説明

内燃機関の軸方向の中空軸内に組み込まれた遠心式のオイルミストセパレータ

本発明は、内燃機関の軸方向の中空なカムシャフト内に組み込まれた遠心式のオイルミストセパレータによって、良好な分離作用を可能にすることである。このために、カムシャフト(101)が設けられており、該カムシャフトの第1の端部に、カムシャフト(101)の軸方向の中空室(102)内に導入しようとするオイルミストのための半径方向のオイルミスト供給開口(106)が設けられていて、第2の端部に、液相として分離されたオイルを導出するための半径方向のオイル導出通路(112)と、分離後の液体成分内に残属するオイルミスト流のための軸方向のガス導出通路(113)とが設けられており、半径方向のオイルミスト供給開口(106)の前に、前記カムシャフト(101)に堅固に結合された予セパレータ(107)としての遠心式オイルミストセパレータが設けられており、カムシャフト(101)の軸方向の中空室(102)内に、エンドセパレータとしての旋回流発生器(108)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の軸方向の中空軸特にカムシャフト内に組み込まれた遠心式のオイルミストセパレータに関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許公開第10226695号明細書によれば、軸方向で中空のカムシャフトが公知であり、このカムシャフトの一端部に、カムシャフトの周方向で外側に位置するオイルセパレータが設けられている。このオイルセパレータは、その軸方向の端部で半径方向内側に開放する環状ギャプを備えた環状通路と、この環状ギャップに軸方向で向き合う、半径方向でほぼ閉じられた環状通路壁とから成っている。この場合、ほぼ閉じられたとは、この壁部が軸方向の開口を有している、という意味である。この軸方向の開口は、その他の軸方向に接続された第2の環状通路を介して、またカムシャフトの周壁に設けられた半径方向の開口を介して、カムシャフトの軸方向の中空室に流れをガイドしながら接続している。カムシャフト内に組み込まれたセパレータのこのような公知の構成において、半径方向で内方に位置する軸方向の開口ギャップを備えた第1の環状通路は、その外側の外周面に設けられた、半径方向外方に通じるオイル導出開口を有している。
【0003】
この装置は次のように働く。
【0004】
オイルミストは、カムシャフトの中空室において生じる負圧によって、第1の環状通路の、半径方向内側に位置する軸方向のギャップを通って吸い込まれる。この第1の環状通路内で、オイルミスト内に含まれる液体成分は遠心力によって半径方向外方に流れ、半径方向外方に通じる流出開口を通って環状通路から流出する。通常はまだ残存しているオイルミスト流の成分は、第1の環状通路の半径方向でほぼ閉じた壁部に形成された軸方向の開口を通って、第2の環状通路を介してカムシャフトの中空室内に達し、ここから、ガス流はカムシャフトを軸方向で流過する。この装置においては、カムシャフトの軸方向の中空室内でのオイル分離は行われない。
【0005】
特開平08−284634号明細書によれば、組み込まれたオイルミストセパレータを備えた中空のカムシャフトが公知である。この公知のカムシャフトにおいては、オイル分離はカムシャフトの中空室内で行われる。オイルミスト流は、カムシャフトの軸方向で一方の端部に設けられた旋回流発生器を介してカムシャフトの中空室内に侵入し、他方の端部でカムシャフトから流出する。この他方の端部において、ここから液相の分離後に残存するガス流を導出するために、カムシャフトの中空室内に軸方向で係合する侵入管が配置されている。オイルミスト流から分離された液体成分は、同様に、前記侵入管とカムシャフト中空室の内壁との間の環状ギャプを介して、他方の端部でカムシャフトから流出する。
【0006】
アメリカ合衆国特許第4651705号明細書によれば、カムシャフト中空室内で遠心力によってオイル分離が行われる中空のカムシャフトが開示されている。カムシャフトの中空室内にオイルミストを侵入させるために、カムシャフトの全長に亘って分配配置された半径方向の複数の孔が設けられている。分離された液状のオイルは、同様に半径方向の複数の孔を介してカムシャフト中空室から流出される。これらの孔は、カムシャフトの全長に亘って同様に分配配置されている。カムシャフト中空室内でオイルミストの液体成分を分離するために、カムシャフト中空室は成形された内周面を備えている。つまり、オイルミストを半径方向内方にガイドする半径方向の複数の孔が、オイルを外に導出する半径方向の複数の孔が設けられた領域よりも小さい直径を有する内周壁領域内に配置されている。