光起電力デバイス用途の半導体ナノワイヤアレイ及びその製造方法
【課題】光起電力(PV)電力のワット当たりの費用を下げる。
【解決手段】本発明は、電気・電子的用途のためのナノワイヤの作製に関する。アルミナを形成するアルミニウムが、VLS(CVD)プロセスにおいてシリコンナノワイヤを成長させるための触媒としても、半導体ドーパントとしても用いられるような、アルミナテンプレートを用いてシリコンナノワイヤを成長させる方法が開示されている。さらに、デバイス層間の電気的遮蔽を維持するためにアルミニウム及びアルミナの一部のマスキングを除去する様々な技術が開示されている。
【解決手段】本発明は、電気・電子的用途のためのナノワイヤの作製に関する。アルミナを形成するアルミニウムが、VLS(CVD)プロセスにおいてシリコンナノワイヤを成長させるための触媒としても、半導体ドーパントとしても用いられるような、アルミナテンプレートを用いてシリコンナノワイヤを成長させる方法が開示されている。さらに、デバイス層間の電気的遮蔽を維持するためにアルミニウム及びアルミナの一部のマスキングを除去する様々な技術が開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力デバイスを含む電気回路を製造するための、基材上でのナノワイヤの成長及び使用に関する。
【0002】
政府使用権
【0003】
米国政府は、本発明の一括払いライセンス及び米国エネルギー省によって与えられた契約番号DOE-DE-FG02-07ER86313に定めるところにより、限定的な状況において、特許所有者に妥当な条件で他者への許諾を要求する権利を有する。
【0004】
優先権の主張
【0005】
この特許出願は、米国特許出願第12/185,773号(特許文献1)の一部継続出願として、並びに米国特許出願第61/169,279号(特許文献2)、米国特許出願第61/177,265号(特許文献3)、米国特許出願第61/242,212号(特許文献4)及び米国特許出願第12/759,537号(特許文献5)の継続出願として、優先権を主張する。これらの米国特許出願は全て、引用を以て本明細書の一部と成す。
【背景技術】
【0006】
単結晶または多結晶シリコン太陽電池は、現在、主要な商業用の光起電力(PV)技術であり、商業市場の90%以上を占めている。デバイス設計の進歩により、結晶シリコン太陽電池は既に16〜20%のモジュール効率に達している。太陽電池効率を単一バンドギャップシリコン太陽光変換デバイスの31%の理論的限界に近付けるための努力が続けられているが、このクリーンな代替発電方法は、主として光起電力モジュールを製造するために用いるシリコンウェーハの製造コストのせいでモジュールコストが高いことが妨げとなって、市場に受け入れられていない。現在、太陽光発電は米国のエネルギー供給源の0.1%未満に過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第12/185,773号明細書
【特許文献2】米国特許出願第61/169,279号明細書
【特許文献3】米国特許出願第61/177,265号明細書
【特許文献4】米国特許出願第61/242,212号明細書
【特許文献5】米国特許出願第12/759,537号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このクリーンで豊富な電力源の潜在能力を実現するためには、PV電力のワット当たりの費用を下げると同時にPV電力をより容易に消費者が利用できるようにする新たな技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示されているPVデバイス工学への独自のアプローチは、動径方向にpn接合を有するナノワイヤ(NW)アレイ配列を利用することによって、高純度シリコンウェーハの必要性を回避している。ナノワイヤ・アプローチは、シリコンの使用量を、アクティブ光変換ナノ構造部品を構成するために必要な不可欠量にまで減らす。動径方向のpn接合は、NWの小さな直径を利用してキャリア収集効率を向上させるとともに、ナノ構造の高アスペクト比を利用して光吸収を強化する。動径方向のpn接合では、光吸収の方向とキャリア収集の方向とは、これら2つの関連性のある次元を直交させることによって切り離されている。NWは、長手方向軸線に沿って光学的に厚いので光吸収を最大にするが、動径方向には薄いので光発生キャリア抽出距離を短くする。これらの幾何学的属性は、平面構造に比べてデバイス効率を増大させる。NWは、典型的にはn型シェルで被覆されたp型結晶シリコンコアを有し、必要に応じてNWをpn接合またはpin接合として作製することができる。ここで、iは真性シリコンである。
【0010】
単結晶半導体ナノワイヤアレイのボトムアップ的な作製手法は、結晶Si太陽電池を製造するための低コスト製法を可能にする。シリコンナノワイヤ(SiNW)成長プロセスは、気相−液相−固相(VLS)成長として知られており、金属ナノ粒子を触媒として用いて気相大気からSiNWを成長させるステップを含む。PVデバイスまたは他のデバイス用途に対して、同様のVLS法を用いて、シリコン、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化ガリウム(GaN)または他の半導体NWを成長させることもできる。VLSプロセスによって作製されるNWアレイを太陽電池に応用することの興味深い側面は、ガラスや金属箔などの低コストの非結晶基材(基板)上で、高成長率(1〜10ミクロン/分)及び低温(400〜600℃)で、成長後処理が最小限ないし全くなしで、単結晶半導体NWを得ることができることである。このことは、シリコンウェーハベースのアプローチに比べて、製造時の著しいエネルギー及び材料を節約し、製造費用の低下をもたらす可能性を提供する。
【0011】
シリコンナノワイヤのVLS成長のために、典型的には金(Au)シードが用いられるが、それは主として低いAl−Si共晶温度(363℃)及び好ましい濡れ性に因るものであり、それがナノワイヤの先端での安定した液体合金相の形成をもたらしている。しかし、Auは、5×1017〜1.5×1018cm−3という高濃度でVLS成長中にSiNWの格子に取り込まれ、Siのバンドギャップ内に深い準位の電子状態を形成し、再結合のための中心として働くことにより電荷キャリアの寿命を低下させる。しかし、その代わりに、VLSプロセスにおける触媒としてアルミニウム(Al)を用いることができる。
【0012】
アルミニウムは、Si処理ラインにおいて日常的に使用されるので、SiNWを触媒するための非常に魅力的な材料になる。AlをSi格子に加えるとSi価電子帯に近い状態が作り出されるので、Alは、PVデバイスなどの半導体用途に適切なp型ドーパントである。Al−Si相図は、Au−Si相図と類似しており、かなり低温の共晶(577℃)を形成し、PVデバイスに利用する場合にはAlがSiNWのVLS成長のための適切な触媒になる。さらに、気相Si前駆体を用いて500℃より低い温度でSiNWを作製するために気相−固相−固相を同様に用いることができる。触媒シーディングプロセスを省き、低コストの材料で働き、最小の処理ステップしか必要としない処理技術は、NWデバイスの費用効果の高い製造及び関連する利益の全てを実現するために取るべき道である。
【0013】
本発明の一実施形態には、Al金属表面上またはアルミニウムで被覆された他の導電性基材上にナノ多孔質陽極酸化アルミニウム(AAO)層を形成するためにAl金属の層を部分的に陽極酸化するステップと、その後にVLS技術を用いてAl金属を触媒として用いることによってシラン(SiH4)または他のSi含有(Si2H6、SiCl4など)ガスを含む気相大気から高アスペクト比のSiNWの軸方向成長を触媒するステップとを含む。Al金属基材を出発物質として用いることができ、あるいは別の基材材料にAlを被覆膜または層として成膜することができる。このプロセスによって成長させられるSiNWは、ナノ細孔の底部でのAl−Si共晶相の形成を経てAl/AAO界面で核形成し、AAOの細孔の中から外へ上に向かって成長し、自由空間へ延出する。SiNWは、効果的なp型ドーパントとして働く体積濃度1018/cm3ないし1020/cm3のAl原子を含むので、SiNW成長中にさらなるドーパントガスソースを追加する必要がない。適切に構築されたAAO/Al基材が用いられるとき、NWは、PVデバイスの陽極であるAl金属とオーム接触している。続いて、コンフォーマルなn型Si層が好適にはエピタキシャルにその場堆積され、数多くのpnダイオード接合を作り出す。好適実施形態では、反応器からデバイスを取り出すことなしに、n型層が堆積される。接合領域を最大にし、ダイオード領域に電気的導通を提供するために、n型被覆膜より前に、AAO表面全体を覆う薄いp型層を形成することができる。この追加層は、何らかの理由によりシリコンナノワイヤで塞がれていないAAOの細孔を埋めることによって、基材からN層を絶縁することもできる。必要に応じて、pinダイオードを形成するために、または離散的なp(n)型ナノワイヤとそれに続く連続的なn(p)型被覆膜との間の連続的な層として、真性材料層をp層とn層の間に加えることができる。多孔質AAO層は、SiNWの直径及び間隔を制御するテンプレート(鋳型)としても、n型層をAl基材から絶縁する絶縁体としても働くので、多機能である。n型Si層上に透明導電膜が堆積され、陰極を形成する。それゆえ、1つの材料Alが、SiNW成長のための触媒と、PV電極(陽極)と、p型SiNWドーパントソースと、絶縁層(多孔質AAOの形で)と、NWテンプレート(AAO)と、デバイスの機械的支持構造とを提供する。
【0014】
用途の広いSiNW作製のためのこのプロセスにより、軽量、多用途、低コストかつ新規な設計属性を持つ太陽電気デバイスを新たに作り出すことができる。確立された優位なSiウェーハベースのPVデバイス市場と互角に戦うために、電気自動車のボディー上のPV被覆のためのコンフォーマルなAl箔仕上げまたは塗布されたAl層、PV繊維製品に応用するためにAl糸上にSiNWを設けて巻き取ったもの、または単にガラスパネルまたは他の絶縁基材上に堆積されたAlを含む、容易に作製される多様な実現形態を用いて、ナノPV発電を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Alコアと、Alに結合されかつ絶縁AAO被覆を貫通して成長しているp型SiNWと、それを被覆している連続的なN型Si層とを示すSiNW PVデバイスの概念図。n型層は、Alコア電極(陽極)と対極の外側導電性電極(陰極)で被覆されている。AAOは、陽極と陰極間の電気絶縁を提供する。
【図2】この図は、Al金属上の多孔質陽極酸化アルミニウム皮膜の断面図を示す。
【図3】Alワイヤの表面上に作製された多孔質AAO層を倍率レベルを上げて示すSEM写真。
【図4】陽極酸化プロセスの略図,(a)高電圧で陽極酸化された、形成されたAAOナノ細孔としてのAn、(b)より低い電圧での連続降圧陽極酸化が、チャネル底部においてナノフィンガー(nanofinger)を作り出す、(c)リン酸エッチング溶液が、細孔の底部で陽極酸化層を薄くすると同時に細孔を所望の直径まで広げる。
【図5】SiNW成長のための低コストで効果的な基材を示すSEM写真。
【図6】ガラス/Al/AAO及びSiNW構造全体を示すガラス基材上の部分的に陽極酸化されたAl上で成長させたSiNW(左,30分,成長)、ガラス/Al/AAO/SiNW界面の詳細を示す界面の中間倍率画像(中央,5分,成長)及び高倍率画像(右,5分)。
【図7】多目的SiNW PVデバイスアーキテクチャであって、硬質平面デバイスのためのガラス上にあるもの(左)及びコンフォーマル構造のためのアルミニウムのバルク上にあるもの(右)。
【図8】バリア層を示すAl金属上のAAOのSEM画像。
