説明

再生化処理装置、及び再生化処理方法

【課題】 廃材等を乾留して得られる乾留ガスを再燃焼させる過程で、有機物を多量に含む有機廃材から放たれる悪臭成分、又は人畜有害な化学物質の熱分解を行える再生化処理装置、及び再生化処理方法を提供する。
【解決手段】 再生化処理装置10は、有機廃材Woを空気と共に密閉し保温する有機物貯留庫1と、木質廃材Wwを乾留して炭化物Cw及び乾留ガスGcを生成する炭化炉2と、炭化炉2の底部に接続された資源回収手段3と、乾留ガスGcを内部へ導入できる二次燃焼室4と、二次燃焼室4に空気を送風する送風手段5と、二次燃焼室4に火炎を噴射して乾留ガスGcの燃焼を助成する二次燃焼バーナ6と、乾留ガスGcの燃焼により発生する排ガスExで水Lを加熱する排熱利用熱交換器7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
廃材等をバイオマスとして有効利用できる再生化処理装置、及び再生化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献には、家屋解体廃材、流木、間伐材、剪定枝のような木質廃材をエネルギー源として利用する技術、又はこのような木質廃材を炭化する技術が各々開示されている。この他、廃材等を乾留する過程で排出される乾留ガス、及びその保有熱を再利用することに加え、廃材等を乾留して得られる炭化物を再生資源として生産する技術が周知である。
【特許文献1】特開2002−338223号公報
【特許文献2】特開2002−248453号公報
【特許文献3】特開2002−241761号公報
【特許文献4】特開2001−152161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、廃材等の処理又は再利用を専らとした従来の発想を転換し、廃材等を乾留して得られる乾留ガスを再燃焼させる過程で、有機物を多量に含む有機廃材から放たれる悪臭成分、又は人畜有害な化学物質の熱分解を行える再生化処理装置、及び再生化処理方法を提供する。更に具体的に述べるなら、本発明は、以下に列挙する顕著な効果の達成を目的とする。
【0004】
即ち、例えば繊維工場において重油ボイラー等の負担を軽減することにより、同ボイラーの燃料コストを削減し、二酸化炭素の排出量を低減する。同時に、上記の繊維工場に蒸気を供給することができる。また、炭化炉の排熱利用効率を高めること、及び有害物質の排出を防止することを企図して、二次燃焼室を摂氏800度以上の高温に保つようにする。また、食品残渣を主成分とするコンポスト(有機物)の化学反応が進行する過程で、同コンポストからの悪臭の発生を防止する。
【0005】
更に、コンポストを蒸気により乾燥することにより、コンポストが堆肥に変化する過程で腐敗化するという不具合を防止することができる。また、炭化物をコンポストに混合(10〜20%程度の割合)することにより、コンポストの水分調整を行うことができる。この場合、炭化物が分解菌繁殖床となり得る。また、当該処理装置から得られる温水(摂氏36〜40度)を利用することで有機物貯留庫の保温を実現し、夏場と冬場を通じて有機物貯留庫における堆肥等の生産性の向上と安定を図ることができる。また、上記の温水を利用することで、有機物貯留庫の湿度を制御するようにしても良い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る再生化処理装置は、有機廃材を空気と共に密閉し保温することにより前記有機廃材の化学反応を促す有機物貯留庫と、木質廃材を乾留して炭化物及び乾留ガスを生成する炭化炉と、前記乾留ガスを導入できる二次燃焼室と、前記有機物貯留庫内の空気を前記二次燃焼室へ送風する送風手段と、前記二次燃焼室に火炎を噴射して前記乾留ガスの燃焼を助成する二次燃焼バーナとを備え、前記有機廃材の化学反応に伴い前記有機物貯留庫内の空気中に放たれる化学物質を、前記送風手段により前記二次燃焼室へ空気と共に誘引し、前記二次燃焼室で前記乾留ガスが燃焼する過程で、前記化学物質を熱分解することを特徴とする。
【0007】
更に、本発明に係る再生化処理装置は、前記乾留ガスの燃焼により発生する排ガスで水を加熱する排熱利用熱交換器を備えることを特徴とする。
