説明

光電変換装置

【課題】光電変換素子の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能な光電変換装置を提供することを課題とする。
【解決手段】光電変換により電流を発生する第1の光電変換素子(10)と、前記第1の光電変換素子で発生した電流を増幅する第1の電流増幅素子(20)と、前記第1の光電変換素子の逆バイアス電圧値を検出する第1の検出手段(40)と、前記第1の検出手段の検出結果を基に前記第1の光電変換素子の逆バイアス電圧値を第1の定常値に設定する第1の設定手段(60)とを有し、前記第1の定常値は、前記第1の光電変換素子の空乏化電圧よりも大きいことを特徴とする光電変換装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は、例えば一眼レフカメラシステムで用いられるAE(Auto Exposure:自動露出)あるいはAF(Auto Focus:自動焦点)センサに使用され、フォトトランジスタを用いた従来型の光電変換装置に関するものである。以下、電界効果トランジスタをFETという。同光電変換装置において、定電流源とその定電流源によって駆動されるMOSFETでソース接地回路を構成しており、そのMOSFETのゲートとソース間の電圧で決まるフォトトランジスタのベース電位をほぼ一定に保つことによって、光応答特性の向上を図る。入射光量が変化した際、フォトトランジスタのコレクタ電流が変化するので、フォトトランジスタのベースとエミッタ間の電圧が変化する。この時、フォトトランジスタのベース電位ではなく、エミッタ電位とエミッタにソースを接続されたMOSFETのゲート電位が主に変動する。これは、光電流が変動しベース電位が変動すると、ソース接地回路の出力、すなわちエミッタにソースを接続されたMOSFETのゲート電位が大きく変動し、それに併せてエミッタ電位が大きく変動する為である。このように、エミッタからフィードバックがかかることで、ベース電位の変動は非常に小さく抑えられる。このことにより、大面積のフォトトランジスタでベースとコレクタ間の容量が大きい場合においても、ベースとコレクタ間の容量の充電に要する時間を短くすることで光応答特性の向上を実現している。
【0003】
また、下記の特許文献2には、完全空乏化されたフォトダイオードの構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−77644号公報
【特許文献2】特開平6−98080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサの画素の感度を向上させようとしてフォトトランジスタの面積を大きくしていくと結局、光応答特性はベースとコレクタ間の容量の増加によって悪化してしまう。
【0006】
この理由の一つは、ベースとコレクタ間の容量が大きくなっていくと、ベース電位の変動がわずかであっても、ベースとコレクタ間の容量の充電に時間がかかってしまう為である。
【0007】
ベース電位の変動量は、フォトトランジスタのエミッタにソースを接続されたMOSFETのゲート電位の変動をソース接地回路のゲインで割った値であり、入射光量の変化量に依存するが、典型的には数mV〜十数mV程度と小さい。しかし、ベースとコレクタ間の容量が大きい場合は、この程度の電位変動にも時間がかかり、光応答特性に影響を与える。
【0008】
また、もう一つの理由は、ベースとコレクタ間の容量が大きくなっていくと、エミッタからベースにフィードバックがかかる際に、ベースとコレクタ間の容量がローパスフィルタの容量として働いてフィードバックを遅延させる為である。
【0009】
上記のベースとコレクタ間の容量は主にベースとコレクタの接合部の空乏層容量からなる。これを低減する一般的な手法として、光電変換領域を完全空乏化する手法がある。光電変換領域が大面積であっても、完全空乏化することにより、光電変換領域に付随する空乏層容量をほぼゼロに抑えることができる。しかし、空乏層容量は逆バイアス電圧に依存する為、光電変換装置の動作中に光電流の変動により光電変換領域に印加される逆バイアス電圧が変動してしまうと、動作状態に応じて光電変換領域に付加される寄生容量が変化してしまう。例えば、逆バイアス電圧が変動して、光電変換領域の空乏化電圧以下になってしまうと、寄生容量が急激に増大し、光応答特性が劣化してしまう。
【0010】
そこで本発明は、光電変換素子の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能な光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光電変換装置は、光電変換により電流を発生する第1の光電変換素子と、前記第1の光電変換素子で発生した電流を増幅する第1の電流増幅素子と、前記第1の光電変換素子の逆バイアス電圧値を検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段の検出結果を基に前記第1の光電変換素子の逆バイアス電圧値を第1の定常値に設定する第1の設定手段とを有し、前記第1の定常値は、前記第1の光電変換素子の空乏化電圧よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の光電変換素子の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能な光電変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略図である。光電変換装置は、光信号を電気信号に変換する光電変換素子10と、光電変換素子10で発生した光電流を増幅する電流増幅素子20と、電流増幅素子20により増幅した出力電流を出力する電流出力端子70を有する。また、光電変換装置は、光電変換素子10に印加された逆バイアス電圧を検出する検出手段40と、検出手段40の検出結果を基に光電変換素子10の両端に印加される逆バイアス電圧を定常値に設定する設定手段60とを有する。
【0014】
検出手段40は常に光電変換素子10の両端に印加されている逆バイアス電圧値をモニターしており、その結果を設定手段60に送っている。設定手段60では、検出手段40で検出した逆バイアス値が定常値からずれていると、逆バイアス電圧を定常値に設定するように働く。ここで、この定常値を光電変換素子10の空乏化電圧より大きく設定することで、光電変換素子10に印加される逆バイアス電圧を安定的に空乏化電圧以上に保つことができる。これにより、光電変換素子10の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能となる。
【0015】