【図9】シュウ酸、マロン酸及び酒石酸中で陽極酸化されたアルミニウム(左または右)。
【図10】糸の周囲付近に多孔質アルミナテンプレートを成長させるために用いられる陽極酸化セルの図。右側の図は、均一な多孔質層成長を保証することになる均一な電界パターンを示す。
【図11】ナノワイヤの先端であって、該先端上に明らかな残存Al触媒物質があるもの(左)及びないもの(右)を示す高倍率SEM画像(10万倍)。
【図12】降圧及び細孔拡張の前(左)及び後(右)のAl金属上のAAO。
【図13】(a)ナノワイヤ軸線に沿って均一な被覆厚さを示す動径方向pn Siナノワイヤの低倍率TEM画像、(b)結晶p−Siコア及び多結晶n−Siシェル層を示す動径方向pn Siナノワイヤの高倍率TEM画像。
【図14】Al基材(またはAl被覆された他の基材)の領域であってナノワイヤ成長が望ましくない該領域に作製することができる無孔性酸化アルミニウムのSEM写真。ナノワイヤは、無孔性酸化物を通って核形成しない。
【図15】PV糸製造のためのプロセス図。
【図16】「降圧」陽極酸化プロセスに用いられる電流−電圧スケジュール。
【図17】図18の陽極酸化工程を用いた後の、細孔拡張の前(左)及び後(右)のAl糸上の多孔質AAO。
【図18】代替的な「降圧」陽極酸化手順及びAl糸の表面上に結果的に得られたAAOを示す。
【図19】作製方法の複数のステップを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、PVデバイスを構成する部品を含むSiNWアレイベースのPVデバイスの設計と、PVまたは他のデバイス用途のためのシリコンナノワイヤアレイ(SiNW)の段階的作製の基本プロセスとを含む。構築されたSiNWアレイをPVデバイス設計に組み入れる技術に加えて、他の材料構造に結合された部分的に陽極酸化されたAlまたはAl層上にSiNWアレイを作製する方法が示されている。本明細書に記載の方法及び設計が、Al以外の出発物質、Si以外の材料から作られるアクティブ光電子ナノ構造、及び光起電力(太陽光発電)以外の作製及び機能のための金属及び半導体のナノスケール構造を用いるデバイスにまで拡張されることができるものであることは、当業者には容易に分かるであろう。本願では、ナノ(ナノワイヤ、ナノスケール、ナノ細孔など)なる語は、1若しくは複数の関連空間次元(方向)において、形態または機能のいずれかにおいて、1〜1000nmの特徴的な長さスケールを、有するか、利用するか、組み入れるか、または別な方法で顕在化する材料構造を指す。
【0017】
1つの好適実施形態では、本発明は、能動部品(アクティブ部品)として動作する光電子デバイスを、半導体ナノワイヤアレイを利用して作製する方法を特徴とする。
【0018】
基材の作製−アルミニウムの陽極酸化
【0019】
アルミニウム(純度99.8%以上)部品(箔、シート、糸、被覆基材、または他の形状)を先ず、エチルアルコール(95%)と過塩素酸(ACS,60〜62%)が4:1の溶液中で、5℃より低い温度で電解研磨し、輝く滑らかなAl表面が得られるように2アンペアの電流に制限して、10ボルトで3分間、Alに陽極バイアスを印加する。電解研磨においても、陽極酸化ステップにおいても、均一な表面を達成するために陽極と対称な陰極(対電極)形状を有することが不可欠である。対称性は、陽極酸化されている構造の表面全体にわたって均一な電界構成を確実にする。それゆえ、Al糸の場合であれば、陰極は糸陽極を中心に有する円筒形になるし、平面基材(基板)の場合であれば、陰極も平面対称性を有することになる。対称性は、陽極表面上での均一な電界分布と、従って均一な電解研磨(または陽極酸化)とを保証する。ここで用いられる陰極は、典型的にはステンレス鋼メッシュである。電解研磨の後、Al(基材)を脱イオン水ですすぎ、その後、酸性電解液(硫酸、シュウ酸、グリコール酸、リン酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、またはその他)中で陽極に陽極酸化する。陽極酸化(及び電解研磨)の前に、Al部品の電解液と空気との界面を、界面での電気化学的絶縁破壊防止のために、ポリマー(ゼネラル・ケミカル社(General Chemical)製のCoscoatTM)でマスキングする。電解液の種類及び濃度、浴温、並びに陽極酸化電圧を変化させることによって、ピッチ35〜980nmで細孔径が2〜900nmであるナノ多孔質Al2O3を形成することができる。好適実施形態では、直径1mmのAl(99.999%)糸が、3Mマロン酸溶液中で、5℃、130ボルトで陽極酸化される。陽極酸化は、コンピュータ制御されたバイポーラ電源を用いて行われる。陽極酸化は先ず電流を監視しながら一定電圧(CV)モードで行われる。電流は、低い電流から開始され、酸化が発生しかつアルミニウム表面全体でアルミナ細孔が核形成するにつれて上昇し始める。多孔質AAOの島が、Al表面付近でランダムに核形成し始め、表面全体がこの多孔質ネットワークによって覆われるまで、長さに沿って横方向に浸透する。電流は一定電圧(CV)でゆっくりと上昇するが、これは島状成長の進行を示すものである。電流のプラトー(水平状態)が始まったら、これは、下地金属を覆う多孔質AAO層へのAl金属表面の完全転換すなわち定常状態を示している。この時点で、細孔の直径及び間隔は既に設定されているので、電流の印加を続けるとAAO厚さ(細孔深さ)が増加する定電流(CC)領域(プラトーレベルで)への制御された移行が行われる。そして、細孔が所望の深さ(1〜100μm)に到達するまで陽極酸化を続ける。その後、陽極酸化をCVモードに戻し、引き続いて、より小さなナノフィンガー突起部分が細孔の底部から酸化バリア層内へ延在するように1〜5分間隔で1〜10ボルトずつ逐次的に電圧を下げる。この「降圧」陽極酸化法は、一連の各ステップでの電流低下−上昇−プラトーの順序によって特徴付けられ、これにより陽極酸化フロントで成長するAAOバリア層が薄くなる。残りのAAOバリア層の完全性を崩壊させ、後に続く細孔拡張プロセスがバリアを完全に除去するのにより効果的であるようにするために、降圧プロセス後に、1分間のさらなる電圧ブラスト(元の陽極酸化電圧(本明細書においてはマロン酸に対して130ボルト)まで増加する)が用いられることもある。5wt%のリン酸溶液(37℃)中でのAAOのエッチングは、細孔の直径を広げる(増大させる)のみならず、NW作製プロセスの次のステップのためにAl/AAO界面のAlに到達することができるように細孔を底部で全開にする。バリア層は除去されることができるが、空気に曝されると、Al表面上に薄い(4nm)自然酸化物層が100psで形成される。バリア層を薄くするための別の技術には、陽極酸化浴及び電圧を、成長フロントでずっと小さな細孔を作り出すスケジュールに切り替えるステップが含まれ(上記のマロン酸(2M,130V)に対しては、20〜40Vの電圧で1〜10分間、0.3重量%のシュウ酸に切り替えられる)、さらに、リン酸細孔拡張/バリア除去ステップが続く。この時点で、残存プロセス薬品を除去するためにAl/AAO糸基材を脱イオン水で十分にすすぎ、その後、SiNW成長が可能な状態になるように空気中で乾燥させる。
【0020】
別の実施形態では、陽極酸化プロセスでは、プロセスが約80Vに到達するまで6−6Vステップで、その後プロセスが約60Vに到達するまで6−3Vステップで、5℃の温度で3Mマロン酸を用いた。プロセスを49分35秒間実行した。その後サンプルを37℃の温度で23分間、H3PO4溶液中で細孔拡張した。
【0021】
ナノワイヤ成長
【0022】
アルマイト上でSiNWを成長させるために、化学蒸着(CVD)反応器を用いる。VLS SiNW成長は通常、シリコン原料としてSiH4(10% in H2)を用いて、550〜650℃で、低圧力(〜10−500Torr)の等温石英管反応器内で行なう。好適実施形態では、反応器圧力38Torr、温度600℃で、CVD反応器内の流量が100sccm、シランが90sccm(10% SiH4 in H2)である。これらの条件下で成長させたNWは、大部分は、AAOの細孔内のSiのランダムな核形成に因り<110>、<111>または<112>の成長方向を有する単結晶である。適切な圧力及び適切な温度で、SiH4は細孔の中に拡散し、好適には細孔の表面または壁ではなく細孔の底部において触媒表面上で分解する。成長温度を高くしたり反応器ガス混合物中の水素割合を低くしたりすることで、VLS成長と比べてシリコン薄膜堆積速度の増大がもたらされる。温度、圧力、流量及び関連ガス濃度のパラメータ空間は、基材、触媒の性質及び所望の結果に応じて、多数の許容できる結果を生じさせることができる多くの可能な状況をカバーしている。この実施形態のために説明されているパラメータは、前節で述べたAl/AAOの糸または平面基材(基板)に適している。Siがシラン分子から分解されるにつれて安定した液体合金相(Si/Al共晶)が生じ、融液中のSi濃度が臨界値に達したときにSiNW結晶相が生じる。唯一の制約のない空間方向は、細孔の底部を起点として基材の表面へ垂直に上がるベクトルであるので、Al/AAO界面で結晶が生じ、プロセスが進むにつれて共晶がNWの先端で生じ、最終的にはAAOの細孔の外面開口部から現れる。この相は、〜577℃で生じるAl−Si共晶相である。SiNWは、AAOの細孔の底部で核形成し、次に細孔境界を越えて現れ、適切な条件下で、AAO細孔径を維持しながら、自由空間で成長し続ける。Al−Si融液は、成長フロントでナノワイヤの先端に存在し、気相から融液内にSiが絶えず補充される限り連続的な成長のための手段を提供する。Alの一部がシリコン格子に取り込まれているので、成長が続けば、最終的にはAlは使い果たされることになり、ひいてはNW成長プロセスが終わる。底部におけるAAOバリア層の厚さまたは存在に加えて、AAO細孔の直径及び深さを調節することによって、共晶相系を質量(サイズ)調整し、SiNW成長プロセスに用いられるCVDパラメータ設定の系統的な制御を同様に用いてNW成長フロントにおけるSi−Al共晶相のサイズを調節することによって、細孔から現れるAlの量を制御することができる。一実施形態では、たとえAAOの細孔の底部にかなりの量の(厚さ10〜200nm)バリア層が存在していても、SiNWは核形成することができる。このCVD(VLS)プロセスは、(オーム接触している)Al金属から現れるSiNWを生じさせ、SiNWは、AAOの細孔を通って上に向かって成長し、細孔径(100〜250nm)を維持しながら、1〜500μm(好適には10〜30)の長さで自由空間へ延出する。上記したようなAl触媒を用いたSiNWの成長により、〜1−5×1019/cm3のAl濃度でSiNWが作製される。比較的高濃度のドーパントは、直列抵抗を減らすために高濃度にドープされたワイヤコアが必要な、動径方向にpn接合を有するSiNWデバイスの作製に有利である。高濃度ドーピングはまた、少数キャリア拡散長さを減少させ、そのことは100μmの固有キャリア抽出距離を有するウェーハPVシステムなどのデバイスにとって問題であるが、ここで示されている動径方向配列の場合、動径方向キャリア抽出距離は数桁小さいので、このシステムの固有距離(100nm)にわたって尚も高キャリア抽出率を有すると同時に高濃度ドーピングプロファイルを可能にさせる。
【0023】
上記したNW成長プロセスは、シリコンナノワイヤが1つの細孔から出てくるように、理想的にはNWと細孔とが1対1対応になるように、アレイ状に複数の離散的なSiNWを生じさせることができる。この場合、これらのNWは、Al金属を介して並列回路で電気的に接続され、Al金属からNWが核形成される。一定の表面積割合のAAO外周面の上には直接p型シリコンが形成されないが、NWのアスペクト比が大きいので、NWの有効表面積は尚もAAOの「フットプリント」表面積より2〜1000倍大きい。さらに、NWは完全に真っ直ぐではなく、この非線形性が、入射放射線の100%が(たとえnまたはi−n型被覆の前であっても)AAO表面の前にSiに当たることを効果的に保証する。
