説明

内燃機関のリードバルブ配置構造

【課題】 リードバルブが設けられるシリンダヘッド部およびシリンダヘッドカバーの大型化を避け、浄化性能の向上を図ることができる内燃機関のリードバルブ配置構造を供する。
【解決手段】 2次空気供給装置230を備えた内燃機関20において、2次空気供給装置230における排気圧力の脈動により作動するリードバルブ232が、燃焼室105rの上方でシリンダヘッド部24raが支持する吸気バルブ101rと排気バルブ102rとの間にあって、シリンダヘッド部24raと、同シリンダヘッド部24raの上面に重ねて固定されるシリンダヘッドカバー26rとの間に挟持される内燃機関のリードバルブ配置構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気を浄化する2次空気供給装置に関し、特に2次空気供給用のリードバルブの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス中に含まれる未燃成分をそのまま大気に放出するのを防止するために、エアクリーナから排気通路に2次空気を供給して、未燃成分を燃焼して排気を浄化する2次空気供給装置が知られている。
【0003】
特に2次空気通路をシリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーの外周部に形成した例(特許文献1参照)がある。
【特許文献1】特許2667782号公報
【0004】
同特許文献1では、シリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーの外周部に設けられた2次空気通路の排気ポート側にバルブ収納室が形成され、同バルブ収納室にリードバルブが配設される。
バルブ収納室のリードバルブより上流側が、2次空気通路に連通し、リードバルブより下流側が連通路を介して排気通路に連通している。
【0005】
したがって、排気通路の排気圧力の脈動によりリードバルブが開閉してエアクリーナから2次空気通路を介して排気通路に2次空気が導入されて排気ガス中に含まれる未燃成分が燃焼され、排気を浄化することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された2次空気供給装置は、シリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーの外周部に設けられた2次空気通路にリードバルブが配設されるバルブ収納室が形成されるので、シリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーが大型化する。
【0007】
また、2次空気はより高温の排気ガス中に導入する程、浄化率が向上するものであるが、前記特許文献1ではシリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーの中心部より離れた外周部にリードバルブが位置しており、そのバルブ収納室は排気通路の燃焼室より離れた箇所に連通しているので、排気温度が多少低下したところへ2次空気が導入されることになり、それ程高い浄化性能は期待できない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、リードバルブが設けられるシリンダヘッド部およびシリンダヘッドカバーの大型化を避け、浄化性能の向上を図ることができる内燃機関のリードバルブ配置構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、2次空気供給装置を備えた内燃機関において、2次空気供給装置における排気圧力の脈動により作動するリードバルブが、燃焼室の上方でシリンダヘッド部が支持する吸気バルブと排気バルブとの間にあって、前記シリンダヘッド部と、同シリンダヘッド部の上面に重ねて固定されるシリンダヘッドカバーとの間に挟持される内燃機関のリードバルブ配置構造とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のリードバルブ配置構造において、前記内燃機関は、前記シリンダヘッドに斜めに嵌挿されて燃焼室に臨む複数の点火プラグを備え、前記リードバルブは、前記吸気バルブと排気バルブおよび前記複数の点火プラグによって囲まれる領域に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の内燃機関のリードバルブ配置構造において、前記吸気バルブと排気バルブは、吸気ロッカアームシャフトと排気ロッカアームシャフトに各々軸支された吸気ロッカアームと排気ロッカアームの揺動により各々開閉作動され、前記リードバルブは、前記吸気ロッカアームシャフトと排気ロッカアームシャフトの間に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の内燃機関のリードバルブ配置構造において、前記内燃機関は、動弁系のカムシャフトがクランクケース側に配置され、同カムシャフトの回転によりプッシュロッドを介してシリンダヘッド上の前記吸気バルブと排気バルブが作動されるOHV型内燃機関であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の内燃機関のリードバルブ配置構造によれば、リードバルブが、燃焼室の上方でシリンダヘッド部が支持する吸気バルブと排気バルブとの間にあって、シリンダヘッド部とシリンダヘッドカバーとの間に挟持されるので、吸気バルブと排気バルブとの間の空間を利用してリードバルブが配置され、シリンダヘッド部やシリンダヘッドカバーの大型化を回避することができるとともに、シリンダヘッド部やシリンダヘッドカバーの中心の燃焼室に近い位置にリードバルブは位置し、排気通路の燃焼室に近い排気ガスの高温の箇所に2次空気の導入が可能で浄化性能の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2記載の内燃機関のリードバルブ配置構造によれば、リードバルブが、吸気バルブと排気バルブおよび複数の点火プラグによって囲まれる領域に配置されるので、点火プラグを複数備える内燃機関であっても、シリンダヘッド部やシリンダヘッドカバーの大型化を避けることができる。
