説明

再生エポキシ化触媒の製造方法

【課題】使用済みエポキシ化触媒より大きい選択性及び/又はより大きい活性を有する再生エポキシ化触媒を製造する方法を提供すること。
【解決手段】0.16kT/使用済みエポキシ化触媒1m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する或る量の使用済みエポキシ化触媒を供給する工程と、追加の銀を、前記使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、0.2重量%以上の量で使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程とを含むオレフィンオキシドの製造用再生エポキシ化触媒の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、再生(rejuvenated)エポキシ化触媒の製造方法に関する。本出願はまた、再生エポキシ化触媒を用いる1つ以上のオレフィンのエポキシ化方法に関する。本出願はまた、エポキシ化によって製造されたオレフィンオキシドを使用して1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、又はアルカノールアミンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンオキシド及び他のオレフィンオキシドは、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールエーテル、エチレンカーボネート、エタノールアミン及び洗剤のような化学薬品を製造するための供給原料として使用される重要な工業化学薬品である。オレフィンオキシドの一製造方法はオレフィンエポキシ化、即ち、オレフィンエポキシドをもたらす酸素でのオレフィンの接触部分酸化である。
【0003】
オレフィンエポキシ化では、オレフィン及び酸素を含有する原料が、一定の反応条件に維持された反応帯域内に含まれる触媒床上に通される。エポキシ化触媒は一般に、造形担体材料上に、触媒活性化学種、一般には第11族金属(特に、銀)及び促進剤(promoter)成分を含有する。
【0004】
エポキシ化中、触媒は、触媒の活性及び所望のオレフィンオキシドの形成での選択性の損失によって示される性能低下を受ける。活性の損失に対応して、エポキシ化反応温度は、オレフィンオキシドの生産速度が維持されるように上げられてもよい。商用反応器の運転は普通、反応温度に関して制限される。適用できる温度限界に達したとき、オレフィンオキシドの生産速度を低下させるか、オレフィンオキシドの生産がエポキシ化触媒の既存装填物を新鮮な装填物と交換するために中断しなければならないかのいずれかである。
【0005】
米国特許第4,529,714号明細書(「’714特許」)は、エチレンオキシドの製造に使用された銀含有担体触媒の再生方法を記載している。この方法は、失活触媒をカリウム、ルビジウム、又はセシウム化合物及び還元剤を含む溶液で処理する工程を含む。’714特許の実施例で、エチレンオキシド触媒は、おおよそ4年間の使用後に再生され、その間に「触媒活性」(即ち、選択性)は初期の81.5パーセント(218℃で)から76.7パーセント(247℃で)に下落した。’714特許、列4、11、16〜18;また表全域列3〜4を参照されたい。任意の温度で当該表に反映された「S%」での最大増加は、わずか3.2%(76.7から79.9への増加)である。
【0006】
大体において、エポキシ化触媒の選択性は、エポキシ化方法が商業的に魅力的であるかどうかを決定する。例えば、エポキシ化方法の選択性の1パーセント向上は、大規模エチレンオキシド・プラントの年間運転コストをかなり低減することができる。
【0007】
一層大きな選択性及び/又は一層大きな活性を有する再生エポキシ化触媒の製造方法が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第4,529,714号明細書
【特許文献2】米国特許第5380697A号明細書
【特許文献3】米国特許第5739075A号明細書
【特許文献4】EP−A−266015号明細書
【特許文献5】米国特許第6368998B号明細書
【特許文献6】米国特許第5801259A号明細書
【特許文献7】EP−A−3642号明細書
【特許文献8】米国特許第4822900A号明細書
【特許文献9】米国特許第6080897A号明細書
【特許文献10】米国特許第4845296A号明細書
【非特許文献1】「カーク−オスマー化学技術事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)」、第3版、第9巻、1980年、445−447頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、使用済みエポキシ化触媒を再生して、使用済みエポキシ化触媒より大きい選択性及び/又はより大きい活性を有する再生エポキシ化触媒を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、本発明は、0.16キロトン(「kT」)/使用済みエポキシ化触媒m(使用済みエポキシ化触媒1m、以下同じ)以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する或る量の使用済みエポキシ化触媒を提供する工程と、追加の銀を、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、0.2重量%以上の量で使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程とを含む再生エポキシ化触媒の製造方法を提供する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、1つ以上のオレフィンを含む原料を、本発明に従って製造された再生エポキシ化触媒の存在下に反応させる工程を含む1つ以上のオレフィンのエポキシ化方法を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、本発明に従って製造された再生エポキシ化触媒の存在下での1つ以上のオレフィンのエポキシ化方法によって得られたオレフィンオキシドを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、又はアルカノールアミンに転化する工程を含む、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、又はアルカノールアミンの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本出願は、使用済みエポキシ化触媒を再生して増加した選択性を示す再生エポキシ化触媒を製造する方法を提供する。
【0013】
一実施形態では、本出願は、使用済みエポキシ化触媒を再生して増加した活性を示す再生エポキシ化触媒を製造する方法を提供する。
【0014】
一実施形態では、本再生方法は、増加した選択性及び増加した活性の両方を示す再生エポキシ化触媒を製造する。
【0015】
本再生方法は有利には、使用された担体材料及び/又はドーパントを廃棄処分する必要性を減らし、それによって廃棄処分及び環境コストを低減することができる。
【0016】
本再生方法は有利には、新鮮な担体材料を入手する必要性とコストとを低減することによってエポキシ化方法の収益性を高めることができる。
【0017】
本再生方法の別の利点は、使用済みエポキシ化触媒から銀を回収するためのコストを負う必要がないことである。
【0018】
使用済みエポキシ化触媒の再生
エポキシ化反応が長時間行われた後に、エポキシ化触媒は使用済みになる。
【0019】
本明細書で用いるところでは、「使用済み」エポキシ化触媒は、0.16kT/触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有するエポキシ化触媒を意味する。
【0020】
エポキシ化触媒の活性及び/又は選択性は一般に、累積アルキレンオキシド生産量の増加と共に低下する。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、0.2kT/mの触媒もしくはそれ以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、0.3kT/触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、0.45kT/触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、0.7kT/触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、1kT/触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する。
【0021】
幾つかの実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、新鮮なときに、初期条件下において初期活性及び初期選択性を示す触媒であり、使用済みエポキシ化触媒は、(a)初期条件下での初期選択性と比較して2%以上の選択性の低下、及び(b)初期条件下での初期活性と比較して10℃以上の活性の低下からなる群から選択された1つ以上の性能低下を示す。これに関連して、長期使用は、触媒が「使用済み」になる唯一の理由ではない。例えば、「使用済み」触媒は被毒したか又は別の形で失活したかもしれない。有利な実施形態では、「使用済み」触媒は、比較的大きな累積アルキレンオキシド生産量のために、低下した活性及び/又は選択性を有する。
【0022】
特定の実施形態では、使用済み触媒は、初期条件下での初期選択性と比較して5%以上の選択性の低下を示す。別の実施形態では、使用済み触媒は、初期条件下での初期選択性と比較して8%以上の選択性の低下を示す。別の実施形態では、使用済み触媒は、初期条件下での初期選択性と比較して10%以上の選択性の低下を示す。
【0023】
エポキシ化触媒が使用済みになると、使用済みエポキシ化触媒は、本出願の再生方法にかけられてもよい。エポキシ化触媒の組成は、以下により詳細に記載される。
【0024】
基礎レベルで、本再生方法は、或る量の使用済みエポキシ化触媒を供給する工程と、或る量の追加の銀を使用済みエポキシ化触媒上に付着させて再生エポキシ化触媒を製造する工程とを含む。一実施形態では、再生方法は、1つ以上の再生用促進剤を使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程を更に含む。一実施形態では、再生方法は、1つ以上の再生用共促進剤(copromoter)及び/又は1つ以上の更なる再生用元素を使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程を更に含む。
【0025】
任意の洗浄
使用済みエポキシ化触媒上に1つ以上の「ドーパント」を付着させる前に使用済みエポキシ化触媒を洗浄することは必要ではないが、望ましいかもしれない。本明細書で用いるところでは、用語「ドーパント」は、追加の第11族金属を、及び所与の基材上に付着させた任意の他の再生用成分を意味する。
【0026】
使用済みエポキシ化触媒の洗浄は一般に、可溶性及び/又はイオン性物質のほとんどを使用済みエポキシ化触媒から除去するのに、そして洗浄使用済みエポキシ化触媒を製造するのに有効な条件下で行われる。