【0024】
また、別の実施形態では、p型皮膜(原料ガス中にホウ素などのドーパントの投入を必要とすることになるであろう)を意図的に堆積することで、AAOの如何なる表面にも確実にp型被覆膜が施されるようにすることができる。p型被覆膜は、構造(皮膜に結合されたナノワイヤ)の外面に電気的導通をさらに追加することになるであろう。
【0025】
別の実施形態では、(離散的なNW配置または連続的な皮膜に結合された状況のいずれかで)p型上に真性シリコン層を成膜して基礎を形成し、さらにn型層が成膜された時点で数多くのpin接合が作られるようにする。
【0026】
pn接合の形成
【0027】
p型NWのVLS成長後にコンフォーマルなN型シリコン皮膜が堆積され、それによって糸または平面基材の外周上にpn(またはpin)ダイオード接合(任意選択で、ナノワイヤ成長後に真性シリコン層を堆積することもできる)の完全な機能アレイが構築される。n型シリコン層は、VLS成長の直後に、材料を空気に曝すことなく、反応器内(その場)でp型NWの外面上にCVDによって堆積されることが好ましい。n型層の前に真性層または追加のp型被覆膜が成膜される場合には、CVDシステムの封止状態(真空)を破ることなくこれらの手順を実行することも好ましい。
【0028】
これは、SiNW表面の酸化を回避するために望ましい。というのも、p層とn層の間に存在するNW表面上に酸化物層があれば、キャリア再結合をもたらしかねないような界面状態を作り出すことによって、デバイス性能を低下させることになるであろう。酸化物層を形成後に取り除くには、n−(i−n−)型被覆の前に、化学エッチング(BOE)、プラズマ除去、または他の酸化物除去法のいずれかによる酸化物除去ステップが必要になるであろう。その上、その場処理を用いて、または適切な条件下でBOE中での酸化膜エッチングによって、NW表面上のSi原子ダングリングボンド(表面状態)を水素で不動態化することができる。これは、大気(酸素/酸化)暴露前に行われれば、表面をしばらくの間保護することができる。
【0029】
n型膜のその場堆積は、p型SiNWのVLS成長後に短い休止期間を導入することによって達成されるが、当該休止期間中には、窒素(または他の不活性ガス)パージを用いてSiH4が反応器から切り替えられ、その後、所望のドーピングを達成するために系統的に決定された(10−3ないし10−4)PH3/SiH4ドーパントレベルを用いてn型シリコン薄膜が成長させられることになる。このステップでは、反応器温度は600℃ないし650℃に設定される。その結果、成長条件を調節することによって、NW成長が優勢である領域と薄膜堆積が優勢である領域を切り替えることが可能である。n型Siシェルは、これらの堆積温度において多結晶であるが、ナノワイヤの長さに沿って均一な厚さを呈する。しかし、別の実施形態では、ジシラン(Si2H6)は、より低温でエピタキシャルn型皮膜を生じさせることができるシランの代用品である。n型薄膜被覆プロセス中に、Siは実質的にCVD反応器内の全表面を被覆するので、堆積後に、後で光起電力デバイスなどのデバイスで用いられることになる表面の特定の被選択領域、とりわけ基材上の特定の電気接触部分を保護するかあるいはその反対で露光する(または後でn型被覆膜を選択的に除去する)ために適切な手段が講じられなければならないことに留意されたい。表面のCVD前の形態、構造及び物理的性質を保持するために、マスキング剤を用いて表面の保護/清掃を促進することができる。好適実施形態では、NW成長プロセスにおいて(ナノワイヤの先端上で)過剰な全Alが消費されるが、NWの先端または他の部分から過剰Alを除去する必要がある場合には、エッチングのパージ工程中にHCLガス混合物を導入してAlをエッチングすることによって、除去をその場で達成することも可能である。反応器温度を上昇させてNWの先端から過剰なAlを蒸発させることもできる。
【0030】
光起電力デバイスを作製するための様々な被覆技術、とりわけCVDを使用するには、様々な電気的に異なる層同士が何かの事情でくっついて短絡することがないことが条件である。この場合には、適切な電気的遮蔽を維持するために、被覆を施すことを制限するマスキング技術が考案される。しかし、当業者は、離散的な導通を必要とするデバイスの任意の他の部品及び被覆膜から電気的に絶縁されている電気接触を維持するために、エッチング技術を用いて不要な被覆膜を除去し得ることが分かるであろう。
【0031】
n型被覆膜が不要である基材上の表面領域からn型被覆膜を制限する技術には、化学エッチングを用いた処理後の除去、機械的除去(研磨、アブレーション、反応性イオンエッチング)、マスキング、または、適切な位置にある意図的な犠牲辺縁部(最終的なCVD被覆が完了した後に、剥離、切除、エッチング、または別な方法で除去される)を有するように適切なサイズの基材を作製することが含まれる。別の実施形態では、デバイスが形成された後に平面基材(基板)の検査を行い、SiNWで完全に覆われた部分を特定し、次にこれらの部分を切り離し、そして完全なPVデバイスに仕上げる。
【0032】
別の実施形態では、p型ナノワイヤ上にp型シリコン層が被覆される。SiNWによって塞がれていないAAOの細孔や、基材に短絡をもたらすであろう他の欠陥がある場合、p型層は、細孔及び/または欠陥を被覆し、最上部に被覆されるn型層から底面の基材を絶縁する。別の実施形態では、デバイス上に絶縁層を被覆し、その後、絶縁層をAAO層のピンホールがない領域から選択的にエッチングすることができる。SiNWの欠落があることが典型的であるような基材の領域を、陽極酸化プロセスによって細孔が生じないようにマスキングすることができる。これらは、基材の縁部に沿ったものであり得る。さらに別の実施形態では、完成した基材を検査して、欠陥またはSiNWの欠落と、従って短絡とがある領域を検出する。この実施形態では、光電子検出器を用いてナノワイヤの有無を検出するために、ナノワイヤの吸収特性が用いられ得る。
【0033】
SiNW成長または被覆プロセスに対して、低温及び他の関連パラメータでプラズマ促進CVD(PE−CVD)技術を用い、同様の結果を達成することもできる。
【0034】
PVデバイスの完成
【0035】
PVデバイス(この実施形態ではPV糸)の形成を完了するために、n型層上に外側導電性被覆膜(陰極)を成膜しなければならない。理想的な陰極は、(金属の電気伝導率のような)高い電気伝導率を提供しつつ、入射光の100%を透過させるものであろう。それゆえ、透明導電体に対する様々な選択肢がある。エイチ・シー・スタルク社(H. C. Stark)は、液体のPEDOT懸濁液であるクレヴォイス(Clevios)1000(登録商標)という製品を製造しているが、これは、吹付け塗布または浸漬塗布可能であり、太陽光の波長帯において最大90%の透過率を有し、シート抵抗が〜100Ω/sqである。同様に、エイコス社(Eikos)は、カーボンナノチューブ懸濁液であるインビジコン(Invisicon)(登録商標)という製品を提供しているが、これも、吹付け塗装または浸漬塗装によって塗布することができるものである。吹付け塗装または浸漬塗装技術は、コスト及び塗布の容易さの見地から魅力的であるが、被覆の均一性と、SiNWとSiNWの間の全てのナノメータスケールの引っ込んだ場所及び割れ目が材料で完全に電気的に被覆されるようにするように塗布する能力とに限界がある。均一な被覆がかなり期待できる陰極を成膜する別の方法は、GVD社(GVD Inc.)によって開発されたPEDOT被覆などのCVDの適用である。どのように成膜されるにせよ、被覆膜は、PVデバイスの機能を最大にするために十分な伝導率及び透明度を与えるものでなければならない。電気伝導率の不足は、周期的に透明陰極と交差するような陰極母線を用いてAl金属陽極構造の有効伝導率に近い「有効伝導率」を提供することによって、埋め合わせることができる。このPV糸の実施形態では、らせん巻きの純度の高い銅またはアルミニウムワイヤが用いられる。平面実施形態は、透明導電体の上でアルミニウムをメッシュその他のパターンで蒸発させることができる。透明導電膜を成膜した後に、表面に透明な環境に配慮した保護層を成膜すると、デバイスが完成する。この材料は、シリコンベースの樹脂、テフロン(登録商標)、パリレン、ポリイミド、または柔軟かつ環境的(UV)劣化への回復力に富むような他のロバストで透明な不活性非導電層であり得る。
【0036】
好適実施形態では、Al金属糸を巻き取ったものを、陽極酸化し、細孔拡張し、リールツーリールプロセスを用いてCVD反応器内に入れ、ナノワイヤを作製してNWに逆伝導型のドーピングの被覆を施し(1ステップで)、除去し、おそらくはCVDプロセスを用いて電極(陰極)で被覆し、続いて保護ポリマーで被覆することになる。リールツーリールプロセスでは、リールツーリールプロセスに固有の温度及び加工歪みにさらされたときに材料の歪み及び変形を最小限にするために、糸は、反応器を通過する際に垂直に向けられ得る。
【0037】
上記実施形態では部分的に陽極酸化されたAl糸上にSiNWアレイを作製する方法について述べたが、当業者は、同じ基本手順を、Al金属の別の幾何学的形態、すなわち、AAOの細孔の底部に十分なAl金属が存在する状態でAl金属上にAAO層を形成するのに十分な厚さ(1〜2ミクロン)のAl金属の層に適用し、それによってSiNWを適切に核形成しかつ尚も十分な導電性Al金属層を光電子デバイスの陽極として用いるために残せることを理解するであろう。一実施形態では、ホウケイ酸スライドグラスであって、Alで被覆され、部分的に陽極酸化された後、電気接触に十分な残存Al層によりSiナノワイヤを成長させたものが用いられる。この実施形態では、ナノワイヤは5分間成長され得る。反応器パラメータは、温度600℃、圧力38Torrの反応器内で、シラン流量50sccmであり得る。
【0038】
ガラス基材の実施形態では、Alの層(厚さ1〜20ミクロン)が、電子ビーム蒸着法、熱蒸着法、またはスパッタ蒸着法、電気めっき、物理的被覆または他の技術によって、表面上に堆積される。ガラスは、さらなる導電度または他の電気的機能を提供するために、Al被覆の前にガラス表面上に別の導電層(ITO、金属など)を有することができる。その後、Alは、上記で既に説明したAAO作製技術を用いて部分的に陽極酸化され、その際、多孔質AAO層が、VLS技術を用いて、Al金属上に、AAOの下に十分な量のAl金属が保持された状態で、導電体としてもSiNW成長のための触媒としても機能するように、作製されるようにする。多孔質AAO層形成及びSiNW成長のための基本プロセスは、上記したのと同じ基本概要に従う。所望の細孔径及び中心間距離に応じて、適切な電解液の種類、濃度及び陽極酸化電圧が用いられる。細孔の底部に生じるAAOバリア層の完全性を降圧または電解変質技術を用いて崩壊させ、それにより、リン酸(または他の酸)エッチング法を用いてバリア層を部分的または完全に除去することができる。その後、同様のCVDプロセスを使用して、VLSプロセスのためにAlを触媒として用いてNWを成長させる。
【0039】