液体分離後に残存するオイルミスト流の成分は、カムシャフトの軸方向端部に設けられた絞り開口を介してカムシャフト中空室から流出する。このような装置においては、一方ではカムシャフトの中空軸の外側に配置された遠心力式の予セパレータが設けられておらず、また他方では、この装置においては、カムシャフトの中空室内に、ここを貫流するオイルミスト流のための旋回流発生器が設けられていない。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許公開第19931740号明細書により公知の中空カムシャフトにおいては、オイルミストからのオイルの分離は、カムシャフトの外周部の領域に設けられたオイルミストセパレータ内において行われる。このオイルミストセパレータは、ドイツ連邦共和国特許公開第10226695号明細書によるものと同じ原理で作業する。カムシャフトの中空室は、予セパレータ内に導入されたオイルミストの、予セパレータ内で分離された液状の部分から除去された部分を変向ガイドするためだけに用いられる。
【0008】
本発明の課題は、内燃機関の軸方向で中空の軸内に組み込まれた遠心式のオイルミストセパレータの効率を公知技術のものに対して改善することである。
【0009】
この課題は、請求項1に記載した特徴を有する装置によって解決された。
【0010】
本発明の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明は、内燃機関の中空軸内に組み込むことによって遠心式のオイルミストセパレータを得るという一般的な考え方に基づいている。この場合、軸に堅固に結合された外側領域内での予分離と、軸中空室内の後分離若しくは最終分離とが組み合わされる。この場合、予分離は、比較的大きいオイルの滴としての液状のオイル成分を分離するために用いられ、これに対して、最終分離の領域内では微細なオイルミストの滴が分離される。微細なオイルミストの滴を分離するために、オイルミスト流は軸中空室内で旋回流発生器によってねじれ若しくは旋回流が加えられる。このような旋回流によって、微細なオイル滴は、特に効果的に半径方向外方に集められて軸中空室の内周面に付着する。カムシャフト中空室内において相応に良好に分離させるために、旋回流発生器の下流に比較的長い流路を設ければ特に有利である。従って旋回流発生器は、オイルミスト侵入領域の比較的近傍に隣接する、軸中空室の軸方向領域内に配置されている。旋回流発生器の下流側に、流過横断面の可能な限りほぼ10倍に相当する流路長さを設ける必要がある。
【0012】
予セパレータとしては、半径方向のオイルミスト供給開口を包囲する、軸に接続された円錐形若しくは漏斗状の周壁で、その狭い方の端部が軸方向で閉鎖され、かつ半径方向のオイルミスト供給開口に隣接して対応配置されている構成のものが適している。円錐形周壁の広い方の軸方向の端部を通って、分離しようとするオイルミストは、この周壁の内側領域内に侵入し、ここから半径方向のオイルミスト供給開口を通って軸の中空室内に流入する。円錐形周壁の開放した端部に向かって傾斜する内周面によって、この開放した周壁端部に周面における最大遠心力が作用する。この最大遠心力は、前記内周面の傾斜に応じて、軸方向で閉じた周壁端部に向かって連続的に減少する。この周壁の軸線方向における遠心力勾配によって、分離されたオイルを円錐形周壁の広い方の端部に向かって搬送する軸方向分力が発生する。この搬送力は、円錐形周壁の内周面が相応のスクリューコンベヤ状に構成されていることによってより強められる。この場合、スクリューコンベヤのねじ条は、軸の回転時に実際に相応の搬送効果が得られるように調整されている。
【0013】
オイルミスト流つまり分離された液体成分をもはや含有していない成分を流出させるために、有利には定置の流出通路が設けられており、この流出通路の侵入横断面は、当該のカムシャフト端部の所属の端壁面にカムシャフトに対してほぼ同軸的に位置している。つまり、特に流過横断面は、軸中空室内に突入する侵入管内に位置するべきではない、ということである。
【0014】
すべてのオイルミスト流が導出される軸端部には、本発明に従って、分離した液状のオイルを重力に基づいて流出させるための半径方向の導出通路が設けられている。この導出通路から、オイルが、この導出通路内に設けられた閉鎖弁の開放状態で流出するようになっている。この閉鎖弁は、有利な形式で重力バルブとして構成されていて、この重力バルブは、収集されたオイルの重力下で自動的に開放することができる。このような重力バルブが閉じることによって、分離されたオイルは連続的ではなく、断続的に導出される。つまり重力バルブの開放のために十分な量の除去された液状オイルが収集されると、この液状オイルは導出されるようになっている。
