説明

分割方法

【課題】表面に膜が残されている箇所があるワークであっても、分割予定ラインに沿って改質層をワーク内部に均一な状態に形成する。
【解決手段】分割予定ライン2に沿って検出用レーザービーム(反射強度検出用の光)LB2を照射して分割予定ライン2上の第1の反射領域5と第2の反射領域6との境界部4を検出し、境界部4を、加工用レーザービームLB1の出力条件を切り替える切り替え座標値として記憶する。そして、切り替え座標値に基づき、第2の反射領域6に第1の出力で加工用レーザービームLB1を照射し、第1の反射領域5に第1の出力よりも高い出力である第2の出力で加工用レーザービームLB1を照射し、各反射領域5,6に均一な改質層Pを形成する。この後、改質層Pに外力を加えワーク1を分割予定ライン2に沿って分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークを分割して複数のチップを得る分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ等のワークの表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理を施してから、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、多数の半導体チップを得ている。
【0003】
ワークのダイシングは、通常、高速回転させた切削ブレードをワークに切り込ませて切断するダイサーと称される切削装置によって行われているが、レーザービームをワークの内部に照射することにより分割起点となる改質層を形成し、テープエキスパンド等を用いて外力を分割起点に加えることによって切断する割断式の分割方法も行われている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−028423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかして、ワークの中にはデバイスを形成する工程において分割予定ラインの一部にのみ加工用のレーザービームの透過を抑制する膜が残される場合がある。そのような膜としては、例えばエッチング工程で形成されたレジスト膜が製品デバイス領域以外の部分で除去されずに残ったものなどが挙げられる。このようなワークに上記改質層を形成して分割を行おうとすると、膜が残されている箇所では改質層が形成されにくいため分割が困難になる場合があるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、膜が残されている箇所があるワークであっても、分割予定ラインに沿って均一な改質層を形成することができる分割方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分割方法は、外周部に存在しワークを透過する波長の加工用レーザービームを照射した際第1の反射率を示す第1の反射領域と、該第1の反射領域の内側に存在し該第1の反射領域と該加工用レーザービームに対する反射率が異なる第2の反射領域と、に跨って分割予定ラインが設定されたワークに該加工用レーザービームを該分割予定ラインに沿って照射してワーク内部に分割の起点となる改質層を形成し、外力を加えて該分割予定ラインに沿ってワークを分割する分割方法であって、前記分割予定ラインに沿って反射強度検出用の光を照射することによって、該分割予定ライン上の前記第1の反射領域と前記第2の反射領域との境界部を検出して、該境界部を前記加工用レーザービームの出力条件を切り替える切り替え座標値として記憶する反射強度検出工程と、該反射強度検出工程の後に、記憶した前記切り替え座標値に基づいて前記加工用レーザービームの出力条件を切り替えて、前記第2の反射領域に第1の出力でレーザービームを照射して該第2の反射領域のワーク内部に改質層を形成し、前記第1の反射領域に該第1の出力よりも高い出力である第2の出力でレーザービームを照射して該第1の反射領域のワーク内部に改質層を形成することによって、該第2の反射領域のワーク内部と該第1の反射領域のワーク内部とに跨って分割の起点となる改質層を形成する改質層形成工程と、該改質層に外力を加えることによってワークを前記分割予定ラインに沿って分割する分割工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ワーク外周部の第1の反射領域と、該第1の反射領域の内側の第2反射領域とに照射するレーザービームの出力条件を、それぞれの反射領域に応じたものに切り替えることにより、双方の反射領域に均一な改質層を形成することができる。ワークに膜が残されている場合、反射率の違いによって膜が残っている箇所と膜がない箇所に反射領域が分けられるため、膜が残されている箇所があるワークであっても、分割予定ラインに沿って均一な改質層を形成することができる。