【0015】
請求項3記載の内燃機関のリードバルブ配置構造によれば、リードバルブは、前記吸気ロッカアームシャフトと排気ロッカアームシャフトの間に配置されるので、吸気と排気のロッカアームシャフト間のデッドスペースを利用してリードバルブが配置されるので、より一層シリンダヘッド部やシリンダヘッドカバーの小型化を図ることができる。
【0016】
請求項4記載の内燃機関のリードバルブ配置構造によれば、内燃機関は、動弁系のカムシャフトがクランクケース側に配置され、同カムシャフトの回転によりプッシュロッドを介してシリンダヘッド上の前記吸気バルブと排気バルブが作動されるOHV型内燃機関であるので、シリンダヘッドの上方にカムシャフトを備えないため、シリンダヘッド部やシリンダヘッドカバーをより小型化できる上に、リードバルブの配置スペースを確保し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図13に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る内燃機関20を搭載した自動二輪車1の全体側面図である。
【0018】
該自動二輪車1は、ヘッドパイプ2からメインフレーム3が延びるとともに、下方にダウンチューブ4が2又に分かれて延出し、同ダウンチューブ4は下端で屈曲して後方へ延びている。
ダウンチューブ4間にはラジエータ38が支持される。
メインフレーム3の2又に分かれた後端とダウンチューブ4の後端は、左右一対のピボットフレーム5で連結されている。
【0019】
ヘッドパイプ2に軸支されて上方に延び左右に展開したハンドル6により回動されるフロントフォーク7が下方に延び、その先端に前輪8が軸支されている。
ピボットフレーム5に前端をピボット軸9で枢支され上下に揺動自在とされたリヤフォーク10の後端に後輪11が軸支されている。
【0020】
そして、メインフレーム3に設けられたブラケット12と上下に揺動するリヤフォーク10との間にリヤクッション13が介装されている。
【0021】
メインフレーム3とダウンチューブ4とセンタフレーム5に囲まれた空間に前後を支持されて内燃機関20が搭載され、内燃機関20のクランクケース22の後方のミッションケース27より左側に突出したカウンタシャフト67に嵌着されたドライブギヤ14と後輪11と一体の後車軸に嵌着されたドリブンギヤ15とをドライブシャフト16が連結して動力が後輪11に伝達されるようになっている。
【0022】
メインフレーム3に跨ぐようにして燃料タンク17が支持され、センタフレーム5の上部から後方へ延出したリヤフェンダ18が後輪11の上方を覆い、燃料タンク17とリヤフェンダ18の間およびリヤフェンダ18の上方にシート19が設けられている。
【0023】
内燃機関20は、車体に対してクランクシャフト21が左右水平方向に指向して横置きに搭載され、シリンダがV字状に前後にバンクした前後V型の2気筒水冷式4ストロークサイクル内燃機関である。
【0024】
前後V型の2気筒内燃機関20は、クランクケース22から斜め上方に前バンクシリンダ23fと後バンクシリンダ23rが延設され、その各上にシリンダヘッド24f,24rが重ねられ、さらにその上にロッカアームホルダー25f,25rを介してシリンダヘッドカバー26f,26rがそれぞれ被せられている。
前バンクシリンダ23fと後バンクシリンダ23rの各シリンダボアの周囲にはウォータジャケット23fw,23rwが形成されている。
【0025】
図4を参照して、クランクケース22の後方は、仕切り壁22aで仕切られてミッションケース27が一体に形成されており、クランクケース22とミッションケース27は左右割りに構成され、右側のクランクケース22とミッションケース27の右方はクラッチ・ギヤケース28が付設される。
クラッチ・ギヤケース28は、後方のミッションケース側に右方に開いた開口を有し、同開口をクラッチカバー29が覆う。
【0026】
したがって、クランクケース22と仕切り壁22aによりクランク室22Cが画成され、ミッションケース27と仕切り壁22aによりミッション室27Cが画成され、右側のクランクケース22,ミッションケース27に仕切られクラッチ・ギヤケース28およびクラッチカバー29により覆われてクラッチ室28Cが形成される。
【0027】
なお、クラッチ・ギヤケース28の前部側壁の右方をチェーンカバー30が覆い、左側のクランクケース22の左方をサイドカバー36(図1参照)およびACGカバー31が覆い、左側のミッションケース27の左方をクラッチ駆動機構カバー33が覆う。
【0028】
本前後V型内燃機関20は、前バンクシリンダ23fと後バンクシリンダ23rの各シリンダ中心軸がクランクシャフト21に直交する同一平面上にあって、左右幅方向にオフセットしていない。
【0029】
前バンクシリンダ23f内を往復動するピストン40fのピストンピン40fpに小端部を連結した前側コネクティングロッド41と、後バンクシリンダ23r内を往復動するピストン40rのピストンピン40rpに小端部を連結した後側コネクティングロッド45とは、クランクシャフト21の一対のクランクウエブ21w,21w間を連結する共通のクランクピン21pにその各大端部を連結している。
【0030】
