内燃機関の燃料噴射装置
【課題】燃料噴霧の指向性を燃圧によって変化させることが可能な内燃機関の燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、燃料噴射弁21Aは、複数の噴孔25uが含まれ気筒の中心線方向の上側に位置する上側噴孔群25Uと、複数の噴孔25dが含まれ中心線方向の下側に位置する下側噴孔群25Dとを含み、下側噴孔群25Dの噴射方向下流での燃料存在密度が、上側噴孔群25Uの噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高い特性を有している。その特性を得るため、燃料噴射弁21Aは、下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量が上側噴孔群Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成されている。
【解決手段】燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、燃料噴射弁21Aは、複数の噴孔25uが含まれ気筒の中心線方向の上側に位置する上側噴孔群25Uと、複数の噴孔25dが含まれ中心線方向の下側に位置する下側噴孔群25Dとを含み、下側噴孔群25Dの噴射方向下流での燃料存在密度が、上側噴孔群25Uの噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高い特性を有している。その特性を得るため、燃料噴射弁21Aは、下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量が上側噴孔群Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えた内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔ノズルを持つ燃料噴射弁を備えた燃料噴射装置として、燃料噴霧間の距離が近く燃圧が高い場合に多孔ノズルの噴射方向下流の空間の燃料存在密度が高くなって、燃料噴霧群全体のペネトレーションが増大する性質を、ピストン運動量が弱い条件で利用するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−54733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、噴霧特性は噴孔形状、噴霧の広がり角、噴射方向などのノズル固有仕様に依存する。噴霧特性には燃圧で変化するものもあるが、噴霧特性のうち燃料噴霧の指向性を燃圧によって変化させることは困難である。つまり、従来の燃料噴射弁においては、燃料噴霧の指向性を特定の燃圧の前後で有意に変化させることは困難な状況にある。
【0005】
そこで、本発明は、燃料噴霧の指向性を燃圧によって変化させることが可能な内燃機関の燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の燃料噴射装置は、内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の中心線を横切る方向に噴射された燃料が向かうように配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されているものである(請求項1)。また、本発明の第2の燃料噴射装置は、内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の吸気側から排気側に向けて配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されているものである(請求項2)。
【0007】
上側噴孔群及び下側噴孔群から噴射された燃料噴霧群を合わせて一つの燃料噴霧とみなした場合、燃圧が低ければ燃料存在密度の偏りが目立たずに各燃料噴霧が離散的であり一体となり難い。一方、燃圧が高ければ下側噴孔群の噴射方向下流の燃料存在密度が更に高まって下側の燃料噴霧群が全体に対する主要な流れを形成した一つの燃料噴霧が得られる。その燃料噴霧は、下側の燃料噴霧群が主要な流れを形成するため、燃圧が低い場合に比べてその指向性が下側に変化する。従って、燃圧を適宜制御することによって燃料噴霧の指向性を変化させることができるので、内燃機関の運転状態に適した燃料噴霧を単一の燃料噴射弁によって得ることが可能となる。
【0008】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様として、前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される燃料の流量が、前記上側噴孔群から噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成してもよい(請求項3)。この態様によれば、上側噴孔群に含まれる噴孔と下側噴孔群に含まれる噴孔とが同一の噴孔であっても、下側噴孔群から噴射される燃料の流量が上側噴孔群から噴射される燃料の流量に比べて大きいことにより、下側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度が上側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度に比べて高くなる。
【0009】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様として、前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が第1直線上に、前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が第2直線上にそれぞれ配置されており、前記第1直線と前記第2直線とが互いに平行であってもよい(請求項4)。また、前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチと、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチとが等しく、前記第1ピッチ及び第2ピッチが前記第1直線と前記第2直線との間隔よりも大きくてもよい(請求項5)。これらの場合には、各噴孔群の配列が簡素化されるため燃料噴射弁の製作が容易になる。また、多くの燃料噴射弁を製作した場合の個体差が生じ難い利点がある。
【0010】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様において、前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、前記上側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔に比べて狭くなるように構成されてもよい(請求項6)。下側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、上側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔に比べて狭くなることで、下側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度が上側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度に比べて高くなる。隣り合う燃料噴霧間の間隔は、隣り合う2つの噴孔の中心間距離を調整することにより調整可能である。