【0009】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えば、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等からなる半導体ウェーハや、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板等が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膜が残されている箇所があるワークであっても、分割予定ラインに沿って均一な改質層を形成することができる分割方法が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る分割方法で多数のチップ(デバイス)に分割されるワークの平面図である。
【図2】粘着シートを介してワークを環状フレームに支持した状態を示す斜視図である。
【図3】一実施形態の分割方法を好適に実施するレーザー加工装置の斜視図である。
【図4】レーザー加工装置が備えるレーザー照射手段の光学系を示す図である。
【図5】レーザー加工装置で第1の反射領域と第2の反射領域の境界部を検出するとともに、第2の反射領域の表面高さ位置を検出する反射強度検出工程を行っている状態を示す側面図である。
【図6】反射強度検出工程の細部を示す断面図である。
【図7】反射強度検出工程でワークの表面に検出用レーザービームを走査する状態を示す平面図である。
【図8】レーザー加工装置でワークの内部に改質層を形成する改質層形成工程を行っている状態を示す側面図である。
【図9】改質層形成工程の細部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(1)ワーク
図1は、一実施形態の分割方法で分割される半導体ウェーハ等の円板状のワーク1を示している。ワーク1の表面1aには分割予定ライン2が格子状に形成されており、これによって該表面1aには多数の矩形状のデバイス領域3が区画されている。各デバイス領域3の表面には、ICやLSI等による図示せぬ電子回路が形成されている。
【0013】
ワーク1の表面1aにおける外周部(図1において二点鎖線で示す境界部4の外側の環状部)5には、例えば電子回路の形成工程でエッチングに用いたレジスト膜等の膜が残されている。そのような膜は、外周部5の内側の円形状の内周部6からは除去されている。ワーク1の表面1aに対し光を照射した場合、膜の有無によって反射強度(反射率)は異なる。ここでは、外周部5を第1の反射率を示す第1の反射領域5、内周部6を第1の反射領域5と反射率が異なる第2の反射領域6と称する。分割予定ライン2は、第1の反射領域5と第2の反射領域6との境界部4を通過しており、すなわち第1の反射領域5と第2の反射領域6とに跨って設定されている。
【0014】
本実施形態は、加工用レーザービームを分割予定ライン2に沿って照射してワーク1の内部に分割の起点となる改質層を形成し、この改質層に外力を加えることにより分割予定ライン2に沿ってワーク1を切断、分割して各デバイス領域3を多数のチップとして得る方法である。なお、ここで言う改質層とは、密度、屈折率、機械的強度、あるいはその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった層のことであり、例えば、溶融処理層、クラック層、絶縁破壊層、屈折率変化層等が挙げられ、さらにこれらの単独状態、または混在状態を含むものとされる。
【0015】
本実施形態では、ワーク1は図2に示すように環状フレーム11に支持された状態で図3に示すレーザー加工装置20に供給され、該装置20でレーザー加工が施される。環状フレーム11はステンレス等の剛性を有する金属板からなるものであり、この環状フレーム11の片面に、環状フレーム11の開口部11aを覆って粘着シート12が貼られている。そしてワーク1は、表面1aを露出した状態で粘着シート12に開口部11aと同心状に位置付けられて裏面が粘着シート12に貼着される。すなわちワーク1は、粘着シート12を介して環状フレーム11の開口部11aに支持される。これによりワーク1は、環状フレーム11を取り扱うことにより搬送される。
