説明

内皮細胞活性の調整

本発明は、一般に、内皮細胞活性を調節する方法および前記方法に有用な薬剤に関する。より詳細には、本発明は、細胞内タンパク質キナーゼC依存性シグナル伝達機構の調整によって細胞間血管内皮透過性を調整する方法に関する。本発明の方法は、特に、異常であるか、望ましくないか、不適切な内皮細胞活性によって特徴付けられる病態、特に、血管の完全性の喪失によって特徴付けられる病態の治療および/または予防方法で有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、内皮細胞活性を調節する方法および前記方法に有用な薬剤に関する。より詳細には、本発明は、細胞内タンパク質キナーゼC依存性シグナル伝達機構の調整によって細胞間血管内皮透過性を調整する方法に関する。本発明の方法は、特に、異常であるか、望ましくないか、不適切な内皮細胞活性によって特徴付けられる病態、特に、血管の完全性の喪失によって特徴付けられる病態の治療および/または予防で有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書の著者によって言及される刊行物の書誌の詳細を、本明細書の最後にアルファベット順に集めている。
【0003】
本明細書中の任意の先行技術に対する参考文献は、この先行技術がオーストラリアまたは任意の他の国における共通の一般知識の一部を形成する承認や任意の示唆形態と解釈されず、且つ解釈されるべきではない。
【0004】
内皮細胞内層の不可欠な機能の1つは、循環から組織への溶質および炎症細胞の通過を調節する血管の本質的な不透過性を維持することである。内皮細胞高透過性は、多数の病変の血管で特徴的である。例えば、腫瘍中に新規に形成された微細血管は高透過性である。実際、このような高透過性により、腫瘍中に細胞の接着および移動(血管形成応答に不可欠な工程)を支持および促進するフィブリンが蓄積される(Dvorak,H.F.,Harvey,V.S.,Estrella,P.,Brown,L.F.,McDonagh,J.,Dvorak,A.M.(1987)Lab Invest.57:673-86;Dvorak,H.F.,Brown,L.F.,Detmar,M.,Dvorak,A.M.(1995)Am J Pathol.146:1029-39)。関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの慢性炎症状態では、高血管透過性により、活性化内皮を通過する炎症細胞の移動を増加させる。内皮細胞漏出を促進する多数の因子(例えば、トロンビン、腫瘍壊死因子、および血管内皮細胞成長因子(VEGF))が以前に説明されている。これらは、PECAM-1およびVE-カドヘリンなどの接着分子およびカテニンなどのその関連シグナル伝達分子の変化の誘導によって作用するようである。
【0005】
トロンビンは、血小板、内皮細胞、および循環凝固因子に影響を与える血管生物学の中心をなす複数の役割を果たすセリンプロテアーゼである(Macfarlane,S.R.,Seatter,M.J.,Kanke,T.,Hunter,G.D.,Plevin,R.(2001)Pharmacol Rev.53:245-82)。トロンビンは、細胞間ギャップ形成およびコンフルエントな内皮細胞単層の透過性をを増加させる内皮細胞の強力なアクチベーターである(Lum,H.,Andersen,T.T.,Siflinger-Birnboim,A.,Tiruppathi,C.,Goligorsky,M.S.,Fenton,J.W.2nd,Malik,A.B.(1993)J Cell Biol.120:1491-9;Garcia,J.G.,Verin,A.D.,Schaphorst,K.L.(1996)Semin Thromb Hemost.22:309-15)。トロンビンシグナル伝達は、プロテアーゼ活性化受容体PAR-1によって媒介される(Coughlin et al.(2000)前記)。トロンビンは、受容体由来のPAR-1リガンドを切断し、それによりリガンドが受容体シグナル伝達を活性化させる。PAR-1は、多数の下流シグナル伝達経路を活性化することができ、活性化された分子は受容体に充てられる(recruited)Gタンパク質に依存する(Macfarlane et al.(2001)前記)。
【0006】
セリン/トレオニンキナーゼのタンパク質キナーゼCζファミリーはシグナル伝達に関与し、その活性が脂質に依存する。タンパク質キナーゼCζのイソ型は、その構造および活性化/基質要件にしたがって分類される(Draijer,R.,Atsma,D.E.,van der Laarse,A.,van Hinsbergh,V.W.(1995)Circ Res.76:199-208)。古典的なタンパク質キナーゼCζ(α、βI、βII、γ)はCa2+依存性であり、且つジアシルグリセロール(DAG)またはホスファチジルセリン(PS)によって調節され、新規のタンパク質キナーゼCζ(δ、ε、η、θ)もDAGまたはPSによって活性化されるがCa2+に非依存性である一方で、異型タンパク質キナーゼCζ(ζ、ι/λ)はPSによって制御され、DAGとCa2+の両方に非依存性である10。タンパク質キナーゼCζの活性は、そのリン酸化状態および再局在化によって調節される(Parekh,D.B.,Ziegler,W.,Parker,P.J.(2000)Embo J.19:496-503)。特定の条件下でのタンパク質キナーゼCζの特定のイソ型の活性化の生物学的結果は依然として決定されていない。
【0007】
タンパク質キナーゼCは、1つのこのようなPAR-1下流中間体として機能することが証明されている(Malik,1994)。しかし、内皮細胞透過性に及ぼすタンパク質キナーゼC活性化の影響についての研究により、一方の著者は、タンパク質キナーゼC活性化が内皮細胞における透過性の変化に有意な役割を果たさないと結論付けている(van Nieuw Amerongen GP,Draijer R,Vermeer MA,van Hinsbergh VW.(1998)Circ Res.83:1115-23;Vouret-Craviari V,Boquet P,Pouyssegur J,Van Obberghen-Schilling E.(1998)Mol Biol Cell.9:2639-53)一方で、他方の著者は、タンパク質キナーゼC活性化が重要であると結論付けている(Lynch JJ,Ferro TJ,Blumenstock FA,Brockenauer AM,Malik AB.(1990)J Clin Invest.85:1991-8;Hempel,1997)という矛盾する結果が得られている。タンパク質キナーゼC活性化を刺激するためのジアセチルグリセロール代替物としてホルボール-12-ミリステート-13-アセテートを使用した研究は、濃度依存様式での内皮細胞透過性の阻害(Yamada Y,Furumichi T,Furui H,Yokoi T,Ito T,Yamauchi K,Yokota M,Hayashi H,Saito H.(1990)Arteriosclerosis 10:410-20;van Nieuw Amerongen,1998前記)および刺激(Lynch,1990前記;Bussolino F,Silvagno F,Garbarino G,Costamagna C,Sanavio F,Arese M,Soldi R,Aglietta M,Pescarmona G,Camussi G,et al.(1994)J Biol Chem.269:2877-86;van Nieuw Amerongen,1998前記)の両方を示している(Lynch,1990前記;van Nieuw Amerongen,1998前記)。しかし、ホルボールエステルは、異型タンパク質キナーゼCを活性化しない(Zhou G,Wooten MW,Coleman ES.(1994)Exp Cell Res.214:1-11)。
【0008】
内皮細胞透過性を調節するシグナルは、明確であるが完全に定義されていない。しかし、これらの細胞シグナル伝達機構の解明は、異常または望ましくない内皮細胞透過性によって特徴付けられる病態の治療を対象とする治療および/または予防ストラテジーの開発に不可欠である。
【0009】
本発明に至るまでの研究で、異型タンパク質キナーゼCζが内皮細胞透過性の調節において機能的役割を果たすことが確定された。特に、驚いたことに、細胞間内皮細胞透過性の調整に関するシグナル伝達が、特に細胞間内皮細胞透過性を増大させるタンパク質キナーゼCのこの異型の活性化に決定的に関与することが確定された。内皮細胞の完全性が細胞間ギャップ形成を増大させて内皮透過性を促進する炎症メディエーター(トロンビンなど)の影響と細胞-細胞接着形成を促進して内皮細胞透過性の変化を拮抗する抗炎症薬の影響との間のバランスに影響を受けるので、この細胞シグナル伝達機構の解明により、タンパク質キナーゼCζ機能の調節による内皮細胞活性の調整を対象とする方法の合理的デザインが容易になる。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本明細書およびその後の特許請求の範囲を通して、他で必要とされない限り、用語「comprise」および「comprises」および「comprising」などのバリエーションは、記載の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を含むことを意図するが、いかなる他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群も排除しないと理解される。
【0011】
本明細書中で使用される、用語「〜に由来する」は、特定の整数が特定の供給源に由来し得るが、その供給源に直接由来する必要はないことを示すために使用される。
【0012】
本発明の1つの局面は、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞活性が下方制御されることとを含む、内皮細胞活性の調整方法に関する。
【0013】
より詳細には、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により血管内皮活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により血管内皮細胞活性が下方制御されることとを含む、血管内皮細胞活性の調整方法を提供する。
【0014】
別の局面では、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により細胞間血管細胞透過性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞間血管内皮細胞透過性が下方制御されることとを含む、細胞間血管内皮細胞透過性の調整方法を提供する。
【0015】
さらに別の局面は、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により血管内皮活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により血管内皮細胞活性が下方制御されることとを含む、トロンビン誘導性血管内皮細胞活性の調整方法を提供する。
【0016】
さらに別の局面は、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により透過性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により透過性が下方制御されることとを含む、トロンビン誘導性細胞間血管内皮細胞透過性の調整方法を提供する。
【0017】
本発明のなおさらに別の局面は、哺乳動物のタンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により内皮細胞活性が下方制御されることとを含む、哺乳動物の内皮細胞活性を調節する方法に関する。
【0018】
なおさらに別の局面では、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により内皮細胞活性が下方制御されることとを含む、哺乳動物の血管内皮細胞活性の調整方法を提供する。
【0019】
さらなる局面では、有効量の薬剤を機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の血管内皮細胞活性を上方制御する方法を提供する。
【0020】
別のさらなる局面では、有効量のタンパク質キナーゼCζを機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の血管内皮細胞活性を上方制御する方法を提供する。
【0021】
さらに別のさらなる局面では、有効量のタンパク質キナーゼCζをコードするヌクレオチド配列を機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の血管内皮細胞活性を上方制御する方法を提供する。
【0022】
なおさらに別の局面では、有効量の薬剤を機能的に無効ななレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の血管内皮細胞活性を下方制御する方法を提供する。
【0023】
