説明

冷凍サイクルおよび可変容量圧縮機

【課題】コンパクトでありながら感圧部の耐圧強度が高い外部制御方式の制御弁を実現するとともに、その制御弁を搭載した可変容量圧縮機を低温環境下でも有効に機能させる。
【解決手段】制御弁1によれば、パワーエレメント6の動作により中間圧力Pshが基準圧力となるように第1制御弁部が開閉動作する。一方、第2制御弁部の開閉動作により、その基準圧力が設定差圧だけ減圧されて設定圧力となる。この設定差圧はソレノイド3への供給電流量により変化する。第1制御弁部の基準圧力を比較的高く設定することで、高圧で作動する冷媒を扱うことが可能となる。一方、ソレノイド3が関与する第2制御弁部の設定差圧を小さく抑えることで、その大型化を回避できる。さらに吐出弁7を設けることにより、圧縮機201の低負荷時に所定の差圧(Pdh−Pdl)を保持することで吐出圧力Pdhを高く保持し、中間圧力Pshを確保できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置に好適な冷凍サイクル、およびその冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機としては、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。この圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、圧縮機の吐出室とクランク室との間、またはクランク室と吸入室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
【0004】
このような制御弁として、例えば吸入圧力Psに応じてクランク室への冷媒の導入量を調整することにより、クランク圧力Pcを制御するものがある(例えば特許文献1参照)。この制御弁は、吸入圧力Psを感知して変位する感圧部材を有する感圧部と、感圧部の駆動力を受けて吐出室からクランク室へ通じる通路を開閉制御する弁部と、感圧部の設定値を外部電流によって可変できるソレノイドとを備える。このような制御弁は、吸入圧力Psが外部電流により設定された設定圧力に保持されるように弁部を開閉する。一般に、吸入圧力Psは蒸発器出口の冷媒温度に比例するため、その設定圧力を所定値以上に保持することにより、蒸発器の凍結等を防止できる。また、ソレノイドが非通電のときには弁部が全開状態となり、クランク圧力Pcが高くなって揺動板が回転軸に対してほぼ直角になり、可変容量圧縮機を最小容量で運転させることができる。エンジンと回転軸とが直結されていても、実質的に吐出容量をゼロに近くすることができる。
【0005】
ところで、このような制御弁は、感圧部材としてダイヤフラム等の可撓性部材を用いるため、その耐圧性には限界がある。このため、現状では例えば代替フロン(例えばHFC−134a)など、比較的低圧域で作動する冷媒を使用した冷凍サイクルに用いられている。この代替フロンを用いた場合、例えば冷媒の温度変化が0〜15℃程度とすると、吸入圧力Psは0.3〜0.45MPaの範囲で変化する。
【0006】
しかし、地球温暖化の問題もあり、近年では冷凍サイクルに用いる冷媒としてその代替フロンから二酸化炭素への移行が提案されている。この二酸化炭素を冷媒とした冷凍サイクルでは、例えば冷媒の温度変化が0〜15℃程度とすると、圧縮機の吸入圧力Psは3.5〜5MPa程度にもなり、冷媒にフロンを使用した場合よりも格段に高くなる。このため、ダイヤフラム等の感圧部材では耐圧強度が不足するといった問題がある。
【0007】
こうした中、出願人は、このような電気的な制御による外部制御方式ではなく、制御を可変容量圧縮機内の機械的構造のみにより行う内部制御方式の制御弁について、この問題を解消可能な技術を提案している(例えば特許文献2参照)。この技術は、感圧部においてダイヤフラムに重畳させて皿ばねの積層体を配置している。これにより、二酸化炭素を冷媒とした冷凍サイクルにおいても十分な耐圧強度を確保している。しかし、このような内部制御方式の制御弁では、吸入圧力Psの設定圧力は当初の機械的構成により固定され、制御状態に応じて変更することができない。一方、このような構成をそのまま外部制御方式の制御弁に適用すると、その感圧部材の駆動力とバランスさせるソレノイド力も大きくなり、ソレノイドひいては制御弁全体の大型化やコストアップを伴う。
【0008】
そこで、出願人は、先行する未公開の特許出願(特願2007−274373号)において、外部制御方式であっても電磁コイル等の大型化を伴うことなく感圧部の耐圧強度を向上させることができる制御弁を提案している。この制御弁の一態様は、感圧部材に皿ばね等を含めてその荷重を大きくすることにより感圧部の耐圧強度を高め、高圧の冷媒を扱えるようにしている。この制御弁は、内部の中圧室に満たされる中間圧力を基準圧力に保持するように、吐出室からクランク室へ導出する冷媒流量を制御する第1弁部と、その中間圧力を減圧して吸入圧力Psを生成する第2弁部とを備える。減圧対象となる中間圧力は吸入圧力Psの設定圧力よりも高くする必要があるため、中圧室には吐出冷媒の一部が減圧されて導入される。第2弁部は、その中間圧力を設定圧力だけ減圧させて吸入圧力Psを生成する。この設定差圧はソレノイドへの供給電流量により変化する。この態様によれば、感圧部が感知する基準圧力を高く設定しておくことで高圧の冷媒を扱うことができる。一方、ソレノイドが関与する第2弁部は前後差圧のみを扱うため、設定差圧を小さく抑えることでソレノイド、ひいては制御弁全体をコンパクトに構成することができる。
【特許文献1】特開2005−214059号公報
【特許文献2】特開2007−231825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記態様の制御弁を用いる場合、中間圧力が確保されなければ吸入圧力Psを設定圧力に制御することはできない。すなわち、高圧作動の冷媒を用いるために感圧部の基準圧力を高く設定したにもかかわらず中間圧力を高く維持できなければ、圧縮機が強制的に最小容量運転に移行してしまうこともあり得る。特に、冬場などの低温環境下において除湿等のために空調装置が運転される場合に問題が生じる可能性がある。この場合、圧縮機が低負荷で運転されるため吐出圧力Pdが低くて十分な中間圧力を確保することができず、吸入圧力Psを設定圧力に制御できなくなる可能性がある。その結果、圧縮機が強制的に最小容量運転に移行してしまうと、空調装置が十分な除湿運転をできなくなる可能性がある。特に、圧縮機の出口側に逆流防止等のための弁装置を設けたようなシステムでは、このような最小容量運転への移行により弁装置が閉弁状態となり、吐出冷媒が蒸発器まで到らず、除湿運転ができなくなってしまう。
【0010】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、コンパクトでありながら感圧部の耐圧強度が高い外部制御方式の制御弁を実現するとともに、その制御弁を搭載した可変容量圧縮機を低負荷時においても有効に機能させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様の冷凍サイクルは、空調装置を構成する。この冷凍サイクルは、吸入室から吸入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機と、可変容量圧縮機から吐出された冷媒を冷却する外部熱交換器と、外部熱交換器から送出された冷媒を減圧する膨張装置と、膨張装置にて減圧された冷媒を蒸発させるとともに可変容量圧縮機に向けて送出する蒸発器と、可変容量圧縮機の吐出室および吸入室の少なくとも一方とクランク室とを連通させる制御通路に設けられた第1制御弁部と、吐出圧力が減圧されて得られた設定圧力以上の中間圧力が満たされる中圧室と、中間圧力を感知し、その中間圧力が予め設定された基準圧力となるように第1制御弁部の開閉方向の力を発生させる感圧部と、吸入室またはクランク室と中圧室とを連通させる調圧通路に設けられ、その開閉によりその前後差圧を発生させる第2制御弁部と、その第2制御弁部の前後差圧が供給電流量に応じた設定差圧となるようソレノイド力を発生させ、その設定差圧の変更により設定圧力を変化させるソレノイドとを含み、可変容量圧縮機の吸入圧力またはクランク圧力を設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量およびクランク室から吸入室へ導出する冷媒流量の少なくとも一方を制御して可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、所定の外部情報に基づいて設定圧力を決定し、その設定圧力を得るために必要な設定差圧に応じて制御弁への通電制御を行う制御部と、可変容量圧縮機の吐出室と外部熱交換器との間の冷媒通路に設けられた吐出弁部と、吸入室またはクランク室と外部熱交換器との間の冷媒通路に設けられた差圧応動部とを含み、吸入圧力またはクランク圧力と吐出圧力との差圧が開弁差圧以上になると吐出弁部が開弁する一方、差圧応動部の前後差圧が設定値以下になると差圧応動部が吐出弁部を閉弁方向に付勢し、吐出弁部の前後差圧を大きくして吐出圧力の低下を抑制する吐出弁と、を備える。
