説明

入力装置及び電子機器

【課題】 高い透明性を確保して透明性の向上による用途の拡大を図る。
【解決手段】 透明材料によって形成されたベース層4と、透明導電膜によってベース層上に形成されると共に静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線7とベース信号を入力する信号線8とを有する回路パターン5とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置及び電子機器についての技術分野に関する。詳しくは、透明な材料によってベース層と回路パターンを形成して透明性の向上による用途の拡大を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器における画像表示部、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ(Plasma Display)等や筐体の表面に配置され、指や専用の入力ペンを近付けたり接触させることにより各種の機能を実行させることが可能な所謂タッチパネルやタッチセンサーと称される入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような入力装置は各種の方式、例えば、抵抗膜式、静電容量式、光学式、電磁誘導式等が存在する。
【0004】
静電容量式の入力装置には、信号線とセンス線によってコンデンサーを形成し該コンデンサーに蓄積される静電容量の変化を検出して所定の機能を実行させる電極間容量変化型の装置がある。
【0005】
電極間容量変化型の従来の入力装置にあっては、ベース層として用いられたプリント基板を誘電体とし、このプリント基板上に信号線とセンス線が形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−64386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、入力装置は、上記したように、電子機器における画像表示部等に配置されることが多いため、画像表示部の表示の視認性の向上を図るために高い透明性が要求される。
【0008】
ところが、上記した従来の入力装置にあっては、ベース層としてプリント基板が用いられているため、透明性が無く使用される用途や配置される場所が限られてしまうと言う問題がある。
【0009】
また、信号線とセンス線を銅等の金属膜のパターンニング等により形成する場合にも透明性が低下してしまう。
【0010】
そこで、本発明入力装置及び電子機器は、高い透明性を確保して透明性の向上による用途の拡大を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
入力装置は、透明材料によって形成されたベース層と、透明導電膜によってベース層上に形成されると共に静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線とベース信号を入力する信号線とを有する回路パターンとを設けたものである。
【0012】
電子機器は、入力装置に、透明材料によって形成されたベース層と、透明導電膜によってベース層上に形成されると共に静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線とベース信号を入力する信号線とを有する回路パターンとを設けたものである。
【0013】
従って、入力装置及び電子機器にあっては、透明なベース層上に透明な回路パターンが形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明入力装置は、透明材料によって形成されたベース層と、透明導電膜によってベース層上に形成されると共に静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線とベース信号を入力する信号線とを有する回路パターンとを備えたことを特徴とする。
【0015】
従って、透明性が高く入力装置の用途や配置される場所を拡大することができる。
【0016】
請求項2に記載した発明にあっては、ベース層の一方の面に回路パターンを形成したので、回路パターンの形成が容易であると共に入力装置の薄型化を図ることができる。
【0017】
請求項3に記載した発明にあっては、ベース層をフィルム状の材料によって形成したので、屈曲性が高く、入力装置の使用用途を広げることができる。
【0018】
請求項4に記載した発明にあっては、信号線とセンス線を隣接する位置に形成したので、センス線と信号線の形成スペースが小さくて済み、入力装置の小型化を図ることができる。
【0019】
請求項5に記載した発明にあっては、ベース層上に信号線とセンス線を覆う透明な保護層を形成したので、センス線と信号線の損傷を防止することができると共に入力装置の高い透明性を確保することができる。
【0020】
