説明

共役ポリマーおよび光電子デバイスにおけるその使用

特定のポリマー化合物、ならびに、有機およびハイブリッド光学、光電子および/または電子デバイス(例えば、光電池、発光ダイオード、発光トランジスターおよび電界効果トランジスター)における有機半導体としての該ポリマー化合物の使用を開示する。開示されている化合物は、光電池またはトランジスターにおいて使用した場合に、向上したデバイス性能(例えば、電力変換効率、曲線因子、開路電圧、電界効果移動度、オン/オフ電流比、および/または空気安定度によって測定される)を与えることができる。開示されている化合物は、一般的な溶媒への良好な溶解性を有することができ、溶解法によるデバイス製造を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年5月21日に出願された米国仮特許出願第61/180,256号および2010年4月12日に出願された米国仮特許出願第61/323,152号に対する優先権およびこれらの利益を主張する。これらの米国仮特許出願のそれぞれの開示は、その全体が本明細書中にて参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
新世代の光電子デバイス、例えば、有機光起電装置(OPV)および有機発光トランジスター(OLET)は、有機半導体をそれらの活性成分として使用して製造されている。商業的には、これらの有機半導体基材デバイスは、優れた費用対効果で加工しうるべきである。
【0003】
バルクヘテロ接合(BHJ)太陽電池は、ロール・ツー・ロールおよび大量生産によって製造できるので、最も有望なOPV構造物であると一般に考えられている。BHJ太陽電池は、アノードとカソードの間に配置された光活性層を含み、該光活性層は、「供与体」材料と「受容体」材料を含むブレンドフィルムから構成される。図1は、代表的BHJ有機太陽電池構造を示している。
【0004】
最新技術のBHJ太陽電池は、フラーレン基材化合物を受容体材料として使用している。典型的なフラーレンは、可溶化側鎖で官能化されたC60またはC70「バッキーボール」化合物、例えば、C60[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(C60PCBM)またはC70PCBMを含む。BHJ太陽電池に使用される最も一般的な供与体材料はポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)である。
【0005】
BHJ太陽電池の重要な性能パラメーターは、電力変換効率(PCE)、開路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、および短絡電流(Jsc)を含む。PCE(η)は、下記の等式によって求めることができる:
η=P/(E*A
[式中、Pは、太陽電池の最大電力点を表し;Eは、標準試験条件下における入力光放射照度(W/mで測定)を表し;Aは、太陽電池の表面積(mで測定)を表す]。FFは、[実際に得られる最大電力(P)]/[理論(実際に得られない)電力(Jsc*Voc)]の比率、または簡潔にFF=P/(Jsc*Voc)として定義されるので、PCE(η)は、Voc、FFおよびJscのそれぞれに直接的に相関することが分かる:
η=P/(E*A)=FF*(Jsc*Voc)/(E*A
さらに、太陽電池効率の基本的限界の1つは、太陽電池の製作に使用される供与体材料のバンドギャップである。π共役材料のバンドギャップを推定する一般的方法は、最長波長オンセットにおける光吸収を測定し、エネルギーを算出することである。BHJ太陽電池を商業的に実現可能にするために、それらは、高いVoc(>約0.7V)、高いFF(>約65%)、および最適化されたJscを達成すべきであると一般に考えられている。Jscは、バンドギャップ<約1.6eVを有するアブゾーバーによって最適に満たされることが示されている。
【0006】
BHJ太陽電池のVocは、下記の等式によって経験的に求めうることを指摘することが重要である:
oc=−(EHOMO(供与体)−ELUMO(受容体)+0.4)/e
[式中、EHOMO、ELUMO、およびeは、それぞれ、最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー(またはHOMOレベル)、最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー(またはLUMOレベル)、および電子電荷である]。例えば、PCBMのLUMOレベルは約−4.3eVである。従って、太陽電池のVocを使用して、供与体材料のHOMOレベルを推定することもできる(PCBMの既知LUMOレベルを与えて)。供与体材料のHOMOレベルは、その空気安定度を決定することが多い。例えば、最新技術のP3HT/PCBM BHJ太陽電池は、典型的には、約0.6VのVocを有し、P3HTのHOMOレベルが約−5.3eVであることを示唆している。しかし、P3HTは低い空気安定度を有することが周知である。P3HTより低いHOMO値(即ち、約−5.4eV以下)を有する供与体材料は、P3HTより向上した酸化安定度を有すると一般に考えられている。さらに、先に説明したように、より低いHOMOレベルを有する供与体材料は、おそらく、太陽電池のVoc、そして同様にその効率も増加させる。
【0007】
最新技術のBHJ太陽電池(例えば、P3HT/PCBM基材太陽電池)は、約4〜5%のPCEを示す。しかし、それらは、いくつかの基本的限界を有する。第一に、P3HTのバンドギャップは約2.0eVであり、それは太陽スペクトルのわずかな部分(30%)を吸収できるにすぎない。太陽スペクトルをより大きく使用できるように、約1.6eV以下のバンドギャップを有する供与体材料を開発することが重要である。言い換えれば、供与体材料は、太陽スペクトルのピーク強度領域(700〜800nm)に適合するために、約800nm以上において吸収オンセットを有する必要がある(材料の吸収オンセットは、そのバンドギャップで割った1240nmに等しい)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、BHJ太陽電池におけるP3HTに取って代わる低いバンドギャップ(<約1.6eV)の供与体材料を開発するために、多くの努力がなされている。低バンドギャップ供与体を基材とするBHJ太陽電池に関して少し報告が存在するが、これらの太陽電池のいずれも、P3HT/PCBM基材太陽電池と比較して、あまり性能向上を示していない。1つの問題は、これらの新しい低バンドギャップ供与体材料を基材とする太陽電池が、依然として約0.6Vの低いVocを示すと考えられ、これは、低バンドギャップ供与体材料が約5.3eVのHOMOレベルを有し、従って、P3HTと同様の安定度問題を有することを示している。さらに重要なことに、これらの新しい供与体材料を基材とするBHJ太陽電池は、典型的には、低い曲線因子(<60%)を示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
前記に鑑みて、本教示は、有機半導体として使用できる特定のオリゴマーおよびポリマー化合物を提供する。これらの化合物の関連デバイスならびに関連する調製法および使用法も提供する。本化合物は、周囲条件下での優れた電荷輸送特性、最適化光吸収、化学安定性、低温加工性、一般的溶媒への高溶解性、および処理融通性(例えば、種々の溶解法による)のような特性を示すことができる。その結果、1つ以上の本化合物を光活性層として組み込んでいる太陽電池のような光電子デバイスは、周囲条件下で高い性能を示すことができ、例えば、低いバンドギャップ、高い曲線因子、高い開路電圧、および高い電力変換効率の1つ以上、好ましくはこれらの基準の全てを示すことができる。同様に、他の有機半導体基材デバイス、例えばOLETも、本明細書に記載されている有機半導体材料を使用して効率的に製造することができる。
【0010】
本教示は、そのような化合物および半導体材料、ならびに、本明細書に開示されている化合物および半導体材料を組み込んだ種々の組成物、複合体およびデバイスを製造する方法も提供する。
【0011】
本教示の前記ならびに他の特徴および利点は、以下の図面、説明、実施例および特許請求の範囲からより深く理解される。
【0012】
以下に説明する図面は、例示目的のものにすぎないと理解すべきである。図面は、必ずしも縮尺して製図されているのではなく、一般に、本教示の原理を例示することに重点を置いている。図面は、本教示の範囲を決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、代表的バルクヘテロ接合(BHJ)有機光起電性デバイス(太陽電池としても公知)構造を示し、これは、1つ以上の本教示の化合物を、その光活性層(供与体および/または受容体材料)として組み込むことができる。
【図2】図2は、本教示の代表的コポリマーを組み込んでいる活性層を有するボトムゲート型薄膜トランジスターデバイスのトランスファープロットを示しており、ここで、Vsdは−60Vである。
【図3】図3は、下記のブレンドヘテロ接合層を有する特定の光起電性デバイスの代表的な電流密度−電圧プロットを示している:(a)本教示のコポリマーとC60PCBMとの混合物から調製された薄い(約100nm)活性層;(b)本教示のコポリマーとC60PCBMとの混合物から調製された厚い(約250nm)活性層;(c)本教示のコポリマーとC70PCBMとの混合物から調製された薄い(約100nm)活性層;(d)本教示のコポリマーとC70PCBMとの混合物から調製された厚い(約250nm)活性層。
【図4】図4は、図3に示された4タイプのデバイスの、代表的EQEスペクトルを示す:(左)C60PCBMを受容体として組み込んでいるデバイス;(右)C70PCBMを受容体として組み込んでいるデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本教示は、電子豊富反復単位および電子不足反復単位を一般に有する種々のπ共役オリゴマーおよびポリマー化合物から調製される有機半導体材料を提供する。本教示の化合物は、下記のような半導体挙動を示すことができる:電界効果デバイスにおける高い担体移動度および/または良好な電流変調特性;光起電性デバイスにおける最適化された光吸収/電荷分離;および/または、発光デバイスにおける、電荷輸送/再結合/発光。さらに、本化合物は、特定の加工利点、例えば、周囲条件下での溶解加工性および/または良好な安定度(即ち、空気安定度)を有しうる。本教示の化合物は、p型(供与体または正孔−輸送)、n型(受容体または電子−輸送)、または両極性半導体材料の調製に使用することができ、それらを、次に、種々の有機またはハイブリッド光電子物品、有機またはハイブリッド光電子構造物および有機またはハイブリッド光電子デバイス(有機光起電性デバイスおよび有機発光トランジスターを含む)の製造に使用することができる。
【0015】
本出願の全体にわたって、組成物が、特定の成分を有する、含む、または含んで成ると記載されているか、または方法が、特定のプロセス工程を有する、含む、または含んで成ると記載されている場合、本教示の組成物が、列挙された成分から本質的に成るか、またはそれらから成ること、ならびに本教示の方法が、列挙されたプロセス工程から本質的に成るか、またはそれらから成ることも考えられる。
【0016】
本出願において、1つの要素または成分が、列挙されている要素または成分のリストに含まれ、かつ/またはそれから選択されると記載されている場合、該要素または成分は、列記された要素または成分のいずれか1つであることができ、または該要素または成分は、2つ以上の列挙要素または成分から成る群から選択することができるものと理解すべきである。さらに、本明細書に記載されている組成物、装置または方法の要素および/または特徴は、明示的または黙示的のいずれにせよ、本教示の趣旨および範囲を逸脱せずに様々に組み合わすことができるものと理解すべきである。
【0017】
「含む」(「include」、「includes」、「including」)、「有する」(「have」、「has」または「having」)という用語の使用は、特に記載のない限り、変更可能であり非限定的であるものと一般に理解すべきである。
【0018】
本明細書における単数形の使用は、特に記載のない限り、複数形も含む(逆もまた同様)。さらに、「約」という用語が定量的数値の前に使用されている場合、本教示は、特に記載のない限り、その特定の定量的数値自体も含む。本明細書において使用されている「約」という用語は、他に指示されないかまたは推定されない限り、基準値からの±10%の差異を意味する。
【0019】
工程の順序、または特定の行動を行なう順序は、本教示が実施可能である限り、重要でないものと理解すべきである。さらに、2つ以上の工程または行動が同時に行なわれる場合もある。
【0020】
本明細書において使用されている「オリゴマー化合物」(または「オリゴマー」)、または「ポリマー化合物」(または「ポリマー」)は、共有化学結合によって連結した1個以上の複数の反復単位を含む分子を意味する。オリゴマーまたはポリマー化合物は、下記の一般式によって表すことができる:
【0021】
【化1】

[式中、Mは、反復単位またはモノマーである]。重合度は、2から10,000より大きい数値までであってよい。例えば、オリゴマー化合物の場合、重合度は2〜9であることができ;ポリマー化合物の場合、重合度は10〜約10,000であることができる。オリゴマーまたはポリマー化合物は、唯1つのタイプの反復単位を有することもでき、2つ以上のタイプの種々の反復単位を有することもできる。ポリマー化合物が唯1つのタイプの反復単位を有する場合、それはホモポリマーと称することができる。ポリマー化合物が2つ以上のタイプの種々の反復単位を有する場合、「コポリマー」または「コポリマー化合物」という用語を代わりに使用することができる。オリゴマーまたはポリマー化合物は、直鎖または分岐鎖であることができる。分岐ポリマーは、樹状ポリマー、例えば、デンドロン化ポリマー、超分岐ポリマー、ブラシ状ポリマー(ボトル−ブラシとも称される)等を含むことができる。特に指定されない限り、コポリマーにおける反復単位の組立ては、頭−尾、頭−頭、または尾−尾であることができる。さらに、特に指定されない限り、コポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー、またはブロックコポリマーであることができる。例えば、下記の一般式:
【0022】
【化2】