【0012】
ここで、可変容量圧縮機の制御弁は、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆる「入れ制御」に用いられてもよいし、クランク室から吸入室へ導出する冷媒流量を制御するいわゆる「抜き制御」に用いられてもよい。あるいは、双方の冷媒流量を制御するいわゆる三方弁として機能してもよい。また、吸入圧力を感知してそれを設定圧力に保持するものであってもよいし、クランク圧力を感知してそれを設定圧力に保持するものでもよい。吐出弁の差圧応動部は、可変容量圧縮機の出口側の圧力と吸入圧力との差圧に応じて動作するものでもよいし、可変容量圧縮機の出口側の圧力とクランク圧力との差圧に応じて動作するものでもよい。
【0013】
この態様では、制御弁の感圧部の動作により中間圧力が基準圧力となるように第1制御弁部が開閉動作する一方、第2制御弁部の開閉動作によりその基準圧力が設定差圧だけ減圧されて設定圧力となる。この設定差圧は、制御部が制御するソレノイドへの供給電流量により変化する。すなわち、常に一定に制御される基準圧力に対し、設定差圧という形で外部的に減圧量を設定することで設定圧力を自由に調整できる。この制御弁によれば、第1制御弁部の基準圧力を高く設定しておくことで高圧の冷媒を扱うことができる。一方、ソレノイドが関与する第2制御弁部は前後差圧のみを扱うため、設定差圧を小さく抑えることでそのソレノイド、ひいては制御弁全体をコンパクトに構成することができる。すなわち、高圧冷媒を扱う場合に感圧部の耐圧強度を高くしても制御弁全体としてのコンパクト化を実現することができる。
【0014】
この態様によれば、圧縮機の低負荷時に吐出圧力の低下により差圧応動部の前後差圧が設定値以下になると、差圧応動部が吐出弁部を閉弁方向に付勢し、吐出弁部の前後差圧を大きくして吐出圧力の低下を抑制する。この結果、中間圧力を確保することができ、吸入圧力を設定圧力に維持する制御を有効に機能させることができる。また、その低負荷時において吐出弁部の前後差圧を大きくしつつも、所定量の吐出冷媒を蒸発器側に導出することができるため、除湿運転等も良好に行うことができる。
【0015】
本発明の別の態様は、空調装置の冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機である。この可変容量圧縮機は、蒸発器側から吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から外部熱交換器側へ吐出する可変容量圧縮機において、可変容量圧縮機の吐出室および吸入室の少なくとも一方とクランク室とを連通させる制御通路に設けられた第1制御弁部と、吐出圧力が減圧されて得られた設定圧力以上の中間圧力が満たされる中圧室と、中間圧力を感知し、その中間圧力が予め設定された基準圧力となるように第1制御弁部の開閉方向の力を発生させる感圧部と、吸入室またはクランク室と中圧室とを連通させる調圧通路に設けられ、その開閉によりその前後差圧を発生させる第2制御弁部と、その第2制御弁部の前後差圧が供給電流量に応じた設定差圧となるようソレノイド力を発生させ、その設定差圧の変更により設定圧力を変化させるソレノイドとを含み、可変容量圧縮機の吸入圧力またはクランク圧力を設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量およびクランク室から吸入室へ導出する冷媒流量の少なくとも一方を制御して可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、可変容量圧縮機の出口と吐出室との間の冷媒通路に設けられた吐出弁部と、可変容量圧縮機の出口と吸入室またはクランク室との間の冷媒通路に設けられた差圧応動部とを含み、吸入圧力またはクランク圧力と吐出圧力との差圧が開弁差圧以上になると吐出弁部が開弁する一方、差圧応動部の前後差圧が設定値以下になると差圧応動部が吐出弁部を閉弁方向に付勢し、吐出弁部の前後差圧を大きくして吐出圧力の低下を抑制する吐出弁と、を備える。
【0016】
この態様においても、可変容量圧縮機の制御弁について、高圧冷媒を扱う場合に感圧部の耐圧強度を高くしても制御弁全体としてのコンパクト化を実現することができる。また、吐出弁を設けた結果、圧縮機の低負荷時においても中間圧力を確保することができ、吸入圧力を設定圧力に維持する制御を有効に機能させることができる。また、その低負荷時において吐出弁部の前後差圧を大きくしつつも、所定量の吐出冷媒を蒸発器側に導出することができるため、除湿運転等も良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンパクトでありながら感圧部の耐圧強度が高い外部制御方式の制御弁を実現するとともに、その制御弁を搭載した可変容量圧縮機を低負荷時においても有効に機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0019】
図1は、実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
この冷凍サイクルは、高圧で作動する二酸化炭素を冷媒とするいわゆる超臨界冷凍サイクルとして車両用空調装置を構成している。すなわち、この空調装置は、冷凍サイクルを循環する気相状態の冷媒を圧縮する可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)201、圧縮された高温高圧の気相状態の冷媒を冷却するガスクーラ202(「外部熱交換器」に該当する)、冷却された冷媒を断熱膨張させて減圧する膨張装置203、膨張された冷媒を蒸発させて蒸発潜熱を奪って車室内の空気を冷却する蒸発器204、および蒸発された冷媒を気液分離し、分離された気相状態の二酸化炭素を再び圧縮機201に戻す受液器205を備えている。
【0020】
圧縮機201の吐出冷媒の一部は可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」という)1を介してクランク室254内に導入され、圧縮機201の容量制御に供される。制御弁1は、ソレノイド駆動の電磁弁として構成され、制御部206により駆動回路250を介して通電制御される。クランク室254と吸入室251とを連通する冷媒通路255にはオリフィス256が設けられており、クランク室254内の圧力を減圧して吸入室251側へ導出可能になっている。また、圧縮機201の吐出室253とガスクーラ202との間の冷媒通路には、後に詳述する吐出弁7が設けられている。
【0021】
図2は、圧縮機の構成を表す断面図である。
圧縮機201は、そのハウジングとして、複数のシリンダ252が形成されたシリンダブロック101と、その前端側に接合されたフロントハウジング102と、後端側にバルブプレート103を介して接合されたリアハウジング104とを備えている。シリンダブロック101とフロントハウジング102とにより囲まれた内部空間によりクランク室254が形成されている。
