説明

処理の終点検出方法および処理の終点検出装置

【課題】本発明の実施形態は、処理の終点に対する検出精度を向上させることができる処理の終点検出方法および処理の終点検出装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る処理の終点検出方法は、被処理物の処理に伴って時間とともに変化する検出情報を所定の期間収集して単位空間を定義し、前記単位空間を構成する検出情報について平均値と、標準偏差と、を求める。そして、以下の(9)式に基づいて終点検出の判定対象となる検出情報を基準化し、以下の(10)式に基づいて距離を求め、前記距離に基づいて処理の終点を検出する。
Xt=(X−Xm)/σm ・・・(9)
=Xt ・・・(10)
ここで、Xmは前記単位空間における平均値、σmは前記単位空間における標準偏差、Xは前記終点検出の判定対象となる任意の時間における検出情報、Xtは基準化された検出情報、Dは距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、概ね、処理の終点検出方法および処理の終点検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの製造においては、エッチング処理、平坦化処理などの各種の処理が行われている。
この様な処理においては、光の強度、電流、電圧、圧力、音、水素イオン指数、生成物の量などの検出情報の変化から処理の終点を検出するようにしている。
しかしながら、検出情報は製造プロセスにおける変動要因や外乱要因などにより大きく変動する場合があるため処理の終点に対する検出精度が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−283868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、処理の終点に対する検出精度を向上させることができる処理の終点検出方法および処理の終点検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る処理の終点検出方法は、被処理物の処理に伴って時間とともに変化する検出情報を所定の期間収集して単位空間を定義し、前記単位空間を構成する検出情報について平均値と、標準偏差と、を求める。そして、以下の(1)式に基づいて終点検出の判定対象となる検出情報を基準化する。(1)式は単位空間における平均値、標準偏差を用いて計算したZスコアに相当する。次に、(2)式で定義される距離Dに変換する。
Xt=(X−Xm)/σm ・・・(1)
=Xt ・・・(2)
ここで、Xmは前記単位空間における平均値、σmは前記単位空間における標準偏差、Xは前記終点検出の判定対象となる任意の時間における検出情報、Xtは基準化された検出情報、Dは距離空間(以下、距離という)である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の比較例に係る処理の終点検出方法を例示するためのグラフ図である。(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、(b)は単純移動平均処理により(a)を平滑化したグラフ図、(c)は移動平均値を時間微分処理したものを例示するためのグラフ図である。
【図2】第2の比較例に係る処理の終点検出方法を例示するためのグラフ図である。(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、(b)は単純移動平均処理により(a)を平滑化したグラフ図、(c)は移動平均値を時間微分処理したものを例示するためのグラフ図である。
【図3】第1の実施形態に係る処理の終点検出方法を例示するフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係る第1の処理の終点検出方法を例示するグラフ図である。(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、(b)は距離Dの変化に変換したグラフ図である。
【図5】第1の実施形態に係る第2の処理の終点検出方法を例示するグラフ図である。(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、(b)は距離Dの変化に変換したグラフ図である。
【図6】第2の実施形態に係る処理の終点検出装置を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。