を使用して、コポリマー中にxモル分率のAおよびyモル分率のBを有するAとBとのコオリゴマーまたはコポリマーを表すことができ、ここで、コモノマーAおよびBの反復の仕方は、交互、ランダム、レジオランダム、レジオレギュラー、またはブロックであることができる。重合度(n)は、2から10,000より大きい数値までであってよい。
【0023】
本明細書において使用されている「環式部分」は、1つ以上(例えば1〜6個)の炭素環または複素環を含むことができる。環式部分は、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることができ(即ち、飽和結合のみを含みうるか、または芳香族性に関係なく1つ以上の不飽和結合を含みうる)、それぞれ、例えば、3〜24個の環原子を含み、本明細書に記載されているように任意に置換されることができる。環式部分が「単環式部分」である実施形態において、該「単環式部分」は、3〜14員の芳香族または非芳香族の炭素環または複素環を含みうる。単環式部分は、例えば、フェニル基または5−または6−員ヘテロアリール基を含むことができ、それらは、それぞれ、本明細書に記載されているように任意に置換されることができる。環式部分が「多環式部分」である実施形態において、該「多環式部分」は、互いに縮合した(即ち、共通結合を共有している)、かつ/またはスピロ原子または1個以上の架橋原子を介して互いに結合している2個以上の環を含むことができる。多環式部分は、8〜24員の芳香族または非芳香族の炭素環または複素環、例えばC8−24アリール基または8〜24員ヘテロアリール基を含むことができ、それらは、それぞれ、本明細書に記載されているように任意に置換されることができる。
【0024】
本明細書において使用されている「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0025】
本明細書において使用されている「オキソ」は、二重結合酸素(即ち、=O)を意味する。
【0026】
本明細書において使用されている「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基の例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピルおよびイソ−プロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル)、ペンチル基(例えば、n−ペンチル、イソ−ペンチル、ネオ−ペンチル)、ヘキシル基等を含む。種々の実施形態において、アルキル基は、1〜40個の炭素原子(即ち、C1−40アルキル基)、例えば、1〜20個の炭素原子(即ち、C1−20アルキル基)を有することができる。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有することができ、「低級アルキル基」と称することができる。低級アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル(例えば、n−プロピルおよびイソ−プロピル)、およびブチル基(例えば、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル)を含む。いくつかの実施形態において、アルキル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。アルキル基は、一般に、他のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基で置換されていない。
【0027】
本明細書において使用されている「ハロアルキル」は、1個以上のハロゲン置換基を有するアルキル基を意味する。種々の実施形態において、ハロアルキル基は、1〜40個の炭素原子(即ち、C1−40ハロアルキル基)、例えば、1〜20個の炭素原子(即ち、C1−20ハロアルキル基)を有することができる。ハロアルキル基の例は、CF、C、CHF、CHF、CCl、CHCl、CHCl、CCl等を含む。ペルハロアルキル基、即ち、全ての水素原子がハロゲン原子で置き換えられているアルキル基(例えば、CFおよびC)は、「ハロアルキル」の定義に含まれる。例えば、C1−40ハロルキル基は、式−C2s+1−tを有することができ、式中、Xは、各存在において、F、Cl、BrまたはIであり;sは1〜40の整数であり;tは1〜81の整数であり;但し、tは2s+1未満またはそれに等しい。ペルハロアルキル基でないハロアルキル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0028】
本明細書において使用されている「アルコキシ」は、−O−アルキル基を意味する。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n−プロポキシおよびイソプロポキシ)、t−ブトキシ、ペントキシル、ヘキソキシル基等を含むが、それらに限定されない。−O−アルキル基におけるアルキル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0029】
本明細書において使用されている「アルキルチオ」は、−S−アルキル基を意味する(これは、ある場合に、−S(O)−アルキルとして表すことができ、この場合にwは0である)。アルキルチオ基の例は、メチルチオ、エチルチオ、プロプルチオ(例えば、n−プロピルチオおよびイソプロピルチオ)、t−ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ基等を含むが、それらに限定されない。−S−アルキル基におけるアルキル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0030】
本明細書において使用されている「アリールアルキル」は、−アルキル−アリール基を意味し、ここで、アリールアルキル基は、アルキル基を介して所定化学構造に共有結合している。アリールアルキル基は、−Y−C6−14アリール基の定義に含まれ、ここで、Yは本明細書に定義されている通りである。アリールアルキル基の例は、ベンジル基(−CH−C)である。アリールアルキル基は、任意に置換されることができ、即ち、アリール基および/またはアルキル基が、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0031】
本明細書において使用されている「アルケニル」は、1個以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル基等を含む。1個以上の炭素−炭素二重結合は、内部(例えば、2−ブテン)または末端(例えば1−ブテン)に存在することができる。種々の実施形態において、アルケニル基は、2〜40個の炭素原子(即ち、C2−40アルケニル基)、例えば、2〜20個の炭素原子(即ち、C2−20アルケニル基)を有することができる。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。アルケニル基は、一般に、他のアルケニル基でも、アルキル基でも、アルキニル基でも置換されていない。
【0032】
本明細書において使用されている「アルキニル」は、1個以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等を含む。1個以上の炭素−炭素三重結合は、内部(例えば、2−ブチン)または末端(例えば1−ブチン)に存在することができる。種々の実施形態において、アルキニル基は、2〜40個の炭素原子(即ち、C2−40アルキニル基)、例えば、2〜20個の炭素原子(即ち、C2−20アルキニル基)を有することができる。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。アルキニル基は、一般に、他のアルキニル基でも、アルキル基でも、アルケニル基でも置換されていない。
【0033】
本明細書において使用されている「シクロアルキル」は、非芳香族炭素環式基を意味し、環化アルキル、アルケニルおよびアルキニル基を含む。種々の実施形態において、シクロアルキル基は、3〜24個の炭素原子、例えば、3〜20個の炭素原子を有することができる(例えば、C3−14シクロアルキル基)。シクロアルキル基は、単環式(例えば、シクロヘキシル)または多環式(例えば、縮合、架橋および/またはスピロ環系を含有)であることができ、それにおいて、炭素原子は、環系の中または外に位置する。シクロアルキル基の任意の好適な環位置は、所定化学構造に共有結合することができる。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカリル、アダマンチル、およびスピロ[4.5]デカニル基、ならびにそれらの同族体、異性体等を含む。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0034】
本明細書において使用されている「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味し、例えば、窒素、酸素、珪素、硫黄、燐およびセレンを含む。
【0035】
本明細書において使用されている「シクロヘテロアルキル」は、O、S、Se、N、PおよびSi(例えば、O、SおよびN)から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有し、1個以上の二重または三重結合を任意に含有する非芳香族シクロアルキル基を意味する。シクロヘテロアルキル基は、3〜24個の環原子、例えば3〜20個の環原子を有することができる(例えば、3〜14員シクロヘテロアルキル基)。シクロヘテロアルキル環における1個以上のN、P、SまたはSe原子(例えば、NまたはS)は、酸化されていてもよい(例えば、モルホリンN−オキシド、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド)。いくつかの実施形態において、シクロヘテロアルキル基の窒素または燐原子は、置換基、例えば、水素原子、アルキル基、または本明細書に記載されている他の置換基を担持することができる。シクロヘテロアルキル基は、1個以上のオキソ基、例えば、オキソピペリジル、オキソオキサゾリジル、ジオキソ−(1H,3H)−ピリミジル、オキソ−2(1H)−ピリジル等も含有することができる。シクロヘテロアルキル基の例は、特に、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、ピペラジニル等を含む。いくつかの実施形態において、シクロヘテロアルキル基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0036】
本明細書において使用されている「アリール」は、芳香族単環式炭化水素環系、または芳香族多環式環系を意味し、該多環式環系において、2個以上の芳香族炭化水素環が縮合している(即ち、共通の結合を有する)か、または少なくとも1個の芳香族単環式炭化水素環が1個以上のシクロアルキルおよび/またはシクロヘテロアルキル環に縮合している。アリール基は、その環系中に6〜24個の炭素原子を有することができ(例えば、C6−20アリール基)、それは多縮合環を含みうる。いくつかの実施形態において、多環式アリール基は、8〜24個の炭素原子を有することができる。アリール基の任意の好適な環位置を、所定化学構造に共有結合させることができる。芳香族炭素環のみを有するアリール基の例は、フェニル、1−ナフチル(二環式)、2−ナフチル(二環式)、アントラセニル(三環式)、フェナントレニル(三環式)、ペンタセニル(五環式)等を含む。少なくとも1個の芳香族炭素環が1個以上のシクロアルキルおよび/またはシクロヘテロアルキル環に縮合している多環式環系の例は、特に、下記のベンゾ誘導体を含む:シクロペンタン(即ち、インダニル基、これは5,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系である)、シクロヘキサン(即ち、テトラヒドロナフチル基、これは6,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系である)、イミダゾリン(即ち、ベンズイミダゾリニル基、これは5,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系である)、およびピラン(即ち、クロメニル基、これは6,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系である)。アリール基の他の例は、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基等を含む。いくつかの実施形態において、アリール基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。いくつかの実施形態において、アリール基は、1個以上のハロゲン置換基を有することができ、「ハロアリール」基と称することができる。ペルハロアリール基、即ち、全ての水素原子がハロゲン原子で置き換えられているアリール基(例えば、−C)は、「ハロアリール」の定義に含まれる。特定の実施形態において、アリール基は、他のアリール基で置換され、ビアリール基と称することができる。ビアリール基中の各アリール基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0037】
本明細書において使用されている「ヘテロアリール」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、珪素(Si)およびセレン(Se)から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する芳香族単環式環系、または、環系に存在する少なくとも1個の環が芳香族であり、少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する多環式環系を意味する。多環式ヘテロアリール基は、縮合した2個以上のヘテロアリール環を有する基、ならびに1個以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環および/または非芳香族シクロヘテロアルキル環に縮合した、少なくとも1個の単環式ヘテロアリール環を有する基を含む。ヘテロアリール基は、全体として、例えば、5〜24個の環原子を有することができ、1〜5個の環ヘテロ原子を有することができる(即ち、5〜20員ヘテロアリール基)。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子または炭素原子において所定化学構造に結合させて、安定構造を生じることができる。一般に、ヘテロアリール環は、O−O、S−SまたはS−O結合を含有しない。しかし、ヘテロアリール基中の1個以上のNまたはS原子は酸化され得る(例えば、ピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例は、例えば、下記に示す5−または6−員単環式および5−6二環式環系を含む:
【0038】
【化3】

