説明

共振装置およびその製造方法

【課題】寄生容量による挿入損失の発生がなく、良好な共振特性を得ることが可能な共振装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】共振装置は、支持基板1と、支持基板1の一表面側に形成された共振子3とを備えたBAW共振器であり、共振子3が、支持基板1の上記一表面側において支持基板1の厚み方向に立設された柱状(円柱状)のコア電極31と、コア電極31の外周面を被覆した圧電材料部32と、圧電材料部32の外周面を被覆した外側電極33とで構成されている。ここで、共振子3は、支持基板1の厚み方向に直交する断面において、コア電極31、圧電材料部32および外側電極33それぞれの外周形状が円形状であり、コア電極31と圧電材料部32と外側電極33とが同心円状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機などの移動体通信機器の分野において、1GHz以上の高周波帯で利用する高周波フィルタに適用可能な共振装置として、図4に示すように、支持基板1’と、支持基板1’の一表面側に共振子130’が形成されたBAW(Bulk Acoustic Wave)共振器が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ここにおいて、共振子130’は、支持基板1’の上記一表面側に形成された下部電極131’と、下部電極131’における支持基板1’側とは反対側に形成された圧電層(圧電材料部)132’と、圧電層132’における下部電極131’側とは反対側に形成された上部電極133’とを有しており、共振周波数が圧電層132’の膜厚に反比例し、圧電層132’の膜厚を薄くするほど共振周波数を高くすることができる。なお、BAW共振器としては、SMR(Solidly Mounted Resonator)やFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)が知られており、例えば、UWB(Ultra Wide Band)用フィルタへの応用などが考えられている。
【0004】
ところで、図4に示した構成の共振装置は、圧電層132’における下部電極131’側とは反対側に当該圧電層132’のうち上部電極133’に接する共振領域132a’の面積を規定する開孔部4a’を有する絶縁膜4’を形成して共振領域132a’を規定している。なお、圧電層132’の圧電材料は、上記特許文献1ではAlNやZnOが採用され、上記特許文献2ではPZTが採用されている。
【特許文献1】特表2003−505905号公報(段落〔0043〕,〔0045〕および図8b)
【特許文献2】特開2000−261281号公報(段落〔0029〕−〔0034〕および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示した構成の共振装置では、上部電極133’が圧電層132’の共振領域132a’上と絶縁膜4’上とに跨って形成され、上部電極133’のうち絶縁膜4’上に形成された周囲電極部分133b’と圧電層132’との間の絶縁膜4’に起因した寄生容量が生じてしまい、当該寄生容量による挿入損失が生じ、共振特性が低下してしまう。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、寄生容量による挿入損失の発生がなく、良好な共振特性を得ることが可能な共振装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、支持基板と、支持基板の一表面側に形成された共振子とを備え、共振子は、支持基板の前記一表面側において支持基板の厚み方向に立設された柱状のコア電極と、コア電極の外周面を被覆した圧電材料部と、圧電材料部の外周面を被覆した外側電極とで構成されてなることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、共振子が、支持基板の一表面側において支持基板の厚み方向に立設された柱状のコア電極と、コア電極の外周面を被覆した圧電材料部と、圧電材料部の外周面を被覆した外側電極とで構成されているので、コア電極と外側電極との間には圧電材料部のみが介在することとなり、寄生容量による挿入損失が発生することがなく、良好な共振特性を得ることが可能となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記共振子は、前記コア電極と前記圧電材料部と前記外側電極とが前記支持基板の厚み方向に直交する断面において同心円状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、前記コア電極と前記外側電極との間に介在する前記圧電材料部の厚みが均一化され、共振モードの乱れを生じることなく、良好な共振特性を得ることが可能となる。また、この発明によれば、前記共振子は、前記支持基板の厚み方向に直交する断面において、前記コア電極、前記圧電材料部および前記外側電極それぞれの外周形状が円形状であるので、外周形状に角部が存在しないから、角部に起因する共振モードの乱れを生じることがなく、良好な共振特性を得ることが可能となる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記圧電材料部の圧電材料がKNNであることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、前記圧電材料部の圧電材料がAlNである場合に比べて電気機械結合係数を大きくでき、AlNに比べて電気機械結合係数が大きなPZTなどの鉛系圧電材料である場合に比べて環境負荷を低減することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の共振装置の製造方法であって、支持基板の一表面側の全面に圧電材料部の基礎となる圧電材料層を形成する圧電材料層形成工程と、圧電材料層をパターニングすることにより圧電材料層の一部からなる柱状の圧電材料部を形成する第1のパターニング工程と、第1のパターニング工程の後で支持基板の前記一表面側の全面にコア電極