【0027】
洗浄剤は、例えば、水、塩などの添加剤を含む水性溶液、又は水性有機希釈剤であってもよい。水性溶液への包含に好適な塩には、例えば、アンモニウム塩が含まれる。好適なアンモニウム塩には、例えば、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、カルボン酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、及びそれらの組み合わせが含まれる。好適な塩にはまた、他のタイプの硝酸塩、例えば、硝酸リチウムなどの、アルカリ金属硝酸塩が含まれる。水性溶液への包含に好適な有機希釈剤には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、アセトン、又はメチルエチルケトンの1つ以上が含まれる。一実施形態では、水性液体は水である。別の実施形態では、水性液体は水性硝酸アンモニウム溶液である。
【0028】
使用済みエポキシ化触媒が洗浄される場合、洗浄は任意の好適な温度で行われる。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、高温で、例えば、30〜100℃の温度で洗浄される。一実施形態では、高温は35℃〜95℃である。洗浄は、使用済みエポキシ化触媒を水性液体とある時間接触させることを含んでもよい。接触時間は、接触時間が可溶性ドーパント及び/又はイオン性物質を使用済みエポキシ化触媒から除去するのに十分である限り重要ではない。一実施形態では、接触時間は24時間以下である。一実施形態では、接触時間は10時間以下である。一実施形態では、接触時間は5時間以下である。一実施形態では、接触時間は1時間以上である。一実施形態では、接触時間は0.25時間以上である。一実施形態では、接触時間は0.05時間以上である。
【0029】
接触時間の後、使用済みエポキシ化触媒から浸出された物質を含む液体は除去される。洗浄は、流出物の組成に全く変化がなくなるまで、例えば2又は3回、繰り返してもよい。使用済みエポキシ化触媒が洗浄された場合、洗浄使用済みエポキシ化触媒は、残っている洗液を除去するのに十分な温度及び時間加熱することによる更なる処理の前に乾燥してもよい。
【0030】
洗浄使用済みエポキシ化触媒の乾燥は必要ではない。しかしながら、乾燥は一般には100℃〜300℃の温度である時間行われる。この時間は重要ではない。一実施形態では、乾燥時間は10時間以下である。一実施形態では、乾燥時間は5時間以下である。一実施形態では、乾燥時間は0.05時間以上である。一実施形態では、乾燥時間は0.25時間以上である。一実施形態では、触媒は、流れる空気中触媒オーブンにて250℃で15分間乾燥する。
【0031】
一実施形態では、或る量の使用済みエポキシ化触媒ペレットが過剰の硝酸アンモニウム溶液に加えられてスラリーを形成する。好適な硝酸アンモニウム溶液は、硝酸アンモニウム溶液の総重量を基準として、0.001重量%以上の硝酸アンモニウム濃度を有する。好適な硝酸アンモニウム溶液は、85重量%以下の硝酸アンモニウム濃度を有する。有利な実施形態では、硝酸アンモニウム溶液は0.03重量%の硝酸アンモニウム濃度を有する。
【0032】
得られたスラリーは、80℃〜90℃の高温で加熱される。一実施形態では、高温はある時間維持される。好適な時間は、例えば、1時間以上である。一実施形態では、ペレットは処理前に乾燥する。一実施形態では、ペレットは新鮮な過剰の硝酸アンモニウム溶液に加えられ、80℃〜90℃の温度で再び加熱される。温度は再びある時間維持される。その後、硝酸アンモニウム溶液はデカンテーションされ、触媒ペレットは、室温(一般には15℃〜25℃)で別の過剰の硝酸アンモニウム溶液に浸漬される。一実施形態では、室温処理が繰り返される。
【0033】
本再生方法を行う前に触媒を乾燥することは必要ではない。一実施形態では、触媒は、前述のように、乾燥させる。
【0034】
再生方法
使用済みエポキシ化触媒は一般には既に、基礎量の1つ以上の第11族金属を含むであろう。再生方法の間、追加の1つ以上の第11族金属が使用済みエポキシ化触媒上に付着させ、再生エポキシ化触媒上に1つ以上の第11族金属の総量を生成する。
【0035】
本再生方法は、エポキシ化反応器の内部で又は外部で行われてもよい。再生方法は、使用済みエポキシ化触媒を、使用済みエポキシ化触媒上に1つ以上のドーパントを付着させるのに有効な付着条件下で、1つ以上のドーパントを付着させるための1つ以上の付着混合物と接触させる工程を含む。好適な付着法には、例えば、含浸、イオン交換などが含まれる。好適な含浸法には、例えば、真空含浸及び細孔容積含浸が含まれる。一実施形態では、付着法は含浸である。一実施形態では、付着法は真空含浸である。
【0036】
本再生方法はバッチ又は連続プロセスが可能である。
【0037】
追加の第11族金属の付着
本再生方法は、追加の1つ以上の第11族金属又は追加の1つ以上の陽イオン性第11族金属成分を使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程を含む。有利な実施形態では、再生方法は、1つ以上の再生用促進剤成分を、追加の第11族金属又は追加の陽イオン性第11族金属成分の付着と一緒に又はそれに続いて使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程と、追加の陽イオン性第11族金属成分を付着させる場合には、追加の陽イオン性第11族金属成分の少なくとも一部を還元する工程とを含む。
【0038】
追加の第11族金属は、使用済みエポキシ化触媒を、分散された第11族金属、例えば第11族金属ゾルを含有する液体を含む追加の第11族金属付着混合物と接触させ、そして追加の第11族金属を使用済みエポキシ化触媒上に残しながら、例えば蒸発によって、液体を除去することによって使用済みエポキシ化触媒上に付着させてもよい。有利な実施形態では、付着混合物は、追加の1つ以上の第11族金属を含む化合物又は錯体の溶液である。
【0039】
有利な実施形態では、追加の第11族金属は銀であり、付着混合物は銀付着混合物である。この実施形態では、銀付着混合物は一般に、1つ以上の銀化合物又は銀錯体を含む溶液である。
【0040】
このような付着は、所望量の追加の第11族金属の付着を行うために、2回以上、例えば2回又は3回実施しもよい。追加の第11族金属付着混合物は、分散剤及び安定剤などの、添加剤を含んでもよい。このような添加剤は、液体の除去後に、不活性雰囲気中で、例えば窒素もしくはアルゴン中で、又は酸素含有雰囲気、例えば空気もしくは酸素及びアルゴンを含む混合物中で、例えば100〜300℃、特に150〜250℃の温度で加熱することによって除去してもよい。
【0041】
追加の1つ以上の陽イオン性第11族金属成分は、1つ以上の追加の第11族金属について上記の手順を用いて使用済みエポキシ化触媒上に付着させられてもよい。還元剤は、追加の陽イオン性第11族付着混合物の前に、一緒に又はその後に適用されてもよい。
【0042】
一般には、追加の陽イオン性第11族付着混合物は、追加の陽イオン性第11族金属成分及び還元剤を含んでもよく、この場合、液体の除去及び追加の陽イオン性第11族金属成分の少なくとも一部の還元は同時に行ってもよい。このような付着は、所望量の追加の陽イオン性第11族金属の付着を行うために、2回以上、例えば2回又は3回実施されてもよい。追加の陽イオン性第11族金属成分には、例えば、非錯体形成又は錯体形成第11族金属塩、特に、陽イオン性第11族金属−アミン錯体が含まれる。
【0043】
液体成分を除した後、含浸した使用済みエポキシ化触媒は、不活性雰囲気中で、例えば窒素もしくはアルゴン中で、又は酸素含有雰囲気、例えば空気もしくは酸素及びアルゴンを含む混合物中で、100〜900℃、特に150〜300℃の温度で加熱してもよい。加熱は、一般に、追加の陽イオン性第11族金属−アミン錯体の少なくとも一部の還元を達成する。陽イオン性第11族金属−アミン錯体の例は、モノアミン又はジアミン、特に1,2−アルキレンジアミンと錯体を形成した陽イオン性第11族金属である。好適なアミンの例はエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、2.3−ブチレンジアミン、及びエタノールアミンである。例えば、トリアミン、テトラアミン、及びペンタアミンなどの、高級アミンが使用できる。還元剤の例は、オキザレート、ラクテート及びホルムアルデヒドである。
【0044】
陽イオン性第11族金属−アミン錯体及び還元剤を含む陽イオン性第11族付着混合物の更なる詳細については、本明細書に援用される、米国特許第5380697A号明細書、米国特許第5739075A号明細書、EP−A−266015号明細書、及び米国特許第6368998B号明細書参照。
【0045】
特に有利な追加の銀付着混合物には、例えば、追加の陽イオン性銀金属−アミン錯体を含む溶液が含まれる。有利な陽イオン性銀金属−アミン錯体溶液の製造は、実施例2に記載する。
【0046】
追加の銀付着混合物は使用済みエポキシ化触媒と接触させる。接触時間は変わってもよい。好適な接触時間には、例えば、1分以上が含まれる。一実施形態では、接触時間は24時間以下である。温度及び圧力は変化してもよい。
【0047】
エポキシ化反応器中で又はエポキシ化反応器の外部で行ってもよい、一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、使用済みエポキシ化触媒を本明細書に記載される1つ以上の付着混合物と接触する前にある時間排気される。
【0048】
一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は760mmHg(大気圧)未満に排気される。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は250mmHg未満に排気される。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は200mmHg以下に排気される。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は1mmHg以上に排気される。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は5mmHg以上に排気される。一実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は10mmHg以上に排気される。有利には、使用済みエポキシ化触媒は20mmHg以上に排気される。
【0049】
この実施形態では、付着混合物は、使用済みエポキシ化触媒が排気された後に担体材料と接触させられる。真空は、使用済みエポキシ化触媒を付着混合物と接触する前に解除してもよい。一実施形態では、真空は、使用済みエポキシ化触媒が付着混合物と接触している間中、維持される。この実施形態では、使用済みエポキシ化触媒を付着混合物と接触した後に、真空は解除される。
【0050】
使用済みエポキシ化触媒は、使用済みエポキシ化触媒中の細孔に付着混合物を含浸させ、中間使用済みエポキシ化触媒を生成するのに十分な接触時間、付着混合物と接触して維持されてもよい。具体的な接触時間は一般に含浸に重要ではない。一般な接触時間は30秒以上である。実際に、接触時間は一般に1分以上である。一実施形態では、接触時間は3分以上である。
