説明

内燃機関の制御装置

【課題】 内燃機関の自動停止制御が行われた場合であっても、その後、冷媒による排気の冷却で水分が凝縮することを防止或いは抑制するとともに、触媒暖機性やヒータ性能を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】 触媒12に流入する排気を内燃機関50の冷却水により冷却する水冷エキマニ11と、水冷エキマニ11への冷却水の流入を制御することが可能な第1のバルブ22とを備えた排気冷却構造が設けられるとともに、自動停止制御および自動再始動制御が行われる内燃機関50について制御を行うECU1であって、水冷エキマニ11を流通する冷媒の温度を検出する検出手段と、検出手段が検出した温度が所定値L未満である場合に、水冷エキマニ11への冷却水の流入量を減少させるように第1のバルブ22を制御する制御手段と、内燃機関59が自動停止制御された場合に、所定値Lを大きくする設定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に関し、特に触媒に流入する排気を冷媒により冷却する冷却手段と、該冷却手段への冷媒の流入を制御することが可能な流入制御手段とを備えた排気冷却構造が設けられるとともに、自動停止制御および自動再始動制御が行われる内燃機関について制御を行う内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、触媒に流入する排気を冷媒により冷却する技術が知られている。かかる技術として、具体的には例えば内燃機関の冷却水で排気マニホールドを冷却する技術が特許文献1で開示されている。このほか本発明と関連性があると考えられる技術として、機関運転状態に応じて冷却部に供給する冷却媒体の割合を変更する技術が特許文献2で開示されている。この技術は具体的には複数の冷却部に供給する冷却媒体それぞれの割合を変更する技術となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−241044号公報
【特許文献2】特開2007−132313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、触媒は活性温度範囲内にあるときに好適な浄化性能を発揮する。これに対して、触媒の早期活性化を図るためには触媒を内燃機関に近接して配置することが好ましい。ところが、触媒を内燃機関に近接して配置した場合には、機関高負荷運転時に過熱による触媒の劣化や排気浄化性能の低下など触媒の機能低下が生じ、この結果、排気エミッションが悪化する虞がある。この点、これに対しては触媒に流入する排気を冷媒によって冷却することが考えられている。これによれば、近接配置による触媒の早期活性化と過熱による触媒の機能低下の防止とを両立させることも可能になる。
【0005】
一方、近年では高い燃費性能を実現するため、ハイブリッド車両やエコラン制御を行うことが可能な車両が実用化されている。これらの車両では、所定の条件のもとで内燃機関を自動停止制御および自動再始動制御することで、高い燃費性能を実現できる。具体的には例えば車両停車時にアイドリングを行う代わりに自動停止制御を行うとともに、車両発進時に自動再始動制御を行うことで、アイドリングで消費していた燃料の消費をなくし、高い燃費性能を実現できる。そして触媒に流入する排気を冷媒によって冷却する技術はこれらの車両にも適用できる。
【0006】
しかしながら、かかる技術を適用したこれらの車両では、内燃機関の自動停止制御が行われた場合に冷媒の受熱量(例えば排気から受熱する受熱量や、冷媒が内燃機関の冷却水であった場合にはさらに内燃機関から受熱する受熱量)が減少することから、冷媒の冷却性能が高まることになる。このためこれらの車両では、その後の自動再始動制御に応じて排気を冷媒で冷却した場合に、排気が大幅に冷却される結果、排気に含まれる水分が凝縮することがある。そして凝縮した水分は飛散することにより触媒に到達し、不活性状態にある触媒、或いは自動停止制御中に排気の流通がなくなった結果、不活性状態となった触媒の活性化を遅らせ、排気エミッションの悪化を招く虞がある点で問題があった。また暖房に用いられるヒータは、受熱した内燃機関の冷却水から熱を受熱するところ、内燃機関の冷却水を冷媒とした場合には、自動停止制御で冷却性能が高まることによって、ヒータ性能が損なわれる虞がある点でも問題があった。
【0007】
