説明

内燃機関

本発明は、少なくとも1つのエグゾーストターボチャージャ(12)と、少なくとも1つのエア抜き装置(30)を備えるクランクケース(26)と、を有する内燃機関(10)に関し、エア抜き装置によって、ガスと潤滑剤とからなる内燃機関(10)の混合気をクランクケース(26)から排出することができ、このエア抜き装置は、ガスから潤滑剤を分離できる少なくとも1つの第1の分離装置(32)と相互作用し、少なくとも1つのエグゾーストターボチャージャ(12)と相互作用する少なくとももう1つの分離装置(38)が設けられており、この分離装置によって、潤滑剤とガスとからなるエグゾーストターボチャージャ(12)の混合気内の潤滑剤をガスから分離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に示されている種類の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関は量産車から知られている。これらの内燃機関は、エア抜き装置によってエア抜き可能なクランクケースをそれぞれ有している。このことが必要であるのは、内燃機関の作動中にクランクケース内に主としてガス状の混合気が集まるためであり、この混合気は、内燃機関の燃焼室からクランクケース内に流れ込む燃焼ガスと内燃機関の潤滑油とからなる。クランクケース内の圧力上昇を回避するため、この混合気はクランクケースから排出される。排出ガスを軽減するため、このエア抜き装置は混合気内にある潤滑油を分離する分離装置と相互作用する。
【0003】
特許文献1はエア抜き装置を備える内燃機関を開示しており、このエア抜き装置はクランクケースのエア抜きに用いられ、オイル分離器と相互作用し、内燃機関のインテークパイプに接続され、さらにスロットルが装備されている。このエア抜き装置は、クランクケースブリーザと少なくとも1つのターボチャージャのターボチャージャブリーザとを有している。この場合、クランクケースブリーザとターボチャージャブリーザとは、オイル分離器に割り当てられているディストリビュータユニットに接続され、このユニットは第1のスロットルと第2のスロットルとを有しており、第1のスロットルは、好ましくはオイル分離器との中間に接続された状態で、インテークパイプと接続されている第1のラインに接続され、第2のスロットルはインテークパイプに接続されている第2のラインに接続され、特に、吸気モードのエア抜き装置は第2のラインを介して作用し、過給モードでは第1のラインを介して作用するように形成されている。
【0004】
エア抜き装置を備える周知の内燃機関は、排出ガスを軽減するその他の能力も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第19929876号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、排出ガス量の低い、冒頭に述べた種類の内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を備える内燃機関によって解決される。本発明の適切かつ重要な発展形態を備える有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0008】
本発明に基づく内燃機関は、少なくとも1つのエグゾーストターボチャージャと、少なくとも1つのエア抜き装置を備えるクランクケースと、を有しており、このエア抜き装置によって、ガスと潤滑剤とからなる内燃機関の混合気をクランクケースから排出することができ、このエア抜き装置は、ガスから潤滑剤を分離できる少なくとも1つの第1の分離装置と相互作用する内燃機関であって、少なくとももう1つの分離装置が設けられており、この分離装置は少なくとも1つのエグゾーストターボチャージャと相互作用し、この分離装置を使って、潤滑剤とガスとからなるエグゾーストターボチャージャの混合気内の潤滑剤をガスから分離できることを特徴とする。
【0009】
従って、本発明に基づく内燃機関の少なくとももう1つの分離装置は、潤滑剤をガスから分離するという別の可能性を備え、このことにより、一方では、周辺環境に排出されるか、又は内燃機関に再び送られるガス又は混合気は、潤滑剤が取り除かれ、浄化されているため、内燃機関の排出ガス量とエグゾーストターボチャージャ及びインタクーラの負荷が軽減される。さらに、このもう1つの分離装置により、第1の分離装置の負荷が軽減されるため、その寸法を縮小することができ、それによってコストならびに重量が削減され、内燃機関の排出ガス量もさらに低下させることができる。
【0010】
また、エグゾーストターボチャージャの潤滑剤をクランクケースに戻すことができる、少なくとも1つのフィードバックラインが設けられており、エグゾーストターボチャージャと少なくとも第1の分離装置との間に、もう1つの分離装置がフィードバックラインから戻る潤滑剤のフロー方向に配置されている場合、このもう1つの分離装置は混合気の予備洗浄となる。この少なくとももう1つの分離装置がなければ、混合気によって第1の分離装置に強い負荷がかかり、そのことによって、内燃機関の排出ガス量も上昇することになるだろう。このことは、本発明に基づく内燃機関によって少なくとも軽減されている。なぜなら、潤滑しなければならないエグゾーストターボチャージャのコンポーネントが回転して霧状になった潤滑剤がガスから分離されることにより、潤滑剤を取り除いたガスをクランクケースに戻すことができるからである。従って、この浄化されたガスは第1の分離装置には全く負荷を与えないか、少なくとも非常に僅かしか負荷を与えないため、内燃機関の排出ガス量が低下する。
【0011】
有利には、少なくとももう1つの分離装置がフィードバックラインに組み込まれており、このことが内燃機関の取付けスペースを小さくし、従って組み込み配置問題の回避又は解決に貢献することから、自動車のエンジンルームなど、限られたスペースでは特に有利である。