図2は、本実施形態による光電変換装置の構成例を示す回路図である。光電変換装置は、光電変換素子10と光電変換素子10で発生した光電流を増幅するバイポーラトランジスタ110を有する。また、光電変換装置は、ソース接地回路150を有する。ソース接地回路150は、ゲートがバイポーラトランジスタ110のベースに接続された第1のMOSFET120と第1のMOSFET120を駆動する定電流源130を有する。また、光電変換装置は、ゲートが第1のMOSFET120のドレインに、ソースがバイポーラトランジスタ110のエミッタに接続され、ドレインからバイポーラトランジスタ110により増幅された光電流を出力する第2のMOSFET140を有する。また、160は電源電圧Vccのノード、70は電流出力端子である。
【0016】
光電変換素子(フォトダイオード)10のカソードは、電源電圧ノード160に接続される。PチャネルMOSFET120は、ソースが電源電圧ノード160に接続され、ゲートが光電変換素子10のアノードに接続される。定電流源130は、PチャネルMOSFET120のドレイン及び基準電位(グランド電位)ノード間に接続される。NPNバイポーラトランジスタ110は、コレクタが電源電圧ノード160に接続され、ベースが光電変換素子10のアノードに接続される。PチャネルMOSFET140は、ソースがNPNバイポーラトランジスタ110のエミッタに接続され、ゲートがPチャネルMOSFET120のドレインに接続され、ドレインが電流出力端子70に接続される。
【0017】
ここで、バイポーラトランジスタ110が図1の電流増幅素子20、ソース接地回路150が図1の検出手段40、第2のMOSFET140が図1の設定手段60に対応している。以下、図2の回路動作について説明する。
【0018】
定電流源130を流れる電流、すなわち第1のMOSFET120を流れる電流Ipixとゲートとソース間の電圧Vgsの関係は次式(1)のようになる。
【0019】
【数1】



【0020】
ここで、VgsはMOSFETのゲートとソース間の電圧であり、VthはMOSFETの閾値電圧である。また、βは次式(2)の通りである。
【0021】
【数2】


【0022】
ここで、μ0はキャリアの移動度、CoxはMOSFETの単位面積当たりのゲート容量、WはMOSFETのゲート幅、LはMOSFETのゲート長である。
【0023】
式(1)から、ゲートとソース間の電圧Vgsは次式(3)のようになる。
【0024】
【数3】



【0025】
この値が光電変換素子10の逆バイアス電圧になっており、図1の定常値に相当している。よって、次式(4)が成り立つように、光電変換素子10の空乏化電圧VDEP及び第1のMOSFET120のゲートサイズ、閾値電圧及び定電流源130の電流値を設計することで、光電変換素子10を空乏化することができる。
【0026】
【数4】



【0027】
例えば、光電変換素子10で発生する光電流が増加し、バイポーラトランジスタ110のベース電位が上昇すると、ソース接地回路150はその変動を検出し、第2のMOSFET140のゲート電位を低下させる。それに応じて、第2のMOSFET140のソース電位、すなわちバイポーラトランジスタ110のエミッタ電位が低下し、エミッタからフィードバックがかかり、バイポーラトランジスタ110のベース電位はほぼ元の値に保たれる。光電流が減少した時には逆のフィードバックがかかり、やはりバイポーラトランジスタ110のベース電位はほぼ元の値に保たれる。
【0028】
よって、式(4)を満たすように設計することにより、光電変換素子10に印加される逆バイアス電圧を安定的に空乏化電圧以上に保つことができる。これにより、バイポーラトランジスタ110のベースとコレクタ間の容量を常に小さい値に保ち、光量が変動した際のベースとコレクタ間の容量の充電に要する時間を抑えることができる。また、エミッタからベースにフィードバックがかかる際のベースとコレクタ間の容量によるフィードバックの遅延の影響を抑えることができる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、光電変換素子10の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能となる。
【0030】
本実施形態において、上述のような効果を得ることができるのは、本実施形態が電流読み出し型の光電変換装置であるからである。電荷読み出し型、例えば光電変換素子をソースフォロワの入力ゲートに直結させた光電変換装置においては、上述のような効果を得ることは困難である。電荷読み出し型の光電変換装置においては、発生した電荷を光電変換素子に蓄積する為、蓄積された電荷量に応じて、必ず光電変換素子の逆バイアス電圧は変動する。このため、光電変換素子をリセットする際に、光電変換素子に空乏化電圧以上の逆バイアス電圧を印加して空乏化させたとしても、電荷蓄積により逆バイアス電圧が空乏化電圧以下になると光電変換素子の寄生容量は増大する。よって、電荷読み出し型の光電変換装置では、動作状態に応じた寄生容量の変動を抑えることはできない。このようなことから、光電変換素子で発生した光電流を常に読み出し続ける電流読み出し型の光電変換装置であるからこそ、本実施形態では上述のような効果を得ることができると言える。
【0031】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による光電変換装置の構成例を示す図である。但し、ここでは上述した第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0032】
図3において、図2の実施形態と異なる点は、第1のMOSFET120と同一極性のMOSFETの閾値電圧Vthを検出する閾値検出手段170を設けていることである。また、閾値検出手段170で検出した検出結果を定電流源130の電流値にフィードバックする閾値フィードバック手段180を設けていることである。これにより、製造ばらつきによって第1のMOSFET120の閾値電圧Vthが変動した場合でも、光電変換素子10に印加される逆バイアス電圧を空乏化電圧よりも大きく保つことが容易となる。
【0033】
式(4)から以下のことが分かる。閾値電圧Vthが低下した時に電流値Ipixを増加させるように、閾値電圧Vthが増加した時に電流値Ipixを低下させるようにフィードバックをかけることで閾値電圧変動による式(4)の左辺、すなわち逆バイアス電圧の変動を軽減することができる。
【0034】
これにより、製造ばらつきによって第1のMOSFET120の閾値電圧Vthが変動した場合でも、光電変換素子10に印加される逆バイアス電圧を空乏化電圧よりも大きく保つことが容易となる。以下、図4に示す回路構成を用いて、動作について詳述する。