【0011】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様において、前記燃料噴射弁は、前記中心線と直交しかつ前記燃料噴射弁の先端を通る基準線を基準とした下向きの噴射角の変化率が切り替わる特定燃圧値が燃圧の変更範囲内に存在するように構成されており、前記内燃機関が所定の回転速度よりも低い低回転速度時に前記特定燃圧値よりも低くなるように、かつ前記内燃機関が前記所定の回転速度以上の高回転速度時に前記特定燃圧値以上となるように、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を制御する燃圧制御手段を更に備えてもよい(請求項7)。内燃機関の回転速度が高くなるに従って、気筒内に形成されるタンブルの渦中心は気筒の中心線方向の下方向に移動することが知られている。この態様によれば、内燃機関の低回転速度時に特定燃圧値よりも燃圧を低く、内燃機関の高回転速度時に燃圧を特定燃圧値以上とすることができるので、タンブルの渦中心の変化に燃料噴霧の噴射角を合わせることが可能になる。これにより、内燃機関の回転速度の変化に伴って変化するタンブルに燃料噴霧をうまく乗せて混合気の攪拌を促進できる。よって、燃料混合気の均質度を向上させることができる。
【0012】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様として、前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチは、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチよりも大きくされていてもよい(請求項8)。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の燃料噴射装置によれば、燃圧を適宜制御することによって燃料噴霧の指向性を変化させることができるので、内燃機関の運転状態に適した燃料噴霧を単一の燃料噴射弁によって得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の形態に係る燃料噴射装置が適用された内燃機関の要部の断面を模式的に示した図。
【図2】第1の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示した図。
【図3】図1の燃料噴射弁の先端から噴射方向に向かう距離Zの位置における燃料噴霧のA−A断面を模式的に示した図。
【図4】燃圧と噴霧長との関係を示した図。
【図5】燃圧が特定燃圧値よりも低い場合、燃圧が特定燃圧値以上の場合のそれぞれにおける燃料噴霧の状態を気筒の半径方向から見て模式的に示した説明図。
【図6】内燃機関の回転速度の変化に伴うタンブルの渦中心の変化を示した図。
【図7】第2の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示した図。
【図8】第3の形態に係る燃料噴射装置が適用された内燃機関を気筒の中心線方向から見た状態を示した平面図。
【図9】第3の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示した図。
【図10】図9のX−X線に沿った断面図。
【図11】燃圧が特定燃圧値よりも低い場合、燃圧が特定燃圧値以上の場合のそれぞれにおける燃料噴霧の状態を気筒の中心線方向から見て模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の形態)
図1は本発明の第1の形態に係る燃料噴射装置が適用された内燃機関の要部の断面を模式的に示している。内燃機関1は不図示の車両に走行用動力源として搭載可能な火花点火式の4サイクル内燃機関として構成されている。内燃機関1は複数(図では1つ)の気筒2を備えている。各気筒2はシリンダブロック3に形成されており、各気筒2の上部はシリンダヘッド4にて塞がれている。各気筒2にはピストン5が往復運動自在に設けられている。なお、本発明における上側、下側とは、気筒における上死点側、下死点側を意味しており、例えば気筒が横向き等に配置されていても、上死点に近い側が上側であり、下死点に近い側が下側である。
【0016】
各気筒2には吸気通路9及び排気通路10がそれぞれ接続されている。吸気通路9はシリンダヘッド4に形成された吸気ポート11を含み、排気通路10はシリンダヘッド4に形成された排気ポート12を含む。吸気ポート11は吸気バルブ13にて、排気ポート12は排気バルブ14にてそれぞれ開閉される。図示を省略したが、排気通路10には三元触媒が設けられていて、排気通路10を流れる既燃ガスである排気はその三元触媒にて浄化される。
【0017】
シリンダヘッド4には、気筒2内に先端部を臨ませるようにして気筒2の天井面の中央部に配置された点火プラグ20が設けられている。また、シリンダヘッド4には気筒2内に燃料を噴射する燃料噴射弁21Aが吸気ポート11に沿うように設けられている。即ち、燃料噴射弁21Aは、気筒2の中心線CLを横切る方向に噴射された燃料が向かうように配置されている。燃料噴射弁21Aは電磁駆動式の燃料噴射弁であり、その先端部には複数の噴孔が形成されている。気筒2毎に設けられた燃料噴射弁21Aは共通のデリバリパイプ22に接続される。デリバリパイプ22には不図示のオイルポンプにて圧送された燃料が導かれる。デリバリパイプ22には各燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧を調整する燃圧調整機構23が設けられている。燃料噴射弁21A及び燃圧調整機構23のそれぞれはエンジンコントロールユニット(ECU)24にて制御される。ECU24は内燃機関1の運転状態を適正に制御するためのコンピュータとして構成されている。ECU24には、内燃機関1の回転速度等の運転状態を示す情報が不図示の各種センサから入力される。ECU24は、こうした情報を利用しつつ予め用意された各種の制御プログラムを実行して燃料の噴射時期、噴射期間(噴射量)等の制御を含む燃料噴射制御や点火時期の制御等を行う。ECU24が行う本発明に関連する制御については後述する。
【0018】
図2に示したように、燃料噴射弁21Aは合計6つの噴孔25u、25dが形成されている。なお、図2の上下方向は図1の上下方向に、図2の左右方向は図1の紙面と直交する方向にそれぞれ対応する。図2に示したこれらの噴孔のうち、気筒2の中心線CL(図1参照)の方向の上側に位置する3つの噴孔25uは上側噴孔群25Uを構成し、中心線CLの方向の下側に位置する3つの噴孔25dは下側噴孔群25Dを構成する。上側噴孔群25Uに含まれる3つの噴孔25uは第1直線L1上に、下側噴孔群25Dに含まれる3つの噴孔25dは第2直線L2上にそれぞれ配置されており、これら第1直線L1及び第2直線L2は互いに平行である。上側噴孔群25Uに含まれる隣接する2つの噴孔25uの中心間距離である第1ピッチP1と下側噴孔群25Dの第2ピッチP2とは等しい。そして、第1ピッチP1及び第2ピッチP2は第1直線L1と第2直線L2との間隔dよりも大きい。燃料噴射弁21Aは、複数の噴孔が互いに同一で、各噴孔群が直線上に配置されているため各噴孔群の配列が簡素化される。これにより燃料噴射弁21Aの製作が容易になる。また、多くの燃料噴射弁21Aを製作した場合の個体差が生じ難い利点がある。
【0019】
