光量調節装置
【課題】小型で簡単な構造のシャッタ機構や光量調節機構等を有する光量調節装置を提供する。
【解決手段】この光量調節装置は、光束が通過する開口部11aを備えた地板11と、駆動装置により駆動されて地板11の開口部11aの開口量を調節する光量調節用羽根5とを備える。駆動装置は、周方向に分割されて異なる極に着磁された筒状のマグネット1と、マグネット1の内径部に固定される軟磁性材料からなる軸2と、マグネット2の軸方向の一側に配置されるボビン5bと、ボビン5bに巻回されるコイル3と、少なくとも一つの外側磁極部がマグネット1の外周面に径方向に対向配置され、コイル3により励磁されるステータ4とを備える。そして、光量調節用羽根5は、ボビン5bと合成樹脂により一体に成形される。
【解決手段】この光量調節装置は、光束が通過する開口部11aを備えた地板11と、駆動装置により駆動されて地板11の開口部11aの開口量を調節する光量調節用羽根5とを備える。駆動装置は、周方向に分割されて異なる極に着磁された筒状のマグネット1と、マグネット1の内径部に固定される軟磁性材料からなる軸2と、マグネット2の軸方向の一側に配置されるボビン5bと、ボビン5bに巻回されるコイル3と、少なくとも一つの外側磁極部がマグネット1の外周面に径方向に対向配置され、コイル3により励磁されるステータ4とを備える。そして、光量調節用羽根5は、ボビン5bと合成樹脂により一体に成形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シャッタ機構や光量調節機構等を有する光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズシャッタカメラのシャッタ羽根の駆動装置としては、例えば、図11に示すものがある(特許文献1)。
【0003】
この駆動装置は、永久磁石であるマグネット101に駆動ピン102aを有する駆動レバー102が固着されている。駆動レバー102は、マグネット101と一体的に回転する。
【0004】
ステータ104,105は軟磁性材料からなり、コイル103により励磁される。ステータ104の端部104aとステータ105の端部105aとは接合されて、磁気回路上で一体となっている。コイル103への通電により、ステータ104およびステータ105が励磁され、マグネット101が所定の角度内を回転する。
【0005】
シャッタ羽根106,107には、穴部106a,107a、および長穴106b,107bが設けられている。シャッタ羽根106,107の穴部106a,107aは地板108のピン108b,108cに嵌め込まれて、シャッタ羽根106,107が地板108に対して回転可能に取り付けられる。
【0006】
シャッタ羽根106,107の長穴106b,107bは駆動レバー102の駆動ピン102aに摺動可能に嵌合し、駆動レバー102がマグネット101とともに回転する。これにより、シャッタ羽根106,107は穴部106a,107aを中心として回転駆動され、地板108の開口部108aを開閉する。
【0007】
前地板109はシャッタ羽根106,107を地板108との間で移動可能に保持し、後地板110はステータ104,105を保持するとともに、マグネット101を回転可能に保持する。
【0008】
しかし、上記従来のシャッタ装置は、その厚みを薄くすることはできるが、コイルやステータが地板上において大きなスペースを占有してしまうことから、図12および図13に示す光量調節装置が提案されている(特許文献2)。
【0009】
この光量調節装置は、筒状のマグネットであるロータ201に、N極201aとS極201bが着磁されている。ロータ201には、腕201gが一体に成形されている。この腕201gから駆動ピン201hがロータ201の回転軸方向に延びている。ロータ201の同軸上には、コイル202が配置されている。
【0010】
ステータ203は軟磁性材料からなり、コイル202によって励磁される。ステータ203は、ロータ201の外周面と対向する外側磁極部203aと、ロータ201の内部に挿入される内筒203bと、ロータ201の軸部201fが回転可能に嵌合される穴部203cを有する。
【0011】
補助ステータ204は、ステータ203の内筒203bに固定され、ロータ201の内周面と対向する。コイル202への通電により、外側磁極部203a、補助ステータ204が励磁され、ロータ201は所定の位置まで回転する。
【0012】
地板205の穴部205dには、ロータ201の軸部201eが嵌合している。シャッタ羽根207,208は、地板205のピン205b,205cへ穴部207a,208aを介して回転可能に取り付けられ、長穴207b,208bが駆動ピン201hに摺動可能に嵌合する。
【0013】
トーションバネ206は、駆動ピン201hを長穴207b,208bの端部に押し付ける付勢力をロータ201に付与している。前地板209は、シャッタ羽根207,208を地板205との間で移動可能に保持する。
【0014】
そして、コイル202へ通電し、トーションバネ206の付勢力に抗してロータ201とともに駆動ピン201hを回転させることで、シャッタ羽根207,208が穴部207a,208aを中心として回転駆動され、地板205の開口部205aを開閉する。
【0015】
この光量調節装置を、カメラのシャッタ装置として用いる場合、コイル202への通電時間を変化させることで露光量を調節することができる。また、ビデオカメラの絞り調節機構として用いる場合、コイル202への通電電流値を変更することで露光量を調節することができる。
【0016】
そして、駆動ピン201hは外側磁極とは離れた位置に配置されるため、駆動ピン201hを永久磁石の材料で構成して該駆動ピン201hが着磁されても発生する電磁力は非常に小さい。従って、ロータ全体の出力特性に影響を及ぼすことなく光量調節装置の安定したアクチエータとすることができる。
【0017】
また、駆動ピン201hはロータ201と一体的に成形されるので、別部品で構成される場合に比べ低コストで小さい組み立て誤差となる。更に、ロータ201の回転軸に関して外側磁極とは重複しない位置に駆動ピン201hを配置できるので、地板205からのステータ203の軸方向の突出長さL(図13参照)を短くすることもできる。
【0018】
さらに、この光量調節装置では、コイル202とロータ201とが軸方向に配置されるので、これらが地板205上において大きなスペースを占有しないためコンパクトな装置となる。
【0019】
また、さらなるコンパクト化を図った光量調節装置として、図14および図15に示す光量調節装置が提案されている(特許文献3)。
【0020】
この光量調節装置は、筒状のマグネットであるロータ301に、N極301aとS極301bとが着磁されている。ロータ301には、腕301gが一体に成形されている。この腕301gから駆動ピン301hがロータ301の回転軸方向に延びている。ロータ301の同軸上には、コイル302が配置されている。
【0021】
ステータ303は軟磁性材料からなり、コイル302によって励磁される。ステータ303は、ロータ301の外周面と対向する外側磁極部303aと、ロータ301の内部に挿入される内筒303bとを有する。
【0022】
補助ステータ304は、ステータ303の内筒303bに固定され、ロータ301の内周面と対向する。コイル302への通電により、外側磁極部303a、補助ステータ304が励磁され、ロータ301が所定の位置まで回転する。