本発明の別の局面は、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞活性が下方制御されることとを含む、哺乳動物の異常であるか、望ましくないか、不適切な内皮細胞活性によって特徴付けられる病態の治療および/または予防方法を意図する。
【0024】
さらに別の局面では、有効量の薬剤を機能的に無効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の望ましくない血管内皮細胞活性によって特徴付けられる病態の治療および/または予防方法を提供する。
【0025】
本発明のさらに別の局面は、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により内皮細胞活性が下方制御される、哺乳動物のトロンビン誘導性内皮細胞活性の調節のための薬物の製造における機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを調整することができる薬剤の使用に関する。
【0026】
別の局面では、本発明は、タンパク質キナーゼCζの機能的レベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御される、内皮細胞活性の調節のための薬物の製造におけるタンパク質キナーゼCζまたはタンパク質キナーゼCζをコードする核酸の使用に関する。
【0027】
さらに別のさらなる局面では、本発明は、前記定義の調整剤および一つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤を含む薬学的組成物を意図する。前記薬剤を、有効成分という。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、細胞間透過性の調整に関連する内皮細胞シグナル伝達が異型タンパク質キナーゼCζの活性化に非常に関与するという決定を部分的に予想する。この開発により、現在、異常または望ましくない内皮細胞活性によって特徴づけられる病態の治療のための治療および/または予防方法を合理的にデザインすることが可能である。
【0029】
したがって、本発明の1つの局面は、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞活性が下方制御されることとを含む、内皮細胞活性の調整方法に関する。
【0030】
用語「内皮細胞」は、血管、リンパ管、または体液充満腔などの他の漿膜腔(serous cavity)を裏打ちする細胞を言及すると理解すべきである。句「内皮細胞」は、内皮細胞の一つまたは複数の形態学、表現型、および/または機能活性を示す細胞もいうと理解すべきであり、その変異体または変異型もいう。「変異型」には、任意の発達の分化段階で内皮細胞の形態学的特徴もしくは表現型の特徴または機能活性の全てではないがいくつかを示す細胞が含まれるが、これに限定されない。「変異体」には、遺伝子操作された細胞など天然または非天然に修飾された内皮細胞が含まれるが、これに限定されない。
【0031】
本発明の内皮細胞は任意の発達の分化段階であり得ることも理解すべきである。したがって、細胞は未熟でよく、それによりさらに分化しておらず機能的に不完全であり得る。それにもかかわらず、これに関して、内皮細胞に分化する能力を保持した幹細胞などの高未成熟細胞は、適切な条件下で内皮細胞に分化する能力によって本明細書中で使用される「内皮細胞」の定義を満たすと理解すべきである。好ましくは、本発明の内皮細胞は、血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である。
【0032】
したがって、より詳細には、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により血管内皮活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により血管内皮細胞活性が下方制御されることとを含む、血管内皮細胞活性の調整方法を提供する。
【0033】
タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御によりリンパ内皮活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御によりリンパ内皮細胞活性が下方制御されることとを含む、リンパ内皮細胞活性の調整方法も提供する。
【0034】
用語内皮細胞「活性」は、内皮細胞が、例えば、トロンビン、VEGF、またはTNFなどの細胞外因子による刺激の結果として果たすことができる任意の一つまたは複数の機能活性を言うと理解すべきである。好ましくは、活性は内皮細胞透過性である。
【0035】
本発明を任意の1つの理論または作用様式に制限しないが、細胞間透過性および/または細胞内透過性の調整レベルで内皮細胞透過性を調整することができると考えられる。好ましい態様では、本発明は、これらの透過性機構の1つまたは両方の調整に関すると理解すべきである。
【0036】
この好ましい態様によれば、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζの機能的に有効なレベルへの上方制御により細胞間細胞透過性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞間内皮細胞透過性が下方制御されることとを含む、細胞間内皮細胞透過性の調整方法を提供する。
【0037】
別の好ましい態様では、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζの機能的に有効なレベルへの上方制御により細胞内細胞透過性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞内内皮細胞透過性が下方制御されることとを含む、細胞内内皮細胞透過性の調整方法を提供する。
【0038】
なおさらに好ましくは、内皮細胞は、血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である。
【0039】
用語「タンパク質キナーゼCζ」は、このタンパク質の全ての形態およびその機能誘導体、ホモログ、アナログ、化学的等価物、または模倣物をいうと理解すべきである。これには、例えば、本発明のタンパク質キナーゼCζmRNAの選択的スプライシングに起因する任意のイソ型、またはこれらのタンパク質の変異体もしくは多型変異型が含まれる。
【0040】
本発明を任意の1つの理論または作用様式に制限しないが、トロンビンシグナル伝達により、特に、細胞間血管内皮細胞透過性が増大する。しかし、トロンビン受容体PAR-1は種々の範囲の下流シグナル伝達中間体を活性化するので、この機構に関与する正確なシグナル伝達経路は以前は不明であった。本発明で、タンパク質キナーゼCζのイソ型であるタンパク質キナーゼCの異型がPI3-キナーゼ依存性経路を介して血管内皮細胞漏出を調節することを確定した。しかし、本発明は、トロンビンに関して例示しているが、これは本発明を制限すると理解すべきではなく、任意の手段(トロンビン、VEGF、およびTNF刺激を介することが含まれるが、これらに限定されない)による内皮細胞透過性の調整を含む。特定の刺激または阻害シグナルの性質に関係なく、内皮細胞透過性自体がタンパク質キナーゼCζシグナル伝達経路を介して調節されることが確定された。
【0041】
用語「調整」は、本発明の内皮細胞活性の上方制御または下方制御をいうと理解すべきである。したがって、用語内皮細胞活性の「下方制御」は、内皮細胞の一つまたは複数の機能局面の防止、減少(例えば、遅延)、または阻害(例えば、トロンビン誘導性血管内皮細胞細胞間透過性の遅延または防止)をいうと理解すべきであり、用語「上方制御」はその逆の意味を有すると理解すべきである。
【0042】
本発明を決して制限しないが、トロンビンは、血管生物学の多数の中心的役割(血小板、内皮細胞、循環凝固因子に対する作用が含まれるが、これらに限定されない)を示す高多面性分子である。トロンビンは、細胞間ギャップ形成およびコンフルエントな血管内皮細胞単層の透過性を増加させる血管内皮細胞の強力なアクチベーターである。タンパク質キナーゼCζ媒介トロンビン活性は、主に、内皮細胞透過性を増加させ(細胞間または細胞内のいずれか)、それにより内皮細胞の漏出の調節に関すると考えられている。本発明は、血管透過性自体の調整まで及ぶが、好ましい態様では、血管透過性はトロンビン誘導性透過性である。
【0043】
したがって、本発明は、最も好ましくは、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により透過性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により透過性が下方制御されることとを含む、トロンビン誘導性細胞間内皮細胞透過性の調整方法を提供する。
【0044】
より好ましくは、内皮細胞は、血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である。
【0045】
さらにより好ましくは、透過性は、細胞間または細胞内のいずれかである。
【0046】
「トロンビン」は、全てのトロンビン形態、ならびにその機能誘導体、ホモログ、アナログ、化学的等価物、および模倣物を意味する。用語「トロンビン」は、トロンビンmRNAの選択的スプライシングに起因する任意のイソ型、またはトロンビンの変異体もしくは多型変異型への言及が含まれることも理解すべきである。本発明の分子がトロンビンまたはトロンビン様受容体を介したシグナル伝達の誘導による一つまたは複数のトロンビンシグナル伝達事象を模倣する範囲のトロンビン機能活性を示す任意の他の分子の言及が含まれることも理解すべきである。本発明を任意の1つの理論または作用様式に制限しないが、プロテアーゼを介したトロンビンシグナルにより、受容体PAR-1が活性化される。血管漏出を誘導するためのPI3キナーゼ依存性経路を介してタンパク質キナーゼCζが活性化される。本発明の方法がトロンビンとその受容体との相互作用の結果として誘導された細胞内シグナル伝達事象の調整による内皮細胞活性の調整に関するので、トロンビンとPAR-1受容体との相互作用またはトロンビン模倣物(天然に存在するか天然に存在しない模倣物またはアナログなど)と本発明の受容体との相互作用によって誘導されるかどうかに無関係にこの方法をこのような細胞活性の調整に適用することができる。例えば、個体に移入された場合にPAR-1受容体とのその相互作用によって望ましくないトロンビン様内皮細胞活性を誘導する天然に存在するか天然に存在しないトロンビン模倣物(例えば、毒素または薬物)が存在し得ることが考え得る。したがって、本発明は、本明細書中で「トロンビン誘導性」の範囲内に分類されると定義されるこのような細胞活性の調整にまで及ぶと理解すべきである。トロンビンによって正常に誘導される細胞活性を上方制御することが望ましい範囲まで、本発明の方法がタンパク質キナーゼCζ細胞内シグナル伝達経路の直接的上方制御によるトロンビン刺激要件の任意的回避手段を提供することも理解すべきである。しかし、本発明の方法は有効にこの活性型の模倣手段を提供するので、この上方制御型は「トロンビン誘導性」活性の範囲内に分類されることを理解すべきである。
【0047】
用語タンパク質キナーゼCζ「活性」は、タンパク質キナーゼCζが作用することができる任意の一つまたは複数の活性をいうと理解すべきである。例えば、本発明を決して制限しないが、タンパク質キナーゼCζ活性を、そのリン酸化状態および再局在化によって調節する。詳細には、タンパク質キナーゼCζは、ホスフィノシチド3OH-キナーゼ(PI3-キナーゼ)シグナル伝達経路の極めて重要な成分であるホスホイノシチド依存性キナーゼ1(PDK-1)の基質の1つである。タンパク質キナーゼCζ活性化後、下流シグナル伝達事象には、PECAM、VEカドヘリン、JAM-2、およびカテニンなどの接着分子(これらは全て内皮細胞における接着完全性の調節に関与する)の変化が含まれる。タンパク質キナーゼCζはまた、Rhoおよびracの調整を介したアクチン細胞骨格に影響を与えると考えられている。したがって、用語タンパク質キナーゼCζ機能活性の「調整」は、タンパク質キナーゼCζ機能活性の上方制御または下方制御のいずれかをいう。このような調整を、任意の適切な手段によって達成することができ、以下が含まれる。
【0048】
(i)多少のタンパク質キナーゼCζがその下流領域標的の活性化および/またはその下流標的との相互作用に利用可能なようなタンパク質キナーゼCζの活性形態または不活性形態の絶対レベルの調整(例えば、細胞内タンパク質キナーゼCζ濃度の増減)。
【0049】
(ii)任意の所与のタンパク質キナーゼCζ分子の機能有効性が増大、減少、または調整もしくは変化するようなタンパク質キナーゼCζの作動または拮抗。例えば、タンパク質キナーゼCζの半減期の増加により、実際にタンパク質キナーゼCζの絶対細胞内濃度を増大させることなく全体的なタンパク質キナーゼCζ活性レベルを増加させることができる。同様に、例えば、タンパク質キナーゼCζのその下流標的への結合に関していくらかの立体障害を移入する分子へのタンパク質キナーゼCζの結合によるタンパク質キナーゼCζの部分的拮抗は、タンパク質キナーゼCζシグナル伝達の有効性を減少させるように作用し得るが、必ずしも消失しない。したがって、これは、タンパク質キナーゼCζの絶対濃度を必ずしも下方制御することなくタンパク質キナーゼCζ機能を下方制御する手段を提供することができる。