燃料噴射弁21Aは、各噴孔に燃料を導く燃料通路(不図示)の設計によって下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量が上側噴孔群25Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成されている。そのため、燃料噴射弁21Aが噴射する燃料噴霧F(図1)には、その燃料存在密度の分布の上側が低く下側が高い偏りが形成される。図3は、燃料噴射弁21Aの先端から噴射方向に向かう距離Zの位置(図1参照)における燃料噴霧F(燃料噴霧群)のA−A断面を模式的に示している。図3から明らかなように、燃料噴霧Fは各噴孔から噴射される噴霧fu、fdが集まって構成され、各噴霧fu、fdの配列は図2に示された噴孔25u、25dの配列と相似関係にある。つまり、上側噴孔群25Uから噴射された噴霧fuは第1直線S1上に、下側噴孔群25Dから噴射された噴霧fdは第2直線S2上にそれぞれ配置され、これら第1直線S1及び第2直線S2は互いに平行である。そして、噴霧fuの第1ピッチp1と噴霧fdの第2ピッチp2とが等しく、第1ピッチp1及び第2ピッチp2は第1直線S1と第2直線S2との間隔d′よりも大きい。そして、図示のように、下側噴孔群25Dから噴射された噴霧fdの流量Qdが上側噴孔群25Uから噴射された噴霧fuの流量Quよりも大きくなっている。換言すれば、燃料噴射弁21Aは下側噴孔群25Dの噴射方向下流における燃料存在密度が上側噴孔群25Uの噴射方向下流における燃料存在密度よりも高い特性を有する。
【0020】
燃料噴霧Fの燃料存在密度が上側と下側とで相違することから、燃料噴霧Fの指向性(噴射角及び噴霧長)を燃圧によって変化させることができる。図1に示すように、噴射角Vは、気筒2の中心線CLと直交しかつ燃料噴射弁21Aの先端を通る基準線Lsを基準とした下向きの角度として定義される。なお、噴射角Vを決定する直線Lは噴孔から所定距離離れた位置における燃料噴霧Fの重心Gを通るものとして定義される。
【0021】
図4は燃圧と噴霧長との関係を示している。なお、燃圧に対する噴射角の変化も図4と同様の傾向を示す。この図の実線は本実施形態を、破線は燃料存在密度が上下で同一である比較例をそれぞれ示している。図4から明らかなように、燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧が変化した場合、その燃圧の変更範囲内に噴霧長(噴射角)の変化率が切り替わる特定燃圧値Pcが存在する。つまり、噴霧長及び噴射角に代表される燃料噴霧Fの指向性が特定燃圧値Pcを境界として顕著に変化する。
【0022】
図5は燃圧が特定燃圧値よりも低い場合と特定燃圧値以上の場合とのそれぞれにおける燃料噴霧Fの状態を模式的に示した説明図であり、図中Aは燃圧が特定燃圧値より低い場合を、図中Bは燃圧が特定燃圧値以上の場合をそれぞれ示している。図5のAに示したように、燃料噴霧Fは、燃圧が低ければ燃料存在密度の偏りが目立たずに各燃料噴霧fu、fdが離散的である。そのため、噴霧長lは相対的に短くなり、燃料噴霧Fの重心も燃料噴霧Fの略中央部に位置する。そして噴射角Vも相対的に小さくなる。一方、図5のBに示したように、燃料噴霧Fは、燃圧が高ければ下側噴孔群25Dの噴射方向下流の燃料存在密度が更に高まって下側の燃料噴霧群fd…が全体に対する主要な流れを形成する。そのため、燃料噴霧Fは、燃圧が低い場合に比べてその指向性が下側に変化する。つまり、燃料噴霧Fは、重心位置が下側にずれる。そして、下側の燃料噴霧群fd…が支配的になり上側の燃料噴霧群fu…を巻き込むため、燃料噴霧Fの指向性、即ち噴霧長l及び噴射角Vがそれぞれ拡大する。噴射角Vの変化は一定値である燃料噴射弁21Aの搭載角αを参照すれば明確である。以上のことから、下側の燃料噴霧群fd…が主要な流れを形成し始める燃圧値が図4に示した特定燃圧値Pcと推測できる。
【0023】
次に、このような特性を利用したECU24による燃圧の制御について説明する。図6は内燃機関1の回転速度の変化に伴うタンブルの渦中心の変化を示している。図6に示すように、内燃機関1は吸気行程において気筒2内にタンブルTが形成されるように吸気ポート11が設計されている。そして、タンブルTの渦中心Oは回転速度が高くなるに従って下側にシフトする。一般に、タンブルの渦中心の少し上側に燃料噴霧が位置するように噴射角が設定されると、燃料噴霧がタンブルに乗って攪拌されやすくなる。従って、このように噴射角を設定することは燃料混合気の均質性を高めるために有利であることが知られている。
【0024】
そこで、ECU24は、燃圧調整機構23を操作することによって、タンブルTの渦中心Oが高い位置にある低回転速度時に燃圧を特定燃圧値Pcよりも低く制御して燃料噴霧Fの噴射角Vを小さくし、かつタンブルTの渦中心Oが低い位置にある高回転速度時に燃圧を特定燃圧値Pcよりも高く制御して燃料噴霧Fの噴射角V及び噴霧長lをそれぞれ大きくしている。これにより、タンブルTの渦中心Oの変化に応じて燃料噴霧Fの噴射角Vを合わせることが可能になるため、内燃機関1の回転速度の変化に伴って変化するタンブルTに燃料噴霧Fをうまく乗せて混合気の攪拌を促進できる。よって、燃料混合気の均質度を向上させることができる。本形態において、本発明に係る燃圧制御手段はECU24及び燃圧調整機構23が協働することにより実現される。
【0025】
(第2の形態)
次に、本発明の第2の形態について図7を参照しながら説明する。図7は第2の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示している。第2の形態は噴孔の配列を除いて第1の形態と共通である。図7に示すように、第2の形態の燃料噴射弁21Bでは、噴孔の個数は第1の形態と同一であるが、下側噴孔群25Dの第2ピッチP2が上側噴孔群25Uの第1ピッチP1よりも小さくなっている。これにより、下側噴孔群25Dから噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、上側噴孔群25Uから噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔よりも狭くなる。従って、本形態においても、下側噴孔群25Dの噴射方向下流の燃料存在密度が上側噴孔群25Uの噴射方向下流の燃料存在密度よりも高くなるため、燃圧の変化に伴って燃料噴霧の指向性が変化する。これにより、上述した第1の形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合においては、第1の形態と同様に下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量を上側噴孔群25Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくしてもよいし、上側噴孔群25U及び下側噴孔群25Dの流量配分を同じにしてもよい。
【0026】
(第3の形態)
次に、本発明の第3の形態について図8〜図11を参照しながら説明する。第3の形態は噴孔の個数及び配列を除いて第1の形態と共通である。図8〜図10に示したように、燃料噴射弁21Cは、気筒2の吸気側から排気側へ向けて配置されている。燃料噴射弁21Cに設けられた噴孔の個数は合計4つである。上側噴孔群25Uに含まれる2つの噴孔25uは第1直線L1上に、下側噴孔群25Dに含まれる2つの噴孔25dは第2直線L2上にそれぞれ配置されており、これら第1直線L1及び第2直線L2は互いに平行である。そして、下側噴孔群25Dの第2ピッチP2が上側噴孔群25Uの第1ピッチP1よりも小さくなっている。第1ピッチP1及び第2ピッチP2のそれぞれは第1直線L1と第2直線L2との間隔dよりも大きい。これにより、下側噴孔群25Dから噴射される2つの燃料噴霧間の間隔が、上側噴孔群25Uから噴射される2つの燃料噴霧間の間隔よりも狭くなる。従って、第3の形態においても、下側噴孔群25Dの噴射方向下流の燃料存在密度が上側噴孔群25Uの噴射方向下流の燃料存在密度よりも高くなるため、燃圧の変化に伴って燃料噴霧の指向性が変化する。これにより、上述した第1の形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、図10に示したように、燃料噴射弁21Cに形成された4つの噴孔25u、25dは気筒2の中心線CL方向を上下方向とした場合の左右方向に広がるように配置されている。なお、図10の左右方向は図1の紙面と直交する方向に相当する。各噴孔25u、25dの噴射方向は全体として放射状に設定されている。4つの噴孔25u、25dがこのように構成されているため、気筒2の中心線CL方向から見た場合、各噴孔25u、25dからの燃料噴霧fは図8に示した状態で気筒2内に配置される。各噴孔25u、25dの噴射方向を規定する直線を噴射軸線Axfとし、隣り合う2つの噴射軸線Axfで形成される角度を挟み角θ1、θ2、θ3とする。この場合、気筒2の中央部の近くに位置する2つの噴射軸線Axfで形成される挟み角θ1は、他の挟み角θ2、θ3に比べて小さくなっている。本形態では、挟み角θ2と挟み角θ3とは同一である。但し、これらの挟み角θ2、θ3は、中央部の挟み角θ1よりも大きいことを条件として、互いに異ならせることもできる。