上記したように、Si皮膜または被覆膜を堆積するとき、材料は反応器の表面の大部分を被覆することになる。このことは、後で導電面に到達し、デバイスの陽極または陰極として導電面と接触できるように、基材の特定の領域のマスキングを除去する必要性を生じさせる場合がある。さらに、層状配列(例えばAl/AAO/ガラス)では、導電性(ドープされた)Si被覆膜が、Al層と電気接触をなしてデバイスの陽極及び陰極を短絡させることがある。それゆえ、完全な電気接触が形成された後に除去される犠牲縁部を用いてもよいし、あるいはマスキング技術を利用することができる。金属の糸すなわちワイヤ配列上で成長させたSiNWアレイにおいては、犠牲縁部がなく、電気的短絡は、ワイヤ原料を反応室内に連続的に供給することによって回避することができる。この実施形態では、糸の端部は反応器の外に置かれるので、n型堆積に関連する「完全被覆」問題の一部または全部が解決される。あるいは、糸を完全に被覆し、電気接触のために陽極(陰極)を露出させるべく端部を機械的または化学的にトリミングすることができる。箔でも同様の技術が用いられる。SiNW核形成を防止し、導電性材料の露出した縁部がないようにするために、箔の縁部の周りに無孔性酸化アルミニウム層を作ることによって、箔の縁部を絶縁することができる。箔の例における別の選択肢は、完全な陽極、SiNW、ダイオード接合の形成及び最終的な電極の堆積の後に、縁部をトリミングして、起こり得る短絡を排除することである。
【0040】
別の実施形態では、ナノワイヤは、細孔拡張エッチングなしでもAlから離れて核形成することになる。すなわち、AAOバリア層はまだ細孔の底部にあるが、それにもかかわらずナノワイヤは成長するのである。さらに、反応器内に水素を導入してAAOをAl金属に分解し、AAOを減らすことによってバリア層を幾分か薄くすることができる。
【0041】
別の実施形態では、n型材料の堆積中の反応器の温度は、アルミニウムの融点をはるかに下回る温度にまで低下させられる。例えば、アルミニウムの融点は660℃である。従って、CVD温度を約650℃まで低下させ、それにより、シラン、水素及びホスフィンをドーパントとして用いてn型層でデバイス(SiNW)を被覆することができる。SiNWを作製するために、より低い約550℃の温度を用いることもできる。シリコン堆積によく用いられるジシランや四塩化ケイ素などの他のガスを用いて、コンフォーマルなn型層を、エピタキシャルに、またはAlの融点を下回る温度で多結晶構造で、得ることができることも分かる。
【0042】
別の実施形態では、SiNWは、VLS技術とは対照的に、共晶温度より低い温度で、気相−固相−固相(VSS)成長メカニズムによって作製される。
【0043】
別の実施形態では、SiNWは、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)プロセスを用いて、さらに低い温度で作製される。
【0044】
本明細書に開示されている製造方法は、テンプレートによりSiNWを成長させる多くのVLS法、すなわち、典型的には金触媒シード(種)を電気化学的に堆積して市販のAAO膜にするアプローチとは異なる。本発明では、AAOの下にあるAl金属が触媒として用いられる。それゆえ、どの細孔も触媒を有し、SiNWは夥しく成長する。このプロセスによって成長するSiNWは、Al−Si共晶相の形成によりAl/AAO界面で核形成し、直径を維持しながらAAOの細孔の中から外へ上に向かって成長する。SiNWは、p型ドーパントソースとして1018/cm3ないし1020/cm3のAlを含むのでAl触媒はさらなるドーパントガスソースの追加を必要とせずにNWを自己ドープし、かつSiNWは、Al金属とオーム接触している。残存Al層は、PVデバイスの陽極として用いられる。SiNW成長の最終段階で、AAO表面を覆いかつNW同士を接続する薄膜層を作製するように反応器条件を調節する。薄膜は、光活性表面積を最大にし、製造の冗長性のレベルを高くする。すなわち、短絡防止のために、n型被覆の前に、AAO層の意図的でないピンホールを埋める。p−シリコンなどの材料を用いることができる。
【0045】
最適化された基材及び適切なCVD反応器条件(作業計画に詳述されている)を用いて、SiNW成長フロントで共晶相のAAOの細孔から現れるAlは、SiNW成長プロセス中にドーパントとして使い果たされる。それゆえ、コンフォーマルなn型シリコン皮膜は、p型NWのVLS成長の直後にその場堆積されることになる。これは、p型SiNWのVLS成長後に短い成長休止期間を導入することによって達成されることになるが、当該休止期間中には、SiH4が反応器から切り替えられ、反応器温度が増加することになる。成長温度の上昇は、シリコン薄膜堆積速度が増加につながる。その結果、成長条件を調節することによって、NW成長が優勢である領域と薄膜堆積が優勢である領域を切り替えることが可能である。n型Siシェルは、これらの堆積温度において多結晶であるが、ワイヤの長さに沿って均一な厚さを呈する。
【0046】
最後に、機能的なナノ材料の製造を完了するために、陰極として作用するようにn型層上にコンフォーマルな透明導電膜(TCC)を成膜しなければならない。TCCには数多くの選択肢があるが、最初の方法は、GVD社(GVD Corporation)の酸化的化学蒸着(oCVD)技術を用いて塗布される柔軟な導電性PEDOT(ポリエチレン−3,4−ジオキシチオフェン)を用いるものである。oCVDプロセスは、幅広い基材上に真性導電性ポリマー被覆膜を形成するための斬新で全乾式の低温法である。oCVDは、ナノワイヤのような表面積の広い基材を、コンフォーマルかつ高透過率の導電性ポリマー被覆膜で「収縮包装」する。被覆膜は、化学的に純粋で、機械的に柔軟かつ真性導電性である。図は、全てのボイドをナノワイヤの高さまで完全に埋めるTCCを示していることに留意されたい。より現実的な状況はSEM写真に示されており、PEDOT被覆(凸凹のテクスチャー)は連続的かつNWの外面に対してコンフォーマルであることが分かる。最終的なデバイスはまた、透明な環境に配慮した保護層をTCC上に有することになる。このように、TCCは、効果的な陽極であるようにコンフォーマルかつ連続的であることが必要であるが、残された間隙はいずれも、環境に配慮した被覆膜によって埋められるかまたは覆われることになり、デバイス性能に影響しないはずである。
【0047】
記載されている本発明の実施形態は例示的なものでしかなく、当業者にとって数多くの変形形態及び変更形態が明らかであろう。そのような変形形態及び変更形態は全て、添付の請求項によって画定される本発明の範囲内にあるものと考えられる。本発明について詳細に説明及び図示してきたが、それらは説明及び例示のつもりでしかなく、限定的な意味に受け取られるべきではないことは、明確に理解されるべきである。明確にするために別々の実施形態に照らして説明されている本発明の様々な特徴を、1つの実施形態において組み合わせて提供することができることを理解されたい。逆に言えば、簡略にするために1つの実施形態に照らして説明されている本発明の様々な特徴を、別々に、または任意の適切な組合せで、提供することもできる。本明細書または図面に記載の特定の実施形態は、本発明の非常に詳細な開示を提供することのみを目的としており、何ら制限を加える意図はないことを理解されたい。本発明の趣旨及び範囲は、添付の請求項によってのみ制限されるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力デバイスを含む電気回路を製造するための、基材上でのナノワイヤの成長及び使用に関する。
【0002】
政府使用権
【0003】
米国政府は、本発明の一括払いライセンス及び米国エネルギー省によって与えられた契約番号DOE-DE-FG02-07ER86313に定めるところにより、限定的な状況において、特許所有者に妥当な条件で他者への許諾を要求する権利を有する。
【0004】
優先権の主張
【0005】
この特許出願は、米国特許出願第12/185,773号(特許文献1)の一部継続出願として、並びに米国特許出願第61/169,279号(特許文献2)、米国特許出願第61/177,265号(特許文献3)、米国特許出願第61/242,212号(特許文献4)及び米国特許出願第12/759,537号(特許文献5)の継続出願として、優先権を主張する。これらの米国特許出願は全て、引用を以て本明細書の一部と成す。
【背景技術】
【0006】
単結晶または多結晶シリコン太陽電池は、現在、主要な商業用の光起電力(PV)技術であり、商業市場の90%以上を占めている。デバイス設計の進歩により、結晶シリコン太陽電池は既に16〜20%のモジュール効率に達している。太陽電池効率を単一バンドギャップシリコン太陽光変換デバイスの31%の理論的限界に近付けるための努力が続けられているが、このクリーンな代替発電方法は、主として光起電力モジュールを製造するために用いるシリコンウェーハの製造コストのせいでモジュールコストが高いことが妨げとなって、市場に受け入れられていない。現在、太陽光発電は米国のエネルギー供給源の0.1%未満に過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第12/185,773号明細書
【特許文献2】米国特許出願第61/169,279号明細書
【特許文献3】米国特許出願第61/177,265号明細書
【特許文献4】米国特許出願第61/242,212号明細書
【特許文献5】米国特許出願第12/759,537号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このクリーンで豊富な電力源の潜在能力を実現するためには、PV電力のワット当たりの費用を下げると同時にPV電力をより容易に消費者が利用できるようにする新たな技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示されているPVデバイス工学への独自のアプローチは、動径方向にpn接合を有するナノワイヤ(NW)アレイ配列を利用することによって、高純度シリコンウェーハの必要性を回避している。ナノワイヤ・アプローチは、シリコンの使用量を、アクティブ光変換ナノ構造部品を構成するために必要な不可欠量にまで減らす。動径方向のpn接合は、NWの小さな直径を利用してキャリア収集効率を向上させるとともに、ナノ構造の高アスペクト比を利用して光吸収を強化する。動径方向のpn接合では、光吸収の方向とキャリア収集の方向とは、これら2つの関連性のある次元を直交させることによって切り離されている。NWは、長手方向軸線に沿って光学的に厚いので光吸収を最大にするが、動径方向には薄いので光発生キャリア抽出距離を短くする。これらの幾何学的属性は、平面構造に比べてデバイス効率を増大させる。NWは、典型的にはn型シェルで被覆されたp型結晶シリコンコアを有し、必要に応じてNWをpn接合またはpin接合として作製することができる。ここで、iは真性シリコンである。
【0010】
単結晶半導体ナノワイヤアレイのボトムアップ的な作製手法は、結晶Si太陽電池を製造するための低コスト製法を可能にする。シリコンナノワイヤ(SiNW)成長プロセスは、気相−液相−固相(VLS)成長として知られており、金属ナノ粒子を触媒として用いて気相大気からSiNWを成長させるステップを含む。PVデバイスまたは他のデバイス用途に対して、同様のVLS法を用いて、シリコン、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化ガリウム(GaN)または他の半導体NWを成長させることもできる。VLSプロセスによって作製されるNWアレイを太陽電池に応用することの興味深い側面は、ガラスや金属箔などの低コストの非結晶基材(基板)上で、高成長率(1〜10ミクロン/分)及び低温(400〜600℃)で、成長後処理が最小限ないし全くなしで、単結晶半導体NWを得ることができることである。このことは、シリコンウェーハベースのアプローチに比べて、製造時の著しいエネルギー及び材料を節約し、製造費用の低下をもたらす可能性を提供する。
【0011】
シリコンナノワイヤのVLS成長のために、典型的には金(Au)シードが用いられるが、それは主として低いAl−Si共晶温度(363℃)及び好ましい濡れ性に因るものであり、それがナノワイヤの先端での安定した液体合金相の形成をもたらしている。しかし、Auは、5×1017〜1.5×1018cm−3という高濃度でVLS成長中にSiNWの格子に取り込まれ、Siのバンドギャップ内に深い準位の電子状態を形成し、再結合のための中心として働くことにより電荷キャリアの寿命を低下させる。しかし、その代わりに、VLSプロセスにおける触媒としてアルミニウム(Al)を用いることができる。
