説明

内燃機関のアイドル回転速度制御装置

【課題】車両減速時に内燃機関のアイドル回転速度を安定的に低下させ、不安定な変動を防止すること。
【解決手段】エンジン1のアイドル回転速度制御装置は、自動車に搭載されたエンジン1のアイドル運転時に、エンジン1のアイドル回転速度を目標アイドル回転速度に一致させるために吸気通路2に設けられた電子スロットル装置21をエンジン1の運転状態に応じて制御する電子制御装置(ECU)60を備える。エンジン1は、その動力がトルクコンバータ11、自動変速機12及びプロペラシャフト13等を介して駆動輪14に伝達される。トルクコンバータ11には、そのタービンランナ11bの回転速度を検出するタービン回転速度センサ56が設けられる。ECU60は、自動車の減速時には、検出されるタービンの回転速度の変化量に基づいて電子スロットル装置21の制御を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のアイドル運転時にアイドル回転速度を目標アイドル回転速度に制御するようにした内燃機関のアイドル回転速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の関連技術として、例えば、下記の特許文献1〜3に記載される技術が知られている。特に、特許文献1に記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置は、エンジンのアイドル運転時に、アイドル回転速度の変化量が基準値よりも大きい場合には、吸気通路に設けられる電子スロットル装置を制御する。これにより、吸入空気量を増量補正するようになっている。一方、この装置は、アイドル回転速度の変化量が基準値以下となる場合には、電子スロットル装置をフィードバック制御する。これにより、エンジンが大きな負荷変動を受けてアイドル回転速度が急変したときに、アイドル回転速度を目標アイドル回転速度へと速やかに復帰させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−9784号公報
【特許文献2】特開2009−121302号公報
【特許文献3】特開平10−47124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の装置では、アイドル回転速度の変化量に基づいてアイドル回転速度を制御しているので、エンジンの急減速運転時には、エンジンの回転速度が低下してから上記のようにアイドル回転速度を制御することとなり、制御の応答性が良くなかった。
【0005】
また、車両に搭載されたエンジンにつき、エンジンをトルクコンバータを介してトランスミッションへ駆動連結する構成が考えられる。この場合、車両が走行状態から減速して停止するときには、トルクコンバータにおいて、トランスミッション側(ポンプインペラ)が停止するので、それに引きずられてタービンライナ(エンジン側)の回転低下が起き、アイドル運転状態のエンジンに急激な回転低下が起きるおそれがあった。この結果、車両に振動が発生したり、エンジンストールが発生したりする懸念があった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の減速時に内燃機関のアイドル回転速度を安定的に低下させ、不安定な変動を防止することを可能とした内燃機関のアイドル回転速度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載された内燃機関のアイドル運転時に、内燃機関のアイドル回転速度を目標アイドル回転速度に一致させるために内燃機関の吸気量調整手段を内燃機関の運転状態に応じて制御する制御手段を備えた内燃機関のアイドル回転速度制御装置であって、内燃機関は、その動力が少なくともトルクコンバータ及び自動変速機を介して駆動輪に伝達されるように構成されることと、トルクコンバータを構成するタービンの回転速度を検出するためのタービン回転速度検出手段と、車両の減速時に、少なくとも検出されるタービンの回転速度の変化量に基づいて制御手段による吸気量調整手段の制御を補正する制御補正手段とを備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、車両に搭載された内燃機関の動力は、少なくともトルクコンバータ及び自動変速機を介して駆動輪に伝達される。ここで、内燃機関のアイドル運転時に、アイドル回転速度を目標アイドル回転速度に一致させるために吸気量調整手段が内燃機関の運転状態に応じて制御手段により制御する。また、車両の減速時に、少なくとも検出されるタービンの回転速度の変化量に基づいて制御手段による吸気量調整手段の制御が、制御補正手段により補正される。このとき、車両の減速時であって内燃機関のアイドル運転時には、内燃機関の回転がトルクコンバータのタービンの回転低下に引きずられようとすることがある。このような場合には、少なくともタービンの回転速度の変化量に基づいて吸気量調整手段の制御が早めに補正されることとなる。従って、タービンの回転速度が低下してしまう前にアイドル回転速度の変動が押さえられる。