【0023】
ボビン309は非磁性材料からなり、コイル302が巻回される胴体部と、ロータ301の内周面と補助ステータ304との間に介在してロータ301を回転可能に支持する支持部309cとを有する。
【0024】
シャッタ羽根307,308は地板305のピン305b,305cへ穴部307a,308aを介して回転可能に取り付けられ、長穴307b,308bが駆動ピン301hに摺動可能に嵌合する。前地板306は、シャッタ羽根307,308を地板305との間で移動可能に保持する。
【0025】
そして、コイル302へ通電し、ロータ301とともに駆動ピン301hを回転させることで、シャッタ羽根307,308は穴部307a,308aを中心として回転駆動され、地板305の開口部305aを開閉する。
【0026】
この光量調節装置では、コイル302が巻回されるボビン309に、ロータ301の内周面とステータ303の内側磁極部との間に介在してロータ301を回動可能に支持する支持部を設け、長軸化の原因となるロータの回転支持部材を不要にしている。
【特許文献1】特開2001−75146号公報
【特許文献2】特開2002−49076号公報
【特許文献3】特開2005−208232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかし、上記特許文献3では、ロータ301の腕301gが地板305上に露出して地板305上のスペースを部分的に占有するため、地板305上のスペースを小さくする妨げになる。
【0028】
また、ステータ303の地板305からの軸方向の突出長さL(図15参照)を装置の性能を落とさずにこれ以上短くすることが困難であることから、装置の軸方向の突出長さが長くなる。
【0029】
そこで、本発明は、小型で簡単な構造のシャッタ機構や光量調節機構等を有する光量調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明の光量調節装置は、光束が通過する開口部を備えた地板と、駆動装置により駆動されて前記地板の開口部の開口量を調節する光量調節用羽根と、を備える光量調節装置であって、前記駆動装置は、周方向に分割されて異なる極に着磁された筒状のマグネットと、該マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる軸と、前記マグネットの軸方向の一側に配置されるボビンと、該ボビンに巻回されるコイルと、少なくとも一つの外側磁極部が前記マグネットの外周面に径方向に対向配置され、前記コイルにより励磁されるステータと、を備え、前記光量調節用羽根が前記ボビンと一体に成形される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、小型で簡単な構造のシャッタ機構や光量調節機構等を有する光量調節装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。
【0033】
図1は本発明の実施の形態の一例である光量調節装置を説明するための分解斜視図、図2は図1に示す光量調節装置の組立状態での断面図である。
【0034】
図1および図2に示すように、この光量調節装置は、シャッタ羽根(光量調節羽根)5を駆動する第1の駆動装置、絞り羽根(光量調節羽根)10を駆動する第2の駆動装置、地板11、中間シート12、および羽根押え13を備える。
【0035】
第1の駆動装置は、マグネット1、軸2、コイル3、ステータ4、およびシャッタ羽根5を有している。
【0036】
マグネット1は、円筒状の永久磁石からなり、外周面が円周方向に複数に分割(本実施の形態では4分割)されて、分割域に着磁極数がn(n=4)となるようにS極とN極とが交互に着磁されている。マグネット1の内周面は、外周面に比べて弱い着磁分布を持つか、あるいは全く着磁されていないか、あるいは外周面と逆の極、すなわち外周面がS極の場合はその領域の内周面はN極に着磁されているかの何れかである。
【0037】
軸2は、軟磁性材料からなり、マグネット1の内周面が接着や圧入等により密着固定される第1の円柱部2aを有する。また、軸2には、第2の円柱部2b、円柱端部2c、および円柱端部2dが形成されている。
【0038】
ステータ4は、軟磁性材料からなり、第1の外側磁極部4a、第2の外側磁極部4b、および軸2の円柱端部2cが嵌合する軸穴部4cを有する。第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bは、軸2に沿って平行に延びる櫛歯状に形成されている。また、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bは、マグネット1の外周面に所定の隙間を介して対向配置される。そして、マグネット1の内側に固定されるとともに、コイル3の内側に配置される軸2により内側磁極部が形成される。
【0039】
シャッタ羽根5には、コイル3が巻かれるボビン部5bが一体に成形され、ボビン部5bの中央に設けられる穴部5cが軸2の第2の円柱部2bに回転可能に嵌合する。
【0040】
そして、コイル3へ通電することにより、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bと内側磁極部とが励磁され、外側磁極部4a,4bと内側磁極部との間にはマグネット1を横切る磁束が発生してマグネット1に作用する。その際、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bと内側磁極部とはそれぞれ反対の極に励磁される。
【0041】
第2の駆動装置は、マグネット6、軸7、コイル8、ステータ9、および絞り羽根10を有している。
【0042】
マグネット6は、円筒状の永久磁石からなり、外周面が円周方向に複数に分割(本実施の形態では4分割)されて、分割域に着磁極数がn(n=4)となるようにS極とN極とが交互に着磁されている。マグネット6の内周面は、外周面に比べて弱い着磁分布を持つか、あるいは全く着磁されていないか、あるいは外周面と逆の極、すなわち外周面がS極の場合はその領域の内周面はN極に着磁されているかの何れかである。
【0043】
軸7は、軟磁性材料からなり、マグネット6の内周面が接着や圧入等により密着固定される第1の円柱部7aを有する。また、軸7には、第2の円柱部7b、円柱端部7c、および円柱端部7dが形成されている。
【0044】
ステータ9は、軟磁性材料からなり、第1の外側磁極部9a、第2の外側磁極部9b、および軸7の円柱端部7cが嵌合する軸穴部9cを有する。第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bは、軸7に沿って平行に延びる櫛歯状に形成されている。また、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bは、マグネット6の外周面に所定の隙間を介して対向配置される。そして、マグネット6の内側に固定されるとともにコイル8の内側に配置される軸7によって内側磁極部が形成される。
【0045】
絞り羽根10は、コイル8が巻かれるボビン部10bが一体で成形され、ボビン部10bの中央に設けられる穴部10cが軸7の第2の円柱部7bに回転可能に嵌合する。
【0046】