【0022】
クランク室254には、その中心を貫通するように回転軸106が配置されている。この回転軸106は、シリンダブロック101に設けられた軸受107と、フロントハウジング102に設けられた軸受108とによって回転自在に支持されている。回転軸106にはラグプレート109が固定されており、そのラグプレート109に突設された支持アーム110等を介して揺動板111が支持されている。揺動板111は、回転軸106の軸線に対して傾動可能となっており、複数のシリンダ252に摺動自在に配置されたピストン112にシュー114を介して連結されている。回転軸106は、その前端部分がフロントハウジング102を貫通して外部に延出しており、その先端部分にはブラケット117が螺着されている。また、回転軸106とフロントハウジング102との前端部分の隙間を外側からシールするように、リップシール115が設けられている。
【0023】
フロントハウジング102の前端部分には、エンジンからの駆動力を伝達するプーリ118が軸受119を介して回転自在に支持されている。このプーリ118は、エンジンの駆動力をブラケット117を介して回転軸106に伝達する。
【0024】
リアハウジング104の内部には、吸入室251、吐出室253、制御弁1および吐出弁7が配設されている。吸入室251は、バルブプレート103に設けられた吸入用リリーフ弁121を介してシリンダ252に連通するとともに受液器205にも連通している。吐出室253は、バルブプレート103に設けられた吐出用リリーフ弁122を介してシリンダ252に連通するとともにガスクーラ202にも連通している。制御弁1は、吐出室253とクランク室254との間を連通する冷媒通路に配置されている。吐出弁7は、吐出室253と圧縮機201の出口とをつなぐ冷媒通路に配置されている。
【0025】
圧縮機201の揺動板111は、その角度がクランク室254内でその揺動板111を付勢するスプリング125、126の荷重や、揺動板111につながるピストン112の両面にかかる圧力による荷重等がバランスした位置に保持される。この圧縮機201の揺動板111の角度は、クランク室254内に吐出冷媒の一部を導入してクランク圧力Pcを変化させ、ピストン112の両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えられる。この揺動板111の角度の変化によってピストン112のストロークを変えることにより、冷媒の吐出容量を調整するようにしている。このクランク室254内の圧力は、制御弁1により制御される。
【0026】
制御弁1は、圧縮機201の吸入圧力Psが制御目標値である設定圧力に近づくように吐出室253からクランク室254に導入する冷媒流量を調整する。これにより、圧縮機201の吐出容量が変化する。制御弁1は、ソレノイド駆動の電磁制御弁として構成され、制御部206により駆動回路250を動作させることにより通電制御される。本実施の形態では、制御部206が駆動回路250に所定のデューティ比に設定されたパルス信号を出力し、駆動回路250からそのデューティ比に対応した電流パルスを出力させてソレノイドを駆動するデューティ制御を行う。
【0027】
図1に戻り、制御部206は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部206は、指定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部206は、エンジン回転数、車室内外の温度、蒸発器204の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて上記設定差圧を決定し、その設定差圧が保持されるソレノイド力が得られるように制御弁1への通電制御を行う。また、車両の加速時や登坂走行時などのエンジンの高負荷状態において圧縮機201の負荷トルク低減を目的とする加速カット要求があると、制御部206は、その通電を遮断または所定の下限値に抑制して、可変容量圧縮機を最小容量運転に移行させたりする。
【0028】
膨張装置203は、いわゆる温度式膨張弁として構成されており、蒸発器204の出口側の冷媒温度をフィードバックしてその弁開度を調整し、熱負荷に応じた液冷媒を蒸発器204へ供給する。蒸発器204を通過した冷媒は受液器205を経由して圧縮機201に戻され、再び圧縮される。
【0029】
吐出弁7は、圧縮機201の出口と吐出室253との間の冷媒通路(「第1冷媒通路」に該当する)に設けられた吐出弁部と、圧縮機201の出口と吸入室251との間の冷媒通路(「第2冷媒通路」に該当する)に設けられた差圧応動部とを含んで構成されている。吐出弁部は、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が開弁差圧以上になると開弁動作をして吐出冷媒を導出する。差圧応動部は、その前後差圧が設定値以下になると吐出弁部を閉弁方向に付勢し、吐出弁部の前後差圧を大きくして吐出圧力Pdの低下を抑制する。なお、圧縮機201の通常の容量制御時には吐出弁部がその開弁状態を保持するため、冷媒の順方向の流れが阻害されることはない。吐出弁7の構成および機能の詳細については後述する。
【0030】
図3は、制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、圧縮機201の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室253からクランク室254に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。
【0031】
制御弁1は、吐出冷媒の一部をクランク室254へ導入するための冷媒通路を開閉する弁部を含む弁本体2と、その弁部の開度を調整してクランク室へ導入する冷媒流量を制御するソレノイド3とを、接続部材4を介して一体に組み付けて構成される。
【0032】
弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5の内部に設けられた弁部、ボディ5の上端に設けられて弁部を開閉するための駆動力を発生するパワーエレメント6(「感圧部」に該当する)等を備えている。
【0033】
ボディ5の側部には、圧縮機201の吐出室253に連通して吐出圧力Pdを受けるポート11(「吐出室連通ポート」に該当する)が設けられている。ポート11の周囲には、ボディ5の内部へのゴミ等の侵入を抑制するためのストレーナ12が取り付けられている。ポート11は、ボディ5の上部に設けられたポート13(「クランク室連通ポート」に該当する)と内部で連通している。ポート13は、圧縮機201のクランク室254に連通し、そのクランク室254に制御されたクランク圧力Pcを導出する。
【0034】
ポート11とポート13とを連通する冷媒通路には弁孔15(「第1弁孔」に該当する)が形成され、その弁孔15の吐出室側の開口端縁により弁座16が形成されている。ボディ5の中央をその軸線方向に延びるように、長尺状の作動ロッド17が挿通されている。作動ロッド17は、例えばステンレス鋼を押出成形したパイプ材を加工して有底円筒状に構成され、その底部を上にして配設されている。作動ロッド17は、弁孔15を貫通してボディ5の中央を軸線方向に延びるように配設されている。作動ロッド17の上端部は、ボディ5の上端開口部に設けられた摺動孔14に摺動可能に支持されている。作動ロッド17の長手方向中央部には、部分的にくびれるように小径化された段差部18が設けられ、その段差部18の基端部が弁体20(「第1弁体」に該当する)を構成している。作動ロッド17の段差部18と弁孔15との間隙により、ポート11とポート13とを連通する冷媒通路(「制御通路」に該当する)が形成される。作動ロッド17の上底部は、パワーエレメント6を構成するダイヤフラム19に当接可能となっている。弁体20は、弁座16に吐出室側から対向し、その先端面の外周縁が弁座16に着脱することにより弁孔15を開閉する。弁体20および弁座16により吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を調整する第1制御弁部が構成されている。
