説明

冷却エレメントを被覆する方法

本発明は、主に銅で製作され、水冷管(2)を備え、とくに冶金炉またはその同等物に関連して使用される冷却エレメント(1)を被覆する方法に関するもので、冷却エレメントは、溶融金属、浮遊物またはプロセスガスと接触する燃焼側表面(3);側面(6)および外面(7)を含んで、燃焼側表面(3)の少なくとも一部が耐食性皮膜(5)で被覆される。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明は、冷却エレメントを被覆する方法に関するものである。本発明によれば、溶融金属、懸濁ガスまたはプロセスガスに接触する冷却エレメントの燃焼側表面の少なくとも一部が、耐食性被膜によって被覆される。
【0002】
工業用炉、とくに自溶炉、溶鉱炉および電気炉などの金属の製造に用いられる炉、または他の冶金反応炉に関しては、通常、主に銅から作られた冷却エレメントが使用される。冷却エレメントは、一般的には水冷され、そのため冷却水路を備えるので、熱は、炉空間のライニングにおける耐火煉瓦から冷却エレメント本体を通って冷却水に伝達される。冷却エレメントが、とりわけ、炉内の雰囲気または溶融物の接触によって生じる強い腐食および侵食によるひずみにさらされる場合、稼動状態は非常に厳しい。たとえば、自溶転炉のセトラにおける壁のライニングを構成する煉瓦のライニングは、冷却エレメントによって保護され、その目的は上述の理由により組積の温度を低く保ち、組積中の煉瓦の摩耗を緩慢にすることである。しかし、時間が経つにつれて組積は次第に薄くなり、溶融金属が銅製の冷却エレメントと接触する状況が発生することがある。直接的に溶融物が接触する状況において、とくに溶融金属が流動し、または乱れている場合には、銅製冷却エレメントは、溶融金属の影響に対して一般的に耐性を持たないが、溶融を始めて、その結果としてエレメントの冷却能力が過負荷となり、エレメントは損傷を受ける。これにより、とりわけ著しい経済的損失となることがある。
【0003】
硫化物精鉱の製錬炉では、冷却エレメントにおいて大きな熱負荷および化学的摩耗を受ける部分が、煉瓦層または金属層によって保護される。エレメントの前面に設けられた組積層が摩耗し、これによって冷却エレメントの燃焼側の表面をプロセスガス、浮遊物または溶融物と接触したままにすることがよくある。状況が変化するために、冷却エレメントの燃焼側の表面、すなわち炉空間側に位置する表面の温度は、比較的大きな範囲、たとえば 100〜350℃の範囲内で変動する。普通、エレメントの他の表面は、熱負荷、水の流速および水温に応じてより低温となる。通常では、冷却エレメントの表面は、少なくとも時々、部分的にプロセスガスに接触し、そのSO2/SO3露点温度が冷却エレメントの表面と同じ温度範囲にあるので、前記表面上に腐食損傷が生じる。これらの損傷に対して銅があまり耐えられないことがよく知られている。したがって、炉の周囲または内部に存在するガスに含まれる硫黄化合物によって銅製冷却エレメントに生じる腐食損傷が、重大な問題となっている。煉瓦層および金属層の両方で保護される冷却エレメントには問題が生じる。とくに、集中的な熱負荷または化学的摩耗によって冷却エレメントにひずみがかかる炉の箇所では、問題が生じる。冷却エレメントの内部にあけた冷却水路に冷却水を導くエレメントでは、銅製冷却管と冷却エレメントとの接続部が腐食損傷を受けやすい。銅製冷却エレメントが金属層または煉瓦層で保護されている冷却エレメントでは、たとえば保護層と銅との境界面において、腐食問題が生じる。
【0004】
本発明は、先行技術の欠点を回避する冷却エレメントを実現することを目的とする。とくに、本発明は、プロセスの損傷状況に耐えるべき冷却エレメントを実現することを目的とする。
【0005】
本発明は、添付の特許請求の範囲に示されるものを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、主に銅で作成され、水冷管を備え、とくに冶金炉またはその同等物に関連して用いられる冷却エレメントを被覆する方法が知られ、その場合において、冷却エレメントは、溶融金属、浮遊物またはプロセスガスに接触する燃焼側表面;側面および外面を含み、燃焼側表面の少なくとも一部が耐食性被膜で被覆される。
【0007】
本発明の実施例によれば、燃焼側の表面の一部では、保護層が形成されて、冷却エレメントの燃焼側表面の少なくとも一部および保護層の境界面が耐食性被膜で被覆される。冷却エレメント表面を腐食に備えて被覆することによって、可使時間がより長く、メンテナンスがより少ないエレメントが得られる。本発明の好適な実施例によれば、保護層は少なくとも部分的に鋼で形成される。本発明の他の好適な実施例によれば、保護層は少なくとも部分的にセラミック材料で形成される。冷却エレメントの表面に保護層を形成することによって、炉におけるプロセス状況に対して著しく良好な耐性を持つ冷却エレメントが得られる。冷却エレメントの燃焼側表面に形成されるグルーブなどの固定ポイントに、保護層を形成するエレメントを配置することによって、非常に機能的で効果的な固定機構が得られる。
