説明

冷凍システム及び冷凍システムの運転方法

【課題】本発明の目的は、空気冷媒冷凍機内へ湿分が持ち込まれることが防がれる冷凍システム及びその運転方法を提供することである。
【解決手段】冷凍システムは、予冷室(2a)と主冷凍室(2b)とに仕切られた冷凍室(2)と、冷凍対象物(11)が前記予冷室及び前記主冷凍室をこの順番に通過するように冷凍対象物を搬送するコンベヤ(4)と、液体窒素を前記予冷室内に供給する液体窒素供給装置(5)と、空気冷媒冷凍機(12)とを具備する。前記空気冷媒冷凍機は、前記主冷凍室内から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記主冷凍室内に戻すように構成されている。予冷室において冷凍対象物の表面部分を凍結させることにより、冷凍対象物からの湿分が空気冷媒冷凍機内に持ち込まれることが防がれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍システム及びその運転方法に関し、特に空気冷媒冷凍機を備えた冷凍システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の凍結保存方法の一つとして、最初に超低温で食品の表面部分に氷のカプセルを作り、次に凍結温度を上げて食品の表面部分及び中心部分の温度を均衡させ、その後再び急速凍結により食品全体を凍結させてから、凍結保存温度に移行する方法が知られている。
【0003】
特許文献1は、上述した凍結保存方法を実施することができる食品の凍結装置を開示している。この凍結装置は、冷凍すべき食品を搬送するコンベヤを囲む冷凍室を備える。この冷凍室内に、入口側から出口側に向かって、液化ガスによる第1冷凍ステージ、冷凍サイクルによる第2冷凍ステージ、液化ガスによる第3冷凍ステージ、冷凍サイクルによる第4冷凍ステージが設けられている。第1及び第3ステージにおいては、液化ガスを噴霧することで−50℃〜−90℃の雰囲気がつくられる。第2及び第4ステージにおいては、冷凍サイクルにより−20℃〜−45℃の雰囲気がつくられる。第2及び第4ステージにおいては、冷凍サイクルの蒸発器がコンベヤの両側に設けられている。これらの蒸発器において、冷媒と雰囲気との間で熱交換が行われる。
【0004】
特許文献1には、各ステージにおける雰囲気の温度について以下のように記載されている。第1ステージにおける雰囲気の温度が−50℃より高いと食品の表面部分に氷のカプセルを作るために必要な急速凍結ができず、−90℃より低いと食品の表面にクラックが生じやすくなり、かつ蛋白変性が起こりやすくなる。第2ステージにおける雰囲気の温度が−20℃より高いと次の急速凍結に支障が生じ、−45℃より低いと食品の中心部分と表面部分の温度差を縮める作用が得られずに食品にクラックが発生するおそれがある。第3ステージにおける雰囲気の温度が−50度より高いと最大氷結晶生成温度帯を通過させるのに時間がかかるために微細な氷結晶が得られず、−90℃より低いと食品の表面にクラックが生じやすくなり、かつ蛋白変性が起こりやすくなる。第4ステージにおいては、前段のステージで凍結された食品が深凍結される。このとき食品は既に最大氷結晶生成温度帯を下まわる温度となっているため、比較的緩慢な冷却で十分である。それでも雰囲気の温度が−20℃より高いとこの深凍結に時間がかかり過ぎ、−45℃より低いと食品にクラックが発生するおそれがある。
【0005】
一方、特許文献2には、空気冷媒冷凍機が開示されている。この空気冷媒冷凍機は、冷凍室内の空気を効率的に冷却することが可能である。しかし、空気冷媒冷凍機の備えるコンプレッサ、熱交換器及び膨張タービンを冷凍室内の空気が循環するため、空気に多量の湿分が含まれている場合にはデフロストを頻繁に行う必要がある。
【0006】
【特許文献1】実開平5−53491号公報
【特許文献2】特開2002−310523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、空気冷媒冷凍機内へ湿分が持ち込まれることが防がれる冷凍システム及びその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための最良の形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための最良の形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による冷凍システムは、予冷室(2a)と主冷凍室(2b)とに仕切られた冷凍室(2)と、冷凍対象物(11)が前記予冷室及び前記主冷凍室をこの順番に通過するように冷凍対象物を搬送するコンベヤ(4)と、液体窒素を前記予冷室内に供給する液体窒素供給装置(5)と、空気冷媒冷凍機(12)とを具備する。前記空気冷媒冷凍機は、前記主冷凍室内から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記主冷凍室内に戻すように構成されている。