と外側電極との両方の基礎となる電極材料層を形成する電極材料層形成工程と、電極材料層形成工程の後で電極材料層の表面を圧電材料部の端面と面一になるように平坦化する平坦化工程と、平坦化工程の後で電極材料層をパターニングすることによりそれぞれ電極材料層の一部からなるコア電極および外側電極を形成する第2のパターニング工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、支持基板の一表面側の全面に圧電材料部の基礎となる圧電材料層を形成してから、圧電材料層をパターニングすることにより圧電材料層の一部からなる柱状の圧電材料部を形成するので、結晶性の良い圧電材料部を寸法精度良く形成することができ、圧電材料部を形成した後に、支持基板の前記一表面側の全面にコア電極と外側電極との両方の基礎となる電極材料層を形成してから、電極材料層の表面を圧電材料部の端面と面一になるように平坦化し、その後、電極材料層をパターニングすることによりそれぞれ電極材料層の一部からなるコア電極および外側電極を形成するので、コア電極および外側電極を圧電材料部に対して位置精度良く且つ寸法精度良く同時に形成することができ、結果的に、支持基板の前記一表面側に、支持基板の厚み方向に立設された柱状のコア電極と、コア電極の外周面を被覆した圧電材料部と、圧電材料部の外周面を被覆した外側電極とで構成される共振子を簡便に且つ大量に形成することができるから、寄生容量による挿入損失が発生することがなく良好な共振特性を得ることが可能な共振装置を低コストで提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、寄生容量による挿入損失が発生することがなく、良好な共振特性を得ることが可能となるという効果がある。
【0016】
請求項4の発明では、寄生容量による挿入損失が発生することがなく良好な共振特性を得ることが可能な共振装置を低コストで提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態の共振装置は、図1に示すように、支持基板1と、支持基板1の一表面側に形成された共振子3とを備えたBAW共振器であり、共振子3が、支持基板1の上記一表面側において支持基板1の厚み方向に立設された柱状(本実施形態では、円柱状)のコア電極31と、コア電極31の外周面を被覆した圧電材料部32と、圧電材料部32の外周面を被覆した外側電極33とで構成されている。なお、本実施形態では、コア電極31と外側電極33とが、圧電材料部32を挟む一対の電極を構成している。
【0018】
ここにおいて、本実施形態の共振装置では、圧電材料部32の圧電材料として鉛系圧電材料の一種であるPZTを採用しており、支持基板1として、シリコン酸化膜からなる絶縁膜が一表面側に形成されたシリコン基板を用いているが、支持基板1は、このようなシリコン基板に限らず、MgO基板や、STO(SrTiO)基板などを用いてもよい。ここで、本実施形態では、圧電材料部32の圧電材料として、PZTを採用しているが、PZTに限らず、共振子3に要求される共振特性などに応じて、他の鉛系圧電材料(例えば、PZT−PMTや適宜の不純物を添加したPZTなど)や、AlN、ZnOなどを採用してもよい。また、圧電材料部32の圧電材料として、鉛フリーのKNN(二オブ酸カリウムナトリウム)を採用してもよく、KNNを採用すれば、圧電材料がAlNである場合に比べて、電気機械結合係数を大きくすることができ、しかも、鉛系圧電材料を採用する場合に比べて環境負荷を低減できる。KNNの組成は、KNa1−xNbOなる化学式で表され、例えば、x=0.5とすればよいが、この値は一例であって特に限定するものではない。また、KNNについては、例えば、Li,Nb,Ta,Sb,Cuなどの不純物を添加してもよい。
【0019】
また、共振子3は、コア電極31および外側電極33の材料としてPtを採用しているが、Ptに限らず、例えば、Al,Mo,W,Ir,Cr,Ruなどを採用してもよい。
【0020】
本実施形態の共振装置では、共振子3が、支持基板1の上記一表面側において支持基板1の厚み方向に立設された柱状のコア電極31と、コア電極31の外周面を被覆した圧電材料部32と、圧電材料部32の外周面を被覆した外側電極33とで構成されているので、コア電極31と外側電極33との間には圧電材料部32のみが介在することとなり、寄生容量による挿入損失が発生することがなく、良好な共振特性を得ることが可能となる。
【0021】
ところで、共振子3は、コア電極31と圧電材料部32と外側電極33とが支持基板1の厚み方向に直交する断面において同心円状に形成されているので、コア電極31と外側電極33との間に介在する圧電材料部32の厚みが均一化され、共振モードの乱れを生じることなく、良好な共振特性を得ることが可能となる。
【0022】
ここで、共振子3は、支持基板1の厚み方向に直交する断面において、コア電極31、圧電材料部32および外側電極33それぞれの外周形状が円形状となっており、外周形状に角部が存在しないから、角部に起因する共振モードの乱れを生じることがなく、良好な共振特性を得ることが可能となる。なお、本実施形態では、コア電極31と外側電極33とがコア電極31の径方向において圧電材料部32を挟む形で配置されている。また、本実施形態の共振装置では、共振子3の共振周波数を4GHzに設定してあり、コア電極31の径方向における圧電材料部32の厚さを300nmに設定してあるが、この数値は一例であって特に限定するものではなく、また、共振周波数を3GHz〜5GHzの範囲で設計する場合には、圧電材料部32の厚さは200nm〜600nmの範囲で適宜設定すればよい。
【0023】
以下、本実施形態の共振装置の製造方法について図2を参照しながら説明する。
【0024】
まず、支持基板1の上記一表面側の全面に圧電材料部32の基礎となる圧電材料層32aを例えばスパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などにより形成する圧電材料層形成工程を行うことによって、図2(a)に示す構造を得る。
【0025】