【0008】
本発明の実施例によれば、被膜は鉛で形成され、厚みが0.1〜1ミリメートルであるのが好ましい。鉛が、硫黄酸化物によって生じる腐食に対して良好な耐性を有するのは、不溶性の硫酸塩をそれらとともに形成するからである。冷却エレメントのいずれかの面が鉛の溶融点よりも高い温度まで上昇すると、鉛はその下部に配置された銅とともに合金を形成し、それはより高い溶融点を有し、それによって硫黄酸化物に対する良好な耐性を有する。鉛被膜の作成は安価な処置であり、そのため製造およびメンテナンスは低コストにとどまる。
【0009】
本発明の実施例によれば、被膜は冷却エレメントの側面に形成される。また、本発明によれば、被膜は冷却エレメントの外面、および既存の冷却水管と外面との接続点に形成することもできる。
【0010】
本方法の実施例によれば、冷却エレメントは溶融法によって被覆され、その場合、融解した鉛は対象物の表面にもたらされる。鉛層は、溶融被覆が行われる回数に応じて、さまざまな厚みで形成される。たとえば、錫は、鉛のグリッピングを改善するための中間層として役立つ。
【0011】
本方法の実施例において、被覆は電気分解によって形成され、その場合、被覆は銅製の冷却エレメントを陰極として被覆浴に浸漬することによって形成され、用いられる陽極は純粋な鉛板である。本発明の本方法の実施例によれば、被膜は冷却エレメントに保護層を付ける前に形成される。
【0012】
本発明の実施例によれば、被覆される冷却エレメントは、自溶炉の天井、壁面、取込シャフトまたは反応シャフトの冷却エレメントである。本発明の別の実施例によれば、被覆される冷却エレメントは、自溶転炉の天井、壁面、取込シャフトまたは反応シャフトの冷却エレメントである。実施例によれば、被覆した冷却エレメントは、自溶炉または自溶転炉と廃熱ボイラとの間の開口の冷却エレメントである。上述の配置において、冷却エレメントは、非常に厳しいプロセス状況のために、腐食損傷にさらされ、そのために本発明による被覆が有用である。
【0013】
本発明を、添付の図面を参照して、例によって以下でより詳細に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による冷却エレメントを図示する。
【図2】図2は、図1の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による冷却エレメント1は、たとえば連続鋳造で作成され、冶金炉またはその同等物に関連して利用されるもので、主に銅で作成されていて、主に銅で作成された冷却水管2を備え、その管を通って冷却水がエレメントの内部に流れ、たとえばドリル加工によって作られた冷却水路に流れ込む。その例による冷却エレメント1は、自溶炉の天井のエレメントであり、その場合、その燃焼側の表面3は、自溶炉の浮遊物および/またはプロセスガスと接触し、その側面6は少なくともときどきプロセスガスと接触する。外面7は、燃焼側表面と反対側にあり、冷却水管2は、冷却エレメントの外面を通って通じている。冷却エレメントの燃焼側表面3には、煉瓦などの耐火物エレメントで形成された保護層4が埋め込まれている。保護層4は、ガスおよび/または炉の浮遊物によって生じる危険に対して冷却エレメントをある程度は保護するが、それらがやがて摩耗することがよくある。冷却エレメントの燃焼側表面3の温度は、一般的には100〜350℃で、他の面および銅製冷却水管2の温度は、30〜350℃であり、そのような温度においては、前述の面は、通常、プロセスガスに含まれる三酸化硫黄の露点域の範囲内に置かれるので、炉に形成された硫黄化合物によって生じる腐食損傷を受けやすい。前述の腐食損傷に備えて、冷却エレメント1の燃焼側表面3および保護層4の境界面8は、耐食性被膜5が被覆され、それは鉛が好ましい。
【0016】
その例によれば、被膜は電気分解によって形成される。被膜5は、銅製の冷却エレメント1を陰極として被覆浴に浸漬して形成され、その使用される陽極は純粋な鉛板である。被覆用電解質はたとえばフッ化ホウ酸塩浴である。電解法を適用することにより、被膜が冷却エレメントのすべての表面に蓄積され、その結果、所望の表面3、6および7が、プロセスガスに含まれる硫黄化合物によって生じる腐食に対して保護される。また、水冷エレメントの水冷管と外面7との接続点9が、鉛層によって保護される。温度が上昇すると、鉛が銅中に拡散され、これによってさまざまなCu-Pb合金が形成され、また、耐食性もきわめて大きくなり、その結果、金属結合によって良好な把持力がもたらされる。冷却エレメントの形状および寸法は、問題となる対象の用途に依存する。