【0028】
図8から理解できるように、挟み角が小さい場合は大きい場合に比べて隣接する燃料噴霧間の噴霧間隔が狭くなる。従って、4つの噴孔25u、25dから噴射された4つの燃料噴霧fは中央部で噴霧間隔が狭く、その外側で噴霧間隔が広くなるように気筒2内に配置される。4つの燃料噴霧fがこのように配置されるため、燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧が低ければ、中央部の噴霧間隔が狭くても隣接する2つの燃料噴霧は合体しない。そのため、図11のAに示したように、4つの燃料噴霧fの集まりを一つの燃料噴霧Fとみなした場合、その一つの燃料噴霧Fの噴霧形状は中央部の燃料存在密度が外側よりも低い中抜き状となる。一方、その燃圧が高ければ、中央部に位置する2つの燃料噴霧の噴霧間隔が更に狭くなってこれらの燃料噴霧fが合体する。そのため、図11のBに示したように、燃料噴霧Fの噴霧形状は中央部とその外側とで燃料存在密度の差が少ない中実状となる。複数の燃料噴霧fが合体すると合体前に比べてペネトレーションが増加する。このため、図11のBに示すように燃料噴霧Fの噴霧長lは図11のAに示した合体前に比べて増加する。
【0029】
このように、第3の形態によれば、燃圧によって燃料噴霧の指向性を変更できるとともに噴霧形状を中抜き状と中実状との間で変更することができる。なお、噴霧形状は、指向性の変化と同様に噴霧長の変化率が切り替わる特定燃圧値Pc(図4)を境界として変化すると推測される。従って、第3の形態は、燃圧が変化することによって噴霧形状と指向性とが同調して特定燃圧値Pcを境界として変化すると考えられる。一般に、中抜き状の噴霧形状が適した運転状態と、中実状の噴霧形状が適した運転状態とが存在するため、内燃機関1の運転状態に応じて燃圧を、特定燃圧値Pcよりも低い状態と特定燃圧値Pc以上の状態との間で切り替えることで、運転状態に適した噴霧形状を選択することができる。
【0030】
例えば、点火プラグ20の近傍に成層混合気を形成して着火性を向上させるべき運転状態の場合、ECU24が燃圧調整機構23を操作することによって、燃圧を特定燃圧値Pcよりも低い状態に制御して燃料噴霧Fの噴霧形状を中抜き状に変更する(図11のA参照)。この場合、燃料濃度が局所的に高い成層混合気を点火プラグ20の近傍に形成できる。しかも、中抜き状の噴霧形状のため点火プラグ20に対する燃料の衝突を抑制できるから点火プラグ20の点火不良を回避することが可能となる。また、内燃機関1の出力を向上させるべき運転状態の場合、ECU24が燃圧調整機構23を操作することによって、燃圧を特定燃圧値Pc以上の状態に制御して燃料噴霧Fの噴霧形状を中実状に変更する(図11のB参照)。この場合、燃料噴霧Fのペネトレーションが高いため、その噴流効果によって内燃機関1の燃焼効率が増加して出力の向上に寄与することができる。このようにECU24及び燃圧調整機構23が協働することによって燃圧制御手段として機能できる。なお、第3の形態においても、第1の形態と同様に下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量を上側噴孔群25Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくしてもよいし、上側噴孔群25U及び下側噴孔群25Dの流量配分を同じにしてもよい。
【0031】
本発明は上記各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記の各形態は6又は4つの噴孔を上下2列に直線的に配列したものであるが、噴孔の個数に制限はない。また、噴孔の配列も、気筒の中心線方向の上側に位置する上側噴孔群及び下側に位置する下側噴孔群をそれぞれ観念できるものであれば格別の制限はない。要するに、下側噴孔群の噴射方向下流の燃料存在密度が上側噴孔群の噴射方向下流の燃料存在密度よりも高くなるのであれば、複数の噴孔をどのように配列してもよい。また、複数の噴孔を全て同じ形状及び寸法に設計することは一例であって、噴孔毎に形状や寸法を変化させることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 内燃機関
2 気筒
21A〜21C 燃料噴射弁
23 燃圧調整機構(燃圧制御手段)
24 ECU(燃圧制御手段)
25U 上側噴孔群
25D 下側噴孔群
25u、25d 噴孔
CL 中心線
L1 第1直線
L2 第2直線
Ls 基準線
V 噴射角
d 第1直線と第2直線との間隔
P1 第1ピッチ
P2 第2ピッチ
Pc 特定燃圧値
【技術分野】
【0001】
本発明は、気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えた内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔ノズルを持つ燃料噴射弁を備えた燃料噴射装置として、燃料噴霧間の距離が近く燃圧が高い場合に多孔ノズルの噴射方向下流の空間の燃料存在密度が高くなって、燃料噴霧群全体のペネトレーションが増大する性質を、ピストン運動量が弱い条件で利用するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−54733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、噴霧特性は噴孔形状、噴霧の広がり角、噴射方向などのノズル固有仕様に依存する。噴霧特性には燃圧で変化するものもあるが、噴霧特性のうち燃料噴霧の指向性を燃圧によって変化させることは困難である。つまり、従来の燃料噴射弁においては、燃料噴霧の指向性を特定の燃圧の前後で有意に変化させることは困難な状況にある。
【0005】
そこで、本発明は、燃料噴霧の指向性を燃圧によって変化させることが可能な内燃機関の燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の燃料噴射装置は、内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の中心線を横切る方向に噴射された燃料が向かうように配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されているものである(請求項1)。また、本発明の第2の燃料噴射装置は、内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の吸気側から排気側に向けて配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されているものである(請求項2)。
【0007】
上側噴孔群及び下側噴孔群から噴射された燃料噴霧群を合わせて一つの燃料噴霧とみなした場合、燃圧が低ければ燃料存在密度の偏りが目立たずに各燃料噴霧が離散的であり一体となり難い。一方、燃圧が高ければ下側噴孔群の噴射方向下流の燃料存在密度が更に高まって下側の燃料噴霧群が全体に対する主要な流れを形成した一つの燃料噴霧が得られる。その燃料噴霧は、下側の燃料噴霧群が主要な流れを形成するため、燃圧が低い場合に比べてその指向性が下側に変化する。従って、燃圧を適宜制御することによって燃料噴霧の指向性を変化させることができるので、内燃機関の運転状態に適した燃料噴霧を単一の燃料噴射弁によって得ることが可能となる。