【0050】
タンパク質キナーゼCζ機能の上方制御または下方制御に関して、この目的を達成するための手段は、当業者に周知であり、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
(i)細胞がタンパク質キナーゼCζを発現する能力を上方制御するためのタンパク質キナーゼCζをコードする核酸分子、またはその機能等価物、誘導体、もしくはアナログの細胞への移入。
【0052】
(ii)タンパク質キナーゼCζ遺伝子もしくはその機能的部分またはタンパク質キナーゼCζ遺伝子の発現を直接または間接的に調整するいくつかの他の遺伝子であり得る遺伝子の転写および/または翻訳の調節を調整するタンパク質性分子または非タンパク質性分子の細胞への移入。
【0053】
(iii)タンパク質キナーゼCζ発現産物(活性形態または不活性形態のいずれか)またはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物もしくは模倣物の細胞への移入。
【0054】
(iv)タンパク質キナーゼCζ発現産物に対するアンタゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子の移入。
【0055】
(v)タンパク質キナーゼCζ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性分子または非タンパク質性分子の移入。
【0056】
(vi)タンパク質キナーゼCζによって示される機能活性の性質を調整するタンパク質性分子または非タンパク質性分子の移入。
【0057】
上記のタンパク質性分子は、天然、組換え、または合成供給源などの任意の適切な供給源に由来することができ、例えば、天然の産物スクリーニング後に同定された融合タンパク質または分子が含まれる。用語「非タンパク質性分子」は、例えば、核酸分子に対する用語であり得るか、天然の供給源(例えば、天然の産物スクリーニングなど)に由来する分子であり得るか、化学合成分子であり得る。本発明は、タンパク質キナーゼCζ発現産物のアナログまたはアゴニストもしくはアンタゴニストとして作用することができる小分子を意図する。化学的アゴニストは、必ずしもタンパク質キナーゼCζ発現産物に由来し得ないが、一定の高次構造類似性を共有し得る。または、一定の生理化学的性質を満たすように化学的アゴニストを特異的にデザインすることができる。アンタゴニストは、タンパク質キナーゼCζのその通常の生物学的機能の実施を遮断、阻害、または回避することができる任意の化合物(その活性化を防止するか活性化タンパク質キナーゼCζの下流機能を防止する分子など)であり得る。アンタゴニストには、哺乳動物細胞におけるタンパク質キナーゼCζ遺伝子またはmRNAの転写または翻訳を防止するモノクローナル抗体およびアンチセンス核酸が含まれる。同時抑制での使用に適切な抗原、RNA、リボゾーム、DNAザイム(DNAzyme)、RNAアプタマー、抗体、または分子を使用して発現を調整することもできる。上記ポイント(i)〜(v)で言及されるタンパク質性分子および非タンパク質性分子は、本明細書中で集合的に「調整剤」という。
【0058】
前に定義した調整剤のスクリーニングを、いくつかの適切な方法のうちの任意の1つ(タンパク質キナーゼCζ遺伝子またはその機能等価物もしくは誘導体を含む細胞を薬剤と接触させ、タンパク質キナーゼCζタンパク質の産生もしくは機能活性、タンパク質キナーゼCζをコードする核酸分子の発現の調整、または下流タンパク質キナーゼCζ細胞標的の活性もしくは発現の調整をスクリーニングすることが含まれるが、これらに決して制限されない)によって行うことができる。このような調整を、ウェスタンブロッティング、電気泳動移動度シフトアッセイ、および/またはルシフェラーゼおよびCATなどのタンパク質キナーゼCζ活性のレポーターの読み取りなどの技術を使用して検出することができる。
【0059】
タンパク質キナーゼCζ遺伝子またはその機能等価物もしくは誘導体は、試験対象である細胞中に天然に含まれ得るか、試験目的で宿主細胞にトランスフェクトすることができることを理解すべきである。さらに、天然に存在するかトランスフェクトされた遺伝子は構成性に発現することができるので、特に、核酸または発現産物レベルのいずれかでタンパク質キナーゼCζ活性を下方制御する薬剤のスクリーニングに有用なモデルが提供されるか、この遺伝子は活性化する必要があるので、特にタンパク質キナーゼCζ発現を上方制御する薬剤のスクリーニングに有用なモデルが提供される。さらに、タンパク質キナーゼCζ核酸分子を細胞にトランスフェクトする限り、この分子はタンパク質キナーゼCζ遺伝子全体を含み得るか、タンパク質キナーゼCζ産物の発現を調節する部分などの遺伝子の一部のみを含み得る。例えば、タンパク質キナーゼCζプロモーター領域を、試験対象である細胞にトランスフェクトすることができる。これに関して、プロモーターのみを利用する場合、プロモーター活性の調整を、例えば、プロモーターのレポーター遺伝子へのライゲーションによって検出することができる。例えば、プロモーターをルシフェラーゼまたはCATレポーターにライゲーションすることができ、その遺伝子発現の調整を、それぞれ蛍光強度またはCATレポーター活性の調整を介して検出することができる。
【0060】
別の例では、検出対象は、タンパク質キナーゼCζ自体よりも下流タンパク質キナーゼCζ調節標的であり得る。さらに別の例には、最小レポーターにライゲーションするタンパク質キナーゼCζ結合部位が含まれる。例えば、タンパク質キナーゼCζ活性の調整を、内皮細胞における機能活性の調整のスクリーニングによって検出することができる。これは、タンパク質キナーゼCζ発現自体の調整が検出対象ではない間接系の例である。むしろ、タンパク質キナーゼCζが発現を調節する分子の調整をモニタリングする。
【0061】
これらの方法は、合成、組み合わせ、化学、および天然のライブラリーを含むタンパク質性または非タンパク質性薬剤などの推定調整剤の高処理スクリーニングを実施する機構を提供する。これらの方法はまた、タンパク質キナーゼCζ核酸分子またはその発現産物自体のいずれかに結合するか、上流分子(この上流分子がその後タンパク質キナーゼCζ発現または発現産物活性を調整する)の発現を調節する薬剤の検出を容易にする。したがって、これらの方法は、タンパク質キナーゼCζの発現および/または活性を直接または間接的に調整する薬剤の検出機構を提供する。
【0062】
本発明の関連局面は、調整剤のスクリーニング方法に関すると理解すべきである。
【0063】
本発明の方法で使用される薬剤は、任意の適切な形態をとることができる。例えば、タンパク質性薬剤を、種々の程度にグリコシル化、非グリコシル化、リン酸化、または脱リン酸化することができ、そして/またはアミノ酸などのタンパク質、脂質、炭水化物、他のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質と共に使用するか、連結しているか、結合しているか、会合している一定範囲の他の分子を含み得る。同様に、本発明の非タンパク質性分子はまた、任意の適切な形態を取ることができる。本明細書中に記載のタンパク質性および非タンパク質性の薬剤の両方を、任意の他のタンパク質性または非タンパク質性分子と連結するか、結合するか、会合することができる。例えば、本発明の1つの態様では、薬剤は、その局在化領域にターゲティングすることが可能な分子と会合している。
【0064】
本発明のタンパク質性または非タンパク質性分子は、直接または間接的にタンパク質キナーゼCζの発現またはタンパク質キナーゼCζ発現産物の活性を調整するように作用することができる。この分子は、それぞれ発現または活性を調整するためにタンパク質キナーゼCζ核酸分子または発現産物に会合する場合、直接作用する。この分子は、他の分子がそれぞれタンパク質キナーゼCζ核酸分子または発現産物の発現または活性を直接または間接的に調整するタンパク質キナーゼCζ核酸分子または発現産物以外の分子と会合する場合、間接的に作用する。したがって、本発明の方法は、調節工程のカスケードの誘導を介したタンパク質キナーゼCζ核酸分子発現または発現産物の活性の調節を含む。
【0065】
用語「発現」は、核酸分子の転写および翻訳をいう。用語「発現産物」は、核酸分子の転写および翻訳から産生された産物をいう。用語「調整」は、上方制御または下方制御をいうと理解すべきである。
【0066】
本明細書中に記載の分子(例えば、トロンビン、タンパク質キナーゼCζ、または他のタンパク質性もしくは非タンパク質性薬剤)の「誘導体」には、天然または非天然供給源のいずれか由来のフラグメント、一部、部分、または変異型が含まれる。非天然供給源には、例えば、組換えまたは合成供給源が含まれる。「組換え供給源」は、本発明の分子が採取される細胞供給源が遺伝的に変化したことを意味する。例えば、特定の細胞供給源による産生速度および体積を増加させるか向上させるためにこれが起こり得る。一部またはフラグメントには、例えば、分子の活性領域が含まれる。誘導体は、アミノ酸の挿入、欠失、または置換に由来し得る。アミノ酸挿入誘導体には、アミノおよび/またはカルボキシル末端融合ならびに一つまたは複数のアミノ酸の配列内挿入が含まれる。挿入アミノ酸配列変異型は、一つまたは複数のアミノ酸残基がタンパク質中の所定の部位に挿入されているが、得られた産物の適切なスクリーニングを使用して無作為な挿入も可能であるものである。欠失変異型は、配列からの一つまたは複数のアミノ酸の除去によって特徴付けられる。置換アミノ酸変異型は、配列中の少なくとも1つの残基が除去されてその位置に異なる残基が挿入されたものである。アミノ酸配列への付加物には、上述した他のペプチド、ポリペプチド、タンパク質との融合物が含まれる。
【0067】
誘導体には、ペプチド、ポリペプチド、または他のタンパク質性もしくは非タンパク質性分子に融合した全タンパク質の特定のエピトープまたは一部を有するフラグメントも含まれる。例えば、タンパク質キナーゼCζまたはその誘導体を、細胞への侵入を促進させる分子と融合することができる。本明細書中で意図する分子のアナログには、側鎖の修飾、ペプチド合成、ポリペプチド合成、またはタンパク質合成時の非天然アミノ酸および/またはその誘導体の組み込み、ならびに架橋剤およびタンパク質性分子またはそのアナログの高次構造を強制的に制限する他の方法の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の方法で使用することができる核酸配列の誘導体は、同様に、一つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、および/または付加(他の核酸分子との融合が含まれる)に由来し得る。本発明で使用される核酸分子の誘導体には、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子、核酸分子の同時抑制および融合での使用に適切な分子が含まれる。核酸配列の誘導体には、縮重変異型も含まれる。
【0069】
トロンビンまたはタンパク質キナーゼCζの「変異型」または「変異体」は、変異型たまたは変異体であるトロンビンまたはタンパク質キナーゼCζの少なくともいくつかの機能活性形態を示す分子を意味すると理解すべきである。変形(variation)または変異は、任意の形態をとることができ、天然に存在しても天然に存在しなくてもよい。
【0070】
「ホモログ」は、分子が本発明の方法で処理されているもの以外の種に由来することを意味する。例えば、処理されたもの以外の種が処理を受けた被験体によって天然に産生されるタンパク質キナーゼCζのそれと類似且つ適切な機能特性を示すタンパク質キナーゼCζ形態を産生することが決定された場合に、これが生じ得る。
【0071】
化学的および機能的等価物は、本発明の分子の任意の一つまたは複数の機能活性を示す分子と理解すべきであり、機能等価物は、任意の供給源に由来し得る(化学合成されているか天然産物スクリーニングなどのスクリーニングプロセスを介して同定されたものなど)。例えば、化学的または機能的等価物を、組み合わせ化学または組換えライブラリーの高処理スクリーニングまたは以下の天然産物スクリーニングなどの周知の方法を使用してデザインおよび/または同定することができる。
【0072】
例えば、多数の特定の親基が置換された有機分子を使用した、有機小分子を含むライブラリーをスクリーニングすることができる。一般的な合成スキームは、公開された方法に従い得る(例えば、Bunin BA,et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA,91:4708-4712,DeWitt SH,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6909-6913)。簡単に述べれば、それぞれの継続的合成工程で、複数の異なる選択された置換基の1つを、アレイ中のチューブ選択された各サブセットに付加し、チューブサブセットの選択はライブラリー作製で使用した異なる置換基の全ての可能な置換を得ることなどである。1つの適切な置換ストラテジーは、米国特許第5,763,263号で概説されている。
【0073】