前側コネクティングロッド41は、図9に図示するように、一端に小端部41sを一体に有し、他端の大端部41bがロッド軸に垂直な面で2分割される分割構造をなし、半円弧状の本体側大端部41bhにクランクピン21pを間に挟んで半円弧状のコンロッドキャップ42が合わされて両端をコンロッドボルト43で締結される。
【0031】
他方、後側コネクティングロッド45は、図10ないし図12に示すように、一端に小端部45sを一体に有するのは同じであるが、他端の大端部が2又に分岐して対向する一対の大端部45b,45bからなるとともにロッド軸に垂直な面で2分割される分割構造をなす。
【0032】
すなわち、一対の大端部45b,45bは、2又に分岐した一対の半円弧状のロッド本体側大端半体部45bh,45bhに対して、一対の半円弧状大端半体46bc,46bcがその各中央部を外方(遠心方向)に突出させて、かつ互いの突出部を連結突起部46cで連結して一体化したコンロッドキャップ46を合わせて連結突起部46cの両側方で4隅をコンロッドボルト47で締結して構成される。
【0033】
後側コネクティングロッド45の一対の大端部45b,45bは、前側コネクティングロッド41の大端部41bを間に挟み、大端部41bの両側でクランクピン21pに軸支される(図4参照)。
後側コネクティングロッド45は、一対の大端部45b,45bを構成するコンロッドキャップ46の連結突起部46cが、特に大きく下方に突出している(図2,図8参照)。
【0034】
このように、前側コネクティングロッド41の1個の大端部41bと後側コネクティングロッド45の一対の大端部45b,45bは、大端部41bを中央にして一対の大端部45b,45bが両側に位置し共通の同じクランクピン21pに軸支されるので、カップリング振動が防止される。
【0035】
なお、後側コネクティングロッド45の一対の大端部45b,45bは、そのコンロッドキャップ46の連結突起部46cが他方の前側コネクティングロッド41のコンロッドキャップ42を跨ぐようにして組み付けられ、両者が干渉するようなことはない。
【0036】
また、前バンクシリンダ23fと後バンクシリンダ23rの各シリンダ中心軸がクランクシャフト21に直交する同一平面上にあって、左右幅方向にオフセットしていないので、内燃機関20の左右幅長を狭くすることができる。
【0037】
前側コネクティングロッド41と後側コネクティングロッド45に共通のクランクピン21pで連結されて回転駆動されるクランクシャフト21は、左右のクランクケース22にベアリング35,35を介して軸支されている。
【0038】
このクランクシャフト21の右方のクラッチ室28Cに突出した部分にスリーブ50が嵌装され、さらに先端にドライブスプロケット52を備えたキャップ51が被せられてボルト53により一体に固着されている。
ドライブスプロケット52を備えるキャップ51の先端はクラッチ・ギヤケース28の開口から右方に突出している。
【0039】
スリーブ50上にはプライマリギヤ55が軸支され、ダンパー機構56を介してクランクシャフト21の回転が伝達されるようになっている。
クランクシャフト21の左側クランクケース22より左方に突出した部分にはACジェネレータ57が設けられるともに、始動機構のドリブンギヤ58がワンウエイクラッチ59を介して設けられている。
【0040】
かかるクランクシャフト21の前後対称位置において、1次振動を打ち消すバランサシャフト60,61が、クランクシャフト21と同一の略水平な面上に平行に配設されて2軸バランサ機構が構成されている。
【0041】
左右のクランクケース22,22に、ベアリング62,62を介して前側バランサシャフト60が回転自在に軸支され(図5参照)、ベアリング63,63を介して後側バランサシャフト61が、回転自在に軸支されている(図4参照)。
前後のバランサシャフト60,61のバランサウエイト60w,61wは、クランクシャフト21の一対のクランクウエブ21w,21w間を旋回する。
【0042】
バランサシャフト60,61は、右側クランクケース22に軸支するベアリング62,63を貫通してクラッチ室28Cに突出し、その右突出端にバランサギヤ64,65が嵌着されており、同前後のバランサギヤ64,65は、前記クランクシャフト21に設けられた同径のプライマリギヤ55に噛み合って、クランクシャフト21の回転に連動してバランサシャフト60,61が同じ回転速度で逆回転する。
【0043】
後側バランサシャフト61の後方にメインシャフト66とカウンタシャフト67がミッションケース27に軸支されて配設されている。
【0044】
メインシャフト66の斜め上後方に配置されたカウンタシャフト67は、両端が左右ミッションケース27にベアリングを介して軸支され、メインシャフト66の上方に変速シフト機構75が配置されている。
【0045】
カウンタシャフト67のミッション室27C外に突出した左端にはドライブギヤ14が嵌着されている。
【0046】
メインシャフト66のミッション室27C外に突出した右端には多板クラッチ77が設けられ、多板クラッチ77のメインシャフト66に回転自在に軸支されたクラッチハウジング77hに一体に設けられたメインギヤ78が前記後側バランサシャフト61のバランサギヤ65に噛合している。
なお、メインギヤ78にはオイルポンプ用ギヤ79が一体に形成されている。
【0047】
このメインシャフト66の中心孔をクラッチ作動軸81が貫通して、その右端は多板クラッチ77のプレッシャプレート77pに連結され、左端は前記クラッチ駆動機構カバー33に設けられたクラッチ駆動機構82に組み込まれている。
【0048】
したがって、内燃機関20の運転でクランクシャフト21が回転すると、ダンパー機構56を介してプライマリギヤ55が回転し、プライマリギヤ55の回転はこれと噛合する前後のバランサギヤ64,65を介して前後のバランサシャフト60,61を回転する。
【0049】