【0008】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様として、前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される燃料の流量が、前記上側噴孔群から噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成してもよい(請求項3)。この態様によれば、上側噴孔群に含まれる噴孔と下側噴孔群に含まれる噴孔とが同一の噴孔であっても、下側噴孔群から噴射される燃料の流量が上側噴孔群から噴射される燃料の流量に比べて大きいことにより、下側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度が上側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度に比べて高くなる。
【0009】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様として、前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が第1直線上に、前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が第2直線上にそれぞれ配置されており、前記第1直線と前記第2直線とが互いに平行であってもよい(請求項4)。また、前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチと、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチとが等しく、前記第1ピッチ及び第2ピッチが前記第1直線と前記第2直線との間隔よりも大きくてもよい(請求項5)。これらの場合には、各噴孔群の配列が簡素化されるため燃料噴射弁の製作が容易になる。また、多くの燃料噴射弁を製作した場合の個体差が生じ難い利点がある。
【0010】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様において、前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、前記上側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔に比べて狭くなるように構成されてもよい(請求項6)。下側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、上側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔に比べて狭くなることで、下側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度が上側噴孔群の噴射方向下流における燃料存在密度に比べて高くなる。隣り合う燃料噴霧間の間隔は、隣り合う2つの噴孔の中心間距離を調整することにより調整可能である。
【0011】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様において、前記燃料噴射弁は、前記中心線と直交しかつ前記燃料噴射弁の先端を通る基準線を基準とした下向きの噴射角の変化率が切り替わる特定燃圧値が燃圧の変更範囲内に存在するように構成されており、前記内燃機関が所定の回転速度よりも低い低回転速度時に前記特定燃圧値よりも低くなるように、かつ前記内燃機関が前記所定の回転速度以上の高回転速度時に前記特定燃圧値以上となるように、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を制御する燃圧制御手段を更に備えてもよい(請求項7)。内燃機関の回転速度が高くなるに従って、気筒内に形成されるタンブルの渦中心は気筒の中心線方向の下方向に移動することが知られている。この態様によれば、内燃機関の低回転速度時に特定燃圧値よりも燃圧を低く、内燃機関の高回転速度時に燃圧を特定燃圧値以上とすることができるので、タンブルの渦中心の変化に燃料噴霧の噴射角を合わせることが可能になる。これにより、内燃機関の回転速度の変化に伴って変化するタンブルに燃料噴霧をうまく乗せて混合気の攪拌を促進できる。よって、燃料混合気の均質度を向上させることができる。
【0012】
本発明の第1又は第2の燃料噴射装置の一態様として、前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチは、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチよりも大きくされていてもよい(請求項8)。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の燃料噴射装置によれば、燃圧を適宜制御することによって燃料噴霧の指向性を変化させることができるので、内燃機関の運転状態に適した燃料噴霧を単一の燃料噴射弁によって得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の形態に係る燃料噴射装置が適用された内燃機関の要部の断面を模式的に示した図。
【図2】第1の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示した図。
【図3】図1の燃料噴射弁の先端から噴射方向に向かう距離Zの位置における燃料噴霧のA−A断面を模式的に示した図。
【図4】燃圧と噴霧長との関係を示した図。
【図5】燃圧が特定燃圧値よりも低い場合、燃圧が特定燃圧値以上の場合のそれぞれにおける燃料噴霧の状態を気筒の半径方向から見て模式的に示した説明図。
【図6】内燃機関の回転速度の変化に伴うタンブルの渦中心の変化を示した図。
【図7】第2の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示した図。
【図8】第3の形態に係る燃料噴射装置が適用された内燃機関を気筒の中心線方向から見た状態を示した平面図。
【図9】第3の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示した図。
【図10】図9のX−X線に沿った断面図。
【図11】燃圧が特定燃圧値よりも低い場合、燃圧が特定燃圧値以上の場合のそれぞれにおける燃料噴霧の状態を気筒の中心線方向から見て模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の形態)
図1は本発明の第1の形態に係る燃料噴射装置が適用された内燃機関の要部の断面を模式的に示している。内燃機関1は不図示の車両に走行用動力源として搭載可能な火花点火式の4サイクル内燃機関として構成されている。内燃機関1は複数(図では1つ)の気筒2を備えている。各気筒2はシリンダブロック3に形成されており、各気筒2の上部はシリンダヘッド4にて塞がれている。各気筒2にはピストン5が往復運動自在に設けられている。なお、本発明における上側、下側とは、気筒における上死点側、下死点側を意味しており、例えば気筒が横向き等に配置されていても、上死点に近い側が上側であり、下死点に近い側が下側である。
【0016】
各気筒2には吸気通路9及び排気通路10がそれぞれ接続されている。吸気通路9はシリンダヘッド4に形成された吸気ポート11を含み、排気通路10はシリンダヘッド4に形成された排気ポート12を含む。吸気ポート11は吸気バルブ13にて、排気ポート12は排気バルブ14にてそれぞれ開閉される。図示を省略したが、排気通路10には三元触媒が設けられていて、排気通路10を流れる既燃ガスである排気はその三元触媒にて浄化される。
【0017】