【0035】
図4において、定電流源130を第1のMOSFET120とは異なる極性である第3のMOSFET190及び第4のMOSFET200から構成している。また、図3の閾値検出手段170及び閾値フィードバック手段180を第1のMOSFET120と同一極性である第5のMOSFET210で構成している。
【0036】
図4において、簡単の為、第1のMOSFET120と第5のMOSFET210の閾値電圧Vthが等しく、また式(2)で決まるβも等しいとする。また、第3のMOSFET190と第4のMOSFET200の閾値電圧が等しくVthn、また式(2)で決まるβが等しくβnとする。このとき図4において、第5のMOSFET210と第4のMOSFET200において式(1)が成り立つことから、また第3のMOSFET190と第4のMOSFET200を流れる電流が等しくなることから、Ipixは、次式(5)となる。
【0037】
【数5】



【0038】
式(5)から、Vthが低下した時にIpixが増加し、Vthが増加した時にIpixが低下する。よって、本実施形態によれば、式(4)の左辺、すなわち逆バイアス電圧の変動を軽減することができる。
【0039】
これにより、プロセスが変動した場合でも、光電変換素子10に印加される逆バイアス電圧を空乏化電圧よりも大きく保つことが容易となる。
【0040】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態による光電変換装置の構成例を示す図である。但し、ここでは上述した第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0041】
図2の実施形態と異なる点は、光電変換素子10の空乏化電圧を検出する空乏化電圧検出手段220を設けていることである。また、空乏化電圧検出手段220で検出した検出結果を定電流源130の電流値にフィードバックする空乏化電圧フィードバック手段230を設けていることである。これにより、プロセスが変動した場合でも、光電変換素子10に印加される逆バイアス電圧を空乏化電圧よりも大きく保つことが容易となる。
【0042】
空乏化電圧検出手段220により、プロセス変動による空乏化電圧の増加を検出し、空乏化電圧フィードバック手段230によって定電流源130の電流値が増加するようにフィードバックをかける。この時、式(4)からわかるように、空乏化電圧VDEPがプロセス変動により増加しても、それに併せて式(4)の左辺が増加する為、光電変換素子10に印加される逆バイアス電圧を空乏化電圧よりも大きく保つことが容易となる。
【0043】
(第4の実施形態)
図6及び図7は、本発明の第4の実施形態による光電変換装置の構成例を示す図である。但し、ここでは上述した第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0044】
図6を参照しながら説明する。240はP型シリコン基板である。241はP型シリコン基板240上に形成された不純物濃度2×1015atoms/cm3のN型エピタキシャル層である。250はN型エピタキシャル層241上に形成されたピーク不純物濃度3×1017atoms/cm3のN型領域である。また、280は表面に形成されたピーク不純物濃度1×1018atoms/cm3の表面N+領域である。また、270はバイポーラトランジスタ110のベースと接続されるピーク不純物濃度8×1019atoms/cm3のP型のコンタクト部であり、275は高不純物濃度のN型コンタクト部である。また、260は光電変換領域となるピーク不純物濃度3×1017atoms/cm3のP型領域である。P型領域260で発生したキャリアはコンタクト部270を介して、バイポーラトランジスタ110のベースへ流れる。このように、光電変換素子10はN型領域250及びP型領域260及び表面N+領域280及びコンタクト部270で構成されており、コンタクト部270が複数設けられている。
【0045】
また、図7は、図6の光電変換素子10の平面図を表しており、図中のA−A’の破線部が図6の光電変換素子10の断面図に対応している。図7からコンタクト部270がP型領域260中に複数行・複数列設けられていることがわかる。Bはコンタクト部270の行列の列方向ピッチ、Cは行方向ピッチ、DとEは最外周に属する列とP型領域260の端との距離、FとGは最外周に属する行とP型領域260の端との距離を示している。
【0046】
光電変換素子10の空乏化電圧は、N型領域250とP型領域260と表面N+領域280の濃度関係で決まる。上述のように、式(4)を満たすように光電変換素子10の空乏化電圧及び第1のMOSFET120のゲートサイズ、閾値電圧及び定電流源130の電流値を設計することで、P型領域260を安定的に空乏化することができる。これにより、バイポーラトランジスタ110のベースとコレクタ間の容量を常に小さい値に保ち、ベースとコレクタ間の容量の充電に要する時間を抑えることができる。また、エミッタからベースにフィードバックがかかる際のベースとコレクタ間の容量によるフィードバックの遅延の影響を抑えることができる。すなわち、図6中の光電流が変動してから出力電流が素早く変動する状態を安定的に得ることができる。よって、安定的に光応答特性が良い状態を得ることができる。
【0047】
しかしながら、図6のように光電変換領域として空乏化した半導体層(以下、空乏化層と呼ぶ)を用いる場合、そのサイズによっては、空乏化層中のキャリアの拡散速度が光応答特性に対して支配的となりえる。つまり、光電流の変動から出力電流の変動までの時間ではなく、光量の変動からコンタクト部にキャリアが到達するまでの時間が支配的となりえる。
【0048】
この時、図6のようにコンタクト部270を複数設けることで、空乏化層中のキャリアの拡散距離を短くすることにより、キャリアの拡散遅延による光応答特性への悪影響を抑えることができる。
【0049】
ただ、コンタクト部270は表面からの暗電流の増加要因となりえるので、必要最小限の数でキャリアの拡散距離が効果的に短くなる配置にするのが望ましい。
【0050】
望ましい一つの配置方法としては、図7のようにコンタクト部270を複数行・複数列設け、その行方向のピッチと列方向のピッチが約1:1となるようにコンタクト部270の行数と列数を選択する方法がある。つまり、図7においてB:C≒1:1である。例えば、列方向にだけ密にコンタクト部270を配置しても行方向のピッチは長いままであるので、行方向の拡散距離は長いままとなってしまい、配置方法としては非効率的である。
【0051】
また、図7において、最外周のコンタクト部270とP型領域260の端との距離がコンタクト部270間のピッチの約半分となっていることが、更に望ましい。つまり、図7において、B≒2×D≒2×E、C≒2×F≒2×Gである。これにより、P型領域260の外周付近に拡散距離の長い部分ができることを防ぐことができる。
