説明

分光器

【課題】光学部品を固定する基盤に特殊な材料を用いることなく周囲温度の変化に対して波長分解能を良好に保つ分光器を実現することにある。
【解決手段】波長分散素子で被測定光を波長分散して受光素子で受光する分光器に改良を加えたものである。本分光器は複数枚のレンズからなり、被測定光を平行光にして波長分散素子に出射する第1の組合せレンズと、複数枚のレンズからなり、波長分散素子で波長分散された被測定光を集光し、受光素子に受光させる第2の組合せレンズと、波長分散素子、第1の組合せレンズ、第2の組合せレンズを固定する基盤とを有する。そして、第1の組合せレンズの合成焦点距離の線膨張率、第2の組合せレンズの合成焦点距離の線膨張率、基盤を形成する材料の線膨張率それぞれを合わせたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分散素子で被測定光を波長分散して受光素子で受光する分光器に関し、詳しくは、光学部品を固定する基盤に特殊な材料を用いることなく周囲温度の変化に対して波長分解能を良好に保つ分光器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分光器は、波長分散素子(例えば、回折格子)で被測定光を波長分散させ、受光素子によって波長ごとの光パワーの測定を行なう。また、分光器に入射した被測定光を、コリメート手段(例えば、凹面鏡)によって平行光にして回折格子に出射し、回折格子からの回折光を集光手段(例えば、凹面鏡)によって集光させて出射スリットで波長帯域制限して受光素子に受光させる。
【0003】
この際、周囲温度が変化すると凹面鏡自体が膨張・縮小することにより焦点距離が変動し、分光器の波長分解能の性能が悪くなるという問題があった。
【0004】
そこで、凹面鏡の材料の線膨張率と基盤の材料の線膨張率とをほぼ等しくすることにより上記の問題を解決していた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
図4は、従来の分光器(ツェルニ・ターナ形分散分光器)の構成を示した図である(例えば、特許文献1参照)。図4において、入射スリット1は、分光器に入射する被測定光の幅を制限する。凹面鏡2は、入射スリット1を通過した被測定光を平行光にする。波長分散素子である回折格子3は、凹面鏡2で平行光となった被測定光を波長分散させ、波長ごとに異なる角度で出射する。凹面鏡4は、回折格子3で波長分散された被測定光を集光させる。出射スリット5は、凹面鏡4により被測定光が集光される位置に設けられ、所定の波長の被測定光のみを通過させ、波長帯域制限を行なう。受光素子6は、出射スリット5を通過した被測定光のみを受光し、受光した光の光パワーに応じた電気信号を出力する。そして、回折格子3を回転させて被測定光を波長掃引することにより、横軸を波長とし縦軸を光パワーとすることにより被測定光のスペクトル測定が行なえる。
【0006】
また、各種光学部品(出射スリット1、凹面鏡2、4、回折格子3、出射スリット5)は、基盤7上に固定される。
【0007】
ここで、図4において、凹面鏡2、4の焦点距離を280[mm]とし、材料をソーダガラスとした場合、焦点距離に対する単位長さ[m]当たりの線膨張率は、凹面鏡2、4の材料であるソーダガラスの線膨張率と等しくなり9×10-6[/℃]である。一方、基盤7をアルミニウムにセラミックを配合した特殊な素材の場合、単位長さ当たりの線膨張率は15×10-6[/℃]であり、凹面鏡2、4の材料の線膨張率と、基盤7の材料の線膨張率とがほぼ等しくなる。
【0008】
また、図4において、例えば、入射スリット1と凹面鏡2の間の距離L1と凹面鏡4と出射スリット5の間の距離L2とが共に280[mm]とする。この場合、距離L1,L2の温度係数は4.2[μm/℃](=15×10-6[/℃]×280[mm])になる。一方、凹面鏡2、4の焦点距離の温度係数は2.5[μm/℃](=9×10-6[/℃]×280[mm])になる。従って、両者の温度係数の差は1.7[μm/℃](=4.2[μm/℃]−2.5[μm/℃])である。
【0009】
分光器の周囲温度が、分光器の組立時の温度より10[℃]上昇した場合、上記の両者の温度係数の差より、凹面鏡4により集光された被測定光は、出射スリット5の面上より約34[μm](=|(4.2[μm/℃]−2.5[μm/℃])×2×10[℃]|)手前に焦点を結んでしまう。ここで、出射スリット5上に結像される被測定光の幅は、凹面鏡2、4の開口数が0.1の場合、6.8[μm](=34[μm]×2×0.1)に広がるが、出射スリット5の最小幅を15[μm]とした場合、この最小幅と比較すると被測定光の広がり幅は十分に小さいので波長分解能は劣化しない。
【0010】
一方、出射スリット5上に結像された被測定光の幅が15[μm]となる分光器の組立時の温度に対する周囲温度の変化量は±22.0[℃]であり、図4に示す分光器の使用可能な温度範囲は、組立時の基準温度±22.0[℃]の幅を持ち、通常の作業環境化では十分な波長分解能を発揮することができる。
【0011】
出射スリット5上に結像される光の幅は、出射スリット5のスリット幅以下である必要があり、基盤7の線膨張率K1、凹面鏡2、4の焦点距離の線膨張率(すなわち、材料の線膨張率)K2,凹面鏡2、4の開口数a、出射スリット5のスリット幅d、分光器の組立時の凹面鏡2、4の焦点距離L、分光器の組立時の温度に対する周囲温度の変化温度ΔTの関係は下記の式で示される。
【0012】
|K1−K2|≦|d/(4aLΔT)|
【0013】
実用的には、線膨張率K1,K2の差を10×10-6[/℃]以下とすることにより、周囲温度が変化しても波長分解能を良好に保つことができる。
【0014】
【特許文献1】特開2000−337962号公報