【0015】
本発明によるオイルミストセパレータの前記構成は、特に有利には、中空軸が内燃機関のカムシャフトとして構成されている場合に適している。
【0016】
本発明に従って、特に内燃機関のカムシャフト内に組み込まれた、エンジンハウジング内でオイルミストセパレータを使用すれば、エンジンハウジングの下流側の端部を、ガス戻し流のために、つまりオイル滴が分離されたクランクハウジングエアの戻し流のために使用することができる。これについては以下に詳しく説明されている。
【0017】
本発明の別の課題は、自動車内燃機関のオイルミストセパレータをできるだけ簡単な構成で、しかも軸流サイクロンよりも良好な効果が得られるようなものを提供することである。
【0018】
この課題は、本発明の請求項7に記載した軸流サイクロンの構成によって解決された。
【0019】
このような軸流サイクロンとして構成された、オイルミストセパレータの有利な実施態様は請求項7以下の従属請求項に記載されている。
【0020】
本発明は、その他の機能エレメントをまったく組み込むことなしに、軸流サイクロンを、内燃機関内に若しくは内燃機関の外側において、このために十分なスペースを提供する領域内に設けるという一般的な考え方に基づいている。この領域は、基本的にエンジンハウジングの内側又は外側に位置している。この場合、エンジンハウジング内とは、オイルミストを含有するクランク室ガスによって負荷された、外部に対してシールされたスペース内という意味である。
【0021】
エンジンハウジングの内側に設けるか又は外側に設けるかとは無関係に、すべての構成のために、軸流サイクロンはオイルミストセパレータとしてほぼ管状のセパレータハウジング、最も簡単な構成では単純な管より成っている。この管はハウジング内に定置にできるだけ少ない摩擦で支承されている。
【0022】
管状のセパレータハウジングの駆動(これによってセパレータハウジングは分離運転のために回転せしめられる)は、例えば電動機として構成された独立した駆動装置によっても、又は別の機能エレメントのための駆動装置を一緒に使用することによって行うことができる。
【0023】
別個の電動機を使用する場合、管状のセパレータハウジングは、電動機の回転子を構成する構成部分であってよい。
【0024】
管状のセパレータハウジングはもっぱら、このケーシングを貫流するオイルミスト流によって駆動されるようになっていてもよい。この場合、駆動は、管状のセパレータハウジング内に設けられた旋回流発生器によって行われる。この旋回流発生器は、オイルミスト流の流過エネルギーを回転エネルギーに変換する。
【0025】
本発明によるオイルミストセパレータを使用した場合、流入側のシール及び流出側のシールが設けられる。このシールは、ギャップシールとして構成されている。つまり絶対的なシールではない。これは、オイルミスト流がセパレータハウジングよって負圧で以て、内燃機関の空気接続スリーブに向かって吸い込まれることによって、可能である。このようなギャップシールは、シールに制限されて低い摩擦損失を可能にする。
【0026】
セパレータハウジング内の圧力低下は、場合によってはポンプを使用することによって高められる。
【0027】
軸流サイクロン型のオイルミストセパレータは、既に様々な構成のものが、例えばドイツ連邦共和国特許公開第10226695号明細書、特開平8−284634号公報、アメリカ合衆国特許第4651705号明細書、ドイツ連邦共和国特許公開第19931740号明細書により公知である。これら公知の軸流サイクロンは、それぞれ内燃機関のカムシャフト内に組み込まれている。このためには、このようなカムシャフトが中空軸として構成されていることが前提となる。
【0028】
さらにまた、このような形式の軸流サイクロンは、内燃機関のクランクシャフト内に組み込まれている(ドイツ連邦共和国特許第19608503号明細書)か、又は内燃機関の補償軸内に組み込まれている(ドイツ連邦共和国特許第19706383号明細書)。
【0029】
これらの解決策においては、当該の組み込み手段は部分的に著しく高価である。また、回転するエンジン部品内に組み込むことは、これらのエンジン部品が予め管状に切欠かれているか、又はこのような切欠をエンジン部品に簡単に形成できるようになっている場合にのみ可能である。
【0030】