【0051】
中間使用済みエポキシ化触媒は、任意の公知の方法を用いて過剰の付着液から分離してもよい。例えば、過剰の付着混合物は簡単に、中間使用済みエポキシ化触媒からデカンテーションしても、又は排水してもよい。更に迅速な分離のためには、過剰の付着混合物は、機械的手段によって除去してもよい。好適な機械的手段には、振盪、遠心分離などが含まれる。中間使用済みエポキシ化触媒は、乾燥してもよく、又は乾燥条件に曝してもよい。
【0052】
代案として、又は更に、追加の第11族金属は、当該技術分野で公知の蒸着技法によって使用済みエポキシ化触媒上に付着させられてもよい。
【0053】
再生方法中に付着させる追加の第11族金属が銀である場合、使用済みエポキシ化触媒上に付着させられる追加の銀の量は一般に、使用済みエポキシ化触媒の総重量を基準として、0.2重量%以上である。一実施形態では、追加の銀の量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、0.5重量%以上であってもよい。一実施形態では、追加の銀の量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、1重量%以上であってもよい。一実施形態では、追加の銀の量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、5重量%以上であってもよい。一実施形態では、追加の銀の量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、8重量%以上であってもよい。一実施形態では、追加の銀の量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、10重量%以上であってもよい。一実施形態では、追加の銀の量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、12重量%以上であってもよい。
【0054】
再生用レニウムの付着
本再生方法はまた、レニウムを付着させる工程を含んでもよい。レニウムが再生方法中に付着させる場合、付着させる追加のレニウムの量は、本明細書では「再生用レニウム」と称する。
【0055】
再生用レニウムの付着は、追加の第11族金属又は陽イオン性第11族金属成分の付着の前に、一緒に又はその後に行なってもよい。再生用レニウムは、1つ以上の第11族金属の付着について上記の手順を用いて付着させてもよい。
【0056】
特定の実施形態では、再生用レニウム付着混合物は、希釈剤を除去する前にある時間使用済みエポキシ化触媒との接触を保持してもよい。接触時間の継続期間は重要ではない。一実施形態では、接触時間は24時間以下である。一実施形態では、接触時間は5時間以下である。一実施形態では、接触時間は0.05時間以上である。一実施形態では、接触時間は0.25時間以上である。
【0057】
有利な実施形態では、使用済みエポキシ化触媒は、前述のように排気され、その後再生用レニウム混合物と接触させられる。この実施形態では、接触時間は短くされてもよい。温度は95℃以下、特に10〜80℃の範囲にあってもよい。
【0058】
好適な再生用レニウム混合物は一般には、水性液体に溶解したか又は分散した再生用レニウムを含む。好適な水性液体には、例えば、水又は水性有機希釈剤が含まれる。好適な水性有機希釈剤には、例えば、水とメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、又はメチルエチルケトンの1つ以上との混合物が含まれる。再生用レニウムが付着させられてもよい形態は、本発明には重要ではない。例えば、再生用レニウムは好適には、酸化物としてか又はオキシアニオンとして、例えば、塩もしくは酸形態でのレネート(rhenate)もしくはパーレネート(perrhenate)として提供されてもよい。再生用レニウムを付着させるための有利な溶液は、過レニウム酸アンモニウム溶液である。
【0059】
使用済みエポキシ化触媒は、基礎量のレニウムを含んでも又は含まなくてもよい。場合により付着させる再生用レニウムの量は一般に、0.1ミリモル/再生エポキシ化触媒kg(再生エポキシ化触媒1kg、以下同じ)以上である。一実施形態では、再生用レニウムの量は、2ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生用レニウムの量は、50ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。一実施形態では、再生用レニウムの量は、20ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。量は本明細書ではミリモル/kg及びμモル/gとして表される。1ミリモル/kg=1μモル/gであるので、数字は、含有率がμモル/gの観点から表されようと、ミリモル/kgの観点から表されようと同じである。
【0060】
付着は、所望量の再生用レニウムの付着を行うために、2回以上、例えば2回又は3回実施されてもよい。
【0061】
1つ以上の再生用共促進剤の付着
使用済みエポキシ化触媒は、基礎量の1つ以上の共促進剤を含んでも又は含まなくてもよい。レニウムが使用済みエポキシ化触媒上に既に存在する場合及び/又は再生用レニウムが使用済みエポキシ化触媒上に付着させられる場合、再生方法はまた、追加の量の1つ以上の再生用レニウム共促進剤を使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程を含んでもよい。
【0062】
特に、使用済みエポキシ化触媒がレニウムを含むとき、触媒は有利にはまた、再生用レニウム共促進剤を含んでもよい。好適な再生用レニウム共促進剤は、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リン、ホウ素、及びそれらの混合物から選択された元素を含む成分から選択されてもよい。好ましくは、再生用レニウム共促進剤は、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、及びそれらの混合物を含む成分から選択される。有利には、再生用レニウム共促進剤はタングステンを含む。
【0063】
再生用共促進剤成分の付着は、レニウムに関して上記の付着手順及び液体を用いて、1つ以上の追加の第11族金属もしくは追加の陽イオン性第11族金属成分及び/又は任意の再生用共促進剤成分の付着の前に、一緒に又はその後に達成されてもよい。
【0064】
再生用共促進剤成分が付着させられてもよい形態は本発明に重要ではない。例えば、再生用共促進剤成分は好適には、酸化物として又はオキシアニオンとして、塩又は酸形態で提供されてもよい。例えば、再生用共促進剤成分は、タングステン酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、硫酸塩、又はそれらの組み合わせとして提供されてもよい。タングステンを付着させるための有利な再生用共促進剤付着混合物は、タングステン酸アンモニウム溶液を含む。
【0065】
付着させる際、再生用共促進剤の好適な量は、使用済みエポキシ化触媒の細孔含浸に基づいて計算した再生触媒の重量を基準として、0.01ミリモル/kg以上である。一実施形態では、各再生用共促進剤の量は、同じ基準で0.1ミリモル/kg以上である。一実施形態では、各再生用共促進剤の量は、同じ基準で40ミリモル/kg以下である。一実施形態では、各再生用共促進剤の量は、同じ基準で20ミリモル/kg以下である。
【0066】
1つ以上の更なる再生用元素の付着
本再生方法はまた、1つ以上の更なる再生用元素を含む1つ以上の成分を使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程を含んでもよい。使用済みエポキシ化触媒は、基礎量の1つ以上の更なる元素を含んでも又は含まなくてもよい。
【0067】
望ましい更なる再生用元素は、窒素、フッ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、ガリウム、ゲルマニウム、及びそれらの混合物の群から選択されてもよい。好ましい再生用アルカリ金属は、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物から選択される。最も好ましい再生用アルカリ金属は、リチウム、カリウム、セシウム、及びそれらの混合物から選択される。好ましい再生用アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、バリウム、及びそれらの混合物から選択される。
【0068】
更なる再生用元素は場合により、任意の形態で付着させられてもよい。例えば、再生用アルカリ金属及び/又は再生用アルカリ土類金属の塩が好適である。好適な更なる液体再生用元素付着混合物は、水性液体、例えば水又は、例えば水とメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、アセトン又はメチルエチルケトンの1つ以上との混合物などの、水性有機希釈剤に溶解した又は分散した1つ以上の更なる再生用元素を含む成分を含む。付着は、更なる再生用元素を含む所望量の成分の付着を行うために、2回以上、例えば2回又は3回実施されてもよい。あるいはまた、1つ以上の異なる更なる再生用元素を含む、異なる成分が、異なる付着工程で付着させられてもよい。
【0069】
有利な実施形態では、再生用アルカリ金属及び/又は再生用アルカリ土類金属を付着させるための更なる再生用元素付着混合物は、金属水酸化物溶液である。
【0070】
更なる再生用元素を含む成分の付着は、追加の第11族金属又は追加の陽イオン性第11族金属成分の付着の前に、一緒に又はその後に、再生用レニウムの任意の付着の前に、一緒に又はその後に、及び再生用共促進剤成分の任意の付着の前に、一緒に又はその後に行なってもよい、上記の手順はまた、1つ以上の更なる再生用元素の付着にも適用できる。
【0071】
使用済みエポキシ化触媒上に付着させてもよい各種の更なる再生用元素の量は後述される。本明細書で用いるところでは、特に明記しない限り、エポキシ化触媒中に存在するアルカリ金属の量は、それがエポキシ化触媒から抽出できる限りの量であると考えられる。抽出は一般に、0.5gの触媒を25gの0.1重量%塩化ナトリウム溶液中で電子レンジにかけ、そして公知の方法、例えば原子吸光分光法を用いることによって関連金属を抽出液で測定する。
【0072】
本明細書で用いるところでは、特に明記しない限り、エポキシ化触媒中に存在するアルカリ土類金属の量は、それが100℃で脱イオン水中の10重量%硝酸でエポキシ化触媒から抽出できる限りの量であると考えられる。抽出法は、触媒の10グラムサンプルを、それを100ml部分の10重量%硝酸と30分間(1気圧、即ち、101.3kPa)沸騰させることによって抽出し、そして公知の方法、例えば原子吸光分光法を用いることによって関連金属を組み合わせた抽出液で測定する。このような方法の例については、本明細書に援用される米国特許第5801259A号明細書参照。
【0073】
リチウムを例外として、更なる再生用元素の量は、0.1ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上のであってもよい。一実施形態では、更なる再生用元素の量は50ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。