【0010】
外気が流入しやすいコンベヤ式冷凍装置に空気冷媒式冷凍機を適用すると、空気冷媒式冷凍機内への湿分の持ち込みが問題となる。本発明によれば、予冷室において冷凍対象物の表面部分を凍結させることにより、冷凍対象物からの湿分が空気冷媒冷凍機内に持ち込まれることが防がれる。
【0011】
本発明における冷凍システムにおいては、前記液体窒素供給装置は、液体窒素を前記予冷室内に噴き出すように構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明による冷凍システムは、前記空気冷媒冷凍機と前記主冷凍室とを接続する排冷風回収ダクト(13)と、前記空気冷媒冷凍機と前記主冷凍室とを接続する冷風供給ダクト(25)とを具備しすることが好ましい。前記コンベヤは、前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口(2d)から前記冷凍対象物を前記主冷凍室に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口(2e)から搬出するように設けられることが好ましい。前記排冷風回収ダクトの排冷風回収口(13a)が前記主冷凍室内の前記出口側に配置されていることが好ましい。前記冷風供給ダクトの冷風供給口(25a)が前記主冷凍室内の前記接続口側に配置されていることが好ましい。前記空気冷媒冷凍機は、前記排冷風回収口から前記主冷凍室内の空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を前記膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記冷風供給口から前記主冷凍室内に戻すように構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明による冷凍システムは、シート(7)を具備することが好ましい。前記コンベヤは、冷凍対象物を前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口(2d)から前記主冷凍室内に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口から搬出するように設けられていることが好ましい。前記シートは、前記接続口を部分的に塞ぐことが可能なように設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明による冷凍システムは、前記シートを巻き取るための巻き取り装置(8)を具備することが好ましい。
【0015】
本発明による冷凍システムは、前記主冷凍室内の温度を検出する温度センサ(10)と、制御装置(30)とを具備することが好ましい。前記制御装置は、前記巻き取り装置が前記シートを巻き取った状態にあるとき、前記液体窒素供給装置に液体窒素を噴き出すことを開始させ、且つ、前記空気冷媒冷凍機に運転を開始させることが好ましい。前記制御装置は、前記温度が所定の温度より低下したことに基づいて前記巻き取り装置に前記シートを巻き戻させることが好ましい。
【0016】
本発明による冷凍システムは、前記予冷室内の温度を検出する温度センサ(9)と、前記温度が−90℃より低く−196℃より高くなるように前記液体窒素供給装置が噴き出す液体窒素の量を制御する制御装置(3)とを具備することが好ましい。
【0017】
本発明による冷凍システムの運転方法においては、前記冷凍システムは、予冷室(2a)と主冷凍室(2b)とに仕切られた冷凍室(2)と、冷凍対象物(11)が前記予冷室及び前記主冷凍室をこの順番に通過するように冷凍対象物を搬送するコンベヤ(4)と、空気冷媒冷凍機(12)とを具備する。前記空気冷媒冷凍機は、前記主冷凍室内から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記主冷凍室内に戻すように構成されている。前記冷凍システムの運転方法は、前記予冷室内に液体窒素を供給しながら、前記空気冷媒冷凍機を運転する工程を具備する。
【0018】
本発明による冷凍システムの運転方法においては、前記空気冷媒冷凍機を運転する前記工程において、前記予冷室内に液体窒素を噴き出しながら、前記空気冷媒冷凍機を運転することが好ましい。