生物学的に活性な化合物を検索するための無作為な有機分子の組み合わせライブラリーの使用が現在広く関心が寄せられている(例えば、米国特許第5,763,263号を参照のこと)。この型のライブラリーのスクリーニングによって発見されたリガンドは、天然のリガンド模倣もしくは遮断または生物学的標的の天然に存在するリガンドの妨害に有用であり得る。この文脈では、例えば、これらをより強力な薬理学的効果などの性質を示すタンパク質キナーゼCζアナログの開発の出発点として使用することができる。本発明のタンパク質キナーゼCζまたはその機能的部分を、種々の固相または液相合成方法によって形成された組み合わせライブラリーで使用することができる(例えば、米国特許第5,763,263号およびその引例を参照のこと)。米国特許第5,753,187号に開示の技術などの技術の使用により、何百万もの新規の化合物および/または生物学的化合物を数週間未満で日常的にスクリーニングすることができる。同定された多数の化合物のうち、適切な生物活性を示すもののみをさらに分析する。
【0074】
高処理ライブラリースクリーニング法に関して、選択された生物学的因子(生体分子、高分子複合体、または細胞など)と特異的に相互作用することができるオリゴマーまたは小分子ライブラリー化合物を、当業者によって上記の方法などの周知の方法から容易に選択される組み合わせライブラリーデバイスを使用してスクリーニングする。このような方法では、ライブラリーの各メンバーを、選択された因子と特異的に相互作用する能力に関してスクリーニングする。この方法の実施では、生物学的因子を化合物を含むチューブに入れ、各チューブ中で各ライブラリー化合物と相互作用させる。所望の相互作用の存在をモニタリングするために使用することができる検出可能なシグナルが得られるように相互作用をデザインする。好ましくは、生物学的因子は水溶液中に存在し、所望の相互作用に依存して更なる条件を適合させる。例えば、物質の検出のための任意の周知の機能または非機能ベースの方法によって検出を行うことができる。
【0075】
タンパク質キナーゼCζ活性を模倣する分子のスクリーニングに加えて、内皮細胞成長の調整に関してタンパク質キナーゼCζの機能活性を上方制御または下方制御するためにタンパク質キナーゼCζに作動的または拮抗的に機能する分子を同定および使用することも望ましい。このような分子の使用は、以下により詳細に記載されている。本発明の分子がタンパク質性である限り、分子は、例えば、天然または組換え供給源(融合タンパク質が含まれる)に由来し得るか、例えば、上記のスクリーニング法に従い得る。非タンパク質性分子は、例えば、上記方法にしたがっても同定または作製される化学分子または合成分子であり得る。したがって、本発明は、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用することができるタンパク質キナーゼCζの化学的アナログの使用を意図する。化学的アゴニストは、必ずしもタンパク質キナーゼCζに由来する必要はないが、一定の高次構造の類似性を共有し得る。または、タンパク質キナーゼCζの一定の生理化学的性質を模倣するように化学的アゴニストを特異的にデザインすることができる。アンタゴニストは、タンパク質キナーゼCζのその通常の生物学的機能を遮断、阻害、または防止することができる任意の化合物であり得る。アンタゴニストには、タンパク質キナーゼCζまたはタンパク質キナーゼCζの一部に特異的なモノクローナル抗体が含まれる。
【0076】
本明細書中で意図されるタンパク質キナーゼCζのアナログまたはタンパク質キナーゼCζ作動薬もしくは拮抗薬には、側鎖の修飾、ペプチド合成、ポリペプチド合成、またはタンパク質合成時の非天然アミノ酸および/またはその誘導体の組み込み、ならびに架橋剤およびアナログの高次構造を強制的に制限する他の方法の使用が含まれるが、これらに限定されない。このような修飾をとることができる特定の形態は、本発明の分子がタンパク質性または非タンパク質性のいずれであるかに依存する。特定の修飾の性質および/または適合性を、当業者によって日常的に決定することができる。
【0077】
例えば、本発明によって意図される側鎖修飾の例には、アルデヒドとの反応後NaBH4で還元する還元的アルキル化;メチルアセトイミデートでのアミド化;無水酢酸でのアシル化;アミノ基のシアン酸塩とのカルバモイル化;アミノ基の2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)でのトリニトロベンジル化;アミノ基のコハク酸無水物およびテトラヒドロフタル酸無水物でのアシル化;およびリジンのピリドキサル-5-リン酸でのピリドキシル化およびその後のNaBH4との反応などのアミノ基の修飾が含まれる。
【0078】
アルギニン残基のグアニジン基を、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサル、およびグリオキサルなどの試薬との複素環縮合生成物の形成によって修飾することができる。
【0079】
カルボキシル基を、O-アシルイソ尿素(acylisourea)形成を介したカルボジイミド活性化およびその後の例えば対応するアミドへの誘導体化によって修飾することができる。
【0080】
スルフヒドリル基を、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドでのカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、マレイン酸無水物、または他の置換マレイミドとの反応;4-クロロ水銀ベンゾエート、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、および他の水銀剤を使用した水銀誘導体の形成;アルカリpHでのシアン酸塩でのカルバモイル化などの方法によって修飾することができる。
【0081】
トリプトファン残基を、例えば、N-ブロモスクシンイミドでの酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドまたはスルフェニルハライドでのインドール環のアルキル化によって修飾することができる。対照的に、チロシン残基を、テトラニトロメタンでのニトロ化によって変化させて3-ニトロチロシン誘導体を形成することができる。
【0082】
ヒスチジン残基のイミダゾール環を、ヨード酢酸誘導体でのアルキル化またはジエチルピルカルボネートでのN-カルボエトキシル化によって修飾することができる。
【0083】
タンパク質合成時の非天然アミノ酸および誘導体の組み込みの例には、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のDイソ型の使用が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で意図される非天然アミノ酸のリストを、表1に示す。
【0084】
【表1】



【0085】
三次元高次構造を安定化するために架橋剤(例えば、(CH2)nスペーサー基(n=1〜n=6)を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのホモ二官能性架橋剤ならびに通常N-ヒドロキシスクシンイミドなどのアミノ反応性部分および別の基に特異的な反応性部分を含むヘテロ二官能性試薬などの二官能性架橋剤)を使用することができる。
【0086】
本明細書中の用語、タンパク質キナーゼCζの「機能的に有効なレベル」または「機能的に無効なレベル」のいずれかの達成は、内皮細胞活性を調整することができる(上方制御するか下方制御する)機能的に活性なタンパク質キナーゼCζのレベルの達成をいうと理解すべきである。これに関して、日常的な手順を使用して、内皮細胞活性を上方制御することができるレベルを超え、且つ内皮細胞活性を下方制御するレベル未満の機能的に活性なタンパク質キナーゼCζ発現の閾値レベルを決定することは当業者の範囲内である。例えば、これに関して、タンパク質キナーゼCζのリン酸化状態または細胞局在化を調節する任意の方法(タンパク質キナーゼCζのRNA合成の変化に基づく任意の方法など)の使用が適切である(例えば、アンチセンス構築物、DNAザイム、またはRNAiにより、タンパク質レベルを変化させることができる)。用語「有効なレベル」は、少なくとも部分的に所望の応答を達成するのに必要なレベルを意味すると理解すべきである。量は、細胞集団および/または治療を受ける個体の健康状態および体調、細胞集団および/または治療を受ける個体の分類学的群、所望の上方制御または下方制御の程度、使用する組成物の処方、医学的状況の評価、ならびに他の関連する要因に依存して変化する。したがって、このレベルは、個体の状況によって変化し得るので、広い範囲で分類され、これを日常的な試験によって決定することができると予想される。
【0087】
本発明の方法は、インビトロおよびインビボの両方において機能する内皮細胞の調整を意図する。好ましい方法がインビボで個体を処置することであるが、本発明の方法を、例えば、内皮細胞透過性分析のインビトロモデルを提供するためにインビトロ環境で適用することができることが望ましいと理解すべきである。別の例では、インビトロ環境での本発明の方法の適用により、上記の技術などのスクリーニング技術の機構の読み取りまで拡大することができる。すなわち、これらのスクリーニング技術を使用して同定した分子を、本発明の方法によって機能的に調整された内皮細胞に対するその機能的効果の範囲および/または性質を観察するためにアッセイすることができる。
【0088】
好ましい方法が、特に、トロンビン誘導性血管内皮細胞活性を下方制御することであるので、(例えば、炎症反応の進行または腫瘍の発達を下方制御するために)細胞間血管内皮細胞透過性を本質的に下方制御するが、細胞間血管内皮細胞透過性を上方制御することが望ましい環境も存在し得ると理解すべきである。例えば、本発明を決して制限しないが、腫瘍中に新規に形成された微小血管が透過性が高いことを認められている。この高透過性により、腫瘍中に接着および移動を支持および促進するフィブリンが蓄積される(血管形成反応において不可欠な工程である)。腫瘍でこれが起こる限り、このような血管高透過性の事例を下方制御することが明らかに本発明の目的となる。しかし、器官または四肢移植の状況では、新規の器官または四肢における血管形成を促進するための血管高透過性の上方制御が非常に望ましい。別の例では、薬物の局所または全身送達の促進において高血管透過性の増加が望ましい。
【0089】
したがって、本発明の別の局面は、哺乳動物のタンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により内皮細胞活性が下方制御されることとを含む、哺乳動物の内皮細胞活性の調整方法に関する。
【0090】
好ましくは、内皮細胞は血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞であり、活性は細胞間内皮細胞透過性または細胞内内皮細胞透過性である。さらにより好ましくは、活性は、トロンビン誘導性血管内皮細胞透過性である。
【0091】
タンパク質キナーゼCζ、タンパク質キナーゼCζをコードする核酸分子、またはタンパク質キナーゼCζ活性またはタンパク質キナーゼCζ遺伝子発現の調整に影響を与える薬剤(本明細書中では、集合的に「調整剤」という)の投与によってタンパク質キナーゼCζ機能活性を調整する。上で詳述するように、トロンビンの存在下または非存在下で本発明の方法を行うことができると理解すべきである。特に、上で詳述するように、内皮細胞活性を上方制御するためにトロンビンによって利用される細胞内シグナル伝達機構の決定により、トロンビン刺激の結果としてまたはトロンビン刺激の必要性の回避手段としての活性の調整手段が得られる(この後者の結果は、トロンビン刺激の非存在下での細胞間血管内皮細胞透過性の上方制御において特に有用である)。
【0092】
したがって、1つの好ましい態様では、有効量の薬剤を機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の内皮細胞活性を上方制御する方法を提供する。
【0093】
別の好ましい態様では、有効量のタンパク質キナーゼCζを機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の内皮細胞活性を上方制御する方法を提供する。
【0094】
さらに別の好ましい態様では、有効量のタンパク質キナーゼCζをコードするヌクレオチド配列を機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の内皮細胞活性を上方制御する方法を提供する。
【0095】
さらに別の好ましい態様では、有効量の薬剤を機能的に無効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の内皮細胞活性を下方制御する方法を提供する。
【0096】
本発明のこれらの好ましい態様によれば、内皮細胞は、好ましくは、血管またはリンパ内皮細胞であり、活性は、好ましくは、細胞間または細胞内内皮細胞透過性である。さらにより好ましくは、活性は、トロンビン誘導性血管内皮細胞透過性である。
【0097】
用語「誘導する」は、所望のタンパク質キナーゼCζレベル(機能的に有効なレベルまたは機能的に無効なレベルのいずれかである)を達成することをいうと理解すべきである。前記誘導は、上記のタンパク質キナーゼCζ機能活性の上方制御または下方制御を介して達成される可能性が最も高いが、誘導を達成する任意の他の適切な手段が本発明の方法に含まれる。
