冷却装置
【課題】できる限り小さな押し付け力で冷却対象物の表面に満遍なく放熱部品を接触させ続けることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】電子部品19とヒートシンク14との間には熱伝導性流動体23が挟み込まれる。熱伝導性流動体23は電子部品19とヒートシンク14との間で密着性を高めると同時に、その流動性に基づき所定の吸着力を発揮する。吸着力は、電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14の横滑りを許容するものの、電子部品19の表面に直交する垂直方向にヒートシンク14の変位を規制する。ヒートシンク14は大気圧で電子部品19上に保持されることができる。ヒートシンク14の横滑りは規制されることから、電子部品19の傾斜や振動にも拘わらず、ヒートシンク14と電子部品19との間には十分な広がりで熱伝導性流動体23は確保される。熱伝導性流動体23は十分な吸着力を発揮し続ける。
【解決手段】電子部品19とヒートシンク14との間には熱伝導性流動体23が挟み込まれる。熱伝導性流動体23は電子部品19とヒートシンク14との間で密着性を高めると同時に、その流動性に基づき所定の吸着力を発揮する。吸着力は、電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14の横滑りを許容するものの、電子部品19の表面に直交する垂直方向にヒートシンク14の変位を規制する。ヒートシンク14は大気圧で電子部品19上に保持されることができる。ヒートシンク14の横滑りは規制されることから、電子部品19の傾斜や振動にも拘わらず、ヒートシンク14と電子部品19との間には十分な広がりで熱伝導性流動体23は確保される。熱伝導性流動体23は十分な吸着力を発揮し続ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヒートシンクといった放熱部品で電子部品といった冷却対象物からの放熱を促進する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2000‐22059号公報に開示されるように、プリント基板に実装された電子部品の冷却にあたってヒートシンクは広く用いられる。こういったヒートシンクは、平坦な対向面で電子部品の表面に受け止められる。このとき、ヒートシンクは、できる限り広い接触面で電子部品の表面に接触することが望まれる。広い接触面の確保にあたって、ヒートシンクは電子部品に対して押し付けられる。この押し付けにあたって例えば巻きばねの付勢力は利用される。
【特許文献1】特開2000‐22059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
過度の押し付け力でヒートシンクが電子部品に押し付けられると、電子部品内に大きな応力は生み出される。過度の押し付け力が継続的に作用すると、電子部品の変形は引き起こされる。こういった応力や変形が回避されれば、電気的な接触不良や耐久性の低下は確実に回避されることができると考えられる。電子部品に対して作用する外力はできる限り除去されることが望まれる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、できる限り小さな押し付け力で冷却対象物の表面に満遍なく放熱部品を接触させ続けることができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、対向面で冷却対象物の表面に受け止められる放熱部品と、冷却対象物の表面および対向面の間に挟み込まれて、冷却対象物の表面に直交する垂直方向に放熱部品の変位を規制する熱伝導性流動体と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置が提供される。
【0006】
また、第2発明によれば、冷却対象物の表面に沿って広がる熱伝導性流動体と、熱伝導性流動体上に配置されて、大気圧で冷却対象物の表面に押し付けられる放熱部品と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置が提供される。
【0007】
熱伝導性流動体は冷却対象物の表面と放熱部品の対向面との間で密着性を高める。冷却対象物の表面や放熱部品の対向面で相当に平面度が悪い場合でも、放熱部品は広い接触面で満遍なく冷却対象物に接触することができる。冷却対象物と放熱部品との間で高い熱伝導特性は確立される。冷却対象物の熱は効率的に放熱部品に受け渡されることができる。冷却対象物の放熱は促進される。
【0008】
しかも、熱伝導性流動体が面同士の間に挟み込まれると、熱伝導性流動体はその流動性に基づき所定の吸着力を発揮することができる。こうした吸着力は、冷却対象物の表面に沿って放熱部品の横滑りを許容するものの、冷却対象物の表面に直交する垂直方向に放熱部品の変位を規制する。すなわち、熱伝導性流動体は放熱部品の剥離を防止する。
【0009】
その一方で、横滑り規制機構の働きで放熱部品の横滑りは制限される。放熱部品が受け止められる表面の傾斜や冷却対象物の振動にも拘わらず、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の変位は規制される。放熱部品と冷却対象物との間には十分な広がりで熱伝導性流動体は確保されることができる。熱伝導性流動体は冷却対象物の表面と放熱部品の対向面との間で十分な吸着力を確保し続けることができる。
【0010】
以上のような冷却装置では、放熱部品の横滑りが規制される限り、熱伝導性流動体の働きのみで放熱部品は冷却対象物の表面に保持されることができる。放熱部品は大気圧のみで冷却対象物の表面に押し付けられる。過度の押し付け力は確実に回避されることができる。
【0011】
横滑り規制機構は、冷却対象物および放熱部品の周囲を囲み、冷却対象物および放熱部品に対して垂直方向に相対的に変位する枠体を備えることが望まれる。こういった枠体は放熱部品に対して簡単に着脱されることができる。こういった枠体が放熱部品から取り外されれば、冷却対象物の表面に沿って放熱部品の横滑りは実現されることができる。こうして放熱部品は冷却対象物の表面から簡単に離脱することができる。放熱部品は比較的に簡単に冷却対象物から取り外されることができる。
【0012】
その他、横滑り規制機構は、冷却対象物に形成されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片を備えてもよく、放熱部品に形成されて、放熱部品の横滑り時に冷却対象物に係り合う突片を備えてもよい。これらの突片に代えて、冷却装置は、冷却対象物を変位不能に支持する支持体と、この支持体上に変位不能に配置されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片とをさらに備えてもよい。
【0013】
熱伝導性流動体の実現にあたって、流動体にはセラミック粒子および金属粒子の少なくともいずれか一方が含まれればよい。こういったセラミック粒子や金属粒子は高い熱伝導特性を備えることから、流動体の熱伝導特性は高められることができる。
【0014】
熱伝導性流動体の実現にあたって、流動体には例えばシリコーングリースが用いられてもよい。シリコーングリースは、温度変化にも拘わらず長期間にわたって固有の流動性を維持することができる。したがって、冷却対象物の温度上昇にも拘わらず長期間にわたって熱伝導性流動体の流動性は維持され続けることができる。放熱部品は確実に長期間にわたって冷却対象物の表面に保持され続けることができる。
【0015】
前述の横滑り規制機構は、所定の範囲で冷却対象物の表面に沿って放熱部品の横滑りを許容してもよい。一般に、冷却対象物が発熱すると、いわゆる熱膨張率の違いに基づき冷却対象物の表面と放熱部品の対向面との間に相対的な横ずれが生じる。熱伝導性流動体はその流動性に基づきこういった横ずれを容易に吸収することができる。しかも、たとえ冷却対象物や放熱部品が熱膨張しても、前述のように放熱部品の横滑りを許容する空間が横滑り規制機構には確保されることから、冷却対象物や放熱部品、横滑り規制機構で内部応力の発生は確実に阻止されることができる。
【0016】
放熱部品は例えばヒートシンクに構成されればよい。ヒートシンクは、例えば冷却対象物の表面に受け止められる平板状の受熱部と、この受熱部から垂直方向に立ち上がるフィンとを備えればよい。この種の冷却装置は例えばプリント配線基板上の電子部品の冷却に利用されることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、できる限り小さな押し付け力で冷却対象物の表面に満遍なく放熱部品は接触し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