その他の公知の、本発明のものとは具体的に比較可能ではないオイルミストセパレータとして、ドイツ連邦共和国特許公開第10338770号明細書(一緒に回転するハウジング内で回転する分離プレートを備えたサイクロン型セパレータ)、アメリカ合衆国特許第3561195号明細書(軸方向で180°だけ流れ方向が変向されているブレードホイール型ロータ)、ドイツ連邦共和国特許公開第19914166号明細書(回転するアウターハウジングを備えていない遠心分離機)、ドイツ連邦共和国特許公開第10063903号明細書(回転するアウターハウジングを備えていない遠心分離機)、ドイツ連邦共和国特許公開第3541204号明細書(回転するアウターハウジングを備えていない遠心分離機)、アメリカ合衆国特許第4189310号明細書(実質的に軸方向流のない遠心分離機)、アメリカ合衆国特許第1979025号明細書(顕著な軸方向流のない遠心分離機)、ヨーロッパ特許公開第0987053号明細書(顕著な軸方向流のない遠心分離機)、国際公開第02/44530号パンフレット(回転するアウターハウジングのない遠心分離機)、大韓民国特許公告第20030016847号明細書(回転するアウターハウジングを備えていない遠心分離機)が公知である。
【0031】
以下に詳しく説明された有利な実施例は、図面にそれぞれ概略的に示されている。
【0032】
図面中、
図1は、エンジンハウジングの外側に取り付けられた軸流サイクロンの縦断面図、
図2は、エンジンハウジングの内側に取り付けられた軸流サイクロンの断面図、
図3は、内燃機関のカムシャフト内に組み込まれたオイルミストセパレータの縦断面図である。
【0033】
図1に示した実施例
軸流サイクロンとして構成されたオイルミストセパレータのコア部材は、軸を形成する管状のセパレータハウジング1より成っている。セパレータハウジング1は、できるだけ摩擦の少ない軸受2を介して、エンジンに固定された対応受け内に支承されている。流入側において、供給通路3はオイルミスト流を、管状のセパレータハウジング1内に軸方向でガイドする。この場合、供給通路3は、外周面において著しく僅かな遊びを保って、管状のセパレータハウジング1内に係合しており、これによって、軸流サイクロンの運転時に軸流サイクロン内に雰囲気に対して十分な負圧が形成されていれば、十分なシールを得ることができる。
【0034】
被駆動側で、管状のセパレータハウジング1はその外周面が、エンジンに固定された漏斗状の受容室4内に係合している。管状のセパレータハウジング1が受容室4内に係合する領域内で、管状のセパレータハウジング1はその外周壁が軸受2を介して軸受けされている。この軸受2は、少なくとも十分に気密な軸受として構成されており、それによって受容室4の内部は、雰囲気に対して既に十分に気密である。軸方向で、管状のセパレータハウジング1に対して同軸的に、受容室4から導出通路5が突き出している。管状のセパレータハウジング1内に旋回流発生器(Drallerzeuger)6が配置されている。軸流サイクロンの運転時に、旋回流発生器6は回転し、回転する旋回流発生器6内をオイルミストが供給通路3から導出通路5に向かって貫流する。分離されたオイル液滴は受容室4内で重力に従って落下し、導出開口7を通って受容室4から流出するようになっている。
【0035】
図面では装置が概略的に示されているので、管状のセパレータ容器1を回転運動させる駆動エレメントは図面には示されていないが、このような駆動装置は、管状のセパレータハウジング1のそれぞれ任意の箇所に作用することができる。場合によっては、オイルミスト流の流動エネルギーが、管状のセパレータハウジング1を旋回流発生器6を介して駆動するために十分であれば、別個の駆動装置を省くことができる。この場合、著しく摩擦の少ない軸受2を考慮する必要があるが、これは基本的に可能である。十分な流動エネルギーは、場合によっては、オイルミストが軸流サイクロンを強制的に貫流するようにさせるポンプを使用することによっても得られる。図1に示した実施例による軸流サイクロンは、例えば内燃機関のカバーフード内に設けることができる。特に、本発明による軸流サイクロンのほぼ全部が、経済的に好都合に製造することができるプラスチック部分であってよい。軸流サイクロンのための対応受け及び接続部も、エンジンの特にプラスチックより成る部分内に経済的に組み込むことができる。
【0036】
図2に示した実施例
図2に示した軸流サイクロンは、エンジンハウジング14内に収容されている。この軸流サイクロンの基本的な構成は、図1に示した実施例の構成に相当する。従って、機能的に同じ部材には同じ符号が付けられている。
【0037】
図1の実施例に対する相違点は、オイルミスト若しくは、オイルミストから導出しようとする互いに分離された成分の導入及び導出にある。
【0038】
流入側に予セパレータ(Vorabscheider)8が設けられている。予セパレータ8の構成については以下に詳しく説明されている。この予セパレート8内で、管状のセパレータハウジング1内に半径方向の供給開口9が配置されている。
