説明

内燃機関用潤滑油組成物

【課題】
内燃機関用潤滑油として、新油時、劣化時のいずれも低摩擦性を有する、つまり長期間にわたって省燃費性を維持できるものが要求され、さらに窒素酸化物による酸化安定性に優れ、エンジンのシールゴムを劣化させにくいことが要求される。
【解決手段】
潤滑油基油に、組成物全量基準で、
(A)ジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン濃度換算で0.04〜0.10質量%、
(B)フェニル−α−ナフチルアミンを0.05〜4.0質量%、
(C)モリブデンジチオカーバメート系摩擦低減剤をモリブデン換算で0.02〜0.15質量%、及び
(D)チアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジチオカーバメート化合物、ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、硫化エステル化合物からなる群より選択される1種または2種以上の硫黄含有化合物を、硫黄濃度換算で0.01〜0.5質量%、
を配合し、内燃機関用潤滑油組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関用潤滑油組成物に関し、さらに詳しくは窒素酸化物ガスに対する耐酸化性に優れると共に、優れた省燃費性を長期間にわたって維持でき、内燃機関の構成要素であるシールゴムを劣化させにくい内燃機関用潤滑油組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用潤滑油組成物には耐摩耗性、酸化安定性、清浄分散性等多くの性能が要求されている。近年、大気中の炭酸ガス増加による地球温暖化を抑制するために、自動車の省燃費化が重要な課題となっており、内燃機関用潤滑油組成物にも省燃費性が強く要求されるようになってきた。内燃機関用潤滑油組成物は通常、石油から精製された基油に粘度指数向上剤、清浄分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤等の添加剤を配合して構成される。内燃機関用潤滑油組成物の省燃費性を高めるには、基油や粘度指数向上剤を調整して低粘度化し、潤滑油による攪拌抵抗やせん断抵抗を低下させて摩擦を低くする方法がある。しかしながら、カム、タペット等で構成される動弁系のように境界潤滑が主となる部位においては、潤滑油を低粘度化しても摩擦が低くならない。このため、近年の内燃機関用潤滑油組成物には摩擦調整剤が配合されるようになってきた。摩擦低減は使用開始初期のみならず、長期間使用後においても維持されることが肝要であり、摩擦低減剤と共に種々の添加剤を選択して配合する必要性も指摘されている。従来の内燃機関用潤滑油組成物では、特定の潤滑油基油に摩擦調整剤としてMoDTCを配合すると共に、ZDTP、フェノール系酸化防止剤を配合して、低摩擦性の維持性を向上させているものがある(例えば、特許文献1参照)。また、潤滑油基油にMoDTCと共にZDTP、無灰系有機ポリサルファイド化合物を配合して、低摩擦性の持続性を向上させているものもある(例えば、特許文献2参照)。また、特定の潤滑油基油にMoDTCと共にアルカリ土類金属サリシレート、ZDTP、特定のポリブテニルコハク酸イミド、フェノール系酸化防止剤、粘度指数向上剤、特定の硫黄化合物を配合して、低摩擦性の維持性を向上させているものもある(例えば、特許文献3参照)。また、特定の潤滑油基油にMoDTC又はMoDTPと共に、アルキルジフェニルアミン又はアルキル化フェニル−α−ナフチルアミンを配合して、摩擦低減と共に空気雰囲気中での熱酸化安定性を向上させているものもある(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
自動車の環境対応には、省燃費化による炭酸ガスの低減に加えて、例えば窒素酸化物等の排気ガス中の有害物質を低減させることも要求されており、このために通常、自動車には排気管の途中に触媒が装備されている。内燃機関では微量の潤滑油が燃焼室に入り、その燃焼物が排気ガスに混入するが、このとき潤滑油に含有される成分が触媒を被毒し、その活性を低下させる。ガソリンエンジン搭載車に装備されている三元触媒は窒素酸化物等も無害化するために装着され、リンによって被毒を受けることが知られており、触媒の被毒防止の観点から、内燃機関用潤滑油組成物にはリン含有量を低減することも新たに要求されるようになってきた。内燃機関用潤滑油組成物には半世紀以上前から酸化防止機能、摩耗防止機能、腐食防止機能を有するZDTPが主要添加剤として配合されている(例えば、非特許文献1参照)。また、ZDTPはMo含有摩擦調整剤が低摩擦性を発現するためにも必要な添加剤であることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。リン含有量の低減はZDTP配合量の低減を意味し、単純なリン含有量の低減は低摩擦性、酸化安定性を低下させることに他ならない。
上記した窒素酸化物ガスは潤滑油にも混入しその空気酸化を促進すると言われており、前記特許文献1はこのような窒素酸化物ガスを含む雰囲気下においても低摩擦性の維持性を向上させる等を課題の1つとして開発された技術であり、先に示したようにフェノール系酸化防止剤の配合が特徴の1つでもある。
さらにまた潤滑油には上述のように各種の配合剤が配合される結果、潤滑油基油の組成や配合剤自身または相互の相乗効果のためにある種の弊害を生じることがあり、例えば、エンジンに使用される、潤滑油が接触することがあるシールゴム、例えばフッ素ゴム製のシール材の劣化促進等の影響である。そのため、このようなシールゴムに対する影響を配慮することもまた課題の一つとされる。
すなわち、上記したようなこれらの課題を克服し低摩擦性を長期間にわたって維持し優れた酸化安定性を有する内燃機関用潤滑油組成物の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平8−209177号公報(第5−7頁、第1−3表)
【特許文献2】特開平8−73878号公報(第4−8頁、第1−6表)
【特許文献3】特開平9−3463号公報(第8−11頁、第1表)
【特許文献4】特開平6−313183号公報(第5−9頁、第1−2表)
【非特許文献1】桜井俊男編著「新版石油製品添加剤」幸書房、1986年7月25日、p.419〜421
【非特許文献2】村木正芳ら著「トライボロジスト第41巻第10号」(社)日本トライボロジー学会、1996年10月15日、p.62〜69
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、リン含有量が少なくても、低摩擦性及びその維持性に優れると共に、優れた酸化安定性を有し、なおかつ内燃機関の構成要素であるシールゴムを劣化させにくい内燃機関用潤滑油組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有する内燃機関用潤滑油組成物が低摩擦性及びその維持性に優れると共に、優れた酸化安定性を有し、なおかつシールゴムを劣化させにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、潤滑油基油に、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、
(A)ジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン濃度換算で0.04〜0.10質量%、
(B)フェニル−α−ナフチルアミンを0.05〜4.0質量%、
(C)モリブデンジチオカーバメート系摩擦低減剤をモリブデン換算で0.02〜0.15質量%、及び