[式中、Tは、O、S、NH、N−アルキル、N−アリール、N−(アリールアルキル(例えば、N−ベンジル)、SiH、SiH(アルキル)、Si(アルキル)、SiH(アリールアルキル)、Si(アリールアルキル)、またはSi(アルキル)(アリールアルキル)である]。そのようなヘテロアリール環は、下記を含む:ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル基等。ヘテロアリール基の他の例は、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾチエノピリジニル、ベンゾフロピリジニル基等を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0039】
本教示の化合物は、2個の他の部分と共有結合を形成することができる結合基として本明細書において定義される「二価基」を含むことができる。例えば、本教示の化合物は、下記を含むことができる:二価C1−20アルキル基(例えば、メチレン基)、二価C2−20アルケニル基(例えば、ビニリル基)、二価C2−20アルキニル基(例えば、エチニリル基)、二価C6−14アリール基(例えば、フェニリル基);二価3〜14員シクロヘテロアルキル基(例えば、ピロリジリル)、および/または二価5〜14員ヘテロアリール基(例えば、チエニリル基)。一般に、化学基(例えば、−Ar−)は、基の前と後ろに2つの結合を含有することによって二価であると理解される。
【0040】
全ての一般的種類の置換基を反映する数百の最も一般的置換基の、電子供与または電子求引特性は、決定され、定量化され、公表されている。電子供与および電子求引特性の最も一般的な定量化は、ハメットσ値による。水素は、ゼロのハメットσ値を有し、他の置換基は、それらの電子求引または電子供与特性に直接関係して正または負に増加するハメットσ値を有する。負のハメットσ値を有する置換基は、電子供与すると考えられ、正のハメットσ値を有する置換基は、電子求引すると考えられる。Lange’s Handbook of Chemistry、第12版、McGraw Hill,1979,Table 3−12,pp.3−134〜3−138参照(それは、多くの一般的に遭遇する置換基のハメットσ値を列挙しており、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0041】
「電子受容基」という用語は、本明細書において、「電子受容体」および「電子求引基」と同義語として使用できるものと理解すべきである。特に、「電子求引基」(「EWG」)または「電子受容基」または「電子受容体」は、水素原子が分子中の同じ位置を占めている場合に、水素原子より強く電子をそれ自身に引き付ける官能基を意味する。電子求引基の例は、下記を含むが、それらに限定されない:ハロゲンまたはハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、−NO、−CN、−NC、−S(R、−N(R、−SOH、−SO、−SO、−SONHR、−SON(R、−COOH、−COR、−COOR、−CONHR、−CON(R、C1−40ハロアルキル基、C6−14アリール基、および5〜14員電子不足ヘテロアリール基[ここで、Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基、C1−20ハロアルキル基、C1−20アルコキシ基、C6−14アリール基、C3−14シクロアルキル基、3〜14員シクロヘテロアルキル基、および5〜14員ヘテロアリール基であり、これらは、それぞれ、任意に、本明細書に記載されているように置換されることができる]。例えば、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基、C1−20ハロアルキル基、C1−20アルコキシ基、C6−14アリール基、C3−14シクロアルキル基、3〜14員シクロヘテロアルキル基、および5〜14員ヘテロアリール基は、1〜5個の小電子求引基、例えば、F、Cl、Br、−NO、−CN、−NC、−S(R、−N(R、−SOH、−SO、 −SO、−SONHR、−SON(R、−COOH、−COR、−COOR、−CONHR、および−CON(Rで任意に置換されることができる。
【0042】
「電子供与基」という用語は、本明細書において、「電子供与体」と同義語として使用できるものと理解すべきである。特に、「電子供与基」または「電子供与体」は、水素原子が分子中の同じ位置を占めている場合に、水素原子より強く電子を隣接原子に供与する官能基を意味する。電子供与基の例は、下記を含む:−OH、−OR、−NH、−NHR、−N(R、および5〜14員電子豊富ヘテロアリール基[ここで、Rは、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基、C6−14アリール基、またはC3−14シクロアルキル基である]。
【0043】
種々の非置換ヘテロアリール基は、電子豊富(またはπ過剰)または電子不足(またはπ欠乏)として記述することができる。そのような分類は、ベンゼン中の炭素原子と比較した、各環原子上の平均電子密度に基づく。電子豊富系の例は、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール基、例えば、フラン、ピロールおよびチオフェン、ならびにそれらのベンゾ縮合対応物、例えば、ベンゾフラン、ベンゾピロールおよびペンゾチオフェンを含む。電子不足系の例は、1個以上のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール基、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジン、ならびにそれらのベンゾ縮合対応物、例えば、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、フェナントリジン、アクリジンおよびプリンを含む。混合ヘテロ芳香環は、環中の1個以上のヘテロ原子の種類、数および位置に依存してどちらかの種類に属しうる。Katritzky,A.RおよびLagowski,J.M.,Heterocyclic Chemistry(John Wiley & Sons,New York,1960)参照。
【0044】
本明細書の様々な箇所で、置換基が群または範囲で開示されている。その記載は、そのような群および範囲の、あらゆる個々の部分的組合せを含むことを明確に意図している。例えば、「C1−6アルキル」という用語は、C、C、C、C、C、C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−C、C−CおよびC−Cアルキルを個々に開示することを明確に意図している。他の例として、0〜40の範囲の整数は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39および40を個々に開示することを明確に意図し、1〜20の範囲の整数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20を個々に開示することを明確に意図している。他の例は、「1〜5個の置換基で任意に置換された」という語句を含み、これは、0、1、2、3、4、5、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜5、2〜4、2〜3、3〜5、3〜4、および4〜5個の置換基を含むことができる化学基を個々に開示することを明確に意図している。
【0045】
本明細書に記載されている化合物は、不斉原子(キラル中心とも称される)を含有することができ、いくつかの化合物は、2個以上の不斉原子または中心を含有することができ、従って、これは、光学異性体(鏡像異性体)およびジアステレオ異性体(幾何異性体)を生じうる。本教示は、そのような光学異性体およびジアステレオ異性体を含み、この光学異性体およびジアステレオ異性体はそれらのそれぞれの分解鏡像異性体的またはジアステレオ異性体的純粋異性体(例えば、(+)または(−)立体異性体)およびそれらのラセミ混合物、ならびに鏡像異性体およびジアステレオ異性体の他の混合物を含む。いくつかの実施形態において、光学異性体は、当業者に既知の標準方法(例えば、キラル分離、ジアステレオマー塩形成、速度論的分割および不斉合成を含む)によって、鏡像異性体的に豊富化された形態または純粋な形態で得ることができる。本教示は、アルケニル部分を含有する化合物(例えば、アルケン、アゾ、およびイミン)のシス−およびトランス−異性体も包含する。本教示の化合物は、純粋形態の全ての可能な位置異性体、およびそれらの混合物を包含することも理解すべきである。いくつかの実施形態において、本化合物の製造は、当業者に既知の標準分離法を使用して、例えば、1つ以上のカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、疑似移動床クロマトグラフィーおよび高性能液体クロマトグラフィーを使用することによって、そのような異性体を分離することを含みうる。しかし、位置異性体の混合物は、本明細書に記載されている本教示の、かつ/または当業者に既知の、個々の位置異性体の使用と同様に使用することができる。
【0046】
1つの位置異性体の記述は、特に記載のない限り、任意の他の位置異性体および任意の位置異性体混合物を含むことが明確に意図される。
【0047】
本明細書において使用されている「脱離基」(「LG」)は、例えば置換または脱離反応の結果として、安定化学種として置き換えることができる荷電または非荷電原子(または原子団)を意味する。脱離基の例は、下記を含むが、それらに限定されない:ハロゲン(例えば、Cl、Br、I)、アジド(N)、チオシアネート(SCN)、ニトロ(NO)、シアネート(CN)、水(HO)、アンモニア(NH)、およびスルホネート基(例えば、OSO−R、ここでRはC1−10アルキル基またはC6−14アリール基であることができ、それぞれ、C1−10アルキル基および電子求引基から独立に選択される1〜4個の基で任意に置換されている)、例えば、トシレート(トルエンスルホネート、OTs)、メシレート(メタンスルホネート、OMs)、ブロシレート(p−ブロモベンゼンスルホネート、OBs)、ノシレート(4−ニトロベンゼンスルホネート、ONs)、およびトリフレート(トリフルオロメタンスルホネート、OTf)。
【0048】
本明細書において使用されている「p型半導体材料」または「供与体」材料は、正孔を主要電流または電荷担体として有する半導体材料を意味する。いくつかの実施形態において、p型半導体材料が基板に付着している場合、それは約10−5cm/Vsを超える正孔移動度を与えることができる。電界効果デバイスの場合、p型半導体は、約10より大きい電流オン/オフ比も示すことができる。
【0049】
本明細書において使用されている「n型半導体材料」または「受容体」材料は、電子を主要電流または電荷担体として有する半導体材料を意味する。いくつかの実施形態において、n型半導体材料が基板に付着している場合、それは約10−5cm/Vsを超える電子移動度を与えることができる。電界効果デバイスの場合、n型半導体は、約10より大きい電流オン/オフ比も示すことができる。
【0050】
本明細書において使用されている「移動度」は、電荷担体、例えば、p型半導体材料の場合の正孔(または正電荷の単位)およびn型半導体材料場合の電子が、電界の影響下で材料中を移動する速度の尺度を意味する。デバイスアーキテクチャーに依存するこのパラメーターは、電界効果デバイスまたは空間電荷制限電流測定を使用して測定することができる。
【0051】
本明細書において使用されている曲線因子(FF)は、[実際に得られる最大電力(PまたはVmp*Jmp)]/[理論(実際に得られない)電力(Jsc×Voc)]の比率(パーセンテージで示される)である。従って、FFは下記の等式を使用して求めることができる:
FF=(Vmp*Jmp)/(Jsc*Voc
[式中、JmpおよびVmpは、それぞれ、最大電力点(P)における電流密度および電圧を表し、この最大電力点は、J*Vがその最大値に達するまで、回路における抵抗を変化させることによって得られる;JscおよびVocは、それぞれ、短路電流および開路電圧を表す]。曲線因子は、太陽電池性能の評価における主要パラメーターである。市販太陽電池は、典型的には、約0.60%以上の曲線因子を有する。
【0052】
本明細書において使用されている開路電圧(Voc)は、外部負荷が接続されていない場合のデバイスのアノードとカソードの間の電位差である。
【0053】
本明細書において使用されている太陽電池の電力変換効率(PCE)は、電気エネルギーに対する、吸収光から変換された電力のパーセンテージである。太陽電池のPCEは、最大電力点(P)を、標準試験条件(STC)下の入力光放射照度(E、W/m)および太陽電池の表面積(A、m)で除することによって算出することができる。STCは、典型的には、温度25℃、放射照度1000W/m、およびエアマス1.5(AM1.5)スペクトルを意味する。
【0054】
本明細書において使用されている成分(例えば、薄膜層)は、それが光子を吸収して光電流の発生用の励起子を生じることができる1つ以上の化合物を含有する場合に、「光活性」であると考えることができる。
【0055】
本明細書において使用されているように、化合物が周囲条件、例えば、空気、周囲温度および湿度に、ある時間にわたって曝露された場合に、該化合物を半導体材料として組み込んでいるトランジスターが、ほぼ初期測定値で維持される担体移動度を示す場合に、該化合物は「周囲安定性」または「周囲条件下で安定性」であると考えることができる。例えば、化合物を組み込んでいるトランジスターが、空気、湿度および温度を含む周囲条件に、3日、5日または10日間にわたって曝露された後に、初期値から20%以上または10%以上変化しない担体移動度を示す場合に、化合物は周囲安定性であると記述することができる。
【0056】
本明細書において使用されている「溶解加工性」は、スピンコーティング、印刷(例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、リトグラフ印刷、マス印刷等)、スプレーコーティング、エレクトロスプレーコーティング、ドロップキャスティング、ディップコーティングおよびブレードコーティングを含む種々の溶相法に使用することができる化合物(例えば、ポリマー)、材料または組成物に適用される。
【0057】
明細書を通して、構造は、化学名と共に示される場合もあり、そうでない場合もある。命名法に関して何らかの疑問が生じた場合、構造が優先される。
【0058】
本教示は、有機半導体として使用することができる特定のオリゴマーまたはポリマー化合物に関する。本化合物は、種々の一般的溶媒への良好な溶解性、および空気中での良好な安定性を有しうる。光起電力または太陽電池、発光ダイオードおよび発光トランジスターを含むがそれらに限定されない光学または光電子デバイスに組み込まれた場合、本化合物は、種々の望ましい性能特性を付与することができる。例えば、本化合物を太陽電池(例えば、バルクヘテロ接合デバイス)の光活性層に使用した場合、太陽電池は、極めて高い電力変換効率(例えば、約4.0%以上)、曲線因子(例えば、約60%以上)および/または開路電圧(例えば、約0.7V以上)を示すことができる。本化合物は、熱アニール工程を経ずに極めて効率的な太陽電池に加工することもでき、従って、時間および費用節約上の利益を与え、多種の材料を太陽電池の種々の成分に使用することを可能にする。
【0059】
本教示は、種々の共役オリゴマーおよびポリマー化合物を提供し、各化合物は、少なくとも2つの異なるモノマー単位を含む。極めて一般的に、本化合物は、下記の式で表すことができる:
【0060】
【化4】

[式中、AおよびBは異なり、ランダムにまたは交互に繰り返すことができ;xおよびyは、それぞれ、AおよびBのモル分率を表し、ここで、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9であり、xおよびyの合計は約1であり;nは、2から約10,000以上までの重合度を表す]。
【0061】
より明確には、本化合物は下記の式によって表すことができる:
【0062】
【化5】

[式中、A’およびA”は、前記のAの定義を有し、B’およびB”は、前記のBの定義を有し、但し、A’およびA”および/またはB’およびB”は、置換基において互いに異なるものとし;xおよびyは、モル分率を表し、ここで、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9であり、xおよびyの合計は約1であり;nは、2から約10,000以上までの重合度を表す]。例えば、A’およびA”の一方は、1個以上の可溶化基で置換されることができ、他方は非置換である。同様に、B’における1つ以上の部分は置換されることができ、Bにおける同じ部分は非置換である。種々の実施形態において、xモル分率の化合物を構成する単位、およびyモル分率の化合物を構成する単位、即ち、下記の単位:
【0063】
【化6】