【0039】
予セパレータ8は、漏斗10によって形成されており、この漏斗10は、供給開口9の領域内で、管状のセパレータハウジング1を円錐形周壁の形状で同軸的に包囲している。漏斗10の円錐形周壁は、軸方向で閉鎖した端部と軸方向で開放した端部とを有しており、この場合、閉鎖した端部は狭い方の開口横断面にあって、開放した端部は広い方の開口横断面にある。
【0040】
管状のセパレータハウジング1の中空室内に、供給開口9に対して比較的僅かな軸方向間隔を保って旋回流発生器6が設けられている。この旋回流発生器6は、図1に示した構成(ここでは詳しく説明しない)におけるように、管状のセパレータハウジングの中空室を貫流するオイルミスト流を旋回流に変えるという課題を有している。これによって、旋回流発生器6の下流で、管状のセパレータハウジング1の内壁における分離された液状のオイルの付着物を特に高い程度で得ることができるようにするためである。このような付着物によって得られる油膜は、図面では壁部近くの矢印によって示されている。液状のオイル成分から、少なくとも十分に除去された、オイルミスト流のガス状の部分は、旋回流発生器6の下流で、太字の矢印で示された流れによって強調されている。
【0041】
漏斗10の円錐形の周壁の内周面は、特にねじコンベヤ若しくはスクリューコンベヤ状に構成されていて、図面ではそれぞれ一点鎖線11で包囲された領域内にある。漏斗10の円錐形周壁内における環状室を貫流する際に、オイルミスト流は、管状のセパレータハウジング1の内部に達する前に、円錐形周壁が堅固に結合されている、回転する管状のセパレータハウジング1によって旋回せしめられる。円錐形の周壁の円錐形若しくは漏斗状の形状によって、遠心力によって円錐形周壁の内壁において分離された油膜としてのオイル内に、円錐形周壁の軸方向で開放した端部方向の軸方向の分力が発生する。この軸方向の分力は、円錐形周壁の内周面の内径が次第に大きくなるのに伴って遠心力が増大し、それによって開放した端部に向かう方向の、正の遠心力勾配が得られることによって発生する。この遠心力勾配は、円錐形周壁の開放端部方向の軸方向の分力を生ぜしめ、この分力が、円錐形周壁の内周面において分離されたオイルを、軸方向の開放端部に向かって移動させ、この開放端部から流出させる。これによって、円錐形周壁は、予セパレータ8の機能を満たす。
【0042】
主分離は、管状のセパレータハウジング1の中空室内で行われる。半径方向の供給開口9を通って中空室内に侵入するオイルミスト流に、管状のセパレータハウジング1の中空室内の開口9に対して軸方向で比較的近傍に位置する旋回流発生器6によって旋回流が加えられる。これによって、オイルミスト流内の液状のオイル成分は、特に効果的に油膜として、管状のセパレータハウジング1の中空室の内壁に付着する。
【0043】
予セパレータ8としての円錐形周壁、並びに管状のセパレータハウジング1内の中空室を通って流れるオイルミストの流れは、管状のセパレータハウジングの中空室内の負圧によって生ぜしめられる。
【0044】
旋回流発生器6の下流側の端部において、一方では分離されたオイル液体が導出開口7を通って導出され、他方ではガス成分が導出通路5を通ってそれぞれ別々に導出される。導出通路5は、管状のセパレータハウジング1の軸線に対して同軸的に配置されている。導出通路5は、管状のセパレータハウジング1に対して軸方向で間隔を保っている。何故ならば、導出通路5と管状のセパレータハウジング1の端部との間に受容室4が設けられているからである。管状のセパレータハウジング1の端部から、この端部に堅固に結合された漏斗状領域12が、受容室4の領域内に突入している。この漏斗状領域12の外周面と、この外周面に対して相補的に(つまり、この外周面にほぼ沿った形状に)延在する、受容室4の外周壁(重要室4を形成する円錐形周壁の内周面)との間に環状流路13が存在する。この環状流路13は、漏斗状領域12の狭い端部の領域において、エンジンハウジング14によって包囲されているエンジンハウジングの内室15内に開口している。オイル成分から分離されたガス部分を、オイルミスト流から逆流を生ぜしめるために、若しくは逆流を促進するために、漏斗状領域12の外周壁に相当する、流れガイド手段16が設けられている。
【0045】
図1の実施例におけるように、管状のセパレータハウジング1のための場合によっては必要な駆動手段は図示されていない。図1の実施例におけるように、管状のセパレータハウジング1のための回転エネルギーは、場合によっては十分な形でオイルミスト流自体によって加えられ、旋回流発生器内で変換される。
【0046】
図3に示した実施例