【0008】
更に、本発明に係る再生化処理装置は、前記炭化物を前記炭化炉から搬出する資源回収手段を備えることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明に係る再生化処理装置は、前記排熱利用熱交換器が、蒸気を発生する蒸気発生熱交換器を備えることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明に係る再生化処理装置は、前記排熱利用熱交換器で加熱された水と、前記有機物貯留庫の空気との間の熱交換により、前記有機物貯留庫を保温する暖房用熱交換器を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る再生化処理方法は、有機廃材を空気と共に密閉し保温することにより前記有機廃材の化学反応を促すステップと、前記有機廃材を乾留して炭化物及び乾留ガスを生成するステップと、前記有機廃材の化学反応に伴い空気中に放たれる化学物質を乾留ガスに混合するステップと、前記乾留ガスを燃焼させることにより前記化学物質を熱分解するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
更に、本発明に係る再生化処理方法は、前記炭化炉から前記炭化物を搬出し、該炭化物の一部を前記有機廃材に混合することを特徴とする。
【0013】
更に、本発明に係る再生化処理方法は、前記乾留ガスの燃焼により発生する排ガスにて水を加熱し、該加熱された水により前記有機廃材を保温することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明に係る再生化処理方法は、前記乾留ガスの燃焼により発生する排ガスで水を加熱することにより蒸気を発生し、該蒸気により前記有機廃材を乾燥させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る再生化処理装置、及び再生化処理方法によれば、食品残渣、排泄物のような有機物、又はこれらが豊富に含まれる有機廃材を、空気と共に有機物貯留庫に密閉し保温することにより、有機廃材が醗酵する等の化学反応を促進することができる。
【0016】
更に、本発明に係る再生化処理装置、及び再生化処理方法によれば、上記例示の木質廃材を炭化炉で乾留する過程で乾留ガスを生成し、その結果得られる炭化物を資源回収手段によって炭化炉から搬出できる。このように、木質廃材に含まれる炭素を炭化物として固定化することで、木質廃材を焼却処分する場合に比較して、大気に放出される二酸化炭素の量を大幅に低減することができる。
【0017】
また、上記の炭化炉から搬出される炭化物の一部を、有機物貯留庫の有機廃材に混合しても良い。この場合、炭化物は多孔質であるので、有機廃材から放たれる悪臭成分、又は人畜有害な化学物質を吸収し、このような悪臭等を根本から緩和することができる。更に、有機廃材に混合された炭化物は、有機廃材の余計な水分を吸収し、また有益な細菌類を発生させるための菌床になり得るという利点がある。この利点は、特に有機物貯留庫が肥料を生産するためのコンポストハウス(堆肥倉庫)である場合に、肥料の品質向上に大いに貢献する。
【0018】
以上のように炭化物を有機物貯留庫に還元できるので、有機廃材の化学反応を良好な条件で行うために必要となる原料は、総て再生化処理装置の生産物だけで賄うことができる。従って、当該再生化処理装置を運転するためのランニングコストを最小限に抑えることができる。
【0019】
しかも、当該再生化処理装置、及び再生化処理方法によれば、乾留ガスを二次燃焼室へ導入しながら、送風手段によって空気を二次燃焼室へ送風するので、この二次燃焼室に二次燃焼バーナから火炎が噴射されると、乾留ガスの燃焼が助成されることになる。そして、排熱利用熱交換器が、乾留ガスの燃焼により発生する排ガスで水を加熱し、蒸気又は熱湯を得ることができるので、当該再生化処理装置はボイラの役割を担うことができる。
【0020】
