説明

内燃機関におけるシリンダヘッド

【課題】シリンダヘッド3に,その上面の動弁室4の内底面4aに開口するオイル落とし通路14と,オイルレベルゲージ18の差し込み用のオイルゲージ通路16とが形成され,吸気弁7及び排気弁8に対するバルブガイドスリーブ9,10が,前記動弁室内に突出するように設けられている内燃機関において,前記オイル落とし通路を小さくし,前記オイルレベルゲージ18による潤滑油の検出を確実にする。
【解決手段】前記オイルゲージ通路16における前記動弁室内への開口部16aを,前記動弁室4の内底面4aのうち前記オイル落とし通路が開口する部分よりも高い部位で,前記バルブガイドスリーブ9,10の上端よりも低い部位に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内燃機関において,そのシリンダブロックの上面に取付けられるシリンダヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関においては,従来から良く知られているように,シリンダブロックの上面に締結したシリンダヘッドの上面に,カム軸等を含む動弁機構を内蔵する動弁室を凹み形成し,この動弁室内において,前記動弁機構を潤滑し,この潤滑した後の潤滑油を,前記シリンダヘッドの内部に前記動弁室の内底面に開口するように設けたオイル落とし通路を通してシリンダブロック下部におけるオイルパンに戻すという構成にしている。
【0003】
この場合,前記動弁機構に対する潤滑油を,前記オイル落とし通路のみからオイルパンに戻す構成である場合,前記動弁室から燃焼室側への吸気弁及び排気弁を介してのオイル漏れを少なくするためには,前記オイル落とし通路を大きくすることによって油面の高さを低くするようにしなければならず,これでは,例えばシリンダヘッドの横幅寸法が増大するといったシリンダヘッド及びシリンダブロックの大型化とか,或いは,冷却水ジャケットの縮小等を招来することになる。
【0004】
そこで,先行技術としての特許文献1は,内燃機関におけるシリンダブロック及びシリンダヘッドには,前記オイル落とし通路とは別に,オイルレベルゲージを差し込むためのオイルゲージ通路がオイルパンに達するように形成されていることに着目し,前記動弁内における潤滑油を,前記オイル落とし通路と,前記オイルゲージ通路との両方からオイルパンに戻すという構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−209736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし,前記特許文献1に記載の構成である場合,オイルパンへのオイル落とし通路を,動弁室内における油面を高くすることなく,小さくできる利点を有するが,その反面,前記動弁室内における潤滑油の一部が,常時,オイルゲージ通路へも流れて,これに差し込まれているオイルレベルゲージの表面及びオイルゲージ通路の内面は,常に,潤滑油にて濡れている状態になるから,前記オイルレベルゲージによる潤滑油量の検出不能になる頻度が高いという問題があった。
【0007】
本発明は,これらの問題を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「内燃機関におけるシリンダヘッドに,その上面に凹み形成した動弁室における内底面に開口するオイル落とし通路と,オイルレベルゲージを差し込み挿入するオイルゲージ通路とが形成されているとともに,吸気弁及び排気弁に対するバルブガイドスリーブが,前記動弁室内に突出するように設けられているものにおいて,
前記オイルゲージ通路の上端を前記動弁室内に開口し,このオイルゲージ通路における前記動弁室内への開口部を,前記動弁室の内底面のうち前記オイル落とし通路が開口する部分よりも高い部位で,前記バルブガイドスリーブの上端よりも低い部位に位置する。」ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この構成によると,前記動弁室内における潤滑油は,常時の状態ではオイル落とし通路からオイルパンに戻されているが,動弁室内における潤滑油が過剰に多くなって,その内底面に溜まるようになった場合,その油面高さが,前記動弁室における内底面から前記オイルゲージ通路における開口部間での高さを越えた場合に限り,前記オイルゲージ通路からもオイルパンに戻されることになる。
【0010】
つまり,内燃機関の高速運転時等のように,前記動弁室内における潤滑油が過剰に多くなる状態においては,前記オイル落とし通路からオイルパンに戻る潤滑油を,前記動弁室内における油面が高くなる分だけ多くすることができる一方,前記潤滑油が前記オイルゲージ通路に流入することを,前記オイル落とし通路を大きくすることなく,潤滑油が過剰に多くなる場合のみに限るように,少なくすることができるから,シリンダヘッドの大型化及び冷却水ジャケットの縮小等を招来することを回避できる一方,オイルレベルゲージによる潤滑油量の検出不能を招来する頻度を大幅に低減できる。
【0011】
その一方において,前記動弁室に過剰に溜まる潤滑油の油面は,前記オイルゲージ通路における動弁室への開口部がバルブガイドスリーブの上端よりも低いことにより,前記動弁室に溜まる潤滑油の油面が,前記動弁室の内底面から突出するバルブガイドスリーブの上端を越えて高くなることはないから,潤滑油の前記バルブガイドスリーブを介しての燃焼室への漏れが,その油面が高くなることによって増大するのを確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態の内燃機関の部分的平面図である。
【図2】図1のII−II視断面図である。
【図3】図1のIII −III 視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図3の図面について説明する。
【0014】
これらの図において,符号1は内燃機関を示す。