(D)チアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジチオカーバメート化合物、ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、硫化エステル化合物からなる群より選択される1種または2種以上の硫黄含有化合物を硫黄濃度換算で0.01〜0.5質量%、
なる量をそれぞれ配合してなることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
本発明の第2は、本発明の第1に、さらに、
(E)アルカリ土類金属サリシレートを、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、アルカリ土類金属濃度換算で0.02〜0.5質量%配合してなることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
本発明の第3は、本発明の第1〜2のいずれかにおいて、前記(D)の硫黄含有化合物の少なくとも1種が、ジチオカーバメート化合物であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
本発明の第4は、本発明の第1〜4のいずれかにおいて、潤滑油基油の100℃での動粘度は2〜6mm/s、%Cは2以下、%Cは25以下及び粘度指数は105以上であり、
さらに(F)内燃機関用潤滑油組成物としての100℃での動粘度が4.6〜11mm/sになるような量の粘度指数向上剤が配合されてなることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
本発明の第5は、本発明の第4において、前記配合した粘度指数向上剤が、分散型及び/又は非分散型ポリメタクリレートであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
本発明の第6は、本発明の第1〜5のいずれかにおいて、前記(B)のフェニル−α−ナフチルアミンが、(N−p−アルキル)フェニル−α−ナフチルアミンであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
本発明の第7は、本発明の第1〜5のいずれかにおいて、(B)フェニル−α−ナフチルアミンのアルキル基が、炭素数8〜16の分岐アルキル基であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
本発明の第8は、本発明の第1〜7のいずれかにおいて、排気ガス浄化用に3元触媒を装着する内燃機関の潤滑用であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、新油時、劣化時のいずれも低摩擦性を有している、つまりこの潤滑油を用いれば長期間にわたってエンジンの省燃費性を維持できるものであり、且つこの潤滑油は酸化安定性に優れ、エンジンのシールゴムを劣化させにくいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の内容をさらに詳細に説明する。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物における潤滑油基油としては、通常の潤滑油の基油として用いられる任意の鉱油、ワックス異性化油、合成油の1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
鉱油としては、具体的には例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用できる。
【0009】
ワックス異性化油としては、炭化水素油を溶剤脱ろうして得られる石油スラックワックスなどの天然ワックス、あるいは一酸化炭素と水素との混合物を高温高圧で適当な合成触媒と接触させる、いわゆるフィッシャー トロプッシュ(Fischer Tropsch)合成方法で生成される合成ワックスなどのワックス原料を水素異性化処理することにより調整されたものが使用できる。ワックス原料としてスラックワックスを使用する場合、スラックワックスは硫黄と窒素を大量に含有しており、これらは潤滑油基油には不要であるため、必要に応じて水素化処理し、硫黄分、窒素分を削減したワックスを原料として用いることが望ましい。
また合成油としては、特に制限はないが、ポリ−α−オレフィン(1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)及びその水素化物、イソブテンオリゴマー及びその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、並びにポリフェニルエーテル等が使用できる。
【0010】
なお、これら潤滑油基油の動粘度は、特に限定されず任意であるが、通常、100℃における動粘度は好ましくは1〜10mm2/s、より好ましくは2〜8mm2/s、さらに好ましくは2〜6mm/s、特に好ましくは3.5〜4.5mm/sである。潤滑油基油の粘度指数は特に限定されず任意であるが、省燃費性能に優れることから、好ましくは105以上、より好ましくは115以上、さらに好ましくは120以上である。また、潤滑油基油の芳香族成分は、特に制限はないが、省燃費性能の維持性に優れることから、%Cで、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。また、潤滑油基油のナフテン成分は、特に制限はないが、%Cで、好ましくは5〜25以下、より好ましくは10〜22、特に好ましくは15〜20である。%Cが25以下の場合、シールゴムへの影響が大きいため、本発明の添加剤構成は有用であり、%Cを10以上とすることでシールゴムへの影響が小さくなる。なお、本発明でいう%C及び%Cは、ASTM D3238に規定された方法により求められる%C及び%Cを示す。
また、潤滑油基油のNOACK蒸発量は、特に制限はないが、省燃費性能の維持性に優れることから、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることが特に好ましく、また、省燃費性及び低温粘度特性に優れる点で、5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは12質量%以上である。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きいだけでなく、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、省燃費性が悪化するだけでなく、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D 5800に準拠して測定される潤滑油の蒸発量を測定したものである。
【0011】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、必須成分である(A)成分としてジアルキルジチオリン酸亜鉛を配合する。(A)成分の配合量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、リン濃度換算で、0.02〜0.10質量%、好ましくは0.04〜0.09質量%であり、三元触媒の被毒をより抑制することができる点で、0.08質量%以下とすることが好ましい。(A)成分の配合量が上記0.02質量%未満である場合は、低摩擦性が不充分であり、また、上記0.10質量%を超える場合は、三元触媒の被毒を加速させるため、それぞれ好ましくない。
【0012】
上記必須成分である(A)成分のジアルキルジチオリン酸亜鉛としては下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