図1は電子部品実装基板11を概略的に示す。この電子部品実装基板11は、後述されるように表面で1または複数の電子部品を受け止める例えば樹脂製のプリント配線基板12を備える。電子部品同士は、例えばプリント配線基板12の表面(または内部)に張り巡らされる導電配線パターン(図示されず)の働きで相互に電気的に接続される。こういった電子部品実装基板11は、例えばサーバといったコンピュータシステムに組み込まれることができる。
【0020】
プリント配線基板12の表面には本発明の第1実施形態に係る冷却装置13が搭載される。各冷却装置13は放熱部品すなわちヒートシンク14を備える。ヒートシンク14には、平板状の受熱部14aと、この受熱部14aから垂直方向に立ち上がる複数枚のフィン14bとが形成される。隣接するフィン14b同士の間には同一方向に延びる通気路15が区画される。こういった電子部品実装基板11が例えばサーバに組み込まれる場合には、送風ユニットの働きで通気路15を通過する気流は生み出されればよい。ヒートシンク14は例えばアルミニウムや銅といった金属材料から成型されればよい。
【0021】
各冷却装置13は、プリント配線基板12の表面に沿ってヒートシンク14の受熱部14aを取り囲む枠部材16をさらに備える。枠部材16には、プリント配線基板12の表面から立ち上がって、四方から受熱部14aの外周に向き合わせられる4つの壁体17が区画される。枠部材16は、例えばプリント配線基板12の表面に直交する垂直方向PDに変位可能にヒートシンク14に装着される。こういった枠部材16は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0022】
図2に示されるように、ヒートシンク14の受熱部14aは、平坦な対向面18で冷却対象物すなわち電子部品19の表面に受け止められる。ここで、電子部品19は例えばBGA(ボールグリッドアレイ)構造半導体パッケージに構成される。このBGA構造半導体パッケージでは、小型セラミック基板21の表面すなわち上向き面に半導体チップ(図示されず)が搭載される。小型セラミック基板21の裏面すなわち下向き面には複数個の端子バンプ22が取り付けられる。端子バンプ22は、プリント配線基板12上で対応する端子パッド(図示されず)に受け止められる。こうして電子部品19すなわちBGA構造半導体パッケージとプリント配線基板12との間には電気的接続が確立される。端子バンプ22は例えばはんだといった導電材料から構成されればよい。小型セラミック基板21とプリント配線基板12との間にはいわゆるアンダーフィル材が挟み込まれてもよい。ただし、電子部品19はこういった形態に限られるものではない。
【0023】
電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面18との間には熱伝導性流動体すなわちサーマルグリース23が挟み込まれる。サーマルグリース23は、例えばシリコーングリースと、このシリコーングリース中に分散する熱伝導性フィラーとから構成される。熱伝導性フィラーには例えばセラミック粒子や金属粒子が利用されればよい。
【0024】
こういったサーマルグリース23は電子部品19とヒートシンク14との間で密着性を高める。電子部品19の表面やヒートシンク14の対向面18で相当程度の表面粗さが確立されても、ヒートシンク14は広い接触面で満遍なく電子部品19に接触することができる。電子部品19とヒートシンク14との間で高い熱伝導特性は確立される。電子部品19の熱は効率的にヒートシンク14の受熱部14aに受け渡されることができる。ヒートシンク14からの放熱は促進される。
【0025】
しかも、こういったサーマルグリース23が面同士の間に挟み込まれると、サーマルグリース23はシリコーングリースの流動性に基づき所定の吸着力を発揮することができる。こうした吸着力は、電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14の横滑りを許容するものの、電子部品19の表面に直交する垂直方向PDにヒートシンク14の変位を規制する。すなわち、サーマルグリース23はヒートシンク14の剥離を防止する。このとき、ヒートシンク14は大気圧のみで電子部品19の表面に押し付けられる。
【0026】
図2から明らかなように、前述の枠部材16はプリント配線基板12の表面に沿って電子部品19を取り囲む。枠部材16の壁体17は所定の間隔で四方から電子部品19の外周に向き合わせられる。例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。このとき、枠部材16はヒートシンク14とともにプリント配線基板12の表面に沿って移動する。こうした移動の後に壁体17の内面は電子部品19の外周に受け止められる。こうして枠部材16は所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。すなわち、枠部材16の働きによれば、ヒートシンク14の横滑りにも拘わらず、ヒートシンク14と電子部品19との間には十分な広がりでサーマルグリース23は確保されることができる。サーマルグリース23は電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面との間で十分な吸着力を確保し続けることができる。特に、サーバに組み込まれる電子部品実装基板11は垂直姿勢に保持されることが多い。こういった場合でも、枠部材16は確実にヒートシンク14の横滑りの範囲を規定することができる。このように枠部材16は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0027】
以上のような冷却装置13では、前述のようにヒートシンク14の横滑りが規制される限り、サーマルグリース23の働きのみでヒートシンク14は電子部品19の表面に保持されることができる。ヒートシンク14は大気圧のみで電子部品19の表面に押し付けられる。電子部品19には過度の押し付け力が加えられることはない。電子部品19の変形や内部応力の発生は極力阻止されることができる。
【0028】
一般に、電子部品19が発熱すると、いわゆる熱膨張率の違いに基づき電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面18との間に相対的な横ずれが生じる。サーマルグリース23はシリコーングリースの流動性に基づきこういった横ずれを容易に吸収することができる。しかも、たとえ電子部品19やヒートシンク14が熱膨張しても、前述のように電子部品19やヒートシンク14と枠部材16との間には所定の間隔が確保されることから、電子部品19やヒートシンク14、枠部材16で内部応力の発生は確実に阻止されることができる。
【0029】
前述のようなシリコーングリースは、温度変化にも拘わらず長期間にわたって固有の流動性を維持することができる。したがって、電子部品19の温度上昇にも拘わらず長期間にわたってサーマルグリース23の流動性は維持され続けることができる。ヒートシンク14は確実に長期間にわたって電子部品19の表面に保持され続けることができる。
【0030】
図3に示されるように、枠部材16とヒートシンク14との間には変位規制機構25が確立されてもよい。この変位規制機構25は、例えば壁体17の内面から突出する突起26で構成されればよい。こういった突起26の働きによれば、樹脂製枠部材16の弾性力に基づき枠部材16はヒートシンク14上に保持されることができる。このとき、ヒートシンク14には、枠部材16が規定のセット位置に到達した際に突起26を受け入れる窪み(図示されず)が形成されてもよい。このセット位置では、枠部材16はヒートシンク14および電子部品19を完全に取り囲む。こういった突起26はヒートシンク14側に形成されてもよい。この種の変位規制機構25は枠部材16と電子部品19との間に確立されてもよい。
【0031】
次に本発明の第1実施形態に係る冷却装置13の着脱方法を簡単に説明する。図4に示されるように、冷却装置13の装着にあたってプリント配線基板12は水平姿勢で保持される。プリント配線基板12上には予め電子部品19は実装される。電子部品19の表面にはサーマルグリース23が盛られる。電子部品19の表面が四角形で規定される場合には、サーマルグリース23は四角形の中央付近に盛られるとともに2本の対角線に沿って盛られればよい。
【0032】
続いて、電子部品19の表面にヒートシンク14は搭載される。受熱部14aの形状は電子部品19の外形に合わせ込まれる。ヒートシンク14は所定の圧力で電子部品19すなわちプリント配線基板12に向けて押し付けられる。こうした押し付け力の働きでサーマルグリース23はヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間に満遍なく広がることができる。この時点で、ヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間には十分な吸着力が確立される。垂直方向PDに沿ったヒートシンク14の変位は規制される。押し付け力が解放されても、ヒートシンク14は電子部品19上に留まる。