【0074】
更なる再生用元素は、1つ以上のアルカリ金属を含み、リチウムを例外として再生用アルカリ金属の量は一般に、0.1ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生エポキシ化触媒上のリチウム以外の再生用アルカリ金属の総量は、0.2ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生エポキシ化触媒上のリチウム以外の再生用アルカリ金属の総量は、50ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。一実施形態では再生エポキシ化触媒上のリチウム以外の再生用アルカリ金属の総量は、30ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。
【0075】
リチウムが再生用アルカリ金属として使用される場合、再生用リチウムの総量は、1ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生用リチウムの総量は、100ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。
【0076】
再生用セシウムを付着させる場合、再生用セシウムの量は、0.1ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生用セシウムの量は、0.2ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生用セシウムの量は、1ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生用セシウムの量は、50ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。一実施形態では、再生用セシウムの量は、30ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。一実施形態では、再生用セシウムの量は、10ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。
【0077】
再生用アルカリ土類金属を加える場合、再生用アルカリ土類金属の有利な量は、1ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以上である。一実施形態では、再生用アルカリ土類金属の量は、100ミリモル/再生エポキシ化触媒kg以下である。
【0078】
第11族金属、レニウム、共促進剤成分、及び更なる元素を含む1つ以上の成分の担体材料上への付着方法は、当該技術分野で公知であり、このような方法が本再生方法の実施に適用されてもよい。このような方法の例については、本明細書に援用される米国特許第5380697A号明細書、米国特許第5739075A号明細書、EP−A−266015号明細書、及び米国特許第6368998B号明細書参照。好適には、このような方法は、陽イオン性第11族金属−アミン錯体及び還元剤を含む液体混合物を微粒子担体材料に含浸させる工程を含む。
【0079】
一実施形態では、追加の銀、再生用リチウム、及び再生用セシウムが、使用済みエポキシ化触媒上に付着される。この実施形態では、追加の銀の量は有利には、再生エポキシ化触媒の12重量%以上である。この実施形態では、再生用セシウムの量は、300ppmw以上の抽出セシウムを生成する。一実施形態では、再生用セシウムの量は、370ppmw以上の抽出セシウムを生成する。一実施形態では、再生用セシウムの量は、600ppmw以下の抽出セシウムを生成する。一実施形態では、再生用セシウムの量は、520ppmw以下の抽出セシウムを生成する。この実施形態では、再生用リチウムの量は、40μモル/再生エポキシ化触媒gである。
【0080】
別の有利な実施形態では、再生方法は、レニウム、タングステン、セシウム、及びリチウムを含む成分の組み合わせと一緒に追加の銀を使用済みエポキシ化触媒上へ付着させる。一実施形態では、1つ以上のドーパントが、使用済みエポキシ化触媒を付着条件下において陽イオン性銀金属−アミン錯体溶液ならびに過レニウム酸アンモニウム溶液、タングステン酸アンモニウム溶液、水酸化リチウム溶液、水酸化セシウム溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された付着混合物と接触させることによって使用済みエポキシ化触媒上に付着させる。
【0081】
一実施形態では、追加の銀の有利な量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、8重量%以上である。再生用セシウムの有利な量は、300ppm〜1000ppmの抽出セシウムを生成する。再生用レニウムの有利な量は、使用済みエポキシ化触媒の細孔容積含浸によって計算して、1〜5ミリモル/再生エポキシ化触媒kgである。再生用タングステンの有利な量は、使用済みエポキシ化触媒の細孔容積含浸によって計算して、0.5〜5ミリモル/再生エポキシ化触媒kgである。再生用リチウムの有利な量は、使用済みエポキシ化触媒の細孔容積含浸によって計算して、10〜40ミリモル/再生エポキシ化触媒kgである。
【0082】
有利な実施形態では、追加の銀の量は、使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、8重量%以上であり、再生用セシウムの量は、600ppm〜650ppmの抽出セシウムを生成し、そして次の物質の量は、使用済みエポキシ化触媒の細孔容積含浸によって計算して、再生エポキシ化触媒の重量を基準として、以下に示す通りである:再生用レニウム、2ミリモル/kg以上、再生用タングステン、0.6ミリモル/kg以上、再生用リチウム、15ミリモル/g。
【0083】
付着条件はエポキシ化反応器の内部又は外部で作り出してよい。一実施形態では、付着条件はエポキシ化反応器中で作り出される。
【0084】
再生エポキシ化触媒は、増加した選択性、増加した活性、又は両方の組み合わせを示す。
本再生方法は、増加した選択性、増加した活性、又はそれらの組み合わせを示す再生エポキシ化触媒を製造する。本明細書で用いるところでは、選択率は、転化されたオレフィンの量に対する、形成されたオレフィンオキシドの量であり、モル%で表される。
【0085】
有利には、再生エポキシ化触媒は、使用済みエポキシ化触媒の選択率と比較して、1モル%以上の選択率の増加を示す。一実施形態では、再生エポキシ化触媒は、使用済みエポキシ化触媒の選択率と比較して、5モル%以上の選択率の増加を示す。一実施形態では、再生エポキシ化触媒は、使用済みエポキシ化触媒の選択率と比較して、7モル%以上の選択率の増加を示す。より有利には、再生エポキシ化触媒は、使用済みエポキシ化触媒の選択率と比較して、10モル%以上の選択率の増加を示す。更により有利には、再生エポキシ化触媒は、使用済みエポキシ化触媒の選択率と比較して、12モル%以上の選択率の増加を示す。
【0086】
一実施形態では、本出願は、使用済みエポキシ化触媒の活性を増加させる使用済みエポキシ化触媒の再生方法を提供する。再生エポキシ化触媒の増加した活性は、所与量のアルキレンオキシドを製造するために必要とされる温度(「製造温度」)の、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較した低下によって証明される。製造温度の5℃低下は、活性の5℃増加と同じである。
【0087】
一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して2℃以上だけ低下する。一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して3℃以上だけ低下する。一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して4℃以上だけ低下する。一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して5℃以上だけ低下する。一実施形態では、製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して8℃以上だけ低下する。一実施形態では、製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して9℃以上だけ低下する。
【0088】
一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して40℃以下だけ低下する。一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して20℃以下だけ低下する。一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して15℃以下だけ低下する。一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して12℃以下だけ低下する。一実施形態では、再生エポキシ化触媒の製造温度は、使用済みエポキシ化触媒の製造温度と比較して10℃以下だけ低下する。
【0089】
本再生方法は、エポキシ化触媒が前の再生の後に再び使用された後、逐次複数回行われてもよい。再生方法を完了した後、オレフィン及び酸素を含む原料を、任意の好適な方法を用いて再生エポキシ化触媒の存在下に反応させてもよい。
【0090】
使用済みエポキシ化触媒
本再生方法は、各種の使用済みエポキシ化触媒を再生するために用いてよい。一般には、エポキシ化触媒は、エポキシ化反応の条件下で固体である。一実施形態では、触媒は、エポキシ化反応器中で充填床を形成してもよい。
【0091】
一実施形態では、エポキシ化触媒は1つ以上の第11族金属を含む。一実施形態では、第11族金属は、銀及び金からなる群から選択されてもよい。好ましくは、第11族金属は銀を含む。特に、第11族金属は、金属として、第11族金属の総重量に対する銀金属の重量として計算して、少なくとも90重量%、更に特に少なくとも95重量%、例えば少なくとも99重量%、又は少なくとも99.5重量%の量で銀を含む。エポキシ化触媒は、硝酸温浸及び銀滴定によって測定されるように、第11族金属含有率が触媒の重量に対して少なくとも10g/kgであるときに、かなりの触媒活性を示す。好ましくは、触媒は、エポキシ化触媒の総重量を基準として、50〜500g/kg、より好ましくは100〜400g/kgの量で第11族金属を含む。前述のように、有利な実施形態では、第11族金属は銀である。
【0092】
エポキシ化触媒は場合によりレニウムを含んでもよい。幾つかの実施形態では、エポキシ化触媒は、第11族金属、任意のレニウム、及び1つ以上の共促進剤及び/又は1つ以上の更なる元素を含むいかなる任意の成分もその上に付着してよい担体材料を含んでもよい。レニウム、好適な共促進剤成分、及び1つ以上の更なる元素を含む好適な成分は、本明細書で前述した通りである。好適な担体材料は以下に説明する。
【0093】
エポキシ化触媒がレニウムを含む場合、エポキシ化触媒上に存在するレニウムの量は一般には、全触媒のキログラム当たり0.1ミリモル〜10ミリモルの範囲である。一実施形態では、エポキシ化触媒は、全触媒1kg当たり0.2ミリモル〜5ミリモルを含む。換言すれば、エポキシ化触媒は、全触媒百万重量部当たり19〜1860重量部(「ppmw」)のレニウムを含んでもよい。一実施形態では、エポキシ化触媒は37〜930ppmwを含んでもよい。