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御補正手段は、減速時の条件に加え、内燃機関が完全暖機状態であるときに、制御手段による吸気量調整手段の制御を補正することを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、内燃機関が完全暖機状態であるときに制御手段による制御が制御補正手段により補正されるので、その補正時には内燃機関の燃焼が安定化する。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、制御補正手段は、車両の走行速度に基づいて制御手段による吸気量調整手段の制御を更に補正することを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、車両の走行速度に基づいて制御手段による制御が制御補正手段により更に補正されるので、車両の減速時には、車両の走行速度の低下に伴って吸気量調整手段の制御が補正されることとなる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、車両の減速時に内燃機関のアイドル回転速度を安定的に低下させ、アイドル回転速度の不安定な変動を防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、吸気量調整手段の制御に対する、タービンの回転速度の変化量に基づく補正を、内燃機関の回転が安定しているときに行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、車両の走行速度の低下に応じて吸気量調整手段の制御の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係り、自動車に搭載されたエンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】本実施形態に係り、アイドル回転速度制御流量を算出するための処理内容を示すフローチャート。
【図3】本実施形態に係り、自動車減速時における回転低下補正流量を算出するための処理内容を示すフローチャート。
【図4】同実施形態に係り、タービン回転速度の変化量に対する回転低下補正流量の関係を示すマップ。
【図5】本実施形態に係り、アイドル回転速度制御の処理内容を示すフローチャート。
【図6】従来例に係り、自動車減速時における各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
【図7】本実施形態に係り、自動車緩減速時における各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
【図8】本実施形態に係り、自動車急減速時における各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における内燃機関のアイドル回転速度制御装置を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に、内燃機関のアイドル回転速度制御装置を含み、車両(自動車)に搭載されたエンジンシステムを概略構成図により示す。周知の構造を有する多気筒の内燃機関(エンジン)1は、吸気通路2を通じて供給される燃料と空気との可燃混合気を、各気筒の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気を排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を動作させてクランクシャフト4を回転させ、動力を得るようになっている。この実施形態で、クランクシャフト4の動力は、トルクコンバータ11、自動変速機12及びプロペラシャフト13等を介して駆動輪14に伝達されるよう構成される。
【0019】
トルクコンバータ11は、周知の構造を有し、作動流体を介して動力を伝達する装置であり、トルク増幅機能を有する。トルクコンバータ11は、駆動側のポンプインペラ11aと、被駆動側のタービンランナ11bと、ケースに固定されたステータ11cとを含む。ポンプインペラ11a、タービンランナ11b及びステータ11cは、作動流体の中にあってこれを媒介としてトルクを伝達するように構成される。ポンプインペラ11aが伝達し得るトルクは、駆動側と被駆動側の回転速度の比により変化し、被駆動側(出力側)に加わる負荷に応じて無段階に変速が行われる。自動変速機12は、周知の構造を有し、発進操作及び変速操作を自動的に行う変速機である。
【0020】
吸気通路2に設けられた周知の電子スロットル装置21は、本発明の吸気量調整手段に相当し、吸気通路2を流れ各気筒に吸入される空気量(吸気量)QAを調節するために作動する。この電子スロットル装置21は、モータ22により開閉されるスロットルバルブ23を含み、運転席に設けられたアクセルペダル24の操作に基づいて作動するように構成される。アクセルペダル24に設けられたアクセルセンサ51は、アクセルペダル24の操作量(アクセル開度)ACCPを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。電子スロットル装置21に設けられたスロットルセンサ52は、スロットルバルブ23の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。吸気通路2の入口側に設けられたエアフローメータ53は、吸気通路2を流れる吸気量QAを計測し、その計測値に応じた電気信号を出力する。