【0035】
ボディ5の下端開口部は、その内径が下方に向かって段階的に拡径されており、リング状の弁座形成部材21が圧入されている。弁座形成部材21の下端開口端縁により弁座22が形成されている。
【0036】
ボディ5の下部は、有底円筒状の接続部材4に圧入されている。接続部材4の底部近傍の側部には内外を連通する連通孔が設けられており、ボディ5の下端部と接続部材4の底部との間には、圧縮機の吸入室に連通して吸入圧力Psを受けるポート26(「吸入室連通ポート」に該当する)が形成されている。ポート26は、弁座形成部材21の内部を経て作動ロッド17の下端開口部に連通している。作動ロッド17の下端部は、ポート11とポート26とを連通するガイド孔23に摺動可能に支持されている。ボディ5とソレノイド3とに囲まれた内部空間は、吸入圧力Psが導入出される圧力室28を形成する。なお、吸入圧力Psはソレノイド3の内部にも導入可能となっている。弁座22に圧力室28側から対向するように、有底筒状の弁体25(「第2弁体」に該当する)が配置されている。弁体25および弁座22により第2制御弁部が構成されている。
【0037】
作動ロッド17とパワーエレメント6との間にはスプリング45(「付勢部材」に該当する)が介装され、作動ロッド17と弁体25との間には、ばね受け部材27およびスプリング46(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0038】
一方、ソレノイド3は、ヨークとしても機能するケース31と、ケース31内に固定されたコア32と、コア32と軸線方向に対向配置されたプランジャ33と、外部からの供給電流により磁気回路を生成する電磁コイル34とを備えている。接続部材4とソレノイド3とは、接続部材4の下端部とケース31の上端部とを突き合わせ、その接合部をコア32の上端部を加締めることにより固定することで連結されている。
【0039】
コア32には、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔35が設けられており、ソレノイド力を弁体20へ伝達するためのシャフト36が挿通されている。コア32の上端部には、リング状の軸受け部材38が圧入されており、シャフト36がこの軸受け部材38に摺動可能に支持されている。シャフト36は、軸受け部材38を貫通して圧力室28まで延設され、その先端に弁体25が圧入されている。圧力室28内の吸入圧力Psは、シャフト36と軸受け部材38との微少な間隙を介してソレノイド3の内部にも導入される。
【0040】
コア32には、また、下端が閉じた有底スリーブ39が外挿されている。有底スリーブ39内においては、プランジャ33がコア32の下方で軸線方向に進退可能に配置されている。有底スリーブ39は、その下端部が縮管されており、その縮管部によってシャフト36の下端部を摺動可能に軸支している。プランジャ33は、円筒状をなし、シャフト36の下部に圧入されている。コア32とプランジャ33との間には、両者を離間させて弁体25を開弁方向に付勢するスプリング47(「付勢部材」に該当する)が介装されている。
【0041】
ケース31の下端開口部には、ソレノイド3の内部を下方から封止するように樹脂材からなる取っ手40が設けられている。この取っ手40には、ケース31とともに磁気回路を構成する磁性部材からなるカラー42が埋設されている。取っ手40はまた、電磁コイル34につながる端子の一端を露出させるコネクタ部としても機能する。
【0042】
以上のように構成された制御弁1は、図示しない取り付け用のワッシャ等を介して圧縮機201の所定の冷媒通路内に固定される。
【0043】
次に、感圧部および弁部周辺の構成および動作について詳細に説明する。
図4は、図3の上半部に対応する部分拡大断面図である。同図は、制御弁1が大気に放置された状態を表している。
【0044】
パワーエレメント6は、ボディ5の上端開口部を封止するように加締め接合された中空のハウジング50と、ハウジング50内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設された金属薄膜からなるダイヤフラム19と、密閉空間S1に配置された金属薄板からなる皿ばね51の積層体とを含んで構成されている。ダイヤフラム19は、例えばベリリウム銅やステンレス鋼等の金属薄板からなるものでもよい。皿ばね51は、例えばステンレス鋼からなるものでもよい。本実施の形態では、3つの皿ばね51がその厚み方向に重畳されて積層体を構成しているが、皿ばね51の数については必要とされる耐圧強度およびばね荷重に応じて適宜変更することができる。皿ばね51の積層体とダイヤフラム19との間には、両者間の摩耗を抑制するための薄膜状の耐摩耗シート52(「薄膜状部材」に該当する)が介装されている。この耐摩耗シート52によりダイヤフラム19の寿命を長くしている。この耐摩耗シート52としては、例えばテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂からなる薄膜シートあるいはポリイミドフィルム等を使用することができる。開放空間S2は、ボディ5の上端開口部とパワーエレメント6とに囲まれた圧力室29に連通している。本実施の形態では、ダイヤフラム19と皿ばね51の積層体とを重ねて構成された部材が「感圧部材」として機能する。
【0045】
ハウジング50は、いずれもステンレス等をプレス成形して得られた皿状の第1ハウジング53および第2ハウジング54からなり、これらの開口部を突き合わせてその外縁部にダイヤフラム19および耐摩耗シート52の外縁部を挟むようにして組み付けられる。すなわち、ハウジング50は、第1ハウジング53側に皿ばね51を配置するとともに、第1ハウジング53と第2ハウジング54との間にダイヤフラム19および耐摩耗シート52を挟んだ状態でその接合部に沿って外周溶接(TIG溶接)が施されることにより、容器状に形成されている。両ハウジングの溶接は真空雰囲気内で行われ、その溶接の後、第1ハウジング53の底部中央に形成された真空引き用の孔部を封止するようにボール部材55を溶接する。このため、密閉空間S1は真空状態となっているが、密閉空間S1内に大気等を満たすようにしてもよい。密閉空間S1に配置された皿ばね51は、ダイヤフラム19に沿って中央部が下側にやや膨らんだ凸形状をなしている。このため、パワーエレメント6が大気に放置された状態ではダイヤフラム19も皿ばね51に沿った凸形状となる。第2ハウジング54の中央部には開口部が設けられ、作動ロッド17の上端部がその開口部を介してダイヤフラム19に当接できるように構成されている。また、その開口部の周辺にも、第2ハウジング54の内外を連通させる小さな連通孔が設けられている。ボディ5の上端開口部、第2ハウジング54、ダイヤフラム19、および作動ロッド17に囲まれた空間が圧力室29を形成している。
【0046】
作動ロッド17は、下方に開口する有底円筒状をなし、曲面状の上端面中央がダイヤフラム19の下面中央に当接している。作動ロッド17には内部通路61が形成されており、作動ロッド17の上端近傍の側部には、内部通路61と圧力室29とを連通する連通孔62が形成されている。内部通路61はその下端部で拡径されており、その拡径部にスプリング46が収容されている。ばね受け部材27は、弁体25の上端面中央に下方から支持された円柱状の本体を有し、その上半部が作動ロッド17の下端開口部に挿通されている。ばね受け部材27の上端部には、半径方向外向きにやや延出したフランジ部59が設けられている。フランジ部59は、作動ロッド17の拡径部の内周面に沿って摺動可能となっており、その拡径部の基端部との間にスプリング46を介装している。作動ロッド17の下端開口部63はやや内方に加締められて係止部56を形成している。スプリング46がほぼ自由長に伸長するまでばね受け部材27が下方へ変位しても、係止部56に引っかかることにより作動ロッド17からの脱落が防止されるようになっている。一方、フランジ部59の一部には切欠き57が設けられ、ばね受け部材27と下端開口部63との間の冷媒通路を確保している。