【0012】
アルミニウムは、Si処理ラインにおいて日常的に使用されるので、SiNWを触媒するための非常に魅力的な材料になる。AlをSi格子に加えるとSi価電子帯に近い状態が作り出されるので、Alは、PVデバイスなどの半導体用途に適切なp型ドーパントである。Al−Si相図は、Au−Si相図と類似しており、かなり低温の共晶(577℃)を形成し、PVデバイスに利用する場合にはAlがSiNWのVLS成長のための適切な触媒になる。さらに、気相Si前駆体を用いて500℃より低い温度でSiNWを作製するために気相−固相−固相を同様に用いることができる。触媒シーディングプロセスを省き、低コストの材料で働き、最小の処理ステップしか必要としない処理技術は、NWデバイスの費用効果の高い製造及び関連する利益の全てを実現するために取るべき道である。
【0013】
本発明の一実施形態には、Al金属表面上またはアルミニウムで被覆された他の導電性基材上にナノ多孔質陽極酸化アルミニウム(AAO)層を形成するためにAl金属の層を部分的に陽極酸化するステップと、その後にVLS技術を用いてAl金属を触媒として用いることによってシラン(SiH4)または他のSi含有(Si2H6、SiCl4など)ガスを含む気相大気から高アスペクト比のSiNWの軸方向成長を触媒するステップとを含む。Al金属基材を出発物質として用いることができ、あるいは別の基材材料にAlを被覆膜または層として成膜することができる。このプロセスによって成長させられるSiNWは、ナノ細孔の底部でのAl−Si共晶相の形成を経てAl/AAO界面で核形成し、AAOの細孔の中から外へ上に向かって成長し、自由空間へ延出する。SiNWは、効果的なp型ドーパントとして働く体積濃度1018/cm3ないし1020/cm3のAl原子を含むので、SiNW成長中にさらなるドーパントガスソースを追加する必要がない。適切に構築されたAAO/Al基材が用いられるとき、NWは、PVデバイスの陽極であるAl金属とオーム接触している。続いて、コンフォーマルなn型Si層が好適にはエピタキシャルにその場堆積され、数多くのpnダイオード接合を作り出す。好適実施形態では、反応器からデバイスを取り出すことなしに、n型層が堆積される。接合領域を最大にし、ダイオード領域に電気的導通を提供するために、n型被覆膜より前に、AAO表面全体を覆う薄いp型層を形成することができる。この追加層は、何らかの理由によりシリコンナノワイヤで塞がれていないAAOの細孔を埋めることによって、基材からN層を絶縁することもできる。必要に応じて、pinダイオードを形成するために、または離散的なp(n)型ナノワイヤとそれに続く連続的なn(p)型被覆膜との間の連続的な層として、真性材料層をp層とn層の間に加えることができる。多孔質AAO層は、SiNWの直径及び間隔を制御するテンプレート(鋳型)としても、n型層をAl基材から絶縁する絶縁体としても働くので、多機能である。n型Si層上に透明導電膜が堆積され、陰極を形成する。それゆえ、1つの材料Alが、SiNW成長のための触媒と、PV電極(陽極)と、p型SiNWドーパントソースと、絶縁層(多孔質AAOの形で)と、NWテンプレート(AAO)と、デバイスの機械的支持構造とを提供する。
【0014】
用途の広いSiNW作製のためのこのプロセスにより、軽量、多用途、低コストかつ新規な設計属性を持つ太陽電気デバイスを新たに作り出すことができる。確立された優位なSiウェーハベースのPVデバイス市場と互角に戦うために、電気自動車のボディー上のPV被覆のためのコンフォーマルなAl箔仕上げまたは塗布されたAl層、PV繊維製品に応用するためにAl糸上にSiNWを設けて巻き取ったもの、または単にガラスパネルまたは他の絶縁基材上に堆積されたAlを含む、容易に作製される多様な実現形態を用いて、ナノPV発電を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Alコアと、Alに結合されかつ絶縁AAO被覆を貫通して成長しているp型SiNWと、それを被覆している連続的なN型Si層とを示すSiNW PVデバイスの概念図。n型層は、Alコア電極(陽極)と対極の外側導電性電極(陰極)で被覆されている。AAOは、陽極と陰極間の電気絶縁を提供する。
【図2】この図は、Al金属上の多孔質陽極酸化アルミニウム皮膜の断面図を示す。
【図3】Alワイヤの表面上に作製された多孔質AAO層を倍率レベルを上げて示すSEM写真。
【図4】陽極酸化プロセスの略図,(a)高電圧で陽極酸化された、形成されたAAOナノ細孔としてのAn、(b)より低い電圧での連続降圧陽極酸化が、チャネル底部においてナノフィンガー(nanofinger)を作り出す、(c)リン酸エッチング溶液が、細孔の底部で陽極酸化層を薄くすると同時に細孔を所望の直径まで広げる。
【図5】SiNW成長のための低コストで効果的な基材を示すSEM写真。
【図6】ガラス/Al/AAO及びSiNW構造全体を示すガラス基材上の部分的に陽極酸化されたAl上で成長させたSiNW(左,30分,成長)、ガラス/Al/AAO/SiNW界面の詳細を示す界面の中間倍率画像(中央,5分,成長)及び高倍率画像(右,5分)。
【図7】多目的SiNW PVデバイスアーキテクチャであって、硬質平面デバイスのためのガラス上にあるもの(左)及びコンフォーマル構造のためのアルミニウムのバルク上にあるもの(右)。
【図8】バリア層を示すAl金属上のAAOのSEM画像。
【図9】シュウ酸、マロン酸及び酒石酸中で陽極酸化されたアルミニウム(左または右)。
【図10】糸の周囲付近に多孔質アルミナテンプレートを成長させるために用いられる陽極酸化セルの図。右側の図は、均一な多孔質層成長を保証することになる均一な電界パターンを示す。
【図11】ナノワイヤの先端であって、該先端上に明らかな残存Al触媒物質があるもの(左)及びないもの(右)を示す高倍率SEM画像(10万倍)。
【図12】降圧及び細孔拡張の前(左)及び後(右)のAl金属上のAAO。
【図13】(a)ナノワイヤ軸線に沿って均一な被覆厚さを示す動径方向pn Siナノワイヤの低倍率TEM画像、(b)結晶p−Siコア及び多結晶n−Siシェル層を示す動径方向pn Siナノワイヤの高倍率TEM画像。
【図14】Al基材(またはAl被覆された他の基材)の領域であってナノワイヤ成長が望ましくない該領域に作製することができる無孔性酸化アルミニウムのSEM写真。ナノワイヤは、無孔性酸化物を通って核形成しない。
【図15】PV糸製造のためのプロセス図。
【図16】「降圧」陽極酸化プロセスに用いられる電流−電圧スケジュール。
【図17】図18の陽極酸化工程を用いた後の、細孔拡張の前(左)及び後(右)のAl糸上の多孔質AAO。
【図18】代替的な「降圧」陽極酸化手順及びAl糸の表面上に結果的に得られたAAOを示す。
【図19】作製方法の複数のステップを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、PVデバイスを構成する部品を含むSiNWアレイベースのPVデバイスの設計と、PVまたは他のデバイス用途のためのシリコンナノワイヤアレイ(SiNW)の段階的作製の基本プロセスとを含む。構築されたSiNWアレイをPVデバイス設計に組み入れる技術に加えて、他の材料構造に結合された部分的に陽極酸化されたAlまたはAl層上にSiNWアレイを作製する方法が示されている。本明細書に記載の方法及び設計が、Al以外の出発物質、Si以外の材料から作られるアクティブ光電子ナノ構造、及び光起電力(太陽光発電)以外の作製及び機能のための金属及び半導体のナノスケール構造を用いるデバイスにまで拡張されることができるものであることは、当業者には容易に分かるであろう。本願では、ナノ(ナノワイヤ、ナノスケール、ナノ細孔など)なる語は、1若しくは複数の関連空間次元(方向)において、形態または機能のいずれかにおいて、1〜1000nmの特徴的な長さスケールを、有するか、利用するか、組み入れるか、または別な方法で顕在化する材料構造を指す。
【0017】
1つの好適実施形態では、本発明は、能動部品(アクティブ部品)として動作する光電子デバイスを、半導体ナノワイヤアレイを利用して作製する方法を特徴とする。
【0018】
基材の作製−アルミニウムの陽極酸化
【0019】
アルミニウム(純度99.8%以上)部品(箔、シート、糸、被覆基材、または他の形状)を先ず、エチルアルコール(95%)と過塩素酸(ACS,60〜62%)が4:1の溶液中で、5℃より低い温度で電解研磨し、輝く滑らかなAl表面が得られるように2アンペアの電流に制限して、10ボルトで3分間、Alに陽極バイアスを印加する。電解研磨においても、陽極酸化ステップにおいても、均一な表面を達成するために陽極と対称な陰極(対電極)形状を有することが不可欠である。対称性は、陽極酸化されている構造の表面全体にわたって均一な電界構成を確実にする。それゆえ、Al糸の場合であれば、陰極は糸陽極を中心に有する円筒形になるし、平面基材(基板)の場合であれば、陰極も平面対称性を有することになる。対称性は、陽極表面上での均一な電界分布と、従って均一な電解研磨(または陽極酸化)とを保証する。ここで用いられる陰極は、典型的にはステンレス鋼メッシュである。電解研磨の後、Al(基材)を脱イオン水ですすぎ、その後、酸性電解液(硫酸、シュウ酸、グリコール酸、リン酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、またはその他)中で陽極に陽極酸化する。陽極酸化(及び電解研磨)の前に、Al部品の電解液と空気との界面を、界面での電気化学的絶縁破壊防止のために、ポリマー(ゼネラル・ケミカル社(General Chemical)製のCoscoatTM)でマスキングする。電解液の種類及び濃度、浴温、並びに陽極酸化電圧を変化させることによって、ピッチ35〜980nmで細孔径が2〜900nmであるナノ多孔質Al2O3を形成することができる。好適実施形態では、直径1mmのAl(99.999%)糸が、3Mマロン酸溶液中で、5℃、130ボルトで陽極酸化される。陽極酸化は、コンピュータ制御されたバイポーラ電源を用いて行われる。陽極酸化は先ず電流を監視しながら一定電圧(CV)モードで行われる。電流は、低い電流から開始され、酸化が発生しかつアルミニウム表面全体でアルミナ細孔が核形成するにつれて上昇し始める。多孔質AAOの島が、Al表面付近でランダムに核形成し始め、表面全体がこの多孔質ネットワークによって覆われるまで、長さに沿って横方向に浸透する。電流は一定電圧(CV)でゆっくりと上昇するが、これは島状成長の進行を示すものである。電流のプラトー(水平状態)が始まったら、これは、下地金属を覆う多孔質AAO層へのAl金属表面の完全転換すなわち定常状態を示している。この時点で、細孔の直径及び間隔は既に設定されているので、電流の印加を続けるとAAO厚さ(細孔深さ)が増加する定電流(CC)領域(プラトーレベルで)への制御された移行が行われる。そして、細孔が所望の深さ(1〜100μm)に到達するまで陽極酸化を続ける。その後、陽極酸化をCVモードに戻し、引き続いて、より小さなナノフィンガー突起部分が細孔の底部から酸化バリア層内へ延在するように1〜5分間隔で1〜10ボルトずつ逐次的に電圧を下げる。この「降圧」陽極酸化法は、一連の各ステップでの電流低下−上昇−プラトーの順序によって特徴付けられ、これにより陽極酸化フロントで成長するAAOバリア層が薄くなる。残りのAAOバリア層の完全性を崩壊させ、後に続く細孔拡張プロセスがバリアを完全に除去するのにより効果的であるようにするために、降圧プロセス後に、1分間のさらなる電圧ブラスト(元の陽極酸化電圧(本明細書においてはマロン酸に対して130ボルト)まで増加する)が用いられることもある。5wt%のリン酸溶液(37℃)中でのAAOのエッチングは、細孔の直径を広げる(増大させる)のみならず、NW作製プロセスの次のステップのためにAl/AAO界面のAlに到達することができるように細孔を底部で全開にする。バリア層は除去されることができるが、空気に曝されると、Al表面上に薄い(4nm)自然酸化物層が100psで形成される。バリア層を薄くするための別の技術には、陽極酸化浴及び電圧を、成長フロントでずっと小さな細孔を作り出すスケジュールに切り替えるステップが含まれ(上記のマロン酸(2M,130V)に対しては、20〜40Vの電圧で1〜10分間、0.3重量%のシュウ酸に切り替えられる)、さらに、リン酸細孔拡張/バリア除去ステップが続く。この時点で、残存プロセス薬品を除去するためにAl/AAO糸基材を脱イオン水で十分にすすぎ、その後、SiNW成長が可能な状態になるように空気中で乾燥させる。