【0016】
(2)レーザー加工装置の構成
以下、図3のレーザー加工装置20を説明する。
レーザー加工装置20は基台21を有しており、この基台21上には、XY移動テーブル22が、水平なX軸方向およびY軸方向に移動自在に設けられている。このXY移動テーブル22には、ワーク1を保持するチャックテーブル51が設置されている。チャックテーブル51の上方には、チャックテーブル51に保持されたワーク1に向けて加工用レーザービームと検出用レーザービーム(反射強度検出用の光)とを照射するレーザー照射手段60の照射部62が、チャックテーブル51に対向する状態に配設されている。
【0017】
XY移動テーブル22は、基台21上にX軸方向に移動自在に設けられたX軸ベース30と、このX軸ベース30上にY軸方向に移動自在に設けられたY軸ベース40との組み合わせで構成されている。X軸ベース30は、基台21上に固定されたX軸方向に延びる一対の平行なガイドレール31に摺動自在に取り付けられており、モータ32でボールねじ33を作動させるX軸駆動機構34によってX軸方向に移動させられる。一方、Y軸ベース40は、X軸ベース30上に固定されたY軸方向に延びる一対の平行なガイドレール41に摺動自在に取り付けられており、モータ42でボールねじ43を作動させるY軸駆動機構44によってY軸方向に移動させられる。
【0018】
Y軸ベース40の上面には、円筒状のチャックベース50がZ軸方向(上下方向)を回転軸として回転自在に支持されており、このチャックベース50上に、チャックテーブル51が同心状に固定されている。チャックテーブル51は、真空吸引作用によりワーク1を吸着して保持する一般周知の真空チャック式のものである。チャックテーブル51は、図示せぬ回転駆動手段によってチャックベース50と一体に回転駆動される。チャックテーブル51の周囲には、上記環状フレーム11を着脱自在に保持する一対のクランプ52が、互いに180°離れた位置に配設されている。これらクランプ52は、ステー(図5参照)53を介してチャックベース50に取り付けられている。
【0019】
XY移動テーブル22においては、X軸ベース30がX軸方向に移動する時が、レーザービームを分割予定ライン2に沿って照射する加工送りとされる。そして、Y軸ベース40がY軸方向に移動することにより、レーザービームを照射する対象の分割予定ライン2を切り替える割り出しがなされる。なお、加工送り方向と割り出し方向は、この逆、つまり、Y軸方向が加工送り方向、X軸方向が割り出し方向に設定されてもよく、限定はされない。
【0020】
レーザー照射手段60は、チャックテーブル51の上方に向かってY軸方向に延びる直方体状のケーシング61を有しており、このケーシング61の先端に、上記照射部62が設けられている。ケーシング61は、基台21に立設されたコラム23に、鉛直方向(Z軸方向)に沿って上下動可能に設けられており、コラム23内に収容された図示せぬ上下駆動手段によって上下動させられる。
【0021】
ケーシング61の先端であって照射部62の近傍には、分割予定ライン2を検出するための撮像手段70が配設されている。この撮像手段70は、チャックテーブル51に保持されたワーク1を照明する照明手段や光学系、および光学系で捕らえられた像を撮像するCCD等からなる撮像素子等を備えている。
【0022】
以下、レーザー照射手段60について説明する。
ケーシング61内には、図4に示すように、加工用レーザービームLB1を発振する加工用レーザー発振器100と、検出用レーザービームLB2を発振する検出用レーザー発振器110とが収容されている。
【0023】
図4によりレーザー照射手段60の光学系を説明する。加工用レーザー発振器100としては、例えばYAGやYVO等のワーク1を透過する波長(例えば1064nm程度)のパルスレーザーを発振可能なものが用いられる。加工用レーザー発振器100から発振された加工用レーザービームLB1はミラー120で反射されてダイクロイックミラー121を透過する。ダイクロイックミラー121を透過した加工用レーザービームLB1は、集光レンズ(対物レンズ)122に垂直に入射して透過することにより、チャックテーブル51に保持されたワーク1の内部に集光点を合わせて照射され、これによりワーク1の内部には改質層が形成される。ミラー120、ダイクロイックミラー121および集光レンズ122は、照射部62内に収容されている。
【0024】