中空室102を備えた、軸方向で中空のカムシャフト101は、カムシャフトハウジング103内に回転可能に軸受けされている。カムシャフトの軸受は符号104で示されている。カムシャフト104は、カムシャフトハウジング103の外側に位置するスプロケット105を介して駆動される。
【0047】
オイルミスト流は矢印Aで示されている。このオイルミスト流からオイルが液相として分離される。この矢印Aに従って、分離しようとするオイルミスト流は、カムシャフト101の壁部内に設けられたオイルミスト供給開口106を通ってカムシャフト101の中空室102内に侵入する。オイルミスト供給開口106の領域内で、円錐形周壁107として構成された漏斗が、カムシャフト101の軸線に対して同軸的にオイルミスト供給開口106を包囲している。円錐形周壁107は、軸方向で閉じた端部及び軸方向で開放した端部を有しており、この場合、閉じた端部は周壁107の狭い方の端部に位置していて、開放した端部は周壁107の広い方の端部に位置している。
【0048】
カムシャフト101の中空室102内には、オイルミスト供給開口106に対して比較的小さい軸方向間隔を保って旋回流発生器108が設けられている。この旋回流発生器108は、カムシャフト101の中空室102を貫流するオイルミスト流を旋回流に変え、それによって旋回流発生器108の下流に、カムシャフト101の内壁において分離された液状のオイルの、特に高い程度の付着物が得られるようにする、という課題を有している。このような付着物によって得られた油膜は、図面では破線109で示されている。液状のオイル成分から少なくとも十分に除去された、オイルミスト流のガス状の部分は、旋回流発生器108の下流で符号10によって示されている。
【0049】
円錐形周壁107の内周面は、図面でそれぞれ一点鎖線111によって包囲された領域内で、スクリューコンベヤ状に形成されている。円錐形周壁106内の環状室を貫流する際に、オイルミスト流は、カムシャフト101の半径方向のオイル供給開口106内に達する前に、回転するカムシャフト101(このカムシャフトに円錐形周壁107が堅固に結合されている)によって回転せしめられる。円錐形周壁107の円錐形に若しくは漏斗状に延びる形状によって、円錐形周壁107の内壁に遠心力によって油膜として分離されたオイルに、円錐形周壁107の軸方向で開放した端部に向かう方向の軸方向の分力が形成される。この軸方向分力は、円錐形周壁107の内周面の内径が大きくなるのに伴って遠心力が増大し、それによって円錐形周壁の開放端部に向かう方向の正の遠心力勾配が得られることによって生ぜしめられる。この遠心力勾配は、円錐形周壁107の開放した端部に向かう方向の軸方向分力を生ぜしめる。この軸方向分力は、円錐形周壁の内周面において分離されたオイルを軸方向で開放した端部に移動させ、この開放した端部から半径方向で矢印Bに従ってオイルは流出するようになっている。
【0050】
その他の「最終分離」若しくは「後分離」は、カムシャフト101の中空室102内で行われる。半径方向のオイルミスト供給開口106を通って中空室102内に侵入するオイルミスト流に、カムシャフト101の中空室102内で前記オイルミスト供給開口106に対して軸方向で比較的近傍に位置する旋回流発生器108によって、旋回流が加えられる。これによって、液状のオイル成分はオイルミスト流内で特に効果的に油膜109として、カムシャフト101の中空室102の内周壁に付着する。
【0051】
予セパレータとしての円錐形周壁、並びにカムシャフト102の中空室102を貫流するオイルミスト流は、カムシャフト101の中空室102内に形成された負圧によって生ぜしめられる。
【0052】
旋回流発生器108に対して下流側に位置する、カムシャフト102の端部において、一方では分離されたオイル液がオイル導出通路112を通って導出され、他方ではガス部分がガス導出通路113を通ってそれぞれ別々に導出される。ガス導出通路113は、カムシャフト101の軸線に対して同軸的に配置されている。つまりガス導出通路113はカムシャフト101の当該の端面側に当接している。ガス導出通路113は、カムシャフト101の中空室102内に挿入管状に突入していない。ガス導出通路113の開口横断面は、カムシャフト101の中空室102の開口横断面と同じであってよい。
【0053】