は、ランダムに繰り返すことができる。
【0064】
例えば、反復単位、A、A’またはA”は、下記式の共役多環式部分:
【0065】
【化7】

[式中、Xは、NまたはCRであり、Yは、NまたはCRである]
即ち、下記式の任意に置換されたベンゾジチエニル部分:
【0066】
【化8】

または、下記式の任意に置換されたベンゾジチアゾリル部分:
【0067】
【化9】

[式中、R、R、RおよびRは、独立に、H、または全体として化合物に向上した望ましい特性を付与することができる置換基であることができる]
を含むことができる。例えば、1つ以上の電子求引または電子供与部分を含む特定の置換基は、化合物の電子特性を調節することができ、1つ以上の脂肪鎖を含む置換基は、有機溶媒中の化合物の溶解性を向上させることができる。
【0068】
より明確には、R、R、RおよびRは、それぞれ、独立に、下記から選択することができ:H、ハロゲン、CN、OR’、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、SOR’、C1−40アルキル基、C2−40アルケニル基、C2−40アルキニル基、C1−40ハロアルキル基、−L’−C3−10シクロアルキル基、−L’−C6−14アリール基、−L’−C6−14ハロアリール基、−L’−3〜12員シクロヘテロアルキル基、および−L’−5〜14員ヘテロアリール基;
ここで、
L’は、各存在において、独立に、二価C1−20アルキル基、二価C1−20ハロアルキル基、および共有結合から選択され;
R’は、H、C1−40アルキル基、C2−40アルケニル基、C2−40アルキニル基、およびC1−40ハロアルキル基から選択され;
前記のC1−40アルキル基、C2−40アルケニル基、C2−40アルキニル基、C1−40ハロアルキル基、C1−20アルキル基、C1−20ハロアルキル基、C3−10シクロアルキル基、C6−14アリール基、C6−14ハロアリール基、3〜12員シクロヘテロアルキル基、および5〜14員ヘテロアリール基は、下記から独立に選択される1〜10個の置換基で任意に置換されることができ:ハロゲン、−CN、NO、OH、−NH、−NH(C1−20アルキル)、−N(C1−20アルキル)、−S(O)OH、−CHO、−C(O)−C1−20アルキル、−C(O)OH、−C(O)−OC1−20アルキル、−C(O)NH、−C(O)NH−C1−20アルキル、−C(O)N(C1−20アルキル)、−OC1−20アルキル、−SiH、−SiH(C1−20アルキル)、−SiH(C1−20アルキル)、および−Si(C1−20アルキル)
前記の、C1−40アルキル基、C2−40アルケニル基、C2−40アルキニル基、C1−40ハロアルキル基、C1−20アルキル基、またはC1−20ハロアルキル基の、1個以上の非隣接−CH−基は、下記から独立に選択される基で置き換えることができる:−O−、−S−、−NH−、−N(C1−20アルキル)−、−Si(C1−20アルキル)−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、および−OC(O)O−。
【0069】
特定の実施形態において、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、独立に、小官能基、例えば、ハロゲン、CN、OR’、C(O)R’、C(O)OR’またはSOR’であることができ、ここで、R’は、Hまたは低級アルキル基であることができる。
【0070】
特定の実施形態において、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、独立に、直鎖または分岐鎖C3−40アルキル基であることができ、その例は、下記を含む:n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、1−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルプロピル基、1−エチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、2−オクチルドデシル基、および2−デシルテトラデシル基。特定の実施形態において、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、独立に、直鎖または分岐鎖C3−40アルケニル基であることができる(例えば、先に具体的に挙げた直鎖または分岐鎖C3−40アルキル基であって、1個以上の飽和結合が不飽和結合で置き換えられた基)。特定の実施形態において、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、独立に、分岐鎖C3−20アルキル基または分岐鎖C3−20アルケニル基であることができる。
【0071】
特定の実施形態において、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、それぞれ、独立に、下記であることができ:直鎖または分岐鎖C6−40アルキルまたはアルケニル基、直鎖または分岐鎖C6−40アルキルまたはアルケニル基で置換されたアリールアルキル基(例えば、ベンジル基)、直鎖または分岐鎖C6−40アルキルまたはアルケニル基で置換されたアリール基(例えば、フェニル基)、または直鎖または分岐鎖C6−40アルキルまたはアルケニル基で置換されたビアリール基(例えば、ビフェニル基);ここで、これらの基のそれぞれは、1〜5個のハロ基(例えば、F)で任意に置換されることができる。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、独立に、2個のアリール基がリンカーを介して共有結合しているビアリール基であることができる。例えば、リンカーは、二価C1−40アルキル基であることができ、該基において、1個以上の非隣接CH基は、−O−、−S−または−Se−によって任意に置き換えることができ、即ち、O、Sおよび/またはSe原子は、互いに直接的に結合していない。リンカーは、本明細書に記載されている他のヘテロ原子および/または官能基を含むことができる。
【0072】
さらに例示すれば、特定の実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、Hまたは−L’−Rから選択することができ、ここで、Rは、C1−40アルキル基、C2−40アルケニル基、C2−40アルキニル基およびC1−40ハロアルキル基から選択され、それらは、それぞれ、下記から独立に選択される1〜10個の置換基で任意に置換されることができ:ハロゲン、−CN、NO、OH、−NH、−NH(C1−20アルキル)、−N(C1−20アルキル)、−S(O)OH、−CHO、−C(O)−C1−20アルキル、−C(O)OH、−C(O)−OC1−20アルキル、−C(O)NH、−C(O)NH−C1−20アルキル、−C(O)N(C1−20アルキル)、−OC1−20アルキル、−SiH、−SiH(C1−20アルキル)、−SiH(C1−20アルキル)、および−Si(C1−20アルキル);L’は、共有結合、または1個以上のヘテロ原子を有するリンカーである。例えば、L’は、−Y−O−Y−、−Y−[S(O)]−Y−、−Y−C(O)−Y−、−Y−[NRC(O)]−Y−、−Y−[C(O)NR]−、−Y−NR−Y−、 −Y−[SiR]−Y−から選択されるリンカーであることができ、ここで、Yは、各存在において、独立に、二価C1−20アルキル基、二価C2−20アルケニル基、二価C2−20ハロアルキル基、および共有結合から選択され;Rは、H、C1−6アルキル基、C6−14アリール基、および−C1−6アルキル−C6−14アリール基から選択され;wは、0、1または2である。いくつかの実施形態において、R、R、RおよびRは、独立に、H、C3−40アルキル基、−O−C3−40アルキル基、−S−C3−40アルキル基、C4−40アルケニル基、C4−40アルキニル基、およびC3−40ハロアルキル基から選択することができ、ここで、これらの基は、それぞれ、直鎖または分岐鎖であることができ、任意に、本明細書に記載されているように置換されることができる。
【0073】
他の実施形態において、R、R、RおよびRの1つ以上は、独立に、1個以上の環式部分を含むことができる。
【0074】
種々の実施形態において、共役多環式部分:
【0075】
【化10】

は、対称的に置換されることができ、即ち、RおよびRは同じ基であることができ、かつ/または、XおよびYがそれぞれCRおよびCRである場合、RおよびRは同じ基であることができる。例えば、RおよびRのそれぞれ、および/またはRおよびRのそれぞれは、分岐C3−40アルキル基、分岐C3−40ハロアルキル基、分岐C3−40アルコキシ基、または分岐C3−40アルキルチオ基であることができる。
【0076】
本オリゴマーまたはポリマー化合物における反復単位B、B’またはB”は、下記の式を有することができる:
−(Ar)−M−(Ar)−
[式中、各Arは、任意に置換された5〜10員アリールまたはヘテロアリール基であることができ;Mは、本明細書に記載されている任意に置換されたベンゾ縮合ヘテロアリール部分であることができる]。
【0077】
従って、いくつかの実施形態において、本教示による化合物は、式Iで表すことができる:
【0078】
【化11】

[式中、
各Mは、1〜6個のヘテロ原子を有する任意に置換されたベンゾ縮合ヘテロアリール部分であり;
Xは、NまたはCRであり;
Yは、NまたはCRであり;
、R、RおよびRは、それぞれ、Hおよび−L−Rから選択され;
ここで、
Lは、各存在において、独立に、O、Sおよび共有結合から選択され;
Rは、各存在において、独立に、C1−40アルキル基であり;
は、各存在において、独立に、C1−40アルキル基、C1−40ハロアルキル基、C1−40アルコキシ基およびC1−40アルキルチオ基から選択され;
xおよびyは、モル分率を表す実数であり、ここで、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9であり、xおよびyの合計は約1である]。
【0079】
例えば、任意に置換されたベンゾ縮合ヘテロアリール部分は、下記の式で表すことができる:
【0080】
【化12】

[式中、Hetは、各存在において、少なくとも1個のヘテロ原子を環中に含む単環式部分であり;RおよびRは、独立に、Hまたは−L−Rであることができ、ここで、LおよびRは本明細書に定義されている通りである]。
【0081】
例示すれば、Mは、下記から選択することができる:
【0082】
【化13】

[式中、Rは、HまたはC1−40アルキル基であり;RおよびRは、本明細書に定義されている通りである]。
【0083】
特定の実施形態において、Mは下記から選択できる:
【0084】
【化14】

[式中、RおよびRは、本明細書に定義されている通りである]。例えば、RおよびRは、HまたはC1−40アルキル基であることができる。
【0085】
従って、特定の実施形態において、本教示によるコポリマーは、式IIで表すことができる:
【0086】
【化15】

[式中、R、R、R、R、R、Z、xおよびyは、本明細書に定義されている通りである]。例えば、RおよびRは、独立に、HまたはC1−40アルキル基であることができ;各Rは、C1−40アルキル基またはC1−40アルコキシ基であることができる。
【0087】
特定の実施形態において、本教示による特定のコポリマーは、式IIIで表すことができる:
【0088】
【化16】

[式中、R、R、R、R、R、R、R、xおよびyは、本明細書に定義されている通りである]。例えば、RおよびRは、独立に、HまたはC1−40アルキル基であることができ;各Rは、C1−40アルキル基またはC1−40アルコキシ基であることができる。さらに例示すれば、式IIIの化合物は、下記から選択される式で表すことができる:
【0089】
【化17】

[式中、R、R、R、R、R、xおよびyは、本明細書に定義されている通りである]。いくつかの実施形態において、RおよびRはHであることができ、RおよびRは−L−Rであることができ、ここで、LおよびRは本明細書に定義されている通りである。他の実施形態において、RおよびRはHであることができ、RおよびRは−L−Rであることができ、ここで、LおよびRは本明細書に定義されている通りである。例えば、−L−Rは、C3−40アルキル基(R)、C3−40アルコキシ基(−O−R)、およびC3−40アルキルチオ基(−S−R)から選択することができる。
【0090】
特定の実施形態において、本教示のコポリマーは、式IVで表すことができ:
【0091】
【化18】

該式は、下記から選択される式を含む:
【0092】
【化19】

[式中、RはC1−40アルキル基であり、R、xおよびyは本明細書に定義されている通りである]。例えば、いくつかの実施形態において、Rは分岐鎖C6−20アルキル基であることができ、Rは直鎖C6−20アルキル基であることができる。他の実施形態において、Rは、分岐鎖C6−20アルキル基であることができ、Rは直鎖C6−20アルコキシ基であることができる。モル分率xおよびyは、それぞれ、約0.2〜約0.8であることができ、即ち、0.2≦x≦0.8、および0.2≦y≦0.8であり得、但し、xおよびyの合計は約1であるものとする。
【0093】
さらに例示すれば、式IVの特定のコポリマーを、下記から選択される式で表すことができる:
【0094】
【化20】

[式中、Rは、各存在において、独立に、C6−20アルキル基であることができ、xおよびyは本明細書に定義されている通りである]。
【0095】
特定の実施形態において、本教示のコポリマーは、式Vで表すことができ:
【0096】
【化21】

該式は、下記から選択される式を含む:
【0097】
【化22】

[式中、RはC1−40アルキル基であり、R、xおよびyは本明細書に定義されている通りである]。例えば、いくつかの実施形態において、Rは分岐鎖C6−20アルキル基であることができ、Rは直鎖C6−20アルキル基であることができる。他の実施形態において、Rは、分岐鎖C6−20アルキル基であることができ、Rは直鎖C6−20アルコキシ基であることができる。モル分率xおよびyは、それぞれ、約0.2〜約0.8であることができ、即ち、0.2≦x≦0.8、および0.2≦y≦0.8であり得、但し、xおよびyの合計は約1であるものとする。
【0098】
さらに例示すれば、式Vの特定のコポリマーは、下記から選択される式で表すことができる:
【0099】
【化23】

[式中、Rは、各存在において、独立に、C6−20アルキル基であることができ、xおよびyは本明細書に定義されている通りである]。
【0100】
特定の実施形態において、式Iにおける任意に置換されたベンゾジチエニルまたはベンゾジチアゾリル基は、他の任意に置換された共役多環式部分[π−2]で置き換えることができ、ここで、[π−2]は、2つの異なる環に属する原子を介して化合物の主鎖に組み込みこまれている。即ち、A’およびA”基は、任意に置換されたベンゾジチエニルまたはベンゾジチアゾリル基、またはいくつかの他の任意に置換された共役多環式部分[π−2]であることができる。
【0101】
例えば、[π−2]は、下記から選択される任意に置換された多環式部分であることができる:
【0102】
【化24】