【0098】
本発明の更なる局面は、病態または他の望ましくない状態の治療および/または予防に関する本発明の使用に関する。本発明は決して任意の1つの理論または作用様式に制限されないが、内皮細胞活性の調節、特に細胞間血管内皮細胞透過性は、正常な生理学的性質および多数の望ましくない病状の両方における溶質および細胞の循環から組織への通過の調節において不可欠な要件である。例えば、新規に形成された微小血管および腫瘍は透過性が高いので、細胞の接着および移動(血管形成反応で不可欠な工程)を支持および促進する腫瘍中のフィブリンの蓄積を促進する。別の例では、関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの慢性炎症状態は、活性化内皮を通過する炎症細胞の移動を増加させる血管高透過性によって特徴付けられる。この内皮細胞漏出を促進する多数の因子(トロンビン活性が含まれる)が記載されている。本発明を任意の1つの理論または作用様式に制限しないが、トロンビンは、例えば、接合物およびPECAN-1およびVE-カドヘリンなどの分子またはその関連シグナル伝達分子(カテニンなど)の変化の誘導によって作用すると考えられている。したがって、本発明は、特に、個体が望ましくない炎症疾患または腫瘍発達に罹患している場合の細胞間血管内皮細胞透過性を下方制御するための治療として(これに限定されない)有用である。または、循環から組織への溶質または細胞の通過を促進することが必要な場合(移植器官もしくは四肢またはアミロイドプラーク蓄積の対象となる組織における血管形成を促進する目的など)、細胞間血管内皮細胞透過性の上方制御が望ましい。
【0099】
したがって、本発明は、タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程と、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞活性が下方制御されることとを含む、哺乳動物の異常であるか、望ましくないか、不適切な内皮細胞活性によって特徴付けられる病態の治療および/または予防方法を意図する。
【0100】
好ましくは、内皮細胞は血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞であり、内皮細胞活性は細胞間透過性または細胞内透過性である。
【0101】
用語「異常であるか、望ましくないか、不適切な」内皮細胞機能は、望ましくないという点で不適切である生理学的に正常な機能に対して低活性機能または過剰活性内皮細胞機能をいうと理解すべきである。上で詳述するように、内皮細胞機能、特に血管内皮細胞機能の正確なレベルの誘導に依存する多数の病態が存在する。例えば、本明細書中に開示の好ましい態様に関して、望ましくない炎症反応を経験した個体では、タンパク質キナーゼCζの機能的に無効なレベルへの下方制御により、この望ましくない炎症反応を遅延させる手段が得られる。別の例では、新規の血管の発達は、多数の病態の進行および/または継続の中心的な過程である。例えば、血管形成依存性疾患には、充実性腫瘍、血行性腫瘍(白血病など)、腫瘍転移、良性腫瘍(例えば、血管腫、血管線維腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫)、関節リウマチ、クローン病、アテローム性動脈硬化症、肥満症、子宮内膜症、眼球血管形成疾患(例えば、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)、黄斑変性症、角膜移植拒絶、ルベオーシス、血管新生緑内障)、乾癬、顔面および体幹性毛細管拡張症、オスラー-ウェバー・ランジュー症候群(遺伝性出血性毛細管拡張症)が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
最も好ましい態様では、有効量の薬剤を機能的に無効なレベルのタンパク質キナーゼCζを誘導するのに十分な時間および条件下で哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の望ましくない内皮細胞活性によって特徴付けられる病態の治療および/または予防方法を提供する。
【0103】
好ましくは、内皮細胞は血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞であり、活性は内皮細胞透過性である。最も好ましくは、病態は、炎症反応または充実性腫瘍である。
【0104】
「有効量」は、少なくとも部分的に治療を受ける特定の病態の所望の応答を達成するか、発症を遅延するか、進行を阻害するか、発症または進行を完全に停止させるのに必要な量を意味する。この量は、治療を受ける個体の健康状態および体調、治療を受ける個体の分類学的群、所望の防御の程度、組成物の処方、医学的状況の評価、および他の関連する要因によって変化する。この量は広い範囲で分類され、これを日常的な試験によって決定することができると予想される。
【0105】
本明細書中の用語「治療」および「予防」は、その最も広い状況が考慮される。用語「治療」は、必ずしも完全に回復するまで被験体を処置することを意味しない。同様に、「予防」は、必ずしも被験体が最終的に罹患しないことを意味しない。したがって、治療および予防には、特定の病態の症状の改善または特定の病態の発症リスクの回避または減少が含まれる。用語「予防」は、特定の病態の重症度または発症の減少と見なすことができる。「治療」はまた、既存の病態の重症度を減少させることができる。
【0106】
本発明は、さらに、調整剤と所望の治療結果または予防結果を促進することができる他のタンパク質性または非タンパク質性分子との投与などの治療の組み合わせを意図する。
【0107】
薬学的組成物の形態の上記の本発明の分子(本明細書中で集合的に「調整剤」という)を、任意の従来の手段によって投与することができる。薬学的組成物の調整剤は、特定の場合に依存した量で投与した場合に治療活性を示すことが意図される。例えば、ヒトまたは動物および選択性した調整剤に依存して変化する。広範な投与量を適用可能である。患者を考慮すると、例えば、約0.1mg〜約1mg/kg体重/日の調整剤を投与することができる。最適な治療応答を得るために投薬計画を調整することができる。例えば、いくつかの分割用量を、毎日、毎週、毎月、または他の適切な時間間隔で投与することができるか、病態に必要な要件によって示されるように、用量を比例的に減少させることができる。
【0108】
経口、静脈内(水溶性の場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、坐薬経路、または移植(例えば、徐放性分子の使用)などの都合の良い様式で調整剤を投与することができる。薬学的に許容される無毒の塩の形態(酸付加塩または金属複合体(例えば、亜鉛または鉄など)など)(本適用の目的のための塩と見なされる)で調整剤を投与することができる。このような酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、および酒石酸塩などである。錠剤形態で有効成分を投与する場合、錠剤は、結合剤(トラガカント、コーンスターチ、またはゼラチン);崩壊剤(アルギン酸など);および潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム)を含み得る。
【0109】
投与経路には、呼吸器内、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、鞘内、小脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸、IVドリップパッチ、および移植が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、前記投与経路は経口である。
【0110】
これらの方法によれば、本発明によって定義された薬剤を、一つまたは複数の他の化合物または分子と共に同時投与することができる。「同時投与」は、同一処方物または同一もしくは異なる経路を介した2つの異なる処方物における同時投与または同一もしくは異なる経路による連続投与を意味する。例えば、本発明のタンパク質キナーゼCζを、その効果を向上させるために作動薬と共に投与することができる。または、自己免疫性炎症の場合、タンパク質キナーゼCζアンタゴニストを、免疫抑制薬と共に投与することができる。「連続」投与は、2つの分子型の投与の間の時間差(秒、分、時間、または日)を意味する。これらの分子を任意の順序で投与することができる。
【0111】
本発明の別の局面は、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御されることと、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により内皮細胞活性が下方制御される、哺乳動物の内皮細胞活性の調節のための薬物の製造における機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを調整することができる薬剤の使用に関する。
【0112】
別の局面では、本発明は、タンパク質キナーゼCζの機能的レベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御される内皮細胞活性の調節のための薬物の製造におけるタンパク質キナーゼCζまたはタンパク質キナーゼCζをコードする核酸の使用に関する。
【0113】
これらの好ましい態様によれば、本発明の内皮細胞は、好ましくは、血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である。さらにより好ましくは、本発明の内皮細胞機能は、細胞間または細胞内内皮細胞透過性である。最も好ましくは、機能は下方制御である。
【0114】
本明細書中で使用される、用語「哺乳動物」および「被験体」には、ヒト、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、ペット(例えば、イヌ、ネコ)、および捕獲された野生動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)が含まれる。好ましくは、哺乳動物はヒトまたは実験動物である。さらにより好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0115】
さらに別のさらなる局面では、本発明は、上記定義の調整剤および一つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤を含む薬学的組成物を意図する。前記薬剤は、有効成分をいう。
【0116】
注射に適切な薬学的形態には、滅菌水溶液(水溶性の場合)もしくは分散液および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれ、クリームまたは局所適用に適切な他の形態でもよい。これは、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。種々の抗菌薬および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチロメサールなど)によって微生物作用を予防することができる。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含めることが好ましい。吸収遅延剤組成物(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によって注射用組成物を長期間吸収することができる。
【0117】
上記の種々の他の成分と共に適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込み、必要に応じてその後濾過滅菌を行うことによって滅菌注射液を調製する。一般に、基剤となる分散媒および上記由来の必要な他の成分を含む滅菌賦形剤への種々の滅菌有効成分の組み込みによって分散液を調製する。滅菌注射液調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分の粉末+予め濾過滅菌したその溶液由来の任意の更なる所望の成分が得られる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0118】
有効成分を適切に保護する場合、これらを、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用キャリアと共に経口投与するか、硬質または軟質ゼラチンカプセル中に封入するか、錠剤に打錠するか、食餌に直接組み込むことができる。治療薬の経口投与のために、活性化合物を賦形剤に組み込み、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、およびウェハースなどの形態で使用することができる。このような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含むべきである。勿論、組成物および調製物の比率を変化させることができ、約5重量%〜約80重量%の単位が都合がよい。適切な投薬量のこのような治療に有用な組成物中の活性化合物の量が得られる。経口投与単位形態が約0.1μgと2000mgとの間の活性化合物を含むように本発明の好ましい組成物または調製物を調製する。