オイル導出通路112は、カムシャフト101の当該の端部に隣接して、ガス導出通路113を包囲する環状通路として構成されており、この環状通路を通って分離された液状のオイルが流出することができる。オイル導出通路112の環状の領域は、ほぼ管状の通路区分に移行しており、この通路区分内に、分離された液状のオイルが重力に従って流入する。この領域から、分離された液状のオイルが、カムシャフト102を有する内燃機関のクランク室内に流入することができる。カムシャフト101の中空室102とクランク室との間において、カムシャフト101の中空室102の方向に圧力低下が発生するので、オイル導出通路112内にいわゆる重力バルブ117を配置することができる。この重力バルブ117とは、ここでは閉鎖弁117のことである。この閉鎖弁117は、弁の上流側で収集される液状のオイルの重量を介して開放される。これによって、カムシャフト101の中空室102と内燃機関のクランク室との間の圧力補償が避けられる。これによって、分離されたオイルの滴がこのような圧力補償によって、カムシャフト101の中空室102を通過する際の流出抵抗を克服する必要がないという利点を有している。流出抵抗は、少なくとも分離に不都合に作用する傾向がある。
【0054】
旋回流発生器108は、組み付けの際に、カムシャフト101の中空室102内に簡単に挿入することができる。旋回流発生器108の固定は、カムシャフト102の内壁の材料と例えば両側でかしめ加工(Verstemmen)することによって行われる。このためには、中空室内にかしめ工具を軸方向で導入するだけでよい。つまり、旋回流発生器102を軸方向両側でかしめ固定したい場合には、カムシャフト101の両側にかしめ工具を導入するだけでよい。かしめ領域は、図面で符号114によって湿されている。
【0055】
カムシャフト101の軸受104は、カムシャフトハウジング103に堅固に結合されている。カムシャフトハウジング103の内部は、オイルミスト導出通路103の領域内で、オイルミスト導出通路103に対して、隣接する軸受104内でリングシール116によって気密にシールされている。
【0056】
実施例の説明及び以下の請求項に記載したすべての特徴は、単独でも、任意の組み合わせでも発明性がある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】エンジンハウジングの外側に取り付けられた軸流サイクロンの縦断面図である。
【図2】エンジンハウジングの内側に取り付けられた軸流サイクロンの断面図である。
【図3】内燃機関のカムシャフト内に組み込まれたオイルミストセパレータの縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の軸方向の中空軸(1)殊にカムシャフト内に組み込まれた遠心式のオイルミストセパレータであって、
軸(1)が設けられており、該軸の第1の端部に、軸(1)の軸方向の中空室内に導入しようとするオイルミストのための半径方向のオイルミスト供給開口(9)が設けられていて、前記軸(1)の第2の端部に、液相として分離されたオイルを導出するための半径方向のオイル導出通路(13)と、分離後の液体成分内に残属するオイルミスト流のための軸方向のガス導出通路(5)とが設けられており、
半径方向のオイルミスト供給開口(9)の前に、前記軸(1)に堅固に結合された予セパレータ(8)としての遠心式オイルミストセパレータが設けられており、
軸(1)の軸方向の中空室内に、エンドセパレータとしての旋回流発生器(6)が設けられている、
ことを特徴とする、内燃機関の軸方向の中空軸内に組み込まれた遠心式のオイルミストセパレータ。
【請求項2】
前記予セパレータ(8)が、半径方向のオイルミスト供給開口(9)を包囲し、かつ軸(1)を同軸的に包囲する円錐形の周壁として構成されており、該円錐形の周壁の狭い方の端部が軸方向で閉じられていて、半径方向のオイルミスト供給開口(9)に隣接して対応配置されている、請求項1記載のオイルミストセパレータ。
【請求項3】
予セパレータ(8)の円錐形周壁の内周面が、スクリューコンベヤ状に形成されていて、円錐形周壁の広い方の端部に向かう搬送方向を有するように設計されている、請求項1又は2記載のオイルミストセパレータ。
【請求項4】
旋回流発生器(6)が、軸(1)の軸方向の中空室内に嵌め込まれ、ここで、嵌め込み後の軸材料の変形によって固定される構成部分を形成する、請求項1から3までのいずれか1項記載のオイルミストセパレータ。
【請求項5】
軸(1)の第2の端部に設けられた軸方向のガス導出通路(5)が、回転可能に支承された軸(1)に対して定置に、かつ同軸的に配置されていて、しかもこの軸(1)の、ガス導出通路(5)が対応配置されている側の端面側の前に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のオイルミストセパレータ。
【請求項6】
