説明

処理装置、処理方法及び記憶媒体

【課題】処理容器内において被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行うにあたって、処理容器の搬入出口を気密に塞ぐ蓋体と当該処理容器との間に設けられるシール部材の劣化及び当該シール部材を介した被処理基板の汚染を抑えること。
【解決手段】処理容器1内にウエハWを搬入出する搬入出口2を囲むように、処理容器1と蓋体3との間に第1のシール部材11及び第2のシール部材12を搬入出口2側から処理容器1の外側に向かってこの順番で配置して、第1のシール部材11については高圧流体に対して耐食性を有する材質により構成する。そして、第1のシール部材11に加わる差圧を緩和するために、差圧緩和領域13に窒素ガスを供給して、当該差圧緩和領域13における圧力が処理容器内1の圧力よりも低く且つ処理容器1の外部よりも高い圧力に設定すると共に、第2のシール部材12により窒素ガスが外部に流出することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内において被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行う処理装置、処理方法及びこの処理方法の記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの被処理基板(以下「ウエハ」と言う)に対してデバイスを形成する一連の処理のうちの一つとして、例えば超臨界流体などの高圧流体を用いてウエハの乾燥処理を行う工程が知られている。この乾燥処理を行うための処理装置は、例えばウエハを内部に収納して処理を行う処理容器と、この処理容器にウエハを搬入出するための搬入出口を気密に塞ぐ蓋体(カバー)とを備えた構成が採られる。しかしながら、このような高圧流体を用いてウエハに対して処理を行おうとすると、蓋体と処理容器との間に設けられるシール部材が劣化しやすくなったり、あるいは当該シール部材を介してウエハが汚染してしまったりするおそれがある。
【0003】
特許文献1には、バルブV4、V9の開閉によりエアシールリング13a・13bの内部への空気の供給及び排出を行うレジスト除去装置1について記載されているが、既述の課題については記載されていない。また、特許文献2及び特許文献3には、転炉、電気炉などの摺動部や可動部及び真空フランジを夫々シールする技術について記載されているが、超臨界流体を用いる装置については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−152891(図1等)
【特許文献2】特開2000−249476
【特許文献3】実開平1−146063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理容器内において被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行うにあたって、処理容器の搬入出口を気密に塞ぐ蓋体と当該処理容器との間に設けられるシール部材の劣化及び当該シール部材を介した被処理基板の汚染を抑えることのできる処理装置、処理方法及びこの方法が記憶された記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の処理装置は、
処理容器内に搬入出領域を介して搬入された被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行う処理装置において、
前記搬入出領域を気密に塞ぐための蓋体と、
前記蓋体が前記処理容器内の圧力により当該処理容器側から後退することを規制するための規制機構と、
前記蓋体と前記処理容器との間に前記搬入出領域を囲んだ状態で介在するように設けられ、高圧流体に対して耐食性を有する材質により構成された第1のシール部材と、
前記第1のシール部材に対して処理雰囲気から外側に離れた位置において、前記搬入出領域を区画形成する搬入出口を囲んだ状態で前記蓋体と前記処理容器との間に介在するように設けられた第2のシール部材と、
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域に補助流体を供給する流体供給機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の処理方法は、
被処理基板を処理容器内に、搬入出領域を区画形成する搬入出口から搬入して、蓋体を前記処理容器側に押圧する工程と、
次いで、前記蓋体が前記処理容器内の圧力により当該処理容器側から後退することを規制する工程と、
前記蓋体と前記処理容器との間に、高圧流体に対して耐食性を有する材質により構成された第1のシール部材を、前記搬入出領域を囲んだ状態で介在させると共に、前記第1のシール部材から外側に離れた位置において、第2のシール部材を前記搬入出口を囲んだ状態で前記蓋体と前記処理容器との間に介在させることにより、前記処理容器内と外部とを気密にシールする工程と、
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域に補助流体を供給する工程と、
その後、被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の記憶媒体は、
処理容器内に搬入出領域を介して搬入された被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行う処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、前記処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、処理容器内に被処理基板を搬入出する搬入出領域を囲むように、処理容器と蓋体との間に第1のシール部材及び第2のシール部材を搬入出領域側から処理容器の外側に向かってこの順番で配置して、第1のシール部材については高圧流体に対して耐食性を有する材質により構成している。そして、第1のシール部材と第2のシール部材との間の領域に補助流体を供給している。このように、高圧流体をシールする役割については第1のシール部材に受け持たせ、処理容器の外部に対して処理容器内の圧力をシールする役割についてはこれら第1のシール部材及び第2のシール部材で分担している。そのため、第1のシール部材については高圧流体に対して耐食性を持ち、第2のシール部材については高圧流体に接触しないので、これらシール部材の劣化及び第1のシール部材による被処理基板の汚染を抑えることができる。また、第1のシール部材と第2のシール部材との間の領域の圧力について、処理容器内の圧力よりも低く且つ処理容器の外部よりも高い圧力に設定することにより、第1のシール部材を設けない場合と比べて、第2のシール部材に加わる差圧を抑えることができるので、蓋体と処理容器との間に当該第2のシール部材がはみ出すことによる損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る処理装置を示す斜視図である。