そして、後側のバランサシャフト61のバランサギヤ65の回転は、これと噛合するメインギヤ78を多板クラッチ77のクラッチハウジング77hとともに回転し、多板クラッチ77の係合を介してメインシャフト66を回転する。
【0050】
メインシャフト66の回転は、メインギヤ列とカウンタギヤ列の対応するギヤどうしの噛合のいずれかが変速シフト機構75により選択的に有効となってカウンタシャフト67を回転し、カウンタシャフト67の回転は、一体に嵌合したドライブギヤ14とともに回転し、ドライブギヤ14とドリブンギヤ15とを連結したドライブシャフト16を介して後輪11を回転駆動する。
【0051】
また、ミッション室27C内において、メインシャフト66の斜め下前方にオイルポンプ85が配置されている(図2参照)。
図6に示すように、オイルポンプ85は、左から順にクランク室スカベンジングポンプ86,フィードポンプ87,クラッチ室スカベンジングポンプ88の3つのポンプからなり、左右方向に指向した共通の回転軸89に各インナロータが嵌着されて設けられている。
【0052】
右側のクラッチ室スカベンジングポンプ88のポンプケース88cの右側壁中央に形成された軸受部88cbが突出して右側ミッションケース27の円孔に挿入され、同軸受部88cbを回転軸89が貫通してクラッチ室28Cに突出しており、同回転軸89の突出部にポンプ駆動ギヤ90がボルト91により固着され、同ポンプ駆動ギヤ90は前記オイルポンプ用ギヤ79に噛合している。
【0053】
したがって、クランクシャフト21の回転が、プライマリギヤ55,バランサギヤ65,メインギヤ78に伝達されて、メインギヤ78と一体のオイルポンプ駆動用ギヤ79を回転すると、これと噛合するポンプ駆動ギヤ90が回転してオイルポンプ85が駆動される。
【0054】
なお、ミッション室27C側から右側ミッションケース27の円孔に挿入される軸受部88cbは、該円孔との間隙にオイルシール92が介装されて、ミッション室27Cとクラッチ室28Cとの間をシールしている(図6参照)。
【0055】
一方、クランクケース22の後バンクシリンダ23rとの合わせ部の後方にスタータモータ95が駆動軸96を左方へ突出させて配設されており、図2に示すように、同駆動軸96に形成された駆動ギヤ96gに減速ギヤ軸97の大径ギヤ97bが噛合し、同減速ギヤ軸97の小径ギヤ97sに中間軸98の大径中間ギヤ98bが噛合し、同中間軸98の小径中間ギヤ98sが前記クランクシャフト21のドリブンギヤ58に噛合している。
【0056】
したがって、スタータモータ95の回転は、駆動ギヤ96g,大径ギヤ97b,小径ギヤ97s,大径中間ギヤ98b,小径中間ギヤ98s,ドリブンギヤ58に順次伝達され、ワンウエイクラッチ59を介してクランクシャフト21を回転駆動して内燃機関20を始動させることができる。
【0057】
次に、吸排気系について説明する。
本内燃機関20は、OHV型の内燃機関であり、シリンダヘッド24f,24rに吸気バルブ101f,101rと排気バルブ102f,102rが設けられているが、動弁カム機構は右側クランクケース22に設けられている。
【0058】
吸気バルブ101f,101rと排気バルブ102f,102rは、シリンダヘッド24f,24rの吸気ポート103f,103rと排気ポート104f,104rの燃焼室105f,105rへの開口を開閉可能に設けられている。
【0059】
なお、図4に示すように、後側シリンダヘッド24rの燃焼室105rには、2本の点火プラグ117r,117rが左右に嵌挿されている。
前側シリンダヘッド24fについても、同様に図示しないが2本の点火プラグが燃焼室105fに嵌挿されている。
【0060】
前側シリンダヘッド24fにおいては、吸気ポート103fが燃焼室105fから後方へ延びてVバンクの間の吸気管110fに連結し(図2参照)、排気ポート104fが燃焼室105fから前方斜め右方へ延びて排気管115に連結する(図1参照)。
他方、後側シリンダヘッド24rにおいては、吸気ポート103rが燃焼室105rから前方へ延びてVバンクの間の吸気管110rに連結し(図2参照)、排気ポート104rが燃焼室105rから後方斜め右方へ延びて排気管116に連結する(図1参照)。
【0061】
図7に図示するように、前側シリンダヘッド24fから後方へ延設された吸気管110fと後側シリンダヘッド24rから前方へ延設された吸気管110rは、中央で合体して右方に延出する上流側吸気管110cとともに一体形成された吸気管110の分岐管である。
【0062】
吸気管110の右方に延びた上流側吸気管110cにはスロットルボディ120が連結され、スロットルボディ120の右側の上流にエアクリーナ130が配置される。
エアクリーナ130は、Vバンクの前後のシリンダ23f,23r、シリンダヘッド24f,24r、シリンダヘッドカバー26f,26rの右側面に沿ってVバンクの間の空間を右側から覆うように配設される。
【0063】
吸気管110の前後に分岐した吸気管110f,110rには燃料噴射弁111f,111rが斜め上方に突出して取り付けられており、燃料噴射弁111f,111rの上端が1つの共通のソケット112に嵌合している。
ソケット112には燃料パイプが接続される接続管113が左方に突設されている。
【0064】
一方、前側シリンダヘッド24fから前方斜め右方に延出した排気管115は、図1に示すように、下方へ屈曲して延びた後に、クランクケース22の右側面に沿って後方へ屈曲し、後輪11の右側に前後方向に長尺に配設されたマフラー115mに連結される。
また、後側シリンダヘッド24rから後方に延出した排気管116は、下方へ屈曲して延びた後に、ミッションケース27の右側面に沿って後方へ屈曲し、後輪11の右側に前記マフラー115mの上に平行に配置されたマフラー116mに連結される。
【0065】
次に動弁系の機構について説明する。