【0033】
こうしてヒートシンク14の搭載が完了すると、図5に示されるように、ヒートシンク14および電子部品19には相次いで枠部材16が装着される。枠部材16の下端はプリント配線基板12の表面に受け止められる。こうして冷却装置13の装着は完了する。
【0034】
冷却装置13の取り外しにあたって、図6に示されるように、プリント配線基板12から枠部材16は取り外される。枠部材16は垂直方向PDに引き抜かれる。その後、図7に示されるように、ヒートシンク14には水平方向に沿って外力EFが加えられる。ヒートシンク14は電子部品19の表面に沿って簡単に横滑りする。こうしてヒートシンク14は電子部品19の表面から簡単に離脱することができる。ヒートシンク14の取り外しは完了する。
【0035】
図8は本発明の第2実施形態に係る冷却装置13aを概略的に示す。この冷却装置13aでは、ヒートシンク14の受熱部14aは電子部品19の表面に比べて大きく形成される。したがって、受熱部14aの対向面18は部分的に電子部品19の表面に受け止められる。電子部品19の表面とヒートシンク14との間にはサーマルグリース23が挟み込まれる。サーマルグリース23は、前述と同様に、電子部品19とヒートシンク14との間で密着性を高めると同時に、電子部品19の表面に直交する垂直方向PDにヒートシンク14の変位を規制する。サーマルグリース23はヒートシンク14の剥離を防止する。ヒートシンク14は大気圧のみで電子部品19の表面に押し付けられる。
【0036】
冷却装置13aは、電子部品19およびヒートシンク14の受熱部14aを取り囲む枠部材31をさらに備える。この枠部材31には、四方から電子部品19の外周に向き合わせられる4つの下側壁体32が区画される。下側壁体32の上端には、ヒートシンク14の対向面18に向き合わせられつつ水平方向に外側に広がる水平壁33が接続される。水平壁33の外周には、水平壁33の表面から立ち上がって四方からヒートシンク14の受熱部14aの外周に向き合わせられる4つの上側壁体34が区画される。こういった枠部材31は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0037】
枠部材31は、電子部品19の表面に直交する垂直方向PDに変位可能にヒートシンク14に装着される。こういった装着にあたって、枠部材31とヒートシンク14との間には前述と同様に例えば変位規制機構35が確立される。この変位規制機構35は、例えば上側壁体34の内面から突出する突起36と、枠部材31が規定のセット位置に位置決めされる際に突起36を受け入れる窪み(図示されず)とで構成されればよい。
【0038】
図8から明らかなように、枠部材31が規定のセット位置に位置決めされると、枠部材31はプリント配線基板12の表面から浮き上がる。このセット位置では、枠部材31はヒートシンク14および電子部品19を完全に取り囲む。枠部材31すなわち下側壁体32の下端とプリント配線基板12の表面との間には所定の間隔SPが確保される。このとき、垂直方向PDに測定される枠部材31の総高さTHは、プリント配線基板12の表面からヒートシンク14の対向面18まで垂直方向PDに測定される高さSHよりも小さく設定される。
【0039】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。このとき、枠部材31はヒートシンク14とともにプリント配線基板12の表面に沿って移動する。こうした移動の後に下側壁体32の内面は電子部品19の外周に受け止められる。こうして枠部材31は、前述と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。サーマルグリース23は電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面18との間で十分な吸着力を確保し続けることができる。このように枠部材31は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0040】
次に本発明の第2実施形態に係る冷却装置13aの着脱方法を簡単に説明する。この第2実施形態では、ヒートシンク14の搭載に先立ってプリント配線基板12上の電子部品19には枠部材31が装着される。枠部材31の下端はプリント配線基板12の表面に到達してもよい。枠部材31の装着後に、前述と同様に、電子部品19の表面にサーマルグリース23は盛られる。
【0041】
その後、電子部品19の表面にヒートシンク14は搭載される。ヒートシンク14の向きは枠部材31の向きに対して合わせ込まれる。ヒートシンク14は所定の圧力で電子部品19すなわちプリント配線基板12に向けて押し付けられる。こうした押し付け力の働きでサーマルグリース23はヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間に満遍なく広がることができる。この時点で、ヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間には十分な吸着力が確立される。押し付け力が解放されても、ヒートシンク14は電子部品19上に留まる。
【0042】
その後、枠部材はプリント配線基板12の表面から引き上げられる。枠部材の動きは電子部品19の外形で案内される。例えば水平壁33の上面がヒートシンク14の対向面18に衝突すると、変位規制機構35の突起36は窪みに入り込む。こうして枠部材31は規定のセット位置に位置決めされる。枠部材31自身の弾性力の働きで枠部材31はヒートシンク14に係り止めされる。ヒートシンク14の受熱部14aおよび電子部品19は完全に枠部材31に取り囲まれる。冷却装置13aの装着は完了する。
【0043】
冷却装置13aの取り外しにあたって、図9に示されるように、枠部材31はプリント配線基板12の表面に向けて引き下ろされる。枠部材31の下端が完全にプリント配線基板12の表面に受け止められると、枠部材31の上側壁体34は完全にヒートシンク14から離脱する。プリント配線基板12の表面からヒートシンク14の対向面18まで測定される高さSHよりも枠部材31の総高さTHは低いことから、枠部材31の上端は、受熱部14aの対向面18を含む仮想平面PLよりも下方に位置する。
【0044】
この状態で、図10に示されるように、ヒートシンク14には水平方向に沿って外力EFが加えられる。ヒートシンク14は、枠部材31に接触することなく電子部品19の表面に沿って簡単に横滑りする。こうしてヒートシンク14は電子部品19の表面から簡単に離脱することができる。ヒートシンク14の取り外しは完了する。
【0045】
図11は本発明の第3実施形態に係る冷却装置13bを概略的に示す。この第3実施形態に係る冷却装置13bは、前述の枠部材16、31に代えて、電子部品19の表面から立ち上がって、所定の間隔で四方から放熱部品すなわちヒートシンク14の外周に向き合わせられる4つの突片41を備える。こういった突片41は電子部品19に一体に形成されればよい。隣接する突片41同士は相互に接続されてもよい。こうした接続によれば、ヒートシンク14の受熱部14aを受け入れる凹み42が電子部品19の表面に区画されることができる。電子部品19は切れ目なく突片41に取り囲まれる。図中、第1および第2実施形態の構成と同様な作用や機能を発揮する構成には同一の参照符号が付される。
【0046】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。電子部品19上の突片41はヒートシンク14の外周に係り合う。こうして突片41は、前述の枠部材16、31と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。このように突片41は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0047】
図12は本発明の第4実施形態に係る冷却装置13cを概略的に示す。この第4実施形態に係る冷却装置13cは、前述の枠部材16、31に代えて、放熱部品すなわちヒートシンク14の対向面18から立ち上がって、所定の間隔で四方から電子部品19の外周に向き合わせられる4つの突片43を備える。こういった突片43はヒートシンク14に一体に形成されればよい。隣接する突片43同士は相互に接続されてもよい。こうした接続によれば、電子部品19を受け入れる凹み44がヒートシンク14の対向面に区画されることができる。電子部品19は切れ目なく突片43に取り囲まれる。図中、第1および第2実施形態の構成と同様な作用や機能を発揮する構成には同一の参照符号が付される。