【0021】
各気筒に対応して設けられた燃料噴射弁(インジェクタ)6は、各気筒の吸気ポートに燃料を噴射供給する。各インジェクタ6には、燃料タンク31、燃料ポンプ32及び燃料パイプ33等より構成される燃料供給装置により燃料が圧送される。
【0022】
燃料供給装置に付随して設けられる蒸発燃料処理装置は、燃料タンク31で発生する蒸発燃料(ベーパ)を処理する。この処理装置は、燃料タンク31で発生するベーパを、ベーパ通路36を通じてキャニスタ37に一旦吸着させる。キャニスタ37に吸着されたベーパは、スロットルバルブ23の下流側で発生する吸気負圧に基づいてパージ通路38を通じて吸気通路2へパージされる。パージ通路38に設けられるパージ弁39は、ベーパのパージ流量を調整するために電気的に開閉駆動される。
【0023】
各気筒に対応してエンジン1に設けられる点火プラグ8は、イグナイタ9から出力される高電圧を受けて点火動作をする。各点火プラグ8の点火時期は、イグナイタ9による高電圧の出力タイミングにより決定される。
【0024】
エンジン1に設けられたエンジン回転速度センサ54は、クランクシャフト4の角速度、即ち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン1に設けられ水温センサ55は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。トルクコンバータ11に設けられたタービン回転速度センサ56は、被駆動側のタービンランナ11bの回転速度(タービン回転速度)NTを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。自動変速機12に設けられた車速センサ57は、自動変速機12の出力軸12aの回転速度を自動車の走行速度(車速)SPDとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
【0025】
この他、運転席に設けられるブレーキペダル25に設けられるブレーキセンサ58は、自動車を停止させるためにブレーキペダル25が踏まれたことを検出し、その検出結果を電気的なブレーキ信号BK(ON,OFF)として出力す。
【0026】
この実施形態で、前述したアクセルセンサ51、スロットルセンサ52、エアフローメータ53、エンジン回転速度センサ54、水温センサ55、タービン回転速度センサ56、車速センサ57及びブレーキセンサ58は、エンジン1又は自動車の運転状態を検出するための運転状態検出手段に相当する。
【0027】
この他、この実施形態の自動車は、エンジン1の補器類として、オルタネータを含む発電装置や空調装置を搭載する。周知のように、これらの補器類は、エンジン1から動力を得て駆動されるように構成される。従って、これらの補器類は、エンジン1に運転負荷として作用する。
【0028】
この実施形態で、各種制御を司る電子制御装置(ECU)60は、アクセルセンサ51、スロットルセンサ52、エアフローメータ53、エンジン回転速度センサ54、水温センサ55、タービン回転速度センサ56、車速センサ57及びブレーキセンサ58から出力される各種信号QA,ACCP,TA,NE,THW,NT,SPD,BKを入力する。ECU60は、これらの入力信号に基づいて、インジェクタ6、イグナイタ9、電子スロットル装置21及びパージ弁39を制御することにより、燃料噴射制御、点火時期制御、スロットル制御、アイドル回転速度制御及びパージ制御等を実行する。
【0029】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ6を制御することにより、燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御することである。点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ9を制御することにより、点火プラグ8による点火時期を制御することである。スロットル制御とは、アクセル開度ACCP等に基づいて電子スロットル装置21を制御することにより、エンジン1の吸気量QAを制御することである。アイドル回転速度制御とは、エンジン1のアイドル運転時に、エンジン1の運転状態等に基づいて電子スロットル装置21を制御することにより、アイドル回転速度を制御することである。また、パージ制御とは、エンジン1の運転状態に応じてパージ弁39を制御することにより、キャニスタ37から吸気通路2へパージされるベーパのパージ流量を制御することである。
【0030】
この実施形態で、ECU60は、本発明の制御手段及び制御補正手段に相当する。ECU60は中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等よりなる周知の構成を備えたものである。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)60は、これらの制御プログラムに従って前述した各種制御を実行する。