式(5)中、R、R、R10及びR11はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数2〜18、好ましくは3〜8の直鎖又は分岐アルキル基を示し、具体的にはエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられ、これらは直鎖でも分岐でもよい。これらは第1級アルキル基、第2級アルキル基、第3級アルキル基のいずれでもよいが、低摩擦性に優れることから第2級アルキル基であることが好ましい。R、R、R10及びR11を導入する際にα−オレフィンの混合物を原料とする場合があるが、この場合、(A)成分としては異なる構造のアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物となる。かかる混合物も無論、本発明の(A)成分として使用できる。
【0013】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、必須成分の(B)成分としてフェニル−α−ナフチルアミンを配合するものであり、この化合物は次の一般式(1)で表される。
【化6】

式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。Rとしては、具体的には例えば、水素原子又はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種エイコシル基、各種ヘンエイコシル基、各種ドコシル基、各種トリコシル基、各種テトラコシル基などが挙げられる。
【0014】
本発明の(B)成分として、上記式(1)中、Rは炭素数8〜16のアルキル基であることが好ましく、炭素数8〜16の分岐アルキル基であることがより好ましい。さらに、Rが炭素数8〜16の分岐アルキル基である場合は、これらのアルキル基はプロピレンのオリゴマーから誘導される分岐ノニル基、分岐ドデシル基、分岐ペンタデシル基、分岐オクタデシル基、又はブテンやイソブチレンのオリゴマーから誘導される分岐オクチル基、分岐ドデシル基、分岐ヘキサデシル基であることが特に好ましい。
また、本発明の(B)成分としては上記一般式(1)で表される化合物である限りは、種々のフェニル−α−ナフチルアミンの混合物の形でも使用可能である。
具体的な上記(1)式で表される化合物としては、フェニル−α−ナフチルアミンが例示される。
本発明の(B)成分として、上記式(1)中、Rの置換位置は任意であり、具体的にはオルト位、メタ位又はパラ位が挙げられるが、パラ位が特に好ましい。かかる観点から、特に好ましいR1がパラ位の化合物は(N−p−アルキル)フェニル−α−ナフチルアミンである。
【0015】
本発明の(B)成分としてより好ましい(N−p−アルキル)フェニル−α−ナフチルアミンは次の一般式(3)で表される。
【化7】

式(3)中、Rは炭素数8〜16のアルキル基であり、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分岐アルキル基であることが特に好ましい。ここでいう炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1-ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、潤滑油基油に対するそれ自身の酸化生成物の溶解性に優れる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。
具体的な、上記式(3)で表される(N−p−アルキル)フェニル−α−ナフチルアミンとしては、プロピレンの4量体から誘導された分岐ドデシル基を有する、p−ドデシルフェニル−α―ナフチルアミン等が例示される。
【0016】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物における(B)成分の配合量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で0.05〜4質量%、好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.5〜2質量%である。(B)成分の配合量が0.01質量%未満の場合には(B)成分の添加効果が現れず、一方、4質量%を超える場合には配合量に見合うだけの効果が得られないため、それぞれ好ましくない。
【0017】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、必須成分としての(C)成分としてモリブデンジチオカーバメート系摩擦低減剤を配合し、これは次の一般式(2)で表される。
【化8】