[式中、Rは、各存在において、独立に、HまたはC1−40アルキル基であることができる]。
【0103】
本明細書に記載されている種々のコポリマー(式I、II、III、IVおよびVの化合物を含む)において、xモル分率のコポリマーを構成する単位、およびyモル分率のコポリマーを構成する単位は、ランダムに繰り返すことができる。さらに、これらの化合物において、xモル分率のコポリマーを構成する単位(即ち、非置換チエニル基を含む単位)は、yモル分率のコポリマーを構成する単位(即ち、置換チエニル基を含む単位)より高いモル分率で存在することができる。より明確には、xは、少なくとも約0.5、即ち、0.5≦x≦0.9および0.1≦y≦0.5であることができ、ここで、xおよびyの合計は約1である。特定の実施形態において、xおよびyは、0.5≦x≦0.8および0.2≦y≦0.5の範囲の実数であることができ、ここで、xおよびyの合計は約1である。さらに、重合度(n)は、5〜約10,000であることができる。例えば、重合度(n)は、10〜約10,000であることができる。
【0104】
本発明者らは、意外にも、式I、II、III、IVおよびVの化合物が、有機光起電性デバイスにおいて例外的性能向上を与えうることを見出した。性能向上は、下記を含むことができる:高い電力変換効率(例えば、約4.0%以上、約4.5%以上、約5.0%以上、または約5.5%以上)、低いバンドギャップ(例えば、約1.60eV以下、約1.55eV以下、または約1.50ev以下)、高い曲線因子(例えば、約60%以上、約65%以上、または約70%以上)、および/または高い開路電圧(例えば、約0.6V以上、約0.7V以上、または0.8V以上)。さらに意外なことに、式I、II、III、IVまたはVの化合物を光起電性デバイスの光活性材料に使用した場合に、該デバイスの性能が、比較デバイス[該比較デバイスは、xモル分率のコポリマーを構成する単位(即ち、非置換チエニル基を含む単位)のみのコポリマー、またはyモル分率のコポリマーを構成する単位(即ち、置換チエニル基を含む単位)のみのコポリマーを組み込み、本発明のコポリマーにおけるように両方の単位からなるコポリマーを組み込んでいない]より顕著に優れている場合が多いことを本発明者らは観測した。性能向上は、比較デバイスと比較して、より高い電力変換効率、より低いバンドギャップ、より高い曲線因子、および/またはより高い開路電圧を含むことができる。特定の実施形態において、バンドギャップ、曲線因子および開路電圧の向上が、本教示によるコポリマーを使用した同じデバイスにおいて同時に観測される。特定の実施形態において、4つ基準の少なくとも3つにおける向上が観測される。特定の実施形態において、4つの全ての基準における向上が観測される。
【0105】
本教示の化合物、および本化合物をもたらすモノマーは、実施例に記載されている方法に類似した方法で調製することができる。特に、StilleカップリングまたはSuzukiカップリング反応を使用して、本教示によるコポリマー化合物を、高分子量および高い収率(≧75%)および純度(H NMRスペクトル、元素分析、および/またはGPC測定によって確認)で調製することができる。
【0106】
または、本化合物は、市販の出発物質、文献において既知の化合物から、または他の容易に調製される中間体を経て、標準合成法および当業者に既知の手順を使用して調製することができる。有機分子調製ならびに官能基変換および操作のための標準合成法および手法は、関連科学文献または当分野の標準的教科書から容易に得ることができる。典型的なまたは好ましい作業条件(即ち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられれば、特に記載のない限り、他の作業条件も使用しうることが理解される。最適反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒によって変化しうるが、そのような条件は、当業者によって、日常的な最適化手順によって決定しうる。有機合成分野の当業者は、示されている合成工程の種類および順序を、本明細書に記載されている化合物の形成を最適化するために変化させうることを理解する。
【0107】
本明細書に記載されている方法は、当分野において既知の任意の好適な方法によって監視できる。例えば、生成物形成を、下記によって監視することができる:分光学的手段、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR、例えば、Hまたは13C)、赤外分光法(IR)、光吸収/発光分光法(例えば、紫外可視)、質量分析(MS)、またはクロマトグラフィー、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、または薄層クロマトグラフィー(TLC)によって監視できる。
【0108】
本明細書に記載されている反応またはプロセスは、有機合成分野の当業者によって容易に選択することができる好適な溶媒中で行なうことができる。好適な溶媒は、典型的には、反応が行なわれる温度、即ち、溶媒の凝固点温度〜溶媒の沸騰温度の範囲でありうる温度において、反応物、中間体および/または生成物と実質的に非反応性である。所定の反応を、1つの溶媒中、または1つ以上の溶媒の混合物中で行なうことができる。特定の反応工程に依存して、特定の反応工程に好適な溶媒を選択することができる。
【0109】
本明細書に開示されている特定の実施形態は、周囲条件において安定であることができ(「周囲安定性」)、一般的溶媒に溶解性であることができる。本明細書において使用されているように、化合物を半導体材料として組み込んでいるトランジスターが、該化合物を周囲条件、例えば、空気、周囲温度および湿度に、所定時間にわたって曝露した際に、ほぼその初期測定値を維持する担体移動度を示す場合に、該化合物は電気的に「周囲安定性」または「周囲条件において安定性」であると考えることができる。例えば、本教示による化合物は、該化合物を組み込んでいるトランジスターが空気、湿度および温度を含む周囲条件への3日、5日または10日間の曝露後に初期値から20%を超えてまたは10%を超えて変化しない担体移動を示す場合に、周囲安定性として記述することができる。さらに、空気、湿度および温度を含む周囲条件への3日、5日または10日間の曝露後に、対応するフィルムの光吸収がその初期値から20%を超えて変化しない(好ましくは10%を超えて変化しない)場合に、化合物は周囲安定性であると考えることができる。
【0110】
本明細書に使用されているように、化合物は、少なくとも0.1mgの化合物が1mLの溶媒に溶解しうる場合に、溶媒に溶解性であると考えることができる。一般的な有機溶媒の例は、下記を含む:石油エーテル;アセトニトリル;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびメシチレン;ケトン、例えば、アセトン、およびメチルエチルケトン;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、およびt−ブチルメチルエーテル;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、およびイソプロピルアルコール;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン;エステル、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸イソプロピル、および酢酸ブチル;アミド、例えば、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミド;スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド;ハロゲン化脂肪族および芳香族炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびトリクロロベンゼン;ならびに、環式溶媒、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、および2−メチルピロリドン。
【0111】
本化合物は、蒸着のようなより高いコストの他のプロセスに加えて、溶解処理法を使用して、種々の製品に調製することができる。種々の溶解処理法が、有機電子工学と共に使用されている。一般的な溶解処理法は、例えば、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ゾーンキャスティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、または吹付けを含む。溶解処理法の他の例は、印刷である。本明細書において使用される「印刷」は、非接触法、例えば、インクジェット印刷、マイクロディスペンシング等、および接触法、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、リトグラフ印刷、パッド印刷、マイクロコンタクト印刷等を含む。
【0112】
本教示の化合物を、単独で、または他の化合物と組み合わして使用して、半導体材料(例えば、組成物および複合物)を調製することができ、次に、それを使用して、種々の製品、構造物およびデバイスを製造することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の本教示の化合物を組み込んでいる半導体材料は、p型半導体活性、両極性活性、吸光および/または発光を示すことができる。
【0113】
従って、本教示は、半導体材料を調製する方法もさらに提供する。該方法は、液体媒質、例えば、溶媒または溶媒混合物に溶解または分散した本明細書に開示されている1つ以上の化合物を含む組成物(例えば、溶液または分散液)を調製すること、該組成物を基板に付着させて、半導体材料先駆物質を与えること、該半導体先駆物質を処理(例えば、加熱)して、本明細書に開示されている化合物を含む半導体材料(例えば、光活性層)を与えることを含むことができる:。種々の実施形態において、液体媒質は、有機溶媒、無機溶媒、例えば水、またはそれらの組合せであることができる。いくつかの実施形態において、組成物は、下記から独立に選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことができる:粘度調整剤、界面活性剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、保湿剤、消泡剤、湿潤剤、pH調節剤、殺生物剤および静菌剤。例えば、界面活性剤および/またはポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ−アルファ−メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等)を、分散剤、結合剤、相溶化剤および/または消泡剤として含むことができる。いくつかの実施形態において、付着工程は、印刷によって行なうことができ、印刷はインクジェット印刷および種々の接触印刷法(例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、リトグラフ印刷、フレキソ印刷、およびマイクロコンタクト印刷)を含む。他の実施形態において、付着工程は、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ゾーンキャスティング、ディップコーティング、ブレードコーティングまたは吹付けによって行なうことができる。
【0114】
本明細書に開示されている化合物を使用した種々の製品(光学デバイス、光電子デバイスおよび電子デバイス、例えば、薄膜半導体、光起電性デバイス、光検出器、有機発光デバイス、例えば有機発光トランジスター(OLET)を含む)、およびそれらの作製法は、本教示の範囲に含まれる。本化合物は、これらのデバイスの製造および/または使用において処理および作業上の利益を与えることができる。
【0115】
例えば、本明細書に記載されている種々のデバイスのような製品は、第一電極、第二電極、および該第一電極と該第二電極の間に配置されている光活性成分を含む光学または光電子デバイスであることができ、該デバイスにおいて、該光活性成分が本教示の化合物を含んでいる。
【0116】
種々の実施形態において光学または光電子デバイスは、太陽電池、特に、バルクヘテロ接合太陽電池として構成することができる。本教示の化合物は、広域光吸収および/または同調レドックス特性およびバルク担体移動度を示すことができ、該化合物をそのような用途に望ましいものにしている。種々の実施形態において、本教示によるバルクヘテロ接合太陽電池は、供与体材料としての本教示の化合物および光活性層としての受容体材料を含むブレンド材料(例えば、ブレンドフィルム)を組み込むことができる。大部分の最新技術デバイスにおいて、ブレンドフィルムの厚さは、約100nm以下に制限されることが多い(良好なデバイス性能を得るため)が、本発明者らは、広い厚さ範囲で本明細書に記載のコポリマーから調製したフィルム、特に、約100nm以下の厚さを有する薄いフィルム、ならびに約200nm以上の厚さを有するフィルムを使用して、同等の性能を観測した。
【0117】
典型的な受容体材料は、フラーレン基材化合物を含む。本教示において有用なフラーレンは、広範囲の大きさ(1分子当たりの炭素原子の数)を有することができる。本明細書において使用されるフラーレンという用語は、純粋炭素の種々の籠状分子を含み、バックミニスターフラーレン(C60)(「バッキーボール」)および関連する「球状」フラーレンならびにカーボンナノチューブを含む。フラーレンは、例えばC20〜C1000の、当分野において既知のフラーレンから選択することができる。特定の実施形態において、フラーレンは、C60〜C96から選択できる。特定の実施形態において、フラーレンは、C60またはC70、例えば[60]PCBMまたは[70]PCBMであることができる。いくつかの実施形態において、化学的に修飾されたフラーレンを使用することができ、但し、該修飾フラーレンは受容体型および電子移動特性を保持しているものとする。他の受容体材料をフラーレンの代わりに使用することができ、但し、それらが、必要とされる受容体型および電子移動特性を有しているものとする。例えば、受容体材料は、種々の有機小分子、ポリマー、カーボンナノチューブ、または無機粒子(量子ドット、量子ロッド、量子トリポッド、TiO、ZnO等)であることができる。
【0118】
本教示による光活性成分は、1つ以上の本発明化合物と受容体化合物、例えばフラーレン(例えば、PCBM)との混合物を含有する溶液または分散液から付着させたブレンドフィルムとして調製することができる。本ポリマー/受容体化合物の比率は、約10:1〜約1:10(重量比);例えば、約5:1〜約1:5(重量比)、約3:1〜約1:3(重量比)、または約2:1〜約1:2(重量比)であることができる。光活性層は、ポリマー結合剤も含有することができ、このポリマー結合剤は約5〜約95wt%で存在することができる。ポリマー結合剤は、例えば、ポリスチレン(PS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)から選択される半結晶質ポリマーであることができる。
【0119】
図1は、1つ以上の本教示の化合物を供与体および/または受容体材料として組み込むことができるバルクヘテロ接合有機太陽電池の代表的構造を示している。示されているように、代表的太陽電池は、基板20、アノード22、カソード26、および該アノードと該カソードの間に光活性層24を一般に含み、該光活性層は、1つ以上の本教示の化合物を電子供与体(pチャンネル)および/または電子受容体(nチャンネル)材料として組み込むことができる。いくつかの実施形態において、任意の平滑層が、アノードと光活性層の間に存在することができる。
【0120】
基板は、例えば、ガラスまたは可撓性基板(例えば、プラスチック)であることができる。電極は、金属または透明導電酸化物、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、および亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)から構成され得る。例えば、カソードは、アルミニウムまたはカルシウムから構成され得、アノードはITOから構成され得る。
【0121】
種々の実施形態において、任意の平滑層が、アノードと光活性層の間に存在することができる。例えば、平滑層は、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、または3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレン−スルホネート(PEDOT:PSS)のフィルムを含むことができる。
【0122】
特定の実施形態において、本教示による太陽電池は、透明ガラス基板を含むことができ、該基板の上に、インジウムスズ酸化物(ITO)から製作された電極層(アノード)が適用される。この電極層は比較的粗い表面を有することができ、ドーピングによって導電性にされたポリマー、典型的にはPEDOT:PSSから製作された平滑層を該電極層の上部に適用して、その表面形態を向上させることができる。光活性層は、一般に、前記の2つの成分から製作され、例えば約100nm〜数μmの層厚さを有することができる。対向電極(カソード)を適用する前に、電気絶縁遷移層を光活性層に適用することができる。この遷移層は、アルカリハロゲン化物、例えばLiFから製作することができ、真空蒸着させることができる。
【0123】
本教示の他の態様は、1つ以上の本教示の半導体材料を組み込んだ有機発光トランジスターまたは有機発光ダイオード(OLED)を製造する方法に関する。例えば、OLEDにおいて、1つ以上の本教示の化合物を、電子輸送および/または電子放射および/または正孔輸送材料として使用することができる。OLEDは、基板、透明アノード(例えば、ITO)、カソード(例えば、金属)および1つ以上の有機層を一般に含むことができ、該有機層は、1つ以上の本教示の化合物を正孔輸送(pチャンネル)ならびに/または電子放射および/もしくは電子輸送(nチャンネル)材料として組み込むことができる。本化合物が、正孔輸送、電子輸送および電子放射特性の1つまたは2つだけを有する実施形態において、本化合物を、残る必要特性を有する1つ以上の他の有機化合物とブレンドすることができる。
【0124】
他の実施形態において、製品は、電子または光電子デバイス(例えば、有機発光トランジスター)であることができ、該デバイスは、第一電極、第二電極、および該第一電極と該第二電極に接触する半導体成分を含み、該半導体成分は本教示の化合物を含む。これらのデバイスは、本教示の半導体成分(または半導体材料)および基板成分および/または誘電体成分を有する複合物を含むことができる。基板成分は、下記から選択することができる:ドープシリコン、インジウムスズ酸化物(ITO)、ITO被覆ガラス、ITO被覆ポリイミドまたは他のプラスチック、単独かまたはポリマーもしくは他の基板に被覆されたアルミニウムまたは他の金属、ドープポリチオフェン等。誘電体成分は、下記から調製することができる:無機誘電体材料、例えば、種々の酸化物(例えば、SiO、Al、HfO)、有機誘電体材料、例えば、種々のポリマー材料(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリハロエチレン、ポリアクリレート)、および自己組織化超格子/自己組織化ナノ誘電体(SAS/SAND)材料(例えば、Yoon、M−H.ら、PNAS,102(13):4678−4682(2005)に記載;その全開示は参照により本明細書に組み入れられる)、ならびにハイブリッド有機/無機誘電体材料(例えば、米国特許出願第11/642,504号に記載されており、その全開示は参照により本明細書に組み入れられる)。いくつかの実施形態において、誘電体成分は、米国特許出願第11/315,076号、第60/816,952号および第60/861,308号(それぞれの全開示は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている架橋ポリマーブレンドを含むことができる。複合物は、1つ以上の電気接点も含むことができる。ソース、ドレインおよびゲート電極に好適な材料は、下記を含む:金属(例えば、Au、Al、Ni、Cu)、透明導電性酸化物(例えば、ITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、および導電性ポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy))。1つ以上の本明細書に記載の複合物を、種々の有機電子、光学および光電子デバイス、例えば、先に記載した有機光起電装置(OPV)および有機発光トランジスター(OLET)に組み入れることができる。
【0125】
以下の実施例は、さらに例示するために、および本教示の理解を容易にするために、示されるものであり、本発明を決して限定するものではない。
【0126】
全ての試薬は、特に記載がなければ、市販源から購入し、さらに精製せずに使用した。特に、誘電体および半導体配合物に使用されるジオキサン、ジクロロベンゼン(DCB)、クロロホルム(CHCl)および他の塩素化炭化水素(CHC)は、Sigma Aldrichから購入し、使用前に蒸留した。無水テトラヒドロフラン(THF)は、Na/ベンゾフェノンから蒸留した。特に記載のない限り、従来のシュレンク法を使用し、反応はN下で行なわれた。
【0127】
特性決定データは、場合によって、H−NMR、13C−NMR、および/または元素分析によって与えられる。NMRスペクトルは、Inova 500 NMRスペクトロメーター(H、500MHz)で記録した。元素分析は、Midwest Microlab,LLCによって行なった。ポリマー分子量は、ポリスチレン標準に対して、室温でTHF中においてWaters GPCシステム(Waters Pump 510)で測定した。
【実施例】
【0128】
実施例1 − モノマーの合成
実施例1a:4,8−ジドデシル−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
【0129】
【化25】