その後、圧電材料層32aをフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることにより圧電材料層32aの一部からなる柱状の圧電材料部32を形成する第1のパターニング工程を行うことによって、図2(b)に示す構造を得る。
【0026】
次に、支持基板1の上記一表面側の全面にコア電極31と外側電極33との両方の基礎となる電極材料層30を例えばスパッタ法、蒸着法、CVD法などにより形成する電極材料層形成工程を行うことによって、図2(c)に示す構造を得る。ここにおいて、電極材料層30の厚さは、上述の圧電材料層32aの厚さよりも厚く設定されている。
【0027】
上述の電極材料層形成工程の後、電極材料層30の表面を圧電材料部32の端面と面一になるように平坦化する平坦化工程を行うことによって、図2(d)に示す構造を得る。ここにおいて、平坦化工程では、例えば、エッチバック法もしくはCMP法により、電極材料層30の表面を圧電材料部32の端面と面一になるように平坦化すればよい。
【0028】
その後、電極材料層30をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることによりそれぞれ電極材料層30の一部からなるコア電極31および外側電極33を形成する第2のパターニング工程を行うことによって、図2(e)に示す構造の共振子3を得ることができる。
【0029】
上述の共振装置の製造方法によれば、支持基板1の上記一表面側の全面に圧電材料部32の基礎となる圧電材料層32aを形成してから、圧電材料層32aをパターニングすることにより圧電材料層32aの一部からなる柱状の圧電材料部32を形成するので、結晶性の良い圧電材料部32を寸法精度良く形成することができ、圧電材料部32を形成した後に、支持基板1の上記一表面側の全面にコア電極31と外側電極33との両方の基礎となる電極材料層30を形成してから、電極材料層30の表面を圧電材料部32の端面と面一になるように平坦化し、その後、電極材料層30をパターニングすることによりそれぞれ電極材料層30の一部からなるコア電極31および外側電極33を形成するので、コア電極31および外側電極33を圧電材料部32に対して位置精度良く且つ寸法精度良く同時に形成することができ、結果的に、支持基板1の上記一表面側に、支持基板1の厚み方向に立設された柱状のコア電極31と、コア電極31の外周面を被覆した圧電材料部32と、圧電材料部32の外周面を被覆した外側電極33とで構成される共振子3を簡便に且つ大量に形成することができるから、寄生容量による挿入損失が発生することがなく良好な共振特性を得ることが可能な共振装置を低コストで提供することができる。なお、上述の製造方法によれば、半導体製造プロセスを利用して共振子3を形成することができるので、共振子3を簡便に且つ大量に形成することができ、図3に示すように共振子3を集積化することもできる。
【0030】
ところで、上述の共振装置を、3GHz以上の高周波帯においてカットオフ特性が急峻で且つ帯域幅の広いフィルタ、例えば、UWB(Ultra Wide Band)用フィルタとして応用する場合には、複数個の共振子3を支持基板1の上記一表面側に形成し、これら複数個の共振子3をラダー型フィルタを構成するように接続すれば、UWB用フィルタの低コスト化および小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態の共振装置を示し、(a)は一部破断した概略斜視図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【図2】同上の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図3】同上の他の構成例を示す概略平面図である。
【図4】従来例を示す共振装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 支持基板
3 共振子
30 電極材料層
31 コア電極
32 圧電材料部
32a 圧電材料層
33 外側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、支持基板の一表面側に形成された共振子とを備え、共振子は、支持基板の前記一表面側において支持基板の厚み方向に立設された柱状のコア電極と、コア電極の外周面を被覆した圧電材料部と、圧電材料部の外周面を被覆した外側電極とで構成されてなることを特徴とする共振装置。
【請求項2】
前記共振子は、前記コア電極と前記圧電材料部と前記外側電極とが前記支持基板の厚み方向に直交する断面において同心円状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の共振装置。
【請求項3】
前記圧電材料部の圧電材料がKNNであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の共振装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の共振装置の製造方法であって、支持基板の一表面側の全面に圧電材料部の基礎となる圧電材料層を形成する圧電材料層形成工程と、圧電材料層をパターニングすることにより圧電材料層の一部からなる柱状の圧電材料部を形成する第1のパターニング工程と、第1のパターニング工程の後で支持基板の前記一表面側の全面にコア電極と外側電極との両方の基礎となる電極材料層を形成する電極材料層形成工程と、電極材料層形成工程の後で電極材料層の表面を圧電材料部の端面と面一になるように平坦化する平坦化工程と、平坦化工程の後で電極材料層をパターニングすることによりそれぞれ電極材料層の一部からなるコア電極および外側電極を形成する第2のパターニング工程とを備えることを特徴とする共振装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−124697(P2009−124697A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273382(P2008−273382)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】