【0048】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。ヒートシンク14上の突片43は電子部品19の外周に係り合う。こうして突片43は、前述の枠部材16、31と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。このように突片43は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0049】
図13は本発明の第5実施形態に係る冷却装置13dを概略的に示す。この第5実施形態に係る冷却装置13dは、前述の枠部材16、31に代えて、プリント配線基板12の表面から立ち上がって、所定の間隔で四方から放熱部品すなわちヒートシンク14の外周に向き合わせられる4つの突片45を備える。こういった突片45は、例えばねじ46といった結合機構でプリント配線基板12の表面に固定されればよい。隣接する突片45同士は相互に接続されてもよい。こうした接続によれば、電子部品19およびヒートシンク14の受熱部14aを取り囲む枠が区画されることができる。ヒートシンク14は切れ目なく突片45に取り囲まれる。図中、第1および第2実施形態の構成と同様な作用や機能を発揮する構成には同一の参照符号が付される。
【0050】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。プリント配線基板12上の突片45はヒートシンク14の外周に係り合う。こうして突片45は、前述の枠部材16、31と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。このように突片45は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0051】
図14から明らかなように、ヒートシンク14の対向面18には、プリント配線基板12の表面から立ち上がる突片45を受け入れる溝47が形成されてもよい。電子部品19の表面でヒートシンク14が横滑りすると、プリント配線基板12上の突片45は溝47の壁面に係り合う。こうして突片45と溝47との協働で、ヒートシンク14の横滑りは所定の範囲内に制限されることができる。
【0052】
このとき、プリント配線基板12から立ち上がる突片45には、プリント配線基板12上に固定される例えば金属製のスティフナが利用されることができる。スティフナは例えば電子部品19の周囲に切れ目なく取り付けられる。こういったスティフナによれば、電子部品19の周囲でプリント配線基板12のねじれや撓みは防止されることができる。
【0053】
以上のような冷却装置13、13a〜13dでは、例えばヒートシンク14と電子部品19との間に剥離機構が組み込まれてもよい。こういった剥離機構は、例えば図15に示されるように、ヒートシンク14の受熱部14aに形成されるねじ孔48と、このねじ孔48にねじ込まれるねじ49とで構成されればよい。ヒートシンク14の取り付けにあたって、ねじ49は例えば休止位置に位置決めされる。この休止位置では、ねじ49の先端は電子部品19の表面に向き合わせられる。ねじ49の頭は、ヒートシンク14の表面から浮き上がった状態に保持される。ヒートシンク14の取り外しにあたって、ねじ49はねじ孔48にねじ込まれる。ねじ49の先端は電子部品19の表面に受け止められる。さらにねじ49がねじ込まれると、ねじ49の回転は垂直方向PDの推進力に変換される。こうしてヒートシンク14は、サーマルグリース23の吸着力に抗して比較的に簡単に電子部品19の表面から引き剥がされることができる。
【0054】
なお、以上のような冷却装置13、13a〜13dでは、枠部材16の内面や突片41、43、45と電子部品19やヒートシンク14の外周とは完全に密着し合ってもよい。この場合には、ヒートシンク14の横滑りは完全に阻止されることができる。
【0055】
(付記1) 対向面で冷却対象物の表面に受け止められる放熱部品と、冷却対象物の表面および対向面の間に挟み込まれる熱伝導性流動体と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置。
【0056】
(付記2) 付記1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、冷却対象物および放熱部品の周囲を囲み、冷却対象物および放熱部品に対して冷却対象物の表面に直交する垂直方向に相対的に変位する枠体を備えることを特徴とする冷却装置。
【0057】
(付記3) 付記1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、前記冷却対象物に形成されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片を備えることを特徴とする冷却装置。
【0058】
(付記4) 付記1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、前記放熱部品に形成されて、放熱部品の横滑り時に冷却対象物に係り合う突片を備えることを特徴とする冷却装置。
【0059】
(付記5) 付記1に記載の冷却装置において、前記冷却対象物を変位不能に支持する支持体と、この支持体上に変位不能に配置されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片とをさらに備えることを特徴とする冷却装置。
【0060】
(付記6) 付記1〜5のいずれかに記載の冷却装置において、前記熱伝導性流動体にはセラミック粒子および金属粒子の少なくともいずれか一方が含まれることを特徴とする冷却装置。
【0061】
(付記7) 付記6に記載の冷却装置において、前記セラミック粒子および金属粒子はグリース中に分散することを特徴とする冷却装置。
【0062】
(付記8) 付記1〜7のいずれかに記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は前記横滑りの範囲を規定することを特徴とする冷却装置。
【0063】
(付記9) 付記1〜8のいずれかに記載の冷却装置において、前記放熱部品は、前記垂直方向に立ち上がるフィンを備えることを特徴とする冷却装置。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷却装置の外観を概略的に示す電子部品実装基板の斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大部分断面図である。
【図3】変位規制機構の構成を概略的に示す拡大垂直断面図である。
【図4】電子部品上にヒートシンクを搭載する場面を示すプリント配線基板の拡大部分垂直断面図である。
【図5】電子部品およびヒートシンクに枠部材を装着する場面を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図6】電子部品およびヒートシンクから枠部材を取り外す場面を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図7】電子部品からヒートシンクを離脱させる場面を示すプリント配線基板の拡大部分垂直断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図9】ヒートシンクから枠部材を離脱させる場面を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図10】電子部品からヒートシンクを離脱させる場面を示すプリント配線基板の拡大部分垂直断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図14】第5実施形態の変形例に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図15】剥離機構の構成を概略的に示す電子部品およびヒートシンクの拡大部分垂直断面図である。
【符号の説明】
【0065】
13 冷却装置、13a〜13d 冷却装置、14 放熱部品としてのヒートシンク、14b フィン、16 横滑り規制機構としての枠体すなわち枠部材、18 対向面、19 冷却対象物としての電子部品、23 熱伝導性流動体としてのサーマルグリース、31 横滑り規制機構としての枠体すなわち枠部材、41 横滑り規制機構としての突片、43 横滑り規制機構としての突片、45 横滑り規制機構としての突片。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヒートシンクといった放熱部品で電子部品といった冷却対象物からの放熱を促進する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2000‐22059号公報に開示されるように、プリント基板に実装された電子部品の冷却にあたってヒートシンクは広く用いられる。こういったヒートシンクは、平坦な対向面で電子部品の表面に受け止められる。このとき、ヒートシンクは、できる限り広い接触面で電子部品の表面に接触することが望まれる。広い接触面の確保にあたって、ヒートシンクは電子部品に対して押し付けられる。この押し付けにあたって例えば巻きばねの付勢力は利用される。