式(2)中、R、R、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基などの炭化水素基を示し、特にアルキル基が好ましい。R、R、R及びRの具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などの炭素数2〜18、好ましくは8〜13のアルキル基(これらアルキル基は直鎖でも分岐でもよく、また第1級アルキル基、第2級アルキル基、第3級アルキル基のいずれでもよい);ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基などの炭素数4〜18、好ましくは8〜18のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖でも分枝でもよく、また二重結合の位置も任意である);ブチルフェニル基、ノニルフェニル基などのアルキルアリール基(これらアルキルアリール基のアルキル部分は直鎖でも分岐でもよく、アルキル部分のアリール基上の置換位置は任意である)などが挙げられる。R、R、R及びRとしてアルキル基を導入する際に、α−オレフィンの混合物を原料とする場合があるが、この場合、(C)成分としては異なる構造のアルキル基を有するモリブデンジチオカーバメートの混合物となる。かかる混合物も本発明の(C)成分として使用することができる。また、X、X、X及びXは個別に硫黄原子または酸素原子を示す。
【0018】
(C)成分のモリブデンジチオカーバメートの好ましい具体例としては、硫化モリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化モリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジトリデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジトリデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカーバメートなどが挙げられる。
本発明においては、窒素酸化物ガスに対する耐酸化性に優れ、優れた省燃費性を長期間にわたって維持できるとともに、潤滑油基油への溶解性や貯蔵安定性等の性能も含め、上記(2)式中、R〜Rのすべてが同一でないことが好ましく、炭素数8〜13の直鎖又は分枝アルキル基と炭素数13の直鎖又は分枝アルキル基との混合物であることがより好ましく、上記(2)式で表される化合物が非対称型であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物における(C)成分の配合量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、モリブデン濃度換算で、0.02〜0.15質量%、好ましくは0.04〜0.12質量%である。(C)成分の配合量が上記0.02質量%未満である場合は、充分な摩擦低減効果が得られず、また、上記0.15質量%を超える場合は配合量に見合うだけの摩擦低減効果が得られないため、それぞれ好ましくない。
【0020】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、必須成分である(D)成分として、以下に(D−1)〜(D−5)としてそれぞれ示すチアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジチオカーバメート化合物、ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、硫化エステル化合物からなる群より選択される1種または2種以上の硫黄含有化合物を配合する。
(D−1)チアゾール化合物
(D−2)チアジアゾール化合物
(D−3)ジチオカーバメート化合物
(D−4)ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物
(D−5)硫化エステル化合物
【0021】
ここで、(D−1)チアゾール化合物としては、下記一般式(6)または(7)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化9】

【化10】

式(6)、(7)中、R12及びR14はそれぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、R13は炭素数1〜4のアルキル基を表し、a及びcは0〜3の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。
これらの中でも、上記一般式(7)で表されるベンゾチアゾール化合物が特に好ましい。ここで、R12、R14としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖でも分枝でもよい)を挙げることができる。
上記シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。
上記アルキルシクロアルキル基としては、具体的には、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、具体的には、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。
上記アルキルアリール基としては、具体的には、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖でも分枝でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリールアルキル基としては、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらにおけるアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
(D−1)チアゾール化合物としては、具体的にはアルキルチアゾール、アルキルメルカプト、アルキルベンゾチアゾール、アルキルメルカプトベンゾチアゾール等が例示される。
【0022】
(D−2)チアジアゾール化合物としては、下記一般式(8)または(9)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化11】

【化12】

式(8)、(9)中、R15、R16、R17及びR18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、d、e、f及びgは同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜8の整数を表す。R15、R16、R17及びR18としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0023】
上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖でも分枝でもよい)を挙げることができる。
上記シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。
上記アルキルシクロアルキル基としては、具体的には、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、具体的には、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖でも分枝でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。
上記アルキルアリール基としては、具体的には、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖でも分枝でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリールアルキル基としては、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらにおけるアルキル基は直鎖でも分枝でもよい)を挙げることができる。
上記(D−2)チアジアゾール化合物としては、具体的には、2,5−ビス(直鎖又は分枝状アルキルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(直鎖又は分枝状アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2−(直鎖又は分枝状アルキルチオ)−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−(直鎖又は分枝状アルキルジチオ)−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール及びこれらの混合物が例示される。
【0024】
(D−3)ジチオカーバメート化合物としては、下記一般式(10)または(11)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化13】

【化14】

式(10)、(11)中、R19、R20、R21、R22、R23、R24及びR25はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を表す。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、トリデシル基及びオクタデシル基などが挙げられる。アルキル基を導入する際にα−オレフィンの混合物を原料とする場合があるが、この場合、複数種のアルキル基を有するアルキルチオカルバミル化合物が挙げられる。
また、式(10)中、基(X)はS、S−S、S−CH−S、S−(CH−S、S−(CH−S、あるいはS−Zn−Sなどの基を表す。
上記(D−3)のジチオカーバメート化合物の好ましい例としては、具体的に、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、ビス(ジメチルチオカルバミル)モノスルフィド、ビス(ジメチルチオカルバミル)ジスルフィド、ビス(ジブチルチオカルバミル)シスルフィド、ビス(ジペンチルチオカルバミル)ジスルフィド、ビス(ジオクチルチオカルバミル)ジスルフィド、亜鉛ジペンチルジチオカーバメートなどを挙げることができる。本発明においては、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)が特に好ましい。
【0025】
(D−4)ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物としては下記一般式(12)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化15】