【0015】
この内燃機関1は,下部に図示しないオイルパンを備えたシリンダブロック2と,その上面に配設したシリンダヘッド3と,このシリンダヘッド3の上面に凹み形成した動弁室4を塞ぐようにしたヘッドカバー5とを備えており,前記シリンダヘッド3は,前記シリンダブロック2に対して各気筒における左右両側のうち各気筒間の部位に配設した複数本のヘッドボルト6によって締結されている。
【0016】
前記シリンダヘッド3には,吸気弁7と排気弁8とが各気筒ごとに設けられており,これら吸気弁7及び排気弁8は,前記動弁室4の内底面4aのうち後述するオイル落とし通路14が開口する部分から適宜寸法H1だけ動弁室4内に突出するように設けたバルブガイドスリーブ9,10にて支持ガイドされており,これらバルブガイドスリーブ9,10の上端の各々には,バルブステムオイルシール11が設けられている。
【0017】
前記吸気弁7及び排気弁8は,従来から良く知られているように,前記動弁室4内に軸支した吸気弁用カム軸12及び排気弁用カム軸13の回転によって開閉作動するように構成されている。
【0018】
また,前記両カム軸12,13等の動弁機構には,前記オイルパン内における潤滑油が潤滑油ポンプ(図示せず)にて供給されることにより潤滑され,この潤滑後の潤滑油は,前記動弁室4の内底面4aに溜まるように構成されており,更に,前記潤滑油ポンプは,内燃機関によって駆動されることにより,当該潤滑油ポンプによる前記動弁機構等に対する潤滑油の供給は,内燃機関における回転数に比例して増大するようになっている。
【0019】
前記シリンダヘッド3のうち少なくとも一本のヘッドボルト6より外側の部位には,上下方向に延びるオイル落とし通路14が,前記動弁室4における内底面4aに開口するように形成されており,このオイル落とし通路14の下部は,前記シリンダブロック2の内部に形成した通路15を介して下部のオイルパンに連通している。
【0020】
前記シリンダヘッド3のうち少なくとも一本のヘッドボルト6より外側の部位には,上下方向に延びるオイルゲージ通路16が,前記動弁室4内に開口するように形成されており,このオイルゲージ通路16の下端は,前記シリンダブロック2に形成した通路17を介して前記オイルパンに連通している。
【0021】
前記オイルゲージ通路16内には,前記ヘッドカバー5を着脱可能に貫通するオイルレベルゲージ18が,その下端が前記オイルパン内にまで届くように着脱可能に差し込まれて,このオイルレベルゲージ18を抜き差しすることによって,前記オイルパン内における潤滑油の油量を検出するように構成している。
【0022】
そして,前記オイルゲージ通路16における前記動弁室4内への開口部16aを,図3に示すように,前記動弁室4における内底面4aのうち前記オイル落とし通路14が開口する部分から適宜寸法H2だけ高い部位で,且つ,前記バルブガイドスリーブ9,10における上端よりも適宜寸法だけ低い部位に位置するように構成している。
【0023】
この構成によると,前記動弁室4内における潤滑油は,常時の状態ではオイル落とし通路14からオイルパンに戻されているが,動弁室4内における潤滑油が過剰に多くなって,その内底面4aに溜まるようになった場合,その油面高さが,前記動弁室4における内底面4aから前記オイルゲージ通路16における開口部16aまでの高さH2を越えた場合に限り,前記オイルゲージ通路16からもオイルパンに戻されることになる。
【0024】
つまり,前記内燃機関1の高速運転時等のように,前記動弁室4内における潤滑油が過剰に多くなる状態においては,前記オイル落とし通路14からオイルパンに戻る潤滑油を,前記動弁室4内における油面が高くなる分だけ多くすることができる一方,前記潤滑油が前記オイルゲージ通路16に流入することを,前記オイル落とし通路14を大きくすることなく,潤滑油が過剰に多くなる場合のみに限るように,少なくすることができる。
【0025】
その一方において,前記動弁室4に過剰に溜まる潤滑油の油面は,前記オイルゲージ通路16における前記動弁室14への開口部16aがバルブガイドスリーブ9,10の上端よりも低いことにより,前記動弁室4に溜まる潤滑油の油面が,前記動弁室4の内底面4aから突出するバルブガイドスリーブ9,10の上端を越えて高くなることはない。
【符号の説明】
【0026】
1 内燃機関
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 動弁室
4a 動弁室の内底面
5 ヘッドカバー
7 吸気弁
8 排気弁
9,10 バルブガイドスリーブ
11 バルブステムオイルシール
12,13 カム軸
14 オイル落とし通路
16 オイルゲージ通路
16a オイルゲージ通路の開口部
18 オイルレベルゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関におけるシリンダヘッドに,その上面に凹み形成した動弁室における内底面に開口するオイル落とし通路と,オイルレベルゲージを差し込み挿入するオイルゲージ通路とが形成されているとともに,吸気弁及び排気弁に対するバルブガイドスリーブが,前記動弁室内に突出するように設けられているものにおいて,
前記オイルゲージ通路の上端を前記動弁室内に開口し,このオイルゲージ通路における前記動弁室内への開口部を,前記動弁室の内底面のうち前記オイル落とし通路が開口する部分よりも高い部位で,前記バルブガイドスリーブの上端よりも低い部位に位置することを特徴とする内燃機関におけるシリンダヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−7104(P2011−7104A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151001(P2009−151001)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】