後側シリンダヘッド部24raの上面図である図3を参照して、上記のように吸排気系が構成されるシリンダヘッド24rの上に重ねられるロッカアームホルダー25rは、それぞれ吸気系ロッカアームシャフト150rと排気系ロッカアームシャフト155rをシリンダヘッドカバー26r内において回転自在に保持している。
【0066】
図3および図4を参照して、Vバンクの内側となる吸気系ロッカアームシャフト150rには前記吸気バルブ101rを作動するロッカアーム151rと吸気系プッシュロッド153rにより作動されるロッカアーム152rが嵌着されている。
同様に、Vバンクの外側となる排気系ロッカアームシャフト155rには前記排気バルブ102rを作動するロッカアーム156rと排気系プッシュロッド158rにより作動されるロッカアーム157rが嵌着されている。
【0067】
吸気系プッシュロッド153rおよび排気系プッシュロッド158rは、上端がシリンダヘッドカバー26r内においてロッカアーム152r、ロッカアーム157rに当接しているが、下端は右側クランクケース22に設けられたクラッチ・ギヤケース28内の動弁カム機構160に連接しており、上下端を除く長尺部分がシリンダ23r、シリンダヘッド24rの右側面に沿って外部にある。
【0068】
このように、本動弁機構は、OHV方式が用いられており、動弁カム機構160がクランクケース22側に設けられ、プッシュロッド153r,158rを介してシリンダヘッド24rに設けられた吸気バルブ101rと排気バルブ102rが駆動される構造である。
なお、前側シリンダヘッド24fにおいても同様の構造をしている。
【0069】
クラッチ・ギヤケース28内の動弁カム機構160は、前記クランクシャフト21の右端部の上方斜め前と後にカムシャフト161r(前側バンク用カムシャフトは図示しない)がクランクシャフト21と平行に回転自在に軸支されている。
【0070】
図4を参照して、後バンク用カムシャフト161rは、クラッチ・ギヤケース28の側壁を貫通して右方に突出し、その突出端にドリブンスプロケット162rが嵌着されており、前記クラッチ・ギヤケース28の開口から右方に突出したクランクシャフト21に被せられたキャップ51の先端に固着されたドライブスプロケット52と上方斜め前と後のドリブンスプロケット162rにチェーン163が巻き掛けられている。
【0071】
ドリブンスプロケット162rはドライブスプロケット52の2倍の歯数を有し、したがって、クランクシャフト21の回転は、ドライブスプロケット52からチェーン163を介してドリブンスプロケット162rに伝達され、ドリブンスプロケット162rともに後バンク用カムシャフト161rがクランクシャフト21の半分の回転速度で回転する。
【0072】
図4を参照して、後バンク用カムシャフト161rは、それぞれ高速カムと低速カムが隣り合って吸気用で1対、排気用で1対の2対が形成されており、各カムに4個のロッカアーム164rのローラがそれぞれ当接し、この4個のロッカアーム164rは共通のロッカアームシャフト165rに揺動自在に軸支され、弾発付勢手段166rにより高速ロッカアーム164r,164rのローラがカムに押圧されている。
【0073】
ロッカアームシャフト165r内は油圧通路が形成されて、高速カムと低速カムに対応する高速ロッカアーム164rと低速ロッカアーム164r間に形成された係脱機構に油圧を作用することができ、低速ロッカアーム164r,164rの揺動端が前記吸気系プッシュロッド153rと排気系プッシュロッド158rの下端部を受けとめている。
【0074】
したがって、係脱機構に油圧が作用していないときは、高速ロッカアーム164rと低速ロッカアーム164rが離脱して互いに独立に揺動し、低速ロッカアーム164rの先端に受けとめられた吸気系プッシュロッド153rと排気系プッシュロッド158rは低速カムに従って昇降し吸気バルブ101rと排気バルブ102rが低速バルブタイミングで作動する。
【0075】
これに対して、係脱機構に油圧が作用するときは、高速ロッカアーム164rと低速ロッカアーム164rが係合して一体に揺動し、低速ロッカアーム164rの先端に受けとめられた吸気系プッシュロッド153rと排気系プッシュロッド158rは高速カムに従って昇降し吸気バルブ101rと排気バルブ102rが高速バルブタイミングで作動する。
【0076】
前バンク用カムシャフトも、後バンク用カムシャフト161rと前後対称的に同様の部材である4個のロッカアーム、ロッカアームシャフト、弾発付勢手段が吸気系プッシュロッドと排気系プッシュロッドとともに、同様の構造を構成し、吸気バルブ101fと排気バルブ102fは、係脱機構に油圧が作用していないときは低速バルブタイミングで作動し、係脱機構に油圧が作用するときは高速バルブタイミングで作動する。
【0077】
この係脱機構への油圧を制御する油圧制御弁168が、左側クランクケース22の側壁の前側バランサシャフト60の左方延長部分に取り付けられている(図5参照)。
左側クランクケース22の同部分に取り付けられる油圧制御弁168は、サイドカバー36により覆われる(図1参照)。
【0078】
次に潤滑系について説明する。
前記クランクシャフト21の左右のクランクウエブ21w,21wとその間の後側コネクティングロッド45の大端部45b,45bの連結突起部46cが旋回するクランク室22Cには、図8に示すように、そのクランクケース22の底部に連結突起部46cの旋回する最大径の軌跡に沿った円弧状のオイル溜り170が形成されており、オイル溜り170に隣接して後方にオイル排出口171が開口してオイル溜り170の後隣りの小油室172に連通している。
【0079】
オイル排出口171は、オイル溜り170の底壁の一部が若干斜め上方に向かって小油室172内に突出して排出案内リブ171aを形成しており、小油室172の底面に沿った後部に導出口A1aが開口している。