一方、検出用レーザー発振器110としては、例えば波長が810〜830nm程度のレーザー(He−Neレーザー等)を発振可能なものが用いられる。検出用レーザー発振器110から発振された検出用レーザービームLB2は、その一部がハーフミラー131を透過し、ダイクロイックミラー121で反射されて集光レンズ122に垂直に入射して透過することにより、チャックテーブル51に保持されたワーク1の表面1aに照射される。
【0025】
ワーク1の表面1aに照射された検出用レーザービームLB2は該表面1aで反射し、反射した検出用レーザービームLB2は、集光レンズ122を透過してダイクロイックミラー121で反射され、その一部がハーフミラー131で反射され、さらにミラー132で反射されて高さ位置検出部140に入射する。これらミラー131,132、高さ位置検出部140は、加工用レーザー発振器100および検出用レーザー発振器110とともにケーシング61内に収容されている。
【0026】
高さ位置検出部140では、ミラー132で反射された検出用レーザービームLB2がビームスプリッタ142に入射し、ビームスプリッタ142により第1の光路143aと第2の光路143bに分割される。第1の光路143aに分割された検出用レーザービームLB2は集光レンズ144によって100%集光され、第1の受光素子145に受光される。第1の受光素子145からは、受光した光量に対応した電圧信号が図示せぬ制御手段に出力される。
【0027】
また、第2の光路143bに分割された検出用レーザービームLB2は、受光領域規制手段147のシリンドリカルレンズ148によって一次元に集光され、一次元マスク149によって所定の単位長さに規制されて第2の受光素子146に受光される。第2の受光素子146からは、受光した光量に対応した電圧信号が図示せぬ制御手段に出力される。
【0028】
第1の受光素子145で受光される検出用レーザービームLB2は、集光レンズ144によって100%集光されるので、反射面、すなわちワーク1の表面1aの反射強度が一定であれば受光量は一定であり、第1の受光素子145から出力される電圧信号は一定となる。換言するとワーク1の表面1aの反射強度が変化した場合には、第1の受光素子145での受光量はそれに応じて変化することになり、これによって反射強度の変化を検出することができる。
【0029】
一方、第2の受光素子146によって受光される検出用レーザービームLB2は、シリンドリカルレンズ148によって一次元に集光された後、一次元マスク149によって所定の単位長さに規制されたものである。したがって、検出用レーザービームLB2がワーク1の表面1aに照射される際に、集光レンズ122からワーク1の表面1aまでの距離、すなわちワーク1の表面1aの高さ位置に応じて第2の受光素子146の受光量は変化し、したがって第2の受光素子146から出力される電圧信号は、検出用レーザービームLB2が照射されるワーク1の表面1aの高さ位置によって変化する。ここでは、変化する第2の受光素子146での受光量と、第1の受光素子145での一定である受光量との差に基づいて、ワーク1の表面1aの高さ位置が検出される。
【0030】
(3)ワークの分割
以上がレーザー加工装置20の構成であり、次に、このレーザー加工装置20を用いてワーク1にレーザー加工を施す手順を説明する。
【0031】
はじめに、図5に示すように、上記レーザー加工装置20のチャックテーブル51上に粘着シート12を介してワーク1を載置するとともに、環状フレーム11をクランプ52で保持し、チャックテーブル51の真空運転を行って、表面1aを上方に露出させてワーク1をチャックテーブル51に吸着して保持する。
【0032】
次に、撮像手段70によりワーク1の表面1aを撮像して分割予定ライン2を検出する。そして検出した分割予定ライン2の位置に基づき、レーザー照射手段60の検出用レーザー発振器110を発振させて検出用レーザービームLB2を分割予定ライン2に沿って該分割予定ライン2の一端から他端にわたり照射し、分割予定ライン2上の第1の反射領域5と第2の反射領域6との境界部4の検出と、第2の反射領域6における表面1aの高さ位置の検出とを同時に行う。図6の矢印は、検出用レーザービームLB2の走査方向を示している。
【0033】
なお、レーザー加工装置20での分割予定ライン2に沿ったレーザービーム(加工用レーザービームLB1、検出用レーザービームLB2)の走査は、チャックテーブル51を回転させることで分割予定ライン2を加工送りと平行に設定し、X軸ベース30をX軸方向に移動させる加工送りによってなされる。また、レーザービームを照射する分割予定ライン2の切り替えは、Y軸ベース40をY軸方向に移動させる割り出しによってなされる。