まず、比較例に係る処理の終点検出方法を例示する。
図1は、第1の比較例に係る処理の終点検出方法を例示するためのグラフ図である。図1(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、図1(b)は単純移動平均処理により(a)を平滑化したグラフ図、図1(c)は移動平均値を時間微分処理したものを例示するためのグラフ図である。
図2は、第2の比較例に係る処理の終点検出方法を例示するためのグラフ図である。図2(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、図2(b)は単純移動平均処理により(a)を平滑化したグラフ図、図2(c)は移動平均値を時間微分処理したものを例示するためのグラフ図である。
なお、図1は後述するランダムノイズ(不要な情報)が支配的である場合、図2はランダムノイズに周期性のあるノイズが重なり合って発生している場合である。
【0008】
図1(a)や図2(a)に示すように、検出情報は製造プロセスにおける変動要因や外乱要因などにより大きく変動する場合がある。
この様に検出情報が大きく変動する場合には、検出情報の変化から処理の終点を検出することが困難となる。
【0009】
この場合、収集された検出情報の移動平均値を求めるようにすれば、ノイズを抑制することができる。例えば、図1(a)、図2(a)に例示をした検出情報の移動平均値を求めるようにすれば、図1(b)、図2(b)に例示をしたノイズが抑制された移動平均値の変化を得ることができる。
【0010】
そのため、移動平均値の変化から処理の終点を検出することが容易となる。この場合、移動平均値の変化量が大きくなった時点を処理の終点と判定することができる。例えば、図1(b)中の矢印に示す時点を処理の終点と判定することができる。
また、移動平均値を時間微分すれば、図1(c)、図2(c)に例示をしたように移動平均値の変化をさらに容易に知ることができる。そのため、移動平均値の変化量が大きくなった時点をさらに容易に特定することができるようになる。その結果、例えば、図1(c)中の矢印に示す時点を処理の終点と判定することが容易となる。
【0011】
ここで、製造プロセスによっては、周期的なノイズが発生する場合がある。例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing;化学機械研磨)においては、機械的な回転運動を伴う研磨が行われるため、研磨条件によっては回転周期に同期した周期的なノイズが発生する場合がある。
この様な周期的なノイズが発生している場合には、図2(b)に例示をしたように移動平均値が周期的に変化するようになる。そのため、図2(b)中の矢印に示す処理の終点を検出することが困難となる。この場合、移動平均値を時間微分しても周期的な変化を抑制することができないため、図2(c)中の矢印に示す処理の終点を検出することが困難となることに変わりはない。
【0012】
以上に例示をしたように、収集された検出情報の移動平均値を求め、求められた移動平均値を時間微分すれば処理の終点検出が容易となる。
この場合、図1(c)に例示をしたようにランダムノイズが支配的で信号強度がある程度少なければ、移動平均値を時間微分することで処理の終点検出が容易となる。ただし、ノイズの信号強度がある程度少ない場合であっても、ノイズに起因する変化と処理の終点における変化とが明瞭に区別できない場合もある。
また、ノイズが多い場合には偽信号が多発するため、処理の終点検出が困難となる。 例えば、図2(c)に例示をしたようにランダムノイズと周期性のあるノイズが同時に生じる場合には、移動平均値を時間微分しても処理の終点検出が困難となる。
すなわち、収集された検出情報の移動平均値を求め、求められた移動平均値を時間微分しても処理の終点に対する検出精度を向上させることができない場合がある。
【0013】
また、処理の終点に対する検出精度を向上させるために、他の判定条件を組み合わせる場合がある。
例えば、所定の時間が経過するまでは処理の終点検出を行わないようにするという判定条件を付加する場合がある。
しかしながら、被処理物の品種や処理装置の経時変化などにより処理の終点が変化するため、この様な判定条件を付加しても処理の終点に対する検出精度を向上させることができない場合がある。
また、被処理物の品種毎にプロセス条件が変わる場合には、他の判定条件の設定が煩雑となる場合がある。