【図2】前記処理装置を示す分解斜視図である。
【図3】前記処理装置を示す横断平面図である。
【図4】前記処理装置における蓋体を示す斜視図である。
【図5】前記処理装置を示す縦断面図である。
【図6】前記処理装置から蓋体を外した状態を示す縦断面図である。
【図7】前記蓋体の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図8】前記処理装置のシール部材を拡大して示す縦断面図である。
【図9】前記処理装置における第2のシール部材の一部を示す模式図である。
【図10】前記処理装置において第2のシール部材が変形する様子を示す模式図である。
【図11】第2のシール部材の硬度に関する特性を示す特性図である。
【図12】前記処理装置の作用を示す横断平面図である。
【図13】前記処理装置の作用を示す横断平面図である。
【図14】処理容器の内部及び第1のシール部材と第2のシール部材との間の領域の昇圧速度を示す特性図である。
【図15】前記処理装置の他の例における前記昇圧速度を示す特性図である。
【図16】前記処理装置の他の例における前記昇圧速度を示す特性図である。
【図17】前記処理装置の他の例を示す横断平面図である。
【図18】前記処理装置の他の例におけるシール部材を示す縦断面図である。
【図19】前記処理装置の他の例におけるシール部材を示す縦断面図である。
【図20】前記処理装置の他の例におけるシール部材を示す縦断面図である。
【図21】前記処理装置の他の例におけるシール部材を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の処理装置の実施の形態の一例について、図1〜図7を参照して説明する。この処理装置は、高圧流体である超臨界流体を用いてウエハWの乾燥処理を行うための処理容器1と、この処理容器1の側面側に形成されたウエハWの搬入出口(搬入出領域)2を気密に開閉する概略角型の蓋体(カバー)3と、を備えている。蓋体3の側面における処理容器1側には、ウエハWを下方側から支持して処理容器1に対して搬入出するための板状の部材であるウエハホルダー4が設けられており、前記側面におけるウエハホルダー4の周囲には、図4に示すように、第1のシール部材11と第2のシール部材12とからなる二重シール機構10が配置されている。そして、本発明では、後述するように、この二重シール機構10を設けることによって、蓋体3が搬入出口2を塞いだ時に、処理容器1内からの超臨界流体の流出を防止しながら、当該二重シール機構10の劣化及びウエハWの汚染を抑制している。以下に、この二重シール機構10について詳述する前に、処理装置の全体構成について説明する。尚、図2では蓋体3及びウエハホルダー4の描画を省略しており、処理容器1の一部を切り欠いている。
【0012】
処理容器1は、概略箱型の耐圧容器であり、内部にはウエハWを水平に収納して前記処理を行うための処理領域8が形成されている。処理容器1に対するウエハWの搬入出方向(X方向)における処理容器1側及び蓋体3側を夫々奥側及び手前側と呼ぶと、既述の搬入出口2は、この処理領域8と連通するように、処理容器1の手前側の側面において、処理容器1の幅方向(前記搬入出方向と直交する方向)に伸びるように形成されている。処理装置には、処理領域8の圧力を検知するための圧力検知部9が設けられている。処理領域8は、当該処理領域8に供給された超臨界流体がウエハWに速やかに接触するように、高さ寸法が例えば数mm〜10数mm、容積が例えば300〜1500cm(直径寸法が300mmサイズのウエハWの場合)程度となっている。
【0013】
処理領域8における奥側には、図3及び図5に示すように、例えばIPA(イソプロピルアルコール)からなる超臨界流体を当該処理領域8に供給するための高圧流体供給口21が処理領域8の天井面に形成されている。この高圧流体供給口21から伸びる高圧流体供給路22には、バルブV及び流量調整部Mを介して前記IPAの貯留された高圧流体貯留源23が接続されている。処理領域8の床面には、図5に示すように、前記高圧流体供給口21に対向するように、高圧流体排出口21aが形成されており、この高圧流体排出口21aから伸びる高圧流体排出路22aには、バルブVを介してIPA回収部29が接続されている。また、処理容器1の幅方向(Y方向)を左右方向と呼ぶと、処理容器1の手前側の側面における搬入出口2よりも左側及び右側には、後述する差圧緩和領域13に対して、例えば常温の窒素(N)ガスなどを補助流体である差圧緩和用流体として供給するための流体供給口31と、当該差圧緩和領域13から前記流体を排出するための流体排出口32とが夫々形成されている。
【0014】
処理容器1の内部における処理領域8よりも左側及び右側には、図3に示すように、流体供給路33及び流体排出路34が夫々形成されており、流体供給路33は、一端側が既述の流体供給口31として開口すると共に、他端側が処理容器1から外部に伸び出して、2つのバルブV、V及び流量調整部Mを介して流体供給機構をなす窒素供給源35に接続されている。この流体供給路33における2つのバルブV、V間には、当該流体供給路33における窒素ガスの圧力を低下させるためのオリフィスなどからなる圧力調整部36が設けられている。流体排出路34は、一端側が流体排出口32として開口すると共に、他端側がバルブV及び流体排出機構をなす背圧弁V1を介して図示しない排気部に接続されている。また、この流体排出路34における前記バルブVよりも流体排出口32側には、真空ポンプ37から伸びる排気路38の一端側が圧力調整機構をなすバタフライバルブV2を介して接続されている。そして、差圧緩和領域13における窒素ガスの圧力は、後述する制御部60により、処理開始時、処理中及び処理終了時に亘って、処理領域8内の圧力よりも低く且つ処理装置の外部の圧力(大気雰囲気)よりも高い圧力に維持される。