そして、コイル8へ通電することにより、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bと内側磁極部とが励磁され、外側磁極部9a,9bと内側磁極部との間にはマグネット6を横切る磁束が発生し、マグネット6に作用する。その際、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bと内側磁極部とはそれぞれ反対の極に励磁される。
【0047】
地板11は、中央に開口部11aが設けられている。また、地板11には、軸2の円柱端部2dが挿入されて位置決めされる穴部11b、軸7の円柱端部7dが挿入されて位置決めされる穴部11c、マグネット1および軸2が固定される凹部11d、マグネット6および軸7が固定される凹部11eが設けられている。更に、地板11には、シャッタ羽根5および絞り羽根10の閉じ側のストッパー11f、シャッタ羽根5の開き側のストッパー11g、絞り羽根10の開き側のストッパー11hが一体で設けられている。
【0048】
ここで、シャッタ羽根5は地板11の開口部11aよりも大径の遮光部5aを有し、軸2の第2の円柱部2bにボビン部5bの中央に設けられた穴部5cが回転可能に嵌合して、地板11上に配置される。また、シャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11fに当接する状態からストッパー11gに当接する状態まで穴部5cを中心に回転可能となっている。
【0049】
中間シート12は、中央に地板11の開口部11aよりも若干小径の開口部12aが設けられ、シャッタ羽根5を間に挟んで地板11に固定される。
【0050】
ここで、絞り羽根10は、中間シート12の開口部12aよりも大径の遮光部10aを有し、遮光部10aの中央には、開口部12aよりも小径の開口部が設けられている。また、絞り羽根10は、軸7の第2円柱部7bにボビン部10bの中央に設けられた穴部10cが回転可能に嵌合して、中間シート12上に配置される。更に、絞り羽根10は、遮光部10aの一部が地板11のストッパー11fに当接する状態からストッパー11hに当接する状態まで穴部10cを中心に回転可能となっている。
【0051】
羽根押え13は、シャッタ羽根5、中間シート12、および絞り羽根10の地板11からの抜け止め部材として機能する。羽根押え13には、中央に中間シート12の開口部12aよりも大径の開口部13aが設けられている。また、羽根押え13には、ステータ4の直径よりも大径の開口部13bおよびステータ9の直径よりも大径の開口部13cが設けられている。地板11の開口部11aと中間シート12の開口部12aと羽根押え13の開口部13aとは、その中心がほぼ一致して配置される。
【0052】
次に、図3〜図10を参照して、光量調節装置のシャッタ羽根5および絞り羽根10の動作例を説明する。なお、図3、図5、図7、図9では、羽根押え13および中間シート12の図示を省略している。また、図4、図6、図8、図10は、それぞれ図3、図5、図7、図9の状態を裏から見た図で、地板11および中間シート12の図示を省略している。
【0053】
まず、図4において、コイル3に正通電して第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bをS極に励磁すると、ステータ4には各外側磁極部4a,4bの中心とマグネット1の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図の時計方向の回転力が発生する。
【0054】
このとき、図3に示すように、ステータ4に固定されているシャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11gに当接して、シャッタ羽根5は図3および図4の状態となる。第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bの中心とマグネット1の着磁部の中心が一致する状態は無通電コギング停止位置と一致しており、図3および図4の状態でコイル3の通電を切っても、コギング力によりこの状態は保持される。
【0055】
一方、コイル8に正通電して第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bをS極に励磁すると、ステータ9には各外側磁極部9a,9bの中心とマグネット6の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図の反時計方向の回転力が発生する。
【0056】
このとき、図3に示すように、ステータ9に固定されている絞り羽根10の遮光部10aの一部が地板11のストッパー11hに当接して、絞り羽根10は図3および図4の状態となる。第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bの中心とマグネット6の着磁部の中心が一致する状態は無通電コギング停止位置と一致しており、図3および図4の状態でコイル8の通電を切っても、コギング力によりこの状態は保持される。
【0057】
この状態は、シャッタ羽根5および絞り羽根10が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aから退避した状態である。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aからも退避した状態となる。このとき、露光用の開口は中間シート12の開口部12aで決まることになる。
【0058】
図3,図4の状態からコイル3を逆通電に切り換えると、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bはN極に励磁される。すると、ステータ4には、各外側磁極部4a,4bの中心とマグネット1の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図4の反時計方向の回転力が発生し、図4の状態から時計方向に約50°回転すると、図6の状態になる。
【0059】
このとき、反時計方向の回転力は発生したままであるが、図5に示すように、ステータ4に固定されているシャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11fに当接し、シャッタ羽根5は、図5および図6の状態となる。
【0060】
この状態は、シャッタ羽根5が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aを完全に覆った状態であり、絞り羽根10は地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aから退避した状態のままである。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aも完全に遮光された状態となる。
【0061】
また、図3,図4の状態からコイル8を逆通電に切り換えると、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bはN極に励磁される。すると、ステータ9には、各外側磁極部9a,9bの中心とマグネット6の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図4の時計方向の回転力が発生し、図4の状態から反時計方向に約50°回転すると、図8の状態になる。
【0062】