本発明電子機器は、筐体の表面の少なくとも一部にシート状に形成された入力装置が貼り付けられて構成された電子機器であって、入力装置は、透明材料によって形成されたベース層と、透明導電膜によってベース層上に形成されると共に静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線とベース信号を入力する信号線とを有する回路パターンとを備えたことを特徴とする。
【0021】
従って、透明性が高く入力装置の用途や配置される場所を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明入力装置及び電子機器を実施するための最良の形態を添付図面に従って説明する。
【0023】
以下に示した最良の形態は、本発明電子機器を画像表示装置に適用したものであり、本発明入力装置をこの画像表示装置に備えられた入力装置に適用したものである。尚、本発明の適用範囲は画像表示装置又はこの画像表示装置に備えられた入力装置に限られることはなく、例えば、パーソナルコンピューター、情報端末、携帯電話、音響装置等の各種の電子機器又はこれらの各種の電子機器に備えられる入力装置に広く適用することができる。
【0024】
電子機器(画像表示装置)1は、筐体2の内部に所要の各部が配置され、図1に示すように、筐体2に設けられた画像表示部2aの表面に入力装置3が貼り付けられて構成されている。画像表示部2aは、例えば、液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等によって構成されている。
【0025】
入力装置3は透明なフィルム状又はシート状に形成され、画像表示部2aが曲面形状を有する場合には、この曲面形状に対応して屈曲可能とされている。
【0026】
入力装置3は、図2に示すように、透明材料によって形成されたベース層4と、透明導電膜によってベース層4上に形成された回路パターン5と、透明なシート状の材料によって形成された保護層6とが積層されて成る。
【0027】
ベース層4は、例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド等のフィルム状の透明材料によって形成されている。
【0028】
回路パターン5は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、アルミニウムやガリウム添加の酸化亜鉛等の透明材料がレーザーエッチング、ウエットエッチング、スパッタエッチング等によって、ベース層4の一方の面4aに形成されている。
【0029】
回路パターン5は、図3に示すように、静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線7、7、・・・とベース信号を入力する信号線8、8、・・・とを有している。
【0030】
センス線7は、静電容量の変化を検出するための電極部9と、図示しない電源回路に接続される端子部10と、電極部9と端子部10を接続する細幅のリード部11とによって構成されている。電極部9は同心円上に位置された円弧部9a、9bと該円弧部9a、9bの両端間をそれぞれ接続する直線部9c、9cとから成る。
【0031】
信号線8は、センス線7に信号を入力するための電極部12と、電源回路に接続される端子部13と、電極部12と端子部13を接続する細幅のリード部14とによって構成されている。電極部12は同心円上に位置された円弧部12a、12bと該円弧部12a、12bの両端間をそれぞれ接続する直線部12c、12cとから成る。
【0032】
センス線7の電極部9と信号線8の電極部12は直線部9c、9cと直線部12c、12cが平行な状態で近接して位置されている。
【0033】
入力装置3においては、電極部9、12が所定の機能を実行するためのスイッチ部15又は位置検出を行うセンサー部15として設けられている。電極部9、12がスイッチ部15として設けられている場合には入力装置3がタッチスイッチとして機能し、電極部9、12がセンサー部15として設けられている場合には入力装置3がタッチセンサーとして機能する。
【0034】
保護層6は、例えば、アクリル、ポリカーボネートとアクリルの重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の透明な材料によって形成されている。
【0035】
回路パターン5の周辺の領域は絶縁領域16として形成され、誘電体として機能する。絶縁領域16の外側の領域は接地されたグランド領域17、17、・・・として形成されている。
【0036】
このように入力装置3にあっては、グランド領域17、17、・・・が形成され、該グランド領域17、17、・・・が細幅のリード部11、14の周囲にも存在するため、リード部11、14の感度が低く、指が誤ってリード部11、14に接触した場合においてもスイッチ又はセンサーとして反応し難いようにし、誤操作の防止が図られている。
【0037】