シリンダヘッド4には、気筒2内に先端部を臨ませるようにして気筒2の天井面の中央部に配置された点火プラグ20が設けられている。また、シリンダヘッド4には気筒2内に燃料を噴射する燃料噴射弁21Aが吸気ポート11に沿うように設けられている。即ち、燃料噴射弁21Aは、気筒2の中心線CLを横切る方向に噴射された燃料が向かうように配置されている。燃料噴射弁21Aは電磁駆動式の燃料噴射弁であり、その先端部には複数の噴孔が形成されている。気筒2毎に設けられた燃料噴射弁21Aは共通のデリバリパイプ22に接続される。デリバリパイプ22には不図示のオイルポンプにて圧送された燃料が導かれる。デリバリパイプ22には各燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧を調整する燃圧調整機構23が設けられている。燃料噴射弁21A及び燃圧調整機構23のそれぞれはエンジンコントロールユニット(ECU)24にて制御される。ECU24は内燃機関1の運転状態を適正に制御するためのコンピュータとして構成されている。ECU24には、内燃機関1の回転速度等の運転状態を示す情報が不図示の各種センサから入力される。ECU24は、こうした情報を利用しつつ予め用意された各種の制御プログラムを実行して燃料の噴射時期、噴射期間(噴射量)等の制御を含む燃料噴射制御や点火時期の制御等を行う。ECU24が行う本発明に関連する制御については後述する。
【0018】
図2に示したように、燃料噴射弁21Aは合計6つの噴孔25u、25dが形成されている。なお、図2の上下方向は図1の上下方向に、図2の左右方向は図1の紙面と直交する方向にそれぞれ対応する。図2に示したこれらの噴孔のうち、気筒2の中心線CL(図1参照)の方向の上側に位置する3つの噴孔25uは上側噴孔群25Uを構成し、中心線CLの方向の下側に位置する3つの噴孔25dは下側噴孔群25Dを構成する。上側噴孔群25Uに含まれる3つの噴孔25uは第1直線L1上に、下側噴孔群25Dに含まれる3つの噴孔25dは第2直線L2上にそれぞれ配置されており、これら第1直線L1及び第2直線L2は互いに平行である。上側噴孔群25Uに含まれる隣接する2つの噴孔25uの中心間距離である第1ピッチP1と下側噴孔群25Dの第2ピッチP2とは等しい。そして、第1ピッチP1及び第2ピッチP2は第1直線L1と第2直線L2との間隔dよりも大きい。燃料噴射弁21Aは、複数の噴孔が互いに同一で、各噴孔群が直線上に配置されているため各噴孔群の配列が簡素化される。これにより燃料噴射弁21Aの製作が容易になる。また、多くの燃料噴射弁21Aを製作した場合の個体差が生じ難い利点がある。
【0019】
燃料噴射弁21Aは、各噴孔に燃料を導く燃料通路(不図示)の設計によって下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量が上側噴孔群25Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成されている。そのため、燃料噴射弁21Aが噴射する燃料噴霧F(図1)には、その燃料存在密度の分布の上側が低く下側が高い偏りが形成される。図3は、燃料噴射弁21Aの先端から噴射方向に向かう距離Zの位置(図1参照)における燃料噴霧F(燃料噴霧群)のA−A断面を模式的に示している。図3から明らかなように、燃料噴霧Fは各噴孔から噴射される噴霧fu、fdが集まって構成され、各噴霧fu、fdの配列は図2に示された噴孔25u、25dの配列と相似関係にある。つまり、上側噴孔群25Uから噴射された噴霧fuは第1直線S1上に、下側噴孔群25Dから噴射された噴霧fdは第2直線S2上にそれぞれ配置され、これら第1直線S1及び第2直線S2は互いに平行である。そして、噴霧fuの第1ピッチp1と噴霧fdの第2ピッチp2とが等しく、第1ピッチp1及び第2ピッチp2は第1直線S1と第2直線S2との間隔d′よりも大きい。そして、図示のように、下側噴孔群25Dから噴射された噴霧fdの流量Qdが上側噴孔群25Uから噴射された噴霧fuの流量Quよりも大きくなっている。換言すれば、燃料噴射弁21Aは下側噴孔群25Dの噴射方向下流における燃料存在密度が上側噴孔群25Uの噴射方向下流における燃料存在密度よりも高い特性を有する。
【0020】
燃料噴霧Fの燃料存在密度が上側と下側とで相違することから、燃料噴霧Fの指向性(噴射角及び噴霧長)を燃圧によって変化させることができる。図1に示すように、噴射角Vは、気筒2の中心線CLと直交しかつ燃料噴射弁21Aの先端を通る基準線Lsを基準とした下向きの角度として定義される。なお、噴射角Vを決定する直線Lは噴孔から所定距離離れた位置における燃料噴霧Fの重心Gを通るものとして定義される。
【0021】
図4は燃圧と噴霧長との関係を示している。なお、燃圧に対する噴射角の変化も図4と同様の傾向を示す。この図の実線は本実施形態を、破線は燃料存在密度が上下で同一である比較例をそれぞれ示している。図4から明らかなように、燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧が変化した場合、その燃圧の変更範囲内に噴霧長(噴射角)の変化率が切り替わる特定燃圧値Pcが存在する。つまり、噴霧長及び噴射角に代表される燃料噴霧Fの指向性が特定燃圧値Pcを境界として顕著に変化する。
【0022】
図5は燃圧が特定燃圧値よりも低い場合と特定燃圧値以上の場合とのそれぞれにおける燃料噴霧Fの状態を模式的に示した説明図であり、図中Aは燃圧が特定燃圧値より低い場合を、図中Bは燃圧が特定燃圧値以上の場合をそれぞれ示している。図5のAに示したように、燃料噴霧Fは、燃圧が低ければ燃料存在密度の偏りが目立たずに各燃料噴霧fu、fdが離散的である。そのため、噴霧長lは相対的に短くなり、燃料噴霧Fの重心も燃料噴霧Fの略中央部に位置する。そして噴射角Vも相対的に小さくなる。一方、図5のBに示したように、燃料噴霧Fは、燃圧が高ければ下側噴孔群25Dの噴射方向下流の燃料存在密度が更に高まって下側の燃料噴霧群fd…が全体に対する主要な流れを形成する。そのため、燃料噴霧Fは、燃圧が低い場合に比べてその指向性が下側に変化する。つまり、燃料噴霧Fは、重心位置が下側にずれる。そして、下側の燃料噴霧群fd…が支配的になり上側の燃料噴霧群fu…を巻き込むため、燃料噴霧Fの指向性、即ち噴霧長l及び噴射角Vがそれぞれ拡大する。噴射角Vの変化は一定値である燃料噴射弁21Aの搭載角αを参照すれば明確である。以上のことから、下側の燃料噴霧群fd…が主要な流れを形成し始める燃圧値が図4に示した特定燃圧値Pcと推測できる。
【0023】
次に、このような特性を利用したECU24による燃圧の制御について説明する。図6は内燃機関1の回転速度の変化に伴うタンブルの渦中心の変化を示している。図6に示すように、内燃機関1は吸気行程において気筒2内にタンブルTが形成されるように吸気ポート11が設計されている。そして、タンブルTの渦中心Oは回転速度が高くなるに従って下側にシフトする。一般に、タンブルの渦中心の少し上側に燃料噴霧が位置するように噴射角が設定されると、燃料噴霧がタンブルに乗って攪拌されやすくなる。従って、このように噴射角を設定することは燃料混合気の均質性を高めるために有利であることが知られている。
【0024】
そこで、ECU24は、燃圧調整機構23を操作することによって、タンブルTの渦中心Oが高い位置にある低回転速度時に燃圧を特定燃圧値Pcよりも低く制御して燃料噴霧Fの噴射角Vを小さくし、かつタンブルTの渦中心Oが低い位置にある高回転速度時に燃圧を特定燃圧値Pcよりも高く制御して燃料噴霧Fの噴射角V及び噴霧長lをそれぞれ大きくしている。これにより、タンブルTの渦中心Oの変化に応じて燃料噴霧Fの噴射角Vを合わせることが可能になるため、内燃機関1の回転速度の変化に伴って変化するタンブルTに燃料噴霧Fをうまく乗せて混合気の攪拌を促進できる。よって、燃料混合気の均質度を向上させることができる。本形態において、本発明に係る燃圧制御手段はECU24及び燃圧調整機構23が協働することにより実現される。