【0119】
錠剤、トローチ、丸薬、およびカプセルなどもまた、以下に列挙する成分を含み得る。結合剤(ガム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなど);賦形剤(第二リン酸カルシウムなど);崩壊剤(コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸など);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムなど);および甘味料(スクロース、ラクトース、またはサッカリンなど)または香料添加剤(ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー香料など)を添加することができる。投薬単位形態がカプセルである場合、上記材料型に加えて液体キャリアを含み得る。種々の他の材料は、コーティングとして存在することができるか、投薬単位の物理的形態を修正することができる。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルを、セラック、糖、または両方でコーティングすることができる。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味料としてのスクロース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーフレーバーまたはオレンジフレーバーなどの香味料を含み得る。勿論、任意の投薬単位形態の調製で使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、且つ使用量で実質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物を、徐放性調製物および処方物に組み込むことができる。
【0120】
薬学的組成物はまた、ベクターがタンパク質キナーゼCζをコードする核酸分子または上記定義の調整剤を保有する場合に標的細胞をトランスフェクトすることができるベクターなどの遺伝分子を含み得る。ベクターは、例えば、ウイルスベクターであり得る。
【0121】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに定義する。
【0122】
実施例1
アンギオポイエチン-1は、タンパク質キナーゼCζの阻害によるトロンビン誘導性内皮細胞透過性変化を阻害する
材料と方法
試薬
Regeneron Incから入手したアンギオポイエチン-1を記載のように使用した(Gamble,J.R.,Drew,J.,Trezise,L.,Underwood,A.,Parsons,M.,Kasminkas,L.,Rudge,J.,Yancopoulos,G.,Vadas,M.A.(2000)Circ Res.87:603-7;Papapetropoulos,A.,Garcia-Cardena,G.,Dengler,T.J.,Maisonpierre,P.C.,Yancopoulos,G.D.and Sessa,W.C.(1999)Lab Invest.70:213-23)。塩酸ビスインドリルマレイミドI、カルホスチンC、およびLY294002を、Calbiochem Novabiochem,(Croydon,Vic,Australia)から入手した。塩化キレリスリンおよびH-89を、Biomol Research Laboratories,Inc(Plymouth Meeting,PA,USA)から入手した。トロンビン、プロテアーゼインヒビターカクテル、およびFITC抱合デキストランを、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,U.S.A)から入手した。
【0123】
細胞および細胞培養
ヒト臍静脈内皮細胞を、記載のように20%ウシ胎児血清(FCS)を含むM119培地中で成長させた(Litwin,M.,Clark,K.,Noack,L.,Furze,J.,Berndt,M.,Albelda,S.,Vadas,M.,Gamble,J.(1997)J Cell Biol.139:219-28)。4回以下の継代細胞を使用した。アデノウイルス構築物での感染のために、細胞を80%コンフルエントまで成長させ、2.5×106プラーク形成単位/25cm2培養領域まで2%FCSを含むM119培地で2時間および20%FCSを含むM119培地でさらに22時間曝露した。
【0124】
組換えアデノウイルス構築物
FLAG-タンパク質キナーゼCζをコードするDNA構築物、FLAG-タンパク質キナーゼCζT410Aを含むpCMV5、およびMyr-タンパク質キナーゼCζ-FLAGを含むpCMV6は、Alex Toker博士(Biomedical Research Institute,Boston,MA,USA)から譲渡された。組換えアデノウイルスを、pAdEasy-1ベクター(Qbiogene Inc.,Carlsbad,CA,USA)へのpCMV5構築物由来のEcoRIフラグメントおよびpCMV6構築物由来のHindIII/EcoRIフラグメントのサブクローニングによって構築した。ウイルスをHEK293細胞中で増幅させ、CsCl勾配超遠心分離によって精製した。Qbiogeneによって推奨されるようにTCID50法を使用してウイルス力価を決定した。
【0125】
内皮透過性アッセイ
記載のようにアッセイを行った(Draijer et al.(1995)前記)。内皮細胞(105)を、トランスウェル(孔サイズ3μ,Corning Costar Corp,Cambridge,MA,USA)中にて完全培地中で24時間、その後2%FCS培地中でさらに24時間培養した。必要に応じて、細胞を、ビスインドリルマレイミドI(10nMまたは6μM)、カルホスチンC(100nM)、塩化キレリスリン(1μM)、H-89(50nM)、またはアンギオポイエチン-1(0.1μg/ml)のいずれかで前処理した。FITC抱合デキストラン(0.2μg)を、全ウェルの上部チャンバーに添加し、細胞をトロンビン(0.2U/ml)で処理した。処理30分後、トランスウェルの下部チャンバーの相対蛍光を、LS 50B発光分光計(Perkin Elmer,Beaconsfield,Buckinghamshire,UK;励起波長485nm;発光波長530nm)を使用して決定した。上記感染手順から24時間後にアデノウイルス感染ECをトランスウェルにプレートし、非感染細胞と同一の様式で処理した。
【0126】
免疫ブロッティング
上記のように、感染前に内皮細胞をフィブロネクチンコーティングフラスコにプレートした。感染後、細胞を一晩血清枯渇させた(0.2%FCS)。次いで、必要に応じて細胞をアンギオポイエチン-1、トロンビン、および/またはビスインドリルマレイミドIで処理し、氷冷溶解緩衝液(1%NP-40を含む50mM Tris.HCl(pH7.4)、150mM NaCl、2mM EGTA、1mM NaPO4、100mM NaF、10mMピロリン酸ナトリウム、およびプロテアーゼインヒビターカクテル)中で溶解した。Bradford試薬(BioRad,Hercules,CA,USA)を使用してタンパク質濃度をアッセイした。等量のタンパク質を、10%アクリルアミドゲルにロードし、SDS-PAGEによって分離し、PVDFメンブレンに移し、5%脱脂粉乳粉末および0.1%Triton-X100を含むリン酸緩衝化生理食塩水でブロッキングし、タンパク質キナーゼCζの活性化ループのリン酸化Thr410に対して指向するウサギポリクローナル抗体で探索した(Chou,M.M.,Hou,W.,Johnson,J.,Graham,L.K.,Lee,M.H.,Chen,C.S.,Newton,A.C.,Schaffhausen,B.S.,Toker,A.(1998)Curr Biol.8:1069-77)。この抗体は、Alex Toker博士から譲渡された。洗浄後、メンブレンを抗ウサギ二次抗体とインキュベートし、反応バンドを化学発光(ECL Western Blotting Detection Reagents,Amersham Pharmacia Biotech,Little Chalfont,England,UK)によって検出した。ストリッピング緩衝液(Re-Blot Plus Western Blot Recycling Kit,Chemicon,Temecula CA,USA)を使用してメンブレンをストリッピングし、ウサギ抗タンパク質キナーゼCζ免疫親和性精製IgG(Upstate Biotechnology,Lake Placid NY,USA)で再探索した。
【0127】
免疫蛍光
6×104個の内皮細胞を、フィブロネクチンコーティングガラスLabTekチャンバースライド(Nalge Nunc International,Naperville,IL,USA)中で培養し、3日間インキュベートし、その後染色した。次いで、必要に応じて、細胞を、アンギオポイエチン-1、トロンビン、および/またはビスインドリルマレイミドIで処理した。細胞を、PBSで1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド/PBS中で5分間固定し、-20℃で5分間アセトンを浸透させ、PBSで2回洗浄した。固定細胞を、ウサギ抗タンパク質キナーゼCζ免疫親和性精製IgGまたは抗タンパク質キナーゼCζ(BD Transduction Laboratories,San Diego,California,USA)と共に4℃で一晩インキュベートし、その後FITC抱合抗ウサギ抗体(Rockland,Gilbertsville PA,USA)とインキュベートした。蛍光顕微鏡マウンティングメディア(Dako Corp.,Carpinteria,CA,USA)を使用して、カバーガラスをマウントした。Photometrics Cool Snap FX電荷結合素子カメラ(Roper Scientific GmbH,Germany)に取り付けたフルオレセイン用励起フィルター(494nm)を具備したOlympus BX-51顕微鏡(Olympus,Hamburg,Germany)での落射型蛍光顕微鏡検査によって細胞を画像化した。V++ソフトウェア(Digital Optics Ltd.,Auckland,New Zealand)を使用して画像の輝度およびコントラストを調整した。
【0128】
実施例2
EC透過性のトロンビン誘導性増加は、タンパク質キナーゼCζシグナル伝達のブロッキングによって阻害される
血管ECトロンビンのシグナル伝達は、プロテアーゼ活性化受容体PAR-1によって媒介され、タンパク質キナーゼCζはPAR1の下流標的である(Coughlin,S.R.(2000)Nature 407:258-64)。トロンビン誘導性透過性におけるタンパク質キナーゼCおよび特定のイソ型の役割を明確にするために、本発明者らは、タンパク質キナーゼCインヒビター特異性の変化を利用した。本発明者らは、塩化キレリスリン(全てのタンパク質キナーゼCイソ型のインヒビター)(Laudanna,C.,Mochly-Rosen,D.,Liron,T.,Constantin,G.,Butcher,E.C.(1998)J Biol Chem.273:30306-15)、カルホスチンC(古典的および新規のタンパク質キナーゼCのインヒビター)(Kobayashi,E.,Nakano,H.,Morimoto,M.,Tamaoki,T.(1989)Biochem Biophys Res Commun.159:548-53)、およびビスインドリルマレイミドI(タンパク質キナーゼCの濃度依存性インヒビター)(Martiny-Baron,G.,Kazanietz,M.G.,Mischak,H.,Blumberg,P.M.,Kochs,G.,Hug,H.,Marme,D.,Schachtele,C.(1993)J Biol Chem.268:9194-7)を使用し、それにより100nMで古典的および新規のタンパク質キナーゼCイソ型を阻害し、6μMで全てのタンパク質キナーゼCイソ型を阻害する(Martiny-Baron et al.(1993)前記;Uberall,F.,Hellbert,K.,Kampfer,S.,Maly,K.,Villunger,A.,Spitaler,M.,Mwanjewe,J.,Baier-Bitterlich,G.,Baier,G.,Grunicke,H.H.(1999)J Cell Biol.144:413-25)。透過性の基準としてヒト臍静脈内皮細胞の単層のFITC標識デキストランの通過を使用して、本発明者らは、6μMのビスインドリルマレイミドI(図1a)および1μMの塩化キレリスリン(図1b)は共にタンパク質キナーゼCの関与を支持する内皮細胞透過性のトロンビン刺激を阻害することを見出した。高濃度のビスインドリルマレイミドIはまた、タンパク質キナーゼA(PKA)を阻害することができるが、特定のタンパク質キナーゼAインヒビターH-89は、トロンビン誘導性透過性の変化に影響を及ぼさなかった(図1c)。100nMのカルホスチンCおよびビスインドリルマレイミドIは、内皮細胞透過性のトロンビン誘導性増加に影響を及ぼさなかった(図1d、1a)。これらのインヒビターの使用と考え合わせると、古典的および新規のタンパク質キナーゼCは関与しないが、異型タンパク質キナーゼCイソ型はトロンビン誘導性内皮細胞透過性の増加において中心的役割を果たすことが示唆される。