逆に、一般に、ベース層4としてフィルム状の材料を使用した場合には抵抗値が高いため、グランド領域17、17、・・・の影響を受け易い。従って、スイッチ部(センサー部)15とグランド領域17、17、・・・の距離H(図3参照)を大きくすることが望ましい。スイッチ部(センサー部)15とグランド領域17、17、・・・の距離Hを大きくすることにより、グランド領域17、17、・・・のスイッチ部(センサー部)15に対する影響を低減することができ、スイッチ部(センサー部)15の感度の向上を図ることができる。
【0038】
スイッチ部(センサー部)15の感度は、スイッチ部(センサー部)15とグランド領域17の距離Hと、保護層6の厚みとの関係において制御することが可能である。即ち、スイッチ部(センサー部)15の感度は、距離Hが大きくなるに従って高くなるが、保護層6の厚みが厚くなるに従って低くなる。
【0039】
図4は、スイッチ部(センサー部)15とグランド領域17の距離Hに対してスイッチ部(センサー部)15が動作可能な保護層6の厚みを測定したグラフ図である。この測定においては、保護層6としてアクリルが用いられている。
【0040】
例えば、距離Hが0.65mmのときには保護層6の厚みが1.0mm以下であればスイッチ部(センサー部)15が正常に動作され、距離Hが0.75mmのときには保護層6の厚みが2.0mm以下であればスイッチ部(センサー部)15が正常に動作される。
【0041】
距離Hを大きくすると入力装置3が大型化され、保護層6の厚みを薄くすると入力装置3が薄型化されるが強度が低下する。従って、スイッチ部(センサー部)15の感度は、入力装置3に必要とされる強度や入力装置3の厚み及び大きさ等を考慮して定める必要がある。
【0042】
以上のように構成された入力装置3において、回路パターン5の電極部9、12には端子部10、13及びリード部11、14を介して電源回路から電圧が印加されており、例えば、入力装置3の保護層6におけるスイッチ部(センサー部)15に対応する部分に指が接触されると、接触部分(電極部9、12)が人体を通して大地と接続されて静電容量が変化される。このとき静電容量の変化に応じた検出信号がそれぞれ図示しない検出回路及び制御回路に送出され、接触箇所(センサー部15)の位置座標の特定や接触箇所(スイッチ部15)に応じた所定の機能が実行される。
【0043】
以下に、センス線と信号線の電極部の形状に関する変形例について説明する(図5乃至図8参照)。
【0044】
第1の変形例に係る電極部9A、12Aについては、図5に示すように、センス線7Aの電極部9Aが円環状に形成され、信号線8Aの電極部12Aが円弧状に形成されている。電極部9Aと電極部12Aは同心円上に位置され、電極部12Aが電極部9Aを外側から囲むように位置されている。
【0045】
尚、上記には、センス線7Aの電極部9Aが円環状に形成され、信号線8Aの電極部12Aが円弧状に形成された例を示したが、逆に、図6に示すように、電極部9Aを円弧状に形成し、電極部12Aを円環状に形成し、電極部9Aと電極部12Aを同心円上に位置させて電極部9Aが電極部12Aを外側から囲むように形成してもよい。
【0046】
第1の変形例にあっては、スイッチ部(センサー部)15Aが全体として円形状に形成されているため、構成が簡素であると共にスイッチ部(センサー部)15Aの形成スペースが小さくて済み、入力装置3の製造の容易化及び小型化を図ることができる。
【0047】
第2の変形例に係る電極部9B、12Bについては、図7に示すように、四つのセンス線7B、7B、・・・にそれぞれ電極部9B、9B、・・・が設けられ、一つの信号線8Bに電極部12Bが設けられている。電極部9B、9B、・・・と電極部12Bは全体として矩形状に形成され、電極部9B、9B、・・・間の部分に電極部12Bが位置されている。
【0048】
尚、上記には、四つの電極部9B、9B、・・・と一つの電極部12Bによってスイッチ部(センサー部)15Bを構成した例を示したが、逆に、一つの電極部9Bと四つの電極部12B、12B、・・・によってスイッチ部(センサー部)15Bを構成することも可能である。
【0049】
また、上記には、スイッチ部(センサー部)15Bを矩形状に形成した例を示したが、スイッチ部(センサー部)15B形状は矩形状に限られることはなく、例えば、円形状、楕円形状、多角形状等の任意の形状に形成することが可能である。
【0050】
第2の変形例にあっては、スイッチ部(センサー部)15Bの電極部9B、9B、・・・と電極部12Bが密集して位置されているため、スイッチ部(センサー部)15Bの小型化を確保した上で感度の向上を図ることができる。
【0051】
第3の変形例に係る電極部9C、12Cについては、図8に示すように、センス線7Cの電極部9Cと信号線8Cの電極部12Cがともに櫛形に形成され、電極部9Cと電極部12Cが組み合わせれることによりスイッチ部(センサー部)15Cが構成されている。
【0052】