【特許文献2】特開平02−231536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、凹面鏡2、4の材料の線膨張率と、基盤7の材料の線膨張率との差を10×10-6[/℃]以下にし波長分解能の性能を維持していいる。
【0016】
しかしながら、凹面鏡2、4の材料にソーダガラスを用いた場合、基盤7の材料をアルミニウムにセラミックを配合した特殊な材料を使って線膨張率を合わせなければならないという問題があった。
【0017】
そこで本発明の目的は、光学部品を固定する基盤に特殊な材料を用いることなく周囲温度の変化に対して波長分解能を良好に保つ分光器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載の発明は、
波長分散素子で被測定光を波長分散して受光素子で受光する分光器において、
複数枚のレンズからなり、入射された前記被測定光を平行光にして前記波長分散素子に出射する第1の組合せレンズと、
複数枚のレンズからなり、前記波長分散素子で波長分散された被測定光を集光し、前記受光素子に受光させる第2の組合せレンズと、
前記波長分散素子、前記第1の組合せレンズ、前記第2の組合せレンズを固定する基盤と
を有し、前記第1の組合せレンズの合成焦点距離の線膨張率、前記第2の組合せレンズの合成焦点距離の線膨張率、前記基盤を形成する材料の線膨張率それぞれを合わせたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
第1の組合せレンズおよび第2の組合せレンズは、レンズそれぞれの曲率半径、レンズ材料の屈折率、この屈折率の温度変化率、線膨張率の少なくともいずれか一つにより、組合せたレンズの合成焦点距離の線膨張率を調整することを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、
第1の組合せレンズと第2の組合せレンズは共通であることを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
前記第2の組合せレンズの焦点位置に設けられ、前記回折格子からの回折光の波長帯域制限を行なう波長帯域制限手段を設けたことを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
受光素子は、第2の組合わせレンズの焦点位置に受光面が設けられ、波長分散方向に並べられたフォトダイオードを複数個有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば以下の効果がある。
複数枚のレンズを組合せることにより、組合わせたレンズの合成焦点距離の線膨張率を調整することができ、基盤の材料の線膨張率とほぼ等しくすることができる。これにより、レンズに使用する材料および基盤に使用する材料の選択性が向上し、基盤に特殊な材料を用いる必要もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1、本発明の一実施例を示した構成図である。ここで、図4と同一のものには同一符号を付し、説明を省略する。
【0021】
図1において、凹面鏡2の代わりに、入射スリット1と回折格子3との間にコリメート手段である第1の組合せレンズ8が設けられる。第1の組合せレンズ8は、2枚のレンズA1,A2から構成され、入射スリット1を通過した被測定光を平行光にして回折格子3に出射する。レンズA1は入射スリット1側、レンズA2は回折格子3側に設けられる。
【0022】
また、凹面鏡4の代わりに、回折格子3と出射スリット5との間に集光手段である第2の組合せレンズ9が設けられる。第2の組合せレンズ9は、2枚のレンズA’1、A’2から構成され、回折格子3で波長ごとに回折された被測定光を出射スリット5の面上に集光させる。レンズA’1は出射スリット5側、レンズA’2は回折格子3側に設けられる。
【0023】
なお、図1では、受光素子6を基盤7上に設ける構成を図示しているが、図4と同様に基盤7とは異なる部材に固定してもよい。
【0024】
このような装置の動作を説明する。
第1の組合せレンズ8が、入射スリット1を通過した被測定光を平行光にして回折格子3に出射する。そして、回折格子3が、被測定光を波長ごとに異なる角度に空間的に分離させて出射する。
【0025】
さらに、第2の組合せレンズ9が、回折された被測定光を出射スリット5の面上に集光する。そして、出射スリット5が、所定の波長の被測定光のみを通過させ、波長帯域制限を行なう。さらに、受光素子6が、出射スリット5を通過した被測定光のみを受光し、受光した光の光パワーに応じた電気信号を出力する。そして、回折格子3を回転させて被測定光を波長掃引することにより、横軸を波長とし縦軸を光パワーとすることにより被測定光のスペクトル測定が行なえる。
【0026】
次に組合せレンズ8、9について詳細に説明する。ここで、図2は、図1に示す装置の第1の組合せレンズ8を示した図である。
【0027】
第1の組合せレンズ8は、上述のようにレンズA1、A2で構成される。そして、レンズA1は2個の球面を有し、入射側(入射スリット1側)の曲率半径をr1aとし、出射側(レンズA2側)の曲率半径をr1bとする。
【0028】
同様に、レンズA2は2個の球面を有し、入射側(レンズA1側)の曲率半径をr2aとし、出射側(回折格子3側)の曲率半径をr2bとする。
【0029】
また、レンズA1の材料(硝材(ガラス材))の屈折率をn1とし、レンズA2の材料(硝材)の屈折率をn2とする。
【0030】
このようなレンズA1の焦点距離f1、レンズA2の焦点距離f2は、下記の式(1)の関係が成立する。なお、式中にiを用いるが、これはレンズA1、A2に対応し、(i=1,2)である。
【0031】
【数1】