また、他の判定条件を単に組み合わせても人間のパターン識別能力に比べて優れたものとすることは困難であり、図2(c)に例示をしたような場合には判定者による判定を行う必要がある。しかしながら、半導体量産工程では自動的(機械的)に終点判定できることが必須である。
すなわち、検出情報の移動平均値を時間微分するとともに、他の判定条件を単に組み合わせても処理の終点に対する自動検出精度を向上させることができない場合があり、半導体量産時の障害となる。
【0014】
[第1の実施形態]
図3は、第1の実施形態に係る処理の終点検出方法を例示するフローチャートである。 図3に示すように、まず、被処理物の処理に伴って時間とともに変化する検出情報を所定の期間Tの間収集し、単位空間(基準空間とも称する)を定義する(ステップS1)。 この場合、処理が定常状態となった後に検出情報を所定の期間Tの間収集するようにすることができる。処理が定常状態となった後に検出情報を収集するようにすれば、処理の初期において発生するノイズの影響を低減させることができる。
処理が定常状態となったか否かの判定基準は、実験やシミュレーションなどを行い予め規定するようにすることもできるし、経験値などに基づいて予め規定するようにすることもできる。
また、単位空間を定義するために検出情報を収集する期間Tを長くすれば、すなわち、収集する検出情報のデータ数を多くすれば、ノイズの影響をさらに低減させることができる。ただし、検出情報を収集する期間Tや収集する検出情報のデータ数を必要以上に多くすれば、処理効率が低下したり、情報の性質(素性)が変化するおそれがある。
そのため、検出情報を収集する期間Tや収集する検出情報のデータ数は、被処理物の品種、処理時間、ノイズの発生頻度、経験値などに基づいて適宜変更することができる。
【0015】
次に、単位空間を構成する検出情報について平均値(Xm)と標準偏差(σm)とを求める(ステップS2)。
次に、終点検出の判定対象となる検出情報を基準化し、距離Dを求める(ステップS3)。
例えば、終点検出の判定対象となる検出情報(単位空間を構成する検出情報よりも後に検出された検出情報)をXとすると、以下の(3)式により基準化することができる。
Xt=(X−Xm)/σm ・・・(3)
また、距離Dは、以下の(4)式により求めることができる。
【0016】
=Xt={(X−Xm)/σm} ・・・(4)
この場合、距離Dは、終点検出の判定対象となる検出情報X毎に求める。すなわち、単位空間情報を収集する期間Tの経過後に検出された検出情報Xについて順次距離Dを求める。
また、ノイズが多い場合などにおいては、終点検出の判定対象となる検出情報Xを移動平均処理し、平均値(Xm)と標準偏差(σm)とに基づいて移動平均処理された終点検出の判定対象となる検出情報を基準化して距離Dを求めるようにすることができる。
なお、単位空間においては距離Dの平均値は1となる。
【0017】
次に、予め定められた閾値Dcに基づいて処理の終点検出を行う(ステップS4)。
閾値Dcは、実験やシミュレーションなどを行い予め求めるようにすることもできるし、経験値などに基づいて予め求めるようにすることもできる。
そして、例えば、ステップS3において求められた距離Dが、閾値Dc以上である場合には処理の終点であると判定することができる。
【0018】
また、例えば、ステップS3において求められた距離Dが、閾値Dc未満である場合には処理の終点ではないと判定することができる。この場合、ステップS3に戻って、次に終点検出の判定対象となる検出情報を基準化し、距離Dを求める。そして、ステップS4において予め定められた閾値Dcに基づいて処理の終点検出を行う。以降、処理の終点が検出されるまで同様の手順を繰り返すようにすることができる。
【0019】
処理の終点であると判定された場合には、処理の終点が検出された旨の情報を発する(ステップS5)。
この場合、処理の終点が検出された旨の情報により処理を終了させることもできるし、所定の時間処理を続行した後に処理を終了させることもできる。なお、所定の時間処理を続行する際に前述した距離Dを求め、処理の終点を確認するようにすることもできる。
【0020】
次に、第1の実施形態に係る処理の終点検出方法をさらに例示する。
図4は、第1の実施形態に係る第1の処理の終点検出方法を例示するグラフ図である。図4(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、図4(b)は距離Dの変化に変換したグラフ図である。