一方、有機物貯留庫における化学反応に伴い空気中に放たれる化学物質を、送風手段が空気と共に二次燃焼室へ誘引するので、上記のように二次燃焼室にて乾留ガスが燃焼する過程で、化学物質が熱分解されることになる。従って、有機物貯留庫が、例えばコンポストハウスのように排泄物、又は生ゴミ等を醗酵させる施設である場合に、これらの有機廃材から放たれる悪臭成分、又は人畜有害な化学物質を二次燃焼室にて熱分解できるので、上記例示の施設が住宅地等の付近に建設されても、これらの施設から悪臭等が放たれるという問題を解消することができる。
【0021】
更に、本発明に係る再生化処理装置、及び再生化処理方法によれば、排熱利用熱交換器で加熱された水(蒸気、又は熱湯)と、有機物貯留庫の空気との間の熱交換を、暖房用熱交換器を介して行うことにより、有機物貯留庫を保温できるので、冬季に温度が低下しがちな有機物貯留庫内の空気を暖め、有機廃材の化学反応を促すことができる。このように、有機物貯留庫内の空気を暖めるのに、当該再生化処理装置から供給される熱以外に、電力等を使用しなくて済むので、当該再生化処理装置と有機物貯留庫とを含めた設備全体のランニングコストを大幅に低減することができる。
【0022】
更に、本発明に係る再生化処理装置、及び再生化処理方法によれば、排熱利用熱交換器で水を加熱して得られる蒸気により、有機物貯留庫の有機廃材を乾燥させられるので、有機物貯留庫に貯留する有機廃材の含水率を所望に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る再生化処理装置を図面に基づいて説明する。以下で、本発明の属する技術分野の常識に照らして自明の装置は、その呼称のみを記し詳細な図示又は説明を省略する。また、当該再生化処理装置の構成要素となる個々の装置は配管等により接続されるが、配管等は特に断らない限り、符号を添えた矢印として図示する。
【0024】
また、当該再生化処理装置の説明の文中に記す「廃材」とは、エネルギー源(バイオマス)としての利用が可能なあらゆる資源の総称である。例えば、生ゴミ等の食品残渣、又は排泄物のように、化学反応が起こり易い有機物、又はこれを多量に含むもを有機廃材と記す。例えば家屋解体廃材、流木、間伐材、又は剪定枝等を木質廃材と記す。
【0025】
図1は、再生化処理装置10の概略を示している。再生化処理装置10は、有機廃材Woを空気と共に密閉し保温する有機物貯留庫1と、木質廃材Wwを乾留して炭化物Cw及び乾留ガスGcを生成する炭化炉2と、炭化炉2の底部に接続された資源回収手段3と、乾留ガスGcを内部へ導入できる二次燃焼室4と、二次燃焼室4に空気を送風する送風手段5と、二次燃焼室4に火炎を噴射して乾留ガスGcの燃焼を助成する二次燃焼バーナ6と、乾留ガスGcの燃焼により発生する排ガスExで水Lを加熱する排熱利用熱交換器7とを備えるものである。
【実施例1】
【0026】
再生化処理装置10を実施例として更に詳しく説明する。即ち、再生化処理装置10は、木質廃材Wwを破砕機を用いて予め破砕することにより、大きさの一様な木屑チップを形成し、木屑チップの様態となった木質廃材Wwをチップホッパー11に蓄積できるようにしている。再生化処理装置10を稼動させるには、先ず、チップホッパー11の底部から木質廃材Wwを傾斜型コンベア12上に投下し、木質廃材Wwを傾斜型コンベア12によって炭化炉2の上方まで搬送する。これにより、木質廃材Wwは、傾斜型コンベア12の終端から落下し、炭化炉2の上部に開放した炉口を経て、炭化炉2の内部へ投入されることになる。
【0027】
続いて、炭化炉2の内部が適量の木質廃材Wwで満たされたところで、炭化炉2の炉口を閉蓋する等して炭化炉2を密閉することにより、炭化炉2の外部の空気から木質廃材Wwを遮断する。この状態で、灯油バーナ等を用いて炭化炉2の内部の木質廃材Wwに種火を着火すると、種火が炭化炉2の内部の木質廃材Wwの全体へ徐々に延焼しながら、木質廃材Wwが乾留されて炭化物Cwとなる。炭化炉2の内部の木質廃材Wwの大部分が炭化物Cwになる時期を見計らって、資源回収手段3を駆動させると、炭化物Cwが、資源回収手段3よって炭化炉2の底部から搬出される。図示の資源回収手段3は、炭化物Cwを次工程を行う場所まで搬送するためのスクリューコンベアである。
【0028】