【0052】
図7において、上述のようにコンタクト部270を配置した時、キャリアの最大拡散距離は、下式(6)のようになる。
【0053】
【数6】



【0054】
式(6)で決まる拡散距離が25μm、50μm、100μm、200μmのそれぞれの場合について、光電流の立ち上がり波形のシミュレーションを行った結果を図8に示す。横軸が時間、縦軸が光電流である。横軸の0μsecが、図6において光を照射し始めた時間で、照度3.6(lx)程度の光を照射している。図8において、拡散距離25μm、50μmの場合は15μsec程度で光電流が立ち上がっているが、100μmの場合はキャリアの拡散遅延により光電流の立ち上がりに15μsec程度の遅延が生じ、30μsec以上の時間を要していることがわかる。例えば、撮像システムに用いられるAEセンサでは、図6において、光が照射されてから出力電流が立ち上がるまで数10μsec〜100μsec程度の光応答特性が要求される。よって、図8の拡散距離100μmの場合における、15μsec程度の光電流の立ち上がりの遅延は有意差となって照度センサの光応答特性に悪影響を与える。故に、式(6)で決まる最大拡散距離は50μm程度以下に抑えることが望ましい。
【0055】
図7における最大拡散距離50μm時の行方向ピッチと列方向ピッチは、行方向ピッチ=列方向ピッチの場合、70μm程度である。例えばコンタクト部270のサイズを2μm□とした場合、コンタクト部270の総面積はP型領域260の面積の0.08%程度と非常に小さい。よって、コンタクト部270を複数設けることによる暗電流増加へ影響は極めて小さく抑えることができる。
【0056】
尚、本実施形態ではコンタクト部270の行数及び列数がそれぞれ3の場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。
【0057】
上記のように、必要最小限数でキャリアの拡散距離が効果的に短くなるようにコンタクト部270を配置することにより、暗電流の増加を抑制しつつ、キャリアの拡散遅延による光応答特性への悪影響を抑えることができる。
【0058】
(第5の実施形態)
図9は、本発明の第5の実施形態による光電変換装置の構成例を示す図である。但し、ここでは上述した第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0059】
図9において、240はP型シリコン基板、241はN型エピタキシャル層である。N型領域250、P型領域260、N型領域251、P型領域261、表面N+領域280と、N型領域とP型領域が交互に積層されており、P型領域260、261はそれぞれ異なる深さに形成されている。シリコンに入射した光は波長の長いものほど深く侵入するので、P型領域260、261からは異なる波長帯域の光に対する光信号を得ることができる。このように、N型領域250、P型領域260、N型領域251から光電変換素子10が、N型領域251、P型領域261、表面N+領域280から光電変換素子11が形成されており、深さ方向に光電変換素子10及び11が積層されている。
【0060】
ソース接地回路151は、ソース接地回路150に対応し、第1のMOSFET121及び定電流源131を有する。第1のMOSFET121及び定電流源131は、それぞれ第1のMOSFET120及び定電流源130に対応する。バイポーラトランジスタ111はバイポーラトランジスタ110に対応し、第2のMOSFET141は第2のMOSFET140に対応し、電流出力端子71は電流出力端子70に対応する。
【0061】
光電変換素子(フォトダイオード)11のカソードは、電源電圧ノード160に接続される。PチャネルMOSFET121は、ソースが電源電圧ノード160に接続され、ゲートが光電変換素子11のアノードに接続される。定電流源131は、PチャネルMOSFET121のドレイン及び基準電位(グランド電位)ノード間に接続される。NPNバイポーラトランジスタ111は、コレクタが電源電圧ノード160に接続され、ベースが光電変換素子11のアノードに接続される。PチャネルMOSFET141は、ソースがNPNバイポーラトランジスタ111のエミッタに接続され、ゲートがPチャネルMOSFET121のドレインに接続され、ドレインが電流出力端子71に接続される。
【0062】
また、P型領域260、261それぞれにコンタクト部270、271を設けて、それぞれバイポーラトランジスタ110、111に接続することで、それぞれの光電流を増幅して電流出力端子70、71からそれぞれ出力する構成となっている。ここで、光電変換素子10と11のそれぞれに対して、式(4)を満たすように光電変換素子10、11及び第1のMOSFET120、121及び定電流源130、131を設計することで、P型領域260、261を安定的に空乏化することができる。この時、図9の光電変換素子10、11の双方に対して、光電変換素子10及び11の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能となる。
【0063】
このような光電変換装置においては、それぞれの光電変換素子10及び11に合わせて最適な逆バイアス電圧を設定することができる。これにより、製造ばらつきが発生した場合でも、それぞれの光電変換素子10及び11に印加される逆バイアス電圧をそれぞれの空乏化電圧よりも大きく保つことが容易となる。
【0064】
図9において、光電変換素子10、11では、一般的により深い位置に形成された光電変換素子10の方が空乏化電圧の製造ばらつきが大きい。以下、この点について説明する。
【0065】
図9に示したようにP型領域260の深さ方向の幅をWとする。また、N型領域250、251からP型領域260に伸びる空乏層長をそれぞれW1、W2とする。ここで簡単の為、N型領域250の不純物濃度=N型領域251の不純物濃度>>P型領域260の不純物濃度とすると、次式(7)が成り立つ。
【0066】
【数7】



【0067】
ここで、εはシリコンの誘電率、またVbiはP型領域260とN型領域の不純物濃度で決まる内蔵電位、VRはP型領域260とN型領域の間に印加された逆バイアス電圧、NAはP型領域260の不純物濃度である。式(7)において、VRが空乏化電圧VDEPとなった時に、W=W1+W2となりP型領域260は完全に空乏化する。よって、次式(8)が成り立つ。
【0068】
【数8】



【0069】
式(8)からわかるように、P型領域260の深さ方向の幅Wと不純物濃度NAのばらつきが、空乏化電圧VDEPのばらつきに寄与する。
【0070】