そこで本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の自動停止制御が行われた場合であっても、その後、冷媒による排気の冷却で水分が凝縮することを防止或いは抑制するとともに、触媒暖機性やヒータ性能を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、触媒に流入する排気を冷媒により冷却する冷却手段と、該冷却手段への冷媒の流入を制御することが可能な流入制御手段とを備えた排気冷却構造が設けられるとともに、自動停止制御が行われる内燃機関について制御を行う内燃機関の制御装置であって、前記冷却手段を流通する冷媒の温度を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した温度が所定値未満である場合に、前記冷却手段への冷媒の流入を禁止、或いは前記冷却手段への冷媒の流入量を減少させるように前記流入制御手段を制御する制御手段と、前記内燃機関が自動停止制御された場合に、前記所定値を大きくする設定手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内燃機関の自動停止制御が行われた場合であっても、その後、冷媒による排気の冷却で水分が凝縮することを防止或いは抑制するとともに、触媒暖機性やヒータ性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ECU1を関連する各構成とともに模式的に示す図である。
【図2】ECU1の具体的な構成を模式的に示す図である。
【図3】ECU1の動作をフローチャートで示す図である。
【図4】内燃機関50の自動停止制御が開始された場合のECU1の動作をフローチャートで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
図1はECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)1で実現された本実施例に係る内燃機関の制御装置を内燃機関50など関連する各構成とともに模式的に示す図である。内燃機関50には、排気系10と冷却系20とが設けられている。排気系10は水冷エキマニ11と触媒12と排気管13とを備えている。水冷エキマニ11は、内燃機関50の各気筒から排出される排気を合流させる。水冷エキマニ11を流通した排気は排気管13を介して触媒12に流入する。
【0012】
冷却系20は、ウォータポンプ21と、第1のバルブ22と、第2のバルブ23と、ヒータ24と、リザーブタンク25と、ラジエータ26と、サーモスタット27と、バイパス管28とを備えている。冷却系20には、内燃機関50および水冷エキマニ11が組み込まれている。ウォータポンプ21は内燃機関50の出力で駆動する機械式のポンプであり、冷却水を圧送する。ウォータポンプ21から吐出された冷却水は内燃機関50に設けられた図示しないウォータジャケットを流通し、内燃機関50から排出される。
【0013】
内燃機関50から排出された冷却水は、第1のバルブ22を介して水冷エキマニ11に流入する。第1のバルブ22は、本実施例では具体的にはECU1の制御のもと水冷エキマニ11への冷却水の流入量と、バイパス管28への冷却水の流入量との流入割合を調節することで、水冷エキマニ11への冷却水の流入を制御することが可能な流量調節弁となっている。水冷エキマニ11は、複数の排気管111それぞれの回りに冷媒を流通させる構造を備えており、水冷エキマニ11に流入した冷却水は複数の排気管111それぞれを冷却することで、触媒12に流入する排気を冷却する。本実施例では内燃機関50の冷却水が冷媒、水冷エキマニ11が冷却手段、第1のバルブ22が流入制御手段にそれぞれ相当している。また、本実施例では水冷エキマニ11と第1のバルブ22とが排気冷却構造として内燃機関50に設けられている。
【0014】
水冷エキマニ11から排出された冷却水は、第2のバルブ23に到達する。第2のバルブ23はECU1の制御のもと、冷却水の流通経路を切替可能な切替弁である。第2のバルブ23は具体的には流通経路を暖房用のヒータ24に冷却水を流通させる流通経路と、ヒータ24に冷却水を流通させない流通経路との間で切替可能に設けられている。ヒータ24に冷却水を流通させる流通経路は、ヒータ24の下流側でヒータ24に冷却水を流通させない流通経路に接続されている。これらの流通経路は合流後、さらにウォータポンプ11に冷却水を流通させる流通経路と、リザーブタンク25に冷却水を流通させる流通経路と、ラジエータ26に冷却水を流通させる流通経路とにそれぞれ分岐している。リザーブタンク25およびラジエータ26を流通した冷却水はサーモスタット27を介してウォータポンプ11に導かれる。水冷エキマニ11には水温センサ71が、触媒12には排気温度センサ72がそれぞれ設けられている。
【0015】
図2はECU1の具体的な構成を模式的に示す図である。ECU1はCPU2、ROM3、RAM4等からなるマイクロコンピュータと入出力回路5、6とを備えている。これらCPU2、ROM3、RAM4、および入出力回路5、6は互いにバス7で接続されている。ECU1は主に内燃機関50を制御するように構成されている。ECU1は具体的には例えば図示しない内燃機関50の燃料噴射弁を制御するように構成されている。またこのほかECU1は第1および第2のバルブ22、23を制御するように構成されている。第1および第2のバルブ22、23は制御対象としてECU1に電気的に接続されている。
【0016】
またECU1には水温センサ71や排気温度センサ72やクランク角センサ73やエアフロメータ74などの各種のセンサが電気的に接続されている。水冷エキマニ11を流通する冷却水の水温THWは水温センサ71の出力に基づき、触媒12を流通する排気の温度は排気温度センサ72の出力に基づき、内燃機関50の回転数NEはクランク角センサ73の出力に基づき、内燃機関50の吸入空気量GAはエアフロメータ74の出力に基づき、それぞれECU1で検出される。