以上のように、木質廃材Wwに含まれる炭素を炭化物Cwとして固定化することで、木質廃材を焼却処分する場合に比較して、大気に放出される二酸化炭素の量を大幅に低減することができる。また、再生化処理装置10が傾斜型コンベア12と資源回収手段3を具備することで、炭化物Cwの原料の調達に加えそれを炭化炉2へ投入するまでの事前作業と、炭化物Cwを炭化炉2から搬出する作業から、完全に人手を省くことができる。しかも、以上のように、大きさの一様な木屑チップを炭化物Cwの原料とすることで、炭化物Cwが炭化炉2から搬出された時点で、炭化物Cwの形状が一様に揃うため、炭化物Cwをその大きさや形状に従って選別する手間を軽減できる。
【0029】
また、炭化炉2から搬出された炭化物Cwを、それぞれの大きさに従って正確に揃える必要があるならば、炭化物Cwを資源回収手段3からベルトコンベア31に載せ換え、炭化物Cwを更にベルトコンベア31から篩装置8まで搬送しても良い。篩装置8は、ベルトコンベア31の終端から落下する炭化物Cwを、網目の大きさが互いに異なる数種類の金網の何れかに通過させ、個々の金網の真下に配置されたバケット毎に、上記の網目の大きさ毎に篩い分けされた炭化物Cwを受け止めるものである。
【0030】
更に、炭化炉2の内部における木質廃材Wwの乾留に伴って、木質廃材Wwから乾留ガスGcが排出される。この乾留ガスGcは、炭化炉2の上部に接続した排気管21を通り二次燃焼室4の内部へ達する。同時に、送風手段5は、乾留ガスGcの燃焼に必要な量の空気を二次燃焼室4の内部へ送風する。送風手段5は、有機物貯留庫1の内部に通じる悪臭空気路A、及び二次燃焼室4の周辺に開放した吸引口が、ダンパを介して各々接続されたエアブロワを主体とする。このダンパを切換えることにより、送風手段5が二次燃焼室4へ送風する空気を、有機物貯留庫1の内部の空気、又は二次燃焼室4の周辺の空気の何れかに選択することができる。
【0031】
以上のように、乾留ガスGcを二次燃焼室4へ導入しながら、送風手段5によって空気を二次燃焼室4へ送風する過程で、二次燃焼バーナ6は、液化石油ガスを燃料とする火炎を二次燃焼室4の内部へ噴射する。これにより、二次燃焼室4の内部で乾留ガスGcの燃焼が助成されることになる。更に、乾留ガスGcの燃焼により発生する排ガスExは、二次燃焼室4の排気管41を通り、排熱利用熱交換器7へ達する。符号13は、ブロワを主体とする排風機を指している。排風機13は、排ガスExを排熱利用熱交換器7から強制的に引き出すと共に、排ガスExを排気塔14を経て大気中へ放出させる。
【0032】
一方、有機物貯留庫1において有機廃材Woが醗酵する等の化学反応が進行すると、これに伴い有機物貯留庫1の内部の空気中に、悪臭の原因となる悪臭成分、又は人畜有害な化学物質が放たれる。これらの悪臭成分又は化学物質は、送風手段5によって二次燃焼室4へ送風される有機物貯留庫1の内部の空気と共に、二次燃焼室4へ誘引される。これにより、上記の悪臭成分又は化学物質は、二次燃焼室4で乾留ガスGcが燃焼する過程で確実に熱分解されることになる。
【0033】
従って、再生化処理装置10によれば、有機物貯留庫1が、例えば排泄物、又は生ゴミ等を醗酵させるコンポストハウスのような施設である場合に、有機廃材Woから放たれる悪臭成分又は化学物質を、二次燃焼室4の内部で完全に熱分解した後で排気塔14から大気へ放出することができる。このため、上記例示の施設が住宅地等の付近に建設されても、これらの施設から悪臭等が放たれるという問題を解消することができる。
【0034】
他方、排熱利用熱交換器7は、排ガスExの流れに対して、上流側に蒸気発生熱交換器71を配置し、下流側に温水熱交換器72を配置した2連の冷却塔である。排熱利用熱交換器7によれば、排ガスExが蒸気発生熱交換器71、及び温水熱交換器72を順に通過する間に、排ガスExの保有熱により水Lを加熱できる。蒸気発生熱交換器71は蒸気Sを発生し、温水熱交換器72は温水Hを発生する。水Lとしては、工業用水を利用しても良いが、再生化処理装置10の近辺に井戸が掘れる場合、この井戸からポンプPで汲み上げた地下水を排熱利用熱交換器7に給水すれば、再生化処理装置10のランニングコストを積極的に低減することができる。
【0035】