【0015】
処理容器1の手前側の側面における前記蓋体3が当接される領域よりも上端側及び下端側は、各々手前側に向かって水平方向に伸び出して突片部24、24をなしている。これら突片部24、24において、処理容器1に蓋体3が気密に接触した時における当該蓋体3よりも手前側の領域には、突片部24、24を上下方向に貫通する概略矩形の開口部25、25が各々形成されている。これら開口部25、25の下方側には、図5及び図6に示すように、蓋体3を手前側から支持して当該蓋体3の位置を規制するために、開口部25、25内に貫挿されるロックプレート26が規制機構として設けられており、このロックプレート26は、処理容器1の下方側に設けられた駆動部27により昇降自在に構成されている。これら開口部25、25は、ロックプレート26を挿脱するために、上方側から見た時に当該ロックプレート26よりも一回り大きな開口寸法となるように形成されている。従って、開口部25、25にロックプレート26を挿入した時には、ロックプレート26と当該開口部25との間には、例えば0,5mm程度の隙間領域28が形成される。図5は、処理容器1に蓋体3を気密に当接させると共にロックプレート26により当該蓋体3の位置を規制した状態を示しており、図6は、ロックプレート26を下方側に退避させて処理容器1から蓋体3を取り外した状態を示している。尚、既述の図2では、ロックプレート26の一部を切り欠いている。
【0016】
処理容器1の上方側及び下方側には、処理容器1を断熱することにより後述の受け渡し位置におけるウエハWの乾燥を抑えるために、平面で見た時の形状が当該処理容器1と概略同形状の上プレート41及び下プレート42が夫々設けられている。これら上プレート41及び下プレート42には、冷媒の通流される冷媒路43が各々設けられている。尚、下プレート42の冷媒路43については、図2では省略している。また、図2中、44は処理領域8を例えば100〜300℃この例では270℃に加熱するためのヒーターであり、処理容器1の上下両面に設けられている。
【0017】
上プレート41の手前側における左右両側には、処理容器1に蓋体3が気密に接触した時に、蓋体3(詳しくは後述のアーム部材50)を固定するためのロック部材45、45が各々設けられており、これらロック部材45、45は、図2に示すアーム部材50の係止位置と、図1に示す開放位置と、の間でロックシリンダー46により開閉(回転)自在に構成されている。下プレート42の上面の左右両側には、ウエハホルダー4を処理容器1に対して進退させるためのレール47、47が配置されており、各々のレール47、47には、アーム部材50を支持してレール47、47に沿って進退自在に構成されたスライダー48、48が設けられている。図2中、49はスライダー48を移動させるためのロッドレスシリンダーなどの駆動部である。これら上プレート41及び下プレート42における手前側の領域は、既述のロックプレート26の昇降動作に干渉しないように切り欠かれている。
【0018】
続いて、二重シール機構10について詳述する。第1のシール部材11は、蓋体3が処理容器1を気密に塞いだ時に、処理容器1の内部から超臨界流体が流出することを防止するためのものであり、搬入出口2を周方向に亘って囲むように蓋体3の奥側の側面に形成されたリング状の溝部11a内に収納されている。この第1のシール部材11は、ウエハWの搬入出方向に対して付勢力を持つように、また超臨界流体に対して耐食性を持つように、例えばフッ素樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)などの弾性体を用いたばね構造体として構成されている。即ち、この第1のシール部材11は、図7に示すように、前記弾性体を帯状に形成すると共に搬入出口2を囲むようにリング状に連結し、当該弾性体における内周側の中央部を周方向に亘って外側に突出させることにより、例えば側方側から見た時の断面形状が概略U字型となるように形成されている。そして、前記第1のシール部材11の内周側には、当該第1のシール部材11よりも一回り小さいステンレスなどからなるばね構造体からなる補強材11bが収納されている。従って、この第1のシール部材11は、当該第1のシール部材11の内周側における手前側の端部及び奥側の端部同士が互いに近接する方向に付勢力が生じる。また、第1のシール部材11における前記手前側の端部及び前記奥側の端部は、処理容器1の側壁及び溝部11a内に対して夫々周方向に亘って気密に接触するように形成されている。
【0019】
第2のシール部材12は、第1のシール部材11を周方向に亘って囲むように設けられた例えばゴムなどの弾性体からなるO−リングであり、蓋体3の奥側の側面に形成された溝部12a内に収納されている。この第2のシール部材12は、蓋体3が搬入出口2を気密に塞いだ時に、蓋体3の奥側の側面、処理容器1の手前側の側面、第1のシール部材11及び当該第2のシール部材12により囲まれる領域である差圧緩和領域13と、処理装置の外部の大気雰囲気と、の間を気密に区画するためのものである。この処理装置には、図3に示すように、当該差圧緩和領域13内の圧力を検出するための圧力検知部14が設けられている。既述のように、処理容器1の手前側の側面には、この差圧緩和領域13に連通するように、流体供給口31及び流体排出口32が各々開口しており、第2のシール部材12により、当該差圧緩和領域13内の窒素ガスの外部への流出が防止される。
【0020】
即ち、この差圧緩和領域13は、第1のシール部材11に加わる差圧を緩和するためのものであり、また処理容器1内の超臨界流体が第2のシール部材12に接触しないようにするためのものである。具体的には、差圧緩和領域13及び第2のシール部材12を設けない場合には、つまり一つのシール部材11(12)だけで処理容器1と蓋体3との間をシールする場合には、当該シール部材11(12)には、処理容器1内の高圧の雰囲気と大気雰囲気との間の大きな差圧が加わると共に、処理容器1と蓋体3との間の僅かな隙間を介して超臨界流体が接触することになる。従って、一つのシール部材11(12)だけで処理容器1と蓋体3との間をシールしようとすると、このシール部材11(12)は、背景技術の欄で説明したように、超臨界流体に対して当該シール部材11(12)の膨潤及び抽出が抑えられるように耐食性を持ち、且つ前記隙間にはみ出さない程度に硬質となっている必要がある。しかし、これら特性を持つシール部材11(12)は、このような処理装置に用いることのできる程度の現実的な押圧力(駆動力)では、処理容器1に対して蓋体3を気密に接触させることができないか、あるいは数十回程度の使用(蓋体3の開閉動作)にしか耐えない短い寿命となってしまう。