【0047】
作動ロッド17、ガイド孔23、弁座形成部材21および弁体25により囲まれる空間により中圧室65が形成されている。弁体25は、中圧室65とポート26とを連通させる調圧通路に配置されている。この中圧室65には、ポート11から導入された吐出冷媒が作動ロッド17とガイド孔23との摺動面の隙間(「冷媒漏洩通路」に該当する)を介して漏洩してくるため、通常は圧力室28の圧力(吸入圧力Ps)よりも高い圧力(「中間圧力Psh」という)が満たされる。本実施の形態では、ポート11を介して吐出圧力Pdが満たされる空間が「高圧室」を構成する。
【0048】
この中間圧力Pshは、作動ロッド17の下端開口部63から内部通路61に導入され、連通孔62を介して圧力室29に導かれる。ダイヤフラム19は、この中間圧力Pshを感知して第1制御弁部の開閉方向に伸縮する。なお、作動ロッド17の下端側摺動面には所定深さの凹部58が周設されており、吐出冷媒にゴミが含まれている場合にこれを滞留させ、摺動面に詰まることを防止している。
【0049】
本実施の形態においては、摺動孔14の断面積Aと弁孔15の断面積Bとが等しく形成され、ガイド孔23の断面積Cはこれらよりやや大きいものの、実質的に等しく形成されている。したがって、作動ロッド17に作用する吐出圧力Pdやクランク圧力Pcの影響がキャンセルされる。弁体20は、制御状態においてはパワーエレメント6の感圧部材が感知する中間圧力Pshに基づいて開閉動作することになる。
【0050】
本実施の形態の感圧部材は、ダイヤフラム19および皿ばね51の個々の剛性を合わせた剛性を有し、ダイヤフラム19のしなやかさを保持する一方、皿ばね51によって耐圧強度が高められている。皿ばね51は、片側に凸状に膨らんだ形状を有するため、その凸部側から荷重が負荷されると、その荷重が小さい間は変形量も小さいが、荷重が大きくなるにつれてフラットになる側に徐々に変形し、さらに荷重が大きくなると反転して中央部が大きく変位する。このため、皿ばね51の荷重に対する変形の特性は全体としてみれば非線形となるが、その形状がフラットになる前後の所定の変位幅においては線形性を有する。本実施の形態では、この線形領域を制御領域に利用することにより、正確な弁開度制御を行っている。感圧部材は、皿ばね51を複数重畳した積層体を含むことで、二酸化炭素のような作動圧力の高い冷媒が使用されても十分な耐圧強度を有する。パワーエレメント6は、感圧部材が中間圧力Pshを感知して変位することで第1制御弁部の開度を調整し、その中間圧力Pshが皿ばね51等の荷重により設定された基準圧力(例えば5Mpa)となるように動作する。つまり、中間圧力Pshがその基準圧力になるように、弁体20が自律的に動作するようになる。
【0051】
一方、第2制御弁部は、吸入圧力Psの設定圧力を調整するために前後差圧を発生させる差圧弁として機能する。すなわち、第2制御弁部の開度(弁体25の弁座22からのリフト量)を調整することにより、第2制御弁部の前後差圧(中圧室65と圧力室28との差圧)を設定差圧に保持する。この設定差圧は、外部からソレノイド3に供給される電流量により設定される。上述のように、中圧室65の中間圧力Pshは圧力室28の吸入圧力Psよりも基本的に高く保持されているため、中間圧力Pshよりも設定差圧だけ低い圧力が吸入圧力Psの設定圧力として設定されることになる。例えば、中間圧力Pshが5Mpaであり設定差圧が1Mpaである場合には、Ps感知弁の設定圧力として4Mpaが設定されることになる。つまり、中間圧力Pshの設定値である基準圧力は機械的に固定されるが、吸入圧力Psの設定圧力についてはソレノイド3への供給電流量を変化させて設定差圧を調整することにより自由に変更することができる。パワーエレメント6は、結果的に、吸入圧力Psが第2制御弁部により調整された設定圧力よりも低くなったときに感圧部材が変位し、その吸入圧力Psを設定圧力に保持するように動作することになる。
【0052】
なお、作動ロッド17は、第2ハウジング54との間に介装されたスプリング45と、ばね受け部材27との間に介装されたスプリング46とにより弾性的に支持されているが、スプリング46の荷重のほうがスプリング45の荷重より大きい。このため、通常の制御状態においては作動ロッド17の上端がダイヤフラム19に当接した状態となり、弁体20は、感圧部材およびスプリング45による開弁方向の力と、スプリング46による閉弁方向の力を受けて動作することになる。一方、ソレノイド3の非通電時においては、ばね受け部材27が弁体25の全開動作とともに下方へ変位してスプリング46がほぼ自由長となるため、弁体20は、スプリング45の付勢力によって全開状態となる。
【0053】
図5〜図7は、制御弁の感圧部を中心とした動作を表す説明図である。各図は、図4に対応する部分拡大断面図である。図5は、ソレノイド3がオフにされて吸入圧力Psが高いときの状態を示している。図6は、ソレノイド3がオンにされて弁部が微少開度に保持された制御状態を示している。図7は、圧縮機の最大運転時の制御状態を示している。
【0054】
図5に示すように、ソレノイド3の非通電状態においては弁体25が全開状態に変位し、ばね受け部材27も下死点に位置するため、弁体20は、スプリング45の付勢力によって全開位置に変位する。その結果、クランク室への吐出冷媒の導入量が増加し、圧縮機は最小容量運転へと移行する。ソレノイド3が非通電で安定した状態においては吸入圧力Psが高くなるが、第2制御弁部が全開状態であるため中間圧力Pshもほぼ同程度に高くなり、開放空間S2に導入される中間圧力Pshと密閉空間S1内の内部圧力との差圧が大きくなる。このため、その差圧による荷重がダイヤフラム19および皿ばね51に作用し、皿ばね51の積層体がその周縁部を支点にしてその凸形状が反転する側に弾性変形し、第1ハウジング53の内壁にほぼ沿うようになる。
【0055】
本実施の形態では、最上段の皿ばね51が第1ハウジング53の内壁面によって係止されるため、積層された皿ばね51は反転する手前の状態に保持される。その結果、吸入圧力Psが低くなれば、皿ばね51がその弾性力により元の形状に復帰できる。言い換えれば、第1ハウジング53は、このように皿ばね51が反転する手前の状態に変形したときの形状に沿う浅い形状に形成されている。これは、パワーエレメント6ひいては制御弁1のコンパクト化にも寄与している。
【0056】
一方、ソレノイド3に通電された安定した制御状態においては、図6に示すように、シャフト36を介してソレノイド力が弁体25に伝達される。それにより、弁体25は、その前後差圧(Psh−Ps)による開弁方向の力とソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力等がつり合った位置に変位し、第2制御弁部が所定開度に制御される。その結果、その前後差圧(Psh−Ps)がソレノイド3に設定された設定差圧に保持される。なお、弁体25は、このときスプリング46による荷重も受けることになるが、ソレノイド力がこれよりも十分に大きいため、実質的にその荷重の影響を受けることはない。一方、弁体20は、中間圧力Pshを感知して動作するパワーエレメント6(感圧部材)による開弁方向の力、スプリング45による開弁方向の付勢力、スプリング46による閉弁方向の付勢力がつり合った位置に変位し、第1制御弁部が所定開度に制御される。その結果、その中間圧力Pshが予め設定された基準圧力に保持される。本実施の形態では、この安定した状態において図示のように皿ばね51がほぼフラットになるように設定されている。
【0057】