段階1:4,8−ジドデシニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
アルゴン雰囲気下の、冷却器を取り付けた250mLのフラスコにおける、THF(20mL)中のドデシン(17.5mL、81.7mmol)の溶液に、THF中のイソプロピルマグネシウムクロリドの2M溶液36mL(72mmol)を、室温で滴下した。滴下した後、反応混合物を50℃で95分間加熱し、室温に冷却した。4,8−ジヒドロベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジオン(3g、13.6mmol)を添加し、混合物を50℃で1時間加熱し、次に、室温に冷却した。次に、50mLの10%HCl水溶液中の20gのSnClの溶液を滴下し、次に、60℃で1時間さらに加熱した。反応後、ブライン(30mL)を添加した。有機相を分離し、真空蒸発させた。残渣をMeOH(100mL)で希釈し、濾過した。固形物をMeOHで数回洗浄した。褐色固形物をカラムクロマトグラフィー(CHCl:ヘキサン 5:6を溶離剤として使用)によって精製した。フラッシュクロマトグラフィーから収集した粗生成物を、ヘキサンから再結晶し、真空乾燥して、4.03g(57%収率)の淡黄色結晶を得た。
H NMR(CDCl,500MHz),δ=7.59(d,J=5.5Hz,2H),7.51(d,J=6.0Hz,2H),2.65(t,J=6.5Hz,4H),1.70−1.80(m,4H),1.56−1.65(m,4H),1.22−1.47(m,24H),0.90(t,J=6.5Hz,6H)。
【0130】
段階2:4,8−ジドデシルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
丸底フラスコにおけるTHF(33mL)中の4,8−ジドデシンベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(1.04g、2mmol)の溶液に、10% Pd/C(0.21g、0.2mmol)を添加した。混合物を水素雰囲気下で室温にて24時間撹拌した。濾過した後、溶媒を真空蒸発によって除去し、残渣をシリカゲルフラッシュカラム(ヘキサンを溶離剤として使用)に通して、白色固形物を得た(530g、収率50%)。
1H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.48(d,J=5.5Hz,2H),7.47(d,J=5.5Hz,2H),3.19(t,J=7.5Hz,4H),1.76−1.89(m,4H),1.42−1.53(m,4H),1.19−1.42(bs,32H),0.90(t,J=7.0Hz,6H).
段階3:4,8−ジドデシル−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
乾燥テトラヒドロフラン(16mL)中の4,8−ジドデシルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(553mg、1.05mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、0.92mL、2.31mmol)を−78℃で添加した。1時間後、トリメチルスズクロリド(488mg、2.45mmol)を1回で添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、水に注ぎ、エ−テルで3回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させた。溶媒の蒸発後に、淡黄色油状物を得、これをEtOHから再結晶して、白色固形物を得た(524mg、収率58%)。
1H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.51(s,2H),3.22(t,J=8.0Hz,4H),1.76−1.91(m,4H),1.36−1.42(m,4H),1.22−1.42(bs,32H),0.91(t,J=7.0Hz,6H),0.47(s,18 H)。
Chem.Mater.2006,18,3237も参照。
【0131】
実施例1b:4,8−ジオクチル−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
【0132】
【化26】

段階1:4,8−ジオクチルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
窒素下の100mLのフラスコに、4,8−ジヒドロベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジオン(1.1g、5.0mmol)および無水THF(10mL)を添加した。混合物を加熱還流し、オクチルマグネシウムブロミド(20mmol、10mL、EtO中2.0M)を滴下した。さらに2時間還流させた後、SnCl溶液(19mLの10%HCl中7.3g)をゆっくり滴下した。混合物を60℃で1時間維持した。冷却した後、有機相を分離した。水相をエーテルで1回抽出し、有機相を合わせ、NaSOで乾燥させた。カラムクトマトグラフィー(ヘキサンを溶離剤として使用)によって精製して、黄色油状物を得た(780mg、収率37.6%)。
1H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.48(d,J=5.5Hz,2H),7.47(d,J=5.5Hz,2H),3.20(t,J=7.5Hz,4H),1.75−1.88(m,4H),1.43−1.54(m,4H),1.21−1.42(bs,16H),0.90(t,J=7.0Hz,6H)。
【0133】
段階2:4,8−ジオクチル−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
乾燥テトラヒドロフラン(36mL)中の4,8−ジオクチルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(782mg、1.89mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、1.66mL、4.15mmol)を−78℃で添加した。1時間後、トリメチルスズクロリド(877mg、4.40mmol)を1回で添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、水に注ぎ、エーテルから3回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、淡黄色油状物を得た(1.03g、収率74%)。1週間静置した後、黄色結晶が生じ、収集した(413mg、収率29%)。
1H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.51(s,2H),3.22(t,J=8.0Hz,4H),1.76−1.89(m,4H),1.45−1.54(m,4H),1.22−1.45(bs,16H),0.90(t,J=7.0Hz,6H),0.47(s,18 H)。
【0134】
実施例1c:4,8−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
【0135】
【化27】

段階1:4,8−ビス(2−エチルヘキシル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
窒素下の100mLのフラスコに、マグネシウム(656mg、27mmol)および無水THF(10mL)を添加した。混合物を還流下で加熱し、2−エチルヘキシルブロミド(5.6mL、30mmol)を滴下した。全てのマグネシウムが消費されるまで、反応混合物を還流温度に維持した。冷却後、4,8−ジヒドロベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジオン(1.1g、5.0mmol)を1回で添加した。さらに1時間還流させた後、それを室温に再び冷却した。SnCl溶液(19mLの10%HCl中7.5g)を、ゆっくり滴下し、次に、混合物を60℃で1時間維持した。冷却後、ブライン(11mL)を添加した。有機相を分離し、NaSOで乾燥させた。真空蒸発後の残渣を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサンを溶離剤として使用)によって精製して、淡黄色油状物(910mg、収率43%)を得た。
1H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.47(d,J=6.0Hz,2H),7.45(d,J=6.0Hz,2H),3.08−3.20(m,4H),1.92−2.04(m,2H),1.13−1.49(m,16H),0.91(t,J=7.0Hz,6H),0.85(t,J=7.0Hz,6H)。
【0136】
段階2:4,8−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
乾燥テトラヒドロフラン(11mL)中の4,8−ビス(2−エチルヘキシル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(237mg、0.57mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、0.5mL、1.25mmol)を−78℃で添加した。1時間後、トリメチルスズクロリド(264mg、1.32mmol)を1回で添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、水(20mL)に注ぎ、エーテルで3回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、淡黄色油状物を得た(437mg、収率100%)。冷凍庫で2日間静置した後、淡黄色結晶が生じ、収集した(326mg、収率77%)。
1H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.51(s,2H),3.07−3.23(m,4H),1.96−2.07(m,2H),1.21−1.50(m,16H),0.94(t,J=7.0Hz,6H),0.89(t,J=7.0Hz,6H),0.46(s,18 H)。
【0137】
実施例1d:4,8−ビス(10−フェニルデシル)−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
【0138】
【化28】

段階1:10−ブロモデシルベンゼンの調製
氷水浴中の250mLのフラスコに、1,10−ジブロモデカン(46.0g、153mmol)および無水THF(100mL)を窒素下で添加した。フェニルリチウム(ジブチルエーテル中1.8M、28.5mL、51mmol)を滴下した。添加が終了した後、反応混合物を1時間撹拌し、室温に温めた。48時間後、それをHO(200mL)でクエンチし、CHCl(200mL×2)で抽出し、乾燥させた。濃縮した後、残渣を130℃/0.07mmHgで蒸留して、無色油状物を得た(9.35g、収率61.7%)。
H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.27−7.32(m,2H),7.20(d,J=6.5Hz,3H),3.43(t,J=7.0Hz,2H),2.62(t,J=8.0Hz,2H),1.84−1.96(m,2H),1.60−1.68(m,2H),1.41−1.52(m,2H),1.24−1.41(m,10H)。
【0139】
段階2:4,8−ビス(10−フェニルデシル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
窒素下の100mLのフラスコに、マグネシウム(486mg、20mmol)および無水THF(10mL)を添加した。混合物を還流下で加熱し、10−ブロモデシルベンゼン(5.95g、20mmol)を滴下した。全てのマグネシウムが消費されるまで、反応混合物を還流温度のもとで維持した。次に、無水THF(10mL)に懸濁した4,8−ジヒドロベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジオン(1.1g、5.0mmol)を滴下した。さらに3時間還流させた後、それを室温に冷却した。SnCl溶液(19mLの10%HCl中7.5g)をゆっくり滴下し、次に、混合物を60℃で一晩維持した。冷却した後、ブライン(25mL)を添加した。有機相を分離し、NaSOで乾燥させた。真空蒸発後の残渣を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt 50:1を溶離剤として使用)によって精製して、淡黄色油状物(466mg、収率15%)を得、これは数日間の静置後に固形物になった。
H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.48(d,J=6.0Hz,2H),7.46(d,J=5.0Hz,2H),7.27−7.32(m,4H),7.19(d,J=7.0Hz,6H),3.19(t,J=8.0Hz,4H),2.61(t,J=7.5Hz,4H),1.75−1.86(m,4H),1.58−1.67(m,4H),1.42−1.51(m,4H),1.15−1.41(m,20H)。
【0140】
段階3:4,8−ビス(10−フェニルデシル)−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
無水テトラヒドロフラン(15mL)中の4,8−ビス(10−フェニルデシル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(466mg、0.75mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、0.66mL、1.65mmol)を−78℃で添加した。1時間後、トリメチルスズクロリド(349mg、1.75mmol)を1回で添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、水(25mL)に注ぎ、エーテルで3回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後に、淡黄色油状物を得た(500mg、収率70%)。
H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.49(s,2H),7.27−7.32(m,4H),7.17(d,J=7.5Hz,6H),3.19(t,J=7.5Hz,4H),2.59(t,J=8.0Hz,4H),1.75−1.84(m,4H),1.56−1.66(m,4H),1.42−1.50(m,4H),1.17−1.41(m,20H),0.45(s,18H)。
【0141】
実施例1e:4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシルチオフェン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの調製
【0142】
【化29】