【0021】
そこで、本発明では、第1のシール部材11と第2のシール部材12とからなる二重シール機構10を設けることにより、超臨界流体に対する耐食性を第1のシール部材11に受け持たせると共に、処理容器1内の雰囲気と大気雰囲気との間のシールについてはこれら第1のシール部材11及び第2のシール部材12で分担している。具体的には、第1のシール部材11については超臨界流体に対して耐食性を持つ材質により構成すると共に、図8に示すように、差圧緩和領域13に窒素ガスを供給することにより、当該差圧緩和領域13における圧力が処理領域8の圧力よりも低く且つ大気雰囲気よりも高い圧力となるようにしている。従って、処理領域8の圧力、差圧緩和領域13の圧力及び処理容器1の外部(大気圧)の圧力を夫々P1、P2及びP3とすると、P1>P2>P3となる。そのため、第1のシール部材11は、超臨界流体に接触しても膨潤及び抽出がほとんど起こらず、また処理領域8と差圧緩和領域13との間をシールするだけで済むので、既述のクリープ変形などといった塑性変形が起こり難い。
【0022】
一方、第2のシール部材12については、前記膨潤や抽出の起こりやすい超臨界状態のIPAに接触しないので、第1のシール部材11よりも材質の選択の自由度が高くなり、従って例えば既述のようにゴムなどの材質により構成しても、ほとんど劣化しない。また、処理領域8と大気雰囲気との間の差圧のうち、一部(処理領域8と差圧緩和領域13との間の差圧)については、既述のように第1のシール部材11が受け持っているので、第2のシール部材12が受け持つ差圧は、差圧緩和領域13と大気雰囲気との間の差圧だけで済む。従って、第2のシール部材12は、当該第2のシール部材12だけで処理領域8と大気雰囲気との間をシールする場合と比べて、処理容器1と蓋体3との間の隙間にはみ出しにくくなるので、このような処理装置において現実的に用いられる駆動力(押圧力)でシールできる程度の軟質な材質で済む。
【0023】
ここで、差圧緩和領域13における窒素ガスの圧力及び第2のシール部材12の硬度を選定する手順の一例について説明する。始めに、処理容器1に対して蓋体3を押圧する駆動力(スライダー48を駆動する駆動部49の押圧力及び真空ポンプ37の吸引によって生じる吸引力)で押し潰せる(処理容器1と蓋体3との間をシールできる)硬さのO−リングを第2のシール部材12として選定する。この例では、前記駆動力が500kg程度であるため、前記O−リングの硬さ(硬さショア)は、例えば83程度となる。そして、この硬度83において処理容器1と蓋体3との間から第2のシール部材12がはみ出さない程度の差圧を検討する。
【0024】
具体的には、例えば図9に示すように、処理容器1と蓋体3との間の隙間寸法tを例えば既述のように0.5mmに設定すると共に、第2のシール部材12がシールする面に対してある値の圧力を加えた時に、図10に示すはみだし現象が起こらない差圧を確認する。このような差圧、隙間寸法t及びO−リングの硬さショアの相関関係は、例えば図11に示す関係となっており、各々のO−リングの硬さショアを示す曲線よりも右上部分でははみ出し現象が起こり、左下部分でははみ出し現象が起こらない。従って、隙間寸法tが0.5mmの場合には、硬さショアが83のO−リングを第2のシール部材12として用いると共に、差圧緩和領域13と大気雰囲気との間の差圧を8MPa程度に設定することにより、既述の駆動力でも処理容器1と蓋体3との間をシールすることができ、またはみ出し現象を防止できることが分かる。尚、図9及び図10は、処理容器1の一部を模式的に示した概略図である。
【0025】
一方、隙間寸法tが0.5mmの場合、できるだけ硬さショアの小さいO−リングを第2のシール部材12として用いようとすると、即ち前記駆動力をできるだけ小さくしようとすると、当該O−リングの硬さショアは、75程度となり、この時の差圧は4.12MPa程度となる。従って、隙間寸法tが0.5mmの場合には、第2のシール部材12として用いるO−リングは、硬さショアが75〜83、差圧が4.12〜8MPaとなる。こうして隙間寸法t及び処理容器1に蓋体3を押しつける駆動力により、はみ出し現象が起こらずに処理容器1と蓋体3とを気密にシールできる第2のシール部材12の硬度及び差圧緩和領域13の圧力が求められる。尚、図11では、フッ素樹脂製のバックアップリングをO−リングと共に用いた場合の特性についても参考として載せている。
【0026】
続いて、装置全体の説明に戻る。蓋体3における左右両端部は、各々下方側に屈曲すると共に処理容器1側(奥側)に水平に伸び出して、アーム部材50を各々なしている。これらアーム部材50、50は、既述のスライダー48、48により下方側から支持されており、ウエハホルダー4及び蓋体3と共にレール47、47に沿って進退できるように構成されている。従って、ウエハホルダー4は、処理容器1の内部にウエハWと共に収納されて蓋体3により気密に閉じられる処理位置と、当該処理容器1の外部(手前側)において図示しない搬送アームによって当該ウエハホルダー4に対してウエハWの受け渡しが行われる受け渡し位置との間で進退する。各々のアーム部材50、50の手前側の部位は、既述のロック部材45、45により係止される被係止部をなしている。
【0027】
また、前記受け渡し位置におけるウエハホルダー4の上方側には、ウエハホルダー4に保持されたウエハWに対してIPAを供給するためのIPAノズル51が設けられている。このIPAノズル51に対向するように、前記受け渡し位置におけるウエハホルダー4の下方側には、当該ウエハホルダー4を冷却するために、例えば冷却用の清浄空気を上方に向かって突出する概略円板状のクーリングプレートを備えた冷却機構52が設けられている。この冷却機構52の外側には、ウエハWの表面から流れ落ちたIPAを受け止めて排出するために、ドレイン受け皿53が設けられている。
【0028】