【0019】
本発明による冷凍システムの運転方法においては、前記冷凍システムは、シート(7)を具備することが好ましい。前記コンベヤは、冷凍対象物を前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口(2d)から前記主冷凍室に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口(2e)から搬出するように設けられていることが好ましい。前記シートは、前記接続口を部分的に塞ぐことが可能なように設けられていることが好ましい。前記冷凍システムの運転方法は、前記シートが前記接続口の比較的小さい部分を塞いでいる状態のときに、前記予冷室内に液体窒素を噴き出すことを開始し、且つ、前記空気冷媒冷凍機の運転を開始する開始工程と、前記主冷凍室内の温度が所定の温度より低下したことに基づいて前記シートで前記接続口の比較的大きい部分を塞ぐ工程とを具備することが好ましい。
【0020】
本発明による冷凍システムの運転方法の前記開始工程においては、前記予冷室内に液体窒素を噴き出すことが開始された後に前記空気冷媒冷凍機の運転が開始されることが好ましい。
【0021】
本発明による冷凍システムの運転方法においては、前記コンベヤは、冷凍対象物を前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口(2d)から前記主冷凍室に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口(2e)から搬出するように設けられていることが好ましい。前記空気冷媒冷凍機を運転する前記工程において、前記空気冷媒冷凍機は、前記主冷凍室内の前記出口側から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を前記膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記主冷凍室内の前記接続口側に戻すことが好ましい。
【0022】
本発明による冷凍システムの運転方法の前記空気冷媒冷凍機を運転する前記工程において、前記予冷室内の温度が−90℃より低く−196℃より高くなるように前記予冷室内に噴き出す液体窒素の量が制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、空気冷媒冷凍機内へ湿分が持ち込まれることが防がれる冷凍システム及びその運転方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明による冷凍システム及び冷凍システムの運転方法を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0025】
(冷凍システムの構成)
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍システム1の全体図を示している。冷凍システム1は、予冷室2aにおいて液体窒素を用いて冷凍対象物11の表面部分だけを凍結した後、主冷凍室2bにおいて空気冷媒冷凍機12を用いて中心部分まで凍結する。冷凍システム1は、冷凍室2と、コンベヤ4と、液体窒素供給装置5と、シート7と、巻き取り装置8と、温度センサ9と、温度センサ10と、空気冷媒冷凍機12と、排冷風回収ダクト13と、冷風供給ダクト25と、後述する制御装置30とを備えている。冷凍室2は、予冷室2aと主冷凍室2bとに仕切られている。予冷室2aには入口2cが設けられている。予冷室2aと主冷凍室2bとを接続する接続口2dが設けられている。主冷凍室2bには出口2eが設けられている。コンベヤ4(例示:ベルトコンベヤ)は、冷凍対象物11が入口2cから予冷室2aに入り、予冷室2aを通過して接続口2dから主冷凍室2bに入り、主冷凍室2bを通過して出口2eから出るように冷凍対象物11を搬送する。液体窒素供給装置5は、液体窒素を予冷室2a内に噴き出す。温度センサ9は、予冷室2a内の温度を検出する。排冷風回収ダクト13は、主冷凍室2bと空気冷媒冷凍機12とを接続している。冷風供給ダクト25は、主冷凍室2bと空気冷媒冷凍機12とを接続している。空気冷媒冷凍機12は、排冷風回収ダクト13の排冷風回収口13aから主冷凍室2b内の空気を取り込み、取り込んだ空気を冷却し、冷却した空気を冷風供給ダクト25の冷風供給口25aから主冷凍室2b内に戻す。温度センサ10は、主冷凍室2b内の温度を検出する。シート7は、接続口2dを部分的に塞ぐことが可能なように設けられている。ここで、接続口2dを部分的に塞ぐとは、コンベヤ4が冷凍対象物11を搬送することが可能なように塞ぐことを意味する。巻き取り装置8は、図2に示されるように、シート7が取り付けられたローラを正逆方向に回転してシート7を巻き取り、巻き戻す。巻き取られた状態のシート7は接続口2dの比較的小さい部分を塞ぐ。巻き戻された状態のシート7は接続口2dの比較的大きい部分を塞ぐ。シート7を巻き取り巻き戻すことにより予冷室2aと主冷凍室2bとの間のガスの移動及びそれに伴なう熱移動が調節される。