【0032】
各レンズA1,A2の温度変化に対する焦点距離f1、f2の変化は、式(1)の両辺を温度Tで微分することにより、下記の式(2)で表される。
【0033】
【数2】

【0034】
従って、レンズA1の材料の線膨張率をα1、レンズA2の材料の線膨張率をα2とすると、
【0035】
【数3】

【0036】
式(3)の関係で示すことができる。これら式(2)、式(3)より、レンズA1の焦点距離f1とレンズA2のf2の温度特性は、式(4)で示される。
【0037】
【数4】

…式(4)
【0038】
一方、組合せレンズ8の焦点距離fは、レンズA1とレンズA2の合成焦点距離なので、下記の式(5)の関係式が成立する。
【0039】
【数5】

【0040】
そして、式(4)、式(5)から組合せレンズ8の焦点距離fの温度特性は式(6)となる。なお、焦点距離fsは、分光器の組立時の基準温度における組合せレンズ8の合成焦点距離である。
【0041】
【数6】

【0042】
一方、入射スリット1と第1の組合せレンズ8との間隔LAは、分光器の組み立て時は合成焦点距離fとなるように調整される。従って、入射スリット1と第1の組合せレンズ8との間隔LAの温度変化に対する変化量dLA/dTは、下記の式(7)になる。
【0043】
【数7】