段階1:4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの調製
150mLのHBr(48%)中のベンゾチアジアゾール(10g、73.44mmol)の溶液に、100mLのHBr(48%)中のBr(35.21g、220.32mmol)の溶液を極めてゆっくり滴下した。6時間還流した後、オレンジ色固形物が沈殿した。混合物を室温に冷まし、NaHSOの飽和溶液を添加して、残留量のBrを中和した。混合物を濾過し、水で徹底的に洗浄した。次に、固形物を冷たいジエチルエーテルで1回洗浄し、フラッシュクロマトグラフィー(CHClを溶離剤として使用)によって精製して、淡黄色固形物を得た(18.4g、収率85%)。
H NMR(CDCl,500MHz),δ=7.73(s,2H)。
【0143】
段階2:4,7−ビス(4−ドデシルチオフェン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの調製
窒素下の100mLの丸底フラスコに、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(1.18g、4.0mmol)、2−トリメチルスタニル−4−ドデシルチオフェン(4.03g、9.7mmol、Macromolecules 2002,35,6883に従って調製)、Pd(dba)(146.5mg、0.16mmol)、トリ(2−フリル)ホスフィン(148.6mg、0.64mmol)および無水THF(30mL)を添加した。混合物を還流下で20時間加熱し、冷ました。溶媒をロータリーエバポレーターによって除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(CHCl:ヘキサン 1:3を溶離剤として使用)によって精製して、オレンジ色固形物を得た(2.0g、収率78%)。
H NMR(CDCl,500MHz),δ=8.00(s,2H),7.85(s,2H),7.06(s,2H),2.71(t,J=7.5Hz,4H),1.68−1.76(m,4H),1.19−1.47(m,36H),0.90(t,J=6.8Hz,6H)。
【0144】
段階3:4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシルチオフェン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの調製
窒素下の、アルミ箔で包んだ50mLの丸底フラスコに、4,7−ビス(4−ドデシルチオフェン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(637mg、1.0mmol)、NBS(392mg、2.2mmol)およびCHCl(13mL)を添加した。混合物を一晩撹拌し、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した。残渣を、カラムクロマトグラフィー(CHCl:ヘキサン 1:50を溶離剤として使用)によって精製して、赤色固形物を得た(520mg、収率65%)。
H NMR(CDCl,500MHz),δ=7.78(s,2H),7.76(s,2H),2.65(t,J=7.8Hz,4H),1.64−1.72(m,4H),1.21−1.47(m,36H),0.89(t,J=6.8Hz,6H).
実施例1f:4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの調製
【0145】
【化30】

基本要素である4,7−ビス(4−ドデシル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを、文献手順に従って調製し、クロロホルム(60mL)に溶解させた。酢酸(20mL)およびN−ブロモスクシンイミド(0.746g、4.19mmol)を添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。水(150mL)を添加し、混合物をクロロホルムで抽出した。有機層を分離し、NaHCOの飽和水溶液、次に水で洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサンの1:4混合物を溶離剤として使用)によって精製した。4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの収量は、1.46g(88%)であった。
H NMR(CDCl,500MHz) δ:7.77(s,2H),7.76(s,2H),2.64(t,J=7.8,4H),1.67(m,4H),1.40−1.25(m,36H),0.86(t,J=7.5,6H).
実施例1g:4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
【0146】
【化31】

ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−4,8−ジオン(1.0g、4.54mmol)およびZn粉末(0.659g、10.1mmol)を、エタノール(10mL)に懸濁させた。水(15mL)中のNaOH(3g)の溶液を添加した。得られた混合物を1時間にわたって加熱還流し、次に、2−ヘキシルデシル(4−メチルベンゼンスルホネート)(3.86g、9.73mmol)を添加した。反応物を一晩にわたって加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(50mL)を添加した。反応物をエーテルで抽出し、次に、有機層を分離し、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン中の10%ジクロロメタンを溶離剤として使用)によって精製した。4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの収量は、0.80g(26%)であった。
H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.47(d,J=2.75,2H),7.36(d,J=2.75,2H),4.16(m,4H),1.86(m,2H),1.38−1.65(m,48H),0.86(m,12H).
実施例1h:4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−2,6−ビス(1,1,1−トリメチルスタナニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの調製
【0147】
【化32】

4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(0.80g、1.19mmol)を、窒素下で、乾燥THF(10mL)に溶解させた。溶液を−70℃に冷却し、ブチルリチウム(1.0mL、ヘキサン中の2.M溶液、2.5mmol)を滴下した。反応物を2時間にわたって室温に温め、−78℃に再び冷却した。トリメチルスズクロリド(0.61g、3.0mmol)を添加した。反応物を室温に温め、窒素下で一晩撹拌した。水(50mL)を添加し、反応物をエーテルで抽出した。有機層を分離し、NaSOで乾燥させた。溶媒を真空下で除去した。残渣にエタノール(10mL)を添加し、懸濁液を一晩撹拌した。得られた白色固形物を濾過によって収集し、真空乾燥して、生成物4,8−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシ]−2,6−ビス(1,1,1−トリメチル−スタナニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンを得た(0.58g、49%)。
H NMR(CDCl,500MHz) δ=7.52(m,2H),4.17(d,J=5.0Hz,4H),1.86(m,2H),1.67(m,4H),1.28−1.55(m,44H),0.86(m,12H),0.55(m,18H)。
【0148】
実施例2 − ポリマー合成
実施例2a:ポリ[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(3−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(4−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)}−コ−[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(2,5−チオフェンジイル)}](x=0.77;y=0.23)の調製
【0149】
【化33】

基本要素である4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールは、文献手順(Mouleら、Chem.Mater.,2008,20:4045−4050)に従って調製した。シュレンクフラスコに、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(46.23mg、0.101mmol)、4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−2,6−ビス(1,1,1−トリメチル−スタナニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(141.65mg、0.135mmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(24.6mg、0.0309mmol)、Pddba(4.93mg、0.00538mmol)およびP(o−tol)(13.10mg、0.431mmol)を添加した。フラスコの脱気および窒素再充填を3回行なった。乾燥クロロベンゼン(20mL)を注入し、反応物を130℃に18時間加熱した。反応物を室温に冷却し、フラスコの内容物をメタノール(100mL)に注いだ。沈殿物を濾過によって収集し、固形物を、アセトンで1時間、ジクロロメタンで3時間、およびクロロホルムで3時間抽出した。最後に、ポリマーをクロロベンゼンで抽出した。クロロホルム溶液をメタノールに注ぎ、沈殿物を再び濾過によって収集し、真空乾燥して、標記ポリマーを得た(40mg)。
【0150】
実施例2b:ポリ[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(3−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(4−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)}−コ−[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(2,5−チオフェンジイル)}](x=0.71;y=0.29)の調製
シュレンクフラスコに、4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−2,6−ビス(1,1,1−トリメチル−スタナニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(129.74mg、0.123mmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(39.53mg、0.0863mmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(27.43mg、0.345mmol)、Pddba(4.513mg、0.000493mmol)、およびP(o−tol)(12.00mg、0.394mmol)を添加した。フラスコの脱気および窒素再充填を3回行なった。乾燥クロロベンゼン(20mL)を注入し、反応物を130℃に18時間加熱した。反応物を室温に冷却し、フラスコの内容物をメタノール(200mL)に注いだ。沈殿物を濾過によって収集し、固形物を、酢酸エチルで5時間、およびTHFで5時間抽出した。最後に、ポリマーをクロロベンゼンで抽出した。クロロホルム溶液をメタノールに注ぎ、沈殿物を再び濾過によって収集し、真空乾燥して、標記ポリマーを得た(64mg、49%収率)。
【0151】
実施例2c:ポリ[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(3−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(4−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)}−コ−[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(2,5−チオフェンジイル)}](x=0.62;y=0.38)の調製
シュレンクフラスコに、4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−2,6−ビス(1,1,1−トリメチル−スタナニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(117.27mg、0.111mmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(30.62mg、0.0668mmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(33.64mg、0.0423mmol)、Pddba(4.08mg、0.0045mmol)、およびP(o−tol)(10.85mg、0.0356mmol)を添加した。フラスコの脱気および窒素再充填を3回行なった。乾燥クロロベンゼン(20mL)を注入し、反応物を130℃に18時間加熱した。反応物を室温に冷却し、フラスコの内容物をメタノール(100mL)に注いだ。沈殿物を濾過によって収集し、固形物を、メタノールで8時間、酢酸エチルで5時間、次に、ジクロロメタンで15時間抽出した。最後に、ポリマーをクロロホルムに抽出した。クロロホルム溶液をメタノールに注ぎ、沈殿物を再び濾過によって収集し、真空乾燥して、標記ポリマーを得た(88mg、72%収率)。
【0152】
実施例2d:ポリ[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(3−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(4−ドデシル−2,5−チオフェンジイル)}−コ−[{2,6−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)(2,5−チオフェンジイル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル(2,5−チオフェンジイル)}](x=0.5;y=0.5)の調製
シュレンクフラスコに、4,8−ビス[(2−ヘキシルデシル)オキシ]−2,6−ビス(1,1,1−トリメチル−スタナニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(600mg、0.60mmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(137.9mg、0.301mmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(229.60mg、0.289mmol)、Pddba(22.05mg、0.024 mmol)、およびP(o−tol)(58.63mg、0.193mmol)を添加した。フラスコの脱気およびアルゴン再充填を3回行なった。乾燥クロロベンゼン(90mL)を注入し、反応物を130℃に18時間加熱した。反応物を室温に冷却し、フラスコの内容物をメタノール(200mL)に注いだ。沈殿物を濾過によって収集し、固形物を、メタノールで5時間、酢酸エチルで5時間、ヘキサンで15時間、次に、ジクロロメタンで5時間抽出した。最後に、ポリマーをクロロホルムに抽出した。クロロホルム溶液をメタノールに注ぎ、沈殿物を再び濾過によって収集し、真空乾燥して、標記ポリマーを得た(511mg、75%収率)。
【0153】
実施例3 − ポリマーの特性決定
実施例3a:光学的特性
実施例2のポリマーの光吸収測定を、ポリマーのクロロホルム溶液上でCary UV−visスペクトロメーターを使用して行なった。吸収のオンセットを、ポリマーバンドギャップを推定するために使用する。
【0154】
実施例3b:電子的特性
実施例2のポリマーのサイクリックボルタンメトリー測定を、BAS−CV−50Wボルタンメトリーアナライザーを使用して、アセトニトリル中の0.1M テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを支持電解質として、窒素雰囲気下で行なった。白金円盤作用電極、白金ワイヤーカウンター電極および銀ワイヤー基準電極を使用し、Fc/Fcを、全ての測定値の基準として使用した。走査速度は50mV/Sであった。ポリマーフィルムを、0.2%(w/w)トルエン溶液からのドロップキャスティングによって作製した。指示電解質溶液は、全てのCV測定の前に、Nで充分にパージした。
【0155】
サイクリックボルタンモグラムからのデータを使用して、実施例2の代表的コポリマーのHOMOを、等式−4.44−1.06=−5.50から算出し;LUMOを等式−4.44+1.07=−3.37から算出した。
【0156】
実施例4 − デバイス製造
実施例4a:薄膜トランジスターの製造および測定
ポリマーの電荷担体移動度を、有機電界効果トランジスターを使用して測定した。ボトム−ゲート型TFTをSi/SiO基板上に製造し、該基板の表面は半導体蒸着の前にOTSの単分子層で改質した。半導体を、新鮮ポリマー溶液(10mg/mLジクロロベンゼン容量)から、これらの基板上にスピンし、フィルムを一晩にわたって真空乾燥させた。Auトップコンタクト(30nm)を、約1×10−6トルの真空において、金属ステンシルを介して、これらのフィルムに熱蒸着させて、デバイスを完成した。デバイスのチャンネル寸法は、約25μm(長さ)および約500μm(幅)である。誘電体のキャパシタンスは10nF/cmである。デバイスを、空気中および電気的遮断環境(Signatone暗箱)において、特性決定した。3つのSignatoneプローブを使用して電極にアクセスし、Keithley 4200半導体特性決定(遠隔前置増幅器をそれぞれ取り付けた3つの独立SMU)のために、信号をプローブ先端のごく近くから3軸遮蔽した。FETメトリクス(移動度、しきい値電圧、およびオン/オフ比)を、標準トランジスター方程式に従って、トランスファーおよびアウトプットプロットから抽出した。
【0157】
図2は、実施例2のポリマーを活性層として使用したボトムゲート型TFTの代表的トランスファープロットを示している。抽出された正孔移動度は約8.2×10−3cm/Vsであり、電流オン/オフ比は約1.5×10である。
【0158】
実施例4b:光電池の製造および測定
実施例2に記載したコポリマーを組み込んだ光起電性デバイスを製造し、特性決定した。薄い(約100nm)および厚い(約250nm)活性層の両方を有するデバイスを構築した。デバイス製造の前に、パターン化ITO被覆ガラス基板を、洗浄剤、脱イオン水、アセトンおよびイソプロピルアルコール中での順次超音波処理に続き、40分間のUV−オゾン処理によって清浄にした。約40nmの厚さのPEDOT:PSS層を、水溶液(HC Stark,Baytron AI 4083)から、ITO被覆ガラス基板にスピンコーティングし、次に、空気中において150℃で30分間焼き付けした。1,2−ジクロロベンゼン中のポリマー/フラーレン混合物溶液を、下記の比率で調製した:ポリマー:C60PCBM 12:24mg/mL、およびポリマー:C70PCBM 12:18mg/mL。次に、混合物溶液を、グローブボックスにおいて、120℃で少なくとも1時間撹拌し、約60℃に冷却した後、PEDOT:PSS層上へスピンコーティングした。デバイス製造を完了するために、約0.6nmの厚さを有する弗化リチウム(LiF)の層、および約100nmの厚さのアルミニウム層を、約10−6トルの真空下で、連続的に熱蒸着させた。デバイスの活性面積は約0.093cmであった。次に、デバイスを、グローブボックス中で、EPO−TEK OG112−6 UV硬化性エポキシ(Epoxy Technology)を使用してカバーガラスでカプセル化した。
【0159】
カプセル化デバイスの光起電力特性を、空気中で試験した。電流密度−電圧((J−V)曲線は、Keithley 2400ソース−メジャーユニットを使用して得た。光電流は、エアマス1.5グローバルフィルターを有するキセノンランプに基づくソーラーシミュレーター(Newport 91160A 300W Class−A Solar Simulator、2インチ×2インチ 均一ビーム)を使用して、シミュレートAM1.5G照射(100mWcm−2)下で測定した。光強度は、カラーフィルターを有するNREL校正シリコンフォトダイオードを使用して設定した。外部量子効率は、Newport QEセットアップを使用して測定した。モノクロメーター(Newport,Cornerstone 260)を通過するキセノンランプ(300W)からの入射光は、セルの活性領域に焦点を合わせた。出力電流は、電流前置増幅器(Newport,70710QE)およびロックイン増幅器(Newport,70105 dual channel Merlin)を使用して測定した。校正シリコンダイオード(Newport 70356)を、基準として使用した。
【0160】
典型的JV特性を、図3に示す。デバイス効率は、図4に示されているEQEスペクトルを使用して、ソーラーシミュレーターとAM1.5Gとのミスマッチに関して、補正した。デバイス特性の摘要を下記の表2に示す。
【0161】
【表2】