この処理装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部60が設けられている。この制御部60のメモリ内には、圧力検知部9、14における圧力の検知結果に基づいて、各バルブV、V1、V2及び流量調整部Mなどを介して処理容器1内及び差圧緩和領域13における圧力を調整しながら、後述の処理を行うための処理ステップが組み込まれたプログラムが格納されている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部61から制御部60内にインストールされる。
【0029】
次に、上述の実施の形態の作用について説明する。先ず、既述のウエハホルダー4を受け渡し位置に位置させて、例えばウエハWの上面側周縁部を複数箇所において吸引保持した図示しない搬送アームにより、当該ウエハホルダー4にウエハWを載置する。このウエハWには、凹部と凸部とからなるパターンが表面に形成されている。また、このウエハWは、図示しない枚葉式の洗浄装置において、例えばアルカリ性薬液であるSC1液(アンモニア及び過酸化水素水の混合液)によってパーティクルや有機性の汚染物質が除去された後、リンス液である脱イオン水(Delonized Water:DIW)によるリンス洗浄、酸性薬液である希フッ酸水溶液(Diluted HydroFluoric acid:DHF)による自然酸化膜の除去及びDIWによるリンス洗浄がこの順序で行われて、最後に当該ウエハWの表面(前記凹部の内部及び凸部の上面)にIPAが液盛りされた状態となっている。尚、前記搬送アームにおけるウエハWの表面側の吸引保持は、図示を省略するが、ウエハWの搬入時と搬出時とにおいて互いに異なるピックにより行われる。
【0030】
次いで、前記搬送アームをウエハホルダー4の上方側から退避させた後、IPAノズル51からウエハWの表面にIPAを供給して、IPA膜の液盛りを行う。そして、アーム部材50をレール47上において奥側にスライドさせることにより、内部雰囲気が270℃となるように設定された処理容器1内に、ウエハWをウエハホルダー4と共に挿入して、第1のシール部材11及び第2のシール部材12を介して処理容器1と蓋体3とを気密に接触させる。続いて、ロック部材45を回転させてアーム部材50の手前側の部位を係止すると共に、ロックプレート26を上昇させて、蓋体3の位置を手前側から規制する。また、真空ポンプ37を介して差圧緩和領域13の雰囲気を吸引すると、図12に示すように、蓋体3が当該真空ポンプ37の吸引力により処理容器1側に引き寄せられるので、処理容器1内の雰囲気、差圧緩和領域13及び処理容器1の外部の雰囲気は、第1のシール部材11及び第2のシール部材12により、互いに気密に区画される。従って、これら第1のシール部材11及び第2のシール部材12は、処理容器1と蓋体3との間において押しつぶされた状態となる。
【0031】
続いて、以下のようにして処理容器1の内部及び差圧緩和領域13に対して夫々IPA及び窒素ガスを供給する。即ち、差圧緩和領域13に供給した窒素ガスが処理領域8側に回り込まないように、窒素ガスよりもIPAの供給を先に開始すると共に、処理開始時から処理中及び処理終了時に亘って、処理領域8の圧力が差圧緩和領域13の圧力よりも高くなるように窒素ガス及びIPAの流量を調整する。
【0032】
具体的には、図14に示すように、処理領域8に対して例えば0.5MPa/sec程度の昇圧速度でIPAの供給を開始すると共に、このIPAの供給を開始した後例えば1秒後から差圧緩和領域13に対する窒素ガスの供給を例えば0.3MPa/secで開始する。このように昇圧速度を調整するにあたり、IPAについては、高圧流体供給路22における流量調整部Mの開度が調整される。また、窒素ガスについては、始めに例えば排気路38のバタフライバルブV2を閉じると共に、流体供給路33及び流体排出路34における各バルブV、背圧弁V1及び流量調整部Mを全開状態にして、差圧緩和領域13に窒素ガスを通流させる。そして、流量調整部Mの開度を調整すると共に背圧弁V1を徐々に閉じていくことにより、差圧緩和領域13の圧力が昇圧される。従って、差圧緩和領域13では、窒素ガスの供給と排出とが継続的に行われることになり、当該差圧緩和領域13の温度が例えば室温(窒素ガスの温度)程度に保たれる。処理領域8へのIPAの供給は、ウエハW上のIPA膜が自然乾燥する前に行われる。
【0033】
この時、処理容器1内及び差圧緩和領域13の圧力が処理容器1の外部(大気雰囲気)よりも高くなることにより、蓋体3及びロックプレート26は、図13に示すように、開口部25とロックプレート26との間の隙間領域28の分(詳しくは0.5mm)だけ処理容器1側から手前側に向かって後退する。従って、処理容器1と蓋体3とは、前記隙間領域28の寸法に対応する長さだけ離間することになる。一方、第1のシール部材11及び第2のシール部材12は、各々処理容器1及び蓋体3に気密に接触した状態を保っている。尚、図12及び図13については、第1のシール部材11及び第2のシール部材12の位置や形状を判別しやすいように、図3よりも大きく描画している。
【0034】
こうして処理領域8及び差圧緩和領域13における圧力が6MPa及び4MPaに夫々到達した後は、処理領域8及び差圧緩和領域13における昇圧速度を夫々例えば0.2MPa/sec及び0.1MPa/secに減少させて、処理領域8及び差圧緩和領域13における圧力を夫々10MPa及び8MPaに維持する。この時、処理容器1と蓋体3との間の領域が既述のように離間しており、また第2のシール部材12の硬さショアが75〜83程度もの小さい(軟質の)値となっているが、差圧緩和領域13と大気圧との差圧が4〜8MPa程度と比較的小さく抑えられているので、第2のシール部材12は、前記領域にはみ出さない。
【0035】
一方、処理領域8では、当該処理領域8に供給されたIPAとウエハW上のIPA膜とが互いに混合し合い、そして既述のように処理領域8が昇圧されるので、IPAが超臨界状態となる。この時、液体の状態のIPAと超臨界状態のIPAとの間には平衡状態において界面が形成されないので、ウエハWの表面のパターン倒れを起こすことなくIPAが超臨界状態となる。
【0036】