なお、小油室172内に突出した排出案内リブ171aにより小油室172からオイル溜り170にオイルが戻るのが防止されている。
【0080】
導出口A1aはミッション室27C内に配管されるオイル管A2に連通する連通油路A1の開口であり、オイル管A2は、オイルポンプ85のうちクランク室スカベンジングポンプ86にオイルが吸入される吸入油路A3と連通している。
【0081】
図8に示すように、後側コネクティングロッド45の大端部45b,45bの連結突起部46cの動きをみると、後方に傾いた後バンクシリンダ23rのピストン40rの下死点付近で連結突起部46cはオイル溜り170に溜まったオイルに前方から浸かり、次いで後方のオイル排出口171に向けて旋回移動することで、図8において2点鎖線で示す連結突起部46c’、46c”を参照して、連結突起部46cは、その後面46cbの平坦面がオイル溜り170に溜まったオイルを押してオイル排出口171に掻き出す効果的な動きをし(図8において連結突起部46c’の時点のオイルの表面の状態を2点鎖線で示している)、オイル溜り170からオイルを小油室172に効率良く排出することができる。
【0082】
なお、オイル溜り170のオイルを掻き出す連結突起部46cは、前側コネクティングロッド41に設けるよりも、後側コネクティングロッド45の大端部45b,45bに設ける方が、図8に示すように、オイルをオイル排出口171に掻き出すより効果的な動きをし、オイルをより一層効率良く排出することができる。
また、連結突起部46cの後面46cbは、凹面に形成して、1回のオイルの掻き出し量を多くするようにしてもよい。
【0083】
なお、後側コネクティングロッド45の大端部45b,45bが、ロッド軸に垂直な面で2分割される分割構造をなすので、コンロッドキャップ46の一対の半円弧状大端半体46bc,46bcを一体に形成することができ、加工および組付けを容易にすることができる。
【0084】
また、ロッド本体側大端半体部45bh,45bhに対してコンロッドキャップ46の一対の半円弧状大端半体46bc,46bcを合わせて連結突起部46cの両側方で4隅をコンロッドボルト47で締結して大端部45b,45bを構成するので、連結突起部46cの形状がコンロッドボルト47によって制約を受けることがなく、自由度が高く、オイルを効率良く掻き出すことができる形状を容易に形成することができる。
【0085】
このようにクランク室22Cのオイル溜り170に溜まったオイルは、後側コネクティングロッド45の連結突起部46cの掻き出しによりオイル排出口171より小油室172に排出され、小油室172に排出されたオイルは、導出口A1aより連通油路A1に導かれオイル管A2,吸入油路A3を介してオイルポンプ85のうち左側のクランク室スカベンジングポンプ86に吸入される(図2参照)。
【0086】
クランク室スカベンジングポンプ86から上方に吐出管175が延出しており、クランク室スカベンジングポンプ86により吐出されたオイルを吐出管175よりミッション室27C内の互いに噛合するメインギヤ列72とカウンタギヤ列73に飛沫噴出して供給する。
【0087】
一方、図2および図5を参照して、クラッチ・ギヤケース28の底壁にはプライマリギヤ55の下方から後方へ向かい後側のバランサギヤ65の後方まで延びるオイル通路B1が形成されており、同オイル通路B1は、プライマリギヤ55の下方辺りに連通口B1aを開口してクラッチ室28Cと連通しており、オイル通路B1の後端はクラッチ室28C内に膨出して架設したストレーナ(図示せず)に通じ、同ストレーナを介して吸入油路がオイルポンプ85のうち右側のクラッチ室スカベンジングポンプ88に連結されている(図6参照)。
【0088】
したがって、クラッチ室スカベンジングポンプ88の稼動でクラッチ室28C内のオイルがオイル通路B1を通り、ストレーナを経て吸入される。
【0089】
図2および図6を参照して、ミッション室27Cの底に溜まるオイルは、ストレーナ185を介して吸入管C1からオイルポンプ85のうち中央のフィードポンプ87により吸入される。
そして、フィードポンプ87からはオイルが吐出油路C2に吐出され、吐出油路C2はミッションケース27の後部下方に取り付けられたオイルフィルタ186の流入口に結合され、オイルフィルタ186からはメインギャラリMに流出される。
【0090】
メインギャラリMは、オイルフィルタ186から前方へ延出するメインオイル通路M1がクランク室22Cの後方に隣接する小油室172内に膨出して左右方向に指向するメインオイル通路M2に連通し、メインオイル通路M2の左右端で屈曲して左右側クランクケース22の側壁を前後方向にメインオイル通路M3,M3が延出形成されており、前方に延びたメインオイル通路M3,M3の途中から上方へ枝分かれしたオイル通路D1,D1がクランクシャフト21の左右ジャーナル部にオイルを供給する(図2,図5参照)。
【0091】
図2を参照して、左側クランクケース22を前方に延びたメインオイル通路M3は、オイル通路D1の分岐を通り越した前端で上方に延びた後に前方に屈曲して前記油圧制御弁168に至るオイル通路E1に連通している。
【0092】
油圧制御弁168からは、左側クランクケース22を右方の前側バランサシャフト60に向けてオイル通路F1が形成される(図5参照)とともに、上方に向けてオイル通路E2が形成されている(図2参照)。
油圧制御弁168は、オイル通路E1より流入する圧油を上方に向かうオイル通路E2に送るか、前側バランサシャフト60に向かうオイル通路F1に流出するかを切り換えることができる。
【0093】