【0094】
望ましい更なる元素は本明細書で前述した通りである。リチウムを例外として、使用済みエポキシ化触媒上に存在する更なる元素の量は、使用済みエポキシ化触媒の総重量を基準として、約1ミリモル/kg以上であってもよい。一実施形態では、更なる元素の量は、同じ基準で約50ミリモル/kg以下である。リチウムが使用済みエポキシ化触媒上に存在する場合、リチウムの総量は同じ基準で一般に約1ミリモル/kg以上である。一実施形態では、リチウムの総量は同じ基準で約100ミリモル/kg以下である。更なる元素は、任意の形態で供給してよい。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩が好適である。
【0095】
ドーパントは、当該技術分野で公知の方法を用いて担体材料上に付着させてもよい。例えば、本明細書に援用される、米国特許第5380697A号明細書、米国特許第5739075A号明細書、EP−A−266015号明細書、及び米国特許第6368998B号明細書参照。好適には、本方法は、陽イオン性第11族金属−アミン錯体及び還元剤を含む液体混合物を微粒子担体材料に含浸させる工程を含む。
【0096】
担体材料
エポキシ化触媒は担体材料を含む。担体材料は、天然の又は人造の無機材料であってもよく、耐火材料、炭化ケイ素、粘土、ゼオライト、炭及びアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウムを含んでもよい。有利な実施形態では、担体材料は1つ以上の耐火材料を含む。好適な耐火材料の例には、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア及びシリカが挙げられる。有利な実施形態では、担体材料はα−アルミナである。この実施形態では、担体材料は、担体の重量に対して、一般には、少なくとも85重量%、更に一般には少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%のα−アルミナ、しばしば99.9重量%以下のα−アルミナを含む。α−アルミナの他の成分は、例えば、シリカ、アルカリ金属成分、例えばナトリウム及び/又はカリウム成分、及び/又はアルカリ土類金属成分、例えばカルシウム及び/又はマグネシウム成分を含んでもよい。
【0097】
担体材料の表面積は好適には、担体の重量に対して、少なくとも0.1m/g、好ましくは少なくとも0.3m/g、より好ましくは少なくとも0.5m/g、特に少なくとも0.6m/gであってもよく、表面積は、担体の重量に対して、10m/g以下、好ましくは5m/g以下、特に3m/g以下であってもよい。「表面積」は、本明細書で用いるところでは、米国化学協会誌(Journal of the American Chemical Society)60(1938年)、309−316頁)に記載されているようなB.E.T.(ブルナウアー、エメット及びテラー(Brunauer、Emmett及びTeller)法によって測定されるような表面積に関すると理解される。高い表面積の担体材料は、特にそれらが更にシリカ、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属成分を場合により含むα−アルミナであるとき、向上した性能及び操作の安定性を与える。
【0098】
担体材料の吸水率は一般には、0.2〜0.8g/gの範囲に、好ましくは0.3〜0.7g/gの範囲にある。より高い吸水率は、1つ以上のドーパントのより効率的な付着を考えると有利であるかもしれない。本明細書で用いるところでは、吸水率は、ASTM(米国材料試験協会)C20に従って測定される通りであり、吸水率は、担体の重量に対して、担体の孔中へ吸収され得る水の重量として表される。
【0099】
微粒子担体材料は、0.2〜10μmの範囲の直径の細孔が全細孔容積の少なくとも70%を表すような細孔径分布を有してもよい。このような比較的狭い細孔径分布は、触媒の活性、選択性及び寿命の1つ以上に寄与することができる。寿命は、触媒活性の維持及び/又は選択性の維持に関与するかもしれない。本明細書で用いるところでは、細孔径分布及び細孔容積は、マイクロメトリックス・オートポア(Micrometrics Autopore)9200モデル(130°接触角、0.473N/mの表面張力の水銀、及び加えた水銀圧縮の補正)を用いて3.0×10Paの圧力への水銀侵入によって測定される通りである。
【0100】
有利な実施形態では、細孔径分布は、0.2〜10μmの範囲の直径の細孔が全細孔容積の75%より多く、特に80%より多く、更に好ましくは85%より多く、最も好ましくは90%より多くを表すような分布である。しばしば、細孔径分布は、0.2〜10μmの範囲の直径の孔が全細孔容積の99.9%未満、更にしばしば99%未満を表すような分布である。
【0101】
有利な実施形態では、細孔径分布は、0.3〜10μmの範囲の直径の細孔が0.2〜10μmの範囲の直径の孔中に含有される細孔容積の75%より多く、特に80%より多く、より好ましくは85%より多く、最も好ましくは90%より多く、特に100%以下を表すような分布である。
【0102】
一般には、細孔径分布は、0.2μm未満の直径の細孔が全細孔容積の10%未満、特に5%未満であるような分布である。しばしば、0.2μm未満の直径の細孔は、全細孔容積の0.1%より多く、よりしばしば0.5%より多くを表す。
【0103】
一般には、細孔径分布は、10μmより大きい直径の細孔が全細孔容積の20%未満、特に10%未満、より特に5%未満を表すようなものである。しばしば、10μmより大きい直径の孔は、全細孔容積の0.1%より多く、特に0.5%より多くを表す。
【0104】
一般には、0.2〜10μmの範囲の直径の細孔は、少なくとも0.25ml/g、特に少なくとも0.3ml/g、更に特に少なくとも0.35ml/gの細孔容積を与える。一般には、0.2〜10μmの範囲の直径の孔は、0.8ml/g以下、更に一般には0.7ml/g以下、特に0.6ml/g以下の細孔容積を与える。
【0105】
エポキシ化方法
再生エポキシ化触媒は、エポキシ化方法を触媒するために使用してよい。エポキシ化方法は多くの方法で実施してよい。一実施形態では、エポキシ化方法は、気相プロセス、即ち、原料を、一般には充填床中に固体材料として存在するエポキシ化触媒と気相で接触させるプロセスである。一般に、エポキシ化方法は連続プロセスである。
【0106】
エポキシ化方法に使用するためのオレフィンは任意のオレフィンであってよい。好適なオレフィンには、芳香族オレフィン、例えばスチレン、又は共役していても共役していなくてもよいジオレフィン、例えば1,9−デカジエンもしくは1,3−ブタジエンが含まれる。一般には、オレフィンはモノオレフィン、例えば2−ブテン又はイソブテンである。一実施形態では、オレフィンはモノ−α−オレフィン、例えば1−ブテン又はプロピレンである。有利な実施形態ではオレフィンはエチレンである。
【0107】
エポキシ化方法への原料中のオレフィン濃度は、広い範囲内で選択されてもよい。一般には、原料中のオレフィン濃度は、全原料に対して80モル%以下である。一実施形態では、オレフィン濃度は、全原料に対して0.5〜70モル%である。一実施形態では、オレフィン濃度は、全原料に対して1〜60モル%である。本明細書で用いるところでは、原料は、エポキシ化触媒と接触させる組成物であると考えられる。
【0108】
エポキシ化方法は空気ベース又は酸素ベースであってもよく、「カーク−オスマー化学技術事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)」、第3版、第9巻、1980年、445−447頁を参照されたい。空気ベースの方法では、空気又は酸素に富む空気が酸化剤源として用いられるが、酸素ベースの方法では、高純度(95モル%以上)の酸素がエポキシ化剤源として用いられる。
【0109】
原料中の酸素濃度は、広い範囲内で選択してよい。しかしながら、実際には、酸素は一般に、引火性体系を回避する濃度で適用される。一般には、適用される酸素の濃度は、全原料の1〜15モル%、更に一般には2〜12モル%である。
【0110】
引火性体系外に保持するために、原料中の酸素の濃度は、オレフィンの濃度が増加するにつれて下げてもよい。実際の安全運転範囲は原料組成に依存し、また反応温度及び反応圧力などの反応条件にも依存する。
【0111】
選択性を増加させ、オレフィンオキシドの所望の形成に対して、オレフィン又はオレフィンオキシドの二酸化炭素及び水への望ましくない酸化を抑えるために、反応調整剤が原料中に存在してもよい。多くの有機化合物、特に有機ハロゲン化物及び有機窒素化合物が反応調整剤として用いてもよい。窒素酸化物、有機硝酸エステル、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アンモニア、又はそれらの組み合わせも同様にうまく用いられるかもしれない。本出願を理論に制約されるものではないが、オレフィンエポキシ化の運転条件下で窒素含有反応調整剤は硝酸エステル又は亜硝酸エステルの前駆体である、即ち、これらはいわゆる硝酸エステル−又は亜硝酸エステル−形成性化合物であるとしばしば考えられる(本明細書に援用される、例えばEP−A−3642号明細書及び米国特許第4822900A号明細書参照)。
【0112】
有利な実施形態では、反応調整剤は有機ハロゲン化物である。好適な有機ハロゲン化物には、例えば、有機臭化物及び有機塩化物が含まれる。有利な実施形態では、有機ハロゲン化物はクロロ炭化水素又はブロモ炭化水素である。特に有利な実施形態では、反応調整剤は、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、二臭化エチレン、塩化ビニル、及びそれらの混合物の群から選択される。特に有利な実施形態では、反応調整剤は塩化エチル及び二塩化エチレンである。
【0113】
好適な窒素酸化物は、一般式NO(式中、xは1〜2の範囲にある)のものであり、例えばNO、N及びNを含む。好適な有機窒素化合物は、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン、硝酸エステル及び亜硝酸エステルである。例えば、ニトロメタン、1−ニトロプロパン又は2−ニトロプロパンが挙げられる。有利な実施形態では、硝酸エステル−又は亜硝酸エステル−形成性化合物、例えば、窒素酸化物及び/又は有機窒素化合物は、有機ハロゲン化物、特に有機塩化物と一緒に使用される。
【0114】
反応調整剤は一般に、全原料に対して、例えば0.1モル%以下の、例えば0.01×10−4〜0.01モル%の原料中の濃度で使用されるときに有効である。オレフィンがエチレンである有利な実施形態では、反応調整剤は0.1×10−4〜50×10−4モル%の濃度で原料中に存在する。別の有利な実施形態では、反応調整剤は、全原料に対して、0.3×10−4〜30×10−4モル%の濃度で原料中に存在する。
【0115】
オレフィン、酸素、及び反応調整剤に加えて、原料は、二酸化炭素、不活性ガス、及び飽和炭化水素の1つ以上などの、1つ以上の任意の成分を含有してもよい。二酸化炭素はエポキシ化方法での副生物である。しかしながら、二酸化炭素は一般に、触媒活性に対し悪影響を及ぼす。一般には、全原料に対して、25モル%を超える原料中の二酸化炭素の濃度は避けられる。有利な実施形態では、全原料に対して、10モル%を超える原料中の二酸化炭素の濃度は避ける。全原料に対して、1モル%以下ほどに低い二酸化炭素の濃度を用いてよい。