【0026】
図3は、空気冷媒冷凍機12のシステム線図を示している。図3においては、圧力は全て絶対圧力で示されている。空気冷媒冷凍機12は、主冷凍室出口側弁14と、第1配管15と、コンプレッサ16と、モータ17と、膨張タービン18と、冷却用ラジエータ20と、冷却ファン21と、第2配管22と、第3配管23と、主冷凍室入口側弁24と、第1熱交換器26と、排熱回収熱交換器27と、除霜器28と、デフロストライン29とを備えている。コンプレッサ16と、モータ17と、膨張タービン18とは、一軸のタービンユニット19を形成している。コンプレッサ16及び膨張タービン18は、モータ17によって駆動される。コンプレッサ16はモータ17の回転子の一方側に設けられ、膨張タービン18は回転子の他方側に設けられている。モータ17は、磁気軸受17aで回転子を支持することにより、オイルフリーを実現している。モータ17は、冷却用ラジエータ20及び冷却ファン21により冷却される。主冷凍室出口側弁14は、3つのポート14a〜14cを備えた三方弁である。主冷凍室入口側弁24は、2つのポート24a及び24bを備えたニ方弁である。排冷風回収ダクト13は、排冷風回収口13aの反対側がポート14aに接続されている。第1配管15は、ポート14bとコンプレッサ16の入口とを接続している。第2配管22は、コンプレッサ16の出口と膨張タービン18の入口とを接続している。第3配管23は、膨張タービン18の出口とポート24aとを接続している。冷風供給ダクト25は、冷風供給口25aの反対側がポート24bに接続されている。第1熱交換器26は第2配管22に設けられている。排熱回収熱交換器27は、第2配管22の第1熱交換器26より下流側の部分と第1配管15とにまたがって設けられている。つまり、第1熱交換器26は第2配管22のコンプレッサ16側(上流側)に配置され、排熱回収熱交換器27は第2配管22の膨張タービン18側(下流側)に配置されている。除霜器28は第3配管23に設けられている。デフロストライン29は、第3配管23の除霜器28と主冷凍室入口側弁24との間の部分とポート14cとを接続している。デフロストライン29は、空気冷媒冷凍機12のデフロストの際に使用される。
【0027】
冷凍システム1においては、主冷凍室2b内の空気が空気冷媒冷凍機12の冷凍サイクルにより直接冷却されるから、フロン冷媒を用いた冷凍サイクルにより主冷凍室2b内の空気を冷却するときのように熱交換器(蒸発器)を主冷凍室2b内に設ける必要がない。そのため、主冷凍室2bの小型化が容易である。
【0028】
また、排冷風回収ダクト13内にフィルタを設けると、冷凍システム1のメンテナンス性が向上する。
【0029】
図4は、冷凍システム1の制御系を示している。温度センサ9は、予冷室2a内の温度を検出して制御装置30に入力する。温度センサ10は、主冷凍室2b内の温度を検出して制御装置30に入力する。制御装置30は、コンベヤ4、液体窒素供給装置5、巻き取り装置8及び空気冷媒冷凍機12の各々を制御する。
【0030】
(冷凍システムの運転方法)
はじめに、冷凍運転時の冷凍システム1の運転方法について説明する。シート7は、巻き取り装置8によって巻き戻された状態であり、接続口2dの比較的大きい部分を塞いでいる。冷凍対象物11は、コンベヤ4によって搬送され、入口2cから冷凍室2に入り、予冷室2a、接続口2d、主冷凍室2bを順に通過して出口2eから冷凍室2の外に出る。このとき、冷凍対象物11は、予冷室2aにおいて液体窒素により表面部分が凍結される。それから冷凍対象物11は、主冷凍室2bにおいて中心部分まで凍結される。冷凍対象物11は表面部分が凍結された状態で主冷凍室2bに搬入されるため、冷凍対象物11の湿分が雰囲気に移動して空気冷媒冷凍機12に持ち込まれることが防がれる。冷凍運転により、初期温度20℃の冷凍対象物11は、凍結されて−60℃になる。
【0031】