【0017】
ROM3はCPU2が実行する種々の処理が記述されたプログラムやマップデータなどを格納するための構成である。CPU2がROM3に格納されたプログラムに基づき、必要に応じてRAM4の一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、ECU1では各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段などが機能的に実現される。この点、ECU1では例えば所定の条件のもと、内燃機関50を自動停止制御および自動再始動制御するエコラン制御手段が機能的に実現される。自動停止制御は例えば車両停車時に行われ、自動再始動制御は例えば車両発進時に行われる。なお、車両停車時であるか否かや車両発進時であるか否かは公知技術によって判定されてよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0018】
またECU1では、例えば水冷エキマニ11を流通する冷却水の温度(水温THW)を検出する検出手段と、検出手段が検出した水温THWが所定値L未満である場合に、水冷エキマニ11への冷却水の流入量を減少させるように第1のバルブ22を制御する制御手段と、内燃機関50が自動停止制御された場合に、所定値Lを大きくする設定手段とが機能的に実現される。またECU1では、例えば第2のバルブ23を制御する制御手段が機能的に実現される。第2のバルブ23を制御する制御手段は、例えば水温THWが所定値L未満である場合に冷却水の流通経路をヒータ24に冷却水を流通させない流通経路に切り替えるように第2のバルブ23を制御するように実現されている。
【0019】
また上述した第1のバルブ22を制御する制御手段は、さらに例えば水温THWが所定値L未満である場合に水冷エキマニ11に冷却水を流通させないように第1のバルブ22を制御したり、触媒12の床温に応じて水冷エキマニ11への冷却水量を調節し、触媒12の床温が狙い値Nになるように第1のバルブ22を制御したり、水温THWに応じて水冷エキマニ11の冷却水量を調節し、水温THWが所定の範囲内に収まるように第1のバルブ22を制御したりするように実現されている。
【0020】
次にECU1の動作を図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本フローチャートは内燃機関50が始動した際に開始され、内燃機関50運転中にごく短い間隔で繰り返し実行される。ECU1は水温THWが下限値未満であるか否かを判定する(ステップS11)。本実施例ではこの下限値が所定値Lとなっており、下限値は例えば60℃に設定することができる。ステップS11で肯定判定であれば、ECU1はステップS12で第2のバルブ23を制御し、冷却水の流通経路をヒータ24に冷却水を流通させない流通経路に切り替える(第2のバルブ23のヒータ24側閉)。これにより、冷却水がヒータ24で放熱することを防止できるため、冷却水の暖機性を高めることができる。
【0021】
ステップS12に続くステップS13で、ECU1は第1のバルブ22を制御し、水冷エキマニ11への冷却水の流入量を所定の度合いだけ減少させる(第1のバルブ22の水冷エキマニ11側減)。ステップS13の後には、本フローチャートを一旦終了する。その後、水温THWが下限値よりも低い場合には、本フローチャートを再開する度に、ステップS11からS13までに示す処理が繰り返し実行される。これにより、第1のバルブ22が冷間時に水冷エキマニ11への冷却水の流入量を減少させるように、さらには水冷エキマニ11への冷却水の流入を禁止するように制御されることになる。そしてこれにより、冷却水が水冷エキマニ11で排気から受熱することを防止できるため、排気温度を高めて触媒12の暖機性を向上させることができる。
【0022】
一方、水温THWが下限値以上になった場合には、本フローチャートを再開した場合に、ステップS11で否定判定されることになる。このときECU1は、ステップS14で第2のバルブ23を制御し、冷却水の流通経路をヒータ24に冷却水を流通させる流通経路に切り替える(第2のバルブ23のヒータ24側開)。これにより、ヒータ24が冷却水から受熱できるようになる。続いてECU1は水温THWが上限値よりも高いか否かを判定する(ステップS15)。肯定判定であれば、ECU1はステップS16で第1のバルブ22を制御し、水冷エキマニ11への冷却水の流入量を所定の度合いだけ増大させる(第1のバルブ22の水冷エキマニ11側増)。ステップS16の後には本フローチャートを一旦終了する。
【0023】
