説明

内燃機関

【課題】 複数のシリンダと、燃料供給装置の低圧領域からその高圧領域に燃料を搬送するためのポンプ装置(12)とを備え、各シリンダに各々燃焼空気用の少なくとも1つの入口弁と、排気ガス用の少なくとも1つの出口弁と、少なくとも1つの燃料噴射器(11)が付設され、ポンプ装置と燃料噴射器との間の高圧領域に蓄圧系統が設けられ、この蓄圧系統が搬送配管(17)を介して相互に接続された複数の蓄圧ユニット(16)を有するコモンレール式内燃機関の構造を簡単化する。
【解決手段】 シリンダの1つ或いは各々の入口弁用並びに1つ或いは各々の出口弁用の制御装置並びに蓄圧系統の各々の蓄圧ユニット(16)を、各々共通の支持装置(15)で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数のシリンダを備えたコモンレール式内燃機関が開示されている。各シリンダには燃料供給装置の燃料噴射器が付設されている。この燃料供給装置は、燃料を燃料供給装置の低圧領域から高圧領域に搬送すべく、ポンプ装置を有している。ポンプ装置と燃料噴射器との間の高圧領域に、蓄圧系統が設けられている。コモンレールとも呼ばれるこの蓄圧系統は、互いに搬送配管を介して接続された複数の蓄圧ユニット(レール)を有している。各シリンダに燃料噴射器を介して燃料が注入される。各シリンダには燃料噴射器の他に、燃焼空気用の少なくとも1つの入口弁と、排気ガス用の少なくとも1つの出口弁が付設されている。燃焼空気用の1つ或いは各入口弁並びに排気ガス用の1つ或いは各出口弁を制御するために、各シリンダに、例えば特許文献2で公知のように、制御装置が付設されている。実際に公知の内燃機関において、燃料供給装置の構造群並びに入口弁並びに出口弁を制御するための構造群は、別個の構成要素として形成されている。このために、内燃機関の構造が非常に複雑になっている。
【特許文献1】独国特許第10157135号明細書
【特許文献2】独国特許第19801866号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この点から出発して、本発明の課題は、新しい内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は請求項1に記載の内燃機関によって解決される。本発明に基づき、シリンダの1つ或いは各々の入口弁用並びに1つ或いは各々の出口弁用の制御装置並びに蓄圧系統の各蓄圧ユニットが、各々共通の支持装置に支持されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、燃料供給装置の蓄圧系統の蓄圧ユニット並びにシリンダの1つ或いは各入口弁並びに1つ或いは各々の出口弁を作動するための制御装置を、各々共通の支持装置で支持することを特徴とする。これによって、従来公知の内燃機関において燃料供給装置の蓄圧系統の蓄圧ユニットに対する別個の構造群として形成された保持要素が不要となる。この結果、内燃機関の構造が単純になる。
【0006】
本発明の有利な実施態様では、支持装置に、複数の接続口、即ち搬送配管用の2つの接続口、蓄圧室用の接続口および各シリンダの燃料噴射器用の接続口を備えた燃料通路が一体に形成され、更に支持装置に、各々の蓄圧ユニット、特に蓄圧室およびこの蓄圧室を開閉する作動弁を予め暖めるために加熱媒体が導かれる通路が、一体に形成される。
【0007】
本発明の有利な実施態様を従属請求項および以下の説明から明らかにする。次に図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図1および図2を参照して本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明に基づく内燃機関の3つのシリンダの領域を示し、シリンダのバレル10のみを示している。シリンダに燃料を注入すべく、各シリンダに燃料噴射器11が付設されている。燃料噴射器11はコモンレール式燃料供給装置の一部であり、その注入圧力は燃料供給装置のポンプ装置12で用意される。ポンプ装置12は燃料を燃料供給装置の低圧領域から高圧領域に搬送する。図示の実施例の場合、ポンプ装置12は、各々カムシャフト14により駆動される2つの所謂高圧プランジャポンプ13で形成されている。