【0017】
本発明は、上述の実施例だけに限定されることではなく、添付の特許請求の範囲に示される発明の思想の範囲内において多様な修正が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に銅で製作され、水冷管(2)を備え、とくに冶金炉またはその同等物に関連して使用される冷却エレメント(1)を被覆する方法において、前記冷却エレメントは、溶融金属、浮遊物またはプロセスガスと接触する燃焼側表面(3);側面(6)および外面(7)を含んで、前記燃焼側表面(3)の少なくとも一部が耐食性被膜(5)で被覆されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、該方法は、保護層(4)が前記燃焼側表面(3)の一部について形成され、その場合に、前記冷却エレメントの前記燃焼側表面(3)と前記保護層(4)との間の境界面(8)の少なくとも一部が耐食性被膜(5)で被覆されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記保護層(4)は、少なくとも部分的に鋼で形成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記保護層(4)は、少なくとも部分的にセラミック材料で形成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の方法において、前記被膜(5)は、鉛で形成されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記鉛被膜の厚みは、好ましくは0.1〜1ミリメートルであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、前記被膜(5)は、前記冷却エレメントの側面(6)に形成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法において、前記被膜(5)は、前記冷却エレメント(1)の外面(7)、および前記水冷管(2)とそれが設けられた外面(7)との接続点(9)に形成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の方法において、前記被膜は、溶融法によって形成されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の方法において、前記被膜は、電気分解法によって形成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項2ないし10のいずれかに記載の方法において、前記被膜(5)は、前記冷却エレメントに前記保護層(4)を付ける前に形成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法において、前記被覆される冷却エレメント(1)は、自溶炉の天井、側壁、取込シャフトまたは反応シャフトの冷却エレメントであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法において、前記被覆される冷却エレメント(1)は、自溶転炉の天井、壁面、取込シャフトまたは反応シャフトの冷却エレメントであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法において、前記被覆される冷却エレメント(1)は、自溶炉または自溶転炉と廃熱ボイラとの間の開口の冷却エレメントであることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−505082(P2010−505082A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529725(P2009−529725)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/FI2007/000225
【国際公開番号】WO2008/037836
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(507221324)オウトテック オサケイティオ ユルキネン (33)
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
【Fターム(参考)】