【0012】
あらゆる観点において、第1の分離装置によって分離される潤滑剤の量は、予備洗浄が実施されることにより、又はもう1つの分離装置を用いて予備分離が実施されることにより減少する。
【0013】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、少なくとももう1つの分離装置がエグゾーストターボチャージャのハウジング内に組み込まれており、有利であるのは、このもう1つの分離装置がエグゾーストターボチャージャと少なくともほぼ同時に取り付け可能であるため、取付け費用が少なくなることである。この場合、エグゾーストターボチャージャとそのハウジング内に組み込まれている分離装置とは、取付けが済んだ状態で内燃機関用の組立てラインに送ることができる。このことが組立てプロセスの並列化につながり、組立て時間及びそれによる内燃機関の総コストを低い範囲に保つ。
【0014】
同様に、少なくとももう1つの分離装置をクランクケース又はその上流にあるフィードバックラインに組み込むことも可能であり、このことも、本発明に基づく内燃機関の取付けスペースと同じく取付け費用を軽減する。
【0015】
少なくとももう1つの分離装置によって潤滑剤をガスから分離するには、様々な物理的作用を利用することも可能である。分離のための物理的作用の選択は、この場合、混合気の流れる方向に向かってもう1つの分離装置の上流にある混合気内において、霧状に存在している潤滑剤の滴の大きさに左右されると考えられる。分離のために物理的作用を選択する際にこの滴の大きさが考慮される場合、少なくとももう1つの分離装置はエグゾーストターボチャージャの基本条件に調整され、最適化される。
【0016】
潤滑剤とガスとからなり、エグゾーストターボチャージャで発生し、少なくとももう1つの分離装置によって潤滑剤がガスから分離される混合気は、通常、クランクケース内でコンポーネントが回転することによって生じる潤滑剤の渦巻きの結果としてクランクケース内に存在する混合気よりも潤滑剤の割合が大きい。そのため、少なくとももう1つの分離装置で利用される分離のための物理的作用は、絶対的に、しかも有利には、第1の分離装置で利用される分離のための物理的作用とは異なることができる。すでに指摘したように、各分離装置は、有利には、それぞれのガスからそれぞれの潤滑剤が最大限分離されるように、エグゾーストターボチャージャ又はクランクケースの基本条件に適合させることができる。
【0017】
まとめると、エグゾーストターボチャージャの潤滑剤のリターンフロー内における少なくとももう1つの分離装置の配置と、それに伴って生じる、例えば内燃機関の潤滑油として形成されている霧状の潤滑剤の予備分離とは、内燃機関の第1の分離装置の負荷を明らかに軽減するため、霧状の潤滑剤の総分離量を顕著に改善するといえる。その結果、特に内燃機関の排出ガス量が低下し、エグゾーストターボチャージャとインタクーラの負荷が軽減される。なぜなら、例えば、燃焼のために混合気が内燃機関の吸気側へ戻されるのに続いて、内燃機関によって吸引される空気が潤滑剤から受ける負荷は明らかに低下しているため、内燃機関の排出ガス値は顕著に改善するからである。
【0018】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、好ましい実施例及び図に基づく以下の説明に示されている。ここまでの説明で述べた特徴及び特徴の組合せ、並びに以下の図の説明で述べられている、及び/又は図の中にのみ示されている特徴及び特徴の組合せは、示された特徴の組合せだけではなく、本発明の範囲から出ることなく、その他の組合せ又は単独でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図はエグゾーストターボチャージャとクランクケースとを備える内燃機関を示し、潤滑剤とガスとからなるそれぞれの混合気内の潤滑剤をガスから分離するために、2つの分離装置が設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図は、エグゾーストターボチャージャ12、タービン14ならびにコンプレッサ16を備える内燃機関10を示している。タービン14は周知の方法で内燃機関10の排出ガスによって駆動され、この排出ガスは、該当する配管18を介してタービン14に送られ、エグゾーストターボチャージャ12のタービンホイールを駆動する。タービンホイールは、エグゾーストターボチャージャ12のシャフト20とトルク耐性に共回転するよう接続されており、シャフト20はコンプレッサ16のコンプレッサホイールとトルク耐性に共回転するよう接続されているため、このコンプレッサホイールは、シャフト20を介してタービンホイールによって駆動される。コンプレッサ16のコンプレッサホイールは、方向矢印22に従って内燃機関10に吸引される空気を圧縮し、この空気は、特定のトルクと特定の出力を形成するために、該当する配管24を介して内燃機関10に供給される。
【0021】
さらにこの内燃機関10は、内燃機関10の回転コンポーネントを潤滑する潤滑油を受け取るクランクケース26を有している。このクランクケース26には、内燃機関10の作動中に、実質的に回転コンポーネントによって渦状になり、そのために霧状に存在する潤滑油と、内燃機関10のシリンダ28からクランクケース26に漏れ出しているガスとからなる混合気が溜まる。
【0022】
クランクケース26内の高すぎる圧力上昇を回避するため、この混合気をクランクケース26から排出しなければならない。この混合気を浄化せずに周辺環境に排出することは、排出ガス量を増加させ、環境負荷を大きくすることにつながる。この問題を回避するために、この内燃機関10は、クランクケース26からくるガスと潤滑油とからなる混合気を排出できるエア抜き装置30を有している。この場合、このエア抜き装置30は、ガスから潤滑油を分離できる第1の分離装置32と相互作用する。これにより、ガス内の潤滑油は全くなくなるか、又は非常に僅かな量だけになり、このガスは内燃機関10の吸気側に戻され、燃焼のために配管24を介してシリンダ28に供給される。このことにより、内燃機関10の排出ガスは低い値に保たれる。