【0025】
(第2の形態)
次に、本発明の第2の形態について図7を参照しながら説明する。図7は第2の形態に係る燃料噴射弁に形成された複数の噴孔を示している。第2の形態は噴孔の配列を除いて第1の形態と共通である。図7に示すように、第2の形態の燃料噴射弁21Bでは、噴孔の個数は第1の形態と同一であるが、下側噴孔群25Dの第2ピッチP2が上側噴孔群25Uの第1ピッチP1よりも小さくなっている。これにより、下側噴孔群25Dから噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、上側噴孔群25Uから噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔よりも狭くなる。従って、本形態においても、下側噴孔群25Dの噴射方向下流の燃料存在密度が上側噴孔群25Uの噴射方向下流の燃料存在密度よりも高くなるため、燃圧の変化に伴って燃料噴霧の指向性が変化する。これにより、上述した第1の形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合においては、第1の形態と同様に下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量を上側噴孔群25Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくしてもよいし、上側噴孔群25U及び下側噴孔群25Dの流量配分を同じにしてもよい。
【0026】
(第3の形態)
次に、本発明の第3の形態について図8〜図11を参照しながら説明する。第3の形態は噴孔の個数及び配列を除いて第1の形態と共通である。図8〜図10に示したように、燃料噴射弁21Cは、気筒2の吸気側から排気側へ向けて配置されている。燃料噴射弁21Cに設けられた噴孔の個数は合計4つである。上側噴孔群25Uに含まれる2つの噴孔25uは第1直線L1上に、下側噴孔群25Dに含まれる2つの噴孔25dは第2直線L2上にそれぞれ配置されており、これら第1直線L1及び第2直線L2は互いに平行である。そして、下側噴孔群25Dの第2ピッチP2が上側噴孔群25Uの第1ピッチP1よりも小さくなっている。第1ピッチP1及び第2ピッチP2のそれぞれは第1直線L1と第2直線L2との間隔dよりも大きい。これにより、下側噴孔群25Dから噴射される2つの燃料噴霧間の間隔が、上側噴孔群25Uから噴射される2つの燃料噴霧間の間隔よりも狭くなる。従って、第3の形態においても、下側噴孔群25Dの噴射方向下流の燃料存在密度が上側噴孔群25Uの噴射方向下流の燃料存在密度よりも高くなるため、燃圧の変化に伴って燃料噴霧の指向性が変化する。これにより、上述した第1の形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、図10に示したように、燃料噴射弁21Cに形成された4つの噴孔25u、25dは気筒2の中心線CL方向を上下方向とした場合の左右方向に広がるように配置されている。なお、図10の左右方向は図1の紙面と直交する方向に相当する。各噴孔25u、25dの噴射方向は全体として放射状に設定されている。4つの噴孔25u、25dがこのように構成されているため、気筒2の中心線CL方向から見た場合、各噴孔25u、25dからの燃料噴霧fは図8に示した状態で気筒2内に配置される。各噴孔25u、25dの噴射方向を規定する直線を噴射軸線Axfとし、隣り合う2つの噴射軸線Axfで形成される角度を挟み角θ1、θ2、θ3とする。この場合、気筒2の中央部の近くに位置する2つの噴射軸線Axfで形成される挟み角θ1は、他の挟み角θ2、θ3に比べて小さくなっている。本形態では、挟み角θ2と挟み角θ3とは同一である。但し、これらの挟み角θ2、θ3は、中央部の挟み角θ1よりも大きいことを条件として、互いに異ならせることもできる。
【0028】
図8から理解できるように、挟み角が小さい場合は大きい場合に比べて隣接する燃料噴霧間の噴霧間隔が狭くなる。従って、4つの噴孔25u、25dから噴射された4つの燃料噴霧fは中央部で噴霧間隔が狭く、その外側で噴霧間隔が広くなるように気筒2内に配置される。4つの燃料噴霧fがこのように配置されるため、燃料噴射弁21Aに供給される燃料の燃圧が低ければ、中央部の噴霧間隔が狭くても隣接する2つの燃料噴霧は合体しない。そのため、図11のAに示したように、4つの燃料噴霧fの集まりを一つの燃料噴霧Fとみなした場合、その一つの燃料噴霧Fの噴霧形状は中央部の燃料存在密度が外側よりも低い中抜き状となる。一方、その燃圧が高ければ、中央部に位置する2つの燃料噴霧の噴霧間隔が更に狭くなってこれらの燃料噴霧fが合体する。そのため、図11のBに示したように、燃料噴霧Fの噴霧形状は中央部とその外側とで燃料存在密度の差が少ない中実状となる。複数の燃料噴霧fが合体すると合体前に比べてペネトレーションが増加する。このため、図11のBに示すように燃料噴霧Fの噴霧長lは図11のAに示した合体前に比べて増加する。
【0029】
このように、第3の形態によれば、燃圧によって燃料噴霧の指向性を変更できるとともに噴霧形状を中抜き状と中実状との間で変更することができる。なお、噴霧形状は、指向性の変化と同様に噴霧長の変化率が切り替わる特定燃圧値Pc(図4)を境界として変化すると推測される。従って、第3の形態は、燃圧が変化することによって噴霧形状と指向性とが同調して特定燃圧値Pcを境界として変化すると考えられる。一般に、中抜き状の噴霧形状が適した運転状態と、中実状の噴霧形状が適した運転状態とが存在するため、内燃機関1の運転状態に応じて燃圧を、特定燃圧値Pcよりも低い状態と特定燃圧値Pc以上の状態との間で切り替えることで、運転状態に適した噴霧形状を選択することができる。
【0030】
例えば、点火プラグ20の近傍に成層混合気を形成して着火性を向上させるべき運転状態の場合、ECU24が燃圧調整機構23を操作することによって、燃圧を特定燃圧値Pcよりも低い状態に制御して燃料噴霧Fの噴霧形状を中抜き状に変更する(図11のA参照)。この場合、燃料濃度が局所的に高い成層混合気を点火プラグ20の近傍に形成できる。しかも、中抜き状の噴霧形状のため点火プラグ20に対する燃料の衝突を抑制できるから点火プラグ20の点火不良を回避することが可能となる。また、内燃機関1の出力を向上させるべき運転状態の場合、ECU24が燃圧調整機構23を操作することによって、燃圧を特定燃圧値Pc以上の状態に制御して燃料噴霧Fの噴霧形状を中実状に変更する(図11のB参照)。この場合、燃料噴霧Fのペネトレーションが高いため、その噴流効果によって内燃機関1の燃焼効率が増加して出力の向上に寄与することができる。このようにECU24及び燃圧調整機構23が協働することによって燃圧制御手段として機能できる。なお、第3の形態においても、第1の形態と同様に下側噴孔群25Dから噴射される燃料の流量を上側噴孔群25Uから噴射される燃料の流量に比べて大きくしてもよいし、上側噴孔群25U及び下側噴孔群25Dの流量配分を同じにしてもよい。
【0031】
本発明は上記各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記の各形態は6又は4つの噴孔を上下2列に直線的に配列したものであるが、噴孔の個数に制限はない。また、噴孔の配列も、気筒の中心線方向の上側に位置する上側噴孔群及び下側に位置する下側噴孔群をそれぞれ観念できるものであれば格別の制限はない。要するに、下側噴孔群の噴射方向下流の燃料存在密度が上側噴孔群の噴射方向下流の燃料存在密度よりも高くなるのであれば、複数の噴孔をどのように配列してもよい。また、複数の噴孔を全て同じ形状及び寸法に設計することは一例であって、噴孔毎に形状や寸法を変化させることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 内燃機関