【0044】
ここで、αBaseは、基盤7の線膨張率であり、焦点距離fsは、分光器の組立時の基準温度における組合せレンズ8の合成焦点距離である。
【0045】
以上より、式(6)の合成焦点距離fの温度変化に対する変化量df/dTと、式(7)の間隔LA(入射スリット1と組合せレンズ8間距離)の温度変化に対する変化量dLA/dTとが等しければ、組合わせレンズ8が、周囲温度の変化に完全に影響されずに、入射スリット1からの被測定光を平行光にして回折格子3に出射する。
【0046】
第2の組合せレンズ9も、同様に式(1)〜式(7)の関係が成り立つ。従って、第2の組合せレンズ9の合成焦点距離の温度変化に対する変化量と、間隔LA’(第2の組合せレンズ9と出射スリット5との間隔)の温度変化に対する変化量とが等しければ、組合わせレンズ2が、周囲温度の変化に完全に影響されずに、回折格子3からの回折光を出射スリット5の面上に焦点を結ぶ。
【0047】
つまり、第1の組合せレンズ8の合成焦点距離の線膨張率、第2の組合せレンズ9の合成焦点距離の線膨張率、光学部品(入射スリット1、回折格子3、出射スリット5、第1、第2の組合せレンズ8、9)が固定される基盤7を形成する材料の線膨張率それぞれを合わせてほぼ等しくする。これにより、組立て時の基準温度に対して、使用時の周囲温度がどのような温度に変化したとしても、第1の組合せレンズ8が平行光を回折格子3に出射し、第2の組合せレンズ9が、出射スリット5上に集光させる。従って、光学部品を固定する基盤に特殊な材料を用いることなく周囲温度の変化に対して波長分解能を良好に保つことができる。
【0048】
具体的に説明する。ここで、図3は、第1の組合せレンズ8、第2の組合せレンズ9の一例を示した図である。なお、以下の具体例では、第1の組合せレンズ8を主に説明する。
【0049】
基盤7の材料を安価だが熱膨張率が硝材と大きく異なるアルミを用いるとする。そして、組合せレンズ8のレンズA1,A2として用いる硝材を決定すれば、これら硝材の屈折率n1,n2、線膨張率α1,α2、屈折率の温度変化依存性dn1/dT,dn2/dTは、既知の値である。
【0050】
従って、式(6)、式(7)を満たすレンズA1,A2の材料、曲率半径の組合せを、分光器の組立性、レンズA1、A2の加工性、コスト等を考慮し、適宜選択、決定すればよい。
【0051】
数値を用いて具体的な一実施例を説明する。
上述のように、ベース基盤7の材料をアルミとすれば、光学部品のベースとなるアルミの熱膨張率αBase=23.1×10-6[/℃]である。
【0052】
一方、第1の組合せレンズ8と第2の組合せレンズ9とを同一の構成とする。そして、第1の組合せレンズ8、第2の組合せレンズ9を以下とする。
【0053】
レンズA1(A1’)
曲率半径:r1a=−247[mm],r1b=+52[mm]
硝材 :SF4
(屈折率:n1=1.762,
線膨張率:α1=8.0×10-6[/℃]
屈折率の温度変化依存性:dn1/dT=7.7)
【0054】
レンズA2(A2’)
曲率半径:r2a=+50[mm],r2b=−50[mm]
硝材 :SK11
(屈折率:n2=1.566,
線膨張率:α2=6.5×10-6[/℃]
屈折率の温度変化依存性:dn2/dT=1.8)
【0055】
この条件を式(6)に代入した場合、組合せレンズ8の基準温度の合成焦点距離fs=204[mm]であり、合成焦点距離fの温度変化に対する焦点距離の変化量df/dT=0.0047×10-3[mm/℃]になる。
【0056】
また、式(7)より、入射スリット1と組合せレンズ8の間隔LAの温度依存性(アルミの熱膨張率αBase=23.1×10-6[/℃],基準温度の合成焦点距離fs=204[mm])は、dLA/dT=0.0047×10-3[mm/℃]になる。
【0057】
このように、複数枚のレンズA1,A2を組合わせて、組合わせたレンズの合成焦点距離の線膨張率を調整する。具体的には、レンズそれぞれの曲率半径、レンズ材料の屈折率、この屈折率の温度変化率、レンズ材料の線膨張率の少なくともいずれか一つを適宜調整・選択する。そして、第1の組合せレンズ8の合成焦点距離の線膨張率、第2の組合せレンズ9の合成焦点距離の線膨張率、基盤7を形成する材料の線膨張率それぞれを合わせるので、光学部品を固定する筐体(ベース基盤)7が、安価な材料(アルミ)であっても、周囲温度の変化に対して分光器の波長分解能を良好に保つことができる。
【0058】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示すようなものでもよい。
(1)第1の組合せレンズ8および第2の組合せレンズ9のそれぞれは、2枚のレンズA1、A2(A1’,A’2)を組み合わせる構成を示したが、3枚以上のレンズを組み合わせて構成してもよい。このように3枚以上のレンズを組み合わせることにより、材料の選択の自由度が増し、設計の自由度も高まる。なお、式(6)の代わりに下記の式(8)を用いて構成するとよい。
【0059】
【数8】