また、排熱利用熱交換器7で発生される蒸気Sの温度又は使途は、何ら限定されないが、例えば繊維の乾燥に供するために、蒸気Sを繊維工場Fへ供給しても良い。或いは、蒸気Sを蒸気乾燥装置9へ供給しても良い。この場合、蒸気乾燥装置9に、過剰な水分を含む有機廃材Woを投入すれば、このような有機廃材Woを適度に乾燥、又は加熱殺菌することができる。
【0036】
更に、再生化処理装置10によれば、上記のように有機物貯留庫1の内部で化学反応が進行する有機廃材Woに、炭化炉2から搬出される炭化物Cwの一部を混合しても良い。この場合、炭化物Cwは多孔質であるので、有機廃材Woから放たれる悪臭成分、又は人畜有害な化学物質を吸収し、このような悪臭等を根本から緩和できる。更に、有機廃材Woに混合された炭化物Cwは、有機廃材Woの余計な水分を吸収し、また有益な細菌類を発生させるための菌床になり得るという利点がある。この利点は、特に有機物貯留庫1が肥料を生産するためのコンポストハウスである場合、肥料の品質向上に大いに貢献する。符号16は、炭化物Cwを有機物貯留庫1へ搬送するためのベルトコンベアである。
【0037】
以上のように炭化物Cwを有機物貯留庫1に還元できるので、有機廃材Woの化学反応を良好な条件で行うために必要となる原料は、総て木質廃材Wwだけで賄うことができる。従って、再生化処理装置10を運転するためのランニングコストを最小限に抑えることができる。
【0038】
また、図2の符号15は、排熱利用熱交換器7から供給される温水Hと、有機物貯留庫1の内部の空気との間で熱交換をする暖房用熱交換器を指している。排熱利用熱交換器7で加熱された温水Hを、排熱利用熱交換器7と暖房用熱交換器15の間で循環させれば、温水Hを利用して有機物貯留庫1の保温が行えるので、冬季に温度が低下しがちな有機物貯留庫1の内部の空気を暖め、有機物の化学反応を促すことができる。しかも、有機物貯留庫1の内部の空気を暖めるのに、再生化処理装置10から供給される熱以外に、電力等を使用しなくて済むので、再生化処理装置10と有機物貯留庫1とを含めた設備全体のランニングコストを大幅に低減することができる。
【0039】
尚、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できるものである。例えば、蒸気発生熱交換器71の蒸気は有機廃材Woを乾燥させることに限らず、有機物貯留庫1の空気を加湿するのに利用しても良い。
【0040】
また、既存のゴミ焼却炉では、ダイオキシン対策のために有効な熱利用、又は省エネ化が阻まれてきたが、再生化処理装置10の排熱利用熱交換器7は、既存のゴミ焼却炉に適用さされる減温塔を僅かに改良するだけ簡単に構築することができる。即ち、既存のゴミ焼却炉では、排ガスExに含まれるダイオキシンを低減するため、その炉内で排ガスExを摂氏850度以上で2秒以上滞留させた後、減温塔を用いて摂氏300度以下まで急減温する。このような方法は、ダイオキシン対策として最も簡単で且つ低コストであるが、排ガスExの温度を大幅に低下させることが避けられないので、その排熱を熱利用しても摂氏60度前後の温水しか得られない。これでは、所謂バイオマス利用装置としての機能は期待できない。
【0041】
そこで、本発明では、熱をより高い温度で回収することでその利用価値を高め、採算性を向上できるという観点から、排熱利用熱交換器7として、減温塔レトロフィットボイラと称されるものを適用した。これは、図示のように、既成の縦型円筒状の冷却塔に、貫流型の熱交換器を挿入するという最小限の改良によって製造されたものであるが、高温における熱回収(蒸気発生)を可能にすることに加え、排ガスExを急冷してダイオキシンの再合成を抑制するという利点を兼ね備えている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
例えば下水処理場、公衆浴場、ゴミ焼却施設、旅館等の宿泊施設の廃水処理場のように、蒸気又は温水の供給ができるボイラ等を必要とする施設に、本発明に係る再生化処理装置を設置すれば、蒸気又は温水の供給を、既存のボイラ等にのみ依存することなく、その供給の一部を当該再生化処理装置により賄うことができる。
【0043】