なお、弁体20は、弁体25の変位に伴うスプリング45,46による荷重の変化を受けることになるが、その荷重は皿ばね51の積層体の荷重よりも十分に小さいため、実質的にその荷重の変化の影響を受けることはない。このようにして中間圧力Pshが基準圧力に保持され、さらに第2制御弁部に設定された前後差圧が発生するため、吸入圧力Psをその中間圧力Pshから設定差圧を差し引いた圧力、つまり設定圧力に保持することができる。設定差圧はソレノイド3への供給電流量を変化させることで調整できるため、吸入圧力Psの設定圧力については自由に変更することができる。
【0058】
冷凍サイクルの熱負荷が大きくなって吸入圧力Psが高くなると、図7に示すように、中間圧力Pshが基準圧力よりも高くなり、感圧部材が反転方向に動作する。このとき、吸入圧力Psを設定圧力に保持すべく設定差圧を大きくする必要があるため、弁体25が閉弁方向に動作する。一方、作動ロッド17には感圧部材の付勢力が作用せず、スプリング46の荷重がスプリング45の荷重よりも大きいため、弁体20が弁座16に着座して第1制御弁部を閉弁させる。この結果、クランク室への吐出冷媒の導入量が減少し、圧縮機は最大容量運転へと移行する。その結果、吐出圧力Pdが高くなるため、その吐出冷媒の漏洩により中間圧力Pshが基準圧力へ近づいていく。そして、制御状態が安定すると、再び図6に示した状態へ移行する。
【0059】
図8は、吐出弁の構成を示す断面図である。
【0060】
吐出弁7は、吐出室253の圧力(「吐出圧力Pdh」と表記する)と吸入圧力Psとの差圧(Pdh−Ps)が所定の開弁差圧ΔPを超えると自律的に開弁する機械式の差圧弁として構成されている。一方、吐出弁7は、圧縮機201が低負荷のときなど、圧縮機201の出口の圧力(「出口圧力Pdl」と表記する)と吸入圧力Psとの差圧(Pdl−Ps)が設定値以下になると、閉弁方向に動作してその前後差圧を大きくし、吐出圧力Pdhの低下を抑制するように動作する。なお、通常の容量制御時においては、吐出圧力Pdhと出口圧力Pdlは吐出冷媒の圧力として実質的に同じ圧力となる。このため、本明細書において両者を特に区別しない場合には吐出圧力Pdと総称している。
【0061】
吐出弁7は、段付円筒状のボディ71内に、差圧応動部として機能する差圧応動部材72と、吐出弁部として機能する弁体73とを収容して構成されている。ボディ71の上端開口端部を封止するように断面凸状のストッパ74が加締め接合されている。ボディ71の下半部は段階的に小径化されており、その下端開口端部が吐出室253に連通するポート75(「高圧室連通ポート」に該当する)を構成している。また、ボディ71の側部には、その上端側で吸入室251に連通するポート76(「低圧室連通ポート」に該当する)と、下端側で圧縮機201の出口に連通するポート77(「出口連通ポート」に該当する)が設けられている。ポート76とポート77とを連通する冷媒通路には、差圧応動部材72がボディ71の内壁に摺動可能に配設されている。一方、ポート75とポート77とを連通する冷媒通路には、弁体73が吐出弁部の開閉方向に変位可能に配設されている。弁体73は、ボディ71の軸線に沿って差圧応動部材72に対向配置されている。ボディ71の下端開口部近傍で小径化された段部により、弁座78が形成されている。
【0062】
弁体73は、円柱状の本体の下端部に半径方向外向きに延出したフランジ部79となっており、そのフランジ部79の下端周端縁がポート77側から弁座78に着脱可能に構成されている。
【0063】
差圧応動部材72は、段付有底円筒状の本体を有する。その本体の外周面中央にはOリング81が嵌合されており、ポート76側からポート77側への吐出冷媒の漏洩を防止または抑制している。差圧応動部材72は、弁体73の本体上部を挿通し、これを軸線方向に摺動可能に支持している。弁体73のフランジ部79と差圧応動部材72との間には、弁体73を閉弁方向に付勢するスプリング82(「第2付勢部材」に該当する)が介装されている。
【0064】
ストッパ74は、その中央部が下方に延出し、その先端面にて差圧応動部材72の底部を係止可能に構成されている。ストッパ74と差圧応動部材72との間には、差圧応動部材72をストッパ74から離間させる方向に付勢するスプリング83(「第1付勢部材」に該当する)が介装されている。このため、差圧(Pdl−Ps)が十分に大きいときには、差圧応動部材72がストッパ74に係止されるため、弁体73は、差圧(Pdh−Pdl)による力とスプリング82による付勢力とがバランスした位置に変位する。差圧(Pdl−Ps)が設定値よりも小さくなると、差圧応動部材72がストッパ74から離間して閉弁方向に変位するため、弁体73も閉弁方向に動作することになる。
【0065】
一方、ボディ71において差圧応動部材72が摺動する大径部と弁体73が変位する小径部との境界である段部によって係止部88が形成されており、差圧応動部材72が弁体73に近接する側への変位が規制されている。
【0066】
図2にも示すように、ボディ71は、シール用のOリング85,86を介してリアハウジング104に固定される。その結果、弁体73が圧縮機201の出口と吐出室253とをつなぐ冷媒通路に配置され、差圧応動部材72が圧縮機201の出口と吸入室251とをつなぐ冷媒通路に配置される。吐出室253から吐出弁7に導入された圧力Pdhは、吐出弁部を通過することにより圧力Pdlとなって圧縮機201の出口から吐出される。
【0067】
次に、吐出弁の動作について説明する。図9〜図11は、吐出弁の動作の主要部を表す図である。既に説明した図8は、圧縮機201が高負荷で運転されている通常の制御状態を表している。図9〜図11は、圧縮機201が低負荷で運転されるときの制御状態の変化の過程を表している。
【0068】
圧縮機201の高負荷運転時には、差圧(Pdl−Ps)が十分に大きいため、図8に示すように、差圧応動部材72は、その差圧による力でストッパ74に当接した状態となる。図示の例では、圧縮機201が最大容量運転を行っており吐出冷媒の流量も多く、吐出弁部が全開状態となっている。このため、差圧(Pdh−Pdl)が実質的にゼロとなり、スプリング82が伸びきっている。
【0069】
一方、車両が低温環境下におかれた場合など、圧縮機201の低負荷運転時には、差圧(Pdl−Ps)が小さくなる。この差圧(Pdl−Ps)が設定値(例えば3Mpa)以下になると、スプリング83の付勢力により差圧応動部材72がストッパ74から離間する。図9〜図11に示すように、差圧応動部材72は、低負荷になるほどストッパ74から離間する方向に動作する。その結果、スプリング82の付勢力によって弁体73が相対的に閉弁方向に動作する。そして吐出弁部の開度が小さくなると、弁体73には前後差圧が発生し、スプリング82による付勢力も発生する。弁体73は、差圧(Pdh−Pdl)による力とスプリング82による付勢力とがバランスした位置に保持される。図11の例では、圧縮機201が極低負荷の運転状態にあり差圧(Pdl−Ps)が小さいため(例えば1.5Mpa程度)、差圧応動部材72が係止部88に係止される位置まで変位している。吐出弁部は微少開度で開弁されており、差圧(Pdh−Pdl)が比較的大きく(例えば1.3Mpa程度)なっている。
【0070】
このように、低負荷になるほど、差圧応動部材72が弁体73を閉弁方向に付勢して吐出冷媒の導出を規制し、吐出弁部の前後差圧(Pdh−Pdl)を大きくしている。これにより、極低負荷状態であるために出口圧力Pdlが低くなっても、吐出圧力Pdhについてはその差圧(Pdh−Pdl)分だけ高く保持できるようにしている。その結果、圧縮機201の低負荷時においても吐出圧力Pdhの低下を抑制でき、圧力の供給先となる中圧室65の中間圧力Pshを確保することができる。
【0071】
以上に説明したように、本実施の形態の制御弁1によれば、パワーエレメント6の動作により中間圧力Pshが基準圧力となるように第1制御弁部が開閉動作する一方、第2制御弁部の開閉動作によりその基準圧力が設定差圧だけ減圧されて設定圧力となる。この設定差圧はソレノイド3への供給電流量により変化する。すなわち、常に一定に制御される基準圧力に対し、設定差圧という形で外部的に減圧量を設定することで設定圧力を自由に調整できる。本実施の形態では、第1制御弁部の基準圧力を比較的高く(例えば5Mpa程度)設定することで、高圧で作動する二酸化炭素を冷媒とすることを可能としている。一方、ソレノイド3が関与する第2制御弁部の設定差圧を小さく(例えば1Mpa程度)抑えることで、その大型化を回避している。