【0031】
次に、ECU60が実行する各種制御のうち、アイドル回転速度制御(ISC)の内容につき、図2〜図5を参照して説明する。図2に、この制御のためのアイドル回転速度制御流量QISCを算出する処理内容をフローチャートにより示す。ECU60は、このルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0032】
先ず、ステップ100で、ECU60は、各種センサ等51〜58から各種信号QA,ACCP,TA,NE,THW,NT,SPD,BKを読み込む。
【0033】
ステップ110で、ECU60は、吸気のベース流量BQiscを算出する。ECU60は、現在の冷却水温THWから、所定のマップを参照することにより、エンジン1の目標アイドル回転速度TISを算出する。そして、ECU60は、算出された目標アイドル回転速度TISから、所定のマップを参照することにより、ベース流量BQiscを算出する。
【0034】
ステップ120で、ECU60は、アイドル回転速度のフィードバック制御に応じた偏差補正流量Qcdを算出する。ECU60は、実際に検出されるエンジン回転速度(アイドル回転速度)NEと、目標アイドル回転速度TISとの偏差を算出し、所定のマップを参照することにより、その偏差に応じた偏差補正流量Qcdを算出する。
【0035】
ステップ130で、ECU60は、エンジン1に対する補器類による運転負荷に応じた負荷補正流量Qacを算出する。ECU60は、エンジン1の発電装置及び空調装置等に係る仕事量をエンジン負荷としてモニタし、所定のマップを参照することにより、モニタされた仕事量に応じた負荷補正流量Qacを算出する。
【0036】
ステップ140で、ECU60は、ベーパのパージ濃度に応じたパージ補正流量Qpgを算出する。ECU60は、パージ弁39の開度等からベーパ濃度を算出し、所定のマップを参照することにより、ベーパ濃度に応じたパージ補正流量Qpgを算出する。
【0037】
ステップ150で、ECU60は、自動車の車速SPDに応じた車速補正流量Qspを、所定のマップを参照することにより算出する。
【0038】
ステップ160で、ECU60は、自動車の減速時におけるエンジン回転低下に応じた回転低下補正流量Qndを算出する。この算出のための処理内容を、図3に示すフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0039】
先ず、ステップ161で、ECU60は、エンジン1が完全暖機状態となるのを待つ。ECU60は、例えば、冷却水温THWが「80℃」以上となったときに完全暖機状態であると判断する。
【0040】
次に、ステップ162で、ECU60は、自動車が減速状態となるのを待つ。ECU60は、例えば、スロットル開度TAがスロットルバルブ23の全閉状態を示し、かつ、ブレーキ信号BKがブレーキをかけている状態(ON)を示すときに、減速状態であると判断する。
【0041】
次に、ステップ163で、ECU60は、車速SPDが所定の設定値spd1以下となるのを待つ。ここで、所定の設定値spd1として、例えば「5(km/h)」を当てはめることができる。
【0042】
次に、ステップ164で、ECU60は、タービン回転速度NTの変化量ΔNTを算出する。ECU60は、前回のタービン回転速度NTOと今回のタービン回転速度NTとの差からこの変化量ΔNTを算出する。
【0043】
そして、ステップ165で、ECU60は、算出された変化量ΔNTに基づき回転低下補正流量Qndを算出し、その後の処理を一旦終了する。ここで、ECU60は、例えば、図4に示すマップを参照することにより、回転低下補正流量Qndを算出する。このマップは、変化量ΔNTがマイナスからゼロに増加するに連れて、回転低下補正流量Qndが最大値から最小値へと徐々に減少する特性を有する。
【0044】
その後、図2のフローチャートに戻り、ステップ170で、ECU60は、最終的なアイドル回転速度制御流量QISCを算出する。ECU60は、上記のように算出されたベース流量BQisc、偏差補正流量Qcd、負荷補正流量Qac、パージ補正流量Qpg、車速補正流量Qsp及び回転低下補正流量Qndを合算することにより、このアイドル回転速度制御流量QISCを算出する。
【0045】
図5に、アイドル回転速度制御(ISC)の処理内容をフローチャートにより示す。ECU60は、このルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0046】
先ず、ステップ200で、ECU60は、各種センサ等51〜58から各種信号QA,ACCP,TA,NE,THW,NT,SPD,BKを読み込む。
【0047】
次に、ステップ210で、ECU60は、アイドル回転速度制御(ISC)の実行条件が成立したか否かを判断する。ここで、ISC実行条件として、例えば、アクセル開度ACCPが「0」であること、車速SPDが所定値(例えば「5(km/h)」)以下であること等が含まれる。この判断結果が否定となる場合は、ECU60は、その後の処理を一旦終了する。この判断結果が肯定となる場合は、ECU60は、ステップ220〜ステップ240の処理を実行する。