従って、当該再生化処理装置、及び再生化処理方法は、化石燃料の消費量を節約し、大気中への二酸化炭素の放出量を低減するのに有益な技術である。しかも、当該再生化処理装置は、上記例示の施設の他、公衆便所、又は食品加工工場等から排出される悪臭、又は化学物質を、乾留ガスの燃焼に伴わせて確実に分解することができるので、総合的な生活環境の保全に有益な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1に係る再生化処理装置の全体の概略を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例1に係る再生化処理装置の要部の概略を示すブロック図。
【符号の説明】
【0045】
1:有機物貯留庫
2:炭化炉
3:資源回収手段
4:二次燃焼室
5:送風手段
6:二次燃焼バーナ
7:排熱利用熱交換器
8:篩装置
9:蒸気乾燥装置
10:再生化処理装置
71:蒸気発生熱交換器
72:温水熱交換器
Cw:炭化物
Ex:排ガス
Gc:乾留ガス
H:温水
L:水
S:蒸気
Wo:有機廃材
Ww:木質廃材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃材を空気と共に密閉し保温することにより前記有機廃材の化学反応を促す有機物貯留庫と、木質廃材を乾留して炭化物及び乾留ガスを生成する炭化炉と、前記乾留ガスを導入できる二次燃焼室と、前記有機物貯留庫内の空気を前記二次燃焼室へ送風する送風手段と、前記二次燃焼室に火炎を噴射して前記乾留ガスの燃焼を助成する二次燃焼バーナとを備え、
前記有機廃材の化学反応に伴い前記有機物貯留庫内の空気中に放たれる化学物質を、前記送風手段により前記二次燃焼室へ空気と共に誘引し、前記二次燃焼室で前記乾留ガスが燃焼する過程で、前記化学物質を熱分解することを特徴とする再生化処理装置。
【請求項2】
前記乾留ガスの燃焼により発生する排ガスで水を加熱する排熱利用熱交換器を備えることを特徴とする請求項1に記載の再生化処理装置。
【請求項3】
前記炭化物を前記炭化炉から搬出する資源回収手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生化処理装置。
【請求項4】
前記排熱利用熱交換器が、蒸気を発生する蒸気発生熱交換器を備えることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の再生化処理装置。
【請求項5】
前記排熱利用熱交換器で加熱された水と、前記有機物貯留庫の空気との間の熱交換により、前記有機物貯留庫を保温する暖房用熱交換器を備えることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の再生化処理装置。
【請求項6】
有機廃材を空気と共に密閉し保温することにより前記有機廃材の化学反応を促すステップと、前記有機廃材を乾留して炭化物及び乾留ガスを生成するステップと、前記有機廃材の化学反応に伴い空気中に放たれる化学物質を乾留ガスに混合するステップと、前記乾留ガスを燃焼させることにより前記化学物質を熱分解するステップとを含むことを特徴とする再生化処理方法。
【請求項7】
前記炭化炉から前記炭化物を搬出し、該炭化物の一部を前記有機廃材に混合することを特徴とする請求項6に記載の再生化処理方法。
【請求項8】
前記乾留ガスの燃焼により発生する排ガスにて水を加熱し、該加熱された水により前記有機廃材を保温することを特徴とする請求項6又は7に記載の再生化処理方法。
【請求項9】
前記乾留ガスの燃焼により発生する排ガスで水を加熱することにより蒸気を発生し、該蒸気により前記有機廃材を乾燥させることを特徴とする請求項6,7又は8に記載の再生化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−124413(P2006−124413A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310608(P2004−310608)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(504398454)株式会社アオヤマエコシステム (8)
【Fターム(参考)】