第3の変形例にあっては、スイッチ部(センサー部)15Cの電極部9Cと電極部12Cが密集して位置されるため、スイッチ部(センサー部)15Cの小型化を確保した上で感度の向上を図ることができる。
【0053】
また、第3の変形例にあっては、電極部9Cと電極部12Cが櫛形に形成されているため構成が簡素であり、入力装置3の製造の容易化を図ることができる。
【0054】
以上に記載した通り、入力装置3にあっては、ベース層4と回路パターン5が何れも透明な材料によって形成されているため、透明性が高く入力装置3の用途や配置される場所を拡大することができる。
【0055】
また、入力装置3にあっては、ベース層4の一方の面4aに回路パターン5を形成しているため、回路パターン5の形成が容易であると共に入力装置3の薄型化を図ることができる。
【0056】
さらに、ベース層4がフィルム状の材料によって形成されているため、屈曲性が高く、入力装置3の使用用途を広げることができる。
【0057】
さらにまた、センス線7、7A、7B、7Cと信号線8、8A、8B、8Cが隣接する位置に形成されているため、スイッチ部(センサー部)15、15A、15B、15Cの形成スペースが小さくて済み、入力装置3の小型化を図ることができる。
【0058】
加えて、ベース層4上にセンス線7、7A、7B、7Cと信号線8、8A、8B、8Cを覆う透明な保護層6を形成しているため、センス線7、7A、7B、7Cと信号線8、8A、8B、8Cの損傷を防止することができると共に入力装置3の高い透明性を確保することができる。
【0059】
尚、筐体2の表面にタッチスイッチとして機能する入力装置3を貼り付けて使用することにより、筐体2に機械的に操作される突状のスイッチを設ける必要がなく、電子機器1の構造の簡素化及びデザイン性の向上を図ることができる。
【0060】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図2乃至図8と共に本発明入力装置及び電子機器の最良の形態を示すものであり、本図は、電子機器の概略分解斜視図である。
【図2】入力装置の概略拡大断面図である。
【図3】入力装置の回路パターンを示す概念図である。
【図4】スイッチ部(センサー部)とグランド領域の距離に対してスイッチ部(センサー部)が動作可能な保護層の厚みを測定したグラフ図である。
【図5】図6乃至図8と共に電極部の形状に関する変形例を示すものであり、本図は、第1の変形例を示す概念図である。
【図6】別の第1の変形例を示す概念図である。
【図7】第2の変形例を示す概念図である。
【図8】第3の変形例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0062】
1…電子機器、2…筐体、3…入力装置、4…ベース層、4a…一方の面、5…回路パターン、6…保護層、7…センス線、8…信号線、7A…センス線、8A…信号線、7B…センス線、8B…信号線、7C…センス線、8C…信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材料によって形成されたベース層と、
透明導電膜によってベース層上に形成されると共に静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線とベース信号を入力する信号線とを有する回路パターンとを備えた
ことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
ベース層の一方の面に回路パターンを形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
ベース層をフィルム状の材料によって形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
信号線とセンス線を隣接する位置に形成した
ことを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項5】
ベース層上に信号線とセンス線を覆う透明な保護層を形成した
ことを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項6】
筐体の表面の少なくとも一部にシート状に形成された入力装置が貼り付けられて構成された電子機器であって、
入力装置は、
透明材料によって形成されたベース層と、
透明導電膜によってベース層上に形成されると共に静電容量の変化に応じた検出信号を出力するセンス線とベース信号を入力する信号線とを有する回路パターンとを備えた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−26151(P2009−26151A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189997(P2007−189997)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】