される光ビームが、前記走査方向以外の複数方向に出射される場合、当該光ビームが、複数の収束点に収束するように前記偏向角度を調整することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−210916(P2010−210916A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56645(P2009−56645)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】