軸(1)の第2の端部に設けられた半径方向のオイル導出通路(13,112)が、重力によって又は収集されたオイルによって開放せしめられる閉鎖弁(117)を備えている、請求項1から5までのいずれか1項記載のオイルミストセパレータ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の、軸方向の中空軸(1)内に組み込まれた、軸流サイクロンとして構成された、自動車内燃機関の遠心式のオイルミストセパレータであって、管軸線を中心にして回転可能で、分離運転中にこの管軸線を中心にして回転するセパレータハウジング(1)と、該セパレータハウジング(1)内に設けられた旋回流発生器(6)とを有しており、該オイルミストセパレータが内燃機関のカムシャフト内に組み込まれていない形式のものにおいて、
前記セパレータハウジング(1)がもっぱらオイルミストセパレータとしての機能を有していることを特徴とする、オイルミストセパレータ。
【請求項8】
セパレータハウジング(1)が、オイルミスト流から発生し、かつ旋回流発生器(6)に駆動力として作用する流動エネルギーによって、分離作用を有する回転運動に変換されるようになっている、請求項7記載のオイルミストセパレータ。
【請求項9】
セパレータハウジング(1)が、電動モータ式の駆動装置に接続されている、請求項7又は8記載のオイルミストセパレータ。
【請求項10】
セパレータハウジング(1)が電動モータ式の駆動装置のロータとして構成されている、請求項9記載のオイルミストセパレータ。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のオイルミストセパレータであって、下流側に位置する軸方向の端部を有しており、
該端部が、回転可能に支承された管状のセパレータハウジング(1)であって、このセパレータハウジング(1)が、定置の受容ハウジングの半径方向で拡張された受容室(4)内に開口しており、
該受容室(4)から、セパレータハウジング(1)の管軸線に対して同軸的に、前もって処理したオイルミストのガス成分を変向ガイドするための導出通路(5)が延在しており、該導出通路(5)は、管状のセパレータハウジング(1)の当該の軸方向端部に対して軸方向で間隔を保って配置されており、測地学的に見て下に位置する、受容室(4)の領域内に、導出しようとするオイルのための導出通路(7)が設けられていることを特徴とする、オイルミストセパレータ。
【請求項12】
受容室(4)が、下流側で拡張された直径を有する漏斗の形に構成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のオイルミストセパレータ
【請求項13】
管状のセパレータハウジング(1)の下流側に位置する端部が、受容室(4)内に延在する円錐形の漏斗状領域(12)内で終わっており、該漏斗状の領域(12)の外周面と、この外周面に対して相補的な、受容室(4)の外周壁との間に、一貫してほぼ同じ幅を有する環状流路(13)が形成されており、該環状流路(13)が、管状のセパレータハウジング(1)に隣接する端部に開放した出口を有している、請求項12記載のオイルミストセパレータ。
【請求項14】
漏斗状領域(12)の外周面に、環状流路(13)の外方に開放した端部に向かう方向の流れを形成するための流れガイド手段(16)が設けられている、請求項13記載のオイルミストセパレータ。
【請求項15】
環状のセパレータハウジング(1)に対する定置の供給通路(3)と定置の導出通路(5)との間の移行部によって、環状のセパレータハウジング(1)内のオイル供給、及び/又はこのセパレータハウジング(1)からのオイル導出が行われ、シールギャップとして構成された摩擦なしで作業するシールが設けられている、請求項1から14までのいずれか1項記載のオイルミストセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−540906(P2008−540906A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510397(P2008−510397)
【出願日】平成18年5月6日(2006.5.6)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000781
【国際公開番号】WO2006/119737
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506292974)マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26−46, D−70376 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】