【特許文献1】特開2000‐22059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
過度の押し付け力でヒートシンクが電子部品に押し付けられると、電子部品内に大きな応力は生み出される。過度の押し付け力が継続的に作用すると、電子部品の変形は引き起こされる。こういった応力や変形が回避されれば、電気的な接触不良や耐久性の低下は確実に回避されることができると考えられる。電子部品に対して作用する外力はできる限り除去されることが望まれる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、できる限り小さな押し付け力で冷却対象物の表面に満遍なく放熱部品を接触させ続けることができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、対向面で冷却対象物の表面に受け止められる放熱部品と、冷却対象物の表面および対向面の間に挟み込まれて、冷却対象物の表面に直交する垂直方向に放熱部品の変位を規制する熱伝導性流動体と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置が提供される。
【0006】
また、第2発明によれば、冷却対象物の表面に沿って広がる熱伝導性流動体と、熱伝導性流動体上に配置されて、大気圧で冷却対象物の表面に押し付けられる放熱部品と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置が提供される。
【0007】
熱伝導性流動体は冷却対象物の表面と放熱部品の対向面との間で密着性を高める。冷却対象物の表面や放熱部品の対向面で相当に平面度が悪い場合でも、放熱部品は広い接触面で満遍なく冷却対象物に接触することができる。冷却対象物と放熱部品との間で高い熱伝導特性は確立される。冷却対象物の熱は効率的に放熱部品に受け渡されることができる。冷却対象物の放熱は促進される。
【0008】
しかも、熱伝導性流動体が面同士の間に挟み込まれると、熱伝導性流動体はその流動性に基づき所定の吸着力を発揮することができる。こうした吸着力は、冷却対象物の表面に沿って放熱部品の横滑りを許容するものの、冷却対象物の表面に直交する垂直方向に放熱部品の変位を規制する。すなわち、熱伝導性流動体は放熱部品の剥離を防止する。
【0009】
その一方で、横滑り規制機構の働きで放熱部品の横滑りは制限される。放熱部品が受け止められる表面の傾斜や冷却対象物の振動にも拘わらず、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の変位は規制される。放熱部品と冷却対象物との間には十分な広がりで熱伝導性流動体は確保されることができる。熱伝導性流動体は冷却対象物の表面と放熱部品の対向面との間で十分な吸着力を確保し続けることができる。
【0010】
以上のような冷却装置では、放熱部品の横滑りが規制される限り、熱伝導性流動体の働きのみで放熱部品は冷却対象物の表面に保持されることができる。放熱部品は大気圧のみで冷却対象物の表面に押し付けられる。過度の押し付け力は確実に回避されることができる。
【0011】
横滑り規制機構は、冷却対象物および放熱部品の周囲を囲み、冷却対象物および放熱部品に対して垂直方向に相対的に変位する枠体を備えることが望まれる。こういった枠体は放熱部品に対して簡単に着脱されることができる。こういった枠体が放熱部品から取り外されれば、冷却対象物の表面に沿って放熱部品の横滑りは実現されることができる。こうして放熱部品は冷却対象物の表面から簡単に離脱することができる。放熱部品は比較的に簡単に冷却対象物から取り外されることができる。
【0012】
その他、横滑り規制機構は、冷却対象物に形成されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片を備えてもよく、放熱部品に形成されて、放熱部品の横滑り時に冷却対象物に係り合う突片を備えてもよい。これらの突片に代えて、冷却装置は、冷却対象物を変位不能に支持する支持体と、この支持体上に変位不能に配置されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片とをさらに備えてもよい。
【0013】
熱伝導性流動体の実現にあたって、流動体にはセラミック粒子および金属粒子の少なくともいずれか一方が含まれればよい。こういったセラミック粒子や金属粒子は高い熱伝導特性を備えることから、流動体の熱伝導特性は高められることができる。
【0014】
熱伝導性流動体の実現にあたって、流動体には例えばシリコーングリースが用いられてもよい。シリコーングリースは、温度変化にも拘わらず長期間にわたって固有の流動性を維持することができる。したがって、冷却対象物の温度上昇にも拘わらず長期間にわたって熱伝導性流動体の流動性は維持され続けることができる。放熱部品は確実に長期間にわたって冷却対象物の表面に保持され続けることができる。
【0015】
前述の横滑り規制機構は、所定の範囲で冷却対象物の表面に沿って放熱部品の横滑りを許容してもよい。一般に、冷却対象物が発熱すると、いわゆる熱膨張率の違いに基づき冷却対象物の表面と放熱部品の対向面との間に相対的な横ずれが生じる。熱伝導性流動体はその流動性に基づきこういった横ずれを容易に吸収することができる。しかも、たとえ冷却対象物や放熱部品が熱膨張しても、前述のように放熱部品の横滑りを許容する空間が横滑り規制機構には確保されることから、冷却対象物や放熱部品、横滑り規制機構で内部応力の発生は確実に阻止されることができる。
【0016】
放熱部品は例えばヒートシンクに構成されればよい。ヒートシンクは、例えば冷却対象物の表面に受け止められる平板状の受熱部と、この受熱部から垂直方向に立ち上がるフィンとを備えればよい。この種の冷却装置は例えばプリント配線基板上の電子部品の冷却に利用されることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、できる限り小さな押し付け力で冷却対象物の表面に満遍なく放熱部品は接触し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
図1は電子部品実装基板11を概略的に示す。この電子部品実装基板11は、後述されるように表面で1または複数の電子部品を受け止める例えば樹脂製のプリント配線基板12を備える。電子部品同士は、例えばプリント配線基板12の表面(または内部)に張り巡らされる導電配線パターン(図示されず)の働きで相互に電気的に接続される。こういった電子部品実装基板11は、例えばサーバといったコンピュータシステムに組み込まれることができる。
【0020】
プリント配線基板12の表面には本発明の第1実施形態に係る冷却装置13が搭載される。各冷却装置13は放熱部品すなわちヒートシンク14を備える。ヒートシンク14には、平板状の受熱部14aと、この受熱部14aから垂直方向に立ち上がる複数枚のフィン14bとが形成される。隣接するフィン14b同士の間には同一方向に延びる通気路15が区画される。こういった電子部品実装基板11が例えばサーバに組み込まれる場合には、送風ユニットの働きで通気路15を通過する気流は生み出されればよい。ヒートシンク14は例えばアルミニウムや銅といった金属材料から成型されればよい。
【0021】
各冷却装置13は、プリント配線基板12の表面に沿ってヒートシンク14の受熱部14aを取り囲む枠部材16をさらに備える。枠部材16には、プリント配線基板12の表面から立ち上がって、四方から受熱部14aの外周に向き合わせられる4つの壁体17が区画される。枠部材16は、例えばプリント配線基板12の表面に直交する垂直方向PDに変位可能にヒートシンク14に装着される。こういった枠部材16は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0022】
図2に示されるように、ヒートシンク14の受熱部14aは、平坦な対向面18で冷却対象物すなわち電子部品19の表面に受け止められる。ここで、電子部品19は例えばBGA(ボールグリッドアレイ)構造半導体パッケージに構成される。このBGA構造半導体パッケージでは、小型セラミック基板21の表面すなわち上向き面に半導体チップ(図示されず)が搭載される。小型セラミック基板21の裏面すなわち下向き面には複数個の端子バンプ22が取り付けられる。端子バンプ22は、プリント配線基板12上で対応する端子パッド(図示されず)に受け止められる。こうして電子部品19すなわちBGA構造半導体パッケージとプリント配線基板12との間には電気的接続が確立される。端子バンプ22は例えばはんだといった導電材料から構成されればよい。小型セラミック基板21とプリント配線基板12との間にはいわゆるアンダーフィル材が挟み込まれてもよい。ただし、電子部品19はこういった形態に限られるものではない。