一般的に、熱拡散で不純物領域を形成する場合も、イオン注入で不純物領域を形成する場合も、表面からより深い所に形成する場合の方が、不純物の深さ方向の濃度プロファイルは半値幅が広く、裾を引く形となる。よって、図9において、光電変換素子10は光電変換素子11に比べて、より半値幅が広いP型不純物プロファイルとN型不純物プロファイルの接合により形成される。この時、不純物プロファイル形状のプロセスばらつきによる、P型領域260の深さ方向の幅Wと不純物濃度NAのばらつきは、P型領域261に比べて大きくなる。よって、式(8)により、光電変換素子10は光電変換素子11に比べて、空乏化電圧の製造ばらつきは大きくなる。
【0071】
言い換えれば、光電変換素子11の空乏化電圧の製造ばらつきは光電変換素子10よりも小さい。よって、式(3)で決まる光電変換素子の逆バイアス電圧を相対的に小さくすることができる為、Ipixを小さくすることができる。つまり、それぞれの光電変換素子10及び11に応じて最適のIpixを選択することにより、必要最小限の消費電流で光電変換装置を駆動することができる。
【0072】
本実施形態では、深さ方向に積層した光電変換素子の数を2の場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。
【0073】
このように本実施形態においては、深さ方向に空乏化して動作させる光電変換素子10及び11を積層した光電変換装置において、それぞれの光電変換素子10及び11に印加される逆バイアス電圧を最適化することで消費電流を低減することができる。
【0074】
(第6の実施形態)
図10及び図11は、本発明の第6の実施形態による光電変換装置の構成例を示す図である。但し、ここでは上述した第5の実施形態との相違点だけを説明する。
【0075】
図10においては、P型領域260に複数のコンタクト部270、P型領域261に複数のコンタクト部271を設けている。図11は図10の光電変換素子10、11の平面図を表しており、図中のA−A’の破線部が図10の断面図に対応している。図10、図11からコンタクト部270はP型領域260中に複数行・複数列、コンタクト部271はP型領域261中に複数行・複数列設けられている。また、櫛歯状かつ互いが入れ子になるよう配された金属配線290と291でコンタクト部270とコンタクト部271はそれぞれ接続されている。このような構成により、光電変換素子10、11の開口面積の低下を抑え、バイポーラトランジスタ110、111のベースにつく寄生容量の増加による光応答特性の悪化を抑えることができる。また、第4の実施形態と同様に、光電変換素子10、11のそれぞれについて、光電変換領域中におけるキャリアの拡散遅延による光応答特性への悪影響を抑えることができる。
【0076】
図11において、コンタクト部270とコンタクト部271の金属配線290及び291による接続パターンは、コンタクト部の行数・列数にもよるが、幾通りも考えられる。しかし、最も望ましい接続パターンは、金属配線290と291のそれぞれの配線長が最短となるパターンである。これは、配線長が長くなる程、光電変換素子10、11の実効的な開口面積が小さくなり、また配線につく寄生容量によりバイポーラトランジスタ110と111のベースにつく寄生容量が大きくなってしまう為である。これは、既に述べたように光応答特性の悪化を招く。よって、それぞれの配線長が最短となるよう、図11に示すように櫛歯状かつ互いが入れ子になるよう配された金属配線290と291にてコンタクト部270とコンタクト部271をそれぞれ接続するのが望ましい。
【0077】
本実施形態ではコンタクト部270及びコンタクト部271の行数及び列数がそれぞれ3の場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。
【0078】
また、本実施形態では金属配線290及び291として上向きと下向きの櫛歯状配線が入れ子に配された場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。例えば、左向きと右向きの櫛歯状配線を入れ子に配しても同様な効果を得ることができる。
【0079】
このように、本実施形態の構成により、光電変換素子の開口面積の低下を抑え、また配線につく寄生容量の増加による光応答特性の悪化を抑えることができる。
【0080】
(第7の実施形態)
図12は、本発明の第7の実施形態による光電変換装置の構成例を示す図である。但し、ここでは上述した第6の実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0081】
図12は、図11と同様に光電変換素子10、11の平面図を表しているが、コンタクト部270の数がコンタクト部271よりも少ない。尚、断面に関してもコンタクト部270の数が少ないことを除けば、図10のA−A’部と同様である。このような構成により、光電変換素子10、11のそれぞれについて、光電変換領域中におけるキャリアの拡散遅延による光応答特性への悪影響を抑えつつ、第6の実施形態と比較して、コンタクト部による暗電流の増加を抑えることができる。
【0082】
図10において、HはN型領域251の不純物プロファイルのピーク位置、IはP型シリコン基板240上に形成された半導体層のトータルの厚さを示している。光電変換素子10、11の分光特性は主に、この2つのファクターにより決まる。例えば、HとIがそれぞれ0.4μm、4.5μm程度の場合の分光特性シミュレーション結果を図13に示す。図13において、横軸が照射光の波長、縦軸がそれぞれの光電変換素子10、11から得られる光電流であり、波長400nm付近にピークを持っている方が光電変換素子11の特性で、波長600nm付近にピークを持っている方が光電変換素子10の特性である。図13のような分光特性の場合、ほとんどの分光特性の光源に対して、光電変換素子10は11よりも大きな光電流を得ることができる。よって、光電変換素子10の方がバイポーラトランジスタ110のベースとコレクタ間の容量の充電に要する時間を抑えることができるため、光応答特性が良い。このため、コンタクト部270の数をコンタクト部271の数より少なくしても、光電変換素子10は光電変換素子11と同等程度の光応答特性を得ることができる。また、コンタクト部の増加による暗電流の増加を抑えることができる。
【0083】
本実施形態ではコンタクト部270の行数及び列数がそれぞれ2、コンタクト部271の行数及び列数がそれぞれ3の場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。
【0084】
このように、本実施形態において、光電変換素子10、11のそれぞれについて、光電変換領域中におけるキャリアの拡散遅延による光応答特性への悪影響を抑えつつ、第6の実施形態と比較して、コンタクト部による暗電流の増加を抑えることができる。