そして、処理領域8における超臨界状態のIPAは、処理容器1と蓋体3との間の隙間を介して第1のシール部材11に接触する。しかし、既述のように第1のシール部材11がフッ素樹脂により構成されているため、当該第1のシール部材11の内部へのIPAの浸透及びIPAによる第1のシール部材11の成分の抽出は、ほどんどあるいは全く起こらない。また、第1のシール部材11によって差圧緩和領域13への超臨界状態のIPAの流出が防止されているので、第2のシール部材12は、超臨界状態のIPAに接触しない。更に、処理領域8における超臨界状態のIPAが第1のシール部材11及び差圧緩和領域13を介して第2のシール部材12に伝熱しようとするが、差圧緩和領域13には常温の窒素ガスを通流させており、当該伝熱が抑えられるので、第2のシール部材12の熱劣化が防止される。
【0037】
続いて、ウエハWに対して処理を行う設定時間(処理時間)が経過する前に、差圧緩和領域13からの窒素ガスの排出を開始する。即ち、前記設定時間が経過する前に、背圧弁V1の開度を大きくしていくことにより、例えば0.03MPa/secで差圧緩和領域13の減圧を行う。そして、前記設定時間が経過した時に、処理領域8のIPAを例えば0.05MPa/secの減圧速度でIPA回収部29に排出する。こうして処理領域8の減圧勾配よりも差圧緩和領域13における減圧勾配を小さく設定した状態で処理領域8及び差圧緩和領域13からIPA及び窒素ガスを排出すると、これら処理領域8及び差圧緩和領域13が減圧状態となっていく。処理領域8のIPAについては、処理容器1がIPAの沸点よりも高い温度に設定されているので、超臨界状態から気体の状態に変化する。この時、超臨界状態のIPAと気体状のIPAとの間には界面が形成されないので、ウエハWは、パターンに表面張力が作用することなく乾燥される。
【0038】
また、処理領域8及び差圧緩和領域13が減圧状態となることにより、蓋体3及びロックプレート26は、処理容器1側に吸引されて、図12の状態に戻る。この時、処理容器1と蓋体3との間に第2のシール部材12がはみ出していないので、当該第2のシール部材12の噛み込みは起こらない。その後、図示しないパージガス源から処理領域8に例えば窒素ガスなどを供給して、当該処理領域8のIPAガスを排出した後、処理容器1内に搬入した順序と逆の順番でウエハWを処理容器1から搬出する。
【0039】
上述の実施の形態によれば、処理容器1内にウエハWを搬入出する搬入出口2を囲むように、処理容器1と蓋体3との間に第1のシール部材11及び第2のシール部材12を搬入出口2側から処理容器1の外側に向かってこの順番で配置して、第1のシール部材11については高圧流体に対して耐食性を有する材質により構成している。そして、第1のシール部材11に加わる差圧を緩和するために、差圧緩和領域13に窒素ガスを供給して、当該差圧緩和領域13における圧力が処理容器内1の圧力よりも低く且つ処理容器1の外部よりも高い圧力となるようにしている。このように、高圧流体をシールする役割については第1のシール部材11に受け持たせ、処理容器1の外部に対して処理容器1内の圧力をシールする役割についてはこれら第1のシール部材11及び第2のシール部材12で分担している。そのため、第1のシール部材11については高圧流体に対して耐食性を持ち、第2のシール部材12については高圧流体に接触しないので、これらシール部材11、12の劣化を抑えることができる。また、高圧流体に第1のシール部材11の成分や不純物が溶出することを抑えることができるので、この高圧流体を介したウエハWの汚染を抑制できる。更に、一つのシール部材11(12)だけで処理容器1と蓋体3との間をシールする場合と比べて、各々のシール部材11、12に加わる差圧を抑えることができる。そのため、第2のシール部材12については、前記差圧によって処理容器1と蓋体3との間に当該第2のシール部材12がはみ出すことによる損傷を防止でき、また第1のシール部材11については、既述のようにクリープ変形の起こりやすいばね構造体であっても当該変形を抑えることができる。また、第2のシール部材12について、一つのシール部材11(12)だけを用いた場合よりも軟質の材質を用いることができることから、例えばコーナー部(蓋体3を奥側から見た時の第2のシール部材12の四隅)における破断を抑えることができ、また蓋体3を処理容器1側に押しつける駆動力(例えば駆動部49の出力あるいは真空ポンプ37の排気能力)を小さく抑えることができる。
【0040】
また、処理領域8よりも差圧緩和領域13における減圧勾配(減圧速度)を緩やかにすることで、第2のシール部材12への急激な圧力変動が抑制されるので、第2のシール部材12の劣化を抑えることができる。そして、差圧緩和用流体としてゴムと反応性の低い窒素ガスを用いているので、第2のシール部材12への窒素ガスの浸透及び窒素ガスによる第2のシール部材12の成分の溶出を抑えることができる。
更に、各シール部材11、12は、処理容器1に対して蓋体3が気密に接触する時に摺動しないので、パーティクルの発生を抑えることができる。
そして、超臨界流体を用いることにより、ウエハWの表面に形成されたパターン倒れを抑制できる。
【0041】
既述の例では、一段階の減圧速度で差圧緩和領域13から窒素ガスを排出したが、例えば図15に示すように、複数段階例えば2段階の減圧速度で当該差圧緩和領域13を減圧しても良い。図15では、減圧開始時の減圧速度を例えば0.03MPa/secに設定すると共に、5MPaから大気圧までの減圧速度を例えば0.05MPa/secに切り替えている。この時、差圧緩和領域13における減圧勾配と共に、処理容器1内の減圧勾配についても同様に、減圧開始時よりも減圧終了時の方が減圧勾配が大きくなるように、複数段階例えば2段階で切り替えるようにしても良い。また、差圧緩和領域13については一段階で減圧し、処理容器1内については複数段階で減圧しても良い。更に、これら差圧緩和領域13及び処理容器1内の圧力を減圧する時に、夫々の減圧速度が徐々に大きくなるように例えば3段階以上に切り替えても良い。
【0042】
更に、差圧緩和領域13よりも処理領域8における圧力が高くなるようにIPA及び窒素ガスの流量(圧力)を調整したが、これら差圧緩和領域13及び処理領域8の圧力を同時に昇圧するようにしても良い。図16は、例えば大気圧から5MPaに至るまでは、処理領域8及び差圧緩和領域13の圧力を揃えた例を示している。更にまた、処理領域8、差圧緩和領域13及び大気雰囲気の順に圧力が低くなるように差圧緩和領域13の圧力を設定したが、処理の開始時から処理中及び処理の終了時に亘って、差圧緩和領域13の圧力を処理領域8と揃えても良い。この場合においても、超臨界流体が第2のシール部材12に接触しないので、第2のシール部材12の劣化が抑えられる。
【0043】