【0023】
電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面18との間には熱伝導性流動体すなわちサーマルグリース23が挟み込まれる。サーマルグリース23は、例えばシリコーングリースと、このシリコーングリース中に分散する熱伝導性フィラーとから構成される。熱伝導性フィラーには例えばセラミック粒子や金属粒子が利用されればよい。
【0024】
こういったサーマルグリース23は電子部品19とヒートシンク14との間で密着性を高める。電子部品19の表面やヒートシンク14の対向面18で相当程度の表面粗さが確立されても、ヒートシンク14は広い接触面で満遍なく電子部品19に接触することができる。電子部品19とヒートシンク14との間で高い熱伝導特性は確立される。電子部品19の熱は効率的にヒートシンク14の受熱部14aに受け渡されることができる。ヒートシンク14からの放熱は促進される。
【0025】
しかも、こういったサーマルグリース23が面同士の間に挟み込まれると、サーマルグリース23はシリコーングリースの流動性に基づき所定の吸着力を発揮することができる。こうした吸着力は、電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14の横滑りを許容するものの、電子部品19の表面に直交する垂直方向PDにヒートシンク14の変位を規制する。すなわち、サーマルグリース23はヒートシンク14の剥離を防止する。このとき、ヒートシンク14は大気圧のみで電子部品19の表面に押し付けられる。
【0026】
図2から明らかなように、前述の枠部材16はプリント配線基板12の表面に沿って電子部品19を取り囲む。枠部材16の壁体17は所定の間隔で四方から電子部品19の外周に向き合わせられる。例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。このとき、枠部材16はヒートシンク14とともにプリント配線基板12の表面に沿って移動する。こうした移動の後に壁体17の内面は電子部品19の外周に受け止められる。こうして枠部材16は所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。すなわち、枠部材16の働きによれば、ヒートシンク14の横滑りにも拘わらず、ヒートシンク14と電子部品19との間には十分な広がりでサーマルグリース23は確保されることができる。サーマルグリース23は電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面との間で十分な吸着力を確保し続けることができる。特に、サーバに組み込まれる電子部品実装基板11は垂直姿勢に保持されることが多い。こういった場合でも、枠部材16は確実にヒートシンク14の横滑りの範囲を規定することができる。このように枠部材16は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0027】
以上のような冷却装置13では、前述のようにヒートシンク14の横滑りが規制される限り、サーマルグリース23の働きのみでヒートシンク14は電子部品19の表面に保持されることができる。ヒートシンク14は大気圧のみで電子部品19の表面に押し付けられる。電子部品19には過度の押し付け力が加えられることはない。電子部品19の変形や内部応力の発生は極力阻止されることができる。
【0028】
一般に、電子部品19が発熱すると、いわゆる熱膨張率の違いに基づき電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面18との間に相対的な横ずれが生じる。サーマルグリース23はシリコーングリースの流動性に基づきこういった横ずれを容易に吸収することができる。しかも、たとえ電子部品19やヒートシンク14が熱膨張しても、前述のように電子部品19やヒートシンク14と枠部材16との間には所定の間隔が確保されることから、電子部品19やヒートシンク14、枠部材16で内部応力の発生は確実に阻止されることができる。
【0029】
前述のようなシリコーングリースは、温度変化にも拘わらず長期間にわたって固有の流動性を維持することができる。したがって、電子部品19の温度上昇にも拘わらず長期間にわたってサーマルグリース23の流動性は維持され続けることができる。ヒートシンク14は確実に長期間にわたって電子部品19の表面に保持され続けることができる。
【0030】
図3に示されるように、枠部材16とヒートシンク14との間には変位規制機構25が確立されてもよい。この変位規制機構25は、例えば壁体17の内面から突出する突起26で構成されればよい。こういった突起26の働きによれば、樹脂製枠部材16の弾性力に基づき枠部材16はヒートシンク14上に保持されることができる。このとき、ヒートシンク14には、枠部材16が規定のセット位置に到達した際に突起26を受け入れる窪み(図示されず)が形成されてもよい。このセット位置では、枠部材16はヒートシンク14および電子部品19を完全に取り囲む。こういった突起26はヒートシンク14側に形成されてもよい。この種の変位規制機構25は枠部材16と電子部品19との間に確立されてもよい。
【0031】
次に本発明の第1実施形態に係る冷却装置13の着脱方法を簡単に説明する。図4に示されるように、冷却装置13の装着にあたってプリント配線基板12は水平姿勢で保持される。プリント配線基板12上には予め電子部品19は実装される。電子部品19の表面にはサーマルグリース23が盛られる。電子部品19の表面が四角形で規定される場合には、サーマルグリース23は四角形の中央付近に盛られるとともに2本の対角線に沿って盛られればよい。
【0032】
続いて、電子部品19の表面にヒートシンク14は搭載される。受熱部14aの形状は電子部品19の外形に合わせ込まれる。ヒートシンク14は所定の圧力で電子部品19すなわちプリント配線基板12に向けて押し付けられる。こうした押し付け力の働きでサーマルグリース23はヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間に満遍なく広がることができる。この時点で、ヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間には十分な吸着力が確立される。垂直方向PDに沿ったヒートシンク14の変位は規制される。押し付け力が解放されても、ヒートシンク14は電子部品19上に留まる。
【0033】
こうしてヒートシンク14の搭載が完了すると、図5に示されるように、ヒートシンク14および電子部品19には相次いで枠部材16が装着される。枠部材16の下端はプリント配線基板12の表面に受け止められる。こうして冷却装置13の装着は完了する。
【0034】
冷却装置13の取り外しにあたって、図6に示されるように、プリント配線基板12から枠部材16は取り外される。枠部材16は垂直方向PDに引き抜かれる。その後、図7に示されるように、ヒートシンク14には水平方向に沿って外力EFが加えられる。ヒートシンク14は電子部品19の表面に沿って簡単に横滑りする。こうしてヒートシンク14は電子部品19の表面から簡単に離脱することができる。ヒートシンク14の取り外しは完了する。
【0035】
図8は本発明の第2実施形態に係る冷却装置13aを概略的に示す。この冷却装置13aでは、ヒートシンク14の受熱部14aは電子部品19の表面に比べて大きく形成される。したがって、受熱部14aの対向面18は部分的に電子部品19の表面に受け止められる。電子部品19の表面とヒートシンク14との間にはサーマルグリース23が挟み込まれる。サーマルグリース23は、前述と同様に、電子部品19とヒートシンク14との間で密着性を高めると同時に、電子部品19の表面に直交する垂直方向PDにヒートシンク14の変位を規制する。サーマルグリース23はヒートシンク14の剥離を防止する。ヒートシンク14は大気圧のみで電子部品19の表面に押し付けられる。
【0036】
冷却装置13aは、電子部品19およびヒートシンク14の受熱部14aを取り囲む枠部材31をさらに備える。この枠部材31には、四方から電子部品19の外周に向き合わせられる4つの下側壁体32が区画される。下側壁体32の上端には、ヒートシンク14の対向面18に向き合わせられつつ水平方向に外側に広がる水平壁33が接続される。水平壁33の外周には、水平壁33の表面から立ち上がって四方からヒートシンク14の受熱部14aの外周に向き合わせられる4つの上側壁体34が区画される。こういった枠部材31は例えば樹脂材から成型されればよい。
【0037】