【0085】
これまで、光電変換素子としてホールを集めるタイプのもの、電流増幅素子としてNPNバイポーラトランジスタを用いた場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。光電変換素子として電子を集めるタイプのもの、電流増幅素子としてPNPバイポーラトランジスタを用いた場合でも、同様な構成をとることにより同等な効果を得ることができる。
【0086】
第1〜第7の実施形態の光電変換装置は、大面積の光電変換素子を有する光電変換装置である。光電変換素子の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能な光電変換装置を提供することができる。
【0087】
図1の光電変換装置において、第1の光電変換素子10は、光電変換により電流を発生する。第1の電流増幅素子20は、第1の光電変換素子10で発生した電流を増幅する。第1の検出手段40は、第1の光電変換素子10の逆バイアス電圧値を検出する。第1の設定手段60は、第1の検出手段40の検出結果を基に第1の光電変換素子10の逆バイアス電圧値を第1の定常値に設定する。第1の定常値は、第1の光電変換素子10の空乏化電圧よりも大きい。
【0088】
図2の光電変換装置において、第1の電流増幅素子20は、コレクタ及びベース間に第1の光電変換素子10が接続され、エミッタから増幅された電流を出力する第1のバイポーラトランジスタ110を有する。第1の検出手段40は、第1の電界効果トランジスタ120と、第1の電界効果トランジスタ120に接続された第1の定電流源130とを有する。第1の電界効果トランジスタ120は、ゲートが第1のバイポーラトランジスタ110のベースに接続され、ソースが第1のバイポーラトランジスタ110のコレクタに接続される。第1の設定手段60は、第1の電界効果トランジスタ120と同一の極性である第2の電界効果トランジスタ140を有する。第2の電界効果トランジスタ140は、ソースが第1のバイポーラトランジスタ110のエミッタに接続され、ゲートが第1の電界効果トランジスタ120のドレインに接続され、ドレインから第1のバイポーラトランジスタ110により増幅された電流を出力する。第1の電界効果トランジスタ120のゲート及びソース間の電圧は、第1の光電変換素子10の空乏化電圧よりも大きい。
【0089】
図3の光電変換装置において、閾値検出手段170は、第1の電界効果トランジスタ120と同一極性の電界効果トランジスタの閾値電圧を検出する。閾値フィードバック手段180は、閾値検出手段170の検出結果を基に第1の定電流源130の電流値を制御する。
【0090】
図4の光電変換装置において、第1の定電流源130は、第3の電界効果トランジスタ190と第4の電界効果トランジスタ200とを有する。第3の電界効果トランジスタ190は、ドレインが第1の電界効果トランジスタ120のドレインに接続される。第4の電界効果トランジスタ200は、ゲート及びドレインの相互接続点が第3の電界効果トランジスタ190のゲートに接続され、ソースが第3の電界効果トランジスタ190のソースに接続される。閾値検出手段170及び閾値フィードバック手段180は、第5の電界効果トランジスタ210を有する。第5の電界効果トランジスタ210は、ゲート及びドレインの相互接続点が第4の電界効果トランジスタ200のゲートに接続され、ソースが定電圧ノード160に接続される。
【0091】
図5の光電変換装置において、空乏化電圧検出手段220は、第1の光電変換素子10の空乏化電圧を検出する。空乏化電圧フィードバック手段230は、空乏化電圧検出手段220の検出結果を基に第1の定電流源130の電流値を制御する。
【0092】
図6及び図7の光電変換装置において、第1の光電変換素子10は、第1導電型のコンタクト部270と、第1導電型の光電変換領域260と、第1導電型の光電変換領域260の上下に積層された第1導電型と逆の導電型である第2導電型の領域250とを有する。第1導電型のコンタクト部270は、第1のバイポーラトランジスタ110のベースに接続される。第1導電型の光電変換領域260は、第1導電型のコンタクト部270に接続される。第1導電型のコンタクト部260は、複数設けられている。
【0093】
図7に示すように、第1導電型のコンタクト部270は、第1導電型の光電変換領域260中に複数行及び複数列設けられ、複数行の行方向のピッチCと複数列の列方向のピッチBが約1:1となるように配されている。
【0094】
また、複数行及び複数列設けられた第1導電型のコンタクト部270は、その行列の最外周に配された第1導電型のコンタクト部270の列と第1導電型の光電変換領域260の端との距離D及びEが列方向のピッチBの約半分となるように配されている。複数行及び複数列設けられた第1導電型のコンタクト部270は、その行列の最外周に配された第1導電型のコンタクト部270の行と第1導電型の光電変換領域260の端との距離F及びGが行方向のピッチCの約半分となるように配されている。
【0095】
図9の光電変換装置において、第2の光電変換素子11は、光電変換により電流を発生する。第2の電流増幅素子111は、第2の光電変換素子11で発生した電流を増幅する。第2の検出手段121,131は、第2の光電変換素子11の逆バイアス電圧値を検出する。第2の設定手段141は、第2の検出手段121,131の検出結果を基に第2の光電変換素子11の逆バイアス電圧値を第2の定常値に設定する。第2の定常値は、第2の光電変換素子11の空乏化電圧よりも大きい。
【0096】
第2の電流増幅素子111は、コレクタ及びベース間に第2の光電変換素子11が接続され、エミッタから増幅された電流を出力する第2のバイポーラトランジスタ111を有する。第2の検出手段121,131は、第3の電界効果トランジスタ121と、第3の電界効果トランジスタ121に接続された第2の定電流源131とを有する。第3の電界効果トランジスタ121は、ゲートが第2のバイポーラトランジスタ111のベースに接続され、ソースが第2のバイポーラトランジスタ111のコレクタに接続される。第2の設定手段141は、第3の電界効果トランジスタ121と同一の極性である第4の電界効果トランジスタ141を有する。第4の電界効果トランジスタ141は、ソースが第2のバイポーラトランジスタ111のエミッタに接続され、ゲートが第3の電界効果トランジスタ121のドレインに接続され、ドレインから第2のバイポーラトランジスタ111により増幅された電流を出力する。第3の電界効果トランジスタ121のゲート及びソース間の電圧は、第2の光電変換素子11の空乏化電圧よりも大きい。
【0097】