差圧緩和領域13に供給する窒素ガスとしては、既述のように当該差圧緩和領域13を通流するように構成したが、処理領域8と同様に、窒素ガスを排出せずに昇圧するようにしても良い。
また、既述のオリフィスからなる圧力調整部36に代えて、図17に示すように、窒素ガスを一時的に貯留するための容器(アキュームレータ)71を設けても良い。この容器71と、高圧流体供給路22における高圧流体供給口21側のバルブVとの間には、容器71から供給される窒素ガスの流量を調整するための流量調整部Mが設けられる。そして、図17の装置において既述の処理を行う時には、容器71よりも上流側(高圧流体貯留源23側)のバルブVを開放すると共に容器71よりも下流側(処理領域8側)のバルブVを閉じて、窒素供給源35から容器71内に窒素ガスを供給する。次いで、前記上流側のバルブVを閉じると共に前記下流側のバルブVを開放して、容器71から窒素ガスを差圧緩和領域13に供給する。こうして容器71以外の部位における手順については既述の例と同様に進行して、ウエハWに対する処理が行われる。
【0044】
また、第1のシール部材11及び第2のシール部材12について、夫々ばね構造体及びO−リングを用いたが、例えば図18に示すように、これら第1のシール部材11及び第2のシール部材12を各々O−リングとして配置しても良い。更に、図19に示すように、第1のシール部材11についてはO−リングを用いると共に、第2のシール部材12については既述のばね構造体を用いても良い。更にまた、図20に示すように、第1のシール部材11及び第2のシール部材12について、各々ばね構造体を用いても良い。これら図18〜図20のいずれの場合においても、第1のシール部材11は、高圧流体に耐食性を持つ材質例えばフッ素樹脂などにより構成される。また、ばね構造体については既述の補強材11bを設けずに、例えばフッ素樹脂によりばね構造体を構成しても良い。尚、これら図18〜図20ではばね構造体について簡略化して描画している。
【0045】
更に、第1のシール部材11については、処理容器1と蓋体3との間の壁面部に設けることに代えて、図21に示すように、ウエハホルダー4の外周部においてウエハWの搬入出領域を囲むように配置しても良い。この場合の第1のシール部材11は、ウエハホルダー4側に固定されて、当該ウエハホルダー4と共に処理容器1に対して進退することになる。
【0046】
以上の各例において、第1のシール部材11を構成する材質としては、超臨界流体に耐食性を持っていれば良く、具体的には例えばPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン三フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ナイロン、ステンレスやチタンあるいは特殊合金などであっても良いし、あるいはこれら超臨界流体に対して耐食性を有する材質により被覆したゴムなどであっても良い。また、第2のシール部材12としては、前記耐食性を持つ材質を用いても良い。
更に、処理容器1と蓋体3との間において、第2のシール部材12を囲むように、図示しない第3のシール部材を設けると共に、第2のシール部材12と第3のシール部材との間に差圧緩和用流体を供給し、処理容器1の内部領域側から差圧緩和領域13、第2のシール部材12と第3のシール部材との間の領域及び大気雰囲気の順番で圧力が低くなるようにしても良い。
【0047】
また、高圧流体としては、超臨界状態のIPAに代えて、超臨界状態の例えばHFE(Hydro Fluoro Ether)や二酸化炭素(CO)であっても良いし、あるいは亜臨界状態の流体を用いても良い。亜臨界状態とは、例えばIPAの場合には、温度及び圧力が夫々100〜300℃及び1MPa〜3MPaの範囲の状態の流体である。このように、本発明は、高圧流体を用いてウエハWに対して処理を行う場合に適用され、当該高圧流体の圧力は1MPa以上であるが、処理容器1内の圧力が高くなる程O−リングのはみ出し現象が起こりやすくなることから、例えば処理容器1内の圧力が8MPa以上の場合に特に大きな効果が得られる。
また、以上の各例では、ロックプレート26やロック部材45などの規制機構により処理容器1側からの蓋体3の後退を規制したが、この規制機構としては、これらロックプレート26及びロック部材45に代えて、スライダー48を進退させる駆動部49に例えば油圧式のシリンダーを組み合わせて設けておき、このシリンダーによりスライダー48を処理容器1側に押圧し続けるようにしても良い。
【0048】
更に、差圧緩和領域13に供給する差圧緩和用流体としては、既述の窒素ガスに代えて、例えばヘリウム(He)やアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスや、炭素及び水素を含む無極性ガス例えばメタン(CH)ガスを用いても良いし、あるいは炭素及び水素を含む無極性物質からなる液体を用いても良い。更にまた、差圧緩和用流体としては、第2のシール部材12にゴムを用いる場合には、既述のIPAや二酸化炭素などからなる高圧流体といったゴムに対して腐食性を持つ流体以外を用いる時には、超臨界状態あるいは亜臨界状態の流体を用いても良い。更にまた、このようなIPAや二酸化炭素であっても、超臨界状態や亜臨界状態以外の状態(気体または液体)であれば、差圧緩和用流体として用いても良い。
また、処理装置において行う処理としては、既述の乾燥処理以外にも、例えばウエハWの表面からのレジスト膜の除去(溶解)処理などであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
W ウエハ
1 処理容器
2 搬入出口
3 蓋体
4 ウエハホルダー
8 処理領域
11 第1のシール部材
12 第2のシール部材
13 差圧緩和領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に搬入出領域を介して搬入された被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行う処理装置において、
前記搬入出領域を気密に塞ぐための蓋体と、
前記蓋体が前記処理容器内の圧力により当該処理容器側から後退することを規制するための規制機構と、
前記蓋体と前記処理容器との間に前記搬入出領域を囲んだ状態で介在するように設けられ、高圧流体に対して耐食性を有する材質により構成された第1のシール部材と、