【0034】
検出用レーザービームLB2は、第1の反射領域5に残されている膜(図6のMで示す)に影響を受けるため、分割予定ライン2に沿って照射した際の表面1aでの反射強度は、膜Mが残されている第1の反射領域5と、膜Mが除去されている第2の反射領域6とでは異なり、例えば本実施形態では第2の反射領域6の方が強いとする。反射強度の強弱の差は、走査する検出用レーザービームLB2が境界部(図6の矢印4で示す)を通過する時に起こる。ここでは、検出用レーザービームLB2の走査により、分割予定ライン2上での2つの境界部4が、レーザー照射手段60における高さ位置検出部140の第1の受光素子145で受光される検出用レーザービームLB2(ワークの表面での反射光)の受光量で検出される。そしてそれら境界部4を、改質層を形成する際の加工用レーザービームLB1の出力条件を切り替える切り替え座標値として図示せぬ記憶手段に記憶する(反射強度検出工程)。
【0035】
図7に示すように、検出用レーザービームLB2を矢印のように分割予定ライン2の一端から他端にわたって走査していくと、はじめに、図6で示したような膜Mがあるため反射強度が小さい第1の反射領域5を通り、1回目の境界部4Aを通過して第2の反射領域6に入ると膜Mが無くなるため反射強度が大きくなる。1回目の境界部4Aの切り替え座標値は、反射強度が大きくなった時の座標値である。引き続き第2の反射領域6を検出用レーザービームLB2が走査していくと2回目の境界部4Bを通過して再び第1の反射領域5に入り、この第1の反射領域5では膜Mがあるため反射強度が小さくなる。2回目の境界部4Bの切り替え座標値は、反射強度が小さくなった時の座標値である。
【0036】
また、ワーク1の高さ位置は、第2の反射領域6の表面1aに検出用レーザービームLB2を走査する過程において、上述のようにレーザー照射手段60における高さ位置検出部140の第1の受光素子145と第2の受光素子146とで受光される受光量の差に基づいて検出される。第2の反射領域6の表面1aの高さ位置を検出する目的は、該表面1aはミクロ的には凹凸面となっており、上記改質層を表面から一定深さの箇所に形成するために、表面1aの凹凸状態、すなわち高さ位置を把握しておく必要があるからである。
【0037】
次に、撮像手段70により検出した分割予定ライン2の位置に基づき、レーザー照射手段60の照射部62から、図8および図9に示すようにワーク1に対して透過性を有する加工用レーザービームLB1をワーク1の内部に集光点を合わせた状態として分割予定ライン2に沿って走査し、ワーク1の内部に分割予定ライン2に沿った改質層Pを形成する(改質層形成工程)。図9の矢印は、レーザービームLB1の走査方向を示している。
【0038】
改質層形成工程では、上記記憶手段が記憶した上記切り替え座標値に基づいて、ワーク1の第1の反射領域5に照射する加工用レーザービームLB1と、第2の反射領域6に照射する加工用レーザービームLB1の出力条件を切り替える。この場合、第2の反射領域6には第1の出力で加工用レーザービームLB1を照射し、第2の反射領域6の両側の第1の反射領域5には、第1の出力よりも高い出力である第2の出力で加工用レーザービームLB1を照射する。
【0039】
加工用レーザービームLB1の出力条件の切り替えは、ワーク1に対する単位時間当たりの照射エネルギーを異ならせればよく、例えば、発振するレーザーにおける1パルスのON/OFF比を調節して出力を変化させる方式が挙げられる。またこの他には、AO偏向器やAO変調器等を用いたり、ワーク1に対する加工用レーザービームLB1の走査速度を変化させるなどの他の方式を用いてもよい。
【0040】
すなわち、1本の分割予定ライン2に対して、はじめは一端から第1の反射領域5を走査する時には、第2の反射領域6に照射する第1の出力よりも高い出力の第2の出力を照射し、境界部4に至ったら、第2の出力よりも出力が低い第1の出力で第2の反射領域6を照射していく。そして2回目の境界部4を通過して再び第1の反射領域5に入ったら、第2の出力に戻して他端まで走査する。このように加工用レーザービームLB1を走査して、ワーク1の内部の第1の反射領域5と第2の反射領域6とに跨って、分割の起点となる改質層Pを形成する。
【0041】