【0010】
なお、ポンプ装置として高圧ブロックポンプも利用できる。また各シリンダに付設した燃焼空気用入口弁並びに排気ガス用出口弁(図示せず)を、カムシャフト14、好適にはロッキングアームとして形成した制御装置により駆動してもよい。シリンダの1つ或いは各々の入口弁および1つ或いは各々の出口弁に対する図示しない制御装置は、図1に示す支持装置15で支持する。該装置15はロッキングアーム台とも呼ばれる。図2は、この支持装置15だけを示している。
【0011】
図1に示す燃料供給装置のポンプ装置12と燃料噴射器11との間に、蓄圧系統(コモンレール)が接続されている。この蓄圧系統は複数の蓄圧ユニット(レール)で形成され、これら蓄圧ユニットは搬送配管17を介して相互に接続されるか、ポンプ装置12に接続されている。図示の実施例では、各シリンダに、コモンレール式燃料供給装置の別個の蓄圧ユニット16が付設されている。
【0012】
本発明に従い、各シリンダの蓄圧ユニット16は、各シリンダに付設された支持装置15で支持され、該支持装置15で同様に、シリンダの1つ或いは各々の入口弁用および1つ或いは各々の出口弁用の制御装置も支持されている。そのため、各支持装置15は、各蓄圧ユニット16、即ち各蓄圧ユニットの蓄圧室カバー19に対する保持部分ないし固定部分18を利用している。蓄圧室カバー19は、各蓄圧ユニット16の蓄圧室を包囲し、該蓄圧室は、蓄圧ユニット16の作動弁(図示せず)により開閉される。
【0013】
特に図2から解るように、各支持装置15に複数の接続口21、22、23、24を備えた燃料通路20を一体に形成している。即ち、接続口21と22は燃料供給装置の搬送配管17を各支持装置15に接続するために使われる。接続口23は各蓄圧ユニット16の蓄圧室の接続部を形成している。これに対し接続口24は、燃料噴射器11を支持装置15の燃料通路20、従って燃料供給装置に接続するために使われる。
【0014】
既述のように、図2に示す支持装置15は、各シリンダの蓄圧ユニット16の他に、シリンダの入口弁並びに出口弁に対するロッキングアームとして形成された制御装置も支持している。即ち入口弁用と出口弁用の制御装置に対する軸受装置25並びに該軸受装置25に通ずる潤滑材通路26を示している。この通路26を通して、各シリンダの入口弁用並びに出口弁用の制御装置に対する軸受装置25に潤滑材が導かれる。
【0015】
ここで本発明の要点は、潤滑材通路26を通して導く潤滑材を、各蓄圧ユニット16の蓄圧室内に蓄えられた燃料およびその作動弁を予熱するために利用することにある。これは、特に内燃機関を、重油を燃料として運転するときに重要である。各蓄圧ユニット16の蓄圧室内に蓄えた燃料の予熱は、蓄圧ユニット16の固定部分の内部を延びる潤滑材通路26を介して行う。この場合、支持装置15の固定部分18内を延びる潤滑材通路26は、各蓄圧ユニット16の蓄圧室内における燃料を予め暖めるために加熱媒体として用いる潤滑材に対する通路を形成する。
【0016】
潤滑材の温度が各蓄圧ユニット16の蓄圧室内に蓄えられた燃料の予熱又は液化のために不十分なら、本発明では、加熱媒体として蒸気を利用する。その蒸気は、固定部分18の領域の支持装置15に設けた別個の通路を介して導入できる。
【0017】
従って、本発明では、シリンダの入口弁用並びに出口弁用の制御装置を支持している支持装置15を、各シリンダに付設したコモンレール式燃料供給装置の蓄圧ユニット16の支持にも用いる。各蓄圧ユニット16内に蓄えられた燃料を、一方では各シリンダの燃料噴射器11に、他方では燃料供給装置の搬送配管17に接続すべく、支持装置15に燃料通路20を一体に形成する。更に支持装置15に、各蓄圧ユニット16内に蓄えられた燃料を予熱ないし液化するための加熱媒体を導く通路を一体に形成する。加熱媒体は制御装置の軸受を潤滑するための潤滑材であるか、別の加熱媒体である。
【0018】