前記第1のシール部材に対して処理雰囲気から外側に離れた位置において、前記搬入出領域を区画形成する搬入出口を囲んだ状態で前記蓋体と前記処理容器との間に介在するように設けられた第2のシール部材と、
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域に補助流体を供給する流体供給機構と、を備えたことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記第2のシール部材は、硬度75〜83の弾性体からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記第1のシール部材は、少なくとも表面がフッ素樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記第1のシール部材は、ばね構造体として構成され、このばね構造体に金属材からなる補強材が組み合わされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項5】
前記処理容器内の圧力をP1、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域の圧力をP2とすると、前記処理容器内の昇圧時には圧力P1がその設定した圧力に昇圧するまでP1≧P2となるように制御信号を出力し、また前記処理容器内の降圧時には圧力P1がその設定した圧力に降圧するまでP1≧P2となるように制御信号を出力する制御部を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記処理容器内の降圧時には、圧力P1の減圧勾配よりも圧力P2の減圧勾配の方が小さくなるように制御信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記処理容器内の降圧時には、圧力P1及び圧力P2の少なくとも一方について、減圧勾配を複数段階に切り替えて降圧するように制御信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間に供給された補助流体を排出するための流体排出機構を備え、
前記制御部は、被処理基板に対して処理を行う時は、前記流体供給機構及び前記流体排出機構を介して、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域への補助流体の供給と排出とを継続し、
この補助流体は、前記第2のシール部材を冷却するために、前記処理容器内における高圧流体よりも低い温度に設定されていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項9】
補助流体は、前記第2のシール部材の劣化を抑えるために、不活性ガス、及び炭素と水素とを含む無極性ガスの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項10】
前記流体供給機構は、前記処理容器内の圧力よりも低く且つ前記処理容器の外部よりも高い圧力で補助流体を供給することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項11】
被処理基板を処理容器内に、搬入出領域を区画形成する搬入出口から搬入して、蓋体を前記処理容器側に押圧する工程と、
次いで、前記蓋体が前記処理容器内の圧力により当該処理容器側から後退することを規制する工程と、
前記蓋体と前記処理容器との間に、高圧流体に対して耐食性を有する材質により構成された第1のシール部材を、前記搬入出領域を囲んだ状態で介在させると共に、前記第1のシール部材から外側に離れた位置において、第2のシール部材を前記搬入出口を囲んだ状態で前記蓋体と前記処理容器との間に介在させることにより、前記処理容器内と外部とを気密にシールする工程と、
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域に補助流体を供給する工程と、
その後、被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行う工程と、を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項12】
前記処理容器内から高圧流体を排出する工程と、
前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域から補助流体を排出する工程と、を備え、
前記処理容器内の圧力をP1、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の領域の圧力をP2とすると、前記補助流体を供給する工程及び前記高圧流体を用いて処理を行う工程は、圧力P1がその設定した圧力に昇圧するまでP1≧P2となるように高圧流体及び補助流体の供給量を調整する工程であり、
前記高圧流体を排出する工程及び前記補助流体を排出する工程は、圧力P1がその設定した圧力に降圧するまでP1≧P2となるように高圧流体及び補助流体の供給量を調整する工程であることを特徴とする請求項11に記載の処理方法。
【請求項13】
前記高圧流体を排出する工程及び前記補助流体を排出する工程は、圧力P1の減圧勾配よりも圧力P2の減圧勾配の方が小さくなるように高圧流体及び補助流体の供給量を調整する工程であることを特徴とする請求項12に記載の処理方法。
【請求項14】
前記高圧流体を排出する工程及び前記補助流体を排出する工程の少なくとも一方は、減圧勾配を複数段階に切り替えて降圧する工程であることを特徴とする請求項13に記載の処理方法。
【請求項15】
処理容器内に搬入出領域を介して搬入された被処理基板に対して高圧流体を用いて処理を行う処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項11ないし14のいずれか一つに記載の処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−30502(P2013−30502A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163430(P2011−163430)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】