【0072】
また、吐出弁7を設け、圧縮機201の低負荷時においても吐出圧力Pdhを高く保持し、中圧室65の中間圧力Pshを確保することができるようにした。このため、例えば低温環境下においても、吸入圧力Psを設定圧力に維持する制御を有効に機能させることができ、除湿運転等も良好に行うことができる。一方、通常の容量運転時においては、吐出弁部がその前後差圧(Pdh−Pdl)ではなく、差圧(Pdl−Ps)により開弁状態を保持するため、吐出弁7の前後で圧力損失が生じにくい。圧縮機201における圧縮エネルギーの無駄な消費が抑制される。
【0073】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はその特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0074】
上記実施の形態では、吐出弁7の差圧応動部材72を、出口圧力Pdlと吸入圧力Psとの差圧(Pdl−Ps)を感知して動作するように構成したが、出口圧力Pdlとクランク圧力Pcとの差圧(Pdl−Pc)を感知して動作するように構成してもよい。その場合、吐出弁7のポート76をクランク室254に連通させるようにするとよい。一般に吸入圧力Psとクランク圧力Pcとの差は小さいため、クランク圧力Pcを基準にしても上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、上記実施の形態では、吐出弁7の弁体73が差圧応動部材72との協働により自律的に開弁する機械式の差圧弁として構成した例を示したが、ソレノイド駆動の電磁弁として構成してもよい。その場合には、吐出弁部の開弁差圧を適宜設定変更することができ、より幅広い制御を行うことができる。
【0075】
上記実施の形態では、制御弁1を二酸化炭素等の高圧で作動する冷媒を対象とし、吸入圧力Psを感知して動作するいわゆるPs感知弁として構成した例を示した。変形例においては、代替フロン(例えばHFC−134a)等の比較的低圧で作動する冷媒を扱う制御弁として構成してもよい。例えば、パワーエレメントの感圧部材を構成する皿ばねの数を少なくし、耐圧強度および荷重を小さくしてもよい。その場合には、冷凍サイクルにおいてガスクーラに代わって凝縮器などの外部熱交換器が配置される。また、吸入圧力Psではなく、クランク圧力Pcを感知するいわゆるPc感知弁として構成してもよい。その場合、中圧室には、吐出圧力Pdの漏洩により、クランク圧力Pcの設定圧力よりも高い中間圧力Pchが満たされる。また、上記実施の形態では、制御弁1を吐出室253からクランク室254へ導入する冷媒流量を制御するいわゆる「入れ制御」の制御弁として構成した例を示した。変形例においては、クランク室から吸入室へ導出する冷媒流量を制御するいわゆる「抜き制御」の制御弁として構成してもよい。あるいは、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量およびクランク室から吸入室へ導出する冷媒流量の双方を制御するいわゆる三方弁として構成してもよい。各変形例の構成は、例えば先行する未公開の特許出願(特願2007−274373号)の各実施の形態として開示したものを採用することができる。
【0076】
上記実施の形態では、吐出弁7を圧縮機201の出口と吐出室253との間に配設した例を示したが、例えば圧縮機201の出口とガスクーラ202との間に配設してもよい。また、上記実施の形態では、膨張装置203としていわゆる温度式膨張弁を採用した例を示したが、例えば固定オリフィスを有するオリフィスチューブを採用してもよい。
【0077】
上記実施の形態においては、感圧部としてのパワーエレメントを、ハウジングと、これを密閉空間と開放空間とに仕切る金属製のダイヤフラムと、密閉空間に配置されてダイヤフラムの剛性を補う皿ばねとを含んで構成する例を示した。変形例においては、皿ばねをハウジングに直接固定する構成としてもよい(皿ばねは積層体でもよい)。具体的には、皿ばねの周縁部を第1ハウジングと第2ハウジングとの間に挟まれるようにして、溶接等によりハウジングに固定してもよい。
【0078】
上記実施の形態においては、パワーエレメント6の動作により中間圧力を基準圧力に保持する第1制御弁部と、ソレノイドにより前後差圧が設定差圧に制御される第2制御弁部とを、一つの制御弁の中に構成した例を示した。変形例においては、これらの各制御弁部を個々に有する圧力感知弁と差圧弁とを別体で構成し、直列に配置して用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
【図2】圧縮機の構成を表す断面図である。
【図3】制御弁の構成を示す断面図である。
【図4】図3の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【図5】制御弁の感圧部を中心とした動作を表す説明図である。
【図6】制御弁の感圧部を中心とした動作を表す説明図である。
【図7】制御弁の感圧部を中心とした動作を表す説明図である。
【図8】吐出弁の構成を示す断面図である。
【図9】吐出弁の動作の主要部を表す図である。
【図10】吐出弁の動作の主要部を表す図である。
【図11】吐出弁の動作の主要部を表す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 6 パワーエレメント、 7 吐出弁、 15 弁孔、 16 弁座、 17 作動ロッド、 19 ダイヤフラム、 20 弁体、 21 弁座形成部材、 22 弁座、 23 ガイド孔、 25 弁体、 50 ハウジング、 52 耐摩耗シート、 61 内部通路、 65 中圧室、 71 ボディ、 72 差圧応動部材、 73 弁体、 74 ストッパ、 78 弁座、 79 フランジ部、 82 スプリング、 83 スプリング、 88 係止部、 111 揺動板、 201 圧縮機、 202 ガスクーラ、 203 膨張装置、 204 蒸発器、 205 受液器、 206 制御部、 250 駆動回路、 251 吸入室、 252 シリンダ、 253 吐出室、 254 クランク室、 255 冷媒通路、 256 オリフィス、 S1 密閉空間、 S2 開放空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置を構成する冷凍サイクルにおいて、
吸入室から吸入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機と、
前記可変容量圧縮機から吐出された冷媒を冷却する外部熱交換器と、
前記外部熱交換器から送出された冷媒を減圧する膨張装置と、
前記膨張装置にて減圧された冷媒を蒸発させるとともに前記可変容量圧縮機に向けて送出する蒸発器と、
前記可変容量圧縮機の吐出室および吸入室の少なくとも一方とクランク室とを連通させる制御通路に設けられた第1制御弁部と、吐出圧力が減圧されて得られた設定圧力以上の中間圧力が満たされる中圧室と、前記中間圧力を感知し、その中間圧力が予め設定された基準圧力となるように前記第1制御弁部の開閉方向の力を発生させる感圧部と、前記吸入室または前記クランク室と前記中圧室とを連通させる調圧通路に設けられ、その開閉によりその前後差圧を発生させる第2制御弁部と、その第2制御弁部の前後差圧が供給電流量に応じた設定差圧となるようソレノイド力を発生させ、その設定差圧の変更により前記設定圧力を変化させるソレノイドとを含み、前記可変容量圧縮機の吸入圧力またはクランク圧力を前記設定圧力に保つように、前記吐出室から前記クランク室に導入する冷媒流量および前記クランク室から前記吸入室へ導出する冷媒流量の少なくとも一方を制御して前記可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、