上方に延びたオイル通路E2は、上端で右方へ屈曲して右側クランクケース22にまで延びたオイル通路E3になり、図2を参照してオイル通路E3は右側クランクケース22の側壁で後方斜め上に屈曲した後に後方へ水平に延びるオイル通路E4となり、オイル通路E4は斜め上方に屈曲して動弁カム機構160の後側ロッカアームシャフト165r内の油圧通路に連通するオイル通路E5となり、オイル通路E5の途中から斜め前方に分岐したオイル通路E6が前側ロッカアームシャフト165f内の油圧通路に連通している。
【0094】
前後のロッカアームシャフト165f,165r内の油圧通路は、ロッカアーム164f,164rの係脱機構に連通し油圧を作用させることができるようになっている。
したがって、油圧制御弁168がオイル通路E2に圧油を送ると、係脱機構に油圧を作用させることができ、吸気バルブ101f,101rと排気バルブ102f,102rが高速バルブタイミングで作動する
【0095】
他方、油圧制御弁168が弁を切り換えてオイルをオイル通路F1に流出させると、係脱機構に油圧が作用せず、吸気バルブ101f,101rと排気バルブ102f,102rが低速バルブタイミングで作動する。
このとき、オイル通路F1に流出したオイルは、図5に示すように、前側バランサシャフト60の左側ベアリング62に供給されるとともに、前側バランサシャフト60の中心孔60aを通って右端開口からクランク室22C内に排出される。
【0096】
以上のような内燃機関20は、2次空気供給装置230を備えており、前後のシリンダヘッド24f,24rとロッカアームホルダー25f,25rを合わせて吸気バルブ101f,101rや排気バルブ102f,102rおよびロッカアームシャフト150f,150r,155f,155rを支持するシリンダヘッド部24fa,24raと称すると、シリンダヘッド部24fa,24raとシリンダヘッドカバー26f,26rに2次空気供給装置230が前後バンクのそれぞれに設けられている。
【0097】
後側シリンダヘッド部24raの上面図である図3を参照して、後側シリンダヘッド部24raの略中央部に燃焼室105rがあり、燃焼室105rに2本の点火プラグ117r,117rが嵌挿される嵌挿孔220L,220Rが左右に形成されている。
【0098】
また、燃焼室105rに開口した吸気ポート103rと排気ポート104rが前後に延出しており、吸気ポート103rの開口を開閉する吸気バルブ101rと排気ポート104rの開口を開閉する排気バルブ102rが前後に配置されている。
【0099】
ロッカアームホルダー25rは、前後の吸気バルブ101rと排気バルブ102rとの間で、かつ左右の嵌挿孔220L,220Rに嵌挿される点火プラグ117r,117rの間に、矩形のシリンダヘッド側バルブ収納室231hが形成されていて、同シリンダヘッド側バルブ収納室231hの上方に開口した矩形の開口周縁が切り欠かれて矩形のリードバルブ232が切欠きに合わせて嵌合される。
【0100】
シリンダヘッド部24raに被せられるシリンダヘッドカバー26rには、シリンダヘッド側バルブ収納室231hに対応してカバー側バルブ収納室231cが形成されていて、シリンダヘッド側バルブ収納室231hとカバー側バルブ収納室231cとで閉塞されたバルブ収納室231が構成され、シリンダヘッド側バルブ収納室231hの開口周縁の切欠きに嵌合したリードバルブ232がシリンダヘッドカバー26rのカバー側バルブ収納室231の開口端面に挟まれて支持されている(図13参照)。
【0101】
したがって、リードバルブ232によりバルブ収納室231が仕切られて上方のカバー側バルブ収納室231cと下方のシリンダヘッド側バルブ収納室231hが画成されている。
すなわち、リードバルブ232は、左右の点火プラグ117r,117rと前後の吸気バルブ101
r,排気バルブ102rにより囲まれたバルブ収納室231に設けられている。
リードバルブ232は、弁体232aが下方のシリンダヘッド側バルブ収納室231h側に開く。
【0102】
ロッカアームホルダー25rにおける吸気バルブ101rと排気バルブ102rとの間に形成されたカバー側バルブ収納室231cからは、図2を参照して後寄り位置から斜め下方に連通孔235cが形成され、一方でシリンダヘッド24rにおける排気ポート104rの燃焼室105rに近い上壁面から上方に連通孔235hが延出してロッカアームホルダー25r側の連通孔235cと連通している。
【0103】
したがって、リードバルブ232が設けられるシリンダヘッド側バルブ収納室231hは、連通孔235c,235hにより略最短距離で排気ポート104rと連通している。
それも連通孔235hは、排気ポート104rの燃焼室105r近傍に連通している。
【0104】
また、図13に示すように、シリンダヘッドカバー26rのカバー側バルブ収納室231cの左壁に形成された孔に、接続管236が嵌入されている。
接続管236は、外部に突出していて、図示されないがエアクリーナ130から延出するチューブが接続される。
【0105】
後バンクの2次空気供給装置230は、以上のような構造をしており、前バンクの2次空気供給装置230も同じ構造をしており、同じ部材は同じ符号を用いる。
【0106】
排気ポート104f,104rにおける排気圧力の脈動が連通孔235c,235hを介してバルブ収納室231のリードバルブ232に作用して弁体232aを作動し、開弁すると、エアクリーナ130からカバー側バルブ収納室231cに供給される2次空気がシリンダヘッド側バルブ収納室231h側に流れ、さらに連通孔235c,235hを介して排気ポート104f,104rの燃焼室105f,105rの近傍に導入される。
【0107】
排気ポート104f,104rの燃焼室105f,105rの近傍に導入される2次空気は、排気ポート104f,104rの燃焼室105f,105rに近い高温の排気ガスに作用して排気ガス中の未燃成分HC,COを効果的に燃焼(酸化)して排気を高い浄化率で浄化することができる。
【0108】