このとき、時計方向の回転力は発生したままであるが、図7に示すようにステータ9に固定されている絞り羽根10の遮光部10aの一部が地板11のストッパー11fに当接し、絞り羽根10は、図7および図8の状態となる。
【0063】
この状態は、絞り羽根10が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aに重なった状態であり、シャッタ羽根5は地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aから退避した状態のままである。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aは絞り羽根10に覆われる。このとき、露光用の開口は中間シート12の開口部12aよりも小径である絞り羽根10の遮光部10aの開口部で決まることになる。
【0064】
次に、図7および図8の状態からコイル3を逆通電に切り換えると、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bはN極に励磁される。すると、ステータ4には、各外側磁極部4a,4bの中心とマグネット1の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図8の反時計方向の回転力が発生し、図8の状態から時計方向に約50°回転すると、図10の状態になる。
【0065】
このとき、反時計方向の回転力は発生したままであるが、図9に示すようにステータ4に固定されているシャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11fに当接して、シャッタ羽根5は図9および図10の状態となる。
【0066】
この状態は、シャッタ羽根5が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aを完全に覆った状態であり、絞り羽根10は地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aに重なったままである。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aも完全に遮光された状態となる。
【0067】
このように、コイル3およびコイル8の通電状態を制御することで、図3〜図10の状態を任意に選択することができる。
【0068】
以上のように、本実施の形態では、2つの駆動装置を用いシャッタ羽根5と絞り羽根10とをそれぞれ露光用開口への挿入位置と露光用開口からの退避位置とに選択的に駆動することが可能となる。
【0069】
また、シャッタ羽根5を駆動する第1の駆動装置のコイル3が巻回されるボビン部5bがシャッタ羽根5と一体成形され、絞り羽根10を駆動する第2の駆動装置のコイル8が巻回されるボビン10bが絞り羽根10と一体成形される。このため、従来に比べて、シンプルな構造で部品も少なくて済み、コストを低くすることができる。
【0070】
さらに、コイル3とステータ4がシャッタ羽根5と一体で回転するため、シャッタ羽根5の駆動時間のばらつきが少なくなり、シャッタ速度の繰り返し誤差を大幅に低減することができる。
【0071】
さらに、従来のように、ロータの腕が地板上に露出して地板上のスペースを占有することがなく、2つの駆動装置の地板11上のスペースを限りなく小さくすることができる。
【0072】
さらに、円筒状の2つの駆動装置をそれぞれシャッタ羽根5の軸方向上下および絞り羽根10の軸方向上下に分けて配置することが可能となり、地板11からの駆動装置の軸方向突出高さを低くすることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、絞り羽根10の遮光部10aには露光用開口を決める中間シート12の開口部12aよりも小径の開口部が中央に設けられたものであるが、この開口部に通過光が所定量だけ透過するNDフィルタを設けてもよい。その場合、遮光部10aの開口部の径を小さくし過ぎることで発生する小絞り回折による画像劣化を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態の一例である光量調節装置を説明するための分解斜視図である。
【図2】図1に示す光量調節装置の組立状態での断面図である。
【図3】図1に示す光量調節装置のシャッタ羽根および絞り羽根の動作例を説明するための図である。
【図4】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図3の状態を裏から見た図である。
【図5】図3の状態から第1の駆動装置のコイルの通電を切り換えてシャッタ羽根を駆動させた状態を示す図である。
【図6】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図5の状態を裏から見た図である。
【図7】図3の状態から第2の駆動装置のコイルの通電を切り換えて絞り羽根を駆動させた状態を示す図である。
【図8】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図7の状態を裏から見た図である。
【図9】図7の状態からシャッタ用駆動装置のコイルの通電を切り換えてシャッタ羽根を駆動させた状態を示す図である。
【図10】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図9の状態を裏から見た図である。
【図11】従来のシャッタ羽根の駆動装置を示す分解斜視図である。
【図12】従来の光量調節装置を示す分解斜視図である。
【図13】図12に示す光量調節装置の要部断面図である。
【図14】従来の他の光量調節装置を示す分解斜視図である。
【図15】図14に示す光量調節装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1,6 マグネット
2,7 軸
3,8 コイル
4,9 ステータ
5 シャッタ羽根(光量調節羽根)
5b ボビン
10 絞り羽根(光量調節羽根)
10b ボビン
11 地板
12 中間シート
13 羽根押え
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シャッタ機構や光量調節機構等を有する光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズシャッタカメラのシャッタ羽根の駆動装置としては、例えば、図11に示すものがある(特許文献1)。
【0003】
この駆動装置は、永久磁石であるマグネット101に駆動ピン102aを有する駆動レバー102が固着されている。駆動レバー102は、マグネット101と一体的に回転する。
【0004】
ステータ104,105は軟磁性材料からなり、コイル103により励磁される。ステータ104の端部104aとステータ105の端部105aとは接合されて、磁気回路上で一体となっている。コイル103への通電により、ステータ104およびステータ105が励磁され、マグネット101が所定の角度内を回転する。
【0005】
シャッタ羽根106,107には、穴部106a,107a、および長穴106b,107bが設けられている。シャッタ羽根106,107の穴部106a,107aは地板108のピン108b,108cに嵌め込まれて、シャッタ羽根106,107が地板108に対して回転可能に取り付けられる。