その後、水温THWが上限値より高い場合には、本フローチャートを再開する度に、ステップS11およびステップS14からS16までに示す処理が繰り返し実行される。これにより、第1のバルブ22が水冷エキマニ11への冷却水の流入量を増大させるように、さらにはバイパス管28への冷却水の流入を禁止するように制御されることになる。すなわち、ステップS11の肯定判定に続くステップS13に示す処理と、ステップS11の否定判定に続くステップS16に示す処理とで、第1のバルブ22が、水温THWに応じて水冷エキマニ11の冷却水量を調節し、水温THWが所定の範囲内に収まるように制御される。これにより、排気の冷却による凝縮水の発生を防止或いは抑制できるとともに、ヒータ24の性能や触媒暖機性の向上を図ることができる。またこれにより、排気の冷却不足による触媒12の過熱を防止或いは抑制でき、この結果、触媒12の機能低下や排気エミッションの悪化を防止或いは抑制できる。
【0024】
その後、本フローチャートを再開したときに水温THWが上限値以下になった場合には、ステップS15で否定判定される。このときECU1は、触媒12の床温が狙い値よりも低いか否かを判定する(ステップS17)。触媒12の床温は例えば触媒12の床温を直接検知する温度センサの出力に基づき検出することができる。但しこれに限られず、排気温度などの種々のパラメータに基づき、触媒12の床温を推定することで検出してもよい。また、狙い値は例えば400℃に設定することができる。但しこれに限られず、狙い値は例えば所定の幅を有する範囲として設定されてもよい。
【0025】
ステップS17で肯定判定であればステップS13に進む。これにより排気の冷却が防止或いは抑制されるため、触媒12の暖機を促進でき、この結果、排気エミッションの悪化を防止或いは抑制できる。一方、ステップS17で否定判定であれば、ECU1は触媒12の床温が狙い値よりも大きいか否かを判定する(ステップS18)。否定判定であれば、触媒12の床温が狙い値であると判断される。この場合には本フローチャートを一旦終了する。一方、ステップS18で肯定判定であればステップS16に進む。これにより、排気の冷却が促進されるため、触媒12の床温を下げることができ、この結果、排気エミッションの悪化を防止或いは抑制できる。
【0026】
なお、第1のバルブ22を制御する制御手段を、水温THWが所定値L未満である場合に水冷エキマニ11に冷却水を流通させないように第1のバルブ22を制御する代わりに、内燃機関50の運転状態(ここでは回転数NEおよび吸入空気量GA)と水温THWとに応じて水冷エキマニ11への冷却水量を調節し、ヒータ24の性能が向上するように第1のバルブ22を制御するように実現することもできる。このように制御することは、例えば第2のバルブ23やパイパス管28を設けずに、第1のバルブ22を水冷エキマニ11への冷却水の流入量を調節可能な流量調節弁とするとともに、水冷エキマニ11からヒータ24に冷却水が流入するように冷却経路を構成した場合に特に有効である。
【0027】
ここで、内燃機関50の運転状態(ここでは回転数NEおよび吸入空気量GA)が一定で、且つ冷却水の流量が一定の場合には、水温THWの上昇幅ΔTはほぼ一定となる。この点、従来の冷却水の流量の設定は、例えば水温THWが高い場合を想定して、内燃機関50の運転状態に応じて上昇幅ΔTが冷却水の沸騰を招くことがない幅となるように行われている。しかしながら、かかる設定では例えばある運転状態で上昇幅ΔTが10℃となる場合に、水温THWが低い場合にも、同じ運転状態で上昇幅ΔTが10℃になってしまうことになる。具体的には例えば水温THWが25℃である場合には、水温THWは35℃に抑制されてしまうことになる。すなわち、かかる設定では水温THWが低い場合にヒータ24の受熱量が低く制限されてしまうことになる。
【0028】
これに対して、第1のバルブ22を制御する制御手段を上述のように構成した場合には、ステップS13で、ECU1は回転数NEと吸入空気量GAと水温THWとに応じて水冷エキマニ11への冷却水量を調節し、ヒータ24の性能が向上するように第1のバルブ22を制御することになる。そしてこの場合、ECU1は具体的には台上試験の結果等に基づき、回転数NEと吸入空気量GAと水温THWとに応じて水冷エキマニ11への冷却水の流入量を予め設定したマップデータを参照して、第1のバルブ22を制御する。これにより、ヒータ24の受熱量を増大させることができるため、ヒータ24の性能を向上させることができる。なお、上述のマップデータは予めROMに格納しておくことができる。またこの場合、ステップS12およびS14に示す処理は省略してよい。
【0029】
次に内燃機関50の自動停止制御が開始された場合のECU1の動作を図4に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本フローチャートは内燃機関50が始動した際に開始され、内燃機関50運転中にごく短い間隔で繰り返し実行される。ECU1は自動停止制御が開始されたか否かを判定する(ステップS21)。自動停止制御が開始されたか否かは、例えば自動停止制御を実行するための所定の条件が成立したか否かを判定することにより判定することができる。ステップS21で否定判定であれば、本フローチャートを一旦終了する。一方、ステップS21で肯定判定であれば、ECU1は所定値Lを大きくする処理を実行する(ステップS22)。本ステップでは、例えば60℃であった所定値Lを70℃にすることができる。
【0030】