【0129】
2つの異型タンパク質キナーゼCイソ型であるタンパク質キナーゼCζおよびタンパク質キナーゼCλが、内皮細胞中に存在する(Li,H.,Oehrlein,S.A.,Wallerath,T.,Ihrig-Biedert,I.,Wohlfart,P.,Ulshofer,T.,Jessen,T.,Herget,T.,Forstermann,U.,Kleinert,H.(1998)Mol Pharmacol.53:630-7)。これらのイソ型の一方または両方がトロンビン媒介透過性の変化に関与するかどうかを決定するために、コンフルエントな休止期内皮細胞を抗タンパク質キナーゼCζ抗体および抗タンパク質キナーゼCλ抗体で染色した。タンパク質キナーゼCζおよびタンパク質キナーゼCλは共に細胞質全体に分布していた(図2b、2e)。内皮細胞のコンフルエントな単層をトロンビンで処理した場合、タンパク質キナーゼCζは細胞膜に局在する一方で(図2c)、タンパク質キナーゼCλは各細胞が有意に制限されているにもかかわらず均一に分布していた(トロンビン刺激に対する特徴的な応答)(図2f)。原形質膜へのタンパク質キナーゼCイソ型のターゲティングにより酵素活性化が示されたので(Nishizuka,Y.(2001)Alcohol Clin Exp Res.25:3S-7S)、この所見は、トロンビン刺激活性化タンパク質キナーゼCλではなくタンパク質キナーゼCζと一致する。
【0130】
実施例3
タンパク質キナーゼCζの活性化は内皮細胞の透過性を増大させる
タンパク質キナーゼCζが内皮細胞透過性のトロンビン刺激増加のメディエーターであることを確認するために、野生型のドミナントネガティブおよび構成性に活性なタンパク質キナーゼCζを、これらの構築物を保有するアデノウイルスでの感染によって内皮細胞中で過剰発現させた。ドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζは、410位でアラニンに変異した活性化ループの重要なトレオニンを有する(Chou et al.(1998)前記)。構成性に活性なタンパク質キナーゼCζは、p60 c-Srcのアミノ末端ミリストイル化配列のタンパク質キナーゼCζのアミノ末端への融合に起因し、それにより得られたタンパク質が細胞膜を構成性にターゲティングする(Chou et al.(1998)前記)。野生型タンパク質キナーゼCζを過剰発現する細胞は、空のベクターを感染させた細胞と類似の方法でトロンビンに応答した(データ示さず)。ドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζを保有するアデノウイルスでの内皮細胞の感染により、空ベクター(図3a)または野生型タンパク質キナーゼCζ(データ示さず)を感染させた細胞と比較して、内皮細胞透過性のトロンビン刺激増加を阻害した。逆に、構成性に活性なタンパク質キナーゼCζを保有するアデノウイルスを感染させた内皮細胞は、トロンビンの非存在下でさえも高透過性であり、トロンビン刺激は透過性に対してさらなる影響を及ぼさなかった。したがって、タンパク質キナーゼCζは内皮細胞接着完全性の維持に重要なようであり、トロンビン誘導性内皮細胞透過性の増加に関与する。
【0131】
実施例4
アンギオポイエチン-1は内皮細胞中のタンパク質キナーゼCζのトロンビン誘導性再局在化およびリン酸化を阻害する
アンギオポイエチン-1は、内皮細胞透過性のトロンビン誘導性増加を阻害することができる(Gamble et al.(2000)前記)(図3b)。したがって、本発明者らは、アンギオポイエチン-1媒介阻害がタンパク質キナーゼCζの調節によるかどうかを調査した。抗タンパク質キナーゼCζ抗体でのコンフルエントな休止期内皮細胞の染色により、タンパク質キナーゼCζが細胞質全体に分布していることが示された(図2bおよび図4a)。トロンビン刺激により、タンパク質キナーゼCζが細胞膜に局在化した(図2cおよび図4b)。同時に、膜への制限の進行および細胞間のギャップが明らかになるにつれて内皮細胞の形状が変化した。内皮細胞を0.1μg/mlのアンギオポイエチン-1で30分間または6μMのビスインドリルマレイミドIで15分間前処理し、その後トロンビンで処理した場合(図4c、4d)、膜へのタンパク質キナーゼCζ局在化が劇的に減少し、タンパク質キナーゼCζの転位および活性化の阻害によってトロンビン刺激のアンギオポイエチン-1阻害が起こり得ることを示す。
【0132】
タンパク質キナーゼCの活性化ループにおけるトレオニンのリン酸化は、PKC活性化の重要な最初の工程である。これの直後に触媒ドメイン内のトレオニンおよびセリン残基の自己リン酸化が起こると同時に、細胞質から細胞膜に転位する(Parekh et al.(2000)前記;Chou et al.(1998)前記)。正常な内皮細胞のトロンビン処理後のタンパク質キナーゼCの活性化ループ内のリン酸化Thr410に特異的な抗体を使用してリン酸化タンパク質キナーゼCCζを検出することができず、これはおそらく酵素レベルが低いためである。次いで、アデノウイルス媒介感染によってタンパク質キナーゼCζを過剰発現させた。15分間のトロンビン処理により、過剰発現したタンパク質キナーゼCζのリン酸化が増加する一方で(図5a)、0.1μg/mlで30分間のアンギオポイエチン-1または6μMで15分間のビスインドリルマレイミドIでの前処理によりトロンビン刺激タンパク質キナーゼCζリン酸化が阻害された。予想されるように、ドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζを感染させた内皮細胞は、トロンビンに応答したタンパク質キナーゼCζリン酸化を示さない一方で、構成性に活性なタンパク質キナーゼCζを発現する内皮細胞は構成性タンパク質キナーゼCζリン酸化を示した(図5b)。
【0133】
ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3-キナーゼ)活性化によってタンパク質キナーゼCζの受容体媒介活性化が起こり得る(Parekh et al.(2000)前記;Chou et al.(1998)前記;Le Good,J.A.,Ziegler,W.H., Parekh,D.B.,Alessi,D.R.,Cohen,P.,Parker,P.J.(1998)Science 281:2042-5)。実際、これは、これらの細胞において、PI3-キナーゼインヒビターであるLY294002での内皮細胞の前処理によりトロンビン誘導性透過性の増加が阻害され(図6)、トロンビンに応答したタンパク質キナーゼCζ再局在化(図4e)およびリン酸化(図5a)を遮断した場合のようである。これは、タンパク質キナーゼCζが活性化され、それにより内皮細胞透過性が増加するトロンビン活性化PI3-キナーゼ依存性経路と一致する。
【0134】
当業者は、本明細書中に記載の本発明が特記したもの以外の変形形態および修正形態が可能であることを認識する。本発明には全てのこのような変形形態および修正形態が含まれると理解すべきである。本発明には、個別または集合的に本明細書中で言及されるか示される全ての工程、特徴、組成物、および化合物、ならびに任意の2つまたはそれ以上の前記工程または特徴の任意および全ての組み合わせも含まれる。
【0135】
参考文献一覧



【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】トロンビン刺激透過性増加を選択的に遮断するタンパク質キナーゼCインヒビターのグラフである。細胞を、未処理(Nil)であるか、トロンビン(0.2U/ml)で15分間(T)処理するか、インヒビターで15分間前処理するか、インヒビターで前処理し、その後のトロンビンで処理する。a.ビスインドリルマレイミドIは、高濃度で内皮細胞のトロンビン刺激透過性増加を遮断する(BisLo,100nM;BisHi,6μM)。b.塩化キレリスリンは内皮細胞のトロンビン刺激透過性増加を遮断する(CC,1μm)。c.特異的PKAインヒビターH-89は、内皮細胞のトロンビン刺激透過性増加に影響を与えない(H-89,50nM)。d.カルホスチンCは内皮細胞のトロンビン刺激透過性増加を遮断しない(CalC,100nM)。530nmでの相対蛍光発光を示す。データは、各群の平均+/-2つの測定値のSEMであり、少なくとも3つの独立した実験の代表である。
【図2】タンパク質キナーゼCζ再局在化を誘導するトロンビンでの内皮細胞の処理の画像である。タンパク質キナーゼCζの変化(a〜c)およびトロンビン(0.2U/ml)での処理後のタンパク質キナーゼCζの局在化(d〜f)を証明するために内皮細胞単層を染色した。a.コントロール抗体。b.未処理。c.トロンビン処理後、d.コントロール抗体。e.未処理。f.トロンビン処理後。
【図3a】ドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζが内皮細胞のトロンビン刺激透過性増加を遮断することを示すグラフである。アッセイ前に内皮細胞にpAdEasy-1アデノウイルス空ベクター(EV)またはドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζ(DN)または構成性に活性なタンパク質キナーゼCζ(CA)をコードするpAdEasy-1構築物を感染させた。細胞を、処理しないか(-)、0.2U/mlのトロンビンで処理した(+)。530nmでの相対蛍光発光を示す。示したデータは、平均±3つの測定値のSEMであり、3つの独立した実験の代表である。
【図3b】トロンビン刺激内皮細胞透過性増加を阻害するアンギオポイエチン-1のグラフである。細胞を、処理しないか(Nil)、アンギオポイエチン-1(0.1μg/ml)(Ang-1)で30分間処理するか、トロンビン(0.2U/ml)(Thrombin)で15分間処理するか、アンギオポイエチン-1(0.1μg/ml)で30分間前処理し、その後トロンビン処理した(Ang-1+T)。530nmでの相対蛍光発光を示す。示したデータは、平均+/-3つの測定値のSEMであり、3つの独立した実験の代表である。
【図4】アンギオポイエチン-1遮断トロンビン刺激タンパク質キナーゼCζ再局在の画像である。トロンビン(0.2U/ml)の単独またはアンギオポイエチン-1(0.1μg/ml)、膵臓タンパク質キナーゼCインヒビターであるビスインドリルマレイミドI(6μM)、またはPI3-キナーゼインヒビターであるLY294002(10μM)での前処理後のいずれかのタンパク質キナーゼCζ局在化の変化を証明するために内皮細胞単層を染色した。a.未処理。b.トロンビンのみ。c.アンギオポイエチン-1およびトロンビン。d.ビスインドリルマレイミドIおよびトロンビン。e.LY294002およびトロンビン。
【図5】アンギオポイエチン-1遮断トロンビン刺激タンパク質キナーゼCζリン酸化の画像である。a)内皮細胞にFLAG-タンパク質キナーゼCζを含むpAdEasy-1アデノウイルスベクターを感染させた。トロンビンのみ(0.2U/ml)での処理後またはアンギオポイエチン-1(0.1μg/ml)、膵臓タンパク質キナーゼCインヒビターであるビスインドリルマレイミドI(6μM)、またはPI3-キナーゼインヒビターであるLY294002(10μM)での前処理後に細胞を溶解した。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、その後PVDFメンブレンに移し、タンパク質キナーゼCζの活性化ループのリン酸化Thr410に指向する抗体で探索した(上のパネル)。メンブレンをストリッピングし、抗タンパク質キナーゼCζ抗体で再探索した(下のパネル)。Nil=未処理。T=トロンビンのみ。Ang-1+T=アンギオポイエチン-1およびトロンビン。Bis+T=ビスインドリルマレイミドIおよびトロンビン。LY+T=LY294002およびトロンビン。b)内皮細胞にドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζまたは構成性に活性なタンパク質キナーゼCζをコードするpAdEasy-1構築物を感染させた。細胞は未処理であるかトロンビンで処理されており、5aのように溶解および処理した。DN=ドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζ過剰発現細胞。DN+T=ドミナントネガティブタンパク質キナーゼCζ過剰発現細胞およびトロンビン処理。CA=構成性に活性なタンパク質キナーゼCζ過剰発現細胞。CA+T=構成性に活性なタンパク質キナーゼCζ過剰発現細胞およびトロンビン処理。
【図6】PI3-キナーゼインヒビターであるLY294002で遮断された内皮細胞のトロンビン刺激透過性増加を示すグラフである。細胞を、未処理(Nil)であるか、トロンビン(0.2U/ml)で15分間(T)処理するか、LY294002(10μM)(LY)で15分間前処理するか、LY294002で前処理し、その後のトロンビンで処理する(LY+T)。(+)。530nmでの相対蛍光発光を示す。示したデータは、平均±3つの測定値のSEMであり、3つの独立した実験の代表である。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質Cζの機能活性を調整する工程を含む、内皮細胞活性の調整方法であって、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により細胞活性が上方制御され、かつタンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により細胞活性が下方制御される、方法。