i=1,2,3…,k(k:構成するレンズの枚数)
【0060】
そして、式(7)と式(8)の温度に対するそれぞれの変化量を等しくさせることにより、周囲温度が変化しても波長分解能を良好に保つ分光器を実現できる。
【0061】
(2)第1の組合せレンズ8、第2の組合せレンズ9のレンズA1、A2、A1’、A2’を球面レンズとする構成を示したが、非球面レンズを用いてもよい。
【0062】
(3)ベース基盤7の材料にアルミを用いる構成を示したが、どのような材料を用いても良い。また、組合せレンズ8、9もどのような材料を用いてもよい。さらに、レンズA1,A2の材料を異なるものとする構成を示したが、同じ材料としてもよい。
【0063】
(4)組合せレンズ8、9を同一の構成とする構成を示したが、組合せレンズ8,9で異なる構成(異なる曲率半径、材料)としてもよい。
【0064】
(5)モノクロメータに適用する構成を示したがダブルモノクロメータ等複数の回折格子を組み合わせたものに適用してもよい。
【0065】
(6)シングルパスの分光器に用いる構成を示したが、ダブルパス以上のマルチパスの分光器などの種々の変形分光器に適用してもよい。
【0066】
(7)第1の組合せレンズと第2の組合せレンズとを共通にしたリトロー型の分光器に適用してもよい。
【0067】
(8)入射スリット1および出射スリット(波長帯域制限手段)5それぞれの代わりに光ファイバを用いてもよい。
【0068】
(9)フォトダイオードが単一のモノクロメータの分光器に用いる構成を示したが、ポリクロメータ型の分光器に適用してもよい。この場合、受光素子には、複数のフォトダイオードからなるフォトダイオードアレイを用いる、そして、フォトダイオードは、点状または短冊状のフォトダイオードが、波長分散方向に配列され、フォトダイオードの幅(波長分散方向)そのものが、出射スリット5の機能(波長帯域制限)をもつことによる。
【0069】
(10)組合せレンズ8、9の焦点距離fの線膨張率とベース基盤7の線膨張率とを等しくする構成を示したが、ほぼ等しければよい。すなわち、使用する環境下の温度範囲、出射スリット5の幅等を考慮した場合、完全に一致させなくとも実用上問題が生じない場合もある。例えば、組合せレンズ8、9の焦点距離fの線膨張率とベース基盤7の線膨張率の差が、10×10-6[/℃]以下であればよい。
【0070】
(11)図1に示す分光器は、例えば、光スペクトラムアナライザ、波長モニタ等の波長分別部に用いるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示す装置の組合せレンズ8の構成を示した図である。
【図3】図1に示す装置の組合せレンズ8、9の具体的な構成を示した図である。
【図4】従来の分光器の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0072】
1 入射スリット
3 回折格子
5 出射スリット
6 受光素子
7 基盤
8 第1の組合せレンズ
9 第2の組合せレンズ
A1,A2,A’1,A’2 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長分散素子で被測定光を波長分散して受光素子で受光する分光器において、
複数枚のレンズからなり、入射された前記被測定光を平行光にして前記波長分散素子に出射する第1の組合せレンズと、
複数枚のレンズからなり、前記波長分散素子で波長分散された被測定光を集光し、前記受光素子に受光させる第2の組合せレンズと、
前記波長分散素子、前記第1の組合せレンズ、前記第2の組合せレンズを固定する基盤と
を有し、前記第1の組合せレンズの合成焦点距離の線膨張率、前記第2の組合せレンズの合成焦点距離の線膨張率、前記基盤を形成する材料の線膨張率それぞれを合わせたことを特徴とする分光器。
【請求項2】
第1の組合せレンズおよび第2の組合せレンズは、レンズそれぞれの曲率半径、レンズ材料の屈折率、この屈折率の温度変化率、線膨張率の少なくともいずれか一つにより、組合せたレンズの合成焦点距離の線膨張率を調整することを特徴とする請求項1記載の分光器。
【請求項3】
第1の組合せレンズと第2の組合せレンズは共通であることを特徴とする請求項1または2記載の分光器。
【請求項4】
前記第2の組合せレンズの焦点位置に設けられ、前記回折格子からの回折光の波長帯域制限を行なう波長帯域制限手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分光器。
【請求項5】
受光素子は、第2の組合わせレンズの焦点位置に受光面が設けられ、波長分散方向に並べられたフォトダイオードを複数個有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−257998(P2009−257998A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109044(P2008−109044)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】