所定の外部情報に基づいて前記設定圧力を決定し、その設定圧力を得るために必要な設定差圧に応じて前記制御弁への通電制御を行う制御部と、
前記可変容量圧縮機の吐出室と前記外部熱交換器との間の冷媒通路に設けられた吐出弁部と、前記吸入室または前記クランク室と前記外部熱交換器との間の冷媒通路に設けられた差圧応動部とを含み、前記吸入圧力または前記クランク圧力と前記吐出圧力との差圧が開弁差圧以上になると前記吐出弁部が開弁する一方、前記差圧応動部の前後差圧が設定値以下になると前記差圧応動部が前記吐出弁部を閉弁方向に付勢し、前記吐出弁部の前後差圧を大きくして前記吐出圧力の低下を抑制する吐出弁と、
を備えたことを特徴とする冷凍サイクル。
【請求項2】
前記制御弁が、前記吐出室に連通する高圧室から前記中圧室へ冷媒を漏洩させる冷媒漏洩通路を有していることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル。
【請求項3】
前記吐出弁は、前記可変容量圧縮機の内部に設けられ、
前記吐出弁部が、前記可変容量圧縮機の出口と前記吐出室とをつなぐ第1冷媒通路に配設され、
前記差圧応動部が、前記可変容量圧縮機の出口と前記吸入室または前記クランク室とをつなぐ第2冷媒通路に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍サイクル。
【請求項4】
前記吐出弁は、
前記吐出室に連通する高圧室連通ポートと、前記可変容量圧縮機の出口に連通する出口連通ポートと、前記吸入室または前記クランク室に連通する低圧室連通ポートとが形成されたボディと、
前記ボディの前記低圧室連通ポートと前記出口連通ポートとの間に摺動可能に設けられて、前記差圧応動部として機能する差圧応動部材と、
前記ボディの前記出口連通ポートと前記高圧室連通ポートとの間に設けられて、前記吐出弁部として機能する弁体と、
前記差圧応動部材を前記弁体の閉弁方向に付勢する第1付勢部材と、
前記弁体と前記差圧応動部材との間に設けられて、前記弁体を閉弁方向に付勢する第2付勢部材と、
を備えていることを特徴とする請求項3に記載の冷凍サイクル。
【請求項5】
空調装置の冷凍サイクルを構成し、蒸発器側から吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から外部熱交換器側へ吐出する可変容量圧縮機において、
前記可変容量圧縮機の吐出室および吸入室の少なくとも一方とクランク室とを連通させる制御通路に設けられた第1制御弁部と、吐出圧力が減圧されて得られた設定圧力以上の中間圧力が満たされる中圧室と、前記中間圧力を感知し、その中間圧力が予め設定された基準圧力となるように前記第1制御弁部の開閉方向の力を発生させる感圧部と、前記吸入室または前記クランク室と前記中圧室とを連通させる調圧通路に設けられ、その開閉によりその前後差圧を発生させる第2制御弁部と、その第2制御弁部の前後差圧が供給電流量に応じた設定差圧となるようソレノイド力を発生させ、その設定差圧の変更により前記設定圧力を変化させるソレノイドとを含み、前記可変容量圧縮機の吸入圧力またはクランク圧力を前記設定圧力に保つように、前記吐出室から前記クランク室に導入する冷媒流量および前記クランク室から前記吸入室へ導出する冷媒流量の少なくとも一方を制御して前記可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、
前記可変容量圧縮機の出口と前記吐出室との間の冷媒通路に設けられた吐出弁部と、前記可変容量圧縮機の出口と前記吸入室または前記クランク室との間の冷媒通路に設けられた差圧応動部とを含み、前記吸入圧力または前記クランク圧力と前記吐出圧力との差圧が開弁差圧以上になると前記吐出弁部が開弁する一方、前記差圧応動部の前後差圧が設定値以下になると前記差圧応動部が前記吐出弁部を閉弁方向に付勢し、前記吐出弁部の前後差圧を大きくして前記吐出圧力の低下を抑制する吐出弁と、
を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機。
【請求項6】
前記中圧室に連通する高圧室を備え、
前記制御弁は、前記高圧室から前記中圧室へ冷媒を漏洩させる冷媒漏洩通路を有していることを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機。
【請求項7】
前記吐出弁は、
前記吐出室に連通する高圧室連通ポートと、前記可変容量圧縮機の出口に連通する出口連通ポートと、前記吸入室または前記クランク室に連通する低圧室連通ポートとが形成されたボディと、
前記ボディの前記低圧室連通ポートと前記出口連通ポートとの間に摺動可能に設けられて、前記差圧応動部として機能する差圧応動部材と、
前記ボディの前記出口連通ポートと前記高圧室連通ポートとの間に設けられて、前記吐出弁部として機能する弁体と、
前記差圧応動部材を前記弁体の閉弁方向に付勢する第1付勢部材と、
前記弁体と前記差圧応動部材との間に設けられて、前記弁体を閉弁方向に付勢する第2付勢部材と、
を備えていることを特徴とする請求項6に記載の可変容量圧縮機。
【請求項8】
前記制御弁は、
前記制御通路を形成する第1弁孔に接離するように配置されて前記第1制御弁部を開閉する第1弁体と、
前記感圧部による力を受けて前記第1弁体と一体に動作可能な作動ロッドと、
前記調圧通路を形成する第2弁孔に接離するように配置され、前記ソレノイド力を受けて前記第2制御弁部を開閉する第2弁体と、
を備え、
前記感圧部は、ボディに設けられたハウジングと、前記ハウジング内を前記中間圧力が導入される開放空間と密閉空間とに仕切るように配設された感圧部材とを含んで構成され、前記吸入圧力またはクランク圧力が前記設定圧力よりも低くなったときに前記感圧部材が変位して、前記作動ロッドを介して前記第1弁体に開弁方向の駆動力を付与し、
前記ソレノイドは、前記第2弁体に閉弁方向のソレノイド力を付与することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の可変容量圧縮機。
【請求項9】
前記制御弁は、
前記感圧部が前記ボディの一端側に設けられる一方、前記ソレノイドが前記ボディの他端側に設けられ、
前記ボディの一端側から順に前記クランク室に連通するクランク室連通ポート、前記吐出室に連通する吐出室連通ポート、前記吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられ、
前記ボディ内において、前記感圧部と前記クランク室連通ポートとの間に摺動孔、前記クランク室連通ポートと前記吐出室連通ポートとの間に前記第1弁孔、前記吐出室連通ポートと前記吸入室連通ポートとの間にガイド孔がそれぞれ設けられ、
前記作動ロッドは前記第1弁孔を貫通し、その一端側が前記摺動孔に摺動可能に支持される一方、他端側が前記ガイド孔に摺動可能に支持され、
前記中圧室が、前記作動ロッドと前記ガイド孔とに囲まれる空間に形成され、前記作動ロッドを貫通するように設けられた内部通路を介して前記開放空間へ連通するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の可変容量圧縮機。
【請求項10】
前記制御弁は、前記摺動孔の断面積、前記第1弁孔の断面積、および前記ガイド孔の断面積が実質的に等しく形成されることにより、前記作動ロッドに作用する吐出圧力および前記クランク圧力の影響をキャンセルし、前記中間圧力が前記基準圧力に保持されるように前記第1弁体が自律的に動作するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の可変容量圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−108770(P2009−108770A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282163(P2007−282163)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】