枠部材31は、電子部品19の表面に直交する垂直方向PDに変位可能にヒートシンク14に装着される。こういった装着にあたって、枠部材31とヒートシンク14との間には前述と同様に例えば変位規制機構35が確立される。この変位規制機構35は、例えば上側壁体34の内面から突出する突起36と、枠部材31が規定のセット位置に位置決めされる際に突起36を受け入れる窪み(図示されず)とで構成されればよい。
【0038】
図8から明らかなように、枠部材31が規定のセット位置に位置決めされると、枠部材31はプリント配線基板12の表面から浮き上がる。このセット位置では、枠部材31はヒートシンク14および電子部品19を完全に取り囲む。枠部材31すなわち下側壁体32の下端とプリント配線基板12の表面との間には所定の間隔SPが確保される。このとき、垂直方向PDに測定される枠部材31の総高さTHは、プリント配線基板12の表面からヒートシンク14の対向面18まで垂直方向PDに測定される高さSHよりも小さく設定される。
【0039】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。このとき、枠部材31はヒートシンク14とともにプリント配線基板12の表面に沿って移動する。こうした移動の後に下側壁体32の内面は電子部品19の外周に受け止められる。こうして枠部材31は、前述と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。サーマルグリース23は電子部品19の表面とヒートシンク14の対向面18との間で十分な吸着力を確保し続けることができる。このように枠部材31は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0040】
次に本発明の第2実施形態に係る冷却装置13aの着脱方法を簡単に説明する。この第2実施形態では、ヒートシンク14の搭載に先立ってプリント配線基板12上の電子部品19には枠部材31が装着される。枠部材31の下端はプリント配線基板12の表面に到達してもよい。枠部材31の装着後に、前述と同様に、電子部品19の表面にサーマルグリース23は盛られる。
【0041】
その後、電子部品19の表面にヒートシンク14は搭載される。ヒートシンク14の向きは枠部材31の向きに対して合わせ込まれる。ヒートシンク14は所定の圧力で電子部品19すなわちプリント配線基板12に向けて押し付けられる。こうした押し付け力の働きでサーマルグリース23はヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間に満遍なく広がることができる。この時点で、ヒートシンク14の対向面18と電子部品19の表面との間には十分な吸着力が確立される。押し付け力が解放されても、ヒートシンク14は電子部品19上に留まる。
【0042】
その後、枠部材はプリント配線基板12の表面から引き上げられる。枠部材の動きは電子部品19の外形で案内される。例えば水平壁33の上面がヒートシンク14の対向面18に衝突すると、変位規制機構35の突起36は窪みに入り込む。こうして枠部材31は規定のセット位置に位置決めされる。枠部材31自身の弾性力の働きで枠部材31はヒートシンク14に係り止めされる。ヒートシンク14の受熱部14aおよび電子部品19は完全に枠部材31に取り囲まれる。冷却装置13aの装着は完了する。
【0043】
冷却装置13aの取り外しにあたって、図9に示されるように、枠部材31はプリント配線基板12の表面に向けて引き下ろされる。枠部材31の下端が完全にプリント配線基板12の表面に受け止められると、枠部材31の上側壁体34は完全にヒートシンク14から離脱する。プリント配線基板12の表面からヒートシンク14の対向面18まで測定される高さSHよりも枠部材31の総高さTHは低いことから、枠部材31の上端は、受熱部14aの対向面18を含む仮想平面PLよりも下方に位置する。
【0044】
この状態で、図10に示されるように、ヒートシンク14には水平方向に沿って外力EFが加えられる。ヒートシンク14は、枠部材31に接触することなく電子部品19の表面に沿って簡単に横滑りする。こうしてヒートシンク14は電子部品19の表面から簡単に離脱することができる。ヒートシンク14の取り外しは完了する。
【0045】
図11は本発明の第3実施形態に係る冷却装置13bを概略的に示す。この第3実施形態に係る冷却装置13bは、前述の枠部材16、31に代えて、電子部品19の表面から立ち上がって、所定の間隔で四方から放熱部品すなわちヒートシンク14の外周に向き合わせられる4つの突片41を備える。こういった突片41は電子部品19に一体に形成されればよい。隣接する突片41同士は相互に接続されてもよい。こうした接続によれば、ヒートシンク14の受熱部14aを受け入れる凹み42が電子部品19の表面に区画されることができる。電子部品19は切れ目なく突片41に取り囲まれる。図中、第1および第2実施形態の構成と同様な作用や機能を発揮する構成には同一の参照符号が付される。
【0046】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。電子部品19上の突片41はヒートシンク14の外周に係り合う。こうして突片41は、前述の枠部材16、31と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。このように突片41は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0047】
図12は本発明の第4実施形態に係る冷却装置13cを概略的に示す。この第4実施形態に係る冷却装置13cは、前述の枠部材16、31に代えて、放熱部品すなわちヒートシンク14の対向面18から立ち上がって、所定の間隔で四方から電子部品19の外周に向き合わせられる4つの突片43を備える。こういった突片43はヒートシンク14に一体に形成されればよい。隣接する突片43同士は相互に接続されてもよい。こうした接続によれば、電子部品19を受け入れる凹み44がヒートシンク14の対向面に区画されることができる。電子部品19は切れ目なく突片43に取り囲まれる。図中、第1および第2実施形態の構成と同様な作用や機能を発揮する構成には同一の参照符号が付される。
【0048】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。ヒートシンク14上の突片43は電子部品19の外周に係り合う。こうして突片43は、前述の枠部材16、31と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。このように突片43は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0049】
図13は本発明の第5実施形態に係る冷却装置13dを概略的に示す。この第5実施形態に係る冷却装置13dは、前述の枠部材16、31に代えて、プリント配線基板12の表面から立ち上がって、所定の間隔で四方から放熱部品すなわちヒートシンク14の外周に向き合わせられる4つの突片45を備える。こういった突片45は、例えばねじ46といった結合機構でプリント配線基板12の表面に固定されればよい。隣接する突片45同士は相互に接続されてもよい。こうした接続によれば、電子部品19およびヒートシンク14の受熱部14aを取り囲む枠が区画されることができる。ヒートシンク14は切れ目なく突片45に取り囲まれる。図中、第1および第2実施形態の構成と同様な作用や機能を発揮する構成には同一の参照符号が付される。
【0050】
例えばプリント配線基板12の搬送といった場面では、プリント配線基板12の傾斜や振動に基づき電子部品19の表面に沿ってヒートシンク14は横滑りする。プリント配線基板12上の突片45はヒートシンク14の外周に係り合う。こうして突片45は、前述の枠部材16、31と同様に、所定の範囲内でヒートシンク14の横滑りを制限することができる。このように突片45は本発明に係る横滑り規制機構として機能することができる。
【0051】
図14から明らかなように、ヒートシンク14の対向面18には、プリント配線基板12の表面から立ち上がる突片45を受け入れる溝47が形成されてもよい。電子部品19の表面でヒートシンク14が横滑りすると、プリント配線基板12上の突片45は溝47の壁面に係り合う。こうして突片45と溝47との協働で、ヒートシンク14の横滑りは所定の範囲内に制限されることができる。
【0052】
このとき、プリント配線基板12から立ち上がる突片45には、プリント配線基板12上に固定される例えば金属製のスティフナが利用されることができる。スティフナは例えば電子部品19の周囲に切れ目なく取り付けられる。こういったスティフナによれば、電子部品19の周囲でプリント配線基板12のねじれや撓みは防止されることができる。
【0053】