【0116】
不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンが、30〜90モル%、一般には40〜80モル%の濃度で原料中に存在してもよい。
【0117】
原料中に存在してもよい好適な飽和炭化水素には、例えば、メタン及びエタンが含まれる。飽和炭化水素が存在する場合、これらは、全原料に対して、80モル%以下の量で存在してもよい。有利な実施形態では、飽和炭化水素は、全原料に対して、75モル%以下の量で存在する。しばしば、飽和炭化水素は、全原料に対して、30モル%以上、更にしばしば、40モル%以上の量で存在する。飽和炭化水素は、酸素引火性限界を上げるために原料に加えてもよい。
【0118】
エポキシ化方法は、広範囲から選択された反応温度を用いて実施してよい。有利な反応温度は150〜325℃の範囲にある。特に有利な実施形態では、反応温度は180〜300℃の範囲にある。
【0119】
有利には、エポキシ化方法は、1000〜3500kPaの範囲の反応器入口圧で実施される。「GHSV」又はガス空間速度は、1時間当たり1単位体積の充填触媒を通過する標準温度及び圧力(0℃、1気圧、即ち、101.3kPa)でのガスの単位体積である。有利には、エポキシ化方法が充填触媒床を含む気相プロセスである場合、GHSVは1500〜10000Nl/(l.h)の範囲にある。有利には、本方法は、1時間当たり触媒の1m当たり製造される0.5〜10キロモルのオレフィンオキシドの作業速度で実施される。一実施形態では、本方法は、1時間当たり触媒の1m当たり製造される0.7〜8キロモルのオレフィンオキシド作業速度で実施される。一実施形態では、本方法は、1時間当たり触媒の1m当たり製造される5キロモルのオレフィンオキシド作業速度で実施される。本明細書で用いるところでは、作業速度は、1時間当たり触媒の単位体積当たり製造されるオレフィンオキシドの量であり、選択率は、転化されたオレフィンのモル量に対して形成されたオレフィンオキシドのモル量である。
【0120】
製造されるオレフィンオキシドは、当該技術分野で公知の方法を用いることによって、例えば反応器出口流れからオレフィンオキシドを吸収することによって、及び場合により、蒸留によって水溶液からオレフィンオキシドを回収することによって反応混合物から回収してよい。オレフィンオキシドを含有する水溶液の少なくとも一部は、オレフィンオキシドを1,2−ジオール又は1,2−ジオールエーテルへ転化するための後続プロセスに適用されてもよい。
【0121】
1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、又はアルカノールアミンへのオレフィンオキシドの転化
エポキシ化方法で製造されたオレフィンオキシドは、従来法によって1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート又はアルカノールアミンへ転化してよい。
【0122】
1,2−ジオール又は1,2−ジオールエーテルへの転化は、熱的プロセスで又は酸性触媒もしくは塩基性触媒であってもよい触媒を用いることによって、例えばエチレンオキシドを水と反応させる工程を含んでよい。例えば、主として1,2−ジオールと、少量の1,2−ジオールエーテルとを製造するため、オレフィンオキシドは、100kPa絶対及び50〜70℃で、酸触媒、例えば全反応混合物を基準として0.5〜1.0重量%硫酸の存在下に液相反応で、又は好ましくは触媒の不存在下に、130〜240℃及び2000〜4000kPa絶対での気相反応で、10倍モル過剰の水と反応させてもよい。このような大量の水の存在は、1,2−ジオールの選択的形成を有利にするかもしれず、発熱反応のためのシンク(sink)として機能し、反応温度の調節に役立ち得る。水の割合が少ないと、反応混合物中の1,2−ジオールエーテルの割合が増加する。このようにして製造した1,2−ジオールエーテルは、ジエーテル、トリエーテル、テトラエーテル又はそれに続くエーテルであってよい。代わりの1,2−ジオールエーテルは、水の少なくとも一部をアルコールで置き換え、オレフィンオキシドをアルコール、特に、メタノール又はエタノールなどの、第一級アルコールで転化することにより製造してもよい。
【0123】
オレフィンオキシドは、二酸化炭素と反応させることによって相当する1,2−カーボネートに転化してもよい。所望ならば、1,2−ジオールは、その後1,2−カーボネートを水又はアルコールと反応させて1,2−ジオールを形成することによって製造してもよい。適用できる方法については、本明細書に援用される米国特許第6080897A号明細書参照。
【0124】
1,2−ジオール及び1,2−ジオールエーテル、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール及びエチレングリコールエーテルは、多種多様な工業的用途、例えば食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂システム、洗剤、熱伝導システムなどの分野で使用される可能性がある。1,2−カーボネート、例えばエチレンカーボネートは希釈剤として、特に溶剤として使用してもよい。エタノールアミンは、例えば、天然ガスの処理(「スイートニング」)に使用してもよい。
【0125】
アルカノールアミンへの転化は、例えば、オレフィンオキシドをアンモニアと反応させる工程を含んでよい。一般にはモノアルカノールアミンの製造を有利にするため、無水アンモニアが使用されるが、無水又は水性アンモニアを使用してもよい。アルカノールアミンへのオレフィンオキシドの転化に適用できる方法については、例えば、本明細書に援用される米国特許第4845296A号明細書参照。
【0126】
特に明記しない限り、本明細書に記載される有機化合物、例えばオレフィン、アルコール、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、アルカノールアミン及び有機ハロゲン化物は、一般には40個以下の炭素原子、更に一般には20個以下の炭素原子、特に10個以下の炭素原子、更に特に6個以下の炭素原子を有する。本明細書に定義されるところでは、炭素原子の数(即ち、炭素数)又は他のパラメーターについての範囲には、範囲の限界について明記された数が含まれる。
【0127】
1,2−ジオール及び1,2−ジオールエーテルは、多種多様な工業的用途、例えば食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂システム、洗剤、熱伝導システムなどの分野で使用される可能性がある。アルカノールアミンは、例えば、天然ガスの処理(「スイートニング」)に使用してもよい。
【0128】
好適な反応器
エポキシ化触媒の本再生方法は、オレフィンのエポキシ化に好適な任意の反応器中に存在するエポキシ化触媒で適用できるかもしれない。好適な反応器には、例えば、1つ以上のマイクロチャネル反応器、シェル−アンド−チューブ熱交換反応器、撹拌槽反応器、バブル塔又は凝縮装置が含まれる。本発明は、このような反応器もしくは凝縮装置の使用、又はこれらの方法での複数の反応器又は凝縮装置の使用を包含する。
【0129】
有利な反応器には、例えば、多管式熱交換器及びマイクロチャネル反応器の形態での反応器が含まれる。再生方法中に、エポキシ化触媒がエポキシ化反応器中に存在してもよいことは本発明の有利な態様である。有利な実施形態では、再生方法は多管式熱交換反応器の反応チューブで行われる。この態様は、エポキシ化触媒をエポキシ化反応器から取り出す必要性をなくし、また触媒は、オレフィン及び酸素からのオレフィンオキシドの製造の更なる期間中に使用するために再生後に適所に保持されたままであってもよい。
【実施例】
【0130】
以下の実施例は、本発明の利点を例示することを意図し、本発明の範囲を不当に限定することを意図しない。
【0131】
実施例1
使用済み触媒の洗浄
以下の実施例では、次の手順を用いて使用済み触媒を洗浄して洗浄使用済み触媒を製造し、それを、それぞれの使用済み触媒を再生する種々の試みに使用した。
【0132】
140gの使用済み触媒を202グラムの0.03重量%硝酸アンモニウム溶液に加えた。温度を85℃に上げ、85±5℃で1時間保持した。ペレットをデカンテーションし、空気流中250℃で15分間乾燥させた。触媒ペレットを200グラムの0.03重量%硝酸アンモニウムの新鮮な部分に加え、87.5℃(±5℃)で1時間加熱した。硝酸アンモニウム溶液をデカンテーションし、触媒ペレットを200gの0.03重量%硝酸アンモニウム溶液に室温で浸漬した。室温処理をもう1回繰り返した。最後に、使用済み触媒を250℃で15分間乾燥させた。この手順により、可溶性ドーパントの殆どがそれぞれの使用済み触媒から除去され、洗浄使用済み触媒が生成した。
【0133】
実施例2
銀原液の製造
本実施例は、以下の実施例に記載されるような様々な担体材料に含浸させるために使用される銀含浸原液の製造を記載する。
【0134】
5リットルのステンレススチール・ビーカー中で、415グラムの試薬グレード水酸化ナトリウムを2340mlの脱イオン水に溶解させた。溶液の温度を50℃に調節した。4リットルのステンレススチール・ビーカー中で1699グラムの硝酸銀を2100mlの脱イオン水に溶解させた。溶液の温度を50℃に調節した。水酸化ナトリウム溶液を、温度を50℃に維持しながら撹拌しながらゆっくりと硝酸銀溶液に加えた。生じたスラリーを15分間撹拌した。溶液のpHを、要求に応じてNaOH溶液を加えて10より上に維持した。フィルター・ワンド(wand)を使用し、引き続き除去液体の等容量の脱イオン水との交換を使用して液体を除去する工程を含む液体除去手順を用いた。本液体除去手順を、濾液の導電率が90マイクロ−モー(mho)/cm未満になるまで繰り返した。最後の液体除去サイクルの終了後、1500mlの脱イオン水を加え、次いで、これに撹拌しながら、かつ溶液を40℃(±5℃)に維持しながら100グラムずつ630グラムのシュウ酸二水和物(4.997モル)を添加した。溶液のpHを最後の130グラムのシュウ酸二水和物の添加の間中、監視して、確実にpHが長時間7.8未満にならないようにした。水をフィルター・ワンドで溶液から除去し、スラリーを30℃未満に冷却した。732グラムの92重量%エチレンジアミン(EDA)をゆっくり溶液に加えた。温度をこの添加の間中、30℃より下に維持した。混合物を機械的に撹拌するのに十分な液体が存在するまで、スパチュラを用いて混合物を手で混合した。
【0135】
実施例3
比較例
本比較例では、銀、レニウム、セシウム、及びタングステンでドープされたα−アルミナ担体を含む使用済みエポキシ化触媒(「比較触媒」)を再生する試みを行った。使用済みエポキシ化触媒は、2.4kT/触媒mの累積アルキレンオキシド生産量を有した。使用済み比較触媒の銀含有率は、使用済み比較触媒の総重量を基準として23重量%であった。銀含有率は、硝酸温浸及び銀滴定によって測定した。
【0136】
使用済み比較触媒のペレットを、実施例1に記載した手順を用いて洗浄し、洗浄使用済み比較触媒を製造した。添加剤入り使用済み比較触媒を、洗浄使用済み比較触媒上に以下のものを付着させることによって製造した:レニウム、タングステン、リチウム及びセシウム。添加剤入り比較触媒を製造するための付着液は銀を全く含有しなかった。