第1の光電変換素子10及び第2の光電変換素子11は、第1導電型の光電変換領域260,261と、第1導電型と逆の導電型である第2導電型の領域250,251とを交互に複数積層した積層領域を有する。第1の光電変換素子10は、第1導電型の光電変換領域260と第2導電型の領域250の組みの積層を有する。第2の光電変換素子11は、第1導電型の光電変換領域261と第2導電型の領域251の他の組みの積層を有する。
【0098】
第2の光電変換素子11に対して表面から深い位置に形成された第1の光電変換素子10の逆バイアス電圧は、第1の光電変換素子10に対して表面から浅い位置に形成された第2の光電変換素子11の逆バイアス電圧よりも大きい。
【0099】
図10及び図11の光電変換装置において、第1の光電変換素子10は、第1導電型の第1のコンタクト部270を介して第1のバイポーラトランジスタ110のベースに接続される。第2の光電変換素子11は、第1導電型の第2のコンタクト部271を介して第2のバイポーラトランジスタ111のベースに接続される。第1のコンタクト部270及び第2のコンタクト部271は、それぞれ、それぞれの第1導電型の光電変換領域260及び261中に複数行及び複数列設けられ、複数行の行方向のピッチと複数列の列方向のピッチとが約1:1となるように配されている。
【0100】
図11に示すように、複数行及び複数列設けられた第1のコンタクト部270及び複数行及び複数列設けられた第2のコンタクト部271は、それぞれ櫛歯状の金属配線290及び291により接続され、互いが入れ子になるように配されている。
【0101】
図12の光電変換装置において、第1のコンタクト部270は、第2の光電変換素子11に対して表面から深い位置に形成された第1の光電変換素子10に接続されている。第2のコンタクト部271は、第1の光電変換素子10に対して表面から浅い位置に形成された第2の光電変換素子11に接続されている。第1のコンタクト部270の数は、第2のコンタクト部271の数より少ない。
【0102】
第1〜第7の実施形態によれば、光電変換素子10及び/又は11の寄生容量の動作状態に応じた変動を抑えて、寄生容量が小さい状態を保つことにより、安定的に光応答特性が良い状態を得ることが可能な光電変換装置を提供することができる。
【0103】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による光電変換装置の構成例を示す回路図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による光電変換装置の構成例を示す回路図である。
【図5】本発明の第3の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第4の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の第4の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図8】図6の光電変換素子に光を照射した際の光電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第6の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図11】本発明の第6の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図12】本発明の第7の実施形態による光電変換装置の構成例を示す概略構成図である。
【図13】図10に示した光電変換装置の分光特性のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
10、11 光電変換素子
20 電流増幅素子
40 検出手段
60 設定手段
70、71 電流出力端子
110、111 バイポーラトランジスタ
120、121 第1のMOSFET
130、131 定電流源
140、141 第2のMOSFET
150、151 ソース接地回路
160 電源電圧ノード
170 閾値検出手段
180 閾値フィードバック手段
190 第3のMOSFET
200 第4のMOSFET
210 第5のMOSFET
220 空乏化電圧検出手段
230 空乏化電圧フィードバック手段
240 P型シリコン基板
241 N型エピタキシャル層
250、251 N型領域
260、261 P型領域
270、271 コンタクト部
275 N型コンタクト部
280 表面N+領域
290、291 金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換により電流を発生する第1の光電変換素子と、
前記第1の光電変換素子で発生した電流を増幅する第1の電流増幅素子と、
前記第1の光電変換素子の逆バイアス電圧値を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段の検出結果を基に前記第1の光電変換素子の逆バイアス電圧値を第1の定常値に設定する第1の設定手段とを有し、
前記第1の定常値は、前記第1の光電変換素子の空乏化電圧よりも大きいことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1の電流増幅素子は、コレクタ及びベース間に前記第1の光電変換素子が接続され、エミッタから増幅された電流を出力する第1のバイポーラトランジスタを有し、
前記第1の検出手段は、ゲートが前記第1のバイポーラトランジスタのベースに接続され、ソースが前記第1のバイポーラトランジスタのコレクタに接続された第1の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタに接続された第1の定電流源とを有し、
前記第1の設定手段は、前記第1の電界効果トランジスタと同一の極性であり、ソースが前記第1のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、ゲートが前記第1の電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインから前記第1のバイポーラトランジスタにより増幅された電流を出力する第2の電界効果トランジスタを有し、
前記第1の電界効果トランジスタのゲート及びソース間の電圧は、前記第1の光電変換素子の空乏化電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
さらに、前記第1の電界効果トランジスタと同一極性の電界効果トランジスタの閾値電圧を検出する閾値検出手段と、