これにより、図3に示すフローチャートのステップS11の下限値が大きくなる。そしてこれにより、自動停止制御が行われた結果、受熱量の減少により冷却水の冷却性能が高まっても、水温THWが70℃になるまでの間、水冷エキマニ11への冷却水の流入量が減少され、さらには水冷エキマニ11への冷却水の流入が禁止されるため、冷却性能が高まった冷却水により排気が冷却されることが防止或いは抑制される。このためこれにより、排気に含まれる水分が凝縮することを防止或いは抑制でき、また仮に水分が凝縮した場合であっても、所定値Lを大きくしたことで凝縮した水分を蒸発しやくすることができる。
【0031】
このためこれにより、凝縮した水分が飛散により触媒12に到達し、不活性状態にある触媒12、或いは自動停止制御中に排気の流通がなくなった結果、不活性状態となった触媒12の活性化が遅れることを防止或いは抑制できる。また所定値Lを大きくしたことで排気温度を高めることもできる。すなわちこれらにより触媒暖機性を向上させることができる。また冷却性能が高まった冷却水がヒータ24に流入することが防止されるとともに、所定値Lを大きくしたことで冷却水の暖機性を高めることができるため、ヒータ性能を向上させることもできる。
このようにECU1は内燃機関50の自動停止制御が行われた場合であっても、その後、冷却水による排気の冷却で水分が凝縮することを防止或いは抑制するとともに、触媒暖機性やヒータ性能を向上させることができる。
【0032】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
例えば上述した実施例ではエコラン制御が行われる内燃機関50が内燃機関である場合について詳述したが、内燃機関は例えばハイブリッド車両に搭載される内燃機関であってもよい。
【0033】
また例えば上述した実施例では水冷エキマニ11が冷却手段である場合について詳述したが、冷却エキマニ11の具体的な構成は必ずしもこれに限られず、排気マニホールドの全部または一部を冷媒によって冷却することが可能なその他の適宜の構成であってもよい。また冷却手段は例えば内燃機関の排気ポート周りに冷却水などの冷媒を流通させる流路を形成する流路形成部などであってもよい。
【0034】
また例えば上述した実施例では流量調節弁である第1のバルブ22が流入制御手段である場合について詳述したが、流入制御手段は必ずしもこれに限られず、冷却手段への冷媒の流入を制御するにあたって、冷媒の流入を許可或いは遮断する遮断弁によって実現されてもよい。また流入制御手段は、例えば機械式のウォータポンプの代わりに別途設けた電動式のウォータポンプや、冷却手段に対して専用に設けた電動式ポンプなどであってもよい。
【0035】
また、検出手段や制御手段や設定手段は主に内燃機関50を制御するECU1で実現することが合理的であるが、例えばその他の電子制御装置や専用の電子回路などのハードウェアやこれらの組み合わせによって実現されてもよい。この点、本発明の内燃機関の制御装置は、例えば複数の電子制御装置や、電子回路等のハードウェアや、電子制御装置と電子回路等のハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。同様に本発明の内燃機関の制御装置で機能的に実現される各種の手段も、複数の電子制御装置や、電子回路等のハードウェアや、電子制御装置と電子回路等のハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ECU
10 排気系
11 水冷エキマニ
12 触媒
13 排気管
20 冷却系
21 ウォータポンプ
22 第1のバルブ
23 第2のバルブ
24 ヒータ
25 リザーブタンク
26 ラジエータ
27 サーモスタット
28 バイパス管
50 内燃機関
71 水温センサ
72 排気温度センサ
73 クランク角センサ
74 エアフロメータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒に流入する排気を冷媒により冷却する冷却手段と、該冷却手段への冷媒の流入を制御することが可能な流入制御手段とを備えた排気冷却構造が設けられるとともに、自動停止制御および自動再始動制御が行われる内燃機関について制御を行う内燃機関の制御装置であって、
前記冷却手段を流通する冷媒の温度を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した温度が所定値未満である場合に、前記冷却手段への冷媒の流入を禁止、或いは前記冷却手段への冷媒の流入量を減少させるように前記流入制御手段を制御する制御手段と、
前記内燃機関が自動停止制御された場合に、前記所定値を大きくする設定手段とを備えた内燃機関の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−163903(P2010−163903A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5170(P2009−5170)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】