リードバルブ232は、燃焼室105f,105rの上方でシリンダヘッド部24fa,24raが支持する吸気バルブ101f,101rと排気バルブ102f,102rとの間にあって、シリンダヘッド部24fa,24raとシリンダヘッドカバー26f,26rとの間に挟持されるので、吸気バルブ101f,101rと排気バルブ102f,102rとの間の空間を利用してリードバルブ232が配置され、外周部が膨出して設けられることがなく、シリンダヘッド部24fa,24raやシリンダヘッドカバー26f,26rの大型化を回避することができる。
【0109】
本内燃機関20のように、1燃焼室105f,105rに2個の点火プラグ117f,117f、117r,117rが備えられたものにおいて、吸気バルブ101f,101rと排気バルブ102f,102rと2個の点火プラグ117f,117f、117r,117rに囲まれた領域に、リードバルブ232は配置されるので、点火プラグを複数備える内燃機関であっても、シリンダヘッド部24fa,24raやシリンダヘッドカバー26f,26rの大型化を避けることができる。
【0110】
図3に示すように、リードバルブ232は、吸気系ロッカアームシャフト150rと排気系ロッカアームシャフト155rの間のデッドスペースを利用して配置されるので、より一層シリンダヘッド部24fa,24raやシリンダヘッドカバー26f,26rの小型化を図ることができる。
【0111】
本内燃機関20は、動弁系のカムシャフト161f,161rがクランクケース22側に配置され、同カムシャフト161f,161rの回転によりプッシュロッド150f,150r、158f,158rを介してシリンダヘッド24f,24r上の吸気バルブ101f,101r、排気バルブ102f,102rが作動されるOHV型内燃機関であるので、シリンダヘッド24f,24rの上方にカムシャフトを備えないため、シリンダヘッド部24fa,24raやシリンダヘッドカバー26f,26rをより小型化できる上に、リードバルブ232の配置スペースを確保し易い。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の全体左側面図である。
【図2】V型内燃機関の一部断面とした左側面図である。
【図3】後側シリンダヘッド部の上面図である。
【図4】図2のIV-IV線で切断した断面図である。
【図5】図2のV-V線で切断した断面図である。
【図6】図2のVI-VI線で切断した断面図である。
【図7】Vバンクの内側の部分上面図である。
【図8】後側コネクティングロッドの動きを説明する説明図である。
【図9】前側コネクティングロッドの斜視図である。
【図10】後側コネクティングロッドの斜視図である。
【図11】同後側コネクティングロッドの分解側面図である。
【図12】同後側コネクティングロッドの分解断面図である。
【図13】後側のロッカアームホルダーとシリンダヘッドカバーの断面図である。
【符号の説明】
【0113】
20…内燃機関、21…クランクシャフト、22…クランクケース、23f…前バンクシリンダ、23r…後バンクシリンダ、、24fa,24ra…シリンダヘッド部、24f,24r…シリンダヘッド、25f,25r…ロッカアームホルダー、26f,26r…シリンダヘッドカバー、
101f,101r…吸気バルブ、102f,102r…排気バルブ、103f,103r…吸気ポート、104f,104r…排気ポート、105f,105r…燃焼室、117f,117r…点火プラグ、130…エアクリーナ、150f,150r…吸気系ロッカアームシャフト、158f,158r…排気系プッシュロッド、161f,161r…カムシャフト、
230…2次空気供給装置、231…バルブ収納室、232…リードバルブ、235h,235c…連通孔、236…接続管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次空気供給装置を備えた内燃機関において、
2次空気供給装置における排気圧力の脈動により作動するリードバルブが、
燃焼室の上方でシリンダヘッド部が支持する吸気バルブと排気バルブとの間にあって、 前記シリンダヘッド部と、同シリンダヘッド部の上面に重ねて固定されるシリンダヘッドカバーとの間に挟持されることを特徴とする内燃機関のリードバルブ配置構造。
【請求項2】
前記内燃機関は、前記シリンダヘッドに斜めに嵌挿されて燃焼室に臨む複数の点火プラグを備え、
前記リードバルブは、前記吸気バルブと排気バルブおよび前記複数の点火プラグによって囲まれる領域に配置されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のリードバルブ配置構造。
【請求項3】
前記吸気バルブと排気バルブは、吸気ロッカアームシャフトと排気ロッカアームシャフトに各々軸支された吸気ロッカアームと排気ロッカアームの揺動により各々開閉作動され、
前記リードバルブは、前記吸気ロッカアームシャフトと排気ロッカアームシャフトの間に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のリードバルブ配置構造。
【請求項4】
前記内燃機関は、動弁系のカムシャフトがクランクケース側に配置され、同カムシャフトの回転によりプッシュロッドを介してシリンダヘッド上の前記吸気バルブと排気バルブが作動されるOHV型内燃機関であることを特徴とする請求項3記載の内燃機関のリードバルブ配置構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−92744(P2007−92744A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120504(P2006−120504)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】