前記閾値検出手段の検出結果を基に前記第1の定電流源の電流値を制御する閾値フィードバック手段とを有することを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第1の定電流源は、ドレインが前記第1の電界効果トランジスタのドレインに接続された第3の電界効果トランジスタと、ゲート及びドレインの相互接続点が前記第3の電界効果トランジスタのゲートに接続され、ソースが前記第3の電界効果トランジスタのソースに接続された第4の電界効果トランジスタを有し、
前記閾値検出手段及び前記閾値フィードバック手段は、ゲート及びドレインの相互接続点が前記第4の電界効果トランジスタのゲートに接続され、ソースが定電圧ノードに接続された第5の電界効果トランジスタを有することを特徴とする請求項3記載の光電変換装置。
【請求項5】
さらに、前記第1の光電変換素子の空乏化電圧を検出する空乏化電圧検出手段と、
前記空乏化電圧検出手段の検出結果を基に前記第1の定電流源の電流値を制御する空乏化電圧フィードバック手段とを有することを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1の光電変換素子は、
前記第1のバイポーラトランジスタのベースに接続された第1導電型のコンタクト部と、
前記第1導電型のコンタクト部に接続された第1導電型の光電変換領域と、
前記第1導電型の光電変換領域の上下に積層された前記第1導電型と逆の導電型である第2導電型の領域とを有し、
前記第1導電型のコンタクト部は、複数設けられていることを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1導電型のコンタクト部は、前記第1導電型の光電変換領域中に複数行及び複数列設けられ、前記複数行の行方向のピッチと前記複数列の列方向のピッチが1:1となるように配されていることを特徴とする請求項6記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記複数行及び複数列設けられた第1導電型のコンタクト部は、その行列の最外周に配された第1導電型のコンタクト部の列と前記第1導電型の光電変換領域の端との距離が前記列方向のピッチの半分となるように配され、
前記複数行及び複数列設けられた第1導電型のコンタクト部は、その行列の最外周に配された第1導電型のコンタクト部の行と前記第1導電型の光電変換領域の端との距離が前記行方向のピッチの半分となるように配されていることを特徴とする請求項7記載の光電変換装置。
【請求項9】
さらに、光電変換により電流を発生する第2の光電変換素子と、
前記第2の光電変換素子で発生した電流を増幅する第2の電流増幅素子と、
前記第2の光電変換素子の逆バイアス電圧値を検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段の検出結果を基に前記第2の光電変換素子の逆バイアス電圧値を第2の定常値に設定する第2の設定手段とを有し、
前記第2の定常値は、前記第2の光電変換素子の空乏化電圧よりも大きく、
前記第2の電流増幅素子は、コレクタ及びベース間に前記第2の光電変換素子が接続され、エミッタから増幅された電流を出力する第2のバイポーラトランジスタを有し、
前記第2の検出手段は、ゲートが前記第2のバイポーラトランジスタのベースに接続され、ソースが前記第2のバイポーラトランジスタのコレクタに接続された第3の電界効果トランジスタと、前記第3の電界効果トランジスタに接続された第2の定電流源とを有し、
前記第2の設定手段は、前記第3の電界効果トランジスタと同一の極性であり、ソースが前記第2のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、ゲートが前記第3の電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインから前記第2のバイポーラトランジスタにより増幅された電流を出力する第4の電界効果トランジスタを有し、
前記第3の電界効果トランジスタのゲート及びソース間の電圧は、前記第2の光電変換素子の空乏化電圧よりも大きく、
前記第1の光電変換素子及び前記第2の光電変換素子は、第1導電型の光電変換領域と、前記第1導電型と逆の導電型である第2導電型の領域とを交互に複数積層した積層領域を有し、
前記第1の光電変換素子は、前記第1導電型の光電変換領域と前記第2導電型の領域の組みの積層を有し、
前記第2の光電変換素子は、前記第1導電型の光電変換領域と前記第2導電型の領域の他の組みの積層を有することを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第2の光電変換素子に対して表面から深い位置に形成された前記第1の光電変換素子の逆バイアス電圧は、前記第1の光電変換素子に対して表面から浅い位置に形成された前記第2の光電変換素子の逆バイアス電圧よりも大きいことを特徴とする請求項9記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第1の光電変換素子は、第1導電型の第1のコンタクト部を介して前記第1のバイポーラトランジスタのベースに接続され、
前記第2の光電変換素子は、第1導電型の第2のコンタクト部を介して前記第2のバイポーラトランジスタのベースに接続され、
前記第1のコンタクト部及び前記第2のコンタクト部は、それぞれ、それぞれの前記第1導電型の光電変換領域中に複数行及び複数列設けられ、前記複数行の行方向のピッチと前記複数列の列方向のピッチとが1:1となるように配されていることを特徴とする請求項9又は10記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記複数行及び複数列設けられた第1のコンタクト部及び前記複数行及び複数列設けられた第2のコンタクト部は、それぞれ櫛歯状の金属配線により接続され、互いが入れ子になるように配されていることを特徴とする請求項11記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第2の光電変換素子に対して表面から深い位置に形成された前記第1の光電変換素子に接続された第1のコンタクト部の数は、前記第1の光電変換素子に対して表面から浅い位置に形成された前記第2の光電変換素子に接続された第2のコンタクト部の数より少ないことを特徴とする請求項11又は12記載の光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−153633(P2010−153633A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330804(P2008−330804)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】