【0048】
すなわち、ステップ220で、ECU60は、目標アイドル回転速度TISを算出する。ECU60は、上記と同様、現在の冷却水温THWに基づいて所定のマップを参照することにより目標アイドル回転速度TISを算出する。
【0049】
次に、ステップ230で、ECU60は、電子スロットル装置21を、上記のように算出されたアイドル回転速度制御流量QISCに基づいて制御する。
【0050】
続き、ステップ240で、ECU60は、電子スロットル制御装置21を、フィードバック制御する。すなわち、検出される実際のアイドル回転速度NEを目標アイドル回転速度TISに一致させるために電子スロットル装置21をフィードバック制御するのである。例えば、目標アイドル回転速度TISと実際のアイドル回転速度NEとの偏差に基づいて電子スロットル装置21をフィードバック制御することが考えられる。
【0051】
上記したアイドル回転速度制御(ISC)は、走行中の自動車が減速した直後のアイドル運転時を想定し、アイドル回転速度を安定的に制御するようにしたものである。すなわち、自動車の減速直後には、トルクコンバータ11のポンプインペラ11aが停止するため、それに引きずられてタービンランナ11bが回転低下し、アイドル回転速度が急変動するおそれがある。この実施形態のアイドル回転速度制御装置は、上記したアイドル回転速度の急変動に対処できるようにしたものである。
【0052】
以上説明したこの実施形態における内燃機関のアイドル回転速度制御装置によれば、自動車に搭載されたエンジン1の動力は、トルクコンバータ11、自動変速機12及びプロペラシャフト13等を介して駆動輪14に伝達される。ここで、エンジン1のアイドル運転時に、アイドル回転速度NEを目標アイドル回転速度TISに一致させるために電子スロットル装置21が、ECU60により、エンジン1の運転状態に応じてフィードバック制御される。また、自動車の減速時に、タービン回転速度NTの変化量ΔNTから算出される回転低下補正流量Qndに基づき、電子スロットル装置21の制御、すなわちアイドル回転速度制御(ISC)が、ECU60により補正される。
【0053】
このとき、自動車の減速時であってエンジン1のアイドル運転時には、エンジン1の回転がトルクコンバータ11のタービンライナ11bの回転低下に引きずられようとすることがある。このような場合には、少なくとも検出されるタービン回転速度NTの変化量ΔNTに基づき、電子スロットル装置21の制御が早めに補正されることとなる。従って、タービン回転速度NTが低下してしまう前にアイドル回転速度NEの変動が押さえられる。この結果、自動車の減速時にエンジン1のアイドル回転速度NEを安定的に低下させ、アイドル回転速度NEの不安定な変動を防止することができる。
【0054】
図6に、従来例に係り、自動車の減速時における各種パラメータBK,NE,NT,QISC,SPDの挙動をタイムチャートにより示す。従来は、自動車の減速時に合わせて、アイドル回転速度制御流量QISCを補正するような制御が行われていなかった。このため、自動車の減速直後に、タービン回転速度NTの低下に引きずられて、アイドル回転速度NEが目標アイドル回転速度TISの付近で一旦急低下し、その反動で急上昇するような変動が発生することがあった。これにより、自動車が振動したり、エンジンストールが発生したりするおそれがあった。
【0055】
これに対し、この実施形態では、自動車の減速時に、上記したようなアイドル回転速度制御(ISC)を実行しているので、上記問題を解消することができる。図7に、本実施形態に係り、自動車の緩減速時における各種パラメータBK,NE,NT,QISC,SPDの挙動をタイムチャートにより示す。この実施形態では、自動車の緩減速時に合わせて、タービン回転速度NTの変化量ΔNTに基づいて回転低下補正流量Qndが算出され、その算出された回転低下補正流量Qndによりアイドル回転速度制御流量QISCが補正される。このため、図7から分かるように、タービン回転速度NTが緩やかに低下しても、目標アイドル回転速度TISの付近でアイドル回転速度NEが変動することがない。特に、アイドル回転速度NEの急上昇(吹き上がり)を防止することができる。
【0056】
また、図8に、本実施形態に係り、自動車の急減速時における各種パラメータBK,NE,NT,QISC,SPDの挙動をタイムチャートにより示す。この実施形態では、自動車の急減速時に合わせて、タービン回転速度NTの変化量ΔNTに基づいて回転低下補正流量Qndが算出され、その算出された回転低下補正流量Qndによりアイドル回転速度制御流量QISCが補正される。このため、図8から分かるように、タービン回転速度NTが急激に低下しても、目標アイドル回転速度TISの付近でアイドル回転速度NEが変動することがない。特に、アイドル回転速度NEの急低下を防止することができる。
【0057】
この実施形態では、電子スロットル装置21が、目標アイドル回転速度TISに応じたベース流量BQiscに基づいて制御される。従って、アイドル回転速度NEを目標アイドル回転速度TISへ速やかに近付けることができる。
【0058】