【0137】
付着液を、0.1731グラムのNHReOを2gの1:1EDA/HOに、0.0483gのメタタングステン酸アンモニウムを2gの1:1アンモニア/水に、及び0.2030gのLiOHxHOを水に溶解して製造した。追加の水を前述の溶液の混合物に加えて溶液重量を100グラムに調整した。得られた溶液を0.4639gの50重量%CsOH溶液と混合した。この組み合わせた付着混合物を使用して添加剤入り比較触媒を製造した。
【0138】
30グラムの洗浄比較触媒ペレットを20mmHgで1分間排気し、組み合わせた付着混合物を真空下のままの洗浄比較触媒ペレットに加えた。真空を解除し、生じた排気比較触媒ペレットを組み合わせた付着混合物に3分間接触させ、中間比較触媒ペレットを製造した。中間比較触媒ペレットを500rpmで2分間遠心分離して過剰の液体を除去し、遠心分離した中間比較触媒ペレットを製造した。遠心分離した中間比較触媒ペレットを振動振盪機に入れ、空気流中250℃で5.5分間乾燥させ、添加剤入り比較触媒ペレットを製造した。
【0139】
添加剤入り比較触媒ペレットの総重量を基準として、銀含有率は23重量%Agであり、セシウム含有率は650ppmのCs/gであった。添加剤入り比較触媒ペレットの銀及び抽出セシウム含有率は上記のように測定した。添加剤入り比較触媒ペレットはまた、細孔容積含浸に基づいて計算して、以下のものを含有していた:2.0μモルRe/添加剤入り比較触媒g、0.60μモルW/添加剤入り比較触媒g、及び15μモルLiOH/添加剤入り比較触媒g。
【0140】
再生触媒の製造
実施例4
実施例4及び5では、2つの使用済みエポキシ化触媒のペレットを、追加の銀の付着を含む再生方法にかけた。触媒の1つ(触媒A)は、銀、リチウム、及びセシウムでドープされたα−アルミナを含有していた。他の触媒(触媒B)は、銀、レニウム、タングステン、セシウム、及びリチウムでドープされたα−アルミナを含有していた。使用済みエポキシ化触媒は、0.16kT/触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有した。
【0141】
使用済み触媒A及びBの銀含有率を測定した。使用済み触媒A及びBのセシウム含有率を、実施例1に記載された手順を用いる洗浄の前及び後の両方に測定した。結果を次の表に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
再生触媒Aを製造するための組み合わせた付着液を、比重1.553g/ccの153グラムの銀原液、2gの1:1EDA/HO中の0.1978gのNHReOの溶液、2gの1:1アンモニア/水に溶解させた0.0552gのメタタングステン酸アンモニウム、及び、水に溶解させた0.231gのLiOH×HOを混合することによって製造した。追加の水を加えて溶液の比重を1.454g/ccに調整した。得られた溶液の50gを0.1616gの50重量%CsOH溶液と混合し、組み合わせた付着混合物を生成した。組み合わせた付着混合物を使用して再生触媒Aを製造した。
【0144】
30グラムの洗浄使用済み触媒Aのペレットを20mmHgに1分間排気し、組み合わせた付着混合物を真空下のままの洗浄使用済み触媒Aのペレットに加えた。次に真空を解除し、得られた使用済み触媒Aの排気ペレットを組み合わせた付着混合物に3分間接触させ、中間触媒Aを製造した。中間触媒Aのペレットを次に500rpmで2分間遠心分離して過剰の液体を除去した。得られた遠心分離した中間触媒Aのペレットを振動振盪機に入れ、空気流中250℃で5.5分間乾燥させ、再生触媒Aを製造した。
【0145】
再生触媒Aペレットの最終組成を測定した。再生触媒Aペレットは、再生触媒Aの総重量を基準として、23.5重量%のAg及び639ppmの抽出Cs/再生触媒gを含有していた。再生触媒Aペレットの銀及び抽出セシウム含有率は上記のように測定した。再生触媒Aペレットはまた、細孔容積含浸に基づいて計算して、以下のもの:2.0μモルRe/再生触媒A g、0.60μモルW/再生触媒A g、及び15μモルLiOH/再生触媒A gの再生触媒Aを含有していた。
【0146】
実施例5
再生触媒Bを製造するための付着混合物を、比重1.553g/ccの153グラムの銀原液、2gの1:1EDA/HO中の0.2037gのNHReOの溶液、2gの1:1アンモニア/水に溶解させた0.0568gのメタタングステン酸アンモニウム、及び水に溶解させた0.2390gのLiOHxHOを混合することによって製造した。追加の水を加えて溶液の比重を1.451g/ccに調整した。このような溶液の50グラムを0.1803gの50重量%CsOH溶液と混合し、組み合わせた付着混合物を生成した。この組み合わせた付着混合物を使用して再生触媒Bを製造した。
【0147】
30グラムの洗浄使用済み触媒Bペレットを20mmHgに1分間排気し、組み合わせた付着混合物を真空下のままの洗浄使用済み触媒Bペレットに加えた。真空を解除し、得られた使用済み触媒Bの排気ペレットを組み合わせた付着混合物に3分間接触させた。次に、この中間触媒Bのペレットを500rpmで2分間遠心分離して過剰の液体を除去した。遠心分離した中間触媒Bペレットを振動振盪機に入れ、空気流中250℃で5.5分間乾燥させた。
【0148】
再生触媒Bペレットの最終組成を測定した。再生触媒Bペレットは、再生触媒Bの総重量を基準として、21.9重量%のAg及び674ppmの抽出Cs/再生触媒gを含有していた。再生触媒Bペレットの銀及び抽出セシウム含有率は上記のように測定した。再生触媒Bペレットはまた、使用済み触媒Bの細孔容積含浸に基づいて計算して、以下のものを含有していた:2.0μモルRe/再生触媒B g、0.60μモルW/再生触媒B g、及び15μモルLiOH/再生触媒B g。
【0149】
結果を、実施例3の添加剤入り比較触媒の組成と一緒に、次の表に示す。
【0150】
【表2】

【0151】
以上から分かるように、触媒A及びBの銀及びセシウム含有率は、再生方法の結果として実質的に増加した。使用済みエポキシ化触媒についての実施例4での表を参照すると、再生触媒Aの銀含有率は9重量%だけ増加し、再生触媒Bの銀含有率は8.2重量%だけ増加した。両方とも洗浄後の使用済み触媒Aの抽出を基準として、再生触媒Aからの抽出セシウムは567ppmだけ増加し、再生触媒Bからの抽出セシウムは629ppmだけ増加した。洗浄前のそれぞれの使用済み触媒のセシウム含有率に基づいて、再生触媒Aからの抽出セシウムは313ppmだけ増加し、再生触媒Bからの抽出セシウムは280ppmだけ増加した。
【0152】
性能試験
試験手順
各種触媒を、選択性及び活性などの触媒特性を測定するために試験した。
【0153】
次の試験手順を以下の実施例で用いた。触媒を14〜20メッシュサイズに破砕した。3〜5gの破砕した触媒を、1/4インチ・ステンレススチールU形状チューブに装填した。チューブを融解金属浴(熱媒体)中に浸け、末端をガスフローシステムに連結した。使用した触媒の重量及び入口ガス流量を、粉砕されていない触媒について計算されるように、標準リットル/リットル/時間(Nl/l/h)単位で指定のガス空間速度を与えるように調節した。触媒充填密度及び銀充填が変化するにつれて、試験反応器に装填される触媒の量は変化した。
【0154】
実施例6
使用済み比較触媒(対照)を、エチレン及び酸素を含有する原料からエチレンオキシドを製造する能力について試験した。
【0155】
ガス空間速度は3300Nl/l/hであった。触媒充填は4.90グラムであった。ガス流量は16.9Nl/l/hであった。入口ガス圧は1550kPaであった。結果を、実施例11に見いだされた概要表に示す。
【0156】
実施例7
使用済み触媒Aの試験
本実施例では、触媒床に通される試験ガス混合物は、30容量%エチレン、8容量%酸素、5容量%二酸化炭素、57容量%窒素及び百万容量部当たり2.5容量部(ppmv)の塩化エチルで構成した。温度を4時間245℃で一定に保ち、次に、触媒が安定化し、かつ試験ガスの総容量を基準として、3.09容量%のエチレンオキシド(EO)の生産を達成するように調節した。触媒充填は3.93グラムであった。ガス流量は16.9Nl/l/hであった。入口ガス圧は1550kPaであった。結果を、実施例11に見いだされた概要表に示す。
【0157】
実施例8
使用済み触媒Bの試験
開始前に触媒を260℃で、窒素で3時間前処理した。次に試験ガス混合物を導入した。触媒床に通される試験ガス混合物は、30容量%エチレン、8容量%酸素、5容量%二酸化炭素、57容量%窒素及び百万容量部当たり2.5〜7.0容量部(ppmv)の塩化エチルで構成した。温度を4時間260℃で一定に保ち、次に、触媒が安定化しそして3.09容量%のEOの生産を達成するように調節した。塩化エチル濃度を、最高選択率を得るために変化させた。触媒充填は4.20gであった。ガス流量は16.9Nl/l/hであった。入口ガス圧は1550kPaであった。結果を、実施例11に見いだされた概要表に示す。
【0158】
実施例9
添加剤入り比較触媒の試験
触媒床に通される試験ガス混合物は、30容量%エチレン、8容量%酸素、5容量%二酸化炭素、57容量%窒素及び百万容量部当たり2.5〜7.0容量部(ppmv)の塩化エチルで構成した。温度を1時間245℃で、1時間255℃で、そして1時間255℃で一定に保ち、次に、触媒が安定化し、かつ3.09容量%のEOの生産を達成するように調節した。塩化エチル濃度を、最高選択率を得るために変化させた。触媒充填は4.90グラムであった。ガス流量は16.9Nl/l/hであった。入口ガス圧は1550kPaであった。結果を、実施例11に見いだされた概要表に示す。
【0159】
実施例10
再生触媒Aの試験
開始前に、再生触媒Aを、280℃で11.4%酸素、7%二酸化炭素及び81.6%窒素のガス混合物で3時間前処理した。次に反応器を240℃に冷却し、試験ガス混合物を導入した。触媒床に通される試験ガス混合物は、30容量%エチレン、8容量%酸素、5容量%二酸化炭素、57容量%窒素及び百万容量部当たり2.5〜7.0容量部(ppmv)の塩化エチルで構成した。温度を、触媒が安定化し、そして3.09容量%のEOの生産を達成するように調節した。塩化エチル濃度を、最高選択率を得るために変化させた。触媒充填は4.48gであった。ガス流量は16.9Nl/l/hであった。入口ガス圧は1550kPaであった。結果を、実施例11に見いだされた概要表に示す。
【0160】
実施例11
再生触媒Bの試験
開始前に、触媒を、280℃で11.4%酸素、7%二酸化炭素及び81.6%窒素のガス混合物で3時間前処理した。次に反応器を240℃に冷却し、試験ガス混合物を導入した。触媒床に通される試験ガス混合物は、30容量%エチレン、8容量%酸素、5容量%二酸化炭素、57容量%窒素及び百万容量部当たり2.5〜7.0容量部(ppmv)の塩化エチルで構成した。温度を、触媒が安定化しそして3.09容量%のEOの生産を達成するように調節した。塩化エチル濃度を、最高選択率を得るために変化させた。触媒充填は4.80gであった。ガス流量は16.9Nl/l/hであった。入口ガス圧は1550kPaであった。
【0161】
実施例6〜11の結果を下記表に示す。
【0162】
【表3】

【0163】
以上の結果は、レニウム、タングステン、リチウム、及びセシウムを含む成分の組み合わせを使用済み比較触媒上へ付着させても比較触媒を再生するのに有効ではなかったことを示す。しかし、レニウム、タングステン、リチウム、及びセシウムと一緒に追加の銀を付着させると、使用済み触媒A及び使用済み触媒Bの両方を再生するのに非常に有効であった。