図5は、第1の実施形態に係る第2の処理の終点検出方法を例示するグラフ図である。図5(a)は収集された検出情報の時間変化を例示するためのグラフ図、図5(b)は距離Dの変化に変換したグラフ図である。
なお、図4はランダムノイズの発生が支配的である場合、図5はランダムノイズと周期性のあるノイズが同時に発生している場合である。例えば、図4は前述した図1の場合に相当し、図5は前述した図2の場合に相当する。また、図4(a)中のM1、図5(a)中のM2は検出情報の移動平均を表している。
【0021】
図4、図5に例示をしたものの場合には、前述したステップS1で例示をしたように、処理が定常状態となった後に検出情報を収集し、単位空間を定義する。
例えば、図4(a)、図5(a)に示すように、処理が定常状態となった後に期間Tにおいて検出情報を収集し、収集された検出情報に基づいて単位空間を定義する。
【0022】
そして、ステップS2、ステップS3で例示をしたように、単位空間を構成する検出情報について平均値(Xm)と標準偏差(σm)とを求め、終点検出の判定対象となる検出情報Xを基準化し、距離Dを求める。この場合、期間Tの経過後に検出された検出情報Xについて順次距離Dを求める。また、ノイズが多い場合などにおいては、終点検出の判定対象となる検出情報Xを移動平均処理し、移動平均処理された検出情報Xに基づいて距離Dを求めるようにすることができる。
【0023】
例えば、図4(b)に示すD10は単位空間における距離Dを表し、D11は期間Tの経過後に検出された検出情報Xについて順次求められた距離Dを表している。
また、図5(b)に示すD20は単位空間における距離Dを表し、D21は期間Tの経過後に検出された検出情報Xについて順次求められた距離Dを表している。
なお、図4(b)、図5(b)に例示をしたものの場合は、検出情報Xを移動平均処理し、移動平均処理された検出情報Xに基づいて距離Dを求めている。距離Dを求めた後、これを移動平均処理することもできる。なお、ノイズが少ない場合などにおいては、移動平均処理を省略することもできる。
【0024】
そして、距離Dが前述した閾値Dc以上となった場合には、処理の終点であると判定するようにすることができる。
例えば、図4、図5中の矢印の時点を処理の終点であると判定するようにすることができる。
この場合、図4(a)においては不明瞭であった処理の終点を図4(b)に示すように明瞭なものとすることができる。
【0025】
また、図5(a)においては不明瞭であった処理の終点を図5(b)に示すように明瞭なものとすることができる。
図5に示すものは、図5(a)から分かるように周期的なノイズが発生している場合であるが、周期的なノイズが発生している領域に基づいて単位空間を定義しているため、距離Dに対する周期的なノイズの影響を低減させることができる。
例えば、図5(b)から分かるように、D21における周期的なノイズの影響をD20と比べて低減させることができる。
【0026】
また、処理の終点の判定において、検出情報Xの変化に基づく判定、検出情報Xの移動平均値の変化に基づく判定、距離Dに基づく判定を適宜使い分けたり、組合せたりすることもできる。
例えば、ノイズが少ない場合は、検出情報Xの変化に基づく判定や、検出情報Xの移動平均値の変化に基づく判定を行うことで終点検出の簡易化を図ることができる。
また、ノイズが多い場合や周期的なノイズが発生している場合には、距離Dに基づく判定を行うことで終点検出の精度を向上させることができる。
また、例えば、検出情報Xの変化に基づく判定、距離Dに基づく判定、検出情報Xの移動平均値の変化に基づく判定を行い、いずれか1つの判定により検出された時点を処理の終点としたり、複数の判定により検出された時点を処理の終点としたりすることができる。
【0027】
本実施の形態に係る処理の終点検出方法は、時系列データに基づいて処理の終点を検出する場合に適用させることができる。一例としては、例えば、半導体装置などの電子デバイスの製造において行われるウェットエッチング処理、ドライエッチング処理、CMP法などを用いた平坦化処理、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いた成膜処理などにおいて、本実施の形態に係る処理の終点検出方法を用いて終点検出を行うようにすることができる。この場合、検出情報としては、例えば、プロセスガスの流量、処理圧力、処理温度、光の強度、電流、電圧、音、水素イオン指数、生成物の量などを例示することができる。
【0028】