【0006】
シャッタ羽根106,107の長穴106b,107bは駆動レバー102の駆動ピン102aに摺動可能に嵌合し、駆動レバー102がマグネット101とともに回転する。これにより、シャッタ羽根106,107は穴部106a,107aを中心として回転駆動され、地板108の開口部108aを開閉する。
【0007】
前地板109はシャッタ羽根106,107を地板108との間で移動可能に保持し、後地板110はステータ104,105を保持するとともに、マグネット101を回転可能に保持する。
【0008】
しかし、上記従来のシャッタ装置は、その厚みを薄くすることはできるが、コイルやステータが地板上において大きなスペースを占有してしまうことから、図12および図13に示す光量調節装置が提案されている(特許文献2)。
【0009】
この光量調節装置は、筒状のマグネットであるロータ201に、N極201aとS極201bが着磁されている。ロータ201には、腕201gが一体に成形されている。この腕201gから駆動ピン201hがロータ201の回転軸方向に延びている。ロータ201の同軸上には、コイル202が配置されている。
【0010】
ステータ203は軟磁性材料からなり、コイル202によって励磁される。ステータ203は、ロータ201の外周面と対向する外側磁極部203aと、ロータ201の内部に挿入される内筒203bと、ロータ201の軸部201fが回転可能に嵌合される穴部203cを有する。
【0011】
補助ステータ204は、ステータ203の内筒203bに固定され、ロータ201の内周面と対向する。コイル202への通電により、外側磁極部203a、補助ステータ204が励磁され、ロータ201は所定の位置まで回転する。
【0012】
地板205の穴部205dには、ロータ201の軸部201eが嵌合している。シャッタ羽根207,208は、地板205のピン205b,205cへ穴部207a,208aを介して回転可能に取り付けられ、長穴207b,208bが駆動ピン201hに摺動可能に嵌合する。
【0013】
トーションバネ206は、駆動ピン201hを長穴207b,208bの端部に押し付ける付勢力をロータ201に付与している。前地板209は、シャッタ羽根207,208を地板205との間で移動可能に保持する。
【0014】
そして、コイル202へ通電し、トーションバネ206の付勢力に抗してロータ201とともに駆動ピン201hを回転させることで、シャッタ羽根207,208が穴部207a,208aを中心として回転駆動され、地板205の開口部205aを開閉する。
【0015】
この光量調節装置を、カメラのシャッタ装置として用いる場合、コイル202への通電時間を変化させることで露光量を調節することができる。また、ビデオカメラの絞り調節機構として用いる場合、コイル202への通電電流値を変更することで露光量を調節することができる。
【0016】
そして、駆動ピン201hは外側磁極とは離れた位置に配置されるため、駆動ピン201hを永久磁石の材料で構成して該駆動ピン201hが着磁されても発生する電磁力は非常に小さい。従って、ロータ全体の出力特性に影響を及ぼすことなく光量調節装置の安定したアクチエータとすることができる。
【0017】
また、駆動ピン201hはロータ201と一体的に成形されるので、別部品で構成される場合に比べ低コストで小さい組み立て誤差となる。更に、ロータ201の回転軸に関して外側磁極とは重複しない位置に駆動ピン201hを配置できるので、地板205からのステータ203の軸方向の突出長さL(図13参照)を短くすることもできる。
【0018】
さらに、この光量調節装置では、コイル202とロータ201とが軸方向に配置されるので、これらが地板205上において大きなスペースを占有しないためコンパクトな装置となる。
【0019】
また、さらなるコンパクト化を図った光量調節装置として、図14および図15に示す光量調節装置が提案されている(特許文献3)。
【0020】
この光量調節装置は、筒状のマグネットであるロータ301に、N極301aとS極301bとが着磁されている。ロータ301には、腕301gが一体に成形されている。この腕301gから駆動ピン301hがロータ301の回転軸方向に延びている。ロータ301の同軸上には、コイル302が配置されている。
【0021】
ステータ303は軟磁性材料からなり、コイル302によって励磁される。ステータ303は、ロータ301の外周面と対向する外側磁極部303aと、ロータ301の内部に挿入される内筒303bとを有する。
【0022】
補助ステータ304は、ステータ303の内筒303bに固定され、ロータ301の内周面と対向する。コイル302への通電により、外側磁極部303a、補助ステータ304が励磁され、ロータ301が所定の位置まで回転する。
【0023】
ボビン309は非磁性材料からなり、コイル302が巻回される胴体部と、ロータ301の内周面と補助ステータ304との間に介在してロータ301を回転可能に支持する支持部309cとを有する。
【0024】
シャッタ羽根307,308は地板305のピン305b,305cへ穴部307a,308aを介して回転可能に取り付けられ、長穴307b,308bが駆動ピン301hに摺動可能に嵌合する。前地板306は、シャッタ羽根307,308を地板305との間で移動可能に保持する。
【0025】
そして、コイル302へ通電し、ロータ301とともに駆動ピン301hを回転させることで、シャッタ羽根307,308は穴部307a,308aを中心として回転駆動され、地板305の開口部305aを開閉する。
【0026】
この光量調節装置では、コイル302が巻回されるボビン309に、ロータ301の内周面とステータ303の内側磁極部との間に介在してロータ301を回動可能に支持する支持部を設け、長軸化の原因となるロータの回転支持部材を不要にしている。
【特許文献1】特開2001−75146号公報
【特許文献2】特開2002−49076号公報
【特許文献3】特開2005−208232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかし、上記特許文献3では、ロータ301の腕301gが地板305上に露出して地板305上のスペースを部分的に占有するため、地板305上のスペースを小さくする妨げになる。
【0028】
また、ステータ303の地板305からの軸方向の突出長さL(図15参照)を装置の性能を落とさずにこれ以上短くすることが困難であることから、装置の軸方向の突出長さが長くなる。
【0029】
そこで、本発明は、小型で簡単な構造のシャッタ機構や光量調節機構等を有する光量調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明の光量調節装置は、光束が通過する開口部を備えた地板と、駆動装置により駆動されて前記地板の開口部の開口量を調節する光量調節用羽根と、を備える光量調節装置であって、前記駆動装置は、周方向に分割されて異なる極に着磁された筒状のマグネットと、該マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる軸と、前記マグネットの軸方向の一側に配置されるボビンと、該ボビンに巻回されるコイルと、少なくとも一つの外側磁極部が前記マグネットの外周面に径方向に対向配置され、前記コイルにより励磁されるステータと、を備え、前記光量調節用羽根が前記ボビンと一体に成形される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、小型で簡単な構造のシャッタ機構や光量調節機構等を有する光量調節装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。