従って、本発明では、支持装置に、従来公知の内燃機関の場合に別個の構造群で実現されていた多数の機能を一体化している。この結果、内燃機関の構造を単純化できる。即ち燃料供給装置の蓄圧ユニットに対する別個のホルダが不要である。また、別個の形成した燃料分配通路並びに蓄圧ユニット内に蓄えられた燃料ないし蓄圧ユニットの作動弁を予熱するための通路が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に基づく内燃機関の部分斜視図。
【図2】図1の内燃機関の詳細図。
【符号の説明】
【0020】
10 バレル、11 燃料噴射器、12 ポンプ装置、13 高圧プランジャポンプ、14 カムシャフト、15 支持装置、16 蓄圧ユニット、17 搬送配管、18 固定部分、19 蓄圧室カバー、20 燃料通路、21、22、23 接続口、25 軸受装置、26 潤滑材通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダと、燃料供給装置の低圧領域から高圧領域に燃料を搬送するためのポンプ装置(12)とを備え、各シリンダに各々燃焼空気用の少なくとも1つの入口弁と、排気ガス用の少なくとも1つの出口弁と、少なくとも1つの燃料噴射器(11)が付設され、ポンプ装置(12)と燃料噴射器(11)との間の高圧領域に蓄圧系統が設けられ、この蓄圧系統が搬送配管(17)を介して相互に接続された複数の蓄圧ユニット(16)を有している内燃機関即ちコモンレール式内燃機関において、
シリンダの1つ或いは各々の入口弁用並びに1つ或いは各々の出口弁用の制御装置並びに蓄圧系統の各々の蓄圧ユニット(16)が、各々共通の支持装置(15)で支持されたことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
各シリンダに蓄圧ユニット(16)が付設され、各シリンダの領域において、シリンダの1つ或いは各々の入口弁用並びに1つ或いは各々の出口弁用の制御装置並びに各々の蓄圧ユニット(16)が、共通の支持装置(15)に支持されたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
支持装置(15)が各々の蓄圧ユニット(16)の蓄圧室カバー(19)に対する固定部分(18)を有し、該蓄圧室カバー(19)が各々の蓄圧ユニット(16)の蓄圧室を取り囲むことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関。
【請求項4】
支持装置(15)に、複数の接続口、即ち搬送配管(17)用の2つの接続口(21、22)、蓄圧室用の接続口(23)および各々のシリンダの燃料噴射器(11)用の接続口(24)を備えた燃料通路(20)が一体に形成されたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の内燃機関。
【請求項5】
支持装置(15)に、各々の蓄圧ユニット(16)、特に蓄圧室およびこの蓄圧室を開閉する作動弁を予め暖めるために加熱媒体が導かれる通路が一体に形成されたことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の内燃機関。
【請求項6】
支持装置(15)に、各々のシリンダの1つ或いは各々の入口弁用並びに1つ或いは各々の出口弁用の制御装置の軸受装置(25)に潤滑材を導く潤滑材通路(26)が一体に形成されたことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の内燃機関。
【請求項7】
潤滑材通路(26)が加熱媒体用通路を形成することを特徴とする請求項5又は6記載の内燃機関。
【請求項8】
支持装置(15)が、各々のシリンダの1つ或いは各々の入口弁用および1つ或いは各々の出口弁用のロッキングアームとして形成された制御装置を支持するロッキングアーム台として形成されたことを特徴とする請求項1から7の1つに記載の内燃機関。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−342800(P2006−342800A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155060(P2006−155060)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】