比較例
比較例1:ポリ[{2,6−(4,8−ジオクチルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)}−alt−{5,5−(4,7−ビス(4’−ドデシルチエン−2’−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール)}](SL15)の調製
【0162】
【化34】

100mLの保存容器に、4,8−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−ビス−トリメチルスタニルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(55.5mg、75μmol)、4,7−ビス(5−ブロモ−4−ドデシルチオフェン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(59.6mg、75μmol)、Pd(dba)(2.7mg、4mol%)およびトリ(o−トリル)ホスフィン(3.7mg、16mol%)を添加し、無水クロロベンゼン(10mL)中でアルゴン下にて混合し、133℃で72時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物をMeOH(50mL)に注ぎ、濾過し、真空乾燥して、黒色固形物を得た(78.5mg、粗収率100%)。元素分析:計算値:C 73.37、H 8.66、N 2.67;実測値:C 72.25、H 8.09、N 2.97。
【0163】
比較例2:SL15を基材とするOPVデバイスの製造
SL15およびバッキーボール化合物、例えばPCBMを組み込んだ光起電性デバイスを製造した。デバイス製造の前に、パターン化ITO被覆ガラス基板を、洗浄剤、脱イオン水、アセトン、イソプロピルアルコール中での順次超音波処理、および15分間のUV−オゾン処理によって清浄にした。約40nmの厚さのPEDOT:PSS層を、水溶液から、ITO被覆ガラス基板にスピンコーティングし、次に、空気中において150℃で30分間焼き付けした。塩素化溶媒(例えばクロロホルム)中のポリマー/PCBM混合物溶液を、5:10mg/mLの濃度で調製した。次に、溶液をグローブボックス中において40℃で約2時間撹拌し、PEDOT:PSS層上にスピンコーティングした。活性層の厚さは、約100〜300nmであった。デバイス製造を完了するために、弗化リチウム(LiF)の薄層、および100nmの厚さのアルミニウムを、約10−6トルの真空下で、連続的に熱蒸着させた。デバイスの活性面積は約0.088cmであった。次に、デバイスを、グローブボックス中で、UV硬化性エポキシを使用してカバーガラスでカプセル化した。
【0164】
SL15を使用したそのようなデバイスは、本教示によるポリマー、即ち、式I、II、III、IVおよびVのポリマーを基材とするデバイスよりかなり劣った性能を示す。具体的には、SL15を使用したデバイスは、約2.2%の平均電力変換効率、および約43%の曲線因子を示し、これらの両方は、本教示によるポリマーに関して実施例4bに記載した数値より有意に低い。
【0165】
本教示は、その趣旨または本質的特性から逸脱せずに、他の特定形態の実施形態を包含する。従って、前記の実施形態は、あらゆる局面において、本明細書に記載されている本教示を限定するものではなく、例示するものとみなすべきである。従って、本発明の範囲は、前記の説明によるのではなく付随の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と同等の意味および範囲に含まれる全ての変更は、本発明の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子、光学または光電子デバイスであって、該デバイスは、
第一電極、
第二電極、および
該第一電極と該第二電極の間に配置された半導体成分
を含んで成り、
該半導体成分は下記の式
【化35】

を有するコポリマーを含んで成る、デバイス
[式中、
各Mは、1〜6個のヘテロ原子を含む任意に置換されたベンゾ縮合ヘテロアリール部分であり、かつ、下記の式
【化36】

によって表され、ここで、Hetは、各存在において、その環中に少なくとも1個のヘテロ原子を含む単環式部分であり;
Xは、NまたCRであり;
Yは、NまたCRであり;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ、独立に、Hおよび−L−Rから選択され、ここで、
Lは、各存在において、独立に、O、Sおよび共有結合から選択され;
Rは、各存在において、独立に、C1−40アルキル基であり;
は、各存在において、独立に、C1−40アルキル基、C1−40ハロアルキル基、C1−40アルコキシ基、およびC1−40アルキルチオ基から選択され;
xおよびyは、モル分率を表す実数であり、ここで、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9であり、xおよびyの合計は約1である]。
【請求項2】
前記コポリマーが下記の式を有する、請求項1に記載のデバイス:
【化37】

[式中、M、R、R、R、R、R、xおよびyは、請求項1において定義した通りである]。
【請求項3】
Mが下記の
【化38】

から選択される、請求項1または2に記載のデバイス
[式中、RはHまたはC1−40アルキル基であり、RおよびRは請求項1において定義した通りである]。
【請求項4】
Mが下記の
【化39】

から選択される、請求項3に記載のデバイス
[式中、RおよびRはHまたはC1−40アルキル基である]。
【請求項5】
前記コポリマーが下記の式を有する、請求項1に記載のデバイス:
【化40】

[式中、RおよびRは独立にHまたはC1−40アルキル基であり、各Rは、C1−40アルキル基またはC1−40アルコキシ基であり、R、R、Z、xおよびyは請求項1において定義した通りである]。
【請求項6】
前記コポリマーが下記の式を有する、請求項2に記載のデバイス:
【化41】

[式中、RおよびRは独立にHまたはC1−40アルキル基であり、各RはC1−40アルキル基またはC1−40アルコキシ基であり、R、R、R、R、xおよびyは、請求項1において定義した通りである]。
【請求項7】
およびRが、C1−40アルキル基およびC1−40アルコキシ基から選択され;RおよびRがそれぞれHである、請求項2〜4のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
およびRがそれぞれHであり、RおよびRがC1−40アルキル基およびC1−40アルコキシ基から選択される、請求項2〜4のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項9】
前記コポリマーが下記の式を有する、請求項1に記載のデバイス:
【化42】

[式中、RはC1−40アルキル基であり、R、xおよびyは請求項1において定義した通りである]。
【請求項10】
前記コポリマーが下記の
【化43】

から選択される式を有する、請求項1または2に記載のデバイス
[式中、R、R、R、R、R、xおよびyは、請求項1において定義した通りである]。
【請求項11】
前記コポリマーが下記の
【化44】

から選択される式を有する、請求項1に記載のデバイス
[式中、R、R、xおよびyは、請求項1において定義した通りである]。
【請求項12】
Rが分岐鎖C6−20アルキル基であり、Rが直鎖C6−20アルキル基であり、xおよびyがモル分率を表す実数であり、ここで、0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦0.8であり、xおよびyの合計が約1である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
Rが分岐鎖C6−20アルキル基であり、Rが直鎖C6−20アルコキシ基であり、xおよびyがモル分率を表す実数であり、ここで、0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦0.8であり、xおよびyの合計が約1である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記コポリマーが下記の
【化45】

から選択される式を有する、請求項1に記載のデバイス
[式中、R、R、xおよびyは、請求項1において定義した通りである]。
【請求項15】
Rが分岐鎖C6−20アルキル基であり、Rが直鎖C6−20アルキル基であり、xおよびyがモル分率を表す実数であり、ここで、0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦0.8であり、xおよびyの合計が約1である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
Rが分岐鎖C6−20アルキル基であり、Rが直鎖C6−20アルコキシ基であり、xおよびyがモル分率を表す実数であり、ここで、0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦0.8であり、xおよびyの合計が約1である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記コポリマーが下記の
【化46−1】

【化46−2】

から選択される式を有する、請求項1に記載のデバイス
[式中、Rは、各存在において、独立にC6−20アルキル基であり、xおよびyはモル分率を表す実数であり、ここで、0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦0.8であり、xおよびyの合計は約1である]。
【請求項18】
0.5≦x≦0.9、0.1≦y≦0.5であり、xおよびyの合計が約1である、請求項1〜17のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項19】
前記コポリマーのxモル分率を構成する単位、および該コポリマーのyモル分率を構成する単位が、ランダムに反復されている、請求項1〜18のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項20】
前記コポリマーが10〜約10,000の重合度を有する、請求項1〜19のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項21】
アノード、カソード、および該アノードと該カソードとの間にある請求項1〜20のいずれか1つに記載の半導体成分を含んで成る有機光起電性デバイスとして構成された、請求項1〜20のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項22】
前記有機光起電性デバイスが、バルクヘテロ接合光起電性デバイスである、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記半導体成分が、光起電性であり、かつ、ブレンド材料を含んで成り、該ブレンド材料中の前記コポリマーが電子供与体として機能し、該ブレンド材料が電子受容化合物をさらに含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記電子受容化合物がフラーレン化合物である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記フラーレン化合物が、[6、6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
電力変換効率が少なくとも約4%である、請求項21〜25に記載のデバイス。
【請求項27】
基板、アノード、カソード、および該アノードと該カソードとの間にある請求項1〜20のいずれか1つに記載の半導体成分を含んで成る有機発光ダイオードとして構成された、請求項1〜20のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項28】
第三電極および誘電体成分をさらに含んで成る有機トランジスターとして構成され、前記半導体成分が第一電極および第三電極と接触し、該誘電体成分が、一方の側で該半導体成分と接触し、反対側で前記第二電極と接触している、請求項1〜20のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項29】
前記有機トランジスターが、有機薄膜トランジスターである、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記有機トランジスターが、有機発光トランジスターである、請求項28に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−527784(P2012−527784A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512074(P2012−512074)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035850
【国際公開番号】WO2010/135701
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509137560)ポリエラ コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】