図3に示されるように、主冷凍室2bから排冷風回収ダクト13を経由して空気冷媒冷凍機12に取り込まれた空気は、温度が−60℃、圧力(絶対圧、以下同じ)が0.1MPaである。この空気は、第1配管15を経由してコンプレッサ16に流入する途中、排熱回収熱交換器27において第2配管22を流れる空気との間で熱交換され、温度が29℃、圧力が0.1MPaになる。その後、この空気は、コンプレッサ16において断熱圧縮され、温度が114℃、圧力が0.2MPaになる。その後、この空気は、第2配管22を経由して膨張タービン18に流入する途中、第1熱交換器26において熱媒体(例示:水)との間で熱交換され、次いで排熱回収熱交換器27において第1配管15を流れる空気との間で熱交換される。空気は第1熱交換器26を通過するときに冷却され、温度及び圧力が37℃及び0.2MPaになる。空気は排熱回収熱交換器27を通過するときに冷却され、温度及び圧力が−52℃及び0.2MPaになる。その後、空気は、膨張タービン18において断熱膨張され、除霜器28において霜が取り除かれた後、冷風供給ダクト25を経由して主冷凍室2b内に戻される。このときの空気は、温度が−85℃、圧力が0.1MPaである。
【0032】
上述したように、冷凍対象物11は、表面部分が凍結された状態で主冷凍室2bに搬入される。したがって、冷凍対象物11の湿分が雰囲気中に移動し、雰囲気とともに空気冷媒冷凍機12に持ち込まれることが防がれる。よって、空気冷媒冷凍機12のデフロストを頻繁に行う必要がなくなる。また、湿分が氷塊を形成すると、この氷塊により膨張タービン18のタービン羽根が損傷を受ける場合がおこり得る。タービン羽根の交換中は空気冷媒冷凍機12が長期間に渡って使用できなくなるから、湿分が空気冷媒冷凍機12へ持ち込まれることを防ぐことは重要である。空気冷媒冷凍機12は、−85℃という非常に温度の低い冷風を主冷凍室2b内に供給することが可能である。空気冷媒冷凍機12内で霜や氷塊が形成されることを防ぐためには、冷凍対象物11の表面部分の温度を非常に低くする必要がある。したがって、制御装置30は、温度センサ9の検出する予冷室2a内の温度が−90℃より低く−196℃より高くなるように液体窒素供給装置5が予冷室2a内に噴き出す液体窒素の量を制御することが好ましい。なお、液体窒素は、液体状態のまま冷凍対象物11にかけられてもよく、気体状態で冷凍対象物11に吹き付けられてもよい。
【0033】
また、制御装置30は、予冷室内2aに噴き出された液体窒素が気化した窒素ガスが接続口2dから主冷凍室2b内に流入して主冷凍室2b内の圧力を高めるように、液体窒素供給装置5が噴き出す液体窒素の量を制御することが好ましい。この場合、湿分を含んだ空気が出口2eから主冷凍室2b内に流入することが防がれる。
【0034】
ここで、接続口2dから低温の窒素ガスが流入するから、主冷凍室2b内は接続口2d側の温度が低くなる。したがって、排冷風回収口13aが主冷凍室2b内の出口2e側に配置され、冷風供給口25aが主冷凍室2b内の接続口2d側に配置されていることが好ましい。空気冷媒冷凍機12が比較的温度の高い出口2e側から空気を取り込むことで、主冷凍室2b内の空気が効率的に冷却される。
【0035】
なお、排冷風回収口13aを接続口2d側に配置し、冷風供給口25aを出口2e側に配置することも可能である。この場合、冷風供給口25aから排冷風回収口13aへと主冷凍室2b内を流れる空気が冷凍対象物11に対して対向流となるため、空気と冷凍対象物11との間の熱交換が効率化される。
【0036】
初期温度20℃のマグロのさくを冷凍システム1により凍結して−60℃にする場合についての熱計算結果によると、コンベヤ4の搬送速度が1.1m/s、予冷室2aの通過時間が1分、主冷凍室2bの通過時間が25分、液体窒素供給装置5の出力が3kW、空気冷媒冷凍機12の出力が30kWとなった。ここで、マグロのさくのサイズとして200×80×20mm、質量として320g/個、比熱として0.41kcal/(kg・K)、表面熱伝達率として8W/(m・K)、処理量として400kg/h(1250個/h)をそれぞれ用いた。冷凍システム1においては、液体窒素のみを用いて凍結する場合に比べてランニングコストが低減される。
【0037】
次に、停止状態からの立上げ時における冷凍システム1の運転方法について説明する。停止状態においては、コンベヤ4は停止している。シート7は、巻き取り装置8によって巻き取られ、接続口2dの比較的小さい部分を塞いでいる。液体窒素供給装置5は、予冷室2a内に液体窒素を噴き出していない。空気冷媒冷凍機12は、停止している。
【0038】
制御装置30は、液体窒素供給装置5に液体窒素を噴き出すことを開始させ、空気冷媒冷凍機12に運転を開始させる。このとき、予冷室2aは、液体窒素により冷却され、主冷凍室2bは、液体窒素が気化した低温の窒素ガスが接続口2dから流入することにより、及び、空気冷媒冷凍機12が行う冷凍サイクルにより冷却される。