【0164】
実施例12
実験を、銀、リチウム、及びセシウムでドープされたα−アルミナを含む十分に老化した使用済み触媒の活性に関する再生方法の影響を評価するために行った。使用済み触媒は、0.16kT/触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有した。190g〜195gの材料を含む4ミッド−トップ・チューブ部分の複合体を組み合わせ、25分間混転してカットを十分に混合した。450gの複合体を95℃の水の0.8L/分の流れで5時間洗浄して水溶性成分を除去した。洗浄複合体を次に120℃で2時間乾燥させた。
【0165】
乾燥複合体のサンプルに、洗浄複合体の重量を基準として、4.0重量%、8.0重量%、又は12.0重量%の銀を含浸させた。サンプルに、実施例2の銀原液及び実施例4に記載した手順を用いて含浸させた。含浸液のそれぞれはまた、両方とも再生触媒の重量を基準として、使用済みエポキシ化触媒の細孔容積含浸を基準として計算した各種量のセシウムと40μモル/gの量のリチウムとを含有していた。種々のセシウムレベルを下記表に示す。
【0166】
再生エポキシ化触媒及び使用済みエポキシ化触媒(顧客から受け取ったままの)を試験手順にかけた。試験ガス混合物は、30容量%エチレン、8容量%酸素、5容量%二酸化炭素、57容量%窒素、及び百万容量部当たり2.5容量部(ppmv)の塩化エチルで構成した。ガス空間速度(GHSV)は3300時間−1であった。作業速度は200kg/m/時間(12.5lb/ft/時間)であった。単位「kg/m/時間」は、粉砕されていない触媒について計算されるように、1立方メートルのエポキシ化触媒当たり1時間当たりに製造されるエチレンオキシドのキログラムを意味する。圧力を14.7バールg(210psig)に維持した。全ガス流量は281cc/分であった。温度を、触媒が安定化し、かつ3.1容量%のEOの生産を達成するように調節した。
【0167】
結果を下記表に示す。
【0168】
【表4】

【0169】
「新鮮な触媒」について示された選択率及び温度は、新鮮な触媒生産についての平均値である。12重量%の追加のAgを含み、370ppmw〜520ppmwの再生Csを含有する再生エポキシ化触媒は、新鮮な触媒と同様にうまく機能した。
【0170】
実施例13
12重量%の追加のAgと370ppmwの再生Csとを含む再生触媒(実施例12での触媒「I」)を、100M(メガ)lb/ftの触媒累積生産量を越えるまで高過酷度マイクロ反応器(HSM)試験にかけた。反応器に通される試験ガス混合物は、30容量%エチレン、8容量%酸素、5容量%二酸化炭素、57容量%窒素及び百万容量部当たり5.6容量部(ppmv)の塩化エチルで構成した。ガス空間速度(GHSV)は25000時間−1であった。酸素転化率は25%であり、それは、商用反応器チューブでの全体触媒ペレットの充填密度を基準として、おおよそ800kg/m/時間(50lb/ft/時間)のエチレンオキシド生産に等しい。圧力を14.7バールg(210psig)に維持した。
【0171】
図1は、新鮮な触媒の4試験についての及び再生高活性触媒についての累積エチレンオキシド生産量(Mlb/触媒ft)対選択率(%)のグラフである。図2は、試験手順の固有の統計的ばらつきの目安を与えるための、新鮮な触媒の4つの「同一」試験についての、及び再生高活性触媒についての累積エチレンオキシド生産量(Mlb/触媒ft)対触媒温度のグラフである。
【0172】
選択率低下率及び活性低下率の両方に関して、再生高活性触媒は、データの実験ばらつき内で新鮮な高活性触媒と同じく機能した。
【0173】
当業者ならば、多くの修正が本明細書に記載された実施形態に行われてもよいことを理解するであろう。本明細書に記載された実施形態は、例示的に過ぎないことを意図し、特許請求の範囲に定義した本発明を限定すると解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】新鮮な触媒の4試験についての及び実施例13での再生触媒についての累積エチレンオキシド生産量(Mlb/触媒ft)対選択率(%)のグラフである。100Mlb/触媒ft=1.6kT/触媒mである。
【図2】新鮮な触媒の4試験についての及び実施例13での再生触媒についての累積エチレンオキシド生産量(Mlb/触媒ft)対触媒温度(℃)のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.16kT/使用済みエポキシ化触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する或る量の使用済みエポキシ化触媒を供給する工程と、
追加の銀を、前記使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、0.2重量%以上の量で使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程と、
を含む再生エポキシ化触媒の製造方法。
【請求項2】
追加の銀を、前記使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、0.5重量%以上、特に1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、又は12重量%以上の量で付着させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追加の銀が追加の陽イオン性銀であり、そして前記追加の陽イオン性銀を還元する工程を更に含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記使用済みエポキシ化触媒上に或る量の再生用レニウムを付着させる工程を更に含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リン、ホウ素、及びそれらの混合物からなる群から選択された元素を含む或る量の1つ以上の再生用共促進剤成分を使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程を更に含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
窒素、フッ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、ガリウム、ゲルマニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択された或る量の1つ以上の更なる再生用元素を使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程を更に含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記更なる再生用元素がリチウム、カリウム、セシウム、及びそれらの混合物から選択された1つ以上の再生用アルカリ金属を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記再生用セシウムを0.1〜50ミリモル/再生エポキシ化触媒kgの量で付着させる工程を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記追加の銀を前記使用済みエポキシ化触媒上に付着させる前に前記使用済みエポキシ化触媒を洗浄する工程を更に含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記再生用レニウムを0.1〜20ミリモル/再生エポキシ化触媒kgの量で付着させる工程を含む請求項4〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記共促進剤を0.1〜20ミリモル/再生エポキシ化触媒kgの量で付着させる工程を含む請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
再生用リチウムを1〜100ミリモル/再生エポキシ化触媒kgの量で付着させる工程を含む請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記使用済みエポキシ化触媒が、0.2kT/使用済みエポキシ化触媒m以上、特に0.3kT/m以上、0.45kT/m以上、0.7kT/m以上、又は1kT/m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上のオレフィンを含む原料を、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法に従って製造された再生エポキシ化触媒の存在下に反応させる工程を含む1つ以上のオレフィンのエポキシ化方法。
【請求項15】
前記1つ以上のオレフィンがエチレンを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記オレフィンオキシドを水、アルコール、二酸化炭素、又はアミンと反応させて1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カーボネート、又はアルカノールアミンを形成する工程を更に含む請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
0.16kT/使用済みエポキシ化触媒m以上の累積アルキレンオキシド生産量を有する或る量の使用済みエポキシ化触媒を供給する工程と、
追加の銀を、前記使用済みエポキシ化触媒の重量を基準として、0.2重量%以上の量で前記使用済みエポキシ化触媒上に付着させる工程と、
1つ以上のオレフィン及び酸素を含む原料を、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によって得られた前記再生エポキシ化触媒の存在下に反応させてオレフィンエポキシドを製造する工程と、
を含む、再生エポキシ化触媒の存在下での1つ以上のオレフィンのエポキシ化方法。
【請求項18】
前記1つ以上のオレフィンがエチレンを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項14又は15に記載の再生エポキシ化触媒の存在下での1つ以上のオレフィンのエポキシ化方法によって得られたオレフィンオキシドを1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、又はアルカノールアミンに転化する工程を含む、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、又はアルカノールアミンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−525842(P2009−525842A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547741(P2008−547741)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/062391
【国際公開番号】WO2007/076390
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】