【0033】
図1は本発明の実施の形態の一例である光量調節装置を説明するための分解斜視図、図2は図1に示す光量調節装置の組立状態での断面図である。
【0034】
図1および図2に示すように、この光量調節装置は、シャッタ羽根(光量調節羽根)5を駆動する第1の駆動装置、絞り羽根(光量調節羽根)10を駆動する第2の駆動装置、地板11、中間シート12、および羽根押え13を備える。
【0035】
第1の駆動装置は、マグネット1、軸2、コイル3、ステータ4、およびシャッタ羽根5を有している。
【0036】
マグネット1は、円筒状の永久磁石からなり、外周面が円周方向に複数に分割(本実施の形態では4分割)されて、分割域に着磁極数がn(n=4)となるようにS極とN極とが交互に着磁されている。マグネット1の内周面は、外周面に比べて弱い着磁分布を持つか、あるいは全く着磁されていないか、あるいは外周面と逆の極、すなわち外周面がS極の場合はその領域の内周面はN極に着磁されているかの何れかである。
【0037】
軸2は、軟磁性材料からなり、マグネット1の内周面が接着や圧入等により密着固定される第1の円柱部2aを有する。また、軸2には、第2の円柱部2b、円柱端部2c、および円柱端部2dが形成されている。
【0038】
ステータ4は、軟磁性材料からなり、第1の外側磁極部4a、第2の外側磁極部4b、および軸2の円柱端部2cが嵌合する軸穴部4cを有する。第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bは、軸2に沿って平行に延びる櫛歯状に形成されている。また、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bは、マグネット1の外周面に所定の隙間を介して対向配置される。そして、マグネット1の内側に固定されるとともに、コイル3の内側に配置される軸2により内側磁極部が形成される。
【0039】
シャッタ羽根5には、コイル3が巻かれるボビン部5bが一体に成形され、ボビン部5bの中央に設けられる穴部5cが軸2の第2の円柱部2bに回転可能に嵌合する。
【0040】
そして、コイル3へ通電することにより、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bと内側磁極部とが励磁され、外側磁極部4a,4bと内側磁極部との間にはマグネット1を横切る磁束が発生してマグネット1に作用する。その際、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bと内側磁極部とはそれぞれ反対の極に励磁される。
【0041】
第2の駆動装置は、マグネット6、軸7、コイル8、ステータ9、および絞り羽根10を有している。
【0042】
マグネット6は、円筒状の永久磁石からなり、外周面が円周方向に複数に分割(本実施の形態では4分割)されて、分割域に着磁極数がn(n=4)となるようにS極とN極とが交互に着磁されている。マグネット6の内周面は、外周面に比べて弱い着磁分布を持つか、あるいは全く着磁されていないか、あるいは外周面と逆の極、すなわち外周面がS極の場合はその領域の内周面はN極に着磁されているかの何れかである。
【0043】
軸7は、軟磁性材料からなり、マグネット6の内周面が接着や圧入等により密着固定される第1の円柱部7aを有する。また、軸7には、第2の円柱部7b、円柱端部7c、および円柱端部7dが形成されている。
【0044】
ステータ9は、軟磁性材料からなり、第1の外側磁極部9a、第2の外側磁極部9b、および軸7の円柱端部7cが嵌合する軸穴部9cを有する。第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bは、軸7に沿って平行に延びる櫛歯状に形成されている。また、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bは、マグネット6の外周面に所定の隙間を介して対向配置される。そして、マグネット6の内側に固定されるとともにコイル8の内側に配置される軸7によって内側磁極部が形成される。
【0045】
絞り羽根10は、コイル8が巻かれるボビン部10bが一体で成形され、ボビン部10bの中央に設けられる穴部10cが軸7の第2の円柱部7bに回転可能に嵌合する。
【0046】
そして、コイル8へ通電することにより、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bと内側磁極部とが励磁され、外側磁極部9a,9bと内側磁極部との間にはマグネット6を横切る磁束が発生し、マグネット6に作用する。その際、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bと内側磁極部とはそれぞれ反対の極に励磁される。
【0047】
地板11は、中央に開口部11aが設けられている。また、地板11には、軸2の円柱端部2dが挿入されて位置決めされる穴部11b、軸7の円柱端部7dが挿入されて位置決めされる穴部11c、マグネット1および軸2が固定される凹部11d、マグネット6および軸7が固定される凹部11eが設けられている。更に、地板11には、シャッタ羽根5および絞り羽根10の閉じ側のストッパー11f、シャッタ羽根5の開き側のストッパー11g、絞り羽根10の開き側のストッパー11hが一体で設けられている。
【0048】
ここで、シャッタ羽根5は地板11の開口部11aよりも大径の遮光部5aを有し、軸2の第2の円柱部2bにボビン部5bの中央に設けられた穴部5cが回転可能に嵌合して、地板11上に配置される。また、シャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11fに当接する状態からストッパー11gに当接する状態まで穴部5cを中心に回転可能となっている。
【0049】
中間シート12は、中央に地板11の開口部11aよりも若干小径の開口部12aが設けられ、シャッタ羽根5を間に挟んで地板11に固定される。
【0050】
ここで、絞り羽根10は、中間シート12の開口部12aよりも大径の遮光部10aを有し、遮光部10aの中央には、開口部12aよりも小径の開口部が設けられている。また、絞り羽根10は、軸7の第2円柱部7bにボビン部10bの中央に設けられた穴部10cが回転可能に嵌合して、中間シート12上に配置される。更に、絞り羽根10は、遮光部10aの一部が地板11のストッパー11fに当接する状態からストッパー11hに当接する状態まで穴部10cを中心に回転可能となっている。
【0051】
羽根押え13は、シャッタ羽根5、中間シート12、および絞り羽根10の地板11からの抜け止め部材として機能する。羽根押え13には、中央に中間シート12の開口部12aよりも大径の開口部13aが設けられている。また、羽根押え13には、ステータ4の直径よりも大径の開口部13bおよびステータ9の直径よりも大径の開口部13cが設けられている。地板11の開口部11aと中間シート12の開口部12aと羽根押え13の開口部13aとは、その中心がほぼ一致して配置される。
【0052】