式(12)中、R26及びR27は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜22の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、あるいは炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基を示し、hは1〜5、好ましくは1〜2の整数を表す。ここでいうアルキル基は第1級アルキル基、第2級アルキル基、第3級アルキル基を含む。
26及びR27の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ブチル基、、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などを挙げることができる。
【0026】
26及びR27としては、プロピレンまたはイソブテンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、あるいは炭素数6〜8のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基であることが好ましく、これらの基としては例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分岐状ヘキシル基、プロピレン3量体から誘導される分岐状ノニル基、プロピレン4量体から誘導される分岐状ドデシル基、プロピレン5量体から誘導される分岐状ペンタデシル基、プロピレン6量体から誘導される分岐状オクタデシル基、tert−ブチル基、イソブテン2量体から誘導される分岐状オクチル基、イソブテン3量体から誘導される分岐状ドデシル基、イソブテン4量体から誘導される分岐状ヘキサデシル基などのアルキル基(これらのアルキル基は全ての分岐異性体を含む);フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基などのアルキルアリール基(これらアルキルアリール基のアルキル部分は直鎖でも分岐でもよく、アルキル部分のアリール基上の置換位置は任意である);及びベンジル基、フェニルエチル基(フェニル基の置換位置は任意である)などのアリールアルキル基が挙げられる。
26及びR27としては、プロピレンまたはイソブテンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数6〜15のアルキル基であることが特に好ましい。
【0027】
上記(D−4)のジヒドロカルビルポリサルファイド化合物の具体例としては、ジブチルポリサルファイド、ジヘキシルポリサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジノニルポリサルファイド、ジデシルポリサルファイド、ジドデシルポリサルファイド、ジテトラデシルポリサルファイド、ジヘキサデシルポリサルファイド、ジオクタデシルポリサルファイド、ジエイコシルポリサルファイド、ジフェニルポリサルファイド、ジベンジルポリサルファイド、ジフェネチルポリサルファイド、ポリプロペニルポリサルファイド、ポリブテニルポリサルファイド及びこれらの混合物などが挙げられるが、ポリプロペニルポリサルファイド、ポリブテニルポリサルファイド及びこれらの混合物が特に好ましい。ここでいうポリプロペニルポリサルファイド、ポリブテニルポリサルファイドまたはこれらの混合物は、プロピレン、イソブテン、これらの単量体の2〜4量体、あるいはこれら単量体または重合体の混合物などのオレフィン系炭化水素を元素硫黄、ハロゲン化硫黄(例えば1塩化硫黄または2塩化硫黄)、硫化水素及びこれらの混合物などにより硫化することによって得ることができる。
【0028】
(D−5)硫化エステル化合物としては、エステル化合物を硫化処理したものであり、具体的には例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;及びこれらの混合物などを任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。
【0029】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物における上記(D)成分の配合量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、硫黄濃度換算で0.01〜0.4質量%、好ましくは0.03〜0.3質量%である。(D)成分の配合量が上記0.01質量%未満の場合には(D)成分の添加効果が現れず、一方、0.4質量%を超える場合には、劣化時に錆びあるいは腐食の原因となる強酸が発生する傾向があるため、それぞれ好ましくない。
【0030】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、低摩擦性をさらに高めるために、任意成分であるが、さらに(E)成分としてアルカリ土類金属サリシレートを配合することが好ましい。アルカリ土類金属サリシレートには中性アルカリ土類金属サリシレート又は過塩基性アルカリ土類金属サリシレートが含まれる。またアルカリ土類金属は好ましくはカルシウム、マグネシウムまたはこれらの混合物である。
(E)成分として好ましい中性アルカリ土類金属サリシレートは、炭化水素基置換サリチル酸を当量のアルカリ土類金属水酸化物で中和した塩をいい、一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【化16】