【0039】
制御装置30は、温度センサ9及び10のいずれか一方又は両方が検出する温度が所定の温度(例示:−90℃)より低下したことに基づいて、巻き取り装置8にシート7を巻き戻させる。シート7は、巻き戻された状態においては、接続口2dの比較的大きな部分を塞いでいる。
【0040】
制御装置30は、巻き取り装置8にシート7を巻き戻させた後、コンベヤ4に運転を開始させる。これにより、冷凍システム1は冷凍運転状態となる。
【0041】
ここで、液体窒素供給装置5に液体窒素を噴き出すことを開始させるタイミングと空気冷媒冷凍機12に運転を開始させるタイミングとを一致させると、冷凍システム1全体が短時間で冷却される。空気冷媒冷凍機12に運転を開始させるタイミングを遅らせると、気化した窒素ガスにより主冷凍室2b内の空気が追い出されるため、立上げ時において空気冷媒冷凍機12に湿分が持ち込まれることが防がれる。なお、制御装置30は、液体窒素を噴き出すことを開始させてから所定の時間の経過後に空気冷媒冷凍機12に運転を開始させてもよく、液体窒素を噴き出すことを開始させた後、温度センサ10が検出する温度が所定の温度より低下したことに基づいて空気冷媒冷凍機12に運転を開始させてもよい。
【0042】
なお、予冷室2a内に液体窒素槽が設けられ、そこに液体窒素が液体窒素供給装置5によって供給されてもよい。この場合、コンベヤ4は、冷凍対象物11が液体窒素槽内を通過するように冷凍対象物11を搬送する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る冷凍システムの全体図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る冷凍システムの部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る冷凍システムが備える空気冷媒冷凍機のシステム線図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る冷凍システムの制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1…冷凍システム
2…冷凍室
2a…予冷室
2b…主冷凍室
2c…入口
2d…接続口
2e…出口
4…コンベヤ
5…液体窒素供給装置
7…シート
8…巻き取り装置
9、10…温度センサ
11…冷凍対象物
12…空気冷媒冷凍機
13…排冷風回収ダクト
13a…排冷風回収口
14…主冷凍室出口側弁
14a、14b、14c…ポート
15…第1配管
16…コンプレッサ
17…モータ
17a…磁気軸受
18…膨張タービン
19…タービンユニット
20…冷却用ラジエータ
21…冷却ファン
22…第2配管
23…第3配管
24…主冷凍室入口側弁
24a、24b…ポート
25…冷風供給ダクト
25a…冷風供給口
26…第1熱交換器
27…排熱回収熱交換器
28…除霜器
29…デフロストライン
30…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予冷室と主冷凍室とに仕切られた冷凍室と、
冷凍対象物が前記予冷室及び前記主冷凍室をこの順番に通過するように冷凍対象物を搬送するコンベヤと、
液体窒素を前記予冷室内に供給する液体窒素供給装置と、
空気冷媒冷凍機と
を具備し、
前記空気冷媒冷凍機は、前記主冷凍室内から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記主冷凍室内に戻すように構成された
冷凍システム。
【請求項2】
前記液体窒素供給装置は、液体窒素を前記予冷室内に噴き出すように構成された
請求項1に記載の冷凍システム。
【請求項3】
前記空気冷媒冷凍機と前記主冷凍室とを接続する排冷風回収ダクトと、
前記空気冷媒冷凍機と前記主冷凍室とを接続する冷風供給ダクトと
を具備し、
前記コンベヤは、前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口から前記冷凍対象物を前記主冷凍室に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口から搬出するように設けられ、
前記排冷風回収ダクトの排冷風回収口が前記主冷凍室内の前記出口側に配置され、
前記冷風供給ダクトの冷風供給口が前記主冷凍室内の前記接続口側に配置され、
前記空気冷媒冷凍機は、前記排冷風回収口から前記主冷凍室内の空気を取り込み、膨張させた空気を前記冷風供給口から前記主冷凍室内に戻すように構成された
請求項2に記載の冷凍システム。