次に、図3〜図10を参照して、光量調節装置のシャッタ羽根5および絞り羽根10の動作例を説明する。なお、図3、図5、図7、図9では、羽根押え13および中間シート12の図示を省略している。また、図4、図6、図8、図10は、それぞれ図3、図5、図7、図9の状態を裏から見た図で、地板11および中間シート12の図示を省略している。
【0053】
まず、図4において、コイル3に正通電して第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bをS極に励磁すると、ステータ4には各外側磁極部4a,4bの中心とマグネット1の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図の時計方向の回転力が発生する。
【0054】
このとき、図3に示すように、ステータ4に固定されているシャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11gに当接して、シャッタ羽根5は図3および図4の状態となる。第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bの中心とマグネット1の着磁部の中心が一致する状態は無通電コギング停止位置と一致しており、図3および図4の状態でコイル3の通電を切っても、コギング力によりこの状態は保持される。
【0055】
一方、コイル8に正通電して第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bをS極に励磁すると、ステータ9には各外側磁極部9a,9bの中心とマグネット6の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように図の反時計方向の回転力が発生する。
【0056】
このとき、図3に示すように、ステータ9に固定されている絞り羽根10の遮光部10aの一部が地板11のストッパー11hに当接して、絞り羽根10は図3および図4の状態となる。第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bの中心とマグネット6の着磁部の中心が一致する状態は無通電コギング停止位置と一致しており、図3および図4の状態でコイル8の通電を切っても、コギング力によりこの状態は保持される。
【0057】
この状態は、シャッタ羽根5および絞り羽根10が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aから退避した状態である。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aからも退避した状態となる。このとき、露光用の開口は中間シート12の開口部12aで決まることになる。
【0058】
図3,図4の状態からコイル3を逆通電に切り換えると、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bはN極に励磁される。すると、ステータ4には、各外側磁極部4a,4bの中心とマグネット1の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図4の反時計方向の回転力が発生し、図4の状態から時計方向に約50°回転すると、図6の状態になる。
【0059】
このとき、反時計方向の回転力は発生したままであるが、図5に示すように、ステータ4に固定されているシャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11fに当接し、シャッタ羽根5は、図5および図6の状態となる。
【0060】
この状態は、シャッタ羽根5が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aを完全に覆った状態であり、絞り羽根10は地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aから退避した状態のままである。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aも完全に遮光された状態となる。
【0061】
また、図3,図4の状態からコイル8を逆通電に切り換えると、第1の外側磁極部9aおよび第2の外側磁極部9bはN極に励磁される。すると、ステータ9には、各外側磁極部9a,9bの中心とマグネット6の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図4の時計方向の回転力が発生し、図4の状態から反時計方向に約50°回転すると、図8の状態になる。
【0062】
このとき、時計方向の回転力は発生したままであるが、図7に示すようにステータ9に固定されている絞り羽根10の遮光部10aの一部が地板11のストッパー11fに当接し、絞り羽根10は、図7および図8の状態となる。
【0063】
この状態は、絞り羽根10が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aに重なった状態であり、シャッタ羽根5は地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aから退避した状態のままである。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aは絞り羽根10に覆われる。このとき、露光用の開口は中間シート12の開口部12aよりも小径である絞り羽根10の遮光部10aの開口部で決まることになる。
【0064】
次に、図7および図8の状態からコイル3を逆通電に切り換えると、第1の外側磁極部4aおよび第2の外側磁極部4bはN極に励磁される。すると、ステータ4には、各外側磁極部4a,4bの中心とマグネット1の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように図8の反時計方向の回転力が発生し、図8の状態から時計方向に約50°回転すると、図10の状態になる。
【0065】
このとき、反時計方向の回転力は発生したままであるが、図9に示すようにステータ4に固定されているシャッタ羽根5の遮光部5aの一部が地板11のストッパー11fに当接して、シャッタ羽根5は図9および図10の状態となる。
【0066】
この状態は、シャッタ羽根5が地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aを完全に覆った状態であり、絞り羽根10は地板11の開口部11aおよび羽根押え13の開口部13aに重なったままである。すなわち、地板11の開口部11aよりも若干小径である中間シート12の開口部12aも完全に遮光された状態となる。
【0067】
このように、コイル3およびコイル8の通電状態を制御することで、図3〜図10の状態を任意に選択することができる。
【0068】
以上のように、本実施の形態では、2つの駆動装置を用いシャッタ羽根5と絞り羽根10とをそれぞれ露光用開口への挿入位置と露光用開口からの退避位置とに選択的に駆動することが可能となる。
【0069】
また、シャッタ羽根5を駆動する第1の駆動装置のコイル3が巻回されるボビン部5bがシャッタ羽根5と一体成形され、絞り羽根10を駆動する第2の駆動装置のコイル8が巻回されるボビン10bが絞り羽根10と一体成形される。このため、従来に比べて、シンプルな構造で部品も少なくて済み、コストを低くすることができる。