式(3)中、Rは直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、カルボキシル基などの炭化水素基を表し、aは1〜2の整数を表し、Mはカルシウム又はマグネシウムを表す。Rとしては特にアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は12〜30、好ましくは14〜18であることが望ましく、具体的にはドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基などが挙げられ、これらは直鎖でも分岐でもよい。アルキル基を導入する際にα−オレフィンの混合物を原料とする場合があるが、この場合(E)成分としては異なる構造のアルキル基を有する中性アルカリ土類金属サリシレートの混合物となる。かかる混合物も使用することができる。
例えば、具体的な中性アルカリ土類金属サリシレートとしては、炭素数14〜18の直鎖又は分枝α−オレフィン混合物から誘導されるアルキル基を有するカルシウムモノアルキルサリシレート及び/又はカルシウムジアルキルサリシレート等が例示される。
ここで、モノアルキルサリシレートにおけるアルキル基としては、エチレン重合体のような直鎖α−オレフィンを原料とする場合、いわゆるソフト型のアルキルサリシレートとなり、3−アルキルサリシレートと5−アルキルサリシレートが約2:1の割合で生成する。しかし、実際にはその反応条件や反応比率、立体障害等により約3:2の割合となり、その他の化合物として4−アルキルサリシレートが含まれる。ここで、サリシレートに付加するアルキル基は、第2級のアルキル基(1−アルキル−アルキル基)である。また、アルキル基の原料として分枝α−オレフィンを使用する場合、いわゆるハード型のアルキルサリシレートとなり、5−アルキルサリシレートがほぼ100%となる。また、これらを分離あるいは濃縮させ、所望の構造を有するアルキルサリシレートを主成分とさせることも可能である。
本発明においては、摩耗防止性、溶解性、貯蔵安定性の点で上記のうち、ソフト型のアルキルサリシレートを使用することが好ましく、少なくとも3位にアルキル基を有するサリシレートが主成分となるように調整することが好ましく、その構成としては、モノアルキルサリシレートを主成分として得る場合は、3−アルキルサリシレートが45〜100モル%、好ましくは50〜90モル%、より好ましくは55〜80モル%であり、5−アルキルサリシレートが0〜40モル%、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜30モル%である。なお3,5−ジアルキルサリシレートは、原料となるα−オレフィンの反応比率により、0〜100モル%となりうるが、摩耗防止性、低摩擦性、低温流動性、溶解性、貯蔵安定性、水分存在下での酸化安定性の観点から、好ましくは3〜50モル%であり、より好ましくは6〜30モル%であり、3−アルキルサリシレートと3,5−ジアルキルサリシレートの合計量が好ましくは50モル%以上、より好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上とすることが望ましい。
また、(E)成分として好ましい過塩基性アルカリ土類金属サリシレートは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩やホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属ホウ酸塩によって前記中性アルカリ土類金属サリシレートを過塩基化することによって得られるものである。
例えば、具体的な過塩基性アルカリ土類金属サリシレートとしては、炭酸カルシウムで過塩基化された、炭素数14〜18の直鎖α−オレフィン混合物から誘導されるアルキル基を有するカルシウムモノアルキルサリシレート及び/又はカルシウムジアルキルサリシレートが例示される。
【0031】
(E)成分の塩基価(JIS K2501過塩素酸法)に特に制限はないが、希釈油配合ベースで50〜350mgKOH/gであることが好ましく、150〜350mgKOH/gであることがさらに好ましい。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物における(E)成分の配合量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、アルカリ土類金属濃度換算で、0.02〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.4質量%、より好ましくは0.1〜0.3質量%である。(E)成分の配合量が上記0.02%未満である場合には、(E)成分配合による摩擦低減効果が現れず、一方、上記0.5質量%を超える場合には、配合量に見合うだけの効果が得られないため、それぞれ好ましくない。
【0032】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、任意成分であるが、粘度特性を改善することによって、省燃費性をさらに高めるために、さらに粘度指数向上剤(以下、「(F)成分」という)を配合することが好ましい。(F)成分としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体若しくはその水素化物などのいわゆる非分散型ポリメタクリレート、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型ポリメタクリレート;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合させた非分散型又は分散型オレフィンコポリマー;ポリメタクリレート及びオレフィンコポリマーのグラフトコポリマー若しくはその水素化物;または、ポリメタクリレート及びオレフィンコポリマー若しくはその水素化物の混合物が挙げられる。
【0033】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に配合する(F)成分としては、低温〜中温の実用域における粘度特性の改善効果に優れるため、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレートまたはこれらの混合物を使用することが好ましい。
ポリメタクリレート、オレフィンコポリマー若しくはその水素化物、ならびにポリメタクリレート及びオレフィンコポリマーのグラフトコポリマー若しくはその水素化物の重量平均分子量は通常、それぞれ50,000〜1,000,000、10,000〜500,000、50,000〜1,000,000の範囲である。
成分(F)は、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の100℃における動粘度が4.6〜11mm/s、好ましくは5.6〜9.3mm/sになるような量を添加する。通常、そのような量は内燃機関用潤滑油組成物全量基準で0.1〜10質量%である。
【0034】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させる目的で、必要に応じて、さらに無灰分散剤、ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類、(E)成分以外の金属系清浄剤、摩耗防止剤、(C)成分以外の摩擦低減剤、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤に代表される各種添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて任意の量を配合してもよい。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に併用可能な無灰分散剤としては、潤滑油用の無灰分散剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、内燃機関用潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0035】
また、無灰分散剤の1例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、具体的には例えば、前述したような含窒素化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述したような含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述したような含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述したような含窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物等が挙げられる。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量、併用することができるが、通常、その含有量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で1〜12質量%であるのが望ましい。