2 気筒
21A〜21C 燃料噴射弁
23 燃圧調整機構(燃圧制御手段)
24 ECU(燃圧制御手段)
25U 上側噴孔群
25D 下側噴孔群
25u、25d 噴孔
CL 中心線
L1 第1直線
L2 第2直線
Ls 基準線
V 噴射角
d 第1直線と第2直線との間隔
P1 第1ピッチ
P2 第2ピッチ
Pc 特定燃圧値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の中心線を横切る方向に噴射された燃料が向かうように配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項2】
内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の吸気側から排気側に向けて配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される燃料の流量が、前記上側噴孔群から噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成されている請求項1又は2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が第1直線上に、前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が第2直線上にそれぞれ配置されており、前記第1直線と前記第2直線とが互いに平行である請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、
前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチと、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチとが等しく、前記第1ピッチ及び第2ピッチが前記第1直線と前記第2直線との間隔よりも大きい請求項4に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、前記上側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔に比べて狭くなるように構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項7】
前記燃料噴射弁は、前記中心線と直交しかつ前記燃料噴射弁の先端を通る基準線を基準とした下向きの噴射角の変化率が切り替わる特定燃圧値が燃圧の変更範囲内に存在するように構成されており、
前記内燃機関が所定の回転速度よりも低い低回転速度時に前記特定燃圧値よりも低くなるように、かつ、前記内燃機関が前記所定の回転速度以上の高回転速度時に前記特定燃圧値以上となるように、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を制御する燃圧制御手段を更に備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項8】
前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、
前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチは、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチよりも大きい請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項1】
内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の中心線を横切る方向に噴射された燃料が向かうように配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項2】
内燃機関の気筒内に燃料を噴射するとともに、前記気筒の吸気側から排気側に向けて配置された燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を変更可能な内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の上側に位置する上側噴孔群と、複数の噴孔が含まれ前記中心線の方向の下側に位置する下側噴孔群とを備え、前記下側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度が、前記上側噴孔群の噴射方向下流での燃料存在密度に比べて高いように構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される燃料の流量が、前記上側噴孔群から噴射される燃料の流量に比べて大きくなるように構成されている請求項1又は2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が第1直線上に、前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が第2直線上にそれぞれ配置されており、前記第1直線と前記第2直線とが互いに平行である請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、
前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチと、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチとが等しく、前記第1ピッチ及び第2ピッチが前記第1直線と前記第2直線との間隔よりも大きい請求項4に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
前記燃料噴射弁は、前記下側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔が、前記上側噴孔群から噴射される複数の燃料噴霧のうち隣り合う燃料噴霧間の間隔に比べて狭くなるように構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項7】
前記燃料噴射弁は、前記中心線と直交しかつ前記燃料噴射弁の先端を通る基準線を基準とした下向きの噴射角の変化率が切り替わる特定燃圧値が燃圧の変更範囲内に存在するように構成されており、
前記内燃機関が所定の回転速度よりも低い低回転速度時に前記特定燃圧値よりも低くなるように、かつ、前記内燃機関が前記所定の回転速度以上の高回転速度時に前記特定燃圧値以上となるように、前記燃料噴射弁に供給される燃料の燃圧を制御する燃圧制御手段を更に備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項8】
前記上側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置され、かつ前記下側噴孔群の前記複数の噴孔が等間隔に配置されており、
前記上側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第1ピッチは、前記下側噴孔群に含まれる隣接する2つの噴孔の中心間距離である第2ピッチよりも大きい請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−251548(P2012−251548A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108622(P2012−108622)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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