【請求項2】
内皮細胞が血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞活性が内皮細胞透過性である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
内皮細胞透過性が細胞間または細胞内である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
透過性がトロンビン誘導性血管内皮細胞透過性である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の上方制御であり、該上方制御を該内皮細胞へのタンパク質キナーゼCζをコードする核酸分子、その機能等価物、誘導体、もしくはホモログまたはタンパク質キナーゼCζ発現産物、またはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物の移入によって達成する、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
調整を、該内皮細胞と該タンパク質キナーゼCζ遺伝子の転写および/または翻訳の調節を調整するタンパク質性または非タンパク質性分子との接触によって達成する、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の上方制御であり、該上方制御を、該内皮細胞とタンパク質キナーゼCζ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子との接触によって達成する、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の下方制御であり、該下方制御を、該内皮細胞とタンパク質キナーゼCζ発現産物のアンタゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子との接触によって達成する、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
分子が、アンギオポイエチン-1またはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
分子が、塩化キレリスリンもしくはビシンドイルマレイミドIまたはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
分子が変異タンパク質キナーゼCζであり、該変異が活性化ループの410位でのトレオニン残基のアラニンへの置換によって特徴付けられる、請求項9記載の方法。
【請求項13】
内皮細胞活性がインビボで調整される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
内皮細胞活性がインビトロで調整される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物のタンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程を含む、哺乳動物の内皮細胞活性を調節する方法であって、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により該内皮細胞活性が上方制御され、かつタンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により該内皮細胞活性が下方制御される、方法。
【請求項16】
内皮細胞が血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
細胞活性が内皮細胞透過性である、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
内皮細胞透過性が細胞間または細胞内である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
透過性がトロンビン誘導性血管内皮細胞透過性である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の上方制御であり、該上方制御を該内皮細胞へのタンパク質キナーゼCζをコードする核酸分子、その機能等価物、誘導体、もしくはホモログまたはタンパク質キナーゼCζ発現産物、またはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物の移入によって達成する、請求項15〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
調整を、該内皮細胞と該タンパク質キナーゼCζ遺伝子の転写および/または翻訳の調節を調整するタンパク質性または非タンパク質性分子との接触によって達成する、請求項15〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の上方制御であり、該上方制御を、該内皮細胞とタンパク質キナーゼCζ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子との接触によって達成する、請求項15〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の下方制御であり、該下方制御を、該内皮細胞とタンパク質キナーゼCζ発現産物のアンタゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子との接触によって達成する、請求項15〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
分子が、アンギオポイエチン-1またはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
分子が、塩化キレリスリンもしくはビシンドイルマレイミドIまたはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
分子が変異タンパク質キナーゼCζであり、該変異が活性化ループの410位でのトレオニン残基のアラニンへの置換によって特徴付けられる、請求項23記載の方法。
【請求項27】
タンパク質キナーゼCζの機能活性を調整する工程を含む、哺乳動物の異常であるか、望ましくないか、不適切な内皮細胞活性によって特徴付けられる病態の治療および/または予防方法であって、タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御され、かつタンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により内皮細胞活性が下方制御される、方法。
【請求項28】
内皮細胞が血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項29】
細胞活性が内皮細胞透過性である、請求項25または26記載の方法。
【請求項30】
内皮細胞透過性が細胞間または細胞内である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
透過性がトロンビン誘導性血管内皮細胞透過性である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の上方制御であり、該上方制御を、哺乳動物へのタンパク質キナーゼCζをコードする核酸分子、その機能等価物、誘導体、もしくはホモログまたはタンパク質キナーゼCζ発現産物、またはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物の移入によって達成する、請求項27〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
調整を、哺乳動物への該タンパク質キナーゼCζ遺伝子の転写および/または翻訳の調節を調整するタンパク質性または非タンパク質性分子への移入によって達成する、請求項27〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の上方制御であり、該上方制御を、哺乳動物へのタンパク質キナーゼCζ発現産物のアゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子の移入によって達成する、請求項27〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
調整がタンパク質キナーゼCζ活性の下方制御であり、該下方制御を、哺乳動物へのタンパク質キナーゼCζ発現産物のアンタゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子の移入によって達成する、請求項27〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
分子が、アンギオポイエチン-1またはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
分子が、塩化キレリスリンもしくはビシンドイルマレイミドIまたはその機能誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物である、請求項35記載の方法。
【請求項38】
分子が変異タンパク質キナーゼCζであり、該変異が活性化ループの410位でのトレオニン残基のアラニンへの置換によって特徴付けられる、請求項35記載の方法。
【請求項39】
病態が炎症反応である、請求項29、30、31、33、または35〜38記載の方法。
【請求項40】
病態が望ましくない血管形成である、請求項29、30、31、33、または35〜38記載の方法。
【請求項41】
病態が、充実性腫瘍、血行性腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍、関節リウマチ、クローン病、アテローム性動脈硬化症、肥満症、子宮内膜症、眼球血管形成疾患、乾癬、顔面および体幹性毛細管拡張症、またはオスラー-ウェバー・ランジュー症候群である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
タンパク質キナーゼCζ活性の機能的に有効なレベルへの上方制御により内皮細胞活性が上方制御され、かつタンパク質キナーゼCζ活性の機能的に無効なレベルへの下方制御により内皮細胞活性が下方制御される、哺乳動物の内皮細胞活性の調節のための薬物の製造における機能的に有効なレベルのタンパク質キナーゼCζを調整することができる薬剤の使用。
【請求項43】
薬剤が、タンパク質キナーゼCζ遺伝子の転写および/または翻訳の調節を調整し、タンパク質キナーゼCζ活性のアゴニストとしてまたはタンパク質キナーゼCζ活性のアンタゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子である、請求項42記載の使用。
【請求項44】
アンタゴニストが、アンギオポイエチン-1、塩化キレリスリン、ビシンドイルマレイミドI、または活性化ループの410位でのトレオニン残基のアラニンへの置換によって特徴付けられる変異タンパク質キナーゼCζである、請求項43記載の使用。
【請求項45】
タンパク質キナーゼCζの機能的レベルへの上方制御により該内皮細胞活性が上方制御される、内皮細胞活性の調節のための薬物の製造におけるタンパク質キナーゼCζまたはタンパク質キナーゼCζをコードする核酸の使用。
【請求項46】
内皮細胞が血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞である、請求項42〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
内皮細胞活性が内皮細胞透過性である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
調整剤および一つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤を含む薬学的組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−504682(P2006−504682A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533068(P2004−533068)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001154
【国際公開番号】WO2004/022090
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(504363588)メドベット サイエンス ピーティーワイ. リミティッド (3)
【Fターム(参考)】