【0070】
さらに、コイル3とステータ4がシャッタ羽根5と一体で回転するため、シャッタ羽根5の駆動時間のばらつきが少なくなり、シャッタ速度の繰り返し誤差を大幅に低減することができる。
【0071】
さらに、従来のように、ロータの腕が地板上に露出して地板上のスペースを占有することがなく、2つの駆動装置の地板11上のスペースを限りなく小さくすることができる。
【0072】
さらに、円筒状の2つの駆動装置をそれぞれシャッタ羽根5の軸方向上下および絞り羽根10の軸方向上下に分けて配置することが可能となり、地板11からの駆動装置の軸方向突出高さを低くすることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、絞り羽根10の遮光部10aには露光用開口を決める中間シート12の開口部12aよりも小径の開口部が中央に設けられたものであるが、この開口部に通過光が所定量だけ透過するNDフィルタを設けてもよい。その場合、遮光部10aの開口部の径を小さくし過ぎることで発生する小絞り回折による画像劣化を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態の一例である光量調節装置を説明するための分解斜視図である。
【図2】図1に示す光量調節装置の組立状態での断面図である。
【図3】図1に示す光量調節装置のシャッタ羽根および絞り羽根の動作例を説明するための図である。
【図4】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図3の状態を裏から見た図である。
【図5】図3の状態から第1の駆動装置のコイルの通電を切り換えてシャッタ羽根を駆動させた状態を示す図である。
【図6】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図5の状態を裏から見た図である。
【図7】図3の状態から第2の駆動装置のコイルの通電を切り換えて絞り羽根を駆動させた状態を示す図である。
【図8】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図7の状態を裏から見た図である。
【図9】図7の状態からシャッタ用駆動装置のコイルの通電を切り換えてシャッタ羽根を駆動させた状態を示す図である。
【図10】マグネット、ステータ、シャッタ羽根および絞り羽根の位相関係を示す図であり、図9の状態を裏から見た図である。
【図11】従来のシャッタ羽根の駆動装置を示す分解斜視図である。
【図12】従来の光量調節装置を示す分解斜視図である。
【図13】図12に示す光量調節装置の要部断面図である。
【図14】従来の他の光量調節装置を示す分解斜視図である。
【図15】図14に示す光量調節装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1,6 マグネット
2,7 軸
3,8 コイル
4,9 ステータ
5 シャッタ羽根(光量調節羽根)
5b ボビン
10 絞り羽根(光量調節羽根)
10b ボビン
11 地板
12 中間シート
13 羽根押え
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束が通過する開口部を備えた地板と、駆動装置により駆動されて前記地板の開口部の開口量を調節する光量調節用羽根と、を備える光量調節装置であって、
前記駆動装置は、周方向に分割されて異なる極に着磁された筒状のマグネットと、該マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる軸と、前記マグネットの軸方向の一側に配置されるボビンと、該ボビンに巻回されるコイルと、少なくとも一つの外側磁極部が前記マグネットの外周面に径方向に対向配置され、前記コイルにより励磁されるステータと、を備え、前記光量調節用羽根が前記ボビンと一体に成形される、ことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記ステータは、前記光量調節用羽根に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記光量調節用羽根の駆動時に、該光量調節用羽根が前記コイルおよび前記ステータと一体に回転する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記光量調節用羽根は、一体成形され前記ボビンの中央に設けられる穴部を介して前記軸に回転可能に支持される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記光量調節用羽根および前記ボビンが合成樹脂で一体に成形される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記光量調節用羽根が遮光部に開口部を有する絞り羽根であり、前記遮光部の前記開口部に光学フィルタを配置した、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項1】
光束が通過する開口部を備えた地板と、駆動装置により駆動されて前記地板の開口部の開口量を調節する光量調節用羽根と、を備える光量調節装置であって、
前記駆動装置は、周方向に分割されて異なる極に着磁された筒状のマグネットと、該マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる軸と、前記マグネットの軸方向の一側に配置されるボビンと、該ボビンに巻回されるコイルと、少なくとも一つの外側磁極部が前記マグネットの外周面に径方向に対向配置され、前記コイルにより励磁されるステータと、を備え、前記光量調節用羽根が前記ボビンと一体に成形される、ことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記ステータは、前記光量調節用羽根に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記光量調節用羽根の駆動時に、該光量調節用羽根が前記コイルおよび前記ステータと一体に回転する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記光量調節用羽根は、一体成形され前記ボビンの中央に設けられる穴部を介して前記軸に回転可能に支持される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記光量調節用羽根および前記ボビンが合成樹脂で一体に成形される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記光量調節用羽根が遮光部に開口部を有する絞り羽根であり、前記遮光部の前記開口部に光学フィルタを配置した、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−170537(P2008−170537A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1475(P2007−1475)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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