【0036】
ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類としては、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物には、これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量、併用することができるが、通常、その含有量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%であるのが望ましい。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に併用可能な(E)成分以外の金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルフォネート、フェネート、カルボキシレート、ナフテネート等が本発明の組成物に、単独あるいは二種類以上組み合わせて使用できる。ここでアルカリ金属としてはナトリウムやカリウム、アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム等が例示される。また、具体的な金属系清浄剤としてはカルシウム又はマグネシウムのスルフォネート、フェネートが好ましく用いられる。なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は要求される性能に応じて任意に選択することができる。
【0037】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に併用可能な摩耗防止剤としては、潤滑油用の摩耗防止剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、例えば、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、及びこれらのエステル類とアミン類あるいはアルカノールアミン類との塩等が使用できる。
これら摩耗防止剤の配合量は特に限定されないが、通常、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、0.05〜1質量%であるのが望ましい。
【0038】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に併用可能な(C)成分以外の摩擦低減剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、(C)成分以外の有機モリブデン化合物等が挙げられる。
アミン化合物としては、炭素数6〜30の直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族モノアミン、直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族ポリアミン、又はこれら脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等が例示できる。脂肪酸エステルとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステル等が例示できる。脂肪酸アミドとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミド等が例示できる。脂肪酸金属塩としては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸の、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)や亜鉛塩等が挙げられる。
本発明においては、これらの摩擦調整剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量で配合することができるが、通常、その配合量は、内燃機関用潤滑油組成物基準で0.01〜5.0質量%、好ましくは0.03〜3.0質量%であるのが望ましい。
【0039】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に併用可能な酸化防止剤としては、ビスフェノール化合物、モノフェノール化合物、ジフェニルアミン系化合物等の酸化防止剤が挙げられ、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で併用することができる。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に併用可能な腐食防止剤としては、潤滑油用の腐食防止剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を配合することができるが、通常、その配合量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で0.01〜1質量%であるのが望ましい。
【0040】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に併用可能な消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を配合することができるが、通常、その配合量は、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で0.001〜0.05質量%であるのが望ましい。
【0041】
上記した本発明の潤滑油組成物は、排気ガス浄化用に3元触媒を装着する内燃機関の潤滑用に好適に用いられる。ここで3元触媒は、排気ガス浄化用として、硫黄や炭素の酸化物のほか窒素の酸化物ガスも酸化・還元作用により無害化させるために内燃機関等の排気装置に装着される触媒であり、ガソリンエンジン等では装着されることが多い。
3元触媒は窒素酸化物ガスを無害化する触媒であるが、かかる窒素酸化物ガスが潤滑油雰囲気中に混入すると該潤滑油の空気酸化を促進する傾向が認められ、このような雰囲気下では結果的に酸化劣化後における低摩擦係数の保持が難しい。
しかしながら、本発明の潤滑油組成物ではこのような窒素酸化物ガスを含む雰囲気下であっても、酸化劣化後における低摩擦係数の維持が容易である。
【0042】
さらに、内燃機関にはシール用に耐熱性のゴム・シール剤が使用されることが多く、かかるシール材としては、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等が多く用いられる。
シール材は、潤滑油と接触することがあり、そのため場合により潤滑油はシール材に影響することがあるが、しかし、本発明の潤滑油はかかるシールゴムへの影響が少なく、とりわけフッ素ゴムに対する影響、たとえばこれを劣化させて強度低下を生じさせることなどが少ない。
従って、ゴム・シール材、特にフッ素ゴム・シール材を用いる内燃機関の潤滑油に好適に使用される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の内容を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
表1に示す組成により本発明に係る内燃機関用潤滑油組成物(実施例1〜6)、及び表2に示す組成により比較のための組成物(比較例1〜5)を調整し、新油・劣化油の摩擦係数、劣化油の不溶解分、及びシールゴム浸漬試験を行った。
(劣化試験)
試料油の劣化試験は、窒素酸化物(NOx)含有ガス吹き込みによる酸化試験で行った。140℃に加熱した200mLの試料油に、NOx濃度0.12容量%のガスを135mL/min吹き込んで劣化させた。48hまで劣化させた試料油を摩擦試験用劣化油として使用した。また、144hまで劣化させた試料油のn−ペンタン不溶解分を測定し、これを酸化安定性の指標とした。
(摩擦試験)
新油及び摩擦試験用劣化油の摩擦特性を、オプティモール社製SRV往復動摩擦試験機で評価した。試験条件は、荷重400N、振動数50Hz、振幅1.5mm、及び油温110℃である。
(シールゴム浸漬試験)
150℃に加熱した試料油にフッ素ゴムを168h浸漬した。実施例及び比較例で調整した組成物に浸漬したフッ素ゴムの引張試験を行い、これらの結果と浸漬前のフッ素ゴムの引張試験結果を比較して引張り強さ変化率を算出し、これらをシールゴム適合性の指標とした。フッ素ゴムはNOK(株)社製のF585である。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
1)水素化分解鉱油。100℃の動粘度:4.2mm/s、%C:0.4、%C:20、粘度指数122、NOACK蒸発量:14.5質量%。
2)次式(13)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛。リン含有量7.2質量%。
【化17】