【0020】
別の実施形態では、陽極酸化プロセスでは、プロセスが約80Vに到達するまで6−6Vステップで、その後プロセスが約60Vに到達するまで6−3Vステップで、5℃の温度で3Mマロン酸を用いた。プロセスを49分35秒間実行した。その後サンプルを37℃の温度で23分間、H3PO4溶液中で細孔拡張した。
【0021】
ナノワイヤ成長
【0022】
アルマイト上でSiNWを成長させるために、化学蒸着(CVD)反応器を用いる。VLS SiNW成長は通常、シリコン原料としてSiH4(10% in H2)を用いて、550〜650℃で、低圧力(〜10−500Torr)の等温石英管反応器内で行なう。好適実施形態では、反応器圧力38Torr、温度600℃で、CVD反応器内の流量が100sccm、シランが90sccm(10% SiH4 in H2)である。これらの条件下で成長させたNWは、大部分は、AAOの細孔内のSiのランダムな核形成に因り<110>、<111>または<112>の成長方向を有する単結晶である。適切な圧力及び適切な温度で、SiH4は細孔の中に拡散し、好適には細孔の表面または壁ではなく細孔の底部において触媒表面上で分解する。成長温度を高くしたり反応器ガス混合物中の水素割合を低くしたりすることで、VLS成長と比べてシリコン薄膜堆積速度の増大がもたらされる。温度、圧力、流量及び関連ガス濃度のパラメータ空間は、基材、触媒の性質及び所望の結果に応じて、多数の許容できる結果を生じさせることができる多くの可能な状況をカバーしている。この実施形態のために説明されているパラメータは、前節で述べたAl/AAOの糸または平面基材(基板)に適している。Siがシラン分子から分解されるにつれて安定した液体合金相(Si/Al共晶)が生じ、融液中のSi濃度が臨界値に達したときにSiNW結晶相が生じる。唯一の制約のない空間方向は、細孔の底部を起点として基材の表面へ垂直に上がるベクトルであるので、Al/AAO界面で結晶が生じ、プロセスが進むにつれて共晶がNWの先端で生じ、最終的にはAAOの細孔の外面開口部から現れる。この相は、〜577℃で生じるAl−Si共晶相である。SiNWは、AAOの細孔の底部で核形成し、次に細孔境界を越えて現れ、適切な条件下で、AAO細孔径を維持しながら、自由空間で成長し続ける。Al−Si融液は、成長フロントでナノワイヤの先端に存在し、気相から融液内にSiが絶えず補充される限り連続的な成長のための手段を提供する。Alの一部がシリコン格子に取り込まれているので、成長が続けば、最終的にはAlは使い果たされることになり、ひいてはNW成長プロセスが終わる。底部におけるAAOバリア層の厚さまたは存在に加えて、AAO細孔の直径及び深さを調節することによって、共晶相系を質量(サイズ)調整し、SiNW成長プロセスに用いられるCVDパラメータ設定の系統的な制御を同様に用いてNW成長フロントにおけるSi−Al共晶相のサイズを調節することによって、細孔から現れるAlの量を制御することができる。一実施形態では、たとえAAOの細孔の底部にかなりの量の(厚さ10〜200nm)バリア層が存在していても、SiNWは核形成することができる。このCVD(VLS)プロセスは、(オーム接触している)Al金属から現れるSiNWを生じさせ、SiNWは、AAOの細孔を通って上に向かって成長し、細孔径(100〜250nm)を維持しながら、1〜500μm(好適には10〜30)の長さで自由空間へ延出する。上記したようなAl触媒を用いたSiNWの成長により、〜1−5×1019/cm3のAl濃度でSiNWが作製される。比較的高濃度のドーパントは、直列抵抗を減らすために高濃度にドープされたワイヤコアが必要な、動径方向にpn接合を有するSiNWデバイスの作製に有利である。高濃度ドーピングはまた、少数キャリア拡散長さを減少させ、そのことは100μmの固有キャリア抽出距離を有するウェーハPVシステムなどのデバイスにとって問題であるが、ここで示されている動径方向配列の場合、動径方向キャリア抽出距離は数桁小さいので、このシステムの固有距離(100nm)にわたって尚も高キャリア抽出率を有すると同時に高濃度ドーピングプロファイルを可能にさせる。
【0023】
上記したNW成長プロセスは、シリコンナノワイヤが1つの細孔から出てくるように、理想的にはNWと細孔とが1対1対応になるように、アレイ状に複数の離散的なSiNWを生じさせることができる。この場合、これらのNWは、Al金属を介して並列回路で電気的に接続され、Al金属からNWが核形成される。一定の表面積割合のAAO外周面の上には直接p型シリコンが形成されないが、NWのアスペクト比が大きいので、NWの有効表面積は尚もAAOの「フットプリント」表面積より2〜1000倍大きい。さらに、NWは完全に真っ直ぐではなく、この非線形性が、入射放射線の100%が(たとえnまたはi−n型被覆の前であっても)AAO表面の前にSiに当たることを効果的に保証する。
【0024】
また、別の実施形態では、p型皮膜(原料ガス中にホウ素などのドーパントの投入を必要とすることになるであろう)を意図的に堆積することで、AAOの如何なる表面にも確実にp型被覆膜が施されるようにすることができる。p型被覆膜は、構造(皮膜に結合されたナノワイヤ)の外面に電気的導通をさらに追加することになるであろう。
【0025】
別の実施形態では、(離散的なNW配置または連続的な皮膜に結合された状況のいずれかで)p型上に真性シリコン層を成膜して基礎を形成し、さらにn型層が成膜された時点で数多くのpin接合が作られるようにする。
【0026】
pn接合の形成
【0027】
p型NWのVLS成長後にコンフォーマルなN型シリコン皮膜が堆積され、それによって糸または平面基材の外周上にpn(またはpin)ダイオード接合(任意選択で、ナノワイヤ成長後に真性シリコン層を堆積することもできる)の完全な機能アレイが構築される。n型シリコン層は、VLS成長の直後に、材料を空気に曝すことなく、反応器内(その場)でp型NWの外面上にCVDによって堆積されることが好ましい。n型層の前に真性層または追加のp型被覆膜が成膜される場合には、CVDシステムの封止状態(真空)を破ることなくこれらの手順を実行することも好ましい。
【0028】
これは、SiNW表面の酸化を回避するために望ましい。というのも、p層とn層の間に存在するNW表面上に酸化物層があれば、キャリア再結合をもたらしかねないような界面状態を作り出すことによって、デバイス性能を低下させることになるであろう。酸化物層を形成後に取り除くには、n−(i−n−)型被覆の前に、化学エッチング(BOE)、プラズマ除去、または他の酸化物除去法のいずれかによる酸化物除去ステップが必要になるであろう。その上、その場処理を用いて、または適切な条件下でBOE中での酸化膜エッチングによって、NW表面上のSi原子ダングリングボンド(表面状態)を水素で不動態化することができる。これは、大気(酸素/酸化)暴露前に行われれば、表面をしばらくの間保護することができる。
【0029】
n型膜のその場堆積は、p型SiNWのVLS成長後に短い休止期間を導入することによって達成されるが、当該休止期間中には、窒素(または他の不活性ガス)パージを用いてSiH4が反応器から切り替えられ、その後、所望のドーピングを達成するために系統的に決定された(10−3ないし10−4)PH3/SiH4ドーパントレベルを用いてn型シリコン薄膜が成長させられることになる。このステップでは、反応器温度は600℃ないし650℃に設定される。その結果、成長条件を調節することによって、NW成長が優勢である領域と薄膜堆積が優勢である領域を切り替えることが可能である。n型Siシェルは、これらの堆積温度において多結晶であるが、ナノワイヤの長さに沿って均一な厚さを呈する。しかし、別の実施形態では、ジシラン(Si2H6)は、より低温でエピタキシャルn型皮膜を生じさせることができるシランの代用品である。n型薄膜被覆プロセス中に、Siは実質的にCVD反応器内の全表面を被覆するので、堆積後に、後で光起電力デバイスなどのデバイスで用いられることになる表面の特定の被選択領域、とりわけ基材上の特定の電気接触部分を保護するかあるいはその反対で露光する(または後でn型被覆膜を選択的に除去する)ために適切な手段が講じられなければならないことに留意されたい。表面のCVD前の形態、構造及び物理的性質を保持するために、マスキング剤を用いて表面の保護/清掃を促進することができる。好適実施形態では、NW成長プロセスにおいて(ナノワイヤの先端上で)過剰な全Alが消費されるが、NWの先端または他の部分から過剰Alを除去する必要がある場合には、エッチングのパージ工程中にHCLガス混合物を導入してAlをエッチングすることによって、除去をその場で達成することも可能である。反応器温度を上昇させてNWの先端から過剰なAlを蒸発させることもできる。
【0030】
光起電力デバイスを作製するための様々な被覆技術、とりわけCVDを使用するには、様々な電気的に異なる層同士が何かの事情でくっついて短絡することがないことが条件である。この場合には、適切な電気的遮蔽を維持するために、被覆を施すことを制限するマスキング技術が考案される。しかし、当業者は、離散的な導通を必要とするデバイスの任意の他の部品及び被覆膜から電気的に絶縁されている電気接触を維持するために、エッチング技術を用いて不要な被覆膜を除去し得ることが分かるであろう。
【0031】
n型被覆膜が不要である基材上の表面領域からn型被覆膜を制限する技術には、化学エッチングを用いた処理後の除去、機械的除去(研磨、アブレーション、反応性イオンエッチング)、マスキング、または、適切な位置にある意図的な犠牲辺縁部(最終的なCVD被覆が完了した後に、剥離、切除、エッチング、または別な方法で除去される)を有するように適切なサイズの基材を作製することが含まれる。別の実施形態では、デバイスが形成された後に平面基材(基板)の検査を行い、SiNWで完全に覆われた部分を特定し、次にこれらの部分を切り離し、そして完全なPVデバイスに仕上げる。
【0032】
別の実施形態では、p型ナノワイヤ上にp型シリコン層が被覆される。SiNWによって塞がれていないAAOの細孔や、基材に短絡をもたらすであろう他の欠陥がある場合、p型層は、細孔及び/または欠陥を被覆し、最上部に被覆されるn型層から底面の基材を絶縁する。別の実施形態では、デバイス上に絶縁層を被覆し、その後、絶縁層をAAO層のピンホールがない領域から選択的にエッチングすることができる。SiNWの欠落があることが典型的であるような基材の領域を、陽極酸化プロセスによって細孔が生じないようにマスキングすることができる。これらは、基材の縁部に沿ったものであり得る。さらに別の実施形態では、完成した基材を検査して、欠陥またはSiNWの欠落と、従って短絡とがある領域を検出する。この実施形態では、光電子検出器を用いてナノワイヤの有無を検出するために、ナノワイヤの吸収特性が用いられ得る。
【0033】
SiNW成長または被覆プロセスに対して、低温及び他の関連パラメータでプラズマ促進CVD(PE−CVD)技術を用い、同様の結果を達成することもできる。
【0034】