【0023】
エグゾーストターボチャージャ12も、例えばシャフト20又はベアリング箇所などの回転コンポーネントを潤滑するために、内燃機関10の潤滑油を必要とする。このために、第1のライン34が設けられており、このラインを介してエグゾーストターボチャージャ12に潤滑油が供給される。また、シャフト20の回転によって潤滑油は渦巻状になることから、エグゾーストターボチャージャ12内にも混合気が発生する。この混合気はエグゾーストターボチャージャ12又は内燃機関10の潤滑油とガスとからなり、このガスはタービン14及びコンプレッサ16から、潤滑するコンポーネント、特にシャフト20へと流れ、潤滑油と混ぜ合わされる。
【0024】
回路を閉じるため、フィードバックライン36が設けられており、これを介して、潤滑油又は排出された混合気は再びクランクケース26に戻される。
【0025】
内燃機関10の排出ガスをさらに軽減するため、及び第1の分離装置32の負荷を減らすため、もう1つの分離装置38が設けられており、この分離装置はフィードバックライン36と流体的に連絡し、この分離装置によって、潤滑油とガスとからなるエグゾーストターボチャージャ12の混合気から潤滑油を分離することができる。このことにより、分離装置32によって分離される潤滑油の全体量が明らかに低下するため、内燃機関の排出ガスは非常に低い範囲内に保たれる。分離装置38とクランクケース26との間のフィードバックライン36内では、ガス状の部分と液状の部分とが分離した状態で、1つのライン又は2つに分けられたライン(図示されていない)を流れている。
【0026】
図に明確に示されているように、このことは、内燃機関10によって吸引された空気には潤滑油が全くないか、又は極めて少量しか加えられないことを意味し、この空気は、最終的にシリンダ28内で燃焼し、方向矢印40に従って、まず、少なくとも1つの排出ガス浄化装置に送られ、続いて周辺環境に排出される。吸引され、燃焼させる空気への負荷が回避される、又は少なくとも明らかに軽減されることにより、内燃機関10の排出ガスは極めて低い値まで低下するため、今日及び将来の排出ガス制限値を遵守することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
10 内燃機関
12 エグゾーストターボチャージャ
14 タービン
16 コンプレッサ
18 配管
20 シャフト
22 方向矢印
24 配管
26 クランクケース
28 シリンダ
30 エア抜き装置
32 第1の分離装置
34 第1のライン
36 フィードバックライン
38 もう1つの分離装置
40 方向矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエグゾーストターボチャージャ(12)と、少なくとも1つのエア抜き装置(30)を備えるクランクケース(26)と、を有する内燃機関(10)であり、前記エア抜き装置によって、ガスと潤滑剤とからなる前記内燃機関(10)の混合気をクランクケース(26)から排出することができ、前記エア抜き装置は、前記ガスから前記潤滑剤を分離できる少なくとも1つの第1の分離装置(32)と相互作用する、内燃機関(10)であって、
少なくとも1つの前記エグゾーストターボチャージャ(12)と相互作用する少なくとももう1つの分離装置(38)が設けられており、該分離装置によって、前記潤滑剤と前記ガスとからなる前記エグゾーストターボチャージャの混合気内の前記潤滑剤を前記ガスから分離できることを特徴とする、内燃機関。
【請求項2】
前記エグゾーストターボチャージャ(12)の前記潤滑剤を前記クランクケース(26)に戻すことのできる少なくとも1つのフィードバックライン(36)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記エグゾーストターボチャージャ(12)と少なくとも前記第1の分離装置(32)との間で、前記フィードバックライン(36)から戻る前記潤滑剤の流れる方向に、少なくとももう1つの前記分離装置(38)が配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
少なくとももう1つの前記分離装置(38)が、前記フィードバックライン(36)と流体的に連絡することを特徴とする、請求項2又は3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
少なくとももう1つの前記分離装置(38)が、前記フィードバックライン(36)に組み込まれていることを特徴とする、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
少なくとももう1つの前記分離装置(38)が、前記エグゾーストターボチャージャ(12)のハウジング内に組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項7】
少なくとももう1つの前記分離装置(38)が、前記クランクケース(26)内に組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関。

【公表番号】特表2013−521426(P2013−521426A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555301(P2012−555301)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007315
【国際公開番号】WO2011/107129
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】