また、終点検出アルゴリズムとして既設の終点検出装置に組み込むことができるので、他の終点検出アルゴリズムと組合せて運用することもできる。
また、図5に例示をしたもののように周期的なノイズが発生している領域に基づいて単位空間を定義しているので、終点判定に用いる情報に対するノイズの影響を抑制することができる。
また、一般的には、多変量の情報からマハラノビス距離Dを求めることも可能であるがこの際に行列の計算が必要となる。これに較べて(3)式、(4)式では1変量の情報から計算したZスコアを距離Dに変換する。そのため、処理の終点検出装置に組み込む際のアルゴリズムも簡易化することができる。
その結果、処理の終点検出を簡単に行うことができ、処理の終点に対する検出精度を向上させることができる。
【0029】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る処理の終点検出装置を例示するための模式図である。なお、図6は一例として、CMP法を実行可能な研磨装置に設けられた終点検出装置を例示するための模式図である。
図6に示すように、研磨装置1は、表面に研磨パッド6が設けられたターンテーブル5と、被処理物である半導体ウェーハWを例えば真空吸着して保持可能なスピンドル7と、モータ12と、モータ制御部13とを備える。
モータ12は、ターンテーブル5を回転駆動する。
モータ制御部13は、モータ12の起動、停止、回転数などを制御する。そして、モータ12、モータ制御部13によりターンテーブル5の動作制御ができるようになっている。
なお、スピンドル7側にも、図示しないモータやモータ制御部が設けられ、スピンドル7の動作制御ができるようになっている。
【0030】
半導体ウェーハWには、被研磨膜2とストッパ膜を有する基板3とが設けられている。 例えば、基板3に設けられたストッパ膜をシリコン窒化膜、被研磨膜2をBPSG(borophosphosilicate glass)膜とすることができる。ただし、被研磨膜2、基板3に設けられたストッパ膜は例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0031】
次に、研磨装置1の作用を例示する。
スピンドル7は半導体ウェーハWを保持し、図示しないモータ、モータ制御部により半導体ウェーハWを保持した状態で回転される。また、ターンテーブル5は、モータ12、モータ制御部13により回転される。
そして、スピンドル7は、半導体ウェーハWの被研磨膜2を研磨パッド6に接触させて、研磨終点である基板3に設けられたストッパ膜に到達するまで研磨を行う。研磨時においては、通常、スピンドル7とターンテーブル5とは同一方向に回転される。ただし、スピンドル7とターンテーブル5とを逆方向に回転させてもよい。研磨時においては、研磨パッド6上に、例えば、シリカ粒や化学反応性物質などを含んだ液状のスラリーが供給される。
【0032】
次に、終点検出装置9について例示する。
終点検出装置9は、検出部11とデータ処理部10とを備える。終点検出装置9は、前述した処理の終点検出方法を実行することができる。
検出部11は、半導体ウェーハWの研磨処理に伴って時間とともに変化する検出情報を検出する。本実施の形態においては、検出部11は例えば電流計であり、ターンテーブル5を回転駆動させるモータ12の駆動電流を検出する。すなわち、本実施の形態においては、モータ12の駆動電流が検出情報となる。検出部11によって検出された駆動電流のデータはデータ処理部10に送られる。
データ処理部10は、後述するようなデータ処理を行って研磨終点(処理の終点)を検出する。
すなわち、データ処理部10は、検出情報を所定の期間収集して単位空間を定義し、単位空間を構成する検出情報について平均値と、標準偏差と、を求める。そして、前述した(3)式に基づいて終点検出の判定対象となる検出情報を基準化し、前述した(4)式に基づいて距離Dを求め、距離Dに基づいて処理の終点を検出する。
【0033】
次に、終点検出装置9の作用、すなわち、研磨終点の検出について例示する。この場合、基板3に設けられたストッパ膜が研磨パッド6に接するまで被研磨膜2の除去が行われると、被研磨膜2の研磨が終了する研磨終点となるものとする。
【0034】
ここで、CMP法を用いた研磨の場合には、機械的な回転運動を伴う研磨が行われるため、研磨条件によっては回転周期に同期した周期的なノイズが発生する場合がある。そのため、図2において例示をした終点の検出方法では研磨終点に対する検出精度が低くなるおそれがある。