PVデバイスの完成
【0035】
PVデバイス(この実施形態ではPV糸)の形成を完了するために、n型層上に外側導電性被覆膜(陰極)を成膜しなければならない。理想的な陰極は、(金属の電気伝導率のような)高い電気伝導率を提供しつつ、入射光の100%を透過させるものであろう。それゆえ、透明導電体に対する様々な選択肢がある。エイチ・シー・スタルク社(H. C. Stark)は、液体のPEDOT懸濁液であるクレヴォイス(Clevios)1000(登録商標)という製品を製造しているが、これは、吹付け塗布または浸漬塗布可能であり、太陽光の波長帯において最大90%の透過率を有し、シート抵抗が〜100Ω/sqである。同様に、エイコス社(Eikos)は、カーボンナノチューブ懸濁液であるインビジコン(Invisicon)(登録商標)という製品を提供しているが、これも、吹付け塗装または浸漬塗装によって塗布することができるものである。吹付け塗装または浸漬塗装技術は、コスト及び塗布の容易さの見地から魅力的であるが、被覆の均一性と、SiNWとSiNWの間の全てのナノメータスケールの引っ込んだ場所及び割れ目が材料で完全に電気的に被覆されるようにするように塗布する能力とに限界がある。均一な被覆がかなり期待できる陰極を成膜する別の方法は、GVD社(GVD Inc.)によって開発されたPEDOT被覆などのCVDの適用である。どのように成膜されるにせよ、被覆膜は、PVデバイスの機能を最大にするために十分な伝導率及び透明度を与えるものでなければならない。電気伝導率の不足は、周期的に透明陰極と交差するような陰極母線を用いてAl金属陽極構造の有効伝導率に近い「有効伝導率」を提供することによって、埋め合わせることができる。このPV糸の実施形態では、らせん巻きの純度の高い銅またはアルミニウムワイヤが用いられる。平面実施形態は、透明導電体の上でアルミニウムをメッシュその他のパターンで蒸発させることができる。透明導電膜を成膜した後に、表面に透明な環境に配慮した保護層を成膜すると、デバイスが完成する。この材料は、シリコンベースの樹脂、テフロン(登録商標)、パリレン、ポリイミド、または柔軟かつ環境的(UV)劣化への回復力に富むような他のロバストで透明な不活性非導電層であり得る。
【0036】
好適実施形態では、Al金属糸を巻き取ったものを、陽極酸化し、細孔拡張し、リールツーリールプロセスを用いてCVD反応器内に入れ、ナノワイヤを作製してNWに逆伝導型のドーピングの被覆を施し(1ステップで)、除去し、おそらくはCVDプロセスを用いて電極(陰極)で被覆し、続いて保護ポリマーで被覆することになる。リールツーリールプロセスでは、リールツーリールプロセスに固有の温度及び加工歪みにさらされたときに材料の歪み及び変形を最小限にするために、糸は、反応器を通過する際に垂直に向けられ得る。
【0037】
上記実施形態では部分的に陽極酸化されたAl糸上にSiNWアレイを作製する方法について述べたが、当業者は、同じ基本手順を、Al金属の別の幾何学的形態、すなわち、AAOの細孔の底部に十分なAl金属が存在する状態でAl金属上にAAO層を形成するのに十分な厚さ(1〜2ミクロン)のAl金属の層に適用し、それによってSiNWを適切に核形成しかつ尚も十分な導電性Al金属層を光電子デバイスの陽極として用いるために残せることを理解するであろう。一実施形態では、ホウケイ酸スライドグラスであって、Alで被覆され、部分的に陽極酸化された後、電気接触に十分な残存Al層によりSiナノワイヤを成長させたものが用いられる。この実施形態では、ナノワイヤは5分間成長され得る。反応器パラメータは、温度600℃、圧力38Torrの反応器内で、シラン流量50sccmであり得る。
【0038】
ガラス基材の実施形態では、Alの層(厚さ1〜20ミクロン)が、電子ビーム蒸着法、熱蒸着法、またはスパッタ蒸着法、電気めっき、物理的被覆または他の技術によって、表面上に堆積される。ガラスは、さらなる導電度または他の電気的機能を提供するために、Al被覆の前にガラス表面上に別の導電層(ITO、金属など)を有することができる。その後、Alは、上記で既に説明したAAO作製技術を用いて部分的に陽極酸化され、その際、多孔質AAO層が、VLS技術を用いて、Al金属上に、AAOの下に十分な量のAl金属が保持された状態で、導電体としてもSiNW成長のための触媒としても機能するように、作製されるようにする。多孔質AAO層形成及びSiNW成長のための基本プロセスは、上記したのと同じ基本概要に従う。所望の細孔径及び中心間距離に応じて、適切な電解液の種類、濃度及び陽極酸化電圧が用いられる。細孔の底部に生じるAAOバリア層の完全性を降圧または電解変質技術を用いて崩壊させ、それにより、リン酸(または他の酸)エッチング法を用いてバリア層を部分的または完全に除去することができる。その後、同様のCVDプロセスを使用して、VLSプロセスのためにAlを触媒として用いてNWを成長させる。
【0039】
上記したように、Si皮膜または被覆膜を堆積するとき、材料は反応器の表面の大部分を被覆することになる。このことは、後で導電面に到達し、デバイスの陽極または陰極として導電面と接触できるように、基材の特定の領域のマスキングを除去する必要性を生じさせる場合がある。さらに、層状配列(例えばAl/AAO/ガラス)では、導電性(ドープされた)Si被覆膜が、Al層と電気接触をなしてデバイスの陽極及び陰極を短絡させることがある。それゆえ、完全な電気接触が形成された後に除去される犠牲縁部を用いてもよいし、あるいはマスキング技術を利用することができる。金属の糸すなわちワイヤ配列上で成長させたSiNWアレイにおいては、犠牲縁部がなく、電気的短絡は、ワイヤ原料を反応室内に連続的に供給することによって回避することができる。この実施形態では、糸の端部は反応器の外に置かれるので、n型堆積に関連する「完全被覆」問題の一部または全部が解決される。あるいは、糸を完全に被覆し、電気接触のために陽極(陰極)を露出させるべく端部を機械的または化学的にトリミングすることができる。箔でも同様の技術が用いられる。SiNW核形成を防止し、導電性材料の露出した縁部がないようにするために、箔の縁部の周りに無孔性酸化アルミニウム層を作ることによって、箔の縁部を絶縁することができる。箔の例における別の選択肢は、完全な陽極、SiNW、ダイオード接合の形成及び最終的な電極の堆積の後に、縁部をトリミングして、起こり得る短絡を排除することである。
【0040】
別の実施形態では、ナノワイヤは、細孔拡張エッチングなしでもAlから離れて核形成することになる。すなわち、AAOバリア層はまだ細孔の底部にあるが、それにもかかわらずナノワイヤは成長するのである。さらに、反応器内に水素を導入してAAOをAl金属に分解し、AAOを減らすことによってバリア層を幾分か薄くすることができる。
【0041】
別の実施形態では、n型材料の堆積中の反応器の温度は、アルミニウムの融点をはるかに下回る温度にまで低下させられる。例えば、アルミニウムの融点は660℃である。従って、CVD温度を約650℃まで低下させ、それにより、シラン、水素及びホスフィンをドーパントとして用いてn型層でデバイス(SiNW)を被覆することができる。SiNWを作製するために、より低い約550℃の温度を用いることもできる。シリコン堆積によく用いられるジシランや四塩化ケイ素などの他のガスを用いて、コンフォーマルなn型層を、エピタキシャルに、またはAlの融点を下回る温度で多結晶構造で、得ることができることも分かる。
【0042】
別の実施形態では、SiNWは、VLS技術とは対照的に、共晶温度より低い温度で、気相−固相−固相(VSS)成長メカニズムによって作製される。
【0043】
別の実施形態では、SiNWは、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)プロセスを用いて、さらに低い温度で作製される。
【0044】
本明細書に開示されている製造方法は、テンプレートによりSiNWを成長させる多くのVLS法、すなわち、典型的には金触媒シード(種)を電気化学的に堆積して市販のAAO膜にするアプローチとは異なる。本発明では、AAOの下にあるAl金属が触媒として用いられる。それゆえ、どの細孔も触媒を有し、SiNWは夥しく成長する。このプロセスによって成長するSiNWは、Al−Si共晶相の形成によりAl/AAO界面で核形成し、直径を維持しながらAAOの細孔の中から外へ上に向かって成長する。SiNWは、p型ドーパントソースとして1018/cm3ないし1020/cm3のAlを含むのでAl触媒はさらなるドーパントガスソースの追加を必要とせずにNWを自己ドープし、かつSiNWは、Al金属とオーム接触している。残存Al層は、PVデバイスの陽極として用いられる。SiNW成長の最終段階で、AAO表面を覆いかつNW同士を接続する薄膜層を作製するように反応器条件を調節する。薄膜は、光活性表面積を最大にし、製造の冗長性のレベルを高くする。すなわち、短絡防止のために、n型被覆の前に、AAO層の意図的でないピンホールを埋める。p−シリコンなどの材料を用いることができる。
【0045】
最適化された基材及び適切なCVD反応器条件(作業計画に詳述されている)を用いて、SiNW成長フロントで共晶相のAAOの細孔から現れるAlは、SiNW成長プロセス中にドーパントとして使い果たされる。それゆえ、コンフォーマルなn型シリコン皮膜は、p型NWのVLS成長の直後にその場堆積されることになる。これは、p型SiNWのVLS成長後に短い成長休止期間を導入することによって達成されることになるが、当該休止期間中には、SiH4が反応器から切り替えられ、反応器温度が増加することになる。成長温度の上昇は、シリコン薄膜堆積速度が増加につながる。その結果、成長条件を調節することによって、NW成長が優勢である領域と薄膜堆積が優勢である領域を切り替えることが可能である。n型Siシェルは、これらの堆積温度において多結晶であるが、ワイヤの長さに沿って均一な厚さを呈する。
【0046】
最後に、機能的なナノ材料の製造を完了するために、陰極として作用するようにn型層上にコンフォーマルな透明導電膜(TCC)を成膜しなければならない。TCCには数多くの選択肢があるが、最初の方法は、GVD社(GVD Corporation)の酸化的化学蒸着(oCVD)技術を用いて塗布される柔軟な導電性PEDOT(ポリエチレン−3,4−ジオキシチオフェン)を用いるものである。oCVDプロセスは、幅広い基材上に真性導電性ポリマー被覆膜を形成するための斬新で全乾式の低温法である。oCVDは、ナノワイヤのような表面積の広い基材を、コンフォーマルかつ高透過率の導電性ポリマー被覆膜で「収縮包装」する。被覆膜は、化学的に純粋で、機械的に柔軟かつ真性導電性である。図は、全てのボイドをナノワイヤの高さまで完全に埋めるTCCを示していることに留意されたい。より現実的な状況はSEM写真に示されており、PEDOT被覆(凸凹のテクスチャー)は連続的かつNWの外面に対してコンフォーマルであることが分かる。最終的なデバイスはまた、透明な環境に配慮した保護層をTCC上に有することになる。このように、TCCは、効果的な陽極であるようにコンフォーマルかつ連続的であることが必要であるが、残された間隙はいずれも、環境に配慮した被覆膜によって埋められるかまたは覆われることになり、デバイス性能に影響しないはずである。
【0047】
記載されている本発明の実施形態は例示的なものでしかなく、当業者にとって数多くの変形形態及び変更形態が明らかであろう。そのような変形形態及び変更形態は全て、添付の請求項によって画定される本発明の範囲内にあるものと考えられる。本発明について詳細に説明及び図示してきたが、それらは説明及び例示のつもりでしかなく、限定的な意味に受け取られるべきではないことは、明確に理解されるべきである。明確にするために別々の実施形態に照らして説明されている本発明の様々な特徴を、1つの実施形態において組み合わせて提供することができることを理解されたい。逆に言えば、簡略にするために1つの実施形態に照らして説明されている本発明の様々な特徴を、別々に、または任意の適切な組合せで、提供することもできる。本明細書または図面に記載の特定の実施形態は、本発明の非常に詳細な開示を提供することのみを目的としており、何ら制限を加える意図はないことを理解されたい。本発明の趣旨及び範囲は、添付の請求項によってのみ制限されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンナノワイヤデバイスであって、
表面を有する基材と、
前記表面に隣接して設けられ、前記表面の反対側に外表面を有する陽極酸化金属層と、
前記基材に結合されている第1端部及び少なくとも前記陽極酸化層の前記外表面まで延在している第2端部を有する第1電荷キャリア型の複数のシリコンナノワイヤと、
前記複数のナノワイヤの第2端部を覆う第2電荷キャリア型のシリコン層とを含み、それによって該シリコン層が前記基材に直接電気接続しないようにしたことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記シリコンナノワイヤがアルミニウムでドープされていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記陽極酸化層がアルマイトであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記基材がアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記シリコンナノワイヤがアルミニウムでドープされており、前記陽極酸化層がアルマイトであり、前記基材がアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記シリコンナノワイヤが、前記陽極酸化層の前記外表面を越えて突出していることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
複数のシリコンナノワイヤの形成方法であって、
アルミニウム層に隣接するアルマイト層の複数の細孔を通じて、該アルマイト細孔の底部にあるアルミニウムを触媒として、VLSプロセスを用いてシリコンナノワイヤを成長させるステップと、
前記シリコンナノワイヤをN型半導体で被覆するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
複数の細孔を形成する前に前記基材の前記表面に到達しないようにアルミニウム層を陽極酸化するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミニウム層の所定領域において細孔を有しないアルミナ層を形成することによって、該所定領域のマスキングを除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記n型層と前記基材との電気接触を防止するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒を構成する前記アルミニウムが前記シリコンナノワイヤの前記ドーパントとして使い果たされるまで、前記VLSプロセスを継続するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
シリコンナノワイヤデバイスの形成方法であって、
アルミニウム層を陽極酸化し、陽極酸化層の外表面から該陽極酸化層の底面における界面領域内の或る場所まで延在する複数の細孔を、該複数の細孔の底部にアルミニウムの一部が残るようにして作製するステップと、
前記複数の細孔の前記底部に残っている前記アルミニウムが共晶先端における触媒としても前記シリコンナノワイヤの前記ドーパントとしても用いられるように、VLSプロセスを用いて、シリコンナノワイヤを成長させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記共晶先端における前記アルミニウム触媒が前記シリコンナノワイヤのドーパントとして消費されるまで、前記シリコンナノワイヤの成長を継続するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記残っている触媒を除去するために、前記複数のシリコンナノワイヤの前記共晶先端を除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
シリコンナノワイヤを成長させていない細孔を通して前記N型層と前記基材とが短絡しないようにするために、前記デバイスを保護膜で被覆するステップをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノワイヤを、前記N型シリコン層で被覆する前に真性シリコン層で被覆するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノワイヤを、前記N型シリコン層で被覆する前にP型シリコン層で被覆するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記N型シリコン層を前記アルマイト表面の所定領域からエッチングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記N型シリコン層と機能的に接触する透明導電体の層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記透明導電体層と機能的に接触する金属製導電ワイヤをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のデバイス。
【請求項1】
シリコンナノワイヤデバイスであって、
表面を有する基材と、
前記表面に隣接して設けられ、前記表面の反対側に外表面を有する陽極酸化金属層と、
前記基材に結合されている第1端部及び少なくとも前記陽極酸化層の前記外表面まで延在している第2端部を有する第1電荷キャリア型の複数のシリコンナノワイヤと、
前記複数のナノワイヤの第2端部を覆う第2電荷キャリア型のシリコン層とを含み、それによって該シリコン層が前記基材に直接電気接続しないようにしたことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記シリコンナノワイヤがアルミニウムでドープされていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記陽極酸化層がアルマイトであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記基材がアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記シリコンナノワイヤがアルミニウムでドープされており、前記陽極酸化層がアルマイトであり、前記基材がアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記シリコンナノワイヤが、前記陽極酸化層の前記外表面を越えて突出していることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
複数のシリコンナノワイヤの形成方法であって、
アルミニウム層に隣接するアルマイト層の複数の細孔を通じて、該アルマイト細孔の底部にあるアルミニウムを触媒として、VLSプロセスを用いてシリコンナノワイヤを成長させるステップと、
前記シリコンナノワイヤをN型半導体で被覆するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
複数の細孔を形成する前に前記基材の前記表面に到達しないようにアルミニウム層を陽極酸化するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミニウム層の所定領域において細孔を有しないアルミナ層を形成することによって、該所定領域のマスキングを除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記n型層と前記基材との電気接触を防止するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒を構成する前記アルミニウムが前記シリコンナノワイヤの前記ドーパントとして使い果たされるまで、前記VLSプロセスを継続するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
シリコンナノワイヤデバイスの形成方法であって、
アルミニウム層を陽極酸化し、陽極酸化層の外表面から該陽極酸化層の底面における界面領域内の或る場所まで延在する複数の細孔を、該複数の細孔の底部にアルミニウムの一部が残るようにして作製するステップと、
前記複数の細孔の前記底部に残っている前記アルミニウムが共晶先端における触媒としても前記シリコンナノワイヤの前記ドーパントとしても用いられるように、VLSプロセスを用いて、シリコンナノワイヤを成長させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記共晶先端における前記アルミニウム触媒が前記シリコンナノワイヤのドーパントとして消費されるまで、前記シリコンナノワイヤの成長を継続するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記残っている触媒を除去するために、前記複数のシリコンナノワイヤの前記共晶先端を除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
シリコンナノワイヤを成長させていない細孔を通して前記N型層と前記基材とが短絡しないようにするために、前記デバイスを保護膜で被覆するステップをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノワイヤを、前記N型シリコン層で被覆する前に真性シリコン層で被覆するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノワイヤを、前記N型シリコン層で被覆する前にP型シリコン層で被覆するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記N型シリコン層を前記アルマイト表面の所定領域からエッチングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記N型シリコン層と機能的に接触する透明導電体の層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記透明導電体層と機能的に接触する金属製導電ワイヤをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2012−524402(P2012−524402A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506007(P2012−506007)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034369
【国際公開番号】WO2010/121272
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511031973)イルミネックス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034369
【国際公開番号】WO2010/121272
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511031973)イルミネックス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]