以上のような冷却装置13、13a〜13dでは、例えばヒートシンク14と電子部品19との間に剥離機構が組み込まれてもよい。こういった剥離機構は、例えば図15に示されるように、ヒートシンク14の受熱部14aに形成されるねじ孔48と、このねじ孔48にねじ込まれるねじ49とで構成されればよい。ヒートシンク14の取り付けにあたって、ねじ49は例えば休止位置に位置決めされる。この休止位置では、ねじ49の先端は電子部品19の表面に向き合わせられる。ねじ49の頭は、ヒートシンク14の表面から浮き上がった状態に保持される。ヒートシンク14の取り外しにあたって、ねじ49はねじ孔48にねじ込まれる。ねじ49の先端は電子部品19の表面に受け止められる。さらにねじ49がねじ込まれると、ねじ49の回転は垂直方向PDの推進力に変換される。こうしてヒートシンク14は、サーマルグリース23の吸着力に抗して比較的に簡単に電子部品19の表面から引き剥がされることができる。
【0054】
なお、以上のような冷却装置13、13a〜13dでは、枠部材16の内面や突片41、43、45と電子部品19やヒートシンク14の外周とは完全に密着し合ってもよい。この場合には、ヒートシンク14の横滑りは完全に阻止されることができる。
【0055】
(付記1) 対向面で冷却対象物の表面に受け止められる放熱部品と、冷却対象物の表面および対向面の間に挟み込まれる熱伝導性流動体と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置。
【0056】
(付記2) 付記1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、冷却対象物および放熱部品の周囲を囲み、冷却対象物および放熱部品に対して冷却対象物の表面に直交する垂直方向に相対的に変位する枠体を備えることを特徴とする冷却装置。
【0057】
(付記3) 付記1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、前記冷却対象物に形成されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片を備えることを特徴とする冷却装置。
【0058】
(付記4) 付記1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、前記放熱部品に形成されて、放熱部品の横滑り時に冷却対象物に係り合う突片を備えることを特徴とする冷却装置。
【0059】
(付記5) 付記1に記載の冷却装置において、前記冷却対象物を変位不能に支持する支持体と、この支持体上に変位不能に配置されて、放熱部品の横滑り時に放熱部品に係り合う突片とをさらに備えることを特徴とする冷却装置。
【0060】
(付記6) 付記1〜5のいずれかに記載の冷却装置において、前記熱伝導性流動体にはセラミック粒子および金属粒子の少なくともいずれか一方が含まれることを特徴とする冷却装置。
【0061】
(付記7) 付記6に記載の冷却装置において、前記セラミック粒子および金属粒子はグリース中に分散することを特徴とする冷却装置。
【0062】
(付記8) 付記1〜7のいずれかに記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は前記横滑りの範囲を規定することを特徴とする冷却装置。
【0063】
(付記9) 付記1〜8のいずれかに記載の冷却装置において、前記放熱部品は、前記垂直方向に立ち上がるフィンを備えることを特徴とする冷却装置。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷却装置の外観を概略的に示す電子部品実装基板の斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大部分断面図である。
【図3】変位規制機構の構成を概略的に示す拡大垂直断面図である。
【図4】電子部品上にヒートシンクを搭載する場面を示すプリント配線基板の拡大部分垂直断面図である。
【図5】電子部品およびヒートシンクに枠部材を装着する場面を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図6】電子部品およびヒートシンクから枠部材を取り外す場面を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図7】電子部品からヒートシンクを離脱させる場面を示すプリント配線基板の拡大部分垂直断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図9】ヒートシンクから枠部材を離脱させる場面を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図10】電子部品からヒートシンクを離脱させる場面を示すプリント配線基板の拡大部分垂直断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図14】第5実施形態の変形例に係る冷却装置を示す電子部品実装基板の拡大部分垂直断面図である。
【図15】剥離機構の構成を概略的に示す電子部品およびヒートシンクの拡大部分垂直断面図である。
【符号の説明】
【0065】
13 冷却装置、13a〜13d 冷却装置、14 放熱部品としてのヒートシンク、14b フィン、16 横滑り規制機構としての枠体すなわち枠部材、18 対向面、19 冷却対象物としての電子部品、23 熱伝導性流動体としてのサーマルグリース、31 横滑り規制機構としての枠体すなわち枠部材、41 横滑り規制機構としての突片、43 横滑り規制機構としての突片、45 横滑り規制機構としての突片。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向面で冷却対象物の表面に受け止められる放熱部品と、冷却対象物の表面および対向面の間に挟み込まれる熱伝導性流動体と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、冷却対象物および放熱部品の周囲を囲み、冷却対象物および放熱部品に対して冷却対象物の表面に直交する垂直方向に相対的に変位する枠体を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却装置において、前記熱伝導性流動体にはセラミック粒子および金属粒子の少なくともいずれか一方が含まれることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却装置において、前記セラミック粒子および金属粒子はグリース中に分散することを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は前記横滑りの範囲を規定することを特徴とする冷却装置。
【請求項1】
対向面で冷却対象物の表面に受け止められる放熱部品と、冷却対象物の表面および対向面の間に挟み込まれる熱伝導性流動体と、冷却対象物の表面に沿った放熱部品の横滑りを制限する横滑り規制機構とを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は、冷却対象物および放熱部品の周囲を囲み、冷却対象物および放熱部品に対して冷却対象物の表面に直交する垂直方向に相対的に変位する枠体を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却装置において、前記熱伝導性流動体にはセラミック粒子および金属粒子の少なくともいずれか一方が含まれることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却装置において、前記セラミック粒子および金属粒子はグリース中に分散することを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置において、前記横滑り規制機構は前記横滑りの範囲を規定することを特徴とする冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−180566(P2007−180566A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31287(P2007−31287)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【分割の表示】特願2001−312044(P2001−312044)の分割
【原出願日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【分割の表示】特願2001−312044(P2001−312044)の分割
【原出願日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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