【請求項4】
シートを具備し、
前記コンベヤは、冷凍対象物を前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口から前記主冷凍室内に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口から搬出するように設けられ、
前記シートは、前記接続口を部分的に塞ぐことが可能なように設けられた
請求項2に記載の冷凍システム。
【請求項5】
前記シートを巻き取るための巻き取り装置を具備する
請求項4に記載の冷凍システム。
【請求項6】
前記主冷凍室内の温度を検出する温度センサと、
制御装置とを具備し、
前記制御装置は、
前記巻き取り装置が前記シートを巻き取った状態にあるとき、前記液体窒素供給装置に液体窒素を噴き出すことを開始させ、且つ、前記空気冷媒冷凍機に運転を開始させ、
前記温度が所定の温度より低下したことに基づいて前記巻き取り装置に前記シートを巻き戻させる
請求項5に記載の冷凍システム。
【請求項7】
前記予冷室内の温度を検出する温度センサと、
前記温度が−90℃より低く−196℃より高くなるように前記液体窒素供給装置が噴き出す液体窒素の量を制御する制御装置と
を具備する
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の冷凍システム。
【請求項8】
冷凍システムの運転方法であって、
前記冷凍システムは、
予冷室と主冷凍室とに仕切られた冷凍室と、
冷凍対象物が前記予冷室及び前記主冷凍室をこの順番に通過するように冷凍対象物を搬送するコンベヤと、
空気冷媒冷凍機と
を具備し、
前記空気冷媒冷凍機は、前記主冷凍室内から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記主冷凍室内に戻すように構成され、
前記冷凍システムの運転方法は、
前記予冷室内に液体窒素を供給しながら、前記空気冷媒冷凍機を運転する工程を具備する
冷凍システムの運転方法。
【請求項9】
前記空気冷媒冷凍機を運転する前記工程において、前記予冷室内に液体窒素を噴き出しながら、前記空気冷媒冷凍機を運転する
請求項8に記載の冷凍システムの運転方法。
【請求項10】
前記冷凍システムは、シートを具備し、
前記コンベヤは、冷凍対象物を前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口から前記主冷凍室に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口から搬出するように設けられ、
前記シートは、前記接続口を部分的に塞ぐことが可能なように設けられ、
前記冷凍システムの運転方法は、
前記シートが前記接続口の比較的小さい部分を塞いでいる状態のときに、前記予冷室内に液体窒素を噴き出すことを開始し、且つ、前記空気冷媒冷凍機の運転を開始する開始工程と、
前記主冷凍室内の温度が所定の温度より低下したことに基づいて前記シートで前記接続口の比較的大きい部分を塞ぐ工程と
を具備する
請求項9に記載の冷凍システムの運転方法。
【請求項11】
前記開始工程においては、前記予冷室内に液体窒素を噴き出すことが開始された後に前記空気冷媒冷凍機の運転が開始される
請求項10に記載の冷凍システムの運転方法。
【請求項12】
前記コンベヤは、冷凍対象物を前記予冷室と前記主冷凍室とを接続する接続口から前記主冷凍室に搬入し、前記主冷凍室に設けられた出口から搬出するように設けられ、
前記空気冷媒冷凍機を運転する前記工程において、前記空気冷媒冷凍機は、前記主冷凍室内の前記出口側から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮し、圧縮した空気を冷却し、冷却した空気を前記膨張タービンにより膨張させ、膨張させた空気を前記主冷凍室内の前記接続口側に戻す
請求項9に記載の冷凍システムの運転方法。
【請求項13】
前記空気冷媒冷凍機を運転する前記工程において、前記予冷室内の温度が−90℃より低く−196℃より高くなるように前記予冷室内に噴き出す液体窒素の量が制御される
請求項9乃至12のいずれか1項に記載の冷凍システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−128606(P2008−128606A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316476(P2006−316476)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】