(式13中、Rはsec−ブチル基またはsec−ヘキシル基を示す。)
3)プロピレンの4量体から誘導された分岐ドデシル基を有する、p−ドデシルフェニル−α―ナフチルアミン。
4)P,P’−ジ−イソオクチルジフェニルアミン。
5)4,4’−メチレンビス(2,6−ジターシャリーブチルフェノール)。
6)次式で表されるモリブデンジチオカーバメート。モリブデン含有量4.8質量%。
【化18】

(式14中、Rは炭素数8または13のアルキル基であり、すべてのRが同一ではない非対象構造を有する。XはOまたはSを示す。)
7)メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)。
8)炭酸カルシウムで過塩基化された、炭素数14〜18の直鎖α−オレフィン混合物から誘導される第2級アルキル基を有するカルシウムサリシレート混合物(3−アルキルサリシレート53モル%、4−アルキルサリシレート5モル%、5−アルキルサリシレート33モル%、3,5−ジアルキルサリシレート8モル%、5−アルキル−4−ヒドロキシイソフタレート1モル%)。過塩素酸法塩基価(JIS K2501) 167mgKOH/g、Ca含有量6質量%。
9)炭酸カルシウムで過塩基化されたカルシウムスルホネート。
過塩素酸法塩基価(JIS K2501)300mgKOH/g、Ca含有量12.5質量%。
10)ポリブテニルコハク酸イミド(ビスタイプ、ポリブテニル基の数平均分子量1,000、窒素含有量1.6質量%)
11)ホウ酸変性ポリブテニルコハク酸イミド(ビスタイプ、ポリブテニル基の数平均分子量1,000、窒素含有量1.6質量%、ホウ素含有量0.5質量%
12)重量平均分子量350,000の分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤。
13)重量平均分子量350,000の非分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤。
14)100℃の動粘度:単位mm/s
15)単位:質量%
【0047】
(実施例1〜6について)
表1の結果から明らかな通り、本発明に係る内燃機関用潤滑油組成物の実施例1〜6は新油状態で低摩擦係数を有しているだけでなく、劣化後にも低摩擦性を保っていることが判る。また、144hまで劣化させた後のn−ペンタン不溶解分の発生も極僅かであり、優れた酸化安定性を有していることが判る。また、高温で浸漬した後のフッ素ゴムの強度低下も少なく、実使用においてもシールゴムを劣化させにくいことが判る。
【0048】
(比較例1について)
表2の結果から明らかな通り、本発明に係る(B)成分の代わりにジフェニルアミンを配合した比較例1は、新油状態では低摩擦性を有しているものの、劣化後には低摩擦性が消失しており、低摩擦維持性が不十分である。
(比較例2について)
表2の結果から明らかな通り、本発明に係る(B)成分の代わりにフェノールを配合した比較例2は、新油状態、劣化後で低摩擦性を有しているものの、フッ素ゴムの強度低下率が大きく、シールゴム適合性が不十分である。
(比較例3について)
表2の結果から明らかな通り、本発明に係る(D)成分を配合しない比較例3は、新油状態では低摩擦性を有しているものの、劣化後には低摩擦性が消失しており、低摩擦維持性が不十分である。
(比較例4について)
表2の結果から明らかな通り、本発明に係る(B)成分を配合しない比較例4は、劣化状態でn−ペンタン不溶解分の発生量が多く、酸化安定性が不十分である。
(比較例5について)
表2の結果から明らかな通り、本発明に係る(C)成分を配合しない比較例5は、新油状態から低摩擦性が不十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油に、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、
(A)ジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン濃度換算で0.04〜0.10質量%、
(B)下記一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンを0.05〜4.0質量%、
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜24の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す)
(C)下記一般式(2)で表されるモリブデンジチオカーバメート系摩擦低減剤をモリブデン換算で0.02〜0.15質量%、
【化2】

(式(2)中、R、R、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、個別に炭化水素基を示し、X、X、X及びXは個別に硫黄原子または酸素原子を示す)
及び
(D)チアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジチオカーバメート化合物、ジヒドロカルビルポリサルファイド化合物、硫化エステル化合物からなる群より選択される1種または2種以上の硫黄含有化合物を、硫黄濃度換算で0.01〜0.5質量%、
配合してなることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項2】
さらに
(E)下記一般式(3)で表されるアルカリ土類金属サリシレートを、内燃機関用潤滑油組成物全量基準で、アルカリ土類金属濃度換算で0.02〜0.5質量%配合してなることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【化3】

(式(3)中、Rは炭化水素基を表し、aは1〜2の整数を表し、Mはカルシウム又はマグネシウムを表す。)
【請求項3】
前記(D)の硫黄含有化合物の少なくとも1種が、ジチオカーバメート化合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項4】
潤滑油基油の100℃での動粘度は2〜6mm/s、%Cは2以下、%Cは25以下及び粘度指数は105以上であり、
さらに
(F)内燃機関用潤滑油組成物としての100℃での動粘度が4.6〜11mm/sになるような量の粘度指数向上剤が配合されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】
前記配合した粘度指数向上剤が、分散型及び/又は非分散型ポリメタクリレートであることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される(B)のフェニル−α−ナフチルアミンが、下記一般式(4)で表される(N−p−アルキル)フェニル−α−ナフチルアミンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【化4】

(式(4)中、Rは炭素数8〜16の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す)
【請求項7】
(B)フェニル−α−ナフチルアミンのアルキル基が、炭素数8〜16の分岐アルキル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項8】
排気ガス浄化用に3元触媒を装着する内燃機関の潤滑用であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2006−16453(P2006−16453A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193957(P2004−193957)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】