そこで、終点検出装置9は、図5において例示をした終点の検出方法を実行可能なものとされている。
【0035】
終点検出装置9は、検出された駆動電流のデータを所定の期間収集し、単位空間を定義する。この場合、研磨が定常状態となった後に検出された駆動電流のデータを所定の期間収集するようにすることができる。例えば、研磨開始から200秒経過後の駆動電流のデータを所定の期間の間収集し、単位空間を定義する。この場合、検出部11は駆動電流を検出し、データ処理部10は単位空間を定義する。
【0036】
そして、データ処理部10は単位空間を構成する駆動電流のデータについて平均値(Xm)と標準偏差(σm)とを演算する。
また、検出部11は研磨終点の判定対象となる駆動電流を検出する。すなわち、検出部11により、単位空間を構成する駆動電流のデータよりも後に検出された駆動電流のデータが取得される。
データ処理部10は検出された研磨終点の判定対象となる駆動電流のデータを基準化し、距離Dを演算する。なお、駆動電流のデータの基準化は、前述した(3)式により行うことができる。距離Dの演算は、前述した(4)式により行うことができる。
【0037】
次に、データ処理部10は予め定められた閾値Dcに基づいて研磨終点の検出を行う。 この場合、例えば、演算された距離Dが、閾値Dc以上である場合には研磨終点であると判定することができる。
また、例えば、演算された距離Dが、閾値Dc未満である場合には研磨終点でないと判定することができる。この場合、次に検出された駆動電流のデータを基準化し、距離Dを演算する。そして、閾値Dcに基づいて研磨終点の検出を行う。以降、研磨終点が検出されるまで同様の演算を繰り返す。
研磨終点であると判定された場合には、モータ制御部13に向けて研磨終点が検出された旨の信号が出力される。
この場合、研磨終点が検出された旨の信号により研磨を終了させることもできるし、所定の時間研磨を続行した後に研磨を終了させることもできる。なお、所定の時間研磨を続行する際に前述した距離Dを演算し、研磨終点を確認するようにすることもできる。
【0038】
以上は、モータ12の駆動電流を検出情報とした場合であるがこれに限定されるわけではない。半導体ウェーハWの研磨に伴って時間とともに変化するあらゆる検出情報の特徴量を研磨終点の判定に用いることができる。その様な検出情報としては、例えば、スピンドル7の駆動電流、ターンテーブル5やスピンドル7の回転に伴って生じる振動などを例示することができる。
また、図示しない照射装置から研磨中の半導体ウェーハWの研磨面に光を照射し、その反射光の光強度スペクトルなどを検出情報とすることもできる。
【0039】
本実施の形態に係る終点検出装置によれば、ノイズに埋もれて明瞭に判定できなかった駆動電流値の変化点(研磨終点)を容易かつ精度よく検出することができる。
また、CMP法を用いた研磨の場合には、機械的な回転運動を伴う研磨が行われるため、回転周期に同期した周期的なノイズが発生するおそれがある。しかしながら、周期的なノイズが発生したとしても、図5に例示をしたもののように周期的なノイズが発生している領域に基づいて単位空間を定義しているので、ノイズの影響を抑制することができる。
【0040】
そのため、研磨終点に対する検出精度を向上させることができる。
例えば、半導体ウェーハWに形成したトレンチにエピタキシャルシリコンを埋め込み、このエピタキシャルシリコンをポリッシュバックするような場合は、研磨終点の検出が非常に困難である。このような場合であっても、終点検出装置9によれば、研磨パッド6がエピタキシャルシリコン層とストッパ膜との界面に達したときのわずかな駆動電流値の変化を検出することができるので、精度の高い研磨終点の判定を行うことができる。
【0041】
また、研磨終点に対する検出精度を向上させることができるので、被処理物である半導体ウェーハWに損傷が発生することを抑制することができる。
また、時間的に遡及することなく、研磨装置1を作動させているときにリアルタイムで研磨終点の判定を行うことができる。そのため、半導体ウェーハW毎に適切な研磨終点の判定を行うことができる。
【0042】
また、研磨終点の判定のための各種データ処理(例えば、研磨時に検出される信号の最大値や最小値の演算、信号の時間微分値についての最大値や最小値の演算、信号のノイズ除去、平滑化のための平均値の演算、移動平均値の演算など)や、それらのデータを組み合わせて研磨終点の判定を行うアルゴリズムの試行錯誤的な作成が不要となる。