また、特に第2の反射領域6においては、上記反射強度検出工程で検出したワーク1の表面1aの高さ位置に対応させて加工用レーザービームLB1の集光点を上下動させ、形成する改質層Pの表面1aからの深さを一定とする。集光点の高さ調整は、レーザー照射手段60のケーシング61を上下動させることによってなされる。なお、第1の反射領域5の集光点の高さは、第2の反射領域6での高さのうち境界部4に至る直前の高さに設定され、その高さを維持する。
【0042】
上記のように、照射する加工用レーザービームLB1を、第1の反射領域5には第2の出力で照射し、第2の反射領域6には第1の出力で照射するプロセスを、全ての分割予定ライン2に沿って行う。この後、チャックテーブル51へのワーク1の保持、ならびにクランプ52による環状フレーム11の保持を解除する。そして環状フレーム11を扱うことでワーク1を搬出し、次の分割工程に移す。
【0043】
分割工程では、分割予定ライン2に沿ってワーク1の内部に形成した分割起点(改質層P)に外力を加える。分割起点に外力が加えられると、分割起点を起点としてワーク1が分割予定ライン2に沿って割断、分割される。これにより、各デバイス領域3が個片化して多数のチップが得られる。
【0044】
分割起点である改質層Pに外力を加える方法としては、例えば粘着シート12を拡張してワーク1全体に放射方向への引っ張り応力を加えるなどの方法が好適である。このようにして粘着シート12上でワーク1が分割されると、各チップ(デバイス)は粘着シート12上に粘着して残り、この後、ピックアップ工程で各チップがピックアップされる。
【0045】
(4)実施形態の効果
上記実施形態の分割方法によれば、ワーク1の内部に照射して改質層Pを形成する加工用レーザービームLB1の出力を、表面1aに膜Mがない第2の反射領域6よりも表面1aに膜Mが残されている第1の反射領域5の方を大きくするといったように、反射強度に応じて切り替えている。膜Mの存在により第1の反射領域5の内部には第2の反射領域6と同等の改質層を形成し難いといった課題があったが、本実施形態では上記方法を採ることにより、反射領域5,6双方に対して均一な改質層Pの形成が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1…ワーク
1a…ワークの表面
2…分割予定ライン
3…デバイス領域
4…境界部
5…第1の反射領域(外周部)
6…第2の反射領域(内周部)
LB1…加工用レーザービーム
LB2…検出用レーザービーム(反射強度検出用の光)
P…改質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に存在しワークを透過する波長の加工用レーザービームを照射した際第1の反射率を示す第1の反射領域と、該第1の反射領域の内側に存在し該第1の反射領域と該加工用レーザービームに対する反射率が異なる第2の反射領域と、に跨って分割予定ラインが設定されたワークに該加工用レーザービームを該分割予定ラインに沿って照射してワーク内部に分割の起点となる改質層を形成し、外力を加えて該分割予定ラインに沿ってワークを分割する分割方法であって、
前記分割予定ラインに沿って反射強度検出用の光を照射することによって、該分割予定ライン上の前記第1の反射領域と前記第2の反射領域との境界部を検出して、該境界部を前記加工用レーザービームの出力条件を切り替える切り替え座標値として記憶する反射強度検出工程と、
該反射強度検出工程の後に、記憶した前記切り替え座標値に基づいて前記加工用レーザービームの出力条件を切り替えて、前記第2の反射領域に第1の出力でレーザービームを照射して該第2の反射領域のワーク内部に改質層を形成し、前記第1の反射領域に該第1の出力よりも高い出力である第2の出力でレーザービームを照射して該第1の反射領域のワーク内部に改質層を形成することによって、該第2の反射領域のワーク内部と該第1の反射領域のワーク内部とに跨って分割の起点となる改質層を形成する改質層形成工程と、
該改質層に外力を加えることによってワークを前記分割予定ラインに沿って分割する分割工程と、
を有することを特徴とする分割方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59907(P2012−59907A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201527(P2010−201527)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】