この実施形態では、電子スロットル装置21の制御が、実際のアイドル回転速度NEと目標アイドル回転速度TISとの偏差に応じた偏差補正流量Qcdに基づいて更に補正される。従って、アイドル回転速度NEの変化に応じて電子スロットル装置21の制御の精度を高めることができる。
【0059】
この実施形態では、電子スロットル装置21の制御が、補器類である発電装置や空調装置のエンジン1に対する負荷状態に応じた負荷補正流量Qacに基づいて更に補正される。従って、エンジン1に対する負荷状態の変化に応じて電子スロットル装置21の制御の精度を高めることができる。
【0060】
この実施形態では、電子スロットル装置21の制御が、ベーパのパージ濃度に応じたパージ補正流量Qpgに基づいて更に補正される。従って、パージ濃度に応じて電子スロットル装置21の制御の精度を高めることができる。
【0061】
この実施形態では、自動車の減速時に、電子スロットル装置21の制御が、車速SPDに応じた車速補正流量Qspに基づいて更に補正される。従って、自動車の減速時には、車速SPDの低下に伴って電子スロットル装置21の制御が補正される。このため、車速SPDの低下に応じて電子スロットル装置21の制御の精度を高めることができる。
【0062】
この実施形態では、自動車の減速時の条件に加え、エンジン1が完全暖機状態であるときに、電子スロットル装置21の制御が、回転低下補正流量Qndに基づいて補正される。従って、その補正時におけるエンジン1の燃焼が安定化する。このため、電子スロットル装置21の制御に対する、タービン回転速度NTの変化量ΔNTに基づく補正を、エンジン1の回転が安定しているときに行うことができる。
【0063】
この実施形態では、自動車の減速時及びエンジン1の完全暖機状態の条件に加え、車速SPDが所定値spd1(例えば「5(km/h)」)以下であるときに、電子スロットル装置21の制御が、回転低下補正流量Qndに基づいて補正される。従って、自動車が停止する直前から補正が行われることとなる。このため、電子スロットル装置21の制御に対する、変化量ΔNTに基づく補正遅れを防止することができる。
【0064】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0065】
例えば、前記実施形態では、吸気量調整手段として電子スロットル装置21を設けたが、吸気通路にスロットルバルブを迂回して設けられたバイパス通路と、その通路に設けられる電磁弁とを吸気量調整手段として設けることもできる。
【0066】
前記実施形態では、アイドル回転速度制御流量QISCの補正項として、偏差補正流量Qcd、負荷補正流量Qac、パージ補正流量Qpg、車速補正流量Qsp及び回転低下補正流量Qndを設定したが、この他に、学習制御に係る補正項、エンジンフリクションに係る補正項、あるいは、触媒暖機に係る補正項を加えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明は、車両に搭載される内燃機関の制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 エンジン(内燃機関)
11 トルクコンバータ
11b タービンランナ
12 自動変速機
14 駆動輪
21 電子スロットル装置(吸気量調整手段)
56 タービン回転速度センサ(タービン回転速度検出手段)
60 ECU(制御手段、制御補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関のアイドル運転時に、前記内燃機関のアイドル回転速度を目標アイドル回転速度に一致させるために前記内燃機関の吸気量調整手段を前記内燃機関の運転状態に応じて制御する制御手段を備えた内燃機関のアイドル回転速度制御装置であって、
前記内燃機関は、その動力が少なくともトルクコンバータ及び自動変速機を介して駆動輪に伝達されるように構成されることと、
前記トルクコンバータを構成するタービンの回転速度を検出するためのタービン回転速度検出手段と、
前記車両の減速時に、少なくとも前記検出されるタービンの回転速度の変化量に基づいて前記制御手段による吸気量調整手段の制御を補正する制御補正手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項2】
前記制御補正手段は、前記減速時の条件に加え、前記内燃機関が完全暖機状態であるときに、前記制御手段による前記吸気量調整手段の制御を補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。
【請求項3】
前記制御補正手段は、前記車両の走行速度に基づいて前記制御手段による前記吸気量調整手段の制御を更に補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のアイドル回転速度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−193636(P2012−193636A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56672(P2011−56672)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】