すなわち、前述した(3)式、(4)式により距離Dを演算し、それに基づいて研磨終点の判定を行うことができる。そのため、終点検出装置9に組み込むアルゴリズムが簡易化されるので、終点検出装置9の簡易化を図ることができる。
【0043】
以上は、CMP法を実行可能な研磨装置に終点検出装置を設けた場合であるがこれに限定されるわけではない。
本実施の形態に係る終点検出装置は、時系列データに基づいて処理の終点を検出するものに適用させることができる。一例としては、例えば、半導体装置などの電子デバイスの製造において行われるウェットエッチング処理、ドライエッチング処理、CMP法などを用いた平坦化処理、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いた成膜処理などに用いられる処理装置に本実施の形態に係る終点検出装置を設け、それぞれの処理における終点検出を行うようにすることができる。この場合、検出情報としては、例えば、プロセスガスの流量、処理圧力、処理温度、光の強度、電流、電圧、音、水素イオン指数、生成物の量などを例示することができる。
【0044】
以上に例示をした実施形態によれば、処理の終点に対する検出精度を向上させることができる処理の終点検出方法および処理の終点検出装置を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びそれと等価とみなされるものの範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 研磨装置、2 被研磨膜、3 ストッパ膜を有する基板、5 ターンテーブル、6 研磨パッド、7 スピンドル、9 終点検出装置、10 データ処理部、11 検出部、12 モータ、13 モータ制御部、W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の処理に伴って時間とともに変化する検出情報を所定の期間収集して単位空間を定義し、
前記単位空間を構成する検出情報について平均値と、標準偏差と、を求め、
以下の(5)式に基づいて終点検出の判定対象となる検出情報を基準化し、
以下の(6)式に基づいて距離を求め、
前記距離に基づいて処理の終点を検出することを特徴とする処理の終点検出方法。
Xt=(X−Xm)/σm ・・・(5)
=Xt ・・・(6)
ここで、Xmは前記単位空間における平均値、σmは前記単位空間における標準偏差、Xは前記終点検出の判定対象となる任意の時間における検出情報、Xtは基準化された検出情報、Dは距離である。
【請求項2】
前記終点検出の判定対象となる検出情報を移動平均処理し、
前記平均値と、前記標準偏差と、に基づいて前記移動平均処理された終点検出の判定対象となる検出情報を基準化して距離を求めることを特徴とする請求項1記載の処理の終点検出方法。
【請求項3】
前記求められた距離を移動平均処理することを特徴とする請求項1記載の処理の終点検出方法。
【請求項4】
前記処理が定常状態となった後に前記検出情報を所定の期間収集することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の処理の終点検出方法。
【請求項5】
前記検出情報には周期的なノイズが含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の処理の終点検出方法。
【請求項6】
被処理物の処理に伴って時間とともに変化する検出情報を検出する検出部と、
前記検出情報を所定の期間収集して単位空間を定義し、前記単位空間を構成する検出情報について平均値と、標準偏差と、を求め、以下の(7)式に基づいて終点検出の判定対象となる検出情報を基準化し、以下の(8)式に基づいて距離を求め、前記距離に基づいて処理の終点を検出するデータ処理部と、
を備えたことを特徴とする処理の終点検出装置。
Xt=(X−Xm)/σm ・・・(7)
=Xt ・・・(8)
ここで、Xmは前記単位空間における平均値、σmは前記単位空間における標準偏差、Xは前記終点検出の判定対象となる任意の時間における検出情報、Xtは基準化された検出情報、Dは